JP4090885B2 - シクロヘキサノンオキシムの製造方法 - Google Patents
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Description
(I)ベンゼンからシクロヘキサノンを得る工程。
(II)工程(I)とは別に、アンモニアからヒドロキシルアミン塩を得る工程。
(III)ヒドロキシルアミン塩とシクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを得る工程。
また、上記したシクロヘキサノールの脱水素工程においては、反応の平衡規制のためにシクロヘキサノールの転化率が70〜90%程度以下と限界があり、かつ原料のシクロヘキサノールと生成物のシクロヘキサノンの沸点が近いために、分離のためのエネルギーを多量に必要とする。
フェノールの水素化による製造法は、最も古くから行われている方法であり、ベンゼンから誘導されるフェノールをニッケルもしくはパラジウム触媒等を用いて核水素化し、シクロヘキサノールまたはシクロヘキサノンを得るものである。しかし、例えば、ベンゼンからのフェノールの製造をその代表的な方法であるキュメン法により行った場合、反応工程数が多いうえ、さらに、通常、アセトンとの併産プロセスになるのでアセトンの需要、価格等によりフェノールの生産が規制される等の問題点を有する。
上記工程(III)としては、ヒドロキシルアミンの硫酸塩を用いてシクロヘキサノンをオキシム化する方法(向山光昭監訳「工業有機化学」第4版、東京化学同人、285ページ、1996、日本国、参照)が主流である。このオキシム化反応は平衡反応であるため、反応を進行させるためには一定量のアンモニアを添加してpHを7付近に保つ必要があるが、このステップで工業的に価値の低い硫酸アンモニウムが生成シクロヘキサノンオキシム1モルに対し1モル副生してしまう。
更に、上記の工程(I)〜(III)からなる方法は、ベンゼンの完全水素化、及びヒドロキシルアミン塩の製造などにおいて大量の水素が必要であるという問題があった。
また、上記した方法の改良法も提案されている。例えば、シクロヘキサノンの製造方法に関しては、ベンゼンの部分水素化反応によりシクロヘキセンを得、ついで、水和反応により得られるシクロヘキサノールを脱水素反応によりシクロヘキサノンとする方法(日本国特開昭56−43227号公報(EP23379に対応))などが知られている。この方法は、前述したシクロヘキサン空気酸化法に比べ、水素消費量が少ないこと、部分水素化反応で副生するシクロヘキサンを含めれば、実質的に100%に近い炭素ベースの収率が得られる等の利点があるが、シクロヘキサノール脱水素工程の反応設備、及びエネルギーコストが空気酸化法に対して大きくなる等の問題を有する。
一方、シクロヘキサノンを経由しない製造法として、ベンゼンを完全水素化して得たシクロヘキサンに、アンモニアを空気酸化して得たNOとNO2の混合物を硫酸、次いで塩酸と反応させることによって製造される塩化ニトロシルを反応させてシクロヘキサノンオキシムの塩酸塩を製造する方法(有機合成化学協会誌、21,160−3,1963、有機合成化学協会、日本国)が工業化されている。この方法は、シクロヘキサノンを中間原料とする方法より反応工程数は少ないが、オキシム化に光が必要であり、そのための電力が多量に必要であるうえ、水銀ランプ等の維持管理が煩雑である。
以上の如く、シクロヘキサノンオキシムを製造する従来の方法は、プロセスが煩雑であり、工業的に実施するうえで、より簡便でより効果的な方法が求められてきた。
このような状況下、本発明者等は、かかる従来技術の問題を解決すべく鋭意検討した。その結果、(1)シクロヘキセン又はシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得、(2)得られたシクロヘキシルアミンを部分酸化する方法により、ナイロン−6等の原料であるε−カプロラクタムの中間体として有用な化合物であるシクロヘキサノンオキシムを製造すると、その製造のための従来の方法で用いられている煩雑な工程により製造されるヒドロキシルアミン塩のような反応試薬を用いることなく、少ない水素消費量で、簡便な装置を用いて、簡便な操作で且つ高選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができるだけでなく、シクロヘキサノンオキシムから得られる所望の中間体であるε−カプロラクタムの品質に悪影響を与える分離が困難な副生物及び/又は工業的価値の低い硫酸アンモニウムのような副生物が生成するという従来技術にともなう問題がなく、且つ生成される副生物も大部分がシクロヘキサン及びシクロヘキサノン等の有用な化合物であり、廃棄物が極めて少ないので工業的に有利であることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
(1)ベンゼンを部分水素化することによってシクロヘキセンを得る工程、またはベンゼンを部分水素化して得られたシクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを得る工程。
(2)得られたシクロヘキセン又はシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得る工程。
(3)得られたシクロヘキシルアミンを分子状酸素により部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る工程。
本発明の理解を容易にするために、以下、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.下記の工程(1)〜(3)を包含することを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
(1)ベンゼンを部分水素化することによってシクロヘキセンを得る工程、またはベンゼンを部分水素化して得られたシクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを得る工程。
(2)得られたシクロヘキセン又はシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得る工程。
(3)得られたシクロヘキシルアミンを分子状酸素により部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る工程。
3.該ベンゼンの部分水素化を、(i)平均結晶子径が200Å以下である金属ルテニウム、及び場合によっては亜鉛化合物を含有する水素化触媒、(ii)水、及び(iii)ジルコニウムもしくはハフニウムの酸化物、水溶性亜鉛化合物、及び固体塩基性硫酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で、中性又は酸性条件下に液相において行い、該水素化触媒が非担持型であることを特徴とする前項2に記載の方法。
4.該シクロヘキセンの水和を、水和触媒としてのゼオライトの存在下で行うことを特徴とする前項1に記載の方法。
6.工程(2)における該シクロヘキセンのアミノ化を、固体酸、周期律表1〜10族に属する金属、及び該金属の化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むアミノ化触媒(a)の存在下で行うことを特徴とする前項1に記載の方法。
7.該アミノ化触媒(a)がゼオライトであることを特徴とする前項6に記載の方法。
8.工程(2)における該シクロヘキサノールのアミノ化を、周期律表第8、9および10族に属する元素、クロム、銅、銀、亜鉛及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むアミノ化触媒(b)の存在下で行うことを特徴とする前項1に記載の方法。
本発明のシクロヘキサノンオキシムの製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を包含する。
(1)ベンゼンを部分水素化することによってシクロヘキセンを得る工程、またはベンゼンを部分水素化して得られたシクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを得る工程。
(2)得られたシクロヘキセン又はシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得る工程。
(3)得られたシクロヘキシルアミンを分子状酸素により部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る工程。
本発明において、シクロヘキセンに対するアンモニアのモル比は、好ましくは1/1〜10/1、より好ましくは1.5/1〜5/1である。また、反応条件は、反応系や使用する触媒等によって適宜選択されるが、反応圧力は通常1〜70MPa、好ましくは5〜30MPaの範囲であり、反応温度は通常50〜400℃、好ましくは200〜350℃の範囲である。反応時間は、目的とするシクロヘキシルアミンの選択率や収率の目標値を定め、適宜選択すればよく、特に制限はないが、通常、数秒ないし数時間である。
触媒の量に関しては、用いる触媒種によっても異なり、所望の触媒効果が得られる量であれば特に限定はないが、通常、シクロヘキセンに対して重量比で0.0001/1〜100/1、好ましくは0.001/1〜50/1の範囲である。
また、気相で反応を行なう場合は、上昇流又は下降流反応器中で、時間基準の液空間速度(liquidhourly space velocity,LHSV)が、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜5の範囲になるような条件下で反応を行うことが好ましい。
生成したシクロヘキシルアミンは、未反応アンモニアを回収後、反応器中の反応混合物から慣用の手段、例えば、蒸留または抽出によって分離し、必要によりさらなる分離手段により所望の純度にすることができる。通常、未反応シクロヘキセン及びアンモニアは、反応器に再循環するのが好ましい。
上記水和反応において反応温度は、通常50〜300℃であり、好ましくは、100〜200℃の範囲である。反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよいが、加圧下で反応を行うことが好ましい。反応時間は、目的とするシクロヘキサノールの選択率や収率の目標値を定め、適宜選択すればよく、特に制限はないが、通常、数秒ないし数時間である。
また、本発明におけるシクロヘキサノールのアミノ化反応は、水素共存下、或いは水素で前処理された触媒を用いて反応を行わせることもできる。この効果は有用なものであり、触媒活性が長期間にわたって有効に維持され、さらにはシクロヘキシルアミンの選択率、収率を向上させることができる。
触媒の量に関しては、用いる触媒種によっても異なり、所望の触媒効果が得られる量であれば特に限定はないが、通常、シクロヘキサノールに対して重量比で0.0001/1〜100/1、好ましくは0.001/1〜50/1の範囲である。
また、気相で反応を行なう場合は、上昇流又は下降流反応器中で、時間基準の液空間速度(liquidhourly space velocity,LHSV)が、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜5の範囲になるような条件下で反応を行うことが好ましい。
本発明の工程(3)のシクロヘキシルアミンを部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る方法としては、シクロヘキシルアミンを触媒の存在下、酸化剤と反応させる方法が用いられる。
反応条件は、使用する酸化剤や触媒の種類によって適宜選択されるが、反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよく、反応系内の全圧に特に制限はない。反応温度は、好ましくは、20℃〜250℃、より好ましくは80℃〜180℃の範囲である。反応温度が250℃を超えると生成したシクロヘキサノンオキシムの分解又は過剰酸化が促進される傾向があり、反応温度が20℃未満では反応速度が低下する傾向がある。また、反応時間は、目的とするシクロヘキサノンオキシムの選択率や収率の目標値を定め、適宜選択すればよく、特に制限はないが、通常、数秒ないし数時間である。
また、気相で反応を行なう場合は、上昇流又は下降流反応器中で、時間基準の液空間速度(liquidhourly space velocity,LHSV)が、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜5の範囲になるような条件下で反応を行うことが好ましい。
該部分酸化反応では、通常、目的生成物であるシクロヘキサノンオキシムの他に副生成物として少量のシクロヘキサノン、N−シクロヘキシリデンシクロヘキシルアミンが生成する。生成したシクロヘキサノンオキシムは、触媒を分離した反応器中の反応混合物から慣用の手段、例えば、蒸留又は抽出などによって回収され、必要によりさらなる分離手段により所望の純度にすることができる。通常、未反応シクロヘキシルアミンは、反応容器に再循環するのが好ましい。
非担持型の金属ルテニウムとは、ルテニウム化合物を気相もしくは液相において水素もしくは適当な化学還元剤を用いて還元して得られる還元物であり、ルテニウムは金属状態まで還元されたものである。かかる還元物の平均結晶子径が小さい程、シクロヘキセンの生成に有利となり、平均結晶子径が200Å以下、好ましくは100Å以下の金属ルテニウムをもちいることがシクロヘキセンの選択率を向上させるために望ましい。ここで、平均結晶子径は一般的方法、すなわち、X線回折法によって得られる回折線巾の拡がりから、Scherrerの式により算出されるものである。また、本反応においては、同様な方法によって調製された亜鉛化合物を含む金属ルテニウムも好適に用いることができる。
また、水素化触媒として、非担持型の金属ルテニウムを用いる場合には、該水素化触媒とは別に、ジルコニウム及び/又はハフニウムの酸化物を添加して反応を行わせることもできる。添加される酸化物の量は、反応系に共存する水の重量に対し1×10−3〜0.3倍、好ましくは1×10−2〜0.1倍である。かかる酸化物を添加することによって得られる効果は有用なものであり、シクロヘキセンの選択率、収率を向上させることができ、さらには、反応器表面への水素化触媒の付着や、水素化触媒の凝集などを抑制することが可能となる。
また、本発明においては、水素化触媒、水の他に少なくとも1種の水溶性金属化合物の存在下で反応を行わせることが好ましい。ここで水溶性金属化合物としては、周期律表第1、2及び12族に属する元素、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の酢酸塩、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが使用されるが、周期律表第1及び2族に属する金属、及び亜鉛の塩化物もしくは硫酸塩が好ましく、硫酸亜鉛の如き強酸塩がより好ましい。かかる硫酸亜鉛は、水溶液として0.01重量%〜飽和溶解度までの濃度で用いることができるが、好ましくは0.1〜30重量%で用いることが好ましい。
これら固体塩基性硫酸亜鉛の水に対する溶解度は小さく、わずかな量の添加で反応系において固体として共存できる。本発明においては、水素化触媒の重量に対し、亜鉛として通常、1×10−4〜1倍、好ましくは1×10−5〜0.5倍の量共存させて反応を行う。
また、ベンゼンの部分水素化反応の反応系では、硫酸亜鉛水溶液及び/又は固体塩基性硫酸亜鉛が存在することが好ましい。これら亜鉛化合物の存在する量によっても異なるが、反応系が微アルカリから酸性の状態で行うことが好ましく、中性から酸性の状態で行うことがより好ましい。具体的には、pH1〜7で反応を行うことが好ましく、pH4〜7未満で行うことがより好ましい。
ベンゼンの部分水素化反応は、通常、水を含む水相、水相中に存在する触媒を含む固相、原料および生成物を含む油相、および水素を含む気相から構成される4相系で行われ、これらの相が懸濁した状態で反応が進行する。反応液は、触媒を含む水相と、生成したシクロヘキセン及び未反応ベンゼン等を含む油相とに相分離させて、油相を分離工程に供する。触媒を含む水相は、触媒スラリーとして、反応器に循環して再使用することができる。該部分水素化反応では、通常、目的生成物であるシクロヘキセンの他に副生成物としてシクロヘキサンが生成する。分離された油相には、シクロヘキセン、シクロヘキサン及びベンゼンが含まれるが、これらの沸点は互いに近接しているので、通常、抽出蒸留や共沸蒸留によって分離される。分離されたシクロヘキセンは、必要によりさらなる分離手段により所望の純度にすることができる。通常、分離された未反応ベンゼンは、反応器に再循環するのが好ましい。
(ii)場合によって、得られたシクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを得る工程。
(iii)工程(i)で得られたシクロヘキセン又は工程(ii)で得られたシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得る工程。
(iv)得られたシクロヘキシルアミンを部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る工程。
上記各工程(i)〜(iv)で各々用いる原料、触媒及び反応条件などは既に上記した通りである。
1)ベンゼンの部分水素化反応によりシクロヘキセンを得る工程
塩化ルテニウム(RuCl3・3H2O)5.0gおよび塩化亜鉛13.0gを水500mlに溶解し、攪拌し、これに30%のNaOH水溶液70mlを加えたものを1NのNaOH水溶液で洗浄した。得られた黒色沈殿物を5%NaOH水溶液500mlに分散させ、内容積1000mlの攪拌機付きオートクレーブに仕込んだ後、水素により全圧を5MPaとし、150℃で12時間還元し、洗浄、乾燥して水素化触媒2.3gを得た。ルテニウムに対する亜鉛含量は7.4重量%、平均結晶子径は55Åであった。
測定装置:日本国島津製作所GC−14A型ガスクロマトグ
ラフ(炎イオン化検出器(FID)を含む)
カラム :日本国信和化工製キャピラリーカラムULBON
HR−20M(0.25mm×25m)
キャリアガス:ヘリウム
溶離液の流速:20ml/min
分析法 :50℃で定温分析
上記油相の反応混合物を蒸留装置で、N,N−ジメチルアセトアミドを溶剤として、抽出蒸留を行い、純度99.5%以上のシクロヘキセンを得た。
2−1) シクロヘキセンのアミノ化によりシクロヘキシルアミンを得る工程
米国ユニオンカーバイド社製のナトリウムYゼオライト(LZ−Y52、1/16インチ押し出し物)80gを1モルの塩化アンモニウム及び50mlの12N塩酸水溶液を含む2lの蒸留水に加えることで脱アルミニウム処理をした。この溶液を2時間還流し、塩素イオンが全く検出されなくなるまで熱水で洗浄し次いで150℃で乾燥した。脱アルミニウム化の程度を変えるのに前記操作を150℃で2回もしくはそれ以上繰り返した。得られた脱アルミニウムH−YゼオライトのSi/Alのモル比は約2.5であった。
測定装置:日本国島津製作所GC−14A型ガスクロマトグ
ラフ(炎イオン化検出器(FID)を含む)
カラム :独国J&W Scientific社製キャピラ
リーカラムDB−1701(0.25mm×30m)
キャリアガス:ヘリウム
溶離液の流速:20ml/min
分析法 :50℃で10分保持後、10℃/分で300℃ま
で昇温した後、300℃で5分保持
得られた反応生成物の蒸留を行うことにより、純度99.5%以上のシクロヘキシルアミンを得た。
ケイ酸塩水溶液(SiO2=29.9重量%)150gに、10%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液180gを加え、さらに硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)4gと水40gを加えて10分間攪拌した。その後、その溶液を強攪拌しながら濃硝酸を滴下してpHを10〜10.5に調節して均一なゲルを得た。このゲルを攪拌機付1lオートクレーブに入れ、180℃で24時間攪拌した。こうして得られた生成物を充分な量のイオン交換水で洗浄した後、120℃で10時間乾燥した。この生成物は、X線回折によりZSM−5と同定された。また、ケイ光X線分析により求めたアルミナに対するシリカのモル比は60であった。
次に、内容積1000mlの攪拌機付オートクレーブに水280g、前工程で得られたシクロヘキセン30g、及び上記で得られた触媒20gを仕込み、100℃で1時間攪拌しながら反応させた。反応後、生成物をGCで分析した結果、シクロヘキセン転化率は12.4%、シクロヘキサノール選択率は99.6%であった。
測定装置:日本国島津製作所GC−14A型ガスクロマトグ
ラフ(炎イオン化検出器(FID)を含む)
カラム :日本国信和化工製キャピラリーカラムULBON
HR−20M(0.25mm×25m)
キャリアガス:ヘリウム
溶離液の流速:20ml/min
分析法 :50℃で5分保持後、10℃/分で230℃まで
昇温した後、230℃で5分保持
得られた反応生成物の蒸留を行うことにより、純度99.5%以上のシクロヘキサノールを得た。
日本国N.Eケムキャット社製のRu/Al2O3触媒(活性成分であるルテニウムの含有量:5重量%)0.1g、シクロヘキサノール5gを内容積100mlのオートクレーブに仕込み、攪拌下、120℃で水素加圧下、全圧3MPaにおいて1時間の前処理を行った。その後、放冷、脱圧し、25%アンモニア水6.8gを仕込み、攪拌しながら、180℃で水素加圧下、全圧を3MPaとして反応させた。4時間後、この反応液を抜き出し、GCにより組成を分析した結果、シクロヘキサノール転化率74.5%、シクロヘキシルアミン選択率99.3%であった。また、副生物としてジシクロヘキシルアミンが選択率0.5%で生成された。尚、GCによる分析は上記工程2−1)のシクロヘキセンのアミノ化の場合と同様の条件で行った。
この反応生成物の蒸留を行うことにより、純度99.5%以上のシクロヘキシルアミンを得た。
市販のアルミニウム−セカンダリーブトキサイド100gをビーカーに入れ、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(市販のメタタングステン酸アンモニウム7.0gを100gの水に溶解して水溶液としたもの)をガラス棒で激しく攪拌しながら少量ずつ滴下した。生成したゲル状生成物を常温下で1時間乾燥した後、120℃において一晩真空乾燥させた。次いで、乾燥物を常圧空気気流下、400℃で4時間焼成処理を行い、酸化タングステンを組み合わせたアルミナ触媒を得た。これを蛍光X線で分析したところ、タングステンを21.8重量%含んでいた。触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径に篩い分けし、反応に用いた。
実施例1は、出発原料のベンゼンからシクロヘキサノンオキシムを製造するための全反応工程数は3工程(ベンゼンの部分水素化、シクロヘキセンのアミノ化、シクロヘキシルアミンの部分酸化)又は4工程(ベンゼンの部分水素化、シクロヘキセンの水和、シクロヘキサノールのアミノ化、シクロヘキシルアミンの部分酸化)であった。
シクロヘキサノンオキシム選択率(%)
=(生成シクロヘキセンモル数/転化ベンゼンモル数)×(生成シクロヘキシルアミンモル数/転化シクロヘキセンモル数)×(生成シクロヘキサノンオキシムモル数/転化シクロヘキシルアミンモル数)×100
全炭素回収率(%)
=(生成シクロヘキセンモル数/転化ベンゼンモル数)×(生成シクロヘキシルアミンモル数/転化シクロヘキセンモル数)×(生成シクロヘキサノンオキシムモル数/転化シクロヘキシルアミンモル数+生成シクロヘキサノンモル数/転化シクロヘキシルアミンモル数)×100+(生成シクロヘキサンモル数/転化ベンゼンモル数)×100
上記工程2−1)で得られたシクロヘキシルアミンを用いてシクロヘキサノンオキシムを製造した場合の、シクロヘキサノンオキシムの選択率は76.0%であり、有用物質としての全炭素回収率は93.8%(シクロヘキサノンオキシム:76.0%+シクロヘキサン:13.4%+シクロヘキサノン:4.4%)であった。
また、上記各工程によって得られたシクロヘキサノンオキシム中には、ナイロン−6等の中間体として用いられるε−カプロラクタムの製造に用いた際に、ε−カプロラクタムの品質に悪影響を与える不純物(シクロヘキシルブチルエーテル、n−ペンチルシクロヘキサン、酢酸シクロヘキシル、ヘキサヒドロベンズアルデヒド等)は含まれていなかった。
ベンゼンを完全水素化して得たシクロヘキサンから、空気酸化、脱水素を行ってシクロヘキサノンを得、別途、日本国特開昭58−50925号公報に記載の方法に従ってヒドロキシルアミン硫酸塩を合成し、得られたシクロヘキサノンを得られたヒドロキシルアミン硫酸塩を用いてオキシム化し、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキサノンの合成、及びそのオキシム化は、以下のようにして行った。
ガス導入口を備えた内容積1000mlのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン600g、及び触媒として、ナフテン酸コバルトを金属原子として1ppm(対シクロヘキサン)になるように仕込み、酸素−窒素混合ガス(容量比O2:N2=1:9)を1000ml/分(N.T.P.換算)の割合で流通させ、反応液を攪拌しながら、150℃、1MPaで40分反応させ、引き続き前記混合ガスを窒素に切り換えて30分放置した。排ガスは同伴する反応液を冷却、凝縮してオートクレーブ内に戻した後、大気中に廃棄した。反応生成物をGCで分析した結果、シクロヘキサン転化率は4.0%、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノン選択率は75.8%(シクロヘキサノール/シクロヘキサン生成比=6/4)であった。尚、GCによる分析は上記工程2−2a)のシクロヘキセンの水和の場合と同様の条件で行った。また、副生成物の組成を以下の条件でGCで分析したところ、カルボン酸類、アルデヒド類、シクロヘキサノン以外のケトン類、エステル類、エーテル類、シクロヘキサノール以外のアルコール類、シクロヘキサン以外の炭化水素等であった。
ラフ(炎イオン化検出器(FID)を含む)
カラム :独国J&W Scientific社製キャピラ
リーカラムDB−1(0.25mm×30m)
キャリアガス:ヘリウム
溶離液の流速:20ml/min
分析法 :50℃で5分保持後、10℃/分で350℃ま
で昇温した後、350℃で5分保持
内径30mmのステンレス製管状反応器に、Cu−Cr系酸化物粒状触媒を充填し、水素/窒素混合ガスにより触媒の還元処理を行った後、入口及び出口温度を265℃に保って、0.12MPaの圧力下、前工程で得られたシクロヘキサノールを予熱気化させ、LHSV(liquidhourly space velocity)0.1l/触媒l/hrの速度で供給し、10時間反応させた。1時間毎に反応液を回収し、GCで分析した。シクロヘキサノールの転化率は71.2%、シクロヘキサノンの選択率は97.3%であった。尚、GCによる分析は上記工程2−2a)のシクロヘキセンの水和の場合と同様の条件で行った。
得られた反応生成物の蒸留を行うことにより、純度99%のシクロヘキサノンを得た。
内容積200mlのガラス製攪拌槽に、別途アンモニアから合成された37重量%ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液68.1gを仕込み、90℃に保って、前工程で得られたシクロヘキサノン14.7gと、反応液のpHが5〜7になるように、アンモニア水を同時に添加し、30分間反応させた後、反応液の組成をGCで分析した。シクロヘキサノンの転化率は95.7%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は99.3%であった。尚、GCによる分析は上記工程2−1)のシクロヘキセンのアミノ化の場合と同様の条件で行った。
比較例1のベンゼンからシクロヘキサノンオキシムを製造するための全反応工程数は、ベンゼン水素化、及びヒドロキシルアミン製造工程を含めると5工程であった。また、実施例1と同様にして求めた、各工程の選択率に基づくシクロヘキサノンオキシムの選択率は74.1%であり、シクロヘキサノンオキシム以外の有用物質は得られなかったので、有用物質としての全炭素回収率も74.1%であった(通常、ベンゼン水素化反応の選択率は非常に高いことが知られているので、ベンゼン水素化反応の選択率は100%と仮定した)。
Claims (8)
- 下記の工程(1)〜(3)を包含することを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
(1)ベンゼンを部分水素化することによってシクロヘキセンを得る工程、またはベンゼンを部分水素化して得られたシクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを得る工程。
(2)得られたシクロヘキセン又はシクロヘキサノールをアミノ化してシクロヘキシルアミンを得る工程。
(3)得られたシクロヘキシルアミンを分子状酸素により部分酸化してシクロヘキサノンオキシムを得る工程。 - 該ベンゼンの部分水素化を、周期律表第8,9及び10族に属する金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む水素化触媒、及び水の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 該ベンゼンの部分水素化を、(i)平均結晶子径が200Å以下である金属ルテニウム、及び場合によっては亜鉛化合物を含有する水素化触媒、(ii)水、及び(iii)ジルコニウムもしくはハフニウムの酸化物、水溶性亜鉛化合物、及び固体塩基性硫酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で、中性又は酸性条件下に液相において行い、該水素化触媒が非担持型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 該シクロヘキセンの水和を、水和触媒としてのゼオライトの存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 該ゼオライトがZSM−5型ゼオライトからなる群より選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 工程(2)における該シクロヘキセンのアミノ化を、固体酸、周期律表1〜10族に属する金属、及び該金属の化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むアミノ化触媒(a)の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 該アミノ化触媒(a)がゼオライトであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 工程(2)における該シクロヘキサノールのアミノ化を、周期律表第8、9および10族に属する元素、クロム、銅、銀、亜鉛及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むアミノ化触媒(b)の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
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