【発明の詳細な説明】
エラスターゼ抑制剤としての4−置換セフェム誘導体
本発明は、新規なセフェム誘導体、その製造、並びにそれらを含有する医薬組
成物および獣医学的組成物に関するものである。ここに開示するセフェム誘導体
の独特な構造上の特徴は、セフェム環のC−2位置にヘテロサイクルイル−チオ
基(heterocyclyl-thio group )もしくはアシルオキシ基(下式Iにおける−X
)およびC−4位置にエステル、チオエステルもしくはアミド基(式Iにおける
−COQ)が同時に存在することである。
本発明によれば、式(I)
[式中、nは1もしくは2であり;
Xは
(1)ヘテロサイクルイル−チオ基(ここでヘテロサイクルイル基は少なくとも
1個のO、SおよびNから選択されるヘテロ
原子を有する適宜置換された3−6員の飽和もしくは不飽和複素環であって、必
要に応じ5−6員の第2の飽和もしくは不飽和ヘテロサイクルイル基またはC3
〜C8シクロアルキル基またはシクロペンテニル基またはC6〜C10アリール基に
融合している);
(2)アシルオキシ基−O−C(O)A(ここでAはC1〜C12直鎖もしくは分
枝鎖アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C6〜C14アリー
ル、C3〜C8シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニルもしくはC7〜C18ア
ラルキル、C8〜C18アラルケニル、C8〜C18アラルキニル、(シクロアルキル
)アルキル、(シクロアルキル)アルケニル、ヘテロサイクルイル、(ヘテロサ
イクルイル)アルキル、(ヘテロサイクルイル)アルケニルから選択される有機
基である)
であり;
Qは基−OA、−SAもしくは−NAA′を示し、ここでAは上記の意味を有し
、A′は水素であるか或いはAにつき上記した意味(同一もしくは異なる)を有
し;またはAおよびA′はこれらが結合した窒素原子と一緒になって、必要に応
じN、OおよびSから選択されるヘテロ原子をさらに有する5−7員環
を示し;
R1およびR2は独立して以下の(1)〜(9)を示し:
(1)水素、クロロ、フルオロ、ブロモもしくはヨード;
(2)上記で規定したA;
(3)ヒドロキシ−OHもしくはエーテル−OA(ここでAは上記の意味を有す
る);
(4)チオエーテル、スルホキシドもしくはスルホン−S(O)mA(ここでm
は0、1もしくは2のいずれかであり、Aは上記の意味を有する);
(5)アシルオキシ−OC(O)A(ここでAは上記の意味を有する);
(6)アシル−C(O)Aもしくは−C(O)OA(ここでAは上記の意味を有
する);
(7)スルホニルオキシ−OS(O)2A(ここでAは上記の意味を有する);
(8)アセチルアミノもしくはトリフルオロアセトアミドまたはアシルアミノ基
ZNH−CHR−CONH−(ここでRはメチル、エチル、イソプロピル Me2
CH−、EtMeCH−、Me2CHCH2−、EtMeCHCH2−であり、Z
は水素であるか;或いは
− フェニルカルボニルまたはフェノキシメチルカルボニルもしくはフェノキシ
メチルカルボニル[ここで、フェニル環は未置換または1個もしくは2個のクロ
ロ、フルオロもしくはメチル基により置換され、または次の基から選択される基
により置換され:(a)−カルボキシ、
(b)−OCH2CO2H、
(c)−OCH2CH2−4−モルホリニル、
(d)−OCH2CH2−1−ピロリジニル、
(e)−SO2−1−モルホリニル、
(f)−SO2−(4−メチル)−1−ピペラジニル、
(g)−SO2N(Me)CH2CH2NMe2、
(h)−CONH−CO−1−モルホリニル、
(i)−CO−1−モルホリニル、
(j)−CO−(4−メチル)−1−ピペラジニル、
(k)−CONH−CH2CH2−1−モルホリニル、
(l)−COO−CH2CH2−1−モルホリニル、
(m)−SO2NH−ArもしくはCONHSO2−Ar(ここでArは未置換ま
たはCl、Fもしくはカルボキシにより置換されたフェニル環であり、前記カル
ボキシは必要に応じエチ
ルエステルCOOC2H5またはアミドCONH2、CONHCH3、CONHCH2
CO2Hとして存在する)];
− アミノ封鎖基(amino-blocking group)であり(当該アミノ封鎖基は上記(
e)、(f)、(g)、(i)、(k)、(l)よりなる群から選択されるか、
または次の基:メチル、ジメチル、ベンジル、CO2CH3、COSCH3、SO2
CH3から選択される);
(9)アジド、ニトロもしくはシアノ;
または
R1およびR2は一緒になって、オキソ基(=O)、または式=CHA′、=CH
C(O)A′、=CHC(O)OA′もしくは=CHS(O)2A(ここでAお
よびA′は上記の意味を有する)の基を構成し;
R3は以下の(1)〜(13)を示す:
(1)上記で規定されたA′;
(2)クロロもしくはフルオロ;
(3)スルフェニル、スルフィニルもしくはスルホニル基S(O)mA(ここで
mおよびAは上記の意味を有する);
(4)エーテル基−O−A(ここでAは上記の意味を有する);
(5)アシル基−C(O)A、−C(O)OAもしくは−C
O2H(ここでAは上記の意味を有する);
(6)オキシメチル基−CH2−OA′(ここでA′は上記の意味を有する);
(7)チオメチル基または式−CH2S(O)mA(ここでmおよびAは上記の意
味を有する)を有するチオメチル基の誘導体;
(8)アシルオキシメチル基−CH2OC(O)A′(ここでA′は上記の意味
を有する);
(9)アシルチオメチル基−CH2SC(O)A(ここでAは上記の意味を有す
る);
(10)カルバモイルオキシメチル−CH2OCONH2またはカルバモイルチオ
メチル(すなわち−CH2SCONH2)、並びにそのN−メチルおよびN,N−
ジメチル誘導体;
(11)アミノメチル基−CH2−N(A)A′(ここでAおよびA′は上記の
意味を有する);
(12)アンモニオメチル−CH2N+(A)(A′)A″(ここでAおよびA′
は上記の意味を有し、A″はAにつき上記した意味(同一もしくは異なる)を有
し、またはAはアルキルであり、A′およびA″はこれらが結合した窒素原子と
一緒
になって1個の窒素を有すると共に必要に応じ1個の酸素もしくは硫黄原子を有
する5−7員環を示す);
(13)アシルアミノメチル基−CH2NH−C(O)A(ここでAは上記の意
味を有する)]
のセフェムスルホキシドもしくはスルホン、並びにその医薬上および獣医学上許
容しうる塩が提供される。
3−6員の飽和もしくは不飽和ヘテロサイクルイル環はたとえばピロリル、ピ
ロリジル、ピロリニル、ピラゾリル、ピラゾリジル、ピラゾリニル、イミダゾリ
ル、イミダゾリジル、イミダゾリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾ
リル、オキサゾリジル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジ
ル、イソオキサゾリニル、チアゾリル、チアゾリジル、チアゾリニル、イソチア
ゾリル、イソチアゾリジル、イソチアゾリニル、チアジアゾリル、チエニル、フ
リル、アジリジニル、オキシラニル、アジリジニル、ピリジニル、ピペリジル、
ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピラニル、ピリダジニル、モルホリ
ニル、チアモルホリニルである。融合ヘテロサイクルイル環はたとえばベンゾチ
エニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソベンゾフラニル、ベンゾ
フラニル、ク
ロメニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、シンノリニル、イン
ダゾリル、プリニル、ベンゾピリジル、ベンゾピペリジル、ピリンジニル(pyrin
dinyl)、ジヒドロ−ピリニジニル、(テトラゾロ)ピリダジニルである。
C1〜C12アルキル基は直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、たとえばメチル、エ
チル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル
、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどである。
C2〜C12アルケニル基は直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、たとえばビニル
、アリル、クロチル、2−メチル−1−プロペニル、1−メチル−1−プロペニ
ル、ブテニル、ペンテニルなどである。
C2〜C12アルキニル基は直鎖もしくは分枝鎖アルキニル基、たとえばエチニ
ル、プロパルギル、1−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニルなどである。
C6〜C14アリール基は単環式、二環式もしくは三環式の6〜14個の炭素原
子を有する芳香族炭化水素基、たとえばフェニル、ナフチル、フェナントリルも
しくはアントリルである。
C3〜C8シクロアルキル基は3〜6個の炭素原子を有する
飽和炭素環式基、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シ
クロヘキシルなどである。
C5〜C8シクロアルケニル基は不飽和炭素環式基、たとえばシクロペンテニル
、シクロヘキセニルなどである。
C7〜C18アラルキル基は、6〜14個の炭素原子を有する単環式、二環式も
しくは三環式芳香族炭化水素基に結合した1〜4個の炭素原子を有するアルキル
基である。アラルキル基の例はベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチルおよ
びアントリルメチルである。
C8〜C18アラルケニル基は、6〜14個の炭素原子を有する単環式、二環式
もしくは三環式芳香族炭化水素基に結合した2〜4個の炭素原子を有するアルケ
ニル基である。アラルケニル基の例はスチリル、2−フェニル−1−プロペニル
、3−フェニル−2−ブテニル、2−ナフチルエテニル、アントリルエテニルな
どである。
C8〜C18アラルキニル基は、6〜10個の炭素原子を有する単環式、二環式
もしくは三環式芳香族炭化水素基に結合した2〜4個の炭素原子を有するアルキ
ニル基である。アラルキニル基の例は2−フェニルエチニル、2−ナフチルエチ
ニル、ア
ントリルエチニルなどである。
(シクロアルキル)アルキル基は、上記C3〜C8シクロアルキル基に結合した
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
(シクロアルキル)アルケニル基は、上記C3〜C8シクロアルキル基に結合し
た2〜4個の炭素原子を有するアルケニル基である。
ヘテロサイクルイル基は上記した3−6員の飽和もしくは不飽和ヘテロサイク
ルイル環であって、必要に応じ上記第2の5−6員ヘテロサイクルイル環、C3
〜C8シクロアルキル基、シクロペンテニル基または上記C6〜C10アリール基に
融合する。
(ヘテロサイクルイル)アルキル基は、上記ヘテロサイクルイル基に結合した
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
(ヘテロサイクルイル)アルケニル基は、上記ヘテロサイクルイル基に結合し
た2〜4個の炭素原子を有するアルケニル基である。
ハロゲン(もしくはハロ)という用語は好ましくは弗素、塩
素もしくは臭素を包含する。
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル
、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、(シクロアルキル)ア
ルキル、(シクロアルキル)アルケニル、ヘテロサイクルイル、(ヘテロサイク
ルイル)アルキル、(ヘテロサイクルイル)アルケニル基は未置換または1個も
しくはそれ以上の次のものから選択される置換基により置換することができる:
− ハロ(すなわちフルオロ、ブロモ、クロロもしくはヨード);
− ヒドロキシ;
− ニトロ;
− アジド;
− メルカプト(−SH);
− アミノ(すなわち−NH2または−NHRiもしくは−NRiRii(ここでRi
およびRiiは同一もしくは異なるものであって、C1〜C12直鎖もしくは分枝鎖
アルキルまたはフェニルもしくはベンジルである));
− ホルミル(すなわち−CHO);
− シアノ;
− オキソ(すなわち=O)もしくはイミノ(すなわち=NH);
− カルボキシ(アルキル)(すなわち(CH2)tCOOHもしくは(CH2)t
COORi(ここでRiは上記の意味を有し、tは0、1、2もしくは3である)
);
− スルホ(すなわち−SO3H);
− アシル(すなわち−C(O)Ri(ここでRiは上記の意味を有する))また
はトリフルオロアセチル(すなわち−C(O)CF3);
− カルバモイル(すなわち−CONH2);N−メチルカルバモイル(すなわ
ち−CONHCH3)、N,N−ジメチルカルバモイル、またはN−カルボキシ
メチルカルバモイル(すなわち−CONHCH2COOH);
− カルバモイルオキシ(すなわち−OCONH2);
− アシルオキシ(すなわち−OC(O)Ri(ここでRiは上記の意味を有する
))またはホルミルオキシ(すなわち−OC(O)H);
− アルコキシカルボニルもしくはベンジルオキシカルボニル
(すなわち−C(O)ORi(ここでRiは上記の意味を有する));
− アルコキシカルボニルオキシもしくはベンジルオキシカルボニルオキシ(す
なわち−OC(O)ORi(ここでRiは上記の意味を有する));
− アルコキシ、フェノキシもしくはベンジルオキシ(すなわち−ORi(ここ
でRiは上記の意味を有する));
− アルキルチオ、フェニルチオもしくはベンジルチオ(すなわち−SRi(こ
こでRiは上記の意味を有する));
− アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニルもしくはベンジルスルフィニ
ル(すなわち−S(O)Ri(ここでRiは上記の意味を有する));
− アルキルスルホニル、フェニルスルホニルもしくはベンジルスルホニル(す
なわち−S(O)2Ri(ここでRiは上記の意味を有する));
− アシルアミノ−NHC(O)Riiiもしくは−NHC(O)ORiii(ここで
RiiiはC1〜C12直鎖もしくは分枝鎖アルキル、フェニル、ベンジル、CH2C
H2COOHもしくはCH2CH2CH2COOHである));
− スルホンアミド(すなわち−NHSO2Ri(ここでRiは上記の意味を有す
る));
− スルファモイルアミノ(すなわち−NHSO2NH2);
− ウレイド(すなわち−NHCONH2);
− グアニジノ(すなわち−NHC(=NH)NH2);
− C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルもしくはアルキニル;
− C3〜C6シクロアルキル;
− クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、
アミノメチル、N,N−ジメチルアミノメチル、アジドメチル、シアノメチル、
カルボキシメチル、スルホメチル、カルバモイルメチル、カルバモイルオキシメ
チル、ヒドロキシメチル、C1〜C4アルキルオキシカルボニルメチル、グアニジ
ノメチルから選択される置換メチル。
さらに本発明は、1個もしくはそれ以上のカルボキシ、アミノ、ヒドロキシも
しくはメルカプト基に保護基を有する式Iの化合物の誘導体をも包含する。存在
しうるカルボキシ保護基は低級アルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル
、イソプロピルもしくはt−ブチル;ハロゲン化低級アルキル基、たと
えば2,2,2−トリクロロエチルもしくは2,2,2−トリフルオロエチル;
低級アルカノイルオキシアルキル基、たとえばアセトキシメチル、プロピオニル
オキシメチル、ピバロイルオキシメチル、1−アセトキシエチル、1−プロピオ
ニルオキシエチル;低級アルコキシカルボニルオキシアルキル基、たとえば1−
(メトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)エチ
ル、1−(イソプロポキシカルボニルオキシ)エチル;低級アルケニル基、たと
えば2−プロペニル、2−クロロ−2−プロペニル、3−メトキシカルボニル−
2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、シンナミル;ア
ラルキル基、たとえばベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベ
ンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、ベンズヒドリル、ビス(p
−メトキシフェニル)メチル;(5−置換2−オキソ−1,3−ジオキソール−
4−イル)メチル基、たとえば(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソー
ル−4−イル)メチル;低級アルキルシリル基、たとえばトリメチルシリル、t
−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル;
またはインダニル基、フタリジル基、ピラニル基、メトキシメチル
もしくはメチルチオメチルまたは2−メトキシエトキシメチル基とすることがで
きる。t−ブチル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、ベンズ
ヒドリル基、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル基または
プロペニル基が特に好適である。
存在しうるアミノ、ヒドロキシもしくはメルカプト保護基は一般にこの種の機
能につきペニシリンおよびセファロスポリンの化学で用いられるものとすること
ができる。これらは、たとえば適宜置換された(特にハロ置換された)アシル基
、たとえばアセチル、モノクロロアセチル、ジクロロアセチル、トリフルオロア
セチル、ベンゾイルもしくはp−ブロモフェナシル;トリアリールメチル基、た
とえばトリフェニルメチル;シリル基、特にトリメチルシリル、ジメチル−t−
ブチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリル;またはたとえばt−ブトキシカ
ルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエト
キシカルボニル、ベンジルおよびピラニルのような基とすることができる。ヒド
ロキシ基の好適保護基はp−ニトロベンジルオキシカルボニル;アリルオキシカ
ルボニル;ジメチル−t−ブチルシリル;ジフェニル−t−ブチルシリル;
トリメチルシリル;2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル;ベンジル;ジ
メトキシベンジル;p−メトキシベンジルオキシカルボニル;p−ブロモフェナ
シル;トリフェニルメチル、ピラニル、メトキシメチル、ベンズヒドリル、2−
メトキシエトキシメチル、ホルミル、アセチルおよびトリクロロアセチルとする
ことができる。
さらに本発明は、塩形成基(salt-forming groups)を有する式(I)の化合物
の塩、特にカルボキシル基、塩基性基(たとえばアミノ基もしくはグアニジノ基
)または第四級アンモニウム基を有する化合物の塩をも包含する。これら塩は特
に生理学上許容しうる塩、たとえばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩(
たとえばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩およびマグネシ
ウム塩)、アンモニウム塩、並びに適する有機アミンもしくはアミノ酸との塩(
たとえばアルギニン塩、プロカイン塩)、さらに適する有機酸もしくは無機酸、
たとえば塩酸、硫酸、カルボン酸および有機スルホン酸(たとえば酢酸、トリフ
ルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸)で形成された付加塩である。カルボキシ
レート基およびアンモニウム基を有する式(I)の或る種の化合物は双性イオン
として存
在することができ、この種の塩も本発明の1部である。
さらに式(I)の化合物の生理学的に加水分解しうるエステル、水和物および
溶媒和物も本発明の範囲に包含される。化合物(I)の生理学的に加水分解しう
るエステルはたとえばメトキシカルボニルメチル、1−メトキシカルボニルオキ
シ−1−エチル、インダニル、フタリジル、メトキシメチル、ピバロイルオキシ
メチル、グリシルオキシメチル、フェニルグリシルオキシメチルまたは5−メチ
ル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルエステル、並びにペニシリン
およびセファロスポリン抗生物質につき広く使用されている他の生理学的に加水
分解しうるエステルを包含し得;より好ましくはメトキシカルボニルオキシメチ
ル、1−メトキシカルボニルオキシ−1−エチル、メトキシメチルまたはピバロ
イルオキシメチルであり;特に好ましくはメトキシカルボニルオキシメチルもし
くはメトキシメチルである。式(I)のセファロスポリン化合物の典型的な溶媒
和物は、たとえばメタノール、エタノール、アセトンもしくはアセトニトリルな
どの水混和性溶媒との溶媒和物を包含し得、より好ましくはエタノールとの溶媒
和物である。
さらに本発明は、その範囲内に、医薬上もしくは獣医学上許
容しうる希釈剤もしくはキャリヤと組合せて、1種もしくはそれ以上の化合物(
I)またはその医薬上もしくは獣医学上許容しうる塩を活性成分として含む医薬
組成物もしくは獣医学的組成物をも包含する。必要に応じ賦形剤または他の添加
剤も存在させることができる。
本発明はあらゆる可能な立体異性体、並びにそのラセミ混合物または光学活性
混合物をも包含する。
特に好適な化合物は、
nが2であり;
Xが
(1′)適宜置換されたヘテロサイクルイル−チオ基(ここでヘテロサイクルイ
ル基はピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オ
キサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル
、チエニル、フリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、
ピリダジニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソ
ベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、インドリル、インドリジニル、
イソインドリル、シンノリニル、インダゾリル、プリニル、ベンゾピリジル、ベ
ンゾ
ピペリジル、(シクロペンタノ)ピリジル、(シクロペンテノ)ピリジル、(テ
トラゾロ)ピリダジニルから選択される不飽和ヘテロサイクルイル環である);
(2′)基−O−C(O)A(ここでAは適宜置換されたC1〜C12直鎖もしく
は分枝鎖アルキル、C2〜C12直鎖もしくは分枝鎖アルケニル、C2〜C12アルキ
ニル、C3〜C6シクロアルキル、C6〜C14アリール、ベンジル、ジフェニルメ
チル、スチリル、2−フェニル−2−プロピルから選択されるか;または適宜置
換されたヘテロサイクルイル基から選択され、ここでヘテロサイクルイル基は上
記(1′)に特定した不飽和ヘテロサイクルイル基の1種であるか、またはN、
OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3−6員の飽和環であ
り、好ましくはピロリニル、アジリジニル、ピペリジル、オキシラニル、テトラ
ヒドロピラニル、モルホリニルである)を示し;
上記ヘテロサイクルイル基および基Aのための置換基はフルオロ、クロロ、ブ
ロモ、ニトロ、シアノ、スルホ、カルボキシ、テトラゾリル、C1〜C4アルコキ
シカルボニル、カルバモイル、スルファモイル、カルバモイルオキシ、ヒドロキ
シ、C1
〜C4アルコキシ、ベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキシ、フェノキシ、アセ
トキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾキシ、メチルチオ、フェニルチオ、メタンス
ルホニル、ベンゼンスルホニル、スルホメチル、カルボキシメチル、カルボキシ
エチル、カルボキシプロピル、カルボキシメチルチオ、カルボキシフェニルC6
H5−COOH、カルボキシベンジルCH2−C6H5−COOH、アセチル、トリ
フルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイル、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチ
ルアミノ、ジメチルアミノエチル、ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロ
アセトアミド、ピバルアミド、オキソ、C1〜C5直鎖もしくは分枝鎖アルキル、
ビニルおよびアリルから選択され;Qが基−OA、−SAもしくは−NAA′を
示し、ここでAは上記の意味を有し、A′は水素であるか或いはAにつき上記し
た意味(同一もしくは異なる)を有し;またはAおよびA′はこれらが結合した
窒素原子と一緒になって、必要に応じO、SおよびNから選択されるヘテロ原子
をさらに有する飽和5−6員環を示し、前記環もしくは前記基AおよびA′は未
置換または1個もしくはそれ以上の上記置換基により置換され;
R1およびR2がそれぞれ独立して以下の(1′)〜(12′)
であり:
(1′)水素、クロロ、フルオロもしくはブロモ;
(2′)直鎖もしくは分枝鎖C1〜C5アルキルもしくはC1〜C5アルケニル;よ
り好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル;
(3′)C1〜C5アルキルオキシもしくはC6〜C10アリールオキシ;より好ま
しくはメトキシもしくはフェノキシ;
(4′)C1〜C5アルキルチオもしくはC6〜C10アリールチオ;より好ましく
はメチルチオもしくはフェニルチオ;
(5′)C1〜C5アルキルスルフィニル、C2〜C5アルケニルスルフィニル、C6
〜C10アリールスルフィニル;より好ましくはメチルスルフィニルもしくはフ
ェニルスルフィニル;
(6′)C1〜C5アルキルスルホニルもしくはC6〜C10アリールスルホニル;
より好ましくはメチルスルホニルもしくはフェニルスルホニル;
(7′)C1〜C5アルキルカルボニルもしくはC6〜C10アリールカルボニル;
より好ましくはアセチルもしくはベンゾイル;
(8′)C1〜C5アルキルカルボニルオキシもしくはC6〜
C10アリールカルボニルオキシ;より好ましくはアセトキシもしくはベンゾイル
オキシ;
(9′)C1〜C5アルキルスルホニルオキシもしくはC6〜C10アリールスルホ
ニルオキシ;より好ましくはメタンスルホニルオキシもしくはベンゼンスルホニ
ルオキシ;
(10′)アセトアミドもしくはトリフルオロアセトアミド;
(11′)ニトロ、アジド、シアノ、ホルミルオキシ;
(12′)L−アミノ酸から誘導されるアシルアミノ基ZNH−CHR−CON
H(ここでZは
− フェノキシカルボニル;
− 4−クロロフェノキシカルボニル;
− ベンジルオキシカルボニル;
− 4−クロロベンジルオキシカルボニル;
− 4−[(1−モルホリニル)カルボニル]ベンジルオキシカルボニル;
− (1−モルホリニル)カルボニル;
− 4−[(2−カルボキシフェニルアミノスルホニル]ベンジルオキシカル
ボニル;
− 4−[(4−クロロ)フェニルスルホニルアミノ]ベン
ゾイルである);
より好ましくはRはメチル基であり;
またはR1およびR2が一緒になってオキソ基またはメチレン基または式=CHY
もしくは=CHC(O)Yもしくは=CHC(O)OYまたは=CHS(O)2
Yの基を構成し、ここでYはC1〜C5アルキル、C1〜C5アルケニル、C6〜C1 0
アリール、C7〜C10アラルキルもしくはヘテロサイクルイルであり、ヘテロサ
イクルイルはXの規定(1′)にて詳記したヘテロサイクルイル基の1種であり
;(2′)〜(9′)で規定した基のための置換基はフルオロ、クロロ、ブロモ
、ニトロ、シアノ、スルホ、カルボキシ、テトラゾリル、C1〜C4アルコキシカ
ルボニル、カルバモイル、スルファモイル、カルバモイルオキシ、メタンスルホ
ニル、ヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ、ベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキ
シ、フェノキシ、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾキシ、メチルチオ、フ
ェニルチオ、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、スルホメチル、カルボキ
シメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、カルボキシメチルチオ、カ
ルボキシフェニルC6H5−COOH、カルボキシベンジルCH2−C6H5−CO
OH、
アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイル、アミノ、ジメチル
アミノ、ジエチルアミノ、ジメチルアミノエチル、ホルムアミド、アセトアミド
、トリフルオロアセトアド、ピバルアミド、オキソ、C1〜C5直鎖もしくは分枝
鎖アルキル、ビニルおよびアリルから選択され;
R3が水素、または以下の(1′)〜(10′)である:
(1′)メチル、エチル、プロピル、フェニルもしくはベンジル(これらは、ク
ロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、カルバモイルオキシ、カルボキシから選
択される基により適宜置換される);
(2′)クロロ;
(3′)メチルチオ;
(4′)メトキシもしくはベンジルオキシ;
(5′)ホルミル、アセチル、ベンゾイル、カルボキシ、メトキシカルボニル、
エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルもしくはベンジルオキシカルボニ
ル;
(6′)メトキシメチル、エトキシメチル、イソプロポキシメチル;またはベン
ジルオキシメチル、フェノキシメチル、3−ピリジルオキシメチル(ここでフェ
ニル環およびピリジル環は
未置換、またはヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、ハロゲンおよびC1〜C4アル
コキシカルボニルから選択される1個の基または2個の同一もしくは異なる基に
より置換される);
(7′)メチルチオメチル、メチルスルフィニルメチルもしくはメチルスルホニ
ルメチル;またはヘテロサイクルイルチオメチル基(ここでヘテロサイクルイル
環はXの規定(1′)にて上記したものの1種であり、この基は未置換または次
のものから選択される1個もしくは2個の同一もしくは異なる基により置換され
る:ヒドロキシ、オキソ、アミノ、イミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ア
セチルアミノ、スルホ、カルボキシ、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメ
チルカルバモイル、カルバモイルオキシ、ジメチルアミノメチル、カルボキシメ
チル、カルボキシメチルチオ、シアノ、シアノメチル、ニトロ、メトキシ、フェ
ノキシ、ベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキシ、メチルチオ、メチルスルホニ
ル、アセトキシ、ベンゾキシ、ハロゲンまたはC1〜C4アルキルもしくはアルケ
ニル);
(8′)アセトキシメチル、ベンゾイルオキシメチル、フェニルアセトキシメチ
ルまたはC3〜C6アルカノイルオキシメチル(ここで上記の各基は未置換または
カルボキシ、カルボキシ
メチル、ヒドロキシ、C1〜C3アルコキシ、カルバモイルから選択される1個も
しくはそれ以上の基により置換される);
(9′)カルバモイルオキシメチル−CH2OCONH2;
(10′)トリアルキルアンモニオメチル(ここでアルキル基はメチル、エチル
もしくはプロピルから選択される);N−メチルピロリジニオメチル;N−メチ
ルピペリジニオメチル;N−メチルモルホリニオメチル;ピリジニオメチル(こ
れは未置換であるかまたはフルオロ、クロロ、メトキシ、ヒドロキシ、カルボキ
シもしくはカルバモイルにより複素環が置換される);である式(I)の化合物
、並びにその医薬上および獣医学上許容しうる塩、さらにその全ての可能な立体
異性体、たとえばエピマー、ジアステレオイソマー、幾何異性体、互変異性体で
ある。
本発明による好適化合物の特定例は第I表に示したものである。
さらに本発明は式(I)のセフェムスルホンの製造方法をも提供し、この方法
は
(i)式(II)
の化合物を、
(ia)n、Q、R1、R2およびR3が上記意味を有しかつLが離脱基である場合
は式(III)
X−M (III)
[式中、Xは上記の意味を有し、Mは水素または金属である]
の化合物と反応させ;または
(ib)n、Q、R1、R2およびR3が上記の意味を有しかつLが水素である場合
は式(IV)
X−X′ (IV)
[式中、Xは上記の意味を有し、X′はXにつき上記した意味(同一または異な
る)を有するか、或いはハロゲン(すなわち
弗素、塩素、臭素もしくは沃素)、C1〜C8アルキルスルホニル(たとえばメシ
ルもしくはトリフリル)、アリールスルホニル(たとえばトシルもしくはブロシ
ル)、イミド基(たとえばスクシンイミドもしくはフタルイミド)から選択され
る基、または式−OC(O)A、−OC(O)OA、−OS(O)2A、−OC
(O)NRivA(ここでAは上記の意味を有し、RivはフェニルもしくはC1〜
C4アルキル基である)の離脱基から選択される基である]
の化合物と反応させ;
(ii)所望ならば、nが1である式(I)の得られた化合物をnが2である対
応の化合物まで酸化させ;
(iii)所望ならば、式(I)の得られた化合物を医薬上もしくは獣医学上許
容しうる塩まで変換させる
ことからなっている。
工程(ia)において式(II)の離脱基Lは好ましくはハロゲン原子、好ま
しくは臭素、塩素もしくは沃素である。式(III)のMが水素であれば、反応
は一般に無機塩基もしくは有機塩基の存在下に行われる。これら外部塩基は一般
に、式(III)のMが金属(たとえばアルカリ金属もしくは重金属、
好ましくはハロ親和性(halophilic)金属、たとえば銀、銅、水銀、鉛)であれば
必要とされない。反応はたとえばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、クロロホ
ルム、ベンゼン、四塩化炭素、エチルエーテル、ジメトキシエタン、スルホラン
、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルピロリドン
、アセトン、水またはその混液のような広範囲の有機溶媒中で行うことができる
。反応温度は−50〜+120℃(好ましくは−20〜+80℃)の範囲である
。好適な外部塩基は脂肪族もしくは芳香族または脂環式のいずれかの第三級有機
塩基、たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アニリン、ピ
リジン、ルチジン、コリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−メチルピ
ロリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO);ま
たはたとえばアルカリ重炭酸塩もしくは炭酸塩、たとえば重炭酸ナトリウム、炭
酸カルシウム、炭酸セシウム、炭酸カリウムのような無機塩基である。たとえば
沃化ナトリウムもしくは沃化カリウムのようなアルカリ金属塩およびたとえばモ
レキュラシーブ、アルミナもしくは酸化カルシウムのよう
な添加剤を添加すると有利な作用が観察される。さらに反応はたとえば硝酸銀、
過塩素酸銀、銀トリフラート、硝酸銅、硝酸銀のような重金属塩の存在下に行う
こともできる。
工程(ib)は一般に、たとえば1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]ノ
ナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7
−エン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,4−ジアザ
ビシクロ[2,2,0]オクタン(DABCO)、N,N−ジイソプロピルエチ
ルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、トリエチルアミン、
ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリンなどの第三級脂肪族もしくは芳香族有
機塩基の存在下に行われる。反応はたとえばアセトニトリル、N,N−ジメチル
ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、スルホラン、N,
N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルピロリド
ンもしくはその混液のような広範囲の非プロトン有機溶媒中で行うことができる
。反応温度は−60〜+40℃、好ましくは−30℃〜室温の範囲である。
工程(ii)において、n=1である式(I)の化合物からn=2である対応
の化合物への酸化は、有機もしくは無機の過
酸またはその塩、好ましくは過酢酸、メタクロロ過安息香酸、過マレイン酸、過
フタル酸、オキソン、過硫酸ナトリウムもしくはカリウムを用いて行うことがで
きる。反応は広範囲の有機溶剤または有機溶剤と水との混液中て行うことができ
る。好適反応温度は−40〜+40℃の範囲である。
上記方法において、必要または所望ならば、任意の官能基を任意の段階で慣用
方法によりマスキングすることができ、最後に或いは便利な場合にマスキングを
解除しうることが了解されよう。さらに基R1、R2、R3、XおよびQは慣用方
法により上記した範囲内に含まれる異なる基まで、所望ならば最後に或いは上記
過程の任意の段階にて変換させうることも了解されよう。この変換または保護基
のマスキング/マスキング解除(unmasking)は、セファロスポリン抗生物質の化
学にて殆ど一般的である公知方法により行うことができる[たとえば「セファロ
スポリン・アンド・ペニシリン」、E.H.フリン編、参照]。
式(II)の化合物は公知であり、或いは公知化合物から調製することができ
る。式(III)および(IV)の化合物も公知化合物であるか或いは公知方法
により公知化合物から調製することができる。
本発明の化合物は、エラスターゼ(特にヒト白血球エラスターゼ(HLE)に
対する高い抑制活性(又は阻害活性)を特徴とする。特に、式(I)の化合物に
よるC−2における特徴的な置換パターンは、たとえばEP−A 267723
号およびWO 89/10926号に開示されたC−2未置換の対応化合物と比
べ抑制活性の予想外の向上をもたらした。すなわち、HLEの抑制剤(又は阻害
剤)として試験した場合、式(I)の代表的化合物は良好な「能力(potency)」
(定常状態におけるHLE−抑制剤複合体の見掛け解離定数の低い数値Ki SS)
および良好な「効率(efficiency)」(HLE−抑制剤複合体の生成速度の高い数
値k5/Ki)を示した。HLE抑制に対するこれら効カパラメータKi SSおよび
k5/Kiは酵素(E)と化合物(I)との相互作用を示す下式で規定され、これ
は発色性酵素基質(S)の存在下で監視される(プロトコール参照):
[式中、
E=酵素(HLE)
S=基質(プロトコール参照)
P=生成物(プロトコール参照)
I=抑制剤(式(I)の化合物)
EI=初期酵素:抑制剤複合体
EI*=最終酵素:抑制剤アダクト(失活酵素)
I*=転換生成物(失活抑制剤)]プロトコール
HLE(エラスチン・プロダクト・カンパニー)の速度論的パラメータを、3
7℃、0.027M(pH7.4)燐酸塩緩衝液、1%DMSO、1%MeCN
、NaCl(I=0.15)にて、N−メトキシスクシニル−アラニル−プロリ
ル−バリル−7−アミド−4−メチルクマリン(基質)からの7−アミノ−4−
メチルクマリンの遊離を監視し(蛍光検出)、次式により決定した:
[式中、
[P]、[I]、[S]=生成物、抑制剤および基質の濃度Vs=定常状態の速
度
Vz=時間0における速度
Vo=[I]=0における速度
Km=酵素基質対に関するミカエリス定数
(独立して同じ実験条件下で測定)]
実験プロトコールの完全な詳細についてはM.アルペギアニ等、ヨーロピアン
・ジャーナル・メジカル・ケミストリー(Eur.J.Med.Chem.)(1992)、
第27巻、第875〜890頁に報告されている。結果
第2表は、本発明の範囲内における2種の代表的化合物、すなわちXがアシル
オキシである式(I)の化合物(第1表にてNo.1)およびXがヘテロサイク
ルイル−チオである式(I)の化合物(第1表におけるNo.11)に関する上
記「能力」および「効率」パラメータを、従来技術の化合物、すなわちXが水素
である式(I)の化合物(対照)と対比して示す。この比較を一層有意義にする
ため、メルク・シャープ・アンド・ドーム(Merck Sharp & Dohme)によるHLE
−抑制剤に関する研究から得られたβ−ラクタム誘導体の1種(コード名L−6
59,286)[その生化学および動物薬理学が広範に報告されている、ボニー
等(1989)、第39巻、第47〜53頁]を対照として選択した。
結合組織の破壊から生ずる症状の処置におけるプロテアーゼ抑制剤療法の可能
性が最近格別の注目を集めている。肺気腫における主たる破壊因子であると思わ
れ、慢性関節リューマチにて重要な役割を演じている可能性があり、さらに恐ら
く数種の肺症状の特徴である炎症サイクルの自己永続性に関与するヒト白血球エ
ラスターゼ(HLE)の抑制剤に関する研究に多くの努力が払われている[J.
C.パワース、Am.
Rev.Resp.Dis、第127巻、第S54〜S58頁(1983);C
.H.ハサール等、FEBSレターズ、第183巻、第2号、第201頁(19
85);G.ワインバウムおよびV.V.ダミアノ、TIPS、第8巻、第6頁
(1987);M.ベルバート、リューマトロジー・インターナショナル(Rheum
atol.Int.)、第1巻、第121頁(1981)]。低分子量の抑制剤は、植物
源もしくは動物源からの天然の高分子量プロテアーゼ抑制剤よりも多くの利点を
有すると思われる:(1)これらは多量に得ることができ;(2)これらは合理
的に設計もしくは最適化することができ;(3)これらは抗原性でなく;さらに
(4)これらは経口的に或いはエーロゾルで使用することができる。これまで見
出された多くの低分子量エラスターゼ抑制剤は反応性官能基を有し(クロロメチ
ルケトン、イソシアネートなど);これらは蛋白質の官能基と反応し得、したが
って極めて毒性であり得る。この点に関し、ラクタム化合物は或る種のセリンプ
ロテアーゼに対し反応性であるが公知であるように極めて高い濃度においても無
毒性であるため大いに興味が持たれる。
本発明の化合物は、その高いエラスターゼ抑制活性およびそ
の全く無視しうる毒性のため、ヒトを含む哺乳動物にてエラスターゼ(特にHL
E)が病因、進行もしくは持続の任意の過程において関与する炎症性および退行
性(degenerative)疾患の予防および処置につき使用することができる。すなわち
、これら化合物を使用して肺および結合組織の蛋白分解を防止もしくは停止させ
、炎症を減少させ、気管支分泌過多を減少させ、さらに疼痛を緩和させるのに有
用な薬物を作成することができる。これら化合物が用途を見出しうる病気は、た
とえば肺気腫、嚢胞性繊維腫、気管支拡張症、気管支炎症、慢性閉塞性肺病(C
OPD)、慢性関節リューマチ、炎症性腸疾患のような慢性病;並びにたとえば
急性呼吸窮迫症候群、さらに敗血症性および外傷性ショックのような急性病であ
る。
したがって本発明は、適するキャリヤおよび/または希釈剤および活性成分と
しての式(I)の2−置換1,1−ジオキソセフェムアミド、エステルもしくは
チオエステル或いはその医薬上もしくは獣医学上許容しうる塩を含有する医薬組
成物および獣医学的組成物をも提供する。式(I)の化合物またはその塩を含有
する医薬組成物もしくは獣医学的組成物は、慣用の無毒性医薬キャリヤもしくは
希釈剤を用いて常法により各種の
投与形態物および投与方式にて調製することができる。特に、式Iの化合物は次
のように投与することができる:
(A)経口的に、たとえば錠剤、トローチ、ロゼンジ(lozenges)、水性もしくは
油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬質もしくは軟質カプセ
ルまたはシロップもしくはエリキシルとして。経口使用を意図する組成物は医薬
組成物の製造につき当業界で知られた任意の方法により作成することができ、こ
の種の組成物は甘味料、着香料、着色料および保存料よりなる群から選択されて
医薬上優雅かつ快適な製剤を与える1種もしくはそれ以上の物質を含有すること
ができる。錠剤は活性成分を錠剤の製造に適する無毒性の医薬上許容しうる賦形
薬と混合して含有する。これら賦形薬はたとえば不活性希釈剤、たとえば炭酸カ
ルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、燐酸カルシウムもしくは燐酸ナトリウム;粒
状化剤および崩壊剤、たとえばトウモロコシ澱粉もしくはアルギン酸;結合剤、
たとえば澱粉、ゼラチンもしくはアカシア;並びに滑剤、たとえばステアリン酸
マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルクとすることができる。錠剤は未被覆
とすることができ、或いは胃腸管における崩壊および吸収を遅延させるべく公知
技術により被
覆して長時間にわたり保持作用を与えることができる。たとえばモノステアリン
酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を用いるこ
とができる。経口使用のための処方物は硬質ゼラチンカプセルとして提供するこ
ともでき、この場合は活性成分を不活性固体希釈剤、たとえば炭酸カルシウム、
燐酸カルシウムもしくはカオリンと混合し、或いは軟質ゼラチンカプセルとして
提供することもでき、この場合は活性成分を水または油性媒体、たとえば落花生
油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合する。水性懸濁液は、活性物質を
水性懸濁液の製造に適する賦形薬と混合して含有する。この種の賦形薬は懸濁剤
、たとえばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン
、トラガカントガムおよびアラビアガムであり、分散剤もしくは湿潤剤は天然産
のホスファチド、たとえばレシチンまたはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合
生成物、たとえばポリオキシエチレンステアラート、またはエチレンオキシドと
長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタ
ノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールか
ら得られた部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリオキシエレンソルビトー
ルモノオレアート、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールか
ら得られた部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビタ
ンモノオレアートとすることができる。前記水性懸濁液はさらに1種もしくはそ
れ以上の保存料、たとえばp−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはn−プロピル
、1種もしくはそれ以上の着色料、1種もしくはそれ以上の着香料、または1種
もしくはそれ以上の甘味料、たとえば蔗糖もしくはサッカリンを含有することが
できる。油性懸濁液は、活性成分を植物油、たとえば落花生油、オリーブ油、ゴ
マ油もしくはココナッツ油に或いは鉱油、たとえば流動パラフィンに懸濁させて
処方することができる。油性懸濁液は増粘剤、たとえば蜜ロウ、硬質パラフィン
もしくはセチルアルコールを含有することができる。たとえば上記したような甘
味料および着香料を添加して快適な経口製剤を得ることもできる。これら組成物
は、たとえばアスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存することがで
きる。水の添加により水性懸濁液を作成するのに適する分散性粉末および顆粒は
、活性成分を分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1種もしくは
それ以上の保存料と混合して提供する。適する分散剤もしくは湿潤剤および懸濁
剤は既に上記したものにより例示される。追加の賦形薬、たとえば甘味料、着香
料および着色料も存在させることができる。さらに本発明の医薬組成物は水中油
型エマルションとすることもできる。油相は植物油、たとえばオリーブ油もしく
は落花生油または鉱油、たとえば流動パラフィン或いはこれらの混合物とするこ
とができる。適する乳化剤は天然産のガム類、たとえばアラビアガムもしくはト
ラガカントガム、天然産のホスファチド、たとえば大豆レシチンおよび脂肪酸と
無水ヘキシトールとから得られるエステルもしくは部分エステル、たとえばソル
ビタンモノオレアート、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生
成物、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートとすることができ
る。エマルションは甘味料および着香料をも含有することができる。シロップお
よびエリキシルは甘味料、たとえばグリセリン、ソルビトールもしくは蔗糖を用
いて処方することができる。この種の処方物は、さらに粘滑剤、保存料、並びに
着香料および着色料をも含有することができる;
(B)非経口的に、皮下もしくは静脈内、または筋肉内もしく
は胸骨内に、或いは注入(infusion)技術により無菌注射用水性もしくは油性懸濁
液として。これら医薬組成物は無菌注射用水性もしくは油性懸濁液の形態とする
ことができる。この懸濁液は、上記したような適する分散剤もしくは湿潤剤およ
び懸濁剤を用いて公知技術により処方することができる。さらに無菌注射用製剤
は、無毒性の非経口上許容しうる希釈剤もしくは溶剤における無菌注射用溶液も
しくは懸濁液、たとえば1,3−ブタンジオールにおける溶液とすることもでき
る。使用できる許容しうるビヒクルおよび溶剤には水、リンガー溶液および等張
性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、溶媒もしくは懸濁媒体としては無菌の不
揮発性油が常用される。この目的で、合成モノ−もしくはジ−グリセリドを包含
する任意の低刺激性不揮発性油を使用することができる。さらに、たとえばオレ
イン酸のような脂肪酸も注射剤の調製に使用される;
(C)吸入による、エーロゾルまたはネブライザー用溶液の形態として;
(D)直腸内に、薬物を適する無刺激性賦形薬と混合して調製され、常温にて固
体であるが直腸内温度にて液体となり、したがって直腸内で溶融して薬物を放出
する座薬の形態として。こ
の種の物質はココア脂およびポリエチレングリコールである;
(E)局部的に、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液もしくは懸濁液の形態として。
さらに本発明の目的は、治療上有効量の1種もしくはそれ以上の式(I)に包
含される活性化合物を、炎症性および退行性疾患の処置を必要とするヒトまたは
哺乳動物に投与することによる炎症性および退行性疾患の抑制方法を提供する。
1日の用量は特定化合物の活性、処置すべき患者の年齢、体重および症状、病気
の種類および程度、並びに投与の頻度および経路に応じ体重1kg当たり約0.
1〜約50mgの範囲であり、好ましくはヒトにつき1日の用量レベルは20m
g〜2gの範囲である。キャリヤ物質と組合せて単一投与形態物を製造しうる活
性成分の量は、処置される宿主および特定の投与方式に応じて変化する。たとえ
ば、ヒトへの経口投与を意図する処方物は5mg〜2gの活性成分を含有するこ
とができ、これを全組成物に対し約5〜約95%の範囲で変化しうる適する便利
な量のキャリヤ物質と配合する。投与単位形態物は一般に約5〜約500mgの
活性成分を含有する。実施例1 (6R,7S)−4−ブロモ−7−メトキシ−3−メチル−5,5−ジオキソ− 2−(ピロリジン−1−カルボニル)−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2 .0]オクタ−2−エン−8−オン
アセトニトリル(30mL)における(6R,7S)−7−メトキシ−3−メ
チル−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−5−チア−1
−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−8−オン(720mg)の
溶液をトリエチルアミン(0.41mL)およびN−ブロモスクシンイミド(5
30mg)で処理した。30分間撹拌した後、反応混合物をEtOAc/水に注
ぎ入れた。有機相を集め、Na2SO4で脱水した。減圧下に溶剤を除去して粗製
残留物を残し、これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製して標記化合物
(720mg)を白色泡状物として得た。
IR(CHCl3)υmax 1800,1745,1720,1640cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.89(3H,s),1,9-2.0(4H,m),3.3-3.6(4H,m),3,56(
3H,s),4,90(1H,s),5.17(1H,d,J=1.9Hz),5.30(1H,d,J=1.9Hz)。実施例2 (6R,7S)−7−メトキシ−3−メチル−4−(1−メチル−1H−テトラ ゾール−5−イルスルファニル)−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン−1− カルボニル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン− 8−オン(化合物4)
アセトニトル(10mL)における(6R,7S)−4−ブロモ−7−メトキ
シ−3−メチル−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−5
−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−8−オン(195
mg)の溶液にナトリウム1−メチル−1,2,3,4−テトラゾリル−5−メ
ルカプチド二水塩(170mg)を添加した。約30分間にて反応が完結した。
この反応混合物をEtOAcで希釈し、次いで順次に飽和NaHCO3およびブ
ラインで洗浄し、Na2SO4で脱水した。減圧下に溶剤を除去して標記の粗生成
物を残し、これをシリカゲルクロマトグラフィーにより白色固体(150mg)
として純粋に得た。
IR(KBr)υmax 1790,1640cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.9-2.0(4H,m),2,05(3H,s),
3.2-3.7(4H,m),3.55(3H,s),4.09(3H,s),5.07(1H,d,J=1.9Hz),5.18(1H,d,J
=1,9Hz),5.22(1H,s)。実施例3 (6R,7S)−4−(6−ヒドロキシ−2−メチル−5−オキソ−2,5−ジ ヒドロ−[1,2,4]トリアジン−3−イル−スルファニル)−7−メトキシ −3−メチル−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−5− チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−8−オン(化合物 11)
乾燥アセトニトル(10mL)における実施例1で調製した(6R,7S)−
4−ブロモ−7−メトキシ−3−メチル−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン
−1−カルボニル)−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2
−エン−8−オン(130mg)の溶液をトリエチルアミン(0.8mL)およ
び3−メルカプト−2−メチル−5−オキソ−6−ベンズヒドリルキシ−2,5
−ジヒドロ−1,2,4−トリアジン(180mg)で処理した。4時間の後、
反応混合物をEtOAc/水の間に分配させた。上相を集め、Na2SO4で脱水
し、次いで濃縮して残留物を得、これをフラッシュクロマトグ
ラフィーにより精製して保護された化合物を淡黄色油状物として得た(130m
g)。
これをジクロロメタン(3mL)に溶解し、次いでアニソール(0.02mL
)およびトリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。30分間の後、TFAを減圧
下で完全除去し、残留物をジクロロメタン(1mL)中に入れた。イソプロピル
エーテルを添加して標記化合物(60mg)を白色粉末として得た。
IR(KBr)υmax 1795,1650(ブロード)cm-1
NMR(200MHz,DMSO-d6)δ1.82(3H,s),1.8-2.0(4H,m),3,2-3.7(4H,m),3.4
5(3H,s),3.69(3H,s),5.41(1H,d,J=1.6Hz),5.83(1H,d,J=1.6Hz),6.01(1H,s)
。実施例4 2,4,6−トリメチル安息香酸(6R,7S)−7−メトキシ−3−メチル− 5,5,8−トリオキソ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−5−チア−1 −アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−4−イルエステル(化合物 1)
アセトニトリル(10mL)における(6R,7S)−4−ブロモ−7−メト
キシ−3−メチル−5,5−ジオキソ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−
5−チア−1−アザ−ビシ
クロ[4.2.0]オクタ−2−エン−8−オン(195mg)(実施例1に記
載した手順により調製)の溶液に2,4,6−トリメチル銀ベンゾアート(20
5mg)を添加し、得られた混合物を室温にて30分間撹拌した。臭化銀を濾去
し、溶液をEtOAcで希釈し、最終的に水洗した。Na2SO4で脱水した後、
有機溶剤を回転蒸発させ、粗製残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精
製して純粋な標記生成物を淡黄色粉末(130mg)として得た。
IR(KBr)υmax 1800,1755,1650cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.88(3H,s),1.8-2.0(4H,m),2.31(3H,s),2.35(6H,
s),3.2-3.7(4H,m),3.56(3H,s),4.75(1H,d,J=1.9Hz),5.20(1H,d,J=1.9Hz),6
.09(1H,s),6.90(2H,s)。実施例5 (6R,7S)−4−ブロモ−7−メトキシ−3−メチル−5,5,8−トリオ キソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カ ルボン酸t−ブチルエステル
アセトニトリル(20mL)における(6R,7S)−7−メトキシ−3−メ
チル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−
1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸t−ブチ
ルエステル(350mg)、トリエチルアミン(0.15mL)およびN−ブロ
モスクシンイミド(180mg)の溶液から出発すると共に実施例1に記載した
手順にしたがい、標記化合物を淡黄色泡状物として純粋に得た(280mg)。
IR(KBr)υmax 1810,1720cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.55(9H,s),2.08(3H,s),3.58(3H,s),4.92(1H,s)
,5.14(1H,d,J=1.8Hz),5.25(1H,d,J=1.8Hz)。実施例6 (6R,7S)−4−ベンゾイルオキシ−7−メトキシ−3−メチル−5,5, 8−トリオキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エ ン−2−カルボン酸t−ブチルエステル(化合物7)
アセトニトリル(10mL)における(6R,7S)−4−ブロモ−7−メト
キシ−メチル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.
2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸t−ブチルエステル(270mg)
の溶液に安息香酸銀(250mg)を添加し、混合物を1時間撹拌した。
臭化銀を濾過により除去し、溶液をEtOAcで希釈し、水洗し、最終的にブラ
インで洗浄した。Na2SO4で脱水した後、有機溶剤を回転蒸発させ、粗製残留
物をSiO2でのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。標記化合物が純粋に
白色固体(190mg)として得られた。
IR(KBr)υmax 1805,1745,1730cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1,58(9H,s),2.00(3H,s),3.58(3H,s),4.78(1H,d,J
=1.6Hz),5,19(1H,d,J=1,6Hz),6,03(1H,s),7,3−8.1(5H,m)。実施例7 (6R,7S)−7−メトキシ−3−メチル−4−(1−メチル−1H−テトラ ゾール−5−イルスルファニル)−5,5,8−トリオキソ−5−チア−1−ア ザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボチオ酸S−t−ブチ ルエステル(化合物6)
アセトニトリル(2.5mL)におけるトルエン−4−チオスルホン酸S−(
1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)エステル(50mg)および(6
R,7S)−7−メトキシ−3−メチル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−
1−アザ−
ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボチオ酸S−t−ブチルエ
ステル(50mg)の溶液を1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−
エン(25μL)で処理し、室温にて2時間にわたり放置した。反応混合物をE
tOAc/0.5N塩酸に注ぎ入れた。有機相を水で2回洗浄し、脱水し(Na2
SO4)、次いで減圧濃縮した。残留物をSiO2でのフラッシュクロマトグラ
フィーにかけ、EtOAc/n−ヘキサン(1:1)で溶出させた。標記生成物
が白色泡状物(48mg)として得られた。
IR(KBr)υmax 1800,1660cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.63(9H,s),2.22(3H,s),3.65(3H,s),4.16(3H,s)
,5.14(1H,d,J=1.9Hz),5.19(1H,s),5.24(1H,d,J=1.9Hz)。実施例8 安息香酸(6R,7S)−2−t−ブチルスルファニルカルボニル−7−メトキ シ−3−メチル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4 .2.0]オクタ−2−エン−4−イルエステル(化合物8)
アセトニトリル(0.5mL)における1,5−ジアザビシ
クロ[4.3.0]ノナ−5−エン(50μL)をアセトニトリル(2.5mL
)における過酸化ベンゾイル(80mg)および(6R,7S)−7−メトキシ
−3−メチル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.
2.0]オクタ−2−エン−2−カルボチオ酸S−t−ブチルエステル(100
mg)の溶液に、反応混合物の温度を30℃以下に保持しながら滴下した。室温
にて30分間撹拌した後、反応混合物をEtOAcと1%塩酸との間に分配させ
た。上相を順次に水とNaHCO3水溶液とブラインとで洗浄した。クロマトグ
ラフィー精製の後、標記生成物がワックス状固体として得られた。
IR(CHCl3)υmax 1810,1745,1660cm-1
NMR(200MHz,CDCl3)δ1.57(9H,s),1.93(3H,s),3.58(3H,s),4.78(1H,d,J
=1.8Hz),5.19(1H,d,J=1.8Hz),6.02(1H,s),7.4-8.2(5H,m)。実施例9 1−[(6R,7S)−7−メトキシ−3−メチル−4−(1−メチル−1H− テトラゾール−5−イルスルファニル)−5,5,8−トリオキソ−5−チア− 1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エナン−2−カルボニル]−ピ ロリジン−2(S)−カルボン酸(化合物No.3)
アセトニトリル(30mL)における(6R,7S)−7−メトキシ−3−メ
チル−5,5,8−トリオキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]
オクタ−2−エナン−2−カルボニル]−ピロリジン−2(S)−カルボン酸ベ
ンズヒドリルエステル(1.5g)の溶液を室温にてトリエチルアミン(0.5
1mL)およびN−ブロモスクシンイミド(0.66g)で処理した。1時間の
後、溶剤を減圧除去した。残留物をNa2S2O5の飽和水溶液で洗浄し、次いで
フラッシュクロマトグラフィーにより精製することにより1−[(6R,7S)
−4−ブロモ−7−メトキシ−3−メチル−5,5,8−トリオキソ−5−チア
−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エナン−2−カルボニル]−
ピロリジン−2(S)−カルボン酸ベンズヒドリルエステルを白色粉末(650
mg)と
して得た。この生成物の1部(200mg)をジメチルホルムアミド(5mL)
に溶解し、ナトリウム1−メチル−1,2,3,4−テトラゾリル−5−メルカ
プチド二水塩(115mg)で処理した。10分間の後、反応混合物をAcOE
tで希釈し、ブラインで洗浄した。溶剤を除去して黄色固体を得、これを塩化メ
チレン(2.4mL)とトリフルオロ酢酸(2.2mL)とアニソール(1.2
mL)との混液で処理した。15分間の後、TFAを減圧除去し、油状残留物を
ジイソプロピルエーテル中に入れた。濾過により沈殿物を回収して純粋な標記化
合物(72mg)を淡褐色固体として得た。MS(FD):472m/z(分子
ピーク)。実施例10 1−[(6R,7S)−7−メトキシ−3−メチル−5,5,8−トリオキソ− 4−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイルオキシ)−5−チア−1−アザ−ビ シクロ[4.2.0]オクタ−2−エナン−2−カルボニル]−ピロリジン−2 (S)−カルボン酸(化合物No.2)
アセトニトリル(23mL)における1−[(6R,7S)−4−ブロモ−7
−メトキシ−3−メチル−5,5,8−トリ
オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エナン−2
−カルボニル]−ピロリジン−2(S)−カルボン酸ベンズヒドリルエステル(
280mg)の溶液を2,4,6−トリメチル安息香酸銀(220mg)で処理
した。10分間の後、反応が完結した。臭化銀を濾去し、溶液を減圧濃縮して残
留物を得た。残留物をAcOEtで希釈し、NaHCO3水溶液および水で洗浄
した。有機層を濃縮乾固させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより
精製して標記化合物のベンズヒドリルエステル(300mg)を得、これをジク
ロロメタン(3.2mL)とトリフルオロ酢酸(3.2mL)とアニソール(1
.6mL)との混液で処理した。15分間の後、溶液を減圧濃縮した。残留油状
物をジエチルエーテルに溶解し、シクロヘキサンを添加して標記化合物(88m
g)の沈殿物を2種のアミド回転異性体の混合物(4:1)として得た。
NMR主生成物(400MHz,CDCl3)δ1.93(3H,s),1.8-2.4(4H,m),2.31(3H,s),
2.36(6H,s),3.45(2H,m),3.55(3H,s),4.69(1H,dd,J=3.5,8.5Hz),4.78(1H,d,
J=1.8Hz),5.23(1H,d,J=1.8Hz),6.04(s,1H),6.91(2H,S)。
【手続補正書】
【提出日】1997年8月18日
【補正内容】
(1)明細書中、第36頁第11行目の「HLE抑制に」から第37頁第16行
目の「決定した:」までを別紙の通り補正する。
HLE抑制に対するこれら効カパラメータKi SSおよびk5/Kiは酵素(E)と
化合物(I)との相互作用を示す下式で規定され、これは発色性酵素基質(S)
の存在下で監視される(プロトコール参照):
[式中、
E=酵素(HLE)
S=基質(プロトコール参照)
P=生成物(プロトコール参照)
I=抑制剤(式(I)の化合物)
EI=初期酵素:抑制剤複合体
EI*=最終酵素:抑制剤アダクト(失活酵素)
I*=転換生成物(失活抑制剤)]プロトコール
HLE(エラスチン・プロダクト・カンパニー)の速度論的パラメータを、3
7℃、0.027M(pH7.4)燐酸塩緩衝液、1%DMSO、1%MeCN
、NaCl(I=0.15)にて、N−メトキシスクシニル−アラニル−プロリ
ル−バリル−7−アミド−4−メチルクマリン(基質)からの7−アミノ−4−
メチルクマリンの遊離を監視し(蛍光検出)、次式により決定した:
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 パラデイーノ,マツシミリアーノ
イタリー国、イ−20025・レニヤーノ、ビ
ア・チーロ・メノツテイ、150
(72)発明者 ペローネ,エツトレ
イタリー国、イ−20010・ボツフアロー
ラ・テイチーノ、ビア・アルド・モーロ、
44