JPH1136016A - 肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法 - Google Patents

肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法

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JPH1136016A
JPH1136016A JP19423197A JP19423197A JPH1136016A JP H1136016 A JPH1136016 A JP H1136016A JP 19423197 A JP19423197 A JP 19423197A JP 19423197 A JP19423197 A JP 19423197A JP H1136016 A JPH1136016 A JP H1136016A
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quenching
gear
steel material
carburizing
case hardening
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Toyoaki Eguchi
豊明 江口
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Toa Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 浸炭焼入れによる歪みの吸収能力の大きなミ
クロ組織を有する鋼材を、安価な成分組成の鋼に対する
焼入れ方法を見い出すことにより開発する。 【解決手段】 浸炭深さが1mmを超えるようなものの
場合には、従来の肌焼鋼材をA3 +50℃以上の温度
で、0.8〜1.4wt.%の範囲内の炭素ポテンシャルで
浸炭処理し、拡散処理し、表層部の炭素を0.6〜0.
9wt.%に低下させ、次いでA1 +10〜A3 −10℃の
温度で10分以上保持して非浸炭部のミクロ組織に関し
てフェライトを面積率で10〜50%生成させた後、焼
入れする。浸炭深さが0.5mm程度のものの場合に
は、上記方法において、浸炭の炭素ポテンシャルを0.
6〜0.9wt.%とし、拡散処理をせずに以下同じように
する。 【効果】 通常の軟窒化と同様の低歪みで、軟窒化より
も歯元内部硬さの高い高強度歯車の製造が安価に行なえ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、肌焼鋼の浸炭窒
化熱処理方法、特に焼入れ時の歪みが少なく、騒音の少
ない自動車のトランスミッション用歯車等を製造するの
に適した肌焼鋼の浸炭窒化熱処理方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車用歯車には、耐疲労強度
及び表面の耐摩耗性を保証するために、SCr420、
SCM420及びSNCM420等の肌焼鋼が使用され
ている。そして、歯車の製造に当たっては、上記肌焼鋼
の丸棒を歯車に近い形状に熱間鍛造した後、切削加工し
て歯車とし、更に浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ(以
下、浸炭焼入れと総称する)を施して表面を硬化させて
いる。しかしながら、浸炭焼入れを施すと、マルテンサ
イト変態に伴う膨張のため、歯車に歪みが生じる。
【0003】即ち、炭素濃度の比較的低い低合金鋼の表
面に炭素や窒素を浸透させ、次いで焼入れ・焼戻しを施
し、歯表面部をマルテンサイトにして硬化させ、しかも
歯車の靱性を確保するために歯車芯部を一部マルテンサ
イトあるいはベイナイトを含んだフェライト+パーライ
ト組織にする。ここで、図7に歯車の歯内部(歯元内部
及び歯車芯部)と表面とを説明する概略斜視図を示す。
歯車芯部とは、図7の符号8の領域で示される歯車の中
央部であり、また、同図の符号6及び7で示される領域
をそれぞれ、歯表面部及び歯元内部という。上記焼入れ
時の冷却速度は歯元内部の方が歯車芯部よりも速いの
で、歯元内部のミクロ組織は、焼入れ組織であるマルテ
ンサイトと一部ベイナイトとの混合組織となる。この
時、オーステナイトからマルテンサイトへの変態時の膨
張による変態応力が発生する。そのため、歯車に歪みが
生じ、歯車精度を維持することができない。特に、自動
車のトランスミッション系の歯車の歪みは、実車におけ
る歯車騒音発生の最大の原因となっている。そこで、焼
入れ後に歯形の修正を行なう研削を施すのが普通であ
り、大幅なコストアップを招いている。
【0004】以上のような歪み防止対策として、特開平
2−277744号公報にはNb、Al及びTiを添加
して結晶粒を微細化する方法が開示されている(先行技
術1)。しかし、この方法では浸炭加熱時の結晶粒の粗
大化に伴う歪みは防止することができるが、マルテンサ
イト変態応力による歪みは防止できない。従って、歪み
を十分に小さく抑制することはできない。
【0005】また、特開昭60−161942号公報に
は、C:0.03〜0.2wt.%、Si:1.5〜3.0
wt.%、Mn:0.2〜2.0wt.%、Ti:0.03〜
0.30wt.%を含む鋼を高温浸炭処理するに際して、心
部をオーステナイトとフェライトとの二相組織にする方
法が開示されている(先行技術2)。しかし、フェライ
ト形成元素であるSi濃度を高めることによってフェラ
イト相を確保する方法においては、Siが鋼材表面から
のCの進入を妨げる元素であるので、逆に浸炭性の低下
を招き、これを改善するために浸炭時間を長くしたり、
MoやCrを多量に添加しなければならず、コストアッ
プにつながる。
【0006】一方、浸炭焼入れによる歪み発生を回避す
るため、特開昭55−152175号公報には、軟窒化
処理を施す方法が開示されている(先行技術3)。しか
しながら、軟窒化では、硬化層の深さが0.2mm程度
の浅いものしか得られず、歯車表面にピッチングが発生
しやすく、大きな面圧のかかる大型歯車には不向きで、
小型の歯車にしか適用できない。また、窒化処理では、
深い硬化層を得るには20〜40時間という長い時間を
要し、これもコストアップの大きな原因となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、先行
技術1〜3には次のような問題点がある。即ち、大型歯
車用に必要な浸炭深さの大きな浸炭に対しては長時間の
処理を要したり、MoやCrのような高価な合金元素の
多量添加が必要であったり、また、なおも焼入れ歪みが
十分には抑制されず、歪みの修正研削の問題を解消する
には至っていない。
【0008】そこで、本発明者等は、従来一般に使用さ
れている安価な成分組成の鋼を用いて所定の歯車形状に
切削加工した後、浸炭焼入れを行なった場合、この焼入
れによる歪みの吸収能力の大きなミクロ組織を有する鋼
材となるような焼入れ方法を見い出すことを課題として
取り組んだ。かくして、この発明の目的は、特殊な成分
組成の鋼を用いることなく、歯車等鋼材の浸炭焼入れ後
に、歯形等鋼材形状の修正研削を必要としないような肌
焼鋼材の焼入れ方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
観点から、低歪み肌焼鋼材を開発すべく鋭意研究を重ね
た。その結果、歯車形状等、所要の形状に加工された肌
焼鋼材を一定温度以上の高温で浸炭処理を行ない、これ
をオーステナイト+フェライトの二相温度域に保持して
フェライトを析出させ、次いで、焼入れを施しそのミク
ロ組織を適切なフェライト+マルテンサイトの混合組織
にすることにより、マルテンサイト変態の膨張に伴う歪
みを軟質なフェライトに吸収させることができ、歯形
等、当初の加工形状の修正研削を必要としないという知
見を得た。
【0010】この発明は、上述した知見に基づきなされ
たものであって、下記特徴を有するものである。請求項
1記載の肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法は、従来
使用されている肌焼鋼材の成分組成、即ち、C、Si及
びMnを含むか、又は、C、Si及びMn、並びに、C
r、Ni及びMoからなる群から選ばれた1種以上の合
金元素を含む成分組成を有する肌焼鋼材を浸炭焼入れす
る際に、A3 +50℃以上の温度で、0.8wt.%から
1.4wt.%まで(0.8〜1.4wt.%と記す。その他の
場合もこれに準じる)の範囲内の炭素ポテンシャルを有
する媒材中で上記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いでこうし
て浸炭された肌焼鋼材を拡散処理し、その表層部の炭素
濃度を0.6〜0.9wt.%の範囲内に低下させ、次いで
上記肌焼鋼材をA1 +10〜A3 −10℃の範囲内の温
度で10分以上保持して非浸炭部のミクロ組織に関して
フェライトを面積率で10〜50%の範囲内で生成させ
た後、焼入れすることに特徴を有するものである。
【0011】また、請求項2記載の肌焼鋼材の熱処理歪
み防止焼入れ方法は、請求項1と同じように、従来使用
されている肌焼鋼材の成分組成を有する肌焼鋼材を浸炭
焼入れする際に、A3 +50℃以上の温度で、0.6〜
0.9wt.%の範囲内の炭素ポテンシャルを有する媒材中
で上記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで上記肌焼鋼材をA
1 +10〜A3 −10℃の範囲内の温度で10分以上保
持して非浸炭部のミクロ組織に関してフェライトを面積
率で10〜50%の範囲内で生成させた後、焼入れする
ことに特徴を有するものである。
【0012】但し、上記の従来使用されている肌焼鋼材
の成分組成とは、所謂肌焼鋼であって、Cを0.12〜
0.24wt.%、含み、他にSi及びMnを適量含む炭素
鋼、及び上記炭素鋼に更に、Ni、Cr、Mo、V及び
B等の合金元素を適量含む低合金鋼乃至ボロン鋼、並び
にこれらに準じるものを指し、例えば、JIS G40
52で規定された「焼入れ性を保証した構造用鋼鋼材
(H鋼)」にある化学成分の「種類の記号」が、SCM
420H(クロムモリブデン鋼)、SCr420H(ク
ロム鋼)、SCM822H(クロムモリブデン鋼)、S
Mn420H(マンガン鋼)及びSNCM420H(ニ
ッケルクロムモリブデン鋼)はそれに該当し、その他に
JIS G4102〜G4106で規定された鋼材も対
象となる。この発明の対象とする肌焼鋼の上記炭素鋼及
び低合金鋼乃至ボロン鋼には、その成分組成に更にN
b、Ti、及びAl等の結晶粒微細化元素を含ませても
よい。また、上記いずれの成分組成の鋼材に対しても快
削性付与元素として、Pb、Bi、S、Se及びTe等
を含ませてもよい。
【0013】そして、この発明の対象とする肌焼鋼材と
は、比較的炭素濃度の低い材料の表面から炭素及び/又
は窒素を浸透させて、高炭素及び/又は高窒素濃度の表
層部を形成し、次いで、これを焼入れすることにより、
表層部を硬化させると共に内部の靱性を向上させるのに
適した、上述した通りの化学成分組成を有する鋼材、及
びそのような鋼材が所定の形状、例えば歯車等に加工さ
れた成形品をいう。なお、この発明は、浸炭焼入れにお
いてのみならず、浸炭窒化焼入れにおいても同じく適用
される。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明の方法は、肌焼鋼を素材
として所要の形状に加工された鋼材(歯車等の機械部品
を含む)に対して、上述した条件の、浸炭及び拡散並び
に熱処理を施すと共に、その途中において上述したミク
ロ組織を生成させることを伴うものである。以下に、こ
の発明における各種条件の限定理由を説明する。
【0015】(1)浸炭温度:A3 +50℃以上 浸炭時の温度がA3 +50℃未満では、鋼中炭素の拡散
速度が遅く、内部への進入に長時間を要するので、浸炭
時間はA3 +50℃以上とする。なお、浸炭の加熱時間
は、所望の浸炭深さに応じ、公知の加熱時間と浸炭深さ
との関係推定式等を用いて定める。
【0016】(2)表層部の炭素濃度:0.6〜0.9
wt.%、及び、浸炭時の炭素ポテンシャル:0.8〜1.
4wt.%、又は0.6〜0.9wt.% 浸炭後の肌焼鋼材表層部の炭素濃度を、0.6〜0.9
wt.%の範囲内に調整するのは、焼き入れ後の表層部(例
えば、歯車の歯表面部)全域をマルテンサイトに変態さ
せ、且つ、所要の表面硬さ(HV=600以上)のミク
ロ組織を得るために必要なためである。
【0017】また、請求項1においては、浸炭時の炭素
ポテンシャルを0.8〜1.4とする。これは、大物部
品において浸炭深さが1.0mmを超えるような深い硬
化層深さを得る場合には、高い炭素ポテンシャルで浸炭
して表面の炭素濃度を高くした後、0.6〜0.9wt.%
の表面炭素濃度になるように拡散処理を施す。こうする
ことによって浸炭処理時間の短縮が可能になるからであ
る。しかし、硬化層深さが0.5mm程度の比較的浅い
ものでよい場合には、始めから0.6〜0.9wt.%の炭
素ポテンシャルで浸炭すればよい。従って、請求項2に
おいては浸炭時の炭素ポテンシャルを0.6〜0.9w
t.%の範囲内とする。
【0018】(3)焼入れ前の保持温度:A1 +10〜
3 −10℃ 焼入れ前の保持温度が、A3 −10℃よりも高いと、十
分な量のフェライトを歯元内部に形成させることが困難
である。一方、保持温度がA1 +10℃よりも低いと、
逆にフェライトの量が多くなり過ぎて、鋼の強度が不足
する。従って、焼入れ前の鋼材温度は、A1 +10〜A
3 −10℃の範囲内の温度に保持する。
【0019】(4)焼入れ前の保持時間:10分以上 A1 +10〜A3 −10℃の範囲内の温度に保持して面
積率で10wt.%以上のフェライトを析出させるために
は、その温度での保持時間が10分未満ではフェライト
の析出が十分でない。従って、上記保持時間は10分以
上確保すべきである。
【0020】(5)ミクロ組織:フェライトの面積率=
10〜50% 非浸炭部におけるミクロ組織(例えば、歯車においては
歯元内部及び歯車芯部でのミクロ組織)をフェライトに
するのは、この発明において極めて重要であり、前述し
たように、浸炭焼入れ時のマルテンサイト変態に伴う体
積膨張による応力(変態応力)を、フェライト形成領域
に吸収させ、歪み発生を防止するためである。この場
合、フェライト面積率が10%未満では歯車等鋼材に発
生した変態応力を十分に吸収できず、歪み発生を十分に
抑制することができない。なお、フェライトが50%を
超えると、材料強度が不足するので、フェライト面積率
は50%以下にすることが必要である。更に、最適なフ
ェライト量は、面積率で20〜30%の範囲内である。
そして、焼入れ後のミクロ組織はフェライト+マルテン
サイトの二相組織にする。このとき、マルテンサイトに
残留オーステナイトやベイナイトが一部混じっても差し
支えない。なお、焼入れ後は通常、150〜200℃の
範囲内程度の温度で焼戻しを施す。
【0021】
【実施例】次に、この発明を、実施例によって更に詳細
に説明する。表1に、この試験で使用した8種の肌焼鋼
材の鋼種(記号)及び化学成分組成を示す。但し、同表
に示した化学成分組成はすべて従来使用されている肌焼
鋼材の化学成分組成に含まれるものである。これら8種
の鋼材のそれぞれについて変態点測定試験を行ない、得
られたA1 及びA3 温度を表1に併記する。
【0022】
【表1】
【0023】表1に示した各肌焼鋼材を、図4及び5に
示す焼入れ歪み測定用のUSネイビー試験片と、図6に
示す歯車のミクロ組織及び硬さ測定用のスパーギアーと
の2種に加工した。
【0024】図4は、ネイビーC試験片の正面図であ
り、2は開口部、3は円形状空間で、oはネイビーC試
験片1の中心、aは60mm、cは34.8mm、そし
てdは6mmである。図5は、図4の側面図であり、ネ
イビーC試験片1の厚さbは12mmである。図6は、
スパーギアーの外観を示す斜視図であり、4及び5はそ
れぞれ、スパーギアー大及びスパーギアー小である。
【0025】表1に示した化学成分組成を有するネイビ
ーC試験片及びスパーギアーのそれぞれに対して、本発
明の範囲内の各種熱処理方法(実施例1〜10)、及び
本発明の範囲外の各種熱処理方法(比較例1〜3)によ
る試験を行なった。なお、実施例1〜4、6、7及び1
0は、請求項1記載の発明の範囲内のものであり、そし
て実施例5、8及び9は、請求項2記載の発明の範囲内
のものである。
【0026】実施例及び比較例における肌焼鋼材の浸炭
処理、炭素の拡散処理、及び焼入れ前保持温度等の各処
理条件を、表2及び3に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】上記試験が行なわれた試験材について下記
試験測定を行なった。 熱処理歪み量の測定:ネイビーC試験片による。 歯車の表面炭素量:スパーギアー小5の歯表面部6
(図7参照)のC濃度。 歯元内部のフェライト量:スパーギアー小5の歯元内
部7(図7参照)のフェライト面積率 歯元内部の硬さ:スパーギアー小5の歯元内部7(図
6参照)のビッカース硬さ(HV) 上記測定結果を、上記表2及び3に併記する。
【0030】(1)比較例1、実施例1〜3、及び比較
例2 いずれも鋼種SCM420を用い、浸炭条件を一定(炭
素ポテンシャル1.0wt.%、920℃で4hr浸炭後、
1時間の拡散処理)とし、焼入れ前の温度及び時間のみ
を変化させて試験し、次いで油冷した。 ・比較例1は、従来行なわれている方法であり、図2
に、浸炭・焼入れパターンを示す。焼入れ前の温度は、
オーステナイト単相域の850℃で、30分保持した
後、油冷を行なった。非浸炭部の組織にはフェライトは
見られず、残留オーステナイトを一部含むマルテンサイ
ト組織であった。また、USネイビー試験片の開口部の
歪み量は、2.5と大きく、歯車においても変形が大き
い。そのまま使用すると局部的に面圧が高くなって、早
期にピッチングを起こしたり、騒音が大きくなることが
懸念されたので、歯形を研削して修正を施した。
【0031】・実施例1は、焼入れ前の保持温度をA3
−10℃よりも低い800℃に65分保持したものであ
る。非浸炭部には12%のフェライトが含まれ、このた
め歪み量も0.35%と著しく小さく、歯形修正の必要
はなかった。
【0032】・実施例2は、焼入れ前の保持温度を78
0℃とし、35分保持したものである。図1に、浸炭・
焼入れパターンを示す。非浸炭部には32%のフェライ
トが含まれ、このため歪み量も0.02%と小さく、殆
ど歪みがなく、歯形修正の必要はなかった。
【0033】・実施例3は、焼入れ前の保持温度を76
0℃とし、25分保持したものである。非浸炭部には2
5%のフェライトが含まれ、このため歪み量も0.05
%と小さく、歯形修正の必要はなかった。
【0034】・比較例2は、焼入れ前の保持温度をA1
温度よりも低い730℃とし、20分保持したものであ
る。このためフェライト面積率は56%と多量に出て、
内部の硬さがビッカース硬さで260と低く、歯車の硬
さとしては不足である。また、浸炭部の組織にもパーラ
イトが混じっており、耐摩耗性の上からも好ましくない
組織である。
【0035】(2)実施例4及び比較例3 ・実施例4は、鋼種SCM420よりC及びMn濃度が
若干高い鋼種SCM421を、実施例2と同じく図1に
示した浸炭・焼入れパターンで処理したものである。実
施例2においては、歯元内部の硬さはHVが300であ
り、比較例1の硬さHV330に比べてやや低くなって
いるが、このように、鋼種SCM421を用いることに
より硬さHV330が得られる。
【0036】・比較例3は、鋼種SCM420を試験片
に加工後、あるいは歯車に加工後、組織微細化のため焼
ならしを行なった後、5時間ガス軟窒化を行なった場合
であり、従来法に属するものである。歪みも小さく、歯
形修正の必要もなかった。しかしながら、歯元内部の硬
さがHV200と著しく低く、また、2回の熱処理を必
要とする点で、本発明の最大の問題点が解決されていな
い。
【0037】(3)更に、表1に示した各鋼種の肌焼鋼
材を用い、浸炭条件等を種々変化させた試験を行なった
(実施例5〜10)。 ・実施例5は、炭素ポテンシャルが0.85wt.%で、9
00℃、3hrの浸炭を行ない、拡散焼鈍を行なわず、
その後770℃に30分保持した後、焼入れしたもので
ある。浸炭・焼入れパターンを図3に示す。この実施例
においても歪み量は0.16%と小さく、歯形修正の必
要はなかった。
【0038】・実施例6〜10のいずれにおいても、焼
入れ前の保持条件も適正であり、適量のフェライト量を
有し、歪みが小さい。この結果、焼入れ後の歯車におい
て歯形修正の必要はなかった。
【0039】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
鋼成分として特殊なものを用いることなく、通常の軟窒
化と同等の低歪みで、軟窒化によるより歯元内部硬さの
高い高強度のギヤーの製造が可能になる。この発明は、
このように効果的な肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方
法を提供することができ、工業上有用な効果がもたらさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の浸炭・焼入れパターンの一例(実施
例2)を示す。
【図2】従来の浸炭・焼入れパターンの一例(比較例
1)を示す。
【図3】この発明の浸炭・焼入れパターンのた他の例
(実施例5)を示す。
【図4】焼入れ歪み量を測定するためのネイビーC試験
片の正面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】スパーギアーの外観を示す斜視図である。
【図7】歯車の歯内部(歯元内部及び歯車芯部)及び表
面を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
1 ネイビーC試験片 2 開口部 3 円形状空間 4 スパーギヤー大 5 スパーギヤー小 6 歯表面部(浸炭部) 7 歯元内部 8 歯車芯部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16H 55/06 F16H 55/06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C、Si及びMnを含む肌焼鋼材、又
    は、C、Si及びMn、並びに、Cr、Ni及びMoか
    らなる群から選ばれた1種以上の合金元素を含む肌焼鋼
    材を浸炭焼入れする方法において、A3 +50℃以上の
    温度で、0.8〜1.4wt.%の範囲内の炭素ポテンシャ
    ルを有する媒材中で前記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで
    こうして浸炭された前記肌焼鋼材を拡散処理し、その表
    層部の炭素濃度を0.6〜0.9wt.%の範囲内に低下さ
    せ、次いで前記肌焼鋼材をA1 +10〜A3 −10℃の
    範囲内の温度で10分以上保持して前記肌焼鋼材の非浸
    炭部のミクロ組織に関してフェライトを面積率で10〜
    50%の範囲内で生成させた後、焼入れすることを特徴
    とする、肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法。
  2. 【請求項2】 C、Si及びMnを含む肌焼鋼材、又
    は、C、Si及びMn、並びに、Cr、Ni及びMoか
    らなる群から選ばれた1種以上の合金元素を含む肌焼鋼
    材を浸炭焼入れする方法において、A3 +50℃以上の
    温度で、0.6〜0.9wt.%の範囲内の炭素ポテンシャ
    ルを有する媒材中で前記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで
    前記肌焼鋼材をA1 +10〜A3 −10℃の範囲内の温
    度で10分以上保持して前記肌焼鋼材の非浸炭部のミク
    ロ組織に関してフェライトを面積率で10〜50%の範
    囲内で生成させた後、焼入れすることを特徴とする、肌
    焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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