JPH11341757A - 電動機および動力伝達装置並びにハイブリッド車両 - Google Patents

電動機および動力伝達装置並びにハイブリッド車両

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JPH11341757A
JPH11341757A JP10158382A JP15838298A JPH11341757A JP H11341757 A JPH11341757 A JP H11341757A JP 10158382 A JP10158382 A JP 10158382A JP 15838298 A JP15838298 A JP 15838298A JP H11341757 A JPH11341757 A JP H11341757A
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JP
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rotor
stator
electric motor
inner rotor
power transmission
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JP10158382A
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Masaaki Tomita
雅明 富田
Ryoji Mizutani
良治 水谷
Kiyoshi Iga
清 伊賀
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2つの回転軸を有する電動機では、2つの駆
動回路およびスリップリングが必要であった。 【解決手段】 中心から同心円状にインナロータ、ステ
ータ、アウタロータを配置して電動機を構成する。両ロ
ータを相対的に回転可能に2つの回転軸に結合する。イ
ンナロータは永久磁石内包型ロータとし、アウタロータ
は巻線型ロータとする。ステータはコイルを集中巻きし
た独立のコアを複数円周状に配置し、隣接するコア間を
樹脂モールドにより固定する。ステータはヨークがない
構造となる。かかる電動機ではインナロータからステー
タを貫通してアウタロータに至る磁気回路が形成され、
一つの駆動回路でステータへの通電を制御することによ
り電動機の運転を制御することができる。この電動機は
一方の回転軸から他方の回転軸に動力を伝達する動力伝
達装置として用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同軸上に配置され
た相対的に回転可能な2つの回転軸を有する電動機およ
び該電動機を用いた動力伝達装置並びにハイブリッド車
両に関する。
【0002】
【従来の技術】2つの回転軸を有する電動機は、種々の
目的に使用されている。その一つとしてハイブリッド車
両の動力伝達装置としての用途がある。かかるハイブリ
ッド車両の構成として、例えば図55に示すものがあ
る。図55は、エンジンEG、クラッチモータCM、ア
シストモータAMを備え、エンジンEGからの動力によ
って走行可能なパラレル型のハイブリッド車両の一構成
例を示している。クラッチモータCMとはアウタロータ
ROとインナロータRIの両者が相対的に回転可能な対
ロータ電動機である。図示するようにクラッチモータC
Mは、アウタロータROにエンジンEGの出力軸が結合
され、インナロータRIに駆動軸DSが結合されてい
る。駆動軸DSには減速ギヤ等を介して駆動輪が接続さ
れている。図55では駆動輪の図示は省略した。また、
駆動軸DSにはアシストモータAMのロータRが結合さ
れている。アシストモータAMは同期電動機であり、そ
のステータSはケースに固定されている。なお、クラッ
チモータCMのインナロータRIとアシストモータAM
のステータはそれぞれコイルが巻回されており、駆動回
路DC1,DC2を介してこのコイルに通電することに
より、それぞれのモータの運転を制御することができ
る。
【0003】上記構成を有するハイブリッド車両では、
クラッチモータCMのアウタロータROとインナロータ
RIとの間の相対的な滑りによって、エンジンEGから
出力された動力の一部を電力として回生するとともに、
残余の動力をインナロータRI側、即ち駆動軸DSに伝
達することができる。また、回生された電力を用いてア
シストモータAMを駆動し、駆動軸DSに動力を付加す
る。こうした作用により、上記ハイブリッド車両では、
エンジンEGから出力される動力を種々の回転数および
トルクに変換して駆動軸DSから出力して走行する。こ
のように2つの回転軸を有するクラッチモータCMにア
シストモータAMを結合することにより、動力伝達装置
を構成することが可能である。
【0004】図55で示した構成では、上述したトルク
変換を行うために、クラッチモータCMとアシストモー
タAMの2つの電動機を要し、装置のサイズが大きくな
るという欠点があった。かかる欠点を解消し装置の小型
化を図るための技術として、クラッチモータCMとアシ
ストモータAMとを同軸上に配置したものも提案されて
いる(例えば、特開平9−46815記載の技術)。か
かる構成に基づく電動機の断面図を図56に示す。図示
する通り、この電動機は、回転軸の周りにコイルを巻回
した第1ロータ1210を備え、その外側に永久磁石を
貼付した第2ロータ1310を備え、さらに外側にコイ
ルを巻回したステータ1410を備えている。第1ロー
タ1210と第2ロータ1310は相対的に回転可能で
ある。第1ロータ1210と第2ロータ1310とがク
ラッチモータCMのように作用し、第2ロータ1310
とステータ1410とがアシストモータAMのように作
用する。かかる作用によりこの電動機単独で上述したト
ルク変換が可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図56に示し
た構成からなる電動機では軸方向の小型化を図ることは
可能であるが、径方向の小型化を十分に図ることができ
なかった。つまり、動力伝達装置全体の体積を十分に小
さくすることはできず、装置の重量も十分に低減するこ
とができなかった。
【0006】また、従来の2つの回転軸を有する電動機
では、回転するロータに電力を供給する必要があった。
かかる電力の供給はスリップリング又は差動トランス等
を介して行われるが、スリップリングを用いた場合には
耐久性が低いという課題があり、差動トランスを用いた
場合には効率が低いとうい課題があった。かかる課題
は、図55に示したクラッチモータCMおよび図56に
示した電動機において共通していた。
【0007】さらに、従来の2つの回転軸を有する電動
機を用いて動力伝達装置を構成する場合には、その駆動
を行うための駆動回路が少なくとも2つ必要であった。
例えば、図55に示したように、クラッチモータCMと
アシストモータAMとの組み合わせにより動力伝達装置
を構成する場合、それぞれのモータを駆動するためには
駆動回路DC1,DC2の2つの駆動回路が必要であっ
た。また、図56に示した電動機においても、第1のロ
ータ1210に電力を供給するための駆動回路と、ステ
ータ1410に電力を供給するための駆動回路の2つが
必要であった。このことは、装置の構成を複雑するとと
もに、サイズや重量の増加という問題も生じていた。
【0008】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、相対的に回転可能な2つの回転軸を有し
た電動機について装置の小型化を図ることを第1の目的
とする。また、スリップリングなど回転するロータへの
電力を供給する部材を不要とすることを第2の目的とす
る。さらに、駆動回路を減少した電動機を提供すること
を第3の目的とする。そして、かかる電動機を用いた装
置として、一方の回転軸から他方の回転軸に動力を伝達
する動力伝達装置およびハイブリッド車両を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題の少なくとも一部を解決するために本発明では次
の構成を採用した。本発明の第1の電動機は、相対的に
回転可能な2つの回転軸を同軸上に備えた電動機であっ
て、磁気回路の形成に寄与する要素たる磁気要素を、前
記回転軸を中心として同心円状に内側から第1の磁気要
素、第2の磁気要素、第3の磁気要素の順に備え、前記
2つの回転軸は、前記第1ないし第3の磁気要素のうち
いずれか2つの磁気要素にそれぞれ結合されており、前
記第1の磁気要素から前記第2の磁気要素を貫通して前
記第3の磁気要素に至る磁気回路を形成可能に各磁気要
素を構成したことを特徴とする。
【0010】かかる電動機によれば、上述した3つの磁
気要素を同軸上に備えることにより、第1の効果として
装置全体のサイズを小さくすることができる。本発明に
おける磁気要素とは、いわゆるロータおよびステータの
総称であり、永久磁石を用いたもの、コイルを巻回した
もの、いわゆるかご型ロータ等、磁気回路の形成に寄与
しうる種々の要素が含まれる。また、第1ないし第3の
磁気要素には2つのロータおよび1つのステータが含ま
れることになるが、いずれの磁気要素がステータに対応
していてもかまわない。具体的には、内側から「ロー
タ、ロータ、ステータ」と配置したもの、「ロータ、ス
テータ、ロータ」と配置したもの、「ステータ、ロー
タ、ロータ」と配置したものの3種類が存在する。
【0011】本発明の電動機によれば、上述の効果に加
えて、第2の効果として電動機の運転を行うための駆動
回路を一つに減らすことも可能である。駆動回路が減る
ことによって、装置全体のサイズ、重量等をさらに減少
させることができる。上記第1の効果および第2の効果
について従来技術としての電動機(図56)との比較で
説明する。
【0012】図56に示した従来の電動機では、回転軸
の内側から第1のロータ1210、第2のロータ131
0、ステータ1410の順に配置されている。第2のロ
ータ1310は、磁性体で形成されたロータヨークの内
周面および外周面にそれぞれ永久磁石1220、142
0が貼付されている。かかる構造を有する電動機では、
磁気回路は図56中に図示するMin、Moutのよう
に形成される。第1のロータ1210を貫通する磁気回
路Minは第2のロータ1310のロータヨーク部を円
周方向に通過し、再び第1のロータ1210に戻る。ス
テータ1410を貫通する磁気回路Moutは第2のロ
ータ1310のロータヨーク部を円周方向に通過し、再
びステータ1410に戻る。第1のロータ1210から
出た磁束のうちステータ1410に至る磁束はほとんど
存在しない。このような電動機を駆動するためには、磁
気回路Min,Moutの位置および強さを制御する必
要がある。図56に示したように両者が独立した2つの
回路を形成する場合には、それぞれの磁気回路に対して
駆動回路が必要となる。この結果、図56に示した電動
機では駆動回路が2つ必要となっていたのである。ま
た、このように2つの磁気回路を形成するために、間に
存在するロータ1310にはロータヨーク部が必要とな
り、装置の径方向のサイズを増大することにもなってい
た。
【0013】一方、本発明の電動機によれば、回転軸の
内側から第1の磁気要素、第2の磁気要素、第3の磁気
要素の順で配置されている。そして、これらの磁気要素
は、最も内側に位置する第1の磁気要素から第2の磁気
要素を貫通して、最も外側に位置する第3の磁気要素に
至る磁気回路を形成可能に構成されている。つまり、本
発明の電動機における磁気回路は、図56に示した電動
機の場合のように分離して形成されることなく、第1の
磁気要素から第3の磁気要素に至る一つの回路として形
成される。本発明の電動機の駆動を制御するためには、
こうして形成された一つの磁気回路を制御すればよい。
従って、本発明では電動機の駆動に要する駆動回路を一
つに減らすことができるのである。もちろん、これは最
低限必要な駆動回路を一つに減らすことができることを
意味するものであって、2以上の駆動回路を用いて駆動
することもできる。そして、このように磁気回路が周方
向に通過する部分を有しないように第2の磁気要素を構
成することにより、装置全体のサイズを小型化すること
ができる。当然、駆動回路を減らすことができる点も装
置全体のサイズの小型化に寄与する。
【0014】本発明の第2の電動機は、相対的に回転可
能な2つの回転軸を同軸上に備えた電動機であって、前
記回転軸を中心として同心円状に内側から第1のロー
タ、ステータ、第2のロータの順に備え、前記第1のロ
ータは、前記回転軸の一方に結合されており、前記第2
のロータは、前記回転軸の他方に結合されており、前記
ステータは、複数のコアを円周状に配置し、該円周方向
に隣接するコア間を非磁性体で結合して形成されたこと
を特徴とする。
【0015】かかる電動機によれば、上述した第1の電
動機と同様、装置全体のサイズを小さくすることがで
き、また、駆動回路を減らすこともできる。さらに、本
発明の電動機では、以下に示す理由により駆動のための
制御が容易であるという利点も有する。
【0016】本発明で提案しているような2つのロータ
を有する電動機の運転を制御することは、この2つのロ
ータの回転状態を制御することに他ならない。本発明
は、一つの駆動回路を制御することにより磁気回路の形
成を制御して、これらの2つのロータの回転状態を制御
することができるものである。この場合に、例えば回転
軸の内側から「第1のロータ、第2のロータ、ステー
タ」の順に配置すれば、第1のロータの制御によって、
第2のロータにその反作用が現れる。また、第1のロー
タとステータとは離れているため、ステータ部分で磁界
を制御して第1のロータの回転を制御するためには、多
大なエネルギを要することになり効率が悪い。当然、こ
の際に第2のロータの回転状態にも大きな影響を与える
ことになる。これに対し、本発明の電動機では、ステー
タを挟んで内側と外側にロータを配置しているため、上
述の問題なくそれぞれの回転を制御することができる。
【0017】なお、従来は最も外側にステータを配置し
た電動機しか提案されていなかった。これは、電動機を
ケース等に固定する便宜を考慮したものと思われる。し
かし、最外郭がロータで形成されている場合であって
も、軸受けを用いるものとすればケースに固定すること
はそれほど困難ではない。本発明者はかかる観点から、
2つの回転軸を有する電動機の最外郭がステータである
べきとする固定観念を取り払い、従来は適用することが
想定されていなかった新たな構造を採用するに至った。
この結果、本発明の電動機は上述した効果を得ることが
できたのである。
【0018】さらに、本発明の電動機はステータの構造
にも大きな特徴がある。従来、ステータはリング状のヨ
ーク部と複数の突極からなるコアにコイルを巻回して形
成されていた(図56のステータ1410参照)。これ
に対し、本発明のステータは、図56における突極に相
当する複数のコアを円周状に配置し、それぞれのコア間
を非磁性体により結合して成形している。つまり、リン
グ状のヨーク部が存在しない。従って、本発明の構造を
有するステータによれば、円周方向には磁気回路が形成
されない。つまり、ステータに形成される磁気回路は径
方向に貫通することになる。この結果、ステータの内側
に位置する第1のロータからステータを貫通して、外側
に位置する第2のロータに至る磁気回路が形成され、上
述した種々の効果を得る電動機を形成することができ
る。
【0019】ステータのコア間の結合はいかなる非磁性
体を用いるものとしても構わない。各コアを固定するこ
とが可能であれば、各コア間を空隙としておくことも可
能である。非磁性体による結合の好適な例として、前記
ステータは前記コア間を樹脂モールドにより固定したも
のが挙げられる。こうすれば、ステータを容易に製作す
ることができる他、ステータの剛性が増すという利点も
ある。
【0020】上記発明で提案したステータの構造、即ち
ヨーク部が存在しない構造も本発明者により案出された
全く新しい構造である。上述した通り、従来はヨーク部
に突極を設けた構造が採用されていた。これは磁束を外
部に逃がさないことにより電動機を効率的に駆動するた
めに、ステータの円周方向にも磁気回路を形成すること
が望まれていたためであった。また、ヨークを有するこ
とによりステータの形成が容易になるためでもあった。
これに対し、本発明では先に述べた通り、第1のロータ
からステータを貫通して、第2のロータに至る磁気回路
を形成する必要があった。つまり、本発明ではステータ
の円周方向に磁気回路が形成されることを回避する必要
があった。本発明者はかかる観点から、ステータにはヨ
ーク部が存在するものという固定観念を取り払い、各コ
アをヨーク部なしで固定するという全く新たな構造を採
用することに重要な意義を見いだした。ヨーク部なしで
ステータを形成する構造は想像しがたいものであった
が、非磁性体、とりわけ樹脂モールドにより固定すると
いう可能性に気づき、本発明の構成を案出したのであ
る。
【0021】また、本発明の電動機において、前記ステ
ータは複数のコアに巻回されたコイルを有し、該コイル
に通電することにより磁界を生じ得るステータであり、
前記第1のロータおよび第2のロータのうち一方のロー
タは、永久磁石を備えたロータであり、前記第1のロー
タおよび第2のロータの他方のロータは、前記ステータ
と誘導機を構成し得る構造を有するロータであるものと
することもできる。
【0022】かかる構成からなる電動機によれば、第1
のロータおよび第2のロータには電力を供給する必要が
ない。電力の供給を要するのは、固定されたステータに
巻回されたコイルのみである。従って、上記発明の電動
機では、電力供給のためのスリップリングが不要とな
り、耐久性が大きく向上する。
【0023】ここで、前記コイルは、前記ステータに備
えられたコアに集中巻きされたものとすることが望まし
い。ステータのコイルには種々の巻回方法があり、複数
のコアにまたがって巻回する分布巻きとすることも可能
である。種々の巻回方法のうち、いわゆる集中巻にすれ
ば、ステータの製造が非常に容易になるという利点があ
る。つまり、最初に各コアに対し独立してコイルを巻回
し、その後、コイルを巻回したコアを円周状に配置して
固定することによりステータを形成することができる。
【0024】上記発明において、前記第1のロータおよ
び第2のロータに採用可能な構造として種々の構造が考
えられる。例えば、本発明の電動機の第1の形態とし
て、前記一方のロータは、放射状に配置された永久磁石
を備えるものとすることができる。
【0025】かかる電動機では、例えばステータにより
回転磁界を発生させれば、該磁界に応じて永久磁石を備
えたロータは同期機として回転する。こうした機能を奏
するために、永久磁石は周知の種々の方法によりロータ
に配置することも可能である。例えば、ロータの外周面
に貼付するものとしてもよいし、外周面近傍に円周方向
に設けられた孔に永久磁石を挿入するものとしてもよ
い。種々可能な配置のうち、上記発明に挙げるように、
永久磁石を放射状に配置すれば、該ロータを貫通する磁
力線を有効に活用でき、電動機を効率よく運転すること
が可能となる利点がある。なお、放射状とは、永久磁石
の径方向の長さの方が円周方向の長さよりも長い状態で
配置されていることを意味する。
【0026】本発明の第2の形態として、前記他方のロ
ータは、前記ステータと巻線型誘導機を構成可能な構造
を有するロータであるものとすることができる。また、
前記他方のロータは、前記ステータとかご型誘導機を形
成可能な構造を有するロータであるものとすることもで
きる。
【0027】他方のロータとして上記構造を適用すれ
ば、ステータに回転磁界を発生させると、誘導機として
このロータが回転する。また、上述した「一方のロー
タ」との間でも誘導機として機能し得るから、例えばこ
の一方のロータを外力により回転させればそれに応じて
本発明の他方のロータも回転することができる。この結
果、故障その他の理由によりステータに電流を流すこと
ができない場合であっても、一方のロータの回転に応じ
て他方のロータを回転させることができるという利点も
得ることができる。
【0028】本発明の電動機の第3の形態として、前記
他方のロータは前記第1のロータであり、前記第1のロ
ータのさらに内側には、切り替えにより該第1のロータ
に拘束されずに回転可能な状態および該第1のロータと
一体として回転可能な状態のいずれかを採りうる永久磁
石を備えるものとすることもできる。
【0029】かかる構成を有する電動機によれば、第1
のロータを誘導機および同期機の双方の状態で回転させ
ることができる。上述の永久磁石を第1のロータに拘束
されずに回転可能な状態とすれば、第1のロータはステ
ータとの間で誘導機として機能する。一方、永久磁石を
第1のロータと一体として回転可能な状態とすれば、第
1のロータはステータとの間で同期機として機能する。
第1のロータが誘導機として機能する場合には、その性
質上、第1のロータの回転速度は回転磁界の回転速度よ
りも遅くなる。上記構成によれば、第1のロータは同期
機としても機能し得るため、回転磁界と同じ速度で回転
することができる。
【0030】第2のロータが永久磁石を備えるロータで
ある場合、同様の効果を第2のロータとの間でも得るこ
とができる。つまり、第2のロータを外力等により回転
させる場合、第1のロータを誘導機として機能させるこ
とにより、第2のロータよりも遅い回転速度で第1のロ
ータを回転させることができる。一方、第1のロータを
同期機として機能させることにより、第2のロータと等
速度で回転させることができる。従って、第2のロータ
を入力軸に結合し第1のロータを出力軸に結合し、上記
発明の電動機を動力伝達装置として利用した場合には、
出力軸の回転可能な範囲を広くすることができる利点が
ある。
【0031】また、本発明の電動機として、前記第1の
ロータおよび前記第2のロータは、ともに永久磁石を備
えたロータとすることもできる。
【0032】かかる構成を有する電動機では、ステータ
に回転磁界を生じさせると、第1のロータおよび第2の
ロータを同期機として回転させることができる。また、
例えば外力により第1のロータを回転させると、第1の
ロータと第2のロータとの間の磁気的な結合により、第
2のロータも回転する。両者の回転速度は基本的には同
速度となるが、ステータに生じる磁界を制御することに
より、両者間で相対的に滑りをもった回転速度とするこ
ともできる。
【0033】本発明の電動機として、前記第1のロータ
として、永久磁石を備えたロータを前記回転軸の方向に
直列に配置された2つのロータを有し、該2つのロータ
の位置関係を前記回転軸の周方向に変更可能であること
を特徴とするものとすることもできる。
【0034】かかる構成を有する電動機によれば、上記
2つのロータの位置関係(以下、ピッチと呼ぶ)を変化
させることにより、第1のロータとステータとの磁気的
な結合の強さを変化させることができる。説明の便宜
上、上記2つのロータをロータA,ロータBと呼ぶもの
とする。例えば、ロータAがステータのコイルに対向し
ているときを考える。このときロータAとステータとの
間では非常に強い磁気的な結合が得られる。このとき、
ロータAとロータBのピッチを調整してロータBもステ
ータに対向する位置にすれば、ロータBとステータとの
間でも非常に強い磁気的な結合が得られる。従って、こ
のとき第1のロータとステータとの間では最も強い磁気
的な結合が得られていることになる。この状態からロー
タBのピッチを変化させていけば、ロータBとステータ
との結合が弱まる。従って、第1のロータとステータの
結合も弱まることになる。このように上記発明によれ
ば、第1のロータとステータとの間の磁気的な結合の強
さを変化させることができ、第1のロータから出力され
る動力等を変化させることができる。当然、ステータに
より磁界を制御することによっても第1のロータから出
力される動力を制御することができる。従って、上記発
明の電動機によれば、第1のロータのピッチの制御と磁
気回路の制御の双方を用いることにより、幅広い範囲で
第1のロータから出力される動力を制御することができ
る。
【0035】なお、上記発明では、インナロータとして
3つ以上のロータを備えたものとしてもよい。こうすれ
ば、第1のロータから出力される動力をさらに幅広い範
囲で制御することが可能となる。
【0036】本発明の電動機として、前記第1のロータ
および第2のロータのうち一方のロータは永久磁石を備
え、前記ステータと該一方のロータが、バーニアモータ
を形成する構造を有するものとすることもできる。
【0037】本発明の作用について第1のロータが前記
一方のロータに相当する場合を例にとって説明する。バ
ーニアモータとは、同期モータの一種であるが、コイル
が巻回されたステータの突極数と、第1のロータに備え
られた永久磁石の数との関係が通常の同期モータとは異
なっているものをいう。通常の同期モータでは「突極数
/相数=永久磁石数/2」なる関係が成立している。例
えば、U,V,W相の3相交流を用いる同期モータで突
極数が12である場合には、突極数/3=4であり、各
相当たり4つの突極を備えていることになる。これに対
し、8つの永久磁石を外周面に現れる磁極をN,S交互
に配置すれば、外周面にN極が現れる磁石数は永久磁石
数/2=4となる。従って、U相電流が流れる一つのU
相コイルに一つのN極が対向するとき、残りのU相コイ
ルとN極とも対向するようになる。かかる関係を維持す
ることにより、最も効率的にモータを回転させることが
できるのである。しかし、その一方で、主として磁界を
生じさせる電流の相の移り変わりに伴いトルクの脈動、
つまりコギングトルクが生じやすい特性がある。
【0038】バーニアモータでは、上述の関係、つまり
「突極数/相数=永久磁石数/2」が成立しないように
突極数および永久磁石数が設定されている。具体的に三
相交流を用いる場合には、「突極数/相数=永久磁石数
/2±1」となる。かかる設定にすることにより一度に
全てのU相コイルとN極とが対向するような状態を避け
ることができる。他の相のコイルについても同様であ
る。従って、第1のロータの回転中において、ステータ
と第1のロータとの磁界の相互作用を平均化することが
でき、回転中のトルク変動を低減することができる利点
がある。上記発明では、ステータと第1のロータが、こ
うした特徴を有するバーニアモータを形成するような構
造を採用することにより、第1のロータの出力トルクの
変動を低減することができる。第2のロータが上述の発
明における一方のロータに相当する場合も同様である。
【0039】なお、かかる電動機において、前記一方の
ロータと異なる他方のロータは巻線型の誘導機を形成可
能な構造を有し、該巻線は前記一方のロータおよび前記
ステータからの磁束を効率的に鎖交可能に巻回されたも
のとすることが望ましい。
【0040】前記他方のロータのコイルを、前記一方の
ロータからの磁束を効率的に鎖交可能に巻回することに
より、電動機の運転効率を向上することができる。かか
る巻回方法は前記一方のロータの磁極数やステータのコ
ア数等によって変化するため、実験的または解析的に求
めることになる。
【0041】以上で説明した種々の形態からなる電動機
を利用した装置として以下に示す動力伝達装置を構成す
ることができる。本発明の動力伝達装置は、同軸上に備
えられた入力軸および出力軸と、両者に結合された電動
機と、該電動機の運転を制御する制御手段とを備え、該
入力軸から動力を入力するとともに該出力軸から動力を
出力可能な動力伝達装置であって、前記電動機は、前記
回転軸を中心として同心円状に、前記入力軸に結合され
た第1のロータと、前記出力軸に結合された第2のロー
タと、1つのステータとを備えるとともに、前記第1の
ロータ、第2のロータおよびステータの全てを通る磁気
回路を形成可能に構成されており、かつ、前記ステータ
は電流を流すことにより前記磁気回路の強さに影響を与
え得る巻線が巻回された電動機であり、前記制御手段
は、前記ステータの巻線に流れる電流を制御することに
よって、前記第1のロータと、前記第2のロータとの間
の磁気的な結合を制御する手段であることを要旨とす
る。
【0042】かかる動力伝達装置によれば、第1のロー
タ、第2のロータおよびステータの全てを通る磁気回路
の強さ等を制御して、入力軸と出力軸との磁気的な結合
の程度を調整する。この結果、入力軸からある回転数お
よびトルクで入力された動力を、入力時とは異なる回転
数およびトルクにトルク変換した上で出力軸から出力す
ることができる。
【0043】上述の作用は、例えば、従来技術として図
55で示したようにクラッチモータCMとアシストモー
タAMとを組み合わせて用いることによって実現される
作用と同一である。本発明の動力伝達装置によれば、従
来よりも装置のサイズを小さく抑えつつ、同じ作用を実
現することができる利点がある。
【0044】また、従来の動力伝達装置では、クラッチ
モータCMで機械的な動力の一部を電力として抽出し、
この電力をアシストモータAMに供給することにより、
トルク変換を実現していた。機械的な動力の一部を電力
に変換したり、逆に電力を機械的な動力に変換したりす
れば、それぞれの変換の際にある程度のエネルギ損失を
生じる。これに対し、本発明の動力伝達装置は、入力軸
に結合された磁気要素と出力軸に結合された磁気要素の
磁気的な結合を制御することにより、動力の一部を電力
に変換することなく、直接トルク変換して出力すること
ができる。従って、機械的な動力と電力との変換の際に
生じる損失をなくすことができ、動力を効率よく伝達す
ることが可能となる。
【0045】なお、上記動力伝達装置におけるロータお
よびステータの配置および入力軸、出力軸との結合状態
については種々の構成が可能である。具体的には、回転
軸内側から「ロータ、ロータ、ステータ」、「ロータ、
ステータ、ロータ」、「ステータ、ロータ、ロータ」の
3通りの構成が可能である。また、各構成において、内
側に位置するロータと外側に位置するロータのいずれを
入力軸とし、いずれを出力軸としても構わない。当然、
ある運転状態では内側のロータに結合された回転軸が入
力軸に相当し、別の運転状態では該回転軸が出力軸に相
当するというように、運転状態に応じて入力軸、出力軸
に相当する軸が入れ替わるものも含まれる。
【0046】上述した動力伝達装置は、制御手段の機能
によって種々の態様で運転することが可能である。例え
ば、前記制御手段は、前記ステータの巻線に流れる電流
を制御することによって、前記第1のロータと前記第2
のロータ間で磁気回路を遮断する手段であるものとする
ことができる。
【0047】かかる制御手段を備える動力伝達装置によ
れば、入力軸から入力された動力が出力軸に伝達されな
いようにすることができる。動力伝達装置を機械的なク
ラッチにおきかえて説明すれば、上記機能はクラッチの
解放状態に相当する。なお、前記第1のロータと前記第
2のロータ間で磁気回路を遮断する方法としては、種々
の方法が考えられる。例えば、ステータの巻線に電流を
流していない状態において第1のロータと第2のロータ
間で生じる磁界に対し、同じ強さでかつ逆向きの磁界を
生じさせる電流をステータの巻線に流す方法がある。ま
た、ステータの巻線に電流を流すことにより、第1のロ
ータと第2のロータ間で形成されている磁気回路の通り
道を変え、両者間で磁気回路が形成されないようにする
方法も可能である。
【0048】本発明の動力伝達装置を別の態様で運転す
るものとして、前記制御手段は、前記ステータの巻線に
流れる電流を制御することによって、前記ステータと前
記第2のロータ間で正のトルクを生じさせる手段である
ものとすることもできる。
【0049】かかる動力伝達装置によれば、入力軸から
の動力の入力がない場合であっても出力軸から動力を出
力することができる。つまり、出力軸に結合された磁気
要素と、ステータとを通常の電動機として、いわゆる力
行運転する場合に相当する。もちろん、入力軸からの動
力の入力がある場合にさらにトルクを付加して出力軸か
ら出力することも可能である。
【0050】また、別の態様で運転するものとして、前
記制御手段は、前記入力軸から入力される動力の一部
を、前記入力軸および前記出力軸のいずれにも結合され
ていない磁気要素を介して電力として回生し、残余の動
力を前記出力軸に伝達する手段であるものとすることも
できる。
【0051】かかる動力伝達装置によれば、入力軸から
入力された動力を出力軸にトルク変換して伝達しつつ、
その一部を電力として回生することができる。回生され
た電力は例えばバッテリ等の蓄電手段に蓄えるものとし
てもよいし、別の装置の駆動に用いるものとしてもよ
い。
【0052】また、本発明の動力伝達装置において、さ
らに前記入力軸および出力軸の回転数の差を検出する検
出手段を備え、前記電動機は、前記第1のロータは、永
久磁石を備えたアウタロータ、前記第2のロータは、前
記ステータとの間でかご型誘導機を形成可能なインナロ
ータとし、前記インナロータのさらに内側には、該イン
ナロータに拘束されずに回転可能な状態および該インナ
ロータと一体として回転可能な状態のいずれかを採りう
る永久磁石を備えた電動機であり、前記制御手段は、前
記制御に加えて、前記検出手段により検出された回転数
の差の絶対値が所定の値以下である場合には前記インナ
ロータの内側に備えられた永久磁石を該インナロータと
一体として回転可能な状態とする手段であるものとする
こともできる。
【0053】かかる構成を有する動力伝達装置によれ
ば、インナロータの内側に備えられた永久磁石の回転状
態を制御することにより、入力軸から出力軸へのトルク
変換可能な範囲を広げることができる。つまり、インナ
ロータの内側に備えられた永久磁石をインナロータに拘
束されずに回転可能な状態とすれば、インナロータはア
ウタロータと誘導機を構成した状態となる。従って、こ
のときは、インナロータはアウタロータよりも低い回転
数で回転する。一方、インナロータの内側に備えられた
永久磁石をインナロータと一体として回転可能な状態に
すれば、インナロータは永久磁石を備えたアウタロータ
と磁気カップリングを形成した状態となる。従って、イ
ンナロータはアウタロータと同じ回転速度で回転するこ
とができる。このように上記動力伝達装置によれば、入
力軸から入力された動力を幅広い範囲でトルク変換して
出力軸から出力することができる。
【0054】また、本発明の動力伝達装置において、前
記第1のロータまたは第2のロータのうち内側に位置す
るインナロータとして、永久磁石を備えたロータを前記
入力軸および出力軸の方向に直列に配置された2つのロ
ータを有し、かつ該2つのロータの位置関係を前記入力
軸および出力軸の周方向に変更可能であることを特徴と
する電動機であり、前記制御装置は、前記制御に加え
て、前記入力軸から入力されるトルクの大小に応じて、
前記インナロータと前記ステータとの磁気的な結合の強
弱が変化するように前記2つのロータの位置関係を変更
させる手段であるものとすることもできる。
【0055】上記発明の動力伝達装置は、先に説明した
第5の形態の電動機を用いたものである。第5の電動機
は先に説明した通り、インナロータとして備えられてい
る2つのロータのピッチの制御、及びインナロータとア
ウタロータとの間の磁気的な結合の制御の双方によっ
て、入力軸から出力軸に伝達される動力を幅広い範囲で
変化させることができる。従って、かかる電動機を用い
た構成からなる動力伝達装置によれば、入力軸から入力
された動力を幅広い範囲でトルク変換して出力軸に伝達
することが可能である。
【0056】また、本発明の動力伝達装置において、前
記電動機の前記第1のロータまたは第2のロータのうち
一方は、巻線が巻回された巻線型ロータであり、該巻線
型ロータに巻回された巻線に流れる電流を制御すること
によって、該巻線型ロータに生じる磁界と前記磁気回路
との相互作用を制御するロータ制御装置を備えるものと
することもできる。
【0057】かかる動力伝達装置によれば、前記制御装
置により第1のロータと第2のロータとの間の磁気的な
結合の制御に加えて、ロータ制御装置によって第1のロ
ータまたは第2のロータの一方を構成する巻線型ロータ
に生じる磁界と前記磁気回路との相互作用を制御するこ
とが可能となる。従って、上記動力伝達装置によれば、
第1のロータ、ステータ、第2のロータ間の磁気的な結
合および相互作用を制御する自由度が高まり、例えば巻
線型ロータが誘導機のロータとして機能する場合には、
すべりに伴う損失を抑制するように巻線型ロータに流れ
る電流を制御することが可能である。この結果、動力伝
達装置をより力率・効率の高い運転状態で運転すること
が可能となる。また、巻線が巻回された巻線型ロータ
は、誘導機のロータとして機能する他、前記ステータと
の間でロータ制御装置によって制御される同期電動機と
しても機能し得る。このため、上記動力伝達装置によれ
ば、電動機の回転数を広い範囲で制御することが可能と
なり、例えば巻線型ロータを他方のロータよりも高い回
転数で回転させることができる。
【0058】以上で説明した電動機および動力伝達装置
は、種々の装置に適用可能であるが、一例として以下に
示す通りハイブリッド車両に適用することができる。本
発明のハイブリッド車両は、原動機と、該原動機の回転
軸および車輪を有する駆動軸に結合された本発明の動力
伝達装置とを備え、少なくとも前記原動機から出力され
る動力によって走行可能なハイブリッド車両である。
【0059】先に図55を用いて、従来技術としてのハ
イブリッド車両の構成例を説明した。かかるハイブリッ
ド車両では、クラッチモータCMとアシストモータAM
の2つを動力伝達装置として用いていた。これに対し、
本発明のハイブリッド車両では、先に説明した本発明の
電動機または動力伝達装置を適用している。この結果、
本発明のハイブリッド車両は、既に本発明の電動機およ
び動力伝達装置について説明した種々の効果を得ること
ができる。具体的には、動力伝達装置を小型化すること
ができるため、原動機を含む動力出力装置のサイズを小
型化することができる。一般に車両では動力出力装置を
搭載するためのスペース上の制約が厳しいため、装置の
小型化によるメリットは非常に大きい。
【0060】また、上記ハイブリッド車両では、動力伝
達装置の効率を向上することができるため、車両全体の
運転効率を向上することができる。元来、ハイブリッド
車両は燃費に優れることを特徴としているが、本発明の
ハイブリッド車両によれば、その特徴を更に向上するこ
とができる。
【0061】なお、本発明の電動機および動力伝達装置
は、ハイブリッド車両に用いた場合のみならず、原動機
と組み合わせて動力出力装置を構成し、種々の装置の動
力源として適用することも可能である。例えば、列車等
の種々の輸送機や工作機械などへの適用が考えられる。
この場合において、原動機としては内燃機関や電動機な
どを用いることができる。
【0062】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て実施例に基づいて説明する。 (1)第1実施例としての電動機の構成:図1および図
2に本発明の第1実施例としての電動機の構成を示す。
図1は、回転軸に直交する断面における断面図であり、
図2は回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
図1に示す通り、第1実施例の電動機100は、インナ
ロータ軸102を中心として同心円状に内側からインナ
ロータ110、ステータ140、アウタロータ170が
配置されている。なお、図1では巻回されたコイルにつ
いては図示を省略してある。図2に示す通り、アウタロ
ータ170はアウタロータ軸104に結合されている。
インナロータ軸102、ステータ140、アウタロータ
軸104は、相互に軸受け106〜108を介して相対
的に回転可能に結合されている。
【0063】電動機100のインナロータ110、ステ
ータ140、アウタロータ170のそれぞれの構造につ
いて説明する。図3〜図5はそれぞれ回転軸に直交する
断面におけるインナロータ110、ステータ140、ア
ウタロータ170の断面図である。図6〜図8は、それ
ぞれ回転軸に沿う方向の断面におけるインナロータ11
0、ステータ140、アウタロータ170の断面図であ
る。最初に図3および図6を用いてインナロータ110
の構成を説明し、次に図4および図7を用いてステータ
140の構成を説明し、最後に図5および図8を用いて
アウタロータ170の構成を説明する。
【0064】インナロータ110は、図3に示す通り、
大きくはインナロータコア112と永久磁石114とか
ら構成される。インナロータコア112は、図3に示す
ように略扇形をした8つの部分から成り立っている。イ
ンナロータコア112は、図6に示す通り無方向性電磁
鋼板の薄板を打ち抜いて形成された板状インナロータコ
アをインナロータ軸102の方向に積層することにより
形成されている。板状インナロータコアの表面は絶縁層
が形成されている。板状インナロータコアは積層された
上で、アルミケース118に放射状に等間隔に配置され
る。なお、板状インナロータコア112の表面に接着層
を形成しておき、板状インナロータコア112を積層し
互いに押圧した状態とした上で、接着層を加熱・溶融し
て一応固定した上で、アルミケースに配置するものとし
ても構わない。
【0065】8つのインナロータコア112の間には、
図3に示す通り8つの永久磁石114が放射状に配置さ
れる。永久磁石114はそれぞれ円周方向に磁極が向く
ように配置されており、隣接する永久磁石は同じ磁極同
士が対向するように配置される。なお、図3に示される
通り、インナロータコア112は電動機の回転時に遠心
力によって永久磁石114が径方向に飛び出すのを防ぐ
ような断面形状をなしている。図9にインナロータコア
112および永久磁石の配置の様子を斜視図により示
す。こうして、インナロータコア112および永久磁石
114をアルミケース118に配置した後、アルミ製の
フタ120をして固定用のボルト116により全体を固
定する。次に、アルミケース118の中心部にインナロ
ータ軸102を圧入し、ボルト122で固定することに
よってインナロータ110は完成する。
【0066】なお、永久磁石114を放射状に配置した
のは、かかる配置にすることにより永久磁石の磁束を有
効に活用することができ、電動機の運転効率やトルクを
高めることができるからである。ロータの構造として
は、永久磁石をロータ外周面に貼付したものや、外周付
近に円周方向に設けられた孔に永久磁石を挿入したもの
等が知られている。インナロータ110の構成として
は、これらの構成を採用することもできる。
【0067】次に、ステータ140の構成について説明
する。ステータ140は、図4に示す通り、大きくはス
テータコア142とコイル144とから構成される。ス
テータコア142は、図4に示すようにティース部にコ
イルを巻回する通常のステータのティース部のみを独立
させたような断面形、つまり略長方形を基本として内周
側と外周側に位置する部分に若干のフランジ部を設けた
断面を有する12個の独立した部分から成り立ってい
る。ステータコア142は、図7に示す通り無方向性電
磁鋼板の薄板を打ち抜いて形成された板状ステータコア
を回転軸方向に積層することにより形成されている。板
状ステータコアの表面は絶縁層が形成されている。板状
ステータコアは積層された上で、固定用のボルト146
により固定される。なお、板状インナロータコア112
の表面に接着層を形成しておき、板状インナロータコア
112を積層し互いに押圧した状態とした上で、接着層
を加熱・溶融して一応固定した上で、さらに固定用のボ
ルト146で固定するものとしても構わない。
【0068】12のステータコア142には、それぞれ
コイル144が巻回される。図4では、コイル144を
巻回した状態を一部のステータコア142についてのみ
示し、残りのステータコア142についてはコイルの図
示を省略した。コイル144はいわゆる集中巻により巻
回されており、各ステータコア142に独立に巻回され
ている。ステータコア142にコイル144を巻回した
状態を斜視図として図10に示した。このように集中巻
を採用すると、ステータコア142の製造が非常に容易
になるという利点がある。もちろん、複数のステータコ
ア142にまたがってコイルを巻回する分布巻きを採用
するものとしても構わない。なお、本実施例の電動機は
ステータ140にU,V,W相の3相交流を流すことに
より駆動される。従って、図4に示した通り、円周方向
に3つおきに位置するコイル144はそれぞれ同じ位相
の電流が流れるコイルとして結線されることになる。ま
た、これらのコイル144は外部の電源と接続可能とな
っている。
【0069】こうしてコイル144が巻回されたステー
タコア142は、図4に示すように円周状に配置され
る。この際、各ステータコア142の位置を決めるため
にアルミ製のフランジ147,148が用いられる。フ
ランジ147、148には各ステータコア142の位置
決めに用いられるピン149が円周状に等間隔に配置さ
れている。これらのピン149をガイドとして各ステー
タコア142をフランジ147、148で挟み込むよう
にして図4の配置を実現する。なお、この状態では、フ
ランジ147、148は分離可能な状態であるため、両
者およびステータコア142を仮に固定するための治具
を用いている。
【0070】この状態で、ステータコア142間の外周
面および内周面を樹脂モールドにより固定する。ステー
タコア142の斜視図を図11に示した。図11中の黒
く塗りつぶした部分が樹脂モールド150である。図1
1では、フランジ147、148を図示していないが、
樹脂モールド150によりステータコア142はフラン
ジ147,148とも固定される。こうして本実施例の
ステータ140は完成する。
【0071】本実施例のステータ140は、図11に示
した通り、ステータコア142を円周方向につなぐ部材
は樹脂モールド150のみである。従来より通常用いら
れているステータの構造としては、図56のステータ1
410に示すようにリング状のヨーク部と突極部から構
成されているものであった。このようにヨーク部を有し
ていない構造をなしている点で、本実施例のステータ1
40は従来のステータとは全く異なる構造をなしている
ことになる。かかる構造を採ることにより、後述する通
り、ステータコア142を通る磁束が円周方向に逃げな
くなる。つまり、磁束はステータコア142を径方向に
貫通するようになる。かかる作用により本実施例の電動
機は後述する種々の効果を得ることができる。
【0072】なお、本実施例のステータ140は、樹脂
モールド150によりステータコア142間を埋めると
ともに、ステータコア142を円周方向に固定するもの
としているが、ステータコア142をその他の非磁性体
で固定するものとしても構わない。ステータコア142
を固定することが可能であれば、各ステータコア142
の間は空隙であっても構わない。本実施例で樹脂モール
ド150を採用したのは、製作の容易性とステータ14
0の剛性およびコイル144からの熱に対する耐熱性、
放熱性等を考慮したためである。
【0073】最後にアウタロータ170の構成を説明す
る。アウタロータ170は、図5に示す通り、大きくは
アウタロータコア172とコイル174とから構成され
る。アウタロータコア172は、無方向性電磁鋼板の薄
板を、図5に示すように内側に72個のスロットを有す
るリング状の断面形に打ち抜いて形成された板状アウタ
ロータコアをアウタロータ軸104方向に積層すること
により形成されている。板状アウタロータコアの表面は
絶縁層が形成されている。板状アウタロータコアは積層
された上で、アルミ製のケース176に圧入され、円管
状の固定リング178によりかしめて固定される。な
お、板状アウタロータコアの表面に接着層を形成してお
き、板状アウタロータコアを積層し互いに押圧した状態
とした上で、接着層を加熱・溶融して一応固定した上
で、ケース176に挿入するものとしても構わない。
【0074】アウタロータコア172のスロット間に
は、コイル174が巻回される。本実施例におけるコイ
ルの巻回方法を図12に示した。説明の便宜上、図12
に示す通り、アウタロータコア172の各スロットに0
番から時計回りに順に番号を付した。コイルは9つおき
のスロット間で順次巻回されている。つまり、0番スロ
ットと9番スロットとの間で巻回された後、9番スロッ
トと17番スロットとの間で巻回される。同様にして各
スロット間でコイルが巻回されている。なお、アウタロ
ータ172のコイル174は外部の電源とは接続されて
いない。アウタロータ172は後述する通り、ステータ
140またはインナロータ110との間で誘導機として
機能するロータである。コイル174は種々の方法によ
り巻回可能であるが、本実施例ではステータ140から
の磁束と有効に錯交するように巻回した。こうして組み
立てられたアウタロータ170のケース176を、図8
に示す通り、フランジ177にボルトで固定し、アウタ
ロータ軸104を圧入する。
【0075】以上で説明した各構成を有するインナロー
タ110、ステータ140およびアウタロータ170を
図2に示した配置で軸受け106〜108を介して組み
立てることにより、第1実施例の電動機100が完成す
る。図1および図2には示していないが、電動機100
はステータ140をケース等に固定することにより種々
の装置に搭載可能である。もちろん、さらにインナロー
タ軸102およびアウタロータ軸104を軸受けを介し
て装置に組み付けるものとしても構わない。
【0076】(2)モータ制御装置の構成:次に、第1
実施例の電動機100を用いた動力伝達装置の構成につ
いて説明する。図13は、第1実施例としての動力伝達
装置10の概略構成を示すブロック図である。この動力
伝達装置10は、先に説明した第1実施例の電動機10
0と、その運転を制御するためのECU12および制御
に必要な情報を検出するためのセンサ部と、電動機10
0の運転に必要な電圧を印加するための駆動回路20お
よび電源としてのバッテリ30とから構成されている。
【0077】ECU12は図示する通り、内部に制御用
のCPU13、ROM14、RAM15等を備えるマイ
クロコンピュータであり、クロック16の出力する同期
信号に伴い、CPU13がROM14に記録された種々
の制御用のプログラムを実行する。また、このECU1
2は、入力ポート17を介して制御に必要な情報を入力
するとともに、出力ポート18を介して制御信号を出力
している。また、入力ポート17には、電動機100の
制御に必要となるトルク指令値が外部から入力可能とな
っている。
【0078】制御に必要な情報としてECU12に入力
される信号には、電動機100の各相に流れる電流値が
ある。先に説明した通り、第1実施例の電動機100は
U,V,W相の三相交流をステータ140のコイル14
4に流すことにより運転される。この三相交流のうち、
U相、V相には電流値を検出するための電流センサ2
2,23が設けられている。これらの電流センサ22,
23により検出された電流値はフィルタ24,25によ
り高周波成分を除去された上で、ADC26,27によ
りディジタル信号に変換されてECU12に入力され
る。なお、U相、V相にのみ電流センサ22,23を設
けたのは、三相交流はU相、V相、W相の電流の総和が
値0となる条件下で流れるため、U相、V相の電流値を
検出できればW相の電流は演算により求めることができ
るからである。もとよりW相に電流センサを設けるもの
としても構わない。
【0079】ECU12からは出力ポート18を介して
駆動回路20と4本の信号線で接続されている。U相、
V相、W相の各相の電流を制御するためのゲート信号G
u,Gv,Gwを出力するための3本の線と、全ての電
流をシャットダウンするための信号SDを出力するため
の線である。ECU12は、これらの信号線にハイまた
はロウの信号を出力することにより駆動回路20および
電動機100の運転を制御する。
【0080】駆動回路20はECU12の他、バッテリ
30および電動機100と電気的に接続されている。駆
動回路20はバッテリ30を電源として、電動機100
のU相、V相、W相の各相に電流を流すための回路であ
る。駆動回路20の構成を図14に示す。駆動回路20
は図14に示す通り、トランジスタインバータとして構
成されている。ソース側のトランジスタ(図14中のT
u+,Tv+,Tw+)およびシンク側のトランジスタ
(図14中のTu−,Tv−,Tw−)が2つ一組とし
て、電動機100のU,V,Wの各相ごとに設けられて
いる。ソース側はバッテリ30のプラスに接続され、シ
ンク側はバッテリ30のマイナス側に接続されている。
また、各トランジスタにはフライホイールダイオードと
呼ばれるダイオード(図14中のDu+,Du−,Dv
+,Dv−,Dw+,Dw−)が直列に接続されてい
る。
【0081】この駆動回路20は先に説明した通り、E
CU12と4本の信号線で電気的に接続されている。E
CU12から駆動回路20にはU,V,Wの各相のトラ
ンジスタのスイッチングを制御するための信号Gu,G
v,Gwが出力される。図14に示す通り、例えば信号
Guは2つに分岐され、それぞれディレイ回路Dly
+,Dly−およびアンドゲートAg+,Ag−を経て
トランジスタTu+,Tu−にゲート信号として入力さ
れる。シンク側のトランジスタTu−に伝達される信号
は、途中インバータInvにより反転するため、信号G
uとしてハイまたはロウの信号が入力されるとトランジ
スタTu+,Tu−がそれぞれ排他的にオン・オフされ
る。V相、W相に関しても同様の構成となっている。ま
た、ECU12からシャッドダウン信号SDにロウが出
力されると、アンドゲートAg+,Ag−等を経た出力
は全てロウとなるため、駆動回路20の全トランジスタ
がオフ状態となり、電動機100には一切の電流が流れ
ないようになる。
【0082】なお、図13では電動機100の制御に関
連する部分のみを示しているが、動力伝達装置10が搭
載される装置によってはECU12にその他のセンサま
たはスイッチ等が接続される可能性もある。トルク指令
値はECU12に示したように外部から入力する他、種
々のセンサからの情報に基づいてECU12内で演算に
より設定するものとすることもできる。
【0083】電動機100は先に説明した通りインナロ
ータ軸102とアウタロータ軸104の2つを回転軸と
して有している。以上で説明した構成を有する本実施例
の動力伝達装置10は、後述する作動原理および制御に
基づいて、電動機100に備えられた2つの回転軸の一
方から入力された動力を、その回転数およびトルクを変
換して他方に出力することができる。また、動力の入力
を伴わずに、2つの回転軸の一方または双方から動力を
出力することもできる。さらに、2つの回転軸の一方ま
たは双方から入力された動力を電力として回生すること
もできる。
【0084】(3)動力伝達装置の作動原理:以上で説
明した動力伝達装置についてその作動原理を説明する。
図15は、動力伝達装置に用いられている電動機100
の作動原理を示す説明図である。図1と同様、インナロ
ータ軸102に直交する断面における断面図を示した。
図15では、作動原理の説明の便宜上、アウタロータ1
70とステータ140およびインナロータ110の径方
向の間隔を開けて示した。
【0085】既に説明した通り、本実施例の電動機10
0のステータ140はヨークがない構造をしている。従
って、本実施例の電動機100ではインナロータ110
に備えられた永久磁石114による磁束は、図15に示
す通りインナロータコア112で径方向に湾曲した後、
ステータ140を貫通しアウタロータ170に至る。ア
ウタロータ170に至った後、図15中に破線で示すご
とく、円周方向に曲げられ再びステータ140を貫通し
てインナロータ110に戻る磁気回路を形成する。比較
のために従来の構成、即ちステータにヨークが存在する
場合の磁気回路を図16に示す。図示する通り、ヨーク
が存在する場合にはインナロータ110aから出た磁束
はステータに至った後、ステータ140aのヨークに沿
って円周方向に曲げられ、アウタロータ170aに至る
ことなく再びインナロータ110aに戻る。
【0086】図16に示したように、インナロータ11
0からアウタロータ170に至る磁気回路が形成されな
い場合には、インナロータ110を回転させてもアウタ
ロータ170には何ら誘導起電力が生じない。従って、
インナロータ110からアウタロータ170に動力を伝
達することができない。これに対し、本実施例の電動機
100では図15に示したようにインナロータ110か
らアウタロータ170に至る磁気回路が形成されてい
る。この状態でインナロータ110を外力により回転さ
せると、磁気回路の変化に応じてアウタロータ170に
誘導起電力が生じる。誘導起電力が生じるとアウタロー
タ170には磁界が発生するから、この磁界とインナロ
ータ110により生じる磁界との相互作用によってアウ
タロータ170は回転する。つまり、本実施例の電動機
100はインナロータ110とアウタロータ170との
間で一種の誘導機を構成することができる。この結果、
インナロータ軸102から動力を入力するとアウタロー
タ軸104にその動力を伝達することができる。このと
き、誘導機の性質に基づき、アウタロータ軸104はイ
ンナロータ軸102に対して滑りをもった状態で回転す
る。つまり、「アウタロータ軸104の回転数<インナ
ロータ軸102の回転数」である。なお、こうした効果
はステータ140のコイル144に電流を流していない
ときであっても得られるものである。
【0087】本実施例の電動機100では、上述した動
力伝達の原理を基礎として、インナロータ110からア
ウタロータ170に至る磁気回路を制御することによっ
て、動力の伝達を制御することができる。この動力の伝
達の制御について原理を説明する。図17は、ステータ
140のコイル144に通電した場合の磁気回路の様子
を示す説明図である。図17では本実施例の電動機10
0の一部を拡大して示した。ステータ140のコイル1
44に通電することによりステータでは種々の磁界を発
生することができる。例えば、インナロータ110から
アウタロータ170に至る磁界に対し、反対向きの磁界
を発生することも可能である。図17はこうした反対向
きの磁界が生じている状態を示している。このとき、ア
ウタロータ170にはインナロータ110による磁界と
コイル144による磁界とが重ね合わされた結果、図1
7に白抜きの矢印で示す磁界が生じる。つまり、コイル
144への通電前の状態に比べて弱い磁界がアウタロー
タ170に至ることになる。
【0088】一般に誘導機において、アウタロータ17
0から出力されるトルクはアウタロータ170とステー
タ140の間のエアギャップ中の磁界の強さおよびイン
ナロータ110とアウタロータ170の相対的なすべり
量に応じて変化する。誘導機において出力されるトルク
とすべり量および上記エアギャップ中の磁界の強さとの
関係を図18に示した。図示する通り、すべり量が一定
であるならば、エアギャップ中の磁界が強くなる程出力
されるトルクは大きくなる。また、エアギャップ中の磁
界が一定のまますべり量を徐々に大きくしていくと、あ
るすべり量に至るまではすべり量に応じてトルクは大き
くなる。あるすべり量でトルクが極大となり、それ以上
のすべり量ではトルクは徐々に小さくなる。通常、誘導
機はトルクが極大となるすべり量以下のすべり量で使用
される。
【0089】本実施例では上述した通り、ステータ14
0のコイル144に通電することにより、アウタロータ
170とステータ140の間のエアギャップ中の磁界の
強弱を変化させることができる。図17に示したように
コイル144に通電することによりエアギャップ中の磁
界を弱めれば、上述の誘導機の原理の基づき、通電前の
状態よりも伝達されるトルクを小さくすることができ
る。また、伝達されるトルクが一定、即ちアウタロータ
軸104にかかる負荷が一定であれば、インナロータ軸
102とアウタロータ軸104のすべり量を大きくする
ことができる。これは、通電前よりもアウタロータ軸1
04をより低速回転することができることを意味する。
【0090】こうした動力伝達の様子を図19に示す。
各回転軸の動力は、図19に示す通り横軸に回転数、縦
軸にトルクをとって表した平面内のいずれかの回転ポイ
ントで表現することができる。一般に動力、即ち単位時
間当たりのエネルギは回転数×トルクで表される。従っ
て、動力の大きさが一定となる回転には種々の回転ポイ
ントが対応する。図19中に示した曲線P1,P2,P
3は、それぞれ動力の大きさが一定となる回転ポイント
を結んだ曲線である。
【0091】仮にステータ140のコイル144に通電
していない場合におけるアウタロータ軸104の回転状
態が図19中の回転ポイントDP1で表されるものとす
る。つまり、回転数N1、トルクT1であるとする。こ
のとき、アウタロータ軸104にかかる負荷トルクT1
を一定としたままアウタロータ170とステータ140
の間のエアギャップ中の磁界を弱めれば、アウタロータ
軸104はより低速の回転ポイント、つまり図19中の
回転ポイントDP2(回転数N2、トルクT1)に移行
する。この結果、アウタロータ軸104からは通電前の
動力P1(N1×T1)よりも低い動力P2(N2×T
1)が出力されることになる。なお、通電時におけるア
ウタロータ軸104の回転状態は回転ポイントDP2の
みならず、負荷に応じて曲線P2上の種々の回転ポイン
トに相当する状態を採り得る。
【0092】ステータ140のコイル144への通電量
を制御すれば、インナロータ110からアウタロータ1
70に至る磁気回路を遮断することも可能である。かか
る状態を図20に示した。図20は、インナロータ11
0からアウタロータ170に至る磁界に対し、同じ強さ
逆向きの磁界をステータ140で生じさせた状態を示し
ている。この場合、インナロータ110による磁界とス
テータ140による磁界は相殺するから、インナロータ
110からアウタロータ170に至る磁界は形成されな
い。かかる状態でインナロータ110を回転させてもア
ウタロータ170は回転しない。本実施例の電動機10
0ではこのようにステータ140に生じる磁界の強さを
制御することにより、インナロータ軸102とアウタロ
ータ軸104との間でクラッチとして機能し、クラッチ
を解放した状態を実現することができる。このときのア
ウタロータ軸104の回転状態は、図19の原点Oに相
当する。
【0093】一方、アウタロータ170はステータ14
0との間でも誘導機を構成している。従って、インナロ
ータ110を回転不能にした状態で、ステータ140の
コイル144に通電して回転磁界を生じさせれば、この
回転磁界に応じてアウタロータ170は回転する。この
回転磁界の強さおよび回転速度を制御すれば、アウタロ
ータ170を誘導機として所望のトルクおよび回転数で
回転させることができる。一般に誘導機では、コイル1
44に流す電流を、アウタロータ170に誘導起電力を
生じさせるための電流と誘導起電力によって生じる磁界
との相互作用によってトルクを生じさせるための電流の
2つの成分に基づいて制御する。前者を励磁電流と呼
び、後者をトルク電流と呼ぶ。トルク指令値に応じて励
磁電流およびトルク電流の大きさを設定した上で、回転
数の指令値に応じて磁界が回転するように各相に電流を
流すのである。かかる制御の詳細については、誘導機の
制御として周知の技術であるため、ここでは説明を省略
する。
【0094】図17および図20を用いて説明したステ
ータ140の電流の制御は、こうした励磁電流とトルク
電流の制御の一種である。一般の誘導機であれば、イン
ナロータ110が存在しないため、電流値はステータ1
40によって生じる磁界のみを考慮して設定することに
なるが、本実施例の電動機100ではインナロータ11
0による磁界を考慮した上で効率、力率の高い状態で運
転できるように電流値を設定するという点で相違する。
【0095】さて、図17では、励磁電流とトルク電流
とを制御することにより、例えばインナロータ110か
ら入力された動力をすべり量の大きい状態でアウタロー
タ170に伝達可能であることを説明した。つまり、コ
イル144に通電する前のアウタロータ軸104の回転
数およびトルクに対し、同じトルクかつ低い回転数で動
力を出力可能であることを説明した。このとき、図19
に示す通り、アウタロータ軸104から出力される動力
は、通電前の動力P1(N1×T1)よりも低い動力P
2(N2×T2)となる。以下に示す通り、図17の状
態では、この差分の動力は電力としてステータ140の
コイル144から回生されている。
【0096】先に図17において、コイル144に通電
することによりインナロータ110による磁界と逆向き
の磁界を生じさせると説明した。実際にはこの通電はイ
ンナロータ110の回転によってコイル144に生じる
誘導起電力に基づく電流として実現されている。コイル
144に図17に示す向きに磁界が生じると、コイル1
44には逆向きの磁界を生じさせる電流を流し得る誘導
起電力が発生する。この起電力によって生じた磁界が図
17に示した逆向きの磁界に他ならない。従って、図1
7の状態では、電動機100はインナロータ軸102か
ら入力された動力の一部を電力として回生しつつ、残余
の動力をアウタロータ軸104から出力している状態に
相当する。
【0097】図17に示す逆向きの励磁電流が流れてい
る状態において、更にコイル144に正のトルク電流を
流せば、その大きさに応じてアウタロータ軸104から
出力されるトルクを増大させることができる。トルク電
流を適切に設定すれば、通電前の動力P1と等しい動力
をアウタロータ軸104から出力することも可能であ
る。図17に示す磁界を生じるように励磁電流が流れ、
アウタロータ軸104が通電前よりも低い回転数N2で
回転している場合に、両者の動力の大きさを等しくした
場合には、アウタロータ軸104の回転状態は図19に
示す回転ポイントDP3に移行することになり、通電前
の回転ポイントDP1よりも大きなトルクが出力される
ことになる。
【0098】なお、通電前の動力P1と等しい動力がア
ウタロータ軸104から出力される場合には、エネルギ
のバランスから明らかな通り、ステータ140ではエネ
ルギの授受が生じない。励磁電流はインナロータ110
の回転に伴う誘導起電力によって生じる電流であること
を先に説明した。インナロータ軸102とアウタロータ
軸104の動力が等しくなるようにコイル144にトル
ク電流を流した場合、インナロータ110の回転により
回生された電力がトルク電流を流す電力として消費さ
れ、両者が均衡した状態でコイル144に電流が流れる
のである。これは、コイル144のU相、V相、W相の
内部で環流が生じ、バッテリ30と電力のやりとりがな
い状態に相当する。
【0099】環流の一例を図14中に矢印で示した。図
示する通り、U相のソース側のトランジスタTu+を通
る電流はU相コイルに流れ込み、V相、W相から流出す
る。各コイルには誘導起電力が生じているため、この間
に電位が高くなる。この結果、V相、W相のコイルから
流出した電流は、それぞれのソース側に設けられたフラ
イホイールダイオードDv+,Dw+を通り、U相のソ
ース側のトランジスタTu+に戻る。つまり、バッテリ
30を通過することなく電流が流れる。これが環流の一
例である。もっともこれはエネルギの損失が全くない理
想的な場合に過ぎない。現実にはコイル144のインピ
ーダンスやトランジスタのオン抵抗等に伴うエネルギ損
失が生じるため、その分の電力がバッテリ30から供給
されることになる。
【0100】更に大きな正のトルク電流を流せば、通電
前の回転ポイントDP1よりも大きな動力、例えば図1
9における回転ポイントDP4に相当する動力を出力す
ることも可能である。かかる場合にはインナロータ軸1
02から入力された動力に対し、バッテリ30の電力を
用いてトルクアシストした上でアウタロータ軸104か
ら出力した状態に相当する。もちろん、アウタロータ軸
104は、回転ポイントDP4以外の種々のポイントで
回転可能である。
【0101】こうして、本実施例の電動機100では励
磁電流とトルク電流を制御することにより、インナロー
タ軸102から入力された動力を種々の回転数およびト
ルクに変換してアウタロータ軸104から出力すること
が可能である。上述の作動原理の説明では、インナロー
タ110およびアウタロータ170のある静的な状態を
捉えて説明したが、現実には両者は回転しているため、
ステータ140に生じる磁界も両者の回転速度に応じて
回転するように制御される。また、上述の作動原理の説
明では、インナロータ軸102が動力の入力軸となる場
合を例にとって説明したが、逆にアウタロータ軸104
が動力の入力軸となる場合であっても同様の作用を奏す
ることができる。
【0102】以上で説明した電動機100によれば、同
軸上にインナロータ110,ステータ140,アウタロ
ータ170を配置することにより、インナロータ軸10
2およびアウタロータ軸104の両者の回転状態を制御
可能な電動機を小さなサイズで形成することができる。
また、ステータ140にいわゆる集中巻きを採用するこ
とにより電動機100を容易に製造することが可能とな
る。
【0103】本実施例の電動機100では、インナロー
タ軸102およびアウタロータ軸104の回転状態を制
御するための駆動回路20が一つで済むという利点もあ
る。駆動回路20を減らすことができるため、装置のサ
イズをさらに小さくすることができ、また装置のコスト
を低減することもできる。既に説明した通り、この駆動
回路はステータ140のコイル144に流れる電流を制
御するための回路である。本実施例の電動機100で
は、インナロータ110およびアウタロータ170に
は、電力を供給する必要がない。従って、電力の供給に
際しスリップリング等を用いる必要もない。この結果、
本実施例の電動機100は非常に耐久性に優れた電動機
となる。
【0104】本実施例の電動機100では、内側からイ
ンナロータ110、ステータ140、アウタロータ17
0の順に配置したことにより、インナロータ110およ
びアウタロータ170の回転の制御が容易になるという
利点もある。例えば、ステータ140を最も外側または
内側に配置した場合、インナロータ110の回転を制御
すれば、その反作用がアウタロータ170に現れること
になり、両者のトルクを適切に制御することは困難とな
る。本実施例の電動機100では、上述の配置を取るこ
とにより、インナロータ110またはアウタロータ17
0の回転の制御時の反作用をステータ140で吸収する
ことができるため、これらの回転の制御が容易になるの
である。また、かかる配置によりステータ140とイン
ナロータ110およびアウタロータ170との間隔が近
くなり、両者の制御に多大なエネルギを必要としないと
いう利点もある。
【0105】上記説明では、本実施例の電動機100を
用いた動力伝達装置10を提案した。本実施例の動力伝
達装置10によれば、インナロータ軸102から入力さ
れた動力を種々の回転数およびトルクに変換してアウタ
ロータ軸104から出力することができる。また、イン
ナロータ軸102からの動力の入力に関わらず、アウタ
ロータ軸104から動力を出力することも可能である。
さらに、インナロータ軸102から入力された動力を電
力として回生することも可能である。これらの作用は従
来技術として説明したクラッチモータCMとアシストモ
ータAMとを組み合わせた動力伝達装置(図55参照)
と同様の作用である。本実施例の動力伝達装置10によ
れば、かかる作用を小さな装置で実現することが可能で
ある。
【0106】従来技術として図55に示した動力伝達装
置では、クラッチモータCMにおいて機械的な動力の一
部を一旦電力に変換し、アシストモータAMにおいて再
度機械的な動力に再変換するという過程を経て、トルク
変換を実現している。機械的な動力と電力との変換では
ある程度の損失が生じるのが通常である。これに対し、
本実施例の動力伝達装置10では、ステータ140のコ
イル144に流れる電流により、2つのインナロータ1
10とアウタロータ170、ステータ140との間の磁
気エネルギの授受を直接制御し、アウタロータ軸104
に伝達される動力を所望の回転数およびトルクに変換す
ることができる。従って、本実施例の動力伝達装置10
はインナロータ軸102から入力された動力をトルク変
換して効率よくアウタロータ軸104から出力すること
が可能である。
【0107】本実施例の電動機100では、永久磁石を
備えたインナロータ110と、巻線を備えたアウタロー
タ170とで誘導電動機が構成されている。かかる電動
機100では、ステータ140のコイル144に通電し
ない場合であっても、インナロータ110の回転に伴っ
てアウタロータ170が回転する。従って、かかる電動
機100を適用した本実施例の動力伝達装置10は、駆
動回路20またはバッテリ30の故障等でコイル144
に通電できない場合であっても、インナロータ軸102
からアウタロータ軸104に動力を伝達することが可能
である。
【0108】(4)第2実施例としての電動機および動
力伝達装置:次に、第2実施例としての電動機および動
力伝達装置の構成を説明する。図21および図22に本
発明の第2実施例としての電動機の構成を示す。図21
は、回転軸に直交する断面における断面図であり、図2
2は回転軸に沿う方向の断面における断面図である。図
21に示す通り、第2実施例の電動機200は、インナ
ロータ軸202を中心として同心円状に内側からインナ
ロータ210、ステータ240、アウタロータ270が
配置されている。図21では、巻回されているコイルに
ついては図示を省略した。図22に示す通り、アウタロ
ータ270はアウタロータ軸204に結合されている。
インナロータ軸202、ステータ140、アウタロータ
軸204は、相互に軸受け206〜208を介して相対
的に回転可能に結合されている。
【0109】電動機200のインナロータ210、ステ
ータ240、アウタロータ270のそれぞれの構造につ
いて説明する。図23〜図25はそれぞれ回転軸に直交
する断面におけるインナロータ210、ステータ24
0、アウタロータ270の断面図である。図26〜図2
8は、それぞれ回転軸に沿う方向の断面におけるインナ
ロータ210、ステータ240、アウタロータ270の
断面図である。最初に図23および図26を用いてイン
ナロータ210の構成を説明し、次に図24および図2
7を用いてステータ240の構成を説明し、最後に図2
5および図28を用いてアウタロータ270の構成を説
明する。
【0110】インナロータ210は、図23に示す通
り、大きくはインナロータコア212と永久磁石214
とから構成される。インナロータコア212は、図23
に示すようにリング状の断面形をしている。インナロー
タコア212は、図26に示す通り無方向性電磁鋼板の
薄板を打ち抜いて形成された板状インナロータコアをイ
ンナロータ軸202の方向に積層することにより形成さ
れている。板状インナロータコアの表面は絶縁層が形成
されている。板状インナロータコアは積層された上で、
インナロータ軸202が圧入され、ボルト216で固定
される。なお、板状インナロータコア212の表面に接
着層を形成しておき、板状インナロータコアを積層し互
いに押圧した状態とした上で、接着層を加熱・溶融して
一応固定した上で、インナロータ軸202を圧入するも
のとしても構わない。
【0111】インナロータコア212の外周面には、図
23に示す通り16個の永久磁石214が貼付されてい
る。永久磁石214はそれぞれ径方向に磁極が向くよう
に配置されており、外周面にN極、S極が交互に現れる
ように配置されている。第2実施例では、永久磁石21
4を表面に貼付しているが、第1実施例で説明したよう
に永久磁石をインナロータ210に内包するものとして
も構わない。また、外周付近に円周方向に設けられた孔
に永久磁石を挿入してもよい。
【0112】ステータ240の構成は、第1実施例で説
明したステータ140の構成とほぼ同じである。第1実
施例におけるステータ140は12個のステータコア1
42を備えていたのに対し、第2実施例のステータ24
0は18個のステータコア242を備える点で相違す
る。ステータコア242には、コイル244が集中巻き
されている。各ステータコア242同士およびフランジ
247,248は樹脂モールドにより固定されている。
本実施例のステータ240も第1実施例のステータ14
0と同様、ヨークがない構造をなしている。
【0113】アウタロータ270は、図25に示す通
り、大きくはアウタロータコア272と永久磁石274
とから構成される。アウタロータコア272は図25に
示すようにリング状の断面をなしている。また、無方向
性電磁鋼板の薄板を積層して形成されている。アウタロ
ータコア272の内周面には、永久磁石274が貼付さ
れている。永久磁石274はそれぞれ径方向に磁極が向
くように配置されており、内周面にN極、S極が交互に
現れるように配置されている。アウタロータ270はア
ウタロータ軸204が圧入されたフランジ277とボル
ト278により固定されている。
【0114】以上で説明した通り、第2実施例の電動機
では、インナロータ210とアウタロータ270に永久
磁石214,274が貼付されている。両者に貼付され
る永久磁石214,274の数は等しい。なお、永久磁
石214,217の数はステータコア242の数に応じ
て自由に設定可能である。但し、後述する理由によりイ
ンナロータ210とアウタロータ270に備えられた永
久磁石の数は同じにしておくことが望ましい。
【0115】以上で説明した各構成を有するインナロー
タ210、ステータ240およびアウタロータ270を
図22に示した配置で軸受け206〜208を介して組
み立てることにより、第2実施例の電動機200が完成
する。図21および図22には示していないが、電動機
200はステータ240をケース等に固定することによ
り種々の装置に搭載可能である。もちろん、さらにイン
ナロータ軸202およびアウタロータ軸204を軸受け
を介して装置に組み付けるものとしても構わない。
【0116】第1実施例の動力伝達装置10において、
電動機100を第2実施例の電動機200に置換すれ
ば、動力伝達装置を構成することができる。電動機以外
のハードウェア構成は第1実施例と同じである。かかる
動力伝達装置の作動原理について説明する。
【0117】第2実施例の電動機200においても、ス
テータ240としてヨークがない構造を適用しているた
め、インナロータ210からステータ240を貫通して
アウタロータ270に至る磁気回路が形成される。第1
実施例の電動機100では、インナロータ110とアウ
タロータ170とは誘導機を構成していた。これに対
し、第2実施例の電動機200では、インナロータ11
0とアウタロータ170とは磁気的な結合により一体的
に回転する磁気カップリングを構成する。つまり、ステ
ータ240のコイル244に通電しない状態では、イン
ナロータ軸202とアウタロータ軸204とはすべりの
ない状態で回転する。本実施例においてインナロータ2
10とアウタロータ270に貼付された永久磁石21
4,274の数を一致させているのは、かかる場合にイ
ンナロータ210とアウタロータ270との間で最も強
い磁気結合が得られるからである。
【0118】ステータ240のコイル244に通電する
と、インナロータ210からアウタロータ270に至る
磁界の強さを制御することができる。従って、第1実施
例の電動機100と同様、インナロータ軸202から入
力される動力に対しアウタロータ軸204に出力される
動力の大きさを制御することができる。この際、第1実
施例の電動機100と異なり、インナロータ210とア
ウタロータ270はすべりを生じない状態で回転するた
め、例えばコイル244に通電してアウタロータ270
に至る磁界を弱めれば、アウタロータ軸204にはその
分低いトルクで動力が伝達されることになる。
【0119】また、コイル244の通電状態を制御し
て、インナロータ210からアウタロータ270に至る
磁界を遮断することもできる。この場合には、動力伝達
装置は解法されたクラッチとして機能することになる。
先に第1実施例において説明した通り、かかる場合には
インナロータ軸202から入力される動力の全てを電力
として回生している状態に相当する。
【0120】一方、ステータ240とアウタロータ27
0とは、同期機を構成する。つまり、ステータ240の
コイル244に通電して回転磁界を生じさせると、その
磁界の回転に応じてアウタロータ270は回転する。同
期機においても第1実施例において説明した誘導機の制
御と同じく2つの成分に基づいてコイル244に通電す
る電流の大きさが決められる。インナロータ210を回
転不能に固定して、トルクおよび回転数の指令値に基づ
いてコイル244に電流を通電すれば、アウタロータ2
70は所望の回転数およびトルクで力行する。
【0121】インナロータ210の動力を回生するため
の電流、および所望のトルクおよび回転数でアウタロー
タ270を力行するための電流を重畳してステータ24
0のコイル244に流せば、インナロータ210からの
動力をトルク変換してアウタロータ270から出力する
ことができる。インナロータ210から入力される動力
とアウタロータ270から出力される動力の大きさが等
しければ、バッテリ30からの電力の授受は伴わずにト
ルク変換することができるし、両者の大きさに差異があ
ればその差異に応じた電力がバッテリ30との間でやり
とりされる。
【0122】以上で説明した電動機200および動力伝
達装置によれば、第1実施例の電動機100とほぼ同等
の効果を得ることができる。なお、第1実施例ではイン
ナロータ110に対して低い回転数でアウタロータ27
0が回転する状態が基本的な状態であったが、第2実施
例ではインナロータ210とアウタロータ270とが同
じ回転数で回転する状態が基本的な運転状態となる。従
って、第2実施例の電動機200および動力伝達装置は
インナロータ軸202およびアウタロータ軸204の回
転数の差が比較的小さい場合に適している。
【0123】(5)第3実施例としての電動機および動
力伝達装置:次に、第3実施例としての電動機300お
よび動力伝達装置の構成を説明する。図29に本発明の
第3実施例としての電動機300の構成を示す。図29
は、回転軸に直交する断面における断面図である。回転
軸に沿う方向の断面における構成は、第1実施例および
第2実施例の電動機とほぼ同じであるため省略する。図
29に示す通り、第3実施例の電動機300は、インナ
ロータ軸302を中心として同心円状に内側からインナ
ロータ310、ステータ340、アウタロータ370が
配置されている。第1実施例および第2実施例の電動機
と同様、アウタロータ370はアウタロータ軸に結合さ
れている。インナロータ軸302、ステータ320、ア
ウタロータ軸304は、相互に軸受けを介して相対的に
回転可能に結合されている。
【0124】電動機300のインナロータ310、ステ
ータ340、アウタロータ370のそれぞれの構造につ
いて説明する。図30〜図32はそれぞれ回転軸に直交
する断面におけるインナロータ310、ステータ34
0、アウタロータ370の断面図である。また、図33
にはインナロータ310のインナロータ軸302に沿う
方向の断面における断面図を模式的に示す。
【0125】インナロータ310は、図30に示す通
り、いわゆるかご型誘導機に用いられるかご型回転子
と、その内側に位置する永久磁石316とから構成され
る。かご型回転子は、インナロータコア312とロータ
バー314から構成されている。インナロータコア31
2は、図30に示すようにリング状の断面形をしてお
り、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されてい
る。ロータバー314は銅棒であり、インナロータコア
312の外周面に形成された溝にそれぞれ埋め込まれて
いる。また、ロータバー314は端部においてリング状
の短絡板で結合されている。ロータバー314の表面は
絶縁層が形成されている。
【0126】かご型回転子の内側には図30に示すよう
に8つの永久磁石316が備えられている。この永久磁
石316はインナロータコア312と異なる第2インナ
ロータコア318の外周面に貼付されている。永久磁石
316はそれぞれ径方向に磁極が向くように配置されて
おり、外周面にN極、S極が交互に現れるように配置さ
れている。
【0127】永久磁石316を貼付した第2インナロー
タコア318は、インナロータ310に拘束されない状
態で回転可能である。また、図33に示す通り、クラッ
チ308でインナロータ軸302に設けられたクラッチ
ディスク306と結合することにより両者を一体として
回転することも可能である。
【0128】ステータ340の構成は、第1実施例で説
明したステータ140の構成とほぼ同じである。第1実
施例におけるステータ140は12個のステータコア1
42を備えていたのに対し、図31に示す通り、第3実
施例のステータ240は24個のステータコア342を
備える点で相違する。また、第1実施例ではコイル14
4が集中巻きされていたのに対し、第3実施例ではコイ
ル344を分布巻している点で相違する。各ステータコ
ア342同士およびフランジは樹脂モールドにより固定
されている。本実施例のステータ340も第1実施例の
ステータ140と同様、ヨークがない構造をなしてい
る。もちろん、本実施例のステータ340においても第
1実施例と同様、集中巻きによりコイル344を巻回し
ても構わない。
【0129】アウタロータ370は、図32に示す通
り、大きくはアウタロータコア372と永久磁石374
とから構成される。アウタロータコア372は図32に
示すようにリング状の断面をなしている。また、無方向
性電磁鋼板の薄板を積層して形成されている。アウタロ
ータコア372の内周面には、永久磁石374が貼付さ
れている。永久磁石374はそれぞれ径方向に磁極が向
くように配置されており、内周面にN極、S極が交互に
現れるように配置されている。アウタロータ370はア
ウタロータ軸に固定されている。
【0130】以上で説明した各構成を有するインナロー
タ310、ステータ340およびアウタロータ370を
軸受けを介して組み立てることにより、第3実施例の電
動機300が完成する。図29には示していないが、電
動機300はステータ340をケース等に固定すること
により種々の装置に搭載可能である。もちろん、さらに
インナロータ軸302およびアウタロータ軸を軸受けを
介して装置に組み付けるものとしても構わない。
【0131】第1実施例の動力伝達装置10において、
電動機100を第3実施例の電動機300に置換すれ
ば、動力伝達装置10Aを構成することができる。この
動力伝達装置10Aの構成を図34に示す。電動機以外
のハードウェア構成は第1実施例とほぼ同じであるが、
第3実施例の動力伝達装置10Aでは、さらにインナロ
ータ軸302の回転数を検出するインナロータ軸回転数
センサ303およびアウタロータ軸304の回転数を検
出するアウタロータ軸回転数センサ305を設ける。後
述する通り、インナロータ軸302とアウタロータ軸3
04の回転数に応じて永久磁石316とインナロータ3
10との結合を制御するためである。回転数センサとし
ては種々のセンサが適用可能であるし、センサを用いず
に演算等によって算出するものとしても構わない。かか
る動力伝達装置10Aの作動原理について説明する。
【0132】第3実施例の電動機300においても、ス
テータ340としてヨークがない構造を適用しているた
め、インナロータ310からステータ340を貫通して
アウタロータ370に至る磁気回路が形成される。第1
実施例の電動機100では、インナロータ310とアウ
タロータ370とは誘導機を構成していた。第3実施例
では、インナロータ310に備えられた永久磁石316
をインナロータ310に拘束されない状態にそれば、ア
ウタロータ370との間でかご型の誘導機を構成するこ
とができる。もっとも、第1実施例の電動機100では
インナロータ110に永久磁石が配置され、アウタロー
タ170が巻線型の回転子となっていることを考えれ
ば、第3実施例の電動機300ではその配置が逆の場合
に相当する。
【0133】一方、永久磁石316を備える第2インナ
ロータをインナロータ310と一体として回転可能な状
態に切り替えれば、第2実施例の電動機200と同様、
インナロータ310とアウタロータ370とは磁気カッ
プリングを構成する。つまり、第3実施例の電動機30
0では、永久磁石316とインナロータ310との結合
状態を切り替えることにより、第1実施例の電動機と同
様の作用を奏することもできるし、第2実施例の電動機
と同様の作用を奏することもできる。
【0134】ステータ340のコイル344への通電に
よりインナロータ310からアウタロータ370に至る
磁界を制御し、両者の回転を制御する原理については、
第1実施例および第2実施例の動力伝達装置と同様であ
る。従って、ここでは詳細な説明は省略する。第3実施
例では、永久磁石316とインナロータ310との結合
状態の切り替えが特徴的であるため、かかる制御につい
て説明する。
【0135】図35は、インナロータ310における上
記結合の切り替えの制御について示すフローチャートで
ある。この処理はECU12内のCPU13により周期
的に実行される処理である。この処理が開始されるとC
PU13は、インナロータ軸302の回転数Ninおよ
びアウタロータ軸304の回転数Noutを読み込む
(ステップS100,S102)。両者の回転数はそれ
ぞれ回転数センサ303,305により検出される。次
に、インナロータ軸の回転数Ninとアウタロータ軸の
回転数Noutの大小を比較する(ステップS10
4)。インナロータ軸の回転数Ninがアウタロータ軸
の回転数Noutよりも小さい場合には、クラッチ30
8を解放する処理を実行する(ステップS108)。イ
ンナロータ軸の回転数Ninがアウタロータ軸の回転数
以上である場合には、クラッチ308を結合する処理を
実行する(ステップS110)。
【0136】既に説明した通り、永久磁石316をイン
ナロータ310に拘束されないで回転可能な状態にすれ
ば、第3実施例の電動機300は第1実施例の電動機1
00と同じ効果を奏する。第1実施例の電動機100は
インナロータ110に対し、アウタロータ170が低い
回転数で回転する状態が基本状態であった。従って、第
3実施例の動力伝達装置では、「インナロータ軸302
の回転数Nin<アウタロータ軸304の回転数Nou
t」となった場合には永久磁石316をインナロータ3
10に拘束されないで回転可能な状態に切り替えるので
ある。
【0137】一方、永久磁石316をインナロータ31
0と一体として回転可能な状態にすれば、第3実施例の
電動機300は第2実施例の電動機200と同じ効果を
奏する。第2実施例の電動機200はインナロータ21
0とアウタロータ270が同じ回転数で回転する状態が
基本状態であった。従って、第3実施例の動力伝達装置
では、インナロータ軸302の回転数Ninとアウタロ
ータ軸304の回転数Noutとが概ね等しくなった場
合に両者が一体的に回転可能な状態に切り替えるのであ
る。図35のフローチャートでは、インナロータ軸30
2の回転数Ninがアウタロータ軸304の回転数No
utよりも小さい場合には必ずクラッチ解放処理を行う
ものとして図示したが、実際には「インナロータ軸30
2の回転数Nin<アウタロータ軸304の回転数No
ut」であっても、両者が略同一の回転数になった時点
でクラッチ308を結合することができる。
【0138】なお、インナロータ軸302とアウタロー
タ軸304の回転数の変動に伴って頻繁に切り替えが行
われることを回避するために、上記切り替えについては
一定のヒステリシスを設けておくことが望ましい。以上
で説明した第3実施例の動力伝達装置によれば、第1実
施例および第2実施例の動力伝達装置よりも広い範囲で
適切に動力を伝達することができる。
【0139】(6)第4実施例としての電動機および動
力伝達装置:次に、第4実施例としての電動機および動
力伝達装置の構成を説明する。図36および図37に本
発明の第4実施例としての電動機の構成を示す。図36
は、回転軸に直交する断面における断面図であり、図3
7は回転軸に沿う方向の断面における断面図である。図
36に示す通り、第4実施例の電動機400は、インナ
ロータ軸402を中心として同心円状に内側からインナ
ロータ410、ステータ440、アウタロータ470が
配置されている。図37では図示していないが、アウタ
ロータ470はアウタロータ軸に結合されている。イン
ナロータ軸402、ステータ440、アウタロータ軸4
04は、相互に軸受けを介して相対的に回転可能に結合
されている。
【0140】電動機400のインナロータ410、ステ
ータ440、アウタロータ470のそれぞれの構造につ
いて説明する。図38〜図40はそれぞれ回転軸に直交
する断面におけるインナロータ410、ステータ44
0、アウタロータ470の断面図である。
【0141】インナロータ410は、図37に示す通
り、インナロータ軸402の方向に直列に配置された2
つのロータ410A,410Bから構成される。インナ
ロータ410A,410Bのそれぞれは、図38に示す
通り、大きくはインナロータコア412と永久磁石41
4とから構成される。その構成は第2実施例の電動機2
00のインナロータ210と同じである。つまり、図3
8に示す断面形をしたインナロータコア412の外周面
には、16個の永久磁石414が貼付されている。永久
磁石214はそれぞれ径方向に磁極が向くように配置さ
れており、外周面にN極、S極が交互に現れるように配
置されている。
【0142】インナロータ410A,410Bはともに
インナロータ軸402に結合されている。両者は回転方
向の位置関係(以下、ピッチと呼ぶ)が変更可能となっ
ている。この位置関係は、電動機400の運転中でも変
更可能である。図38(a)では双方のロータ410
A,410Bに備えられた永久磁石414について、対
応する永久磁石同士が正面から見て一致する状態を示し
ている。図38(b)では、後方に位置するロータ41
0Bをロータ410Aに対して相対的に回転し、対応す
る永久磁石同士がずれた位置にある状態を示している。
本実施例ではこのようにインナロータ410A,410
Bの位置関係を変更することができるのである。両者の
位置関係を変更可能な範囲は、ロータ410Bについて
図38(a)において番号0の位置にあった磁石が番号
1の位置まで回転するのに相当する範囲である。
【0143】図37に基づいてインナロータ410A,
410Bのピッチを変更する機構について説明する。イ
ンナロータ軸402には、インナロータ410Bの内周
面と結合する部分に、図37中の破線OLで示すように
ねじ状の溝が刻んである。インナロータ410Bの内周
面にもこの溝OLに適合する溝が刻んである。インナロ
ータ410Bにはアクチュエータ406が結合されてお
り、油圧によって図37に示すSLD方向、つまりイン
ナロータ軸402の軸方向に移動可能となっている。こ
のアクチュエータ406によりインナロータ410Bを
軸方向SLDに移動させると、インナロータ410Bは
先に説明した溝OLの作用によってSLD方向への移動
に伴いインナロータ軸402の周方向に相対的に回転す
る。このときインナロータ410Aはインナロータ軸4
02に対して固定された状態を保っているため、インナ
ロータ410A,410Bのピッチが変わることにな
る。ピッチの変更機構としては、かかる機構の他に例え
ばインナロータ410Bをインナロータ軸402の周方
向に回転させるためのモータを設けるなど、種々の機構
を採用し得る。なお、本実施例のアクチュエータ406
はECU12と電気的に接続されており、ECU12か
らの制御信号によりインナロータ410BのSLD方向
の移動を制御してロータピッチを変更する。
【0144】ステータ440は、図37に示す通り、ロ
ータ410A,410Bに対応するステータコア442
A,442Bとコイル444A,444Bと、ガイド部
446A,446Bとから構成される。ステータコア4
42A,442Bは、それぞれ図39に示す断面形をし
た12の部分から成り立っている。これらのステータコ
ア442A,442Bは、図37に示す通り無方向性電
磁鋼板の薄板を打ち抜いて形成された板状ステータコア
を回転軸方向に積層することにより形成されている。ま
た、それぞれのステータコア442A,442Bには、
コイル444A,444Bが巻回されている。
【0145】これらのステータコア442A、442B
は円周方向に配列した上で第1実施例のステータ140
と同様、樹脂モールドにより固定される。ステータコア
442A,442Bの外周部にはステータコア442
A,442Bからの磁束をアウタロータ470に導くた
めのガイド部446A,446Bが結合されている。ガ
イド部446A,446Bは無方向性電磁鋼板の一体成
形である。回転軸に沿った方向には図37に示す断面形
状をしており、回転軸に直交する方向には図39に示す
通り長方形の断面形状をしている。ガイド部446A,
446Bは図39に示す通り、円周上に交互に配置され
ている。図39では、ガイド部446Bを一点鎖線で示
した。ステータ440の構造を斜視図により図41に示
した。図41中、ハッチングを施した部分は樹脂モール
ドされた部分である。ステータ440を貫通した磁束
は、このガイド部446A,446Bを通ることによっ
てインナロータ軸402方向にスライドされ、アウタロ
ータ470に至る。第4実施例のステータ440もヨー
クがないという点では、これまでに説明した電動機10
0,200,300のステータと共通している。
【0146】アウタロータ270は、図40に示す通
り、ステータ440との間でかご型誘導機を構成しうる
かご型の回転子として構成されている。大きくはアウタ
ロータコア472とロータバー474とから構成され
る。アウタロータコア472は図40に示すようにリン
グ状の断面をなしている。また、無方向性電磁鋼板の薄
板を積層して形成されている。アウタロータコア472
の内周面には、ロータバー474が埋め込まれている。
ロータバー474は銅棒であり、表面は絶縁されてい
る。また、図37および図40では図示していないが、
ロータバー474同士は端部でリング状の短絡板により
結合されている。アウタロータ470はアウタロータ軸
と固定されている。本実施例ではアウタロータ470を
かご型の回転子として形成したが、第1実施例のアウタ
ロータ170のように巻線型の回転子として構成しても
構わない。
【0147】以上で説明した各構成を有するインナロー
タ410、ステータ440およびアウタロータ470を
図37に示した配置で軸受けを介して組み立てることに
より、第4実施例の電動機400が完成する。かかる構
成により、第4実施例の電動機400は、ステータ44
0またはインナロータ410とアウタロータ470との
間でかご型の誘導機を構成することになる。図36およ
び図37には示していないが、電動機400はステータ
440をケース等に固定することにより種々の装置に搭
載可能である。もちろん、さらにインナロータ軸402
およびアウタロータ軸404を軸受けを介して装置に組
み付けるものとしても構わない。
【0148】第1実施例の動力伝達装置10において、
電動機100を第4実施例の電動機400に置換すれ
ば、動力伝達装置を構成することができる。電動機以外
のハードウェア構成は第1実施例と同じである。かかる
動力伝達装置の作動原理について説明する。
【0149】第4実施例の電動機400においても、ス
テータ440としてヨークがない構造を適用しているた
め、インナロータ410からステータ440を貫通して
アウタロータ470に至る磁気回路が形成される。第4
実施例の電動機400では、第1実施例の電動機100
と同様、インナロータ410とアウタロータ470との
間で誘導機を構成する。また、ステータ440のコイル
444に通電することにより、インナロータ410から
アウタロータ470に至る磁界の強さを制御することが
できる。従って、第1実施例の電動機100と同様の制
御により、インナロータ軸402から入力される動力に
対しアウタロータ軸404に出力される動力の大きさを
制御することができる。インナロータ軸402から入力
される動力を電力として回生したり、アウタロータ47
0を力行したりすることも可能である。
【0150】一方、第4実施例の電動機では、インナロ
ータ410A,410Bの位置関係を制御することによ
り、ステータ440のコイル444への通電に依らずに
インナロータ軸402からアウタロータ軸404に伝達
される動力を制御することが可能である。
【0151】例えば、ロータ410Aがステータ440
の一つのステータコア442Aに対向しているときを考
える。このときロータ410Aとステータコア442A
との間では非常に強い磁気的な結合が得られる。このと
き、ロータ410Aとロータ410Bのピッチを調整し
てロータ410Bもステータコア442Bに対向する位
置にすれば、ロータ410Bとステータコア442Bと
の間でも非常に強い磁気的な結合が得られる。従って、
このときインナロータ410とステータ440との間で
は最も強い磁気的な結合が得られていることになる。こ
の状態からロータ410Bのピッチを変化させていけ
ば、ロータ410Bとステータコア442Bとの結合が
弱まる。従って、インナロータ410とステータ440
の結合も弱まることになる。
【0152】このように第4実施例の電動機400で
は、インナロータ410A,410Bのピッチを変化す
ることにより、インナロータ410とステータ440と
の間の磁気的な結合の強さを変化させることができる。
磁気的な結合の強さが変われば、それに応じてアウタロ
ータ470から出力される動力は変化する。従って、第
4実施例の電動機400では、ステータ440のコイル
444A,444Bへの通電の制御に依らずに出力され
る動力を制御することが可能となる。
【0153】第4実施例における電動機400のピッチ
の制御についての一例を示す。図42は、ロータピッチ
制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理
はECU12内のCPU13により周期的に実行される
処理である。この処理が開始されるとCPU13は、要
求トルクTd*を読み込む(ステップS200)。次
に、この要求トルクTd*と、前回ロータピッチ制御処
理ルーチンが実行されたときの要求トルクとの差分によ
りトルク変化率△Tを算出する(ステップS202)。
また、インナロータ410A,410Bのピッチを読み
込む(ステップS204)。このピッチは、アクチュエ
ータ406の制御信号から算出することができる。もち
ろん、両者の相対的な角度を検出するためのセンサを設
けるものとしてもよい。
【0154】ロータピッチが検出されると、そのピッチ
において電動機400が出力可能な最大トルクTmax
および最小トルクTminが決定される。ロータピッチ
に応じて出力可能なトルクの範囲が変動する理由は既に
説明した通りである。CPU13は、要求トルクTd*
がこうして求められた最大トルクTmaxよりも大きい
か否かを判定し(ステップS206)、大きい場合には
ロータピッチを変えることにより要求トルクTd*を出
力可能にすべく、ロータピッチ設定処理を実行する(ス
テップS212)。要求トルクTd*が最大トルクTm
axよりも小さい場合には、次に要求トルクTd*が最
小トルクTminよりも小さいか否かを判定する(ステ
ップS208)。要求トルクTd*が最小トルクTmi
nよりも小さい場合には、ロータピッチを変更して要求
トルクTd*を出力可能にすべく、ロータピッチ設定処
理を実行する(ステップS212)。
【0155】要求トルクTd*が最小トルクTmin以
上である場合には、次に、トルク変化率△Tの絶対値が
所定の値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS
210)。トルクの変化率△Tが所定の値αよりも大き
い場合には、要求トルクTd*に対して現在のロータピ
ッチが不適切な値となる可能性が高いと予想されるため
ロータピッチ設定処理を実行する(ステップS21
2)。かかる場合にロータピッチ設定処理を実行するの
は、ロータピッチの変更には若干応答時間がかかるた
め、要求トルクTd*の変動に対してロータピッチの制
御を十分追随させるためでもある。
【0156】ロータピッチの設定処理として、本実施例
では要求トルクTd*に対して適切なロータピッチを与
えるマップを予めECU12内のROM14に記憶して
おき、要求トルクTd*に応じてロータピッチをこのマ
ップから読み出すものとしている。こうして設定された
ロータピッチに応じてECU12がアクチュエータ40
6に制御信号を送ると先に説明した作用によりロータピ
ッチが変更される。
【0157】第4実施例の電動機400では、アウタロ
ータ軸404に出力される動力を2つの手段により制御
可能であることになる。両者は並行して用いることがで
きる。従って、第4実施例の電動機400によれば、両
者を並行して用いることにより、幅広い範囲でアウタロ
ータ軸404から出力される動力を制御することができ
る。例えば、大きな出力トルクが要求される運転状態に
おいては、ステータ440との磁気的な結合が最も強く
なる位置にインナロータ410A,410Bのピッチを
調節した上で、ステータ440のコイル444への通電
を制御して出力トルクを制御する。一方、要求されるト
ルクが比較的小さい運転状態においては、ステータ44
0との磁気的な結合が弱くなる位置にピッチを調節した
上で、コイル444への通電量を制御して出力トルクを
制御することができる。こうすれば、コイル444への
通電により動力を制御できる範囲が限られている場合で
あっても動力伝達装置全体として広範囲で動力を制御す
ることが可能となる。
【0158】(7)第5実施例としての電動機および動
力伝達装置:次に、第5実施例としての電動機500お
よび動力伝達装置の構成を説明する。図43および図4
4に本発明の第5実施例としての電動機500の構成を
示す。図43は、回転軸に直交する断面における断面図
であり、図44は回転軸に沿う方向の断面における断面
図である。図43に示す通り、第5実施例の電動機50
0は、インナロータ軸502を中心として同心円状に内
側からインナロータ510、ステータ540、アウタロ
ータ570が配置されている。図44に示す通り、アウ
タロータ570はアウタロータ軸504に結合されてい
る。インナロータ軸502、ステータ540、アウタロ
ータ軸504は、相互に軸受け506〜508を介して
相対的に回転可能に結合されている。
【0159】電動機500のインナロータ510、ステ
ータ540、アウタロータ570のそれぞれの構造につ
いて説明する。図45〜図47はそれぞれ回転軸に直交
する断面におけるインナロータ510、ステータ54
0、アウタロータ570の断面図である。図48〜図5
0は、それぞれ回転軸に沿う方向の断面におけるインナ
ロータ510、ステータ540、アウタロータ570の
断面図である。最初に図45および図48を用いてイン
ナロータ510の構成を説明し、次に図46および図4
9を用いてステータ540の構成を説明し、最後に図4
7および図50を用いてアウタロータ570の構成を説
明する。
【0160】インナロータ510は、第2実施例の電動
機200におけるインナロータ210と同じ構成であ
る。つまり、図45に示す通り外周面に16個の永久磁
石514を貼付したインナロータコア512により構成
される。インナロータコア512は、図45に示すよう
にリング状の断面形をしている。インナロータコア51
2は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されてい
る。また、外周面に貼付された永久磁石514はそれぞ
れ径方向に磁極が向いており、外周面にN極、S極が交
互に現れるように配置されている。第5実施例では、永
久磁石514を表面に貼付しているが、第1実施例で説
明したように永久磁石をインナロータ210に内包する
ものとしても構わない。また、外周付近に円周方向に設
けられた孔に永久磁石を挿入してもよい。
【0161】ステータ540の構成も、第2実施例で説
明したステータ240の構成と同じである。つまり、図
46および図49に示す通りコイル244が集中巻きさ
れた18個のステータコア542を円周状に配置し、各
ステータコア542同士およびフランジ547,548
が樹脂モールドにより固定されている。本実施例のステ
ータ540もこれまでに説明してきた各実施例における
ステータと同様、ヨークがない構造をなしている。従っ
て、インナロータ510からステータ540を貫通して
アウタロータ570に至る磁気回路を形成することが可
能となっている。
【0162】第5実施例の電動機500は以上で説明し
たインナロータ510とステータ540とがバーニアモ
ータを形成する構造となっている。バーニアモータと
は、同期機の一種であるが、コイル544が巻回された
ステータ540のコア542の数と、インナロータ51
0に備えられた永久磁石514の数との関係が通常の同
期機とは異なっているものをいう。通常の同期機では
「コア数/相数=永久磁石数/2」なる関係が成立して
いる。本実施例では、U,V,W相の3相交流を用いる
ものとしているため「相数=3」である。先に説明した
通り、第5実施例のステータ540には18個のステー
タコア542が備えられているから、「コア数/3=
6」であり、各相当たり6つの突極を備えていることに
なる。一方、第5実施例のインナロータ510には永久
磁石が16個貼付されている。従って、外周面にN極が
現れる磁石数は「永久磁石数/2=8」となる。
【0163】「コア数/相数=永久磁石数/2」なる関
係が成立する場合には、U相電流が流れる一つのU相コ
イルに一つのN極が対向するとき、残りのU相コイルと
N極とも対向するようになる。このようにコア数等を設
定すると大きなトルクが出力可能となる等の利点がある
一方で、主として磁界を生じさせる電流の相の移り変わ
りに伴いトルクの脈動、つまりコギングトルクが生じや
すい特性がある。これに対し、第5実施例の電動機50
0ではかかる関係が成立しないから、一度に全てのU相
コイルとN極とが対向しなくなる。他の相のコイルにつ
いても同様である。従って、インナロータ510の回転
中において、ステータ540とインナロータ510との
磁界の相互作用を平均化することができ、回転中のコギ
ングトルクを低減することができる。
【0164】アウタロータ570は、図47および図5
0に示す通り、第1実施例のアウタロータ170とほぼ
同じ構成をなしている。つまり、巻線型の回転子として
の構成である。アウタロータ570は、図47に示すリ
ング状の断面形状をなすアウタロータコア572の内周
面に設けられたスロットにコイル574を巻回して構成
されている。アウタロータコア572は、無方向性の電
磁鋼板を積層して構成されたものである。アウタロータ
570のコイル574の巻回方法を図51に示す。第5
実施例におけるコイル574の巻回では、第1実施例の
アウタロータ170(図12参照)ほど軸対称ではな
い。第5実施例ではインナロータ510とステータ54
0とがバーニアモータを形成していることによるもので
ある。つまり、インナロータ510に貼付された永久磁
石514と、ステータコア542とが完全に対向しない
状況下でインナロータ510から出た磁束を有効に鎖交
できるようにアウタロータ570のコイル574は巻回
されているのである。図51には第5実施例における永
久磁石514およびステータコア542に対する一つの
巻回方法を示したものであり、永久磁石数やステータコ
アの数に応じてアウタロータ570のコイル574の巻
回方法は異なったものとなる。
【0165】以上で説明した各構成を有するインナロー
タ510、ステータ540およびアウタロータ570を
図44に示した配置で軸受け506〜508を介して組
み立てることにより、第5実施例の電動機500が完成
する。図43および図44には示していないが、電動機
500はステータ540をケース等に固定することによ
り種々の装置に搭載可能である。もちろん、さらにイン
ナロータ軸502およびアウタロータ軸504を軸受け
を介して装置に組み付けるものとしても構わない。
【0166】第1実施例の動力伝達装置10において、
電動機100を第5実施例の電動機500に置換すれ
ば、動力伝達装置を構成することができる。電動機以外
のハードウェア構成は第1実施例と同じである。また、
電動機500はインナロータ510とステータ540が
バーニアモータを構成することを除けば、第1実施例の
電動機100と同じ構成をなしており、第1実施例と同
じ方法により制御することができる。バーニアモータを
構成することにより、ステータ540のコイル544に
流すべき電流値は第1実施例の電動機100とは異なる
ものとなるが、制御の原理としては同一である。
【0167】従って、以上で説明した電動機500およ
び動力伝達装置によれば、第1実施例の電動機100お
よび動力伝達装置と同等の効果を得ることができる。ま
た、インナロータ510とステータ540とがバーニア
モータを構成することにより、両者間でのコギングトル
クを小さくすることができるという利点も有している。
【0168】(8)第6実施例:第6実施例としての動
力伝達装置10Bについて説明する。図52は動力伝達
装置10Bの概略構成を示す説明図である。第6実施例
の動力伝達装置10Bは第1実施例の動力伝達装置10
とほぼ同じ構成である。動力伝達装置10Bに適用され
るモータは第1実施例の電動機100とほぼ同様の構成
をなしている。但し、第1実施例ではアウタロータ17
0に巻回されたコイルは単体で回路を形成するように閉
じている。これに対し、本実施例の電動機100のアウ
タロータ170に巻回されたコイルは外部から三相交流
を通電可能に巻回されている点で相違する。駆動回路2
0は第1実施例の動力伝達装置10の場合と同様、電動
機100に三相交流を流す。図52では、図示の都合
上、駆動回路20と電動機100との間の電線を1本の
線でまとめて示した。電動機100に流れる電流は電流
センサ32、フィルタ34およびADC36によりEC
U12が処理可能な信号として取り込まれる。電流セン
サ32、フィルタ34およびADC36は図示の都合上
それぞれ一つの要素として示したが、実際には第1実施
例の動力伝達装置10と同様、それぞれU相、V相の電
流を取り扱うセンサ等が対になって備えられている。ま
た、駆動回路20はECU12と接続されており、駆動
回路20のスイッチングを制御するための4本の制御信
号がECU12から入力可能となっている。図52では
図示の都合上、これらの制御信号を1本の線でまとめて
示した。
【0169】第6実施例では、上述の構成に加えて、さ
らに駆動回路21がバッテリ30および電動機100に
接続されている。駆動回路21は駆動回路20と同様、
電動機100に電流を流すための回路であり、トランジ
スタインバータ(図14参照)で構成されている。ま
た、駆動回路21が追加されたことに伴って、電流セン
サ33、フィルタ35,ADC37がそれぞれ追加さ
れ、ECU12の入力ポート17に接続されている。こ
れらの要素は駆動回路21により電動機100に流され
る電流をECU12が処理可能な信号として取り込むた
めのものである。電流センサ33,フィルタ35,AD
C37は図示の都合上それぞれ一つの要素として示した
が、実際にはそれぞれU相、V相の電流を取り扱うセン
サ等が対になって備えられている。また、駆動回路21
はECU12と接続されており、駆動回路21のスイッ
チングを制御するための4本の制御信号がECU12か
ら入力可能となっている。図52では図示の都合上、こ
れらの制御信号を1本の線でまとめて示した。
【0170】駆動回路20、21と電動機100との接
続の様子を図53に示す。図示する通り、駆動回路20
は電動機100のステータ140に巻回されたコイルに
接続されている。駆動回路21は電動機100のアウタ
ロータ170に巻回されたコイルに接続されている。ア
ウタロータ170への通電は、スリップリング40を介
して行われる。スリップリング40に代えて、差動トラ
ンス等を用いるものとしてもよい。
【0171】かかる構成を有する動力伝達装置10B
は、駆動回路20による電流を制御することで第1実施
例の動力伝達装置10と同様の機能を奏することができ
る。第1実施例の動力伝達装置10では、アウタロータ
170の巻線に生じる電流はインナロータ110の回転
等に起因する誘導起電力に基づくものであった。第7実
施例の動力伝達装置10Bでは、かかる誘導起電力に基
づく電流に加えて、駆動回路21によりアウタロータ1
70に電流を流すことができる。従って、アウタロータ
170に生じる磁界とインナロータ110からステータ
140を貫通して形成される磁気回路との相互作用を高
い自由度で制御することができる。
【0172】例えば、駆動回路21のスイッチングを制
御することによりアウタロータ170のコイルにはイン
ナロータ110の回転に伴う誘導電流を流すことができ
る。このときアウタロータ170は誘導機のロータとし
て機能する。一般に誘導機ではアウタロータのすべりに
よって損失が生じる。上記実施例の動力伝達装置10B
では、アウタロータ170に流れる電流を制御すること
によりこのすべりによる損失を抑制することができる。
かかる制御は種々の方法により実現可能である。本実施
例では、電動機100の回転数およびトルクに応じて最
も損失が小さくなる各相の電流値を予めECU12のR
OM14内にマップとして記憶し、このマップに従って
アウタロータ170のコイルに電流を流すものとしてい
る。かかる制御を行うことにより、上記動力伝達装置1
0Bはアウタロータ170のすべりに基づく損失を抑制
し、高い力率・効率で電動機100を運転することが可
能となる。
【0173】また、アウタロータ170とステータ14
0との間で一種の同期モータを構成することもできる。
従って、アウタロータ170に流れる電流を制御するこ
とにより、アウタロータ170から出力されるトルクの
大きさを制御することが可能となる。また、正のトルク
を出力可能な電流をアウタロータ170に流すことによ
り、アウタロータ170を増速して回転させることが可
能である。従って、上記動力伝達装置10Bはインナロ
ータ110よりも高い回転数でアウタロータ170を回
転させることが比較的容易に実現できる。本実施例で
は、アウタロータ170とインナロータ110の回転数
およびトルクに応じてアウタロータ170に流す電流を
予めマップとしてROM14内に記憶し、このマップに
従って通電することにより上記制御を実現している。こ
のマップは、ステータ140に巻回されたコイルにより
生じる磁界のみならずインナロータ110により生じる
磁界およびその回転によりアウタロータ170の巻線に
生じる誘導起電力を考慮して設定されている。
【0174】以上で説明した第6実施例の動力伝達装置
では、第1実施例の電動機100とほぼ同じ構成を有す
る電動機を用いた。これに対し、電動機100に代えて
先に説明した種々の実施例の電動機をそれぞれ用いるこ
とが可能である。第6実施例では、アウタロータ170
に通電するものとしているが、インナロータ110が巻
線を有している場合には、インナロータ110に通電す
るものとしても構わない。
【0175】(9)第7実施例:次に本発明の動力伝達
装置10を適用したハイブリッド車両を第7実施例とし
て説明する。図54は第7実施例のハイブリッド車両の
駆動系統について、構成を示す説明図である。図示する
通り、このハイブリッド車両の駆動系統は、エンジン6
02およびその運転を制御するためのEFIECU62
0と、動力伝達装置10とから構成されている。
【0176】エンジン602は通常のガソリンエンジン
である。エンジン602のクランクシャフト604は、
ダンパ606を介して、動力伝達装置10に備えられた
電動機100のインナロータ軸102に結合されてい
る。ダンパ606は電動機100の慣性等に起因するク
ランクシャフト604およびインナロータ軸102のね
じり振動を防止するためのものである。電動機100の
アウタロータ軸104は駆動軸610に結合されてい
る。図54では、図示を省略したが、駆動軸610は減
速ギヤ等を介して駆動輪に動力を伝達可能に結合されて
いる。
【0177】動力伝達装置10の構成は図13により説
明したものと同じである。図54では、電動機100の
運転を駆動するための駆動回路20、電動機100と電
力のやりとりを行うためのバッテリ30、電動機100
の運転を制御するためのECU12のみを示した。な
お、第7実施例のハイブリッド車両において、ECU1
2は動力伝達装置10の制御のみならずハイブリッド車
両の駆動系統全体の制御も行っている。図54に示す通
り、ECU12はEFIECU620と電気的に接続さ
れている。ECU12は、EFIECU620に対して
エンジン602の運転に関する指令値を出力することに
より、間接的にエンジン602の運転も制御しているの
である。かかる制御を実行可能とするために、ECU1
2には図54で図示していない種々のセンサやスイッチ
が接続されている。かかるセンサとしては、例えばアク
セルペダルポジションセンサやシフトポジションセンサ
等が挙げられる。
【0178】ハイブリッド車両が走行する際には、駆動
軸610から要求に沿った回転数およいトルクで動力を
出力する必要がある。ECU12は、アクセルペダルポ
ジションセンサで検出されるアクセルの踏み込み量等に
応じて要求トルクおよび回転数を算出する。また、両者
の積により出力すべき動力の大きさを求める。バッテリ
30の電力を消費することなく走行するためには、要求
された動力をエンジン602から出力する必要がある。
エンジン602はかかる動力に相当する種々の回転数お
よびトルクで運転可能である。ハイブリッド車両を効率
よく運転するために、ECU12はこうした種々の運転
ポイントから最も運転効率の高いトルクおよび回転数を
選択する。そして、その運転ポイントをエンジン602
の運転指令値としてEFIECU620に出力する。こ
の結果、エンジン602は設定された運転ポイントで運
転するように制御される。
【0179】かかる状態で運転されるエンジン602か
ら出力される動力は要求された動力と大きさは等しい
が、回転数およびトルクは必ずしも一致するとは限らな
い。従って、ECU12は動力伝達装置10の運転を制
御してエンジン602から出力される動力を要求された
回転数およびトルクに変換して駆動軸610に伝達す
る。
【0180】かかるトルク変換の制御方法については、
「(3)動力伝達装置の作動原理」として既に説明した
通りである。電動機100のコイル144に流す励磁電
流およびトルク電流を制御することにより、トルク変換
を行うのである。かかる制御を実行することにより第7
実施例のハイブリッド車両はエンジン602を駆動源と
して走行することができる。
【0181】なお、「(3)動力伝達装置の作動原理」
において、本実施例の動力伝達装置10はバッテリ30
との電力のやりとりを伴う形で動力を伝達することも可
能であることを説明した。例えば、インナロータ軸10
2から入力された動力の一部又は全部を電力として回生
しつつ、残余の動力をアウタロータ軸104に伝達する
ことが可能である。従って、第7実施例のハイブリッド
車両では、駆動軸610から出力すべき動力よりも大き
い動力を出力するようにエンジン602を運転すれば、
余剰の動力を動力伝達装置10で回生してバッテリ30
を充電しながら走行することも可能である。また、電動
機100の電流の制御によって、磁界を先に図20に示
した状態にすれば、アウタロータ軸104に動力が伝達
されない状態を作ることもでき、ハイブリッド車両が停
止したままでも、エンジン602を運転してバッテリ3
0を充電することができる。
【0182】既に説明した通り、本実施例の動力伝達装
置10はバッテリ30からの電力の供給を受けて電動機
100を力行し、インナロータ軸102から入力される
動力の有無に関わらずアウタロータ軸104から動力を
出力することも可能である。従って、本実施例のハイブ
リッド車両では、例えばエンジン602を停止したまま
でも電動機100から出力されるトルクによって車両を
走行することも可能である。もちろん、エンジン602
をある運転ポイントで運転している場合に、電動機10
0を力行してトルクアシストすることも可能である。
【0183】また、本実施例の動力伝達装置10はアウ
タロータ軸104を動力の入力軸としても機能し得るも
のである。従って、本実施例のハイブリッド車両は、駆
動輪の回転を電動機100で電力として回生することに
より、いわゆる回生制動をかけることも可能である。ま
た、駆動輪の回転をインナロータ軸102に伝達して、
いわゆるエンジンブレーキをかけることも可能である。
【0184】当然、本実施例の動力伝達装置10はバッ
テリ30からの電力の供給を受けて電動機100を力行
し、インナロータ軸102を回転させることも可能であ
る。従って、電動機100をエンジン602のスタータ
モータとして用いることもできる。
【0185】なお、図54では、ハイブリッド車両とし
て、第1実施例の電動機100を用いた場合を示した
が、その他各実施例で説明した電動機200,300,
400,500をそれぞれ適用可能であることは言うま
でもない。
【0186】以上、本発明の電動機、動力伝達装置、お
よびハイブリッド車両について種々の実施例を説明した
が、本発明はその要旨を変更しない範囲でさらに種々の
形態により実施することが可能である。例えば、ハイブ
リッド車両は、本発明の電動機および動力伝達装置を適
用した一例に過ぎない。本発明の動力伝達装置は種々の
原動機と結合することにより、いわゆる動力出力装置と
して機能し得るものである。この動力出力装置は、上述
したハイブリッド車両の他、列車等の輸送機や工作機械
など、所定の回転数およびトルクからなる動力が要求さ
れる種々の装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例としての電動機の回転軸に直交する
断面における断面図である。
【図2】第1実施例としての電動機の回転軸に沿う方向
の断面における断面図である。
【図3】第1実施例としての電動機のインナロータの回
転軸に直交する断面における断面図である。
【図4】第1実施例としての電動機のステータの回転軸
に直交する断面における断面図である。
【図5】第1実施例としての電動機のアウタロータの回
転軸に直交する断面における断面図である。
【図6】第1実施例としての電動機のインナロータの回
転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図7】第1実施例としての電動機のステータの回転軸
に沿う方向の断面における断面図である。
【図8】第1実施例としての電動機のアウタロータの回
転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図9】第1実施例としての電動機のインナロータの斜
視図である。
【図10】第1実施例としての電動機のステータコアの
斜視図である。
【図11】第1実施例としての電動機のステータの斜視
図である。
【図12】第1実施例としての電動機のアウタロータの
結線の様子を示す説明図である。
【図13】第1実施例としての動力伝達装置の構成を示
す説明図である。
【図14】動力伝達装置の駆動回路を示す回路図であ
る。
【図15】第1実施例としての電動機における磁気回路
を示す説明図である。
【図16】従来の電動機における磁気回路を示す説明図
である。
【図17】第1実施例としての電動機の作動時における
第1の状態を示す説明図である。
【図18】誘導機における出力トルクとすべり量との関
係を示すグラフである。
【図19】本実施例の電動機における出力トルクの変化
を示す説明図である。
【図20】第1実施例としての電動機の作動時における
第2の状態を示す説明図である。
【図21】第2実施例としての電動機の回転軸に直交す
る断面における断面図である。
【図22】第2実施例としての電動機の回転軸に沿う方
向の断面における断面図である。
【図23】第2実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図24】第2実施例としての電動機のステータの回転
軸に直交する断面における断面図である。
【図25】第2実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図26】第2実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図27】第2実施例としての電動機のステータの回転
軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図28】第2実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図29】第3実施例としての電動機の回転軸に直交す
る断面における断面図である。
【図30】第3実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図31】第3実施例としての電動機のステータの回転
軸に直交する断面における断面図である。
【図32】第3実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図33】第3実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図34】第3実施例の電動機を用いた動力伝達装置1
0Aの構成を示す説明図である。
【図35】第3実施例の電動機のインナロータと第2イ
ンナロータの結合に関する制御の流れを示すフローチャ
ートである。
【図36】第4実施例としての電動機の回転軸に直交す
る断面における断面図である。
【図37】第4実施例としての電動機の回転軸に沿う方
向の断面における断面図である。
【図38】第4実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図39】第4実施例としての電動機のステータの回転
軸に直交する断面における断面図である。
【図40】第4実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図41】第4実施例としての電動機のインナロータの
斜視図である。
【図42】第4実施例としての電動機のロータピッチの
制御の流れを示すフローチャートである。
【図43】第5実施例としての電動機の回転軸に直交す
る断面における断面図である。
【図44】第5実施例としての電動機の回転軸に沿う方
向の断面における断面図である。
【図45】第5実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図46】第5実施例としての電動機のステータの回転
軸に直交する断面における断面図である。
【図47】第5実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に直交する断面における断面図である。
【図48】第5実施例としての電動機のインナロータの
回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図49】第5実施例としての電動機のステータの回転
軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図50】第5実施例としての電動機のアウタロータの
回転軸に沿う方向の断面における断面図である。
【図51】第5実施例としての電動機のアウタロータの
結線の様子を示す説明図である。
【図52】第6実施例としての動力伝達装置10Bの構
成を示す説明図である。
【図53】第6実施例としての動力伝達装置の構成にお
ける駆動回路とモータ100との接続を示す説明図であ
る。
【図54】第7実施例としてのハイブリッド車両の構成
を示す説明図である。
【図55】従来のハイブリッド車両の構成を示す説明図
である。
【図56】2つの回転軸を有する従来の電動機の回転軸
に直交する断面における断面図である。
【符号の説明】
10,10A,10B…動力伝達装置 12…ECU 13…CPU 14…ROM 15…RAM 16…クロック 17…入力ポート 18…出力ポート 20、21…駆動回路 22、23…電流センサ 24、25…フィルタ 26、27…ADC 30…バッテリ 32、33…電流センサ 34、35…フィルタ 36、37…ADC 40…スリップリング 100…第1実施例の電動機 102…インナロータ軸 104…アウタロータ軸 106,107,108…軸受け 110…第1実施例のインナロータ 112…インナロータコア 114…永久磁石 116…ボルト 118…アルミケース 120…フタ 122…ボルト 140…第1実施例のステータ 142…ステータコア 144…コイル 146…ボルト 147,148…フランジ 149…ピン 150…樹脂モールド 170…第1実施例のアウタロータ 172…アウタロータコア 174…コイル 176…ケース 177…フランジ 178…固定用リング 200…第2実施例の電動機 202…インナロータ軸 204…アウタロータ軸 206,207,208…軸受け 210…第2実施例のインナロータ 212…インナロータコア 214…永久磁石 216…ボルト 240…第2実施例のステータ 242…ステータコア 244…コイル 247,248…フランジ 270…第2実施例のアウタロータ 272…アウタロータコア 274…永久磁石 277…フランジ 278…ボルト 300…第3実施例の電動機 302…インナロータ軸 303…インナロータ軸回転数センサ 304…アウタロータ軸 305…アウタロータ軸回転数センサ 306…クラッチディスク 308…クラッチ 310…第3実施例のインナロータ 312…インナロータコア 314…ロータバー 316…永久磁石 318…第2インナロータコア 340…第3実施例のステータ 342…ステータコア 344…コイル 370…第3実施例のアウタロータ 372…アウタロータコア 374…永久磁石 377…フランジ 400…第4実施例の電動機 402…インナロータ軸 404…アウタロータ軸 406…アクチュエータ 410,410A,410B…第4実施例のインナロー
タ 412…インナロータコア 414…永久磁石 440…第4実施例のステータ 442A,442B…ステータコア 444A,444B…コイル 446A,446B…ガイド部 470…第2実施例のアウタロータ 472…アウタロータコア 474…ロータバー 500…第5実施例の電動機 502…インナロータ軸 504…アウタロータ軸 506,507,508…軸受け 510…第5実施例のインナロータ 512…インナロータコア 514…永久磁石 540…第5実施例のステータ 542…ステータコア 544…コイル 547,548…フランジ 570…第5実施例のアウタロータ 572…アウタロータコア 574…コイル 602…エンジン 604…クランクシャフト 606…ダンパ 610…駆動軸 620…EFIECU

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対的に回転可能な2つの回転軸を同軸
    上に備えた電動機であって、 磁気回路の形成に寄与する要素たる磁気要素を、前記回
    転軸を中心として同心円状に内側から第1の磁気要素、
    第2の磁気要素、第3の磁気要素の順に備え、 前記2つの回転軸は、前記第1ないし第3の磁気要素の
    うちいずれか2つの磁気要素にそれぞれ結合されてお
    り、 前記第1の磁気要素から前記第2の磁気要素を貫通して
    前記第3の磁気要素に至る磁気回路を形成可能に各磁気
    要素を構成したことを特徴とする電動機。
  2. 【請求項2】 相対的に回転可能な2つの回転軸を同軸
    上に備えた電動機であって、 前記回転軸を中心として同心円状に内側から第1のロー
    タ、ステータ、第2のロータの順に備え、 前記第1のロータは、前記回転軸の一方に結合されてお
    り、 前記第2のロータは、前記回転軸の他方に結合されてお
    り、 前記ステータは、複数のコアを円周状に配置し、該円周
    方向に隣接するコア間を非磁性体で結合して形成された
    ことを特徴とする電動機。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の電動機であって、 前記ステータは前記コア間を樹脂モールドにより固定し
    たことを特徴とする電動機。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の電動機であって、 前記ステータは複数のコアに巻回されたコイルを有し、
    該コイルに通電することにより磁界を生じ得るステータ
    であり、 前記第1のロータおよび第2のロータのうち一方のロー
    タは、永久磁石を備えたロータであり、 前記第1のロータおよび第2のロータの他方のロータ
    は、前記ステータと誘導機を構成し得る構造を有するロ
    ータである電動機。
  5. 【請求項5】 前記コイルは、前記ステータに備えられ
    たコアに集中巻きされたことを特徴とする請求項4記載
    の電動機。
  6. 【請求項6】 前記一方のロータは、放射状に配置され
    た永久磁石を備えることを特徴とする請求項4記載の電
    動機。
  7. 【請求項7】 前記他方のロータは、前記ステータと巻
    線型誘導機を構成可能な構造を有するロータである請求
    項4記載の電動機。
  8. 【請求項8】 前記他方のロータは、前記ステータとか
    ご型誘導機を形成可能な構造を有するロータである請求
    項4記載の電動機。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の電動機であって、 前記他方のロータは前記第1のロータであり、 前記第1のロータのさらに内側には、切り替えにより該
    第1のロータに拘束されずに回転可能な状態および該第
    1のロータと一体として回転可能な状態のいずれかを採
    りうる永久磁石を備える電動機。
  10. 【請求項10】 請求項2記載の電動機であって、 前記第1のロータおよび前記第2のロータは、ともに永
    久磁石を備えたロータである電動機。
  11. 【請求項11】 請求項2記載の電動機であって、 前記第1のロータとして、永久磁石を備えたロータを前
    記回転軸の方向に直列に配置された2つのロータを有
    し、 該2つのロータの位置関係を前記回転軸の周方向に変更
    可能であることを特徴とする電動機。
  12. 【請求項12】 請求項2記載の電動機であって、 前記第1のロータおよび第2のロータのうち一方のロー
    タは永久磁石を備え、 前記ステータと該一方のロータが、バーニアモータを形
    成する構造を有する電動機。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の電動機であって、 前記一方のロータと異なる他方のロータは巻線型の誘導
    機を形成可能な構造を有し、 該巻線は前記一方のロータおよび前記ステータからの磁
    束を効率的に鎖交可能に巻回されたことを特徴とする電
    動機。
  14. 【請求項14】 同軸上に備えられた入力軸および出力
    軸と、両者に結合された電動機と、該電動機の運転を制
    御する制御手段とを備え、該入力軸から動力を入力する
    とともに該出力軸から動力を出力可能な動力伝達装置で
    あって、 前記電動機は、 前記入力軸および出力軸を中心として同心円状に、前記
    入力軸に結合された第1のロータと、前記出力軸に結合
    された第2のロータと、1つのステータとを備えるとと
    もに、 前記第1のロータ、第2のロータおよびステータの全て
    を通る磁気回路を形成可能に構成されており、 かつ、前記ステータは電流を流すことにより前記磁気回
    路の強さに影響を与え得る巻線が巻回された電動機であ
    り、 前記制御手段は、 前記ステータの巻線に流れる電流を制御することによっ
    て、前記第1のロータと、前記第2のロータとの間の磁
    気的な結合を制御する手段である動力伝達装置。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 前記制御手段は、 前記ステータの巻線に流れる電流を制御することによっ
    て、前記第1のロータと前記第2のロータ間で磁気回路
    を遮断する手段である動力伝達装置。
  16. 【請求項16】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 前記制御手段は、 前記ステータの巻線に流れる電流を制御することによっ
    て、前記ステータと前記第2のロータ間で正のトルクを
    生じさせる手段である動力伝達装置。
  17. 【請求項17】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 前記制御手段は、 前記入力軸から入力される動力の一部を、前記ステータ
    を介して電力として回生し、残余の動力を前記出力軸に
    伝達する手段である動力出力装置。
  18. 【請求項18】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 さらに前記入力軸および出力軸の回転数の差を検出する
    検出手段を備え、 前記電動機は、 前記第1のロータは、永久磁石を備えたアウタロータ、 前記第2のロータは、前記ステータとの間でかご型誘導
    機を形成可能なインナロータとし、 前記インナロータのさらに内側には、該インナロータに
    拘束されずに回転可能な状態および該インナロータと一
    体として回転可能な状態のいずれかを採りうる永久磁石
    を備えた電動機であり、 前記制御手段は、前記制御に加えて、 前記検出手段により検出された回転数の差の絶対値が所
    定の値以下である場合には前記インナロータの内側に備
    えられた永久磁石を該インナロータと一体として回転可
    能な状態する手段である動力伝達装置。
  19. 【請求項19】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 前記電動機は、 前記第1のロータまたは第2のロータのうち内側に位置
    するインナロータとして、永久磁石を備えたロータを前
    記入力軸および出力軸の方向に直列に配置された2つの
    ロータを有し、 かつ該2つのロータの位置関係を前記入力軸および出力
    軸の周方向に変更可能であることを特徴とする電動機で
    あり、 前記制御装置は、前記制御に加えて、 前記入力軸から入力されるトルクの大小に応じて、前記
    インナロータと前記ステータとの磁気的な結合の強弱が
    変化するように前記2つのロータの位置関係を変更させ
    る手段である動力伝達装置。
  20. 【請求項20】 請求項14記載の動力伝達装置であっ
    て、 前記電動機の前記第1のロータまたは第2のロータのう
    ち一方は、巻線が巻回された巻線型ロータであり、 該巻線型ロータに巻回された巻線に流れる電流を制御す
    ることによって、該巻線型ロータに生じる磁界と前記磁
    気回路との相互作用を制御するロータ制御装置を備える
    動力伝達装置。
  21. 【請求項21】 原動機と、該原動機の回転軸および車
    輪を有する駆動軸に結合された請求項14記載の動力伝
    達装置とを備え、少なくとも前記原動機から出力される
    動力によって走行可能なハイブリッド車両。
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