JPH11323570A - ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法 - Google Patents
ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法Info
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- JPH11323570A JPH11323570A JP10134042A JP13404298A JPH11323570A JP H11323570 A JPH11323570 A JP H11323570A JP 10134042 A JP10134042 A JP 10134042A JP 13404298 A JP13404298 A JP 13404298A JP H11323570 A JPH11323570 A JP H11323570A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 生体内で使用される金属基材上に、この金属
基材の物性を低下させることなく、しかも皮膜の固着力
に優れたハイドロキシアパタイト被覆を形成する簡易な
方法を得る。 【解決手段】 80℃〜300℃の範囲内に加熱された
前記金属基材を尿素、カルシウムイオン及びリン酸イオ
ンを含む第一の水溶液に浸漬し、次いで少なくともカル
シウムイオン及びリン酸イオンを含む第二の水溶液に浸
漬して、前記金属基材の表面にハイドロキシアパタイト
皮膜を生成させる。
基材の物性を低下させることなく、しかも皮膜の固着力
に優れたハイドロキシアパタイト被覆を形成する簡易な
方法を得る。 【解決手段】 80℃〜300℃の範囲内に加熱された
前記金属基材を尿素、カルシウムイオン及びリン酸イオ
ンを含む第一の水溶液に浸漬し、次いで少なくともカル
シウムイオン及びリン酸イオンを含む第二の水溶液に浸
漬して、前記金属基材の表面にハイドロキシアパタイト
皮膜を生成させる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体内で使用され
る金属基材の表面にハイドロキシアパタイト皮膜を形成
し、金属基材に生体適合性を付与する方法に関する。
る金属基材の表面にハイドロキシアパタイト皮膜を形成
し、金属基材に生体適合性を付与する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】人工関節や人工歯根等、体内で使用され
る構造材としてチタンやCo−Cr−Ni等の金属材料
が用いられる。これらの金属材料は生体内で長期間使用
されるものであるから、物性的に強靱軽量であるばかり
でなく、人体組織と結合し得る生体適合性及び耐久性が
求められる。一方、ハイドロキシアパタイト(Ca
10(PO4)6(OH)2)は生体の骨の無機成分であり
生体組織との親和性及び結合性に富んでいるので、これ
を前記の金属基材に被覆する試みが種々行われている。
る構造材としてチタンやCo−Cr−Ni等の金属材料
が用いられる。これらの金属材料は生体内で長期間使用
されるものであるから、物性的に強靱軽量であるばかり
でなく、人体組織と結合し得る生体適合性及び耐久性が
求められる。一方、ハイドロキシアパタイト(Ca
10(PO4)6(OH)2)は生体の骨の無機成分であり
生体組織との親和性及び結合性に富んでいるので、これ
を前記の金属基材に被覆する試みが種々行われている。
【0003】ハイドロキシアパタイト皮膜を金属基材上
に形成する方法には物理的手法と化学的手法とがあり、
物理的手法としてはプラズマ溶射法(例えば特開平01
−52471号公報)等が知られている。また化学的手
法としては、金属基材表面に先ずガラス成分等ハイドロ
キシアパタイトの核形成物質を固着させ、その後にカル
シウムイオン及びリン酸イオンを含む擬似体液に浸漬し
てハイドロキシアパタイトを皮膜として生成させる方法
(例えば特開平6−293506号公報)や、金属基材
を予め600℃以上に加熱し表面に酸化皮膜を形成した
後にカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む擬似体液
に浸漬し、前記の酸化皮膜上にハイドロキシアパタイト
層を形成する方法(例えば特開平5−176985号公
報)等が知られている。
に形成する方法には物理的手法と化学的手法とがあり、
物理的手法としてはプラズマ溶射法(例えば特開平01
−52471号公報)等が知られている。また化学的手
法としては、金属基材表面に先ずガラス成分等ハイドロ
キシアパタイトの核形成物質を固着させ、その後にカル
シウムイオン及びリン酸イオンを含む擬似体液に浸漬し
てハイドロキシアパタイトを皮膜として生成させる方法
(例えば特開平6−293506号公報)や、金属基材
を予め600℃以上に加熱し表面に酸化皮膜を形成した
後にカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む擬似体液
に浸漬し、前記の酸化皮膜上にハイドロキシアパタイト
層を形成する方法(例えば特開平5−176985号公
報)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、プラズマ溶射
法では、電極に使用する銅等の金属成分の混入があり、
かつハイドロキシアパタイトが短時間とはいえ例えば約
10000℃の高温に曝されるので、一部分解が起こり
生体適合性が低下する惧れがある。また化学的手法にお
いて、ガラス等を用いて予め金属表面にハイドロキシア
パタイトの核を生成させコーティングする方法は、得ら
れたハイドロキシアパタイト皮膜の金属基材に対する固
着強度が低く、剥離が生じ易い。また金属酸化皮膜を形
成する方法は、金属基材を600℃以上の高温に加熱す
るため、固着強度は向上するものの金属、特にチタンの
場合に物性の劣化が避けられない。本発明は、上記の課
題を解決するためになされたものであって、従ってその
目的は、生体内で使用される金属基材上にハイドロキシ
アパタイト皮膜を形成するに際して、この金属基材の物
性を低下させることなく、しかも金属基材に対する固着
強度が高いハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法を提
供することにある。
法では、電極に使用する銅等の金属成分の混入があり、
かつハイドロキシアパタイトが短時間とはいえ例えば約
10000℃の高温に曝されるので、一部分解が起こり
生体適合性が低下する惧れがある。また化学的手法にお
いて、ガラス等を用いて予め金属表面にハイドロキシア
パタイトの核を生成させコーティングする方法は、得ら
れたハイドロキシアパタイト皮膜の金属基材に対する固
着強度が低く、剥離が生じ易い。また金属酸化皮膜を形
成する方法は、金属基材を600℃以上の高温に加熱す
るため、固着強度は向上するものの金属、特にチタンの
場合に物性の劣化が避けられない。本発明は、上記の課
題を解決するためになされたものであって、従ってその
目的は、生体内で使用される金属基材上にハイドロキシ
アパタイト皮膜を形成するに際して、この金属基材の物
性を低下させることなく、しかも金属基材に対する固着
強度が高いハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに本発明は、80℃〜300℃の範囲内に加熱された
前記の金属基材を少なくとも尿素、カルシウムイオン及
びリン酸イオンを含む第一の水溶液に浸漬し、次いで少
なくともカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第二
の水溶液に浸漬して、前記金属基材の表面にハイドロキ
シアパタイト皮膜を生成させるハイドロキシアパタイト
皮膜の形成方法を提供する。前記の金属基材はチタン又
はチタン合金であることが好ましい。前記第一水溶液中
の尿素の濃度は、0.05mol/リットル〜2mol/リットルの範囲
内とすることが好ましい。また前記第二水溶液は、30
℃〜60℃の範囲内に保持することが好ましい。この第
二水溶液は、好ましくはカルシウムイオン及びリン酸イ
オンを含む擬似体液である。
めに本発明は、80℃〜300℃の範囲内に加熱された
前記の金属基材を少なくとも尿素、カルシウムイオン及
びリン酸イオンを含む第一の水溶液に浸漬し、次いで少
なくともカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第二
の水溶液に浸漬して、前記金属基材の表面にハイドロキ
シアパタイト皮膜を生成させるハイドロキシアパタイト
皮膜の形成方法を提供する。前記の金属基材はチタン又
はチタン合金であることが好ましい。前記第一水溶液中
の尿素の濃度は、0.05mol/リットル〜2mol/リットルの範囲
内とすることが好ましい。また前記第二水溶液は、30
℃〜60℃の範囲内に保持することが好ましい。この第
二水溶液は、好ましくはカルシウムイオン及びリン酸イ
オンを含む擬似体液である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を好ましい実施の形
態により詳しく説明する。この例では金属基材として、
生体適合性のチタン基材を用いる。このチタン基材を先
ず80℃〜300℃の範囲内、例えば200℃に加熱す
る。次にこの加熱されたチタン基材を下記組成の尿素、
カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第一水溶液
(以下「尿素含有水溶液」という)に、例えば10秒間
浸漬する。尿素含有水溶液の組成 (例) 尿素 0.5 mol/リットル Ca(NO3)2 0.167 mol/リットル (NH4)2HPO4 0.100 mol/リットル
態により詳しく説明する。この例では金属基材として、
生体適合性のチタン基材を用いる。このチタン基材を先
ず80℃〜300℃の範囲内、例えば200℃に加熱す
る。次にこの加熱されたチタン基材を下記組成の尿素、
カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第一水溶液
(以下「尿素含有水溶液」という)に、例えば10秒間
浸漬する。尿素含有水溶液の組成 (例) 尿素 0.5 mol/リットル Ca(NO3)2 0.167 mol/リットル (NH4)2HPO4 0.100 mol/リットル
【0007】次いでこのチタン基材を前記の尿素含有水
溶液から引き上げ、下記組成のカルシウムイオンとリン
酸イオンとを含む第二水溶液に浸漬し、例えば50℃に
保持して14日間静置する。この第二水溶液はいわゆる
擬似体液の組成を有するものであるので、以下これを
「擬似体液」という。擬似体液の組成 (例) Na+ 142.0 ×10-3mol/リットル K+ 5.0 ×10-3mol/リットル Ca2+ 2.5 ×10-3mol/リットル Mg2+ 1.5 ×10-3mol/リットル Cl- 147.8 ×10-3mol/リットル HCO3 - 4.2 ×10-3mol/リットル HPO4 2- 1.0 ×10-3mol/リットル SO4 2- 0.5 ×10-3mol/リットルトリス (ヒト゛ロキシメチル)アミノメタン 100 ×10-3mol/リットル これによってチタン基材の表面に強固に固着したハイド
ロキシアパタイト皮膜が形成される。
溶液から引き上げ、下記組成のカルシウムイオンとリン
酸イオンとを含む第二水溶液に浸漬し、例えば50℃に
保持して14日間静置する。この第二水溶液はいわゆる
擬似体液の組成を有するものであるので、以下これを
「擬似体液」という。擬似体液の組成 (例) Na+ 142.0 ×10-3mol/リットル K+ 5.0 ×10-3mol/リットル Ca2+ 2.5 ×10-3mol/リットル Mg2+ 1.5 ×10-3mol/リットル Cl- 147.8 ×10-3mol/リットル HCO3 - 4.2 ×10-3mol/リットル HPO4 2- 1.0 ×10-3mol/リットル SO4 2- 0.5 ×10-3mol/リットルトリス (ヒト゛ロキシメチル)アミノメタン 100 ×10-3mol/リットル これによってチタン基材の表面に強固に固着したハイド
ロキシアパタイト皮膜が形成される。
【0008】得られたハイドロキシアパタイト被覆チタ
ン基材をX線回折により検査すると、特に(100)
(200)面が発達した平板状ハイドロキシアパタイト
結晶の生成が顕著に認められた。また、テープ法剥離試
験の結果、ハイドロキシアパタイト皮膜のチタン基材に
対する固着強度は極めて高いことがわかった。
ン基材をX線回折により検査すると、特に(100)
(200)面が発達した平板状ハイドロキシアパタイト
結晶の生成が顕著に認められた。また、テープ法剥離試
験の結果、ハイドロキシアパタイト皮膜のチタン基材に
対する固着強度は極めて高いことがわかった。
【0009】本発明のハイドロキシアパタイト皮膜の形
成方法においては、80℃〜300℃の範囲内に加熱さ
れた前記金属基材を水溶液中で尿素の存在下にカルシウ
ムイオン及びリン酸イオンと接触させる前処理工程を経
ることによって金属基材上に強固なハイドロキシアパタ
イト皮膜が形成される。このとき、金属基材の予熱温度
が80℃未満ではハイドロキシアパタイト皮膜が十分に
形成されないことがわかった。また予熱温度が300℃
を越えると、皮膜形成には問題ないが金属基材が酸化等
により劣化して強度が低下する可能性がある。
成方法においては、80℃〜300℃の範囲内に加熱さ
れた前記金属基材を水溶液中で尿素の存在下にカルシウ
ムイオン及びリン酸イオンと接触させる前処理工程を経
ることによって金属基材上に強固なハイドロキシアパタ
イト皮膜が形成される。このとき、金属基材の予熱温度
が80℃未満ではハイドロキシアパタイト皮膜が十分に
形成されないことがわかった。また予熱温度が300℃
を越えると、皮膜形成には問題ないが金属基材が酸化等
により劣化して強度が低下する可能性がある。
【0010】尿素含有水溶液中の尿素濃度は、0.05
mol/リットル〜2mol/リットルの範囲内とすることが好ましい。
0.05mol/リットル未満では金属基材上にハイドロキシア
パタイト皮膜が十分に形成されない。2mol/リットルを越え
る尿素濃度は、皮膜形成を増進しないばかりでなく、皮
膜内に尿素が残留する可能性があり好ましくない。
mol/リットル〜2mol/リットルの範囲内とすることが好ましい。
0.05mol/リットル未満では金属基材上にハイドロキシア
パタイト皮膜が十分に形成されない。2mol/リットルを越え
る尿素濃度は、皮膜形成を増進しないばかりでなく、皮
膜内に尿素が残留する可能性があり好ましくない。
【0011】加熱した金属基材を尿素含有水溶液中に浸
漬することで良好なハイドロキシアパタイト皮膜が形成
される理由については明確でなく、また理論によって本
発明が制限されるものでもないが、加熱された金属基材
を尿素含有水溶液に浸漬すると、熱せられた金属表面に
接触した尿素がアンモニアと炭酸に分解し、生成したア
ンモニアが接触界面のpHを調整して金属表面における
ハイドロキシアパタイト核の生成を促進する作用を有す
るものと考えられる。
漬することで良好なハイドロキシアパタイト皮膜が形成
される理由については明確でなく、また理論によって本
発明が制限されるものでもないが、加熱された金属基材
を尿素含有水溶液に浸漬すると、熱せられた金属表面に
接触した尿素がアンモニアと炭酸に分解し、生成したア
ンモニアが接触界面のpHを調整して金属表面における
ハイドロキシアパタイト核の生成を促進する作用を有す
るものと考えられる。
【0012】前記の本発明の好ましい実施形態におい
て、加熱された金属基材を尿素含有水溶液と接触させる
時間は1秒〜数分間程度の短時間でよい。この間に金属
表面に結晶核が生成する。次に、これを擬似体液に浸漬
して穏和な条件で比較的長時間を要してハイドロキシア
パタイトの結晶を成長させる。この場合、擬似体液を好
ましくは30℃〜60℃の範囲内に保持し、数時間ない
し数日の比較的長時間を要して結晶を成長させることに
よって、ハイドロキシアパタイト結晶は平板状に成長
し、金属表面上で互いに絡み合って強靱な皮膜を形成す
る。
て、加熱された金属基材を尿素含有水溶液と接触させる
時間は1秒〜数分間程度の短時間でよい。この間に金属
表面に結晶核が生成する。次に、これを擬似体液に浸漬
して穏和な条件で比較的長時間を要してハイドロキシア
パタイトの結晶を成長させる。この場合、擬似体液を好
ましくは30℃〜60℃の範囲内に保持し、数時間ない
し数日の比較的長時間を要して結晶を成長させることに
よって、ハイドロキシアパタイト結晶は平板状に成長
し、金属表面上で互いに絡み合って強靱な皮膜を形成す
る。
【0013】
【実施例】(実施例1)水1リットルに硝酸カルシウム0.
167mol及びリン酸一水素アンモニウム0.1molを溶
解し、得られた水溶液(原液)に尿素を0.5mol添加
して尿素含有水溶液を調製した。直径14mm、厚さ1.
6mmのチタン基材の表面を鏡面研磨し、200℃に加熱
し、直ちに前記の尿素含有水溶液に2分間浸漬し、その
後擬似体液に50℃で3日間保持した後取り出し、水洗
乾燥後に表面の状態をX線回折により検査した。検査の
結果は、図1に示すように、チタンの表面にハイドロキ
シアパタイト結晶の生成が認められた。
167mol及びリン酸一水素アンモニウム0.1molを溶
解し、得られた水溶液(原液)に尿素を0.5mol添加
して尿素含有水溶液を調製した。直径14mm、厚さ1.
6mmのチタン基材の表面を鏡面研磨し、200℃に加熱
し、直ちに前記の尿素含有水溶液に2分間浸漬し、その
後擬似体液に50℃で3日間保持した後取り出し、水洗
乾燥後に表面の状態をX線回折により検査した。検査の
結果は、図1に示すように、チタンの表面にハイドロキ
シアパタイト結晶の生成が認められた。
【0014】比較例として、尿素を含まない前記の原液
を用いた以外は実施例1と同様に処理して得られた比較
例のチタン基材についてX線回折検査を行ったところ、
チタン基材の表面にハイドロキシアパタイト結晶の生成
はほとんど認められなかった。この結果から、本発明の
方法において、加熱された金属基材を尿素の存在下にカ
ルシウムイオン及びリン酸イオンと接触させることによ
って、金属基材表面にハイドロキシアパタイト皮膜の形
成が促進されたことは明かである。
を用いた以外は実施例1と同様に処理して得られた比較
例のチタン基材についてX線回折検査を行ったところ、
チタン基材の表面にハイドロキシアパタイト結晶の生成
はほとんど認められなかった。この結果から、本発明の
方法において、加熱された金属基材を尿素の存在下にカ
ルシウムイオン及びリン酸イオンと接触させることによ
って、金属基材表面にハイドロキシアパタイト皮膜の形
成が促進されたことは明かである。
【0015】(実施例2)前記実施例1と同様のチタン
基材をそれぞれ80℃、200℃、300℃に加熱し、
実施例1と同様の尿素含有水溶液に5秒間浸漬し、その
後擬似体液中に50℃で3日間保持して得られた試料に
ついて、形成された皮膜の固着強度をテープ剥離法(1
0分割)により測定した。また、チタン基材の浸漬時の
温度を30℃及び400℃とした比較例についても同様
に析出皮膜の固着強度を測定した。結果を表1に示す。
測定結果は、100分割中の剥離コマ数で表した。
基材をそれぞれ80℃、200℃、300℃に加熱し、
実施例1と同様の尿素含有水溶液に5秒間浸漬し、その
後擬似体液中に50℃で3日間保持して得られた試料に
ついて、形成された皮膜の固着強度をテープ剥離法(1
0分割)により測定した。また、チタン基材の浸漬時の
温度を30℃及び400℃とした比較例についても同様
に析出皮膜の固着強度を測定した。結果を表1に示す。
測定結果は、100分割中の剥離コマ数で表した。
【0016】
【表1】
【0017】テープ剥離試験の結果は、基材加熱温度が
30℃の比較例において剥離が著しかった以外は良好な
固着強度を示した。ただし、別に行った曲げ強度試験に
おいて、基材を400℃に加熱した比較例には強度低下
が認められた。従って実施例2に示すように、浸漬時の
基材温度を80℃〜300℃の範囲内とすることによっ
て、皮膜の固着強度においても金属基材の物性において
も優れた特性のハイドロキシアパタイト被覆金属基材が
得られることがわかる。
30℃の比較例において剥離が著しかった以外は良好な
固着強度を示した。ただし、別に行った曲げ強度試験に
おいて、基材を400℃に加熱した比較例には強度低下
が認められた。従って実施例2に示すように、浸漬時の
基材温度を80℃〜300℃の範囲内とすることによっ
て、皮膜の固着強度においても金属基材の物性において
も優れた特性のハイドロキシアパタイト被覆金属基材が
得られることがわかる。
【0018】(実施例3)前記実施例1と同様のチタン
基材を200℃に加熱し、実施例1と同様の尿素含有水
溶液に10秒間浸漬した後に、直ちに下記組成の擬似体
液に浸漬し、50℃に保温して14日間保持した。擬似体液組成 Na+ 142.0 ×10-3mol/リットル K+ 5.0 ×10-3mol/リットル Ca2+ 2.5 ×10-3mol/リットル Mg2+ 1.5 ×10-3mol/リットル Cl- 147.8 ×10-3mol/リットル HCO3 - 4.2 ×10-3mol/リットル HPO4 2- 1.0 ×10-3mol/リットル SO4 2- 0.5 ×10-3mol/リットルトリス (ヒト゛ロキシメチル)アミノメタン 100 ×10-3mol/リットル 得られた試料についてX線回折を行うとともに、走査型
電子顕微鏡により表面状態を観察した。X線回折図を図
2に、また走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
基材を200℃に加熱し、実施例1と同様の尿素含有水
溶液に10秒間浸漬した後に、直ちに下記組成の擬似体
液に浸漬し、50℃に保温して14日間保持した。擬似体液組成 Na+ 142.0 ×10-3mol/リットル K+ 5.0 ×10-3mol/リットル Ca2+ 2.5 ×10-3mol/リットル Mg2+ 1.5 ×10-3mol/リットル Cl- 147.8 ×10-3mol/リットル HCO3 - 4.2 ×10-3mol/リットル HPO4 2- 1.0 ×10-3mol/リットル SO4 2- 0.5 ×10-3mol/リットルトリス (ヒト゛ロキシメチル)アミノメタン 100 ×10-3mol/リットル 得られた試料についてX線回折を行うとともに、走査型
電子顕微鏡により表面状態を観察した。X線回折図を図
2に、また走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0019】図2のX線回折図は、ハイドロキシアパタ
イト結晶の特に(100)(200)面が著しく発達し
ていることを示し、また図3は、前記X線回折図に対応
して、金属基材表面に平板状ハイドロキシアパタイト結
晶が発達成長している様相を示している。
イト結晶の特に(100)(200)面が著しく発達し
ていることを示し、また図3は、前記X線回折図に対応
して、金属基材表面に平板状ハイドロキシアパタイト結
晶が発達成長している様相を示している。
【0020】
【発明の効果】本発明のハイドロキシアパタイト皮膜の
形成方法は、80℃〜300℃の範囲内の温度に加熱さ
れた金属基材を第一水溶液中で尿素の存在下にカルシウ
ムイオン及びリン酸イオンと接触させ、次いで少なくと
もカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第二水溶液
に浸漬して、前記金属基材の表面にハイドロキシアパタ
イトを析出させるものであるので、簡単な方法でありな
がら金属基材の物性を低下させることなく、しかも金属
基材に対する固着強度が高いハイドロキシアパタイト皮
膜を形成することができる。
形成方法は、80℃〜300℃の範囲内の温度に加熱さ
れた金属基材を第一水溶液中で尿素の存在下にカルシウ
ムイオン及びリン酸イオンと接触させ、次いで少なくと
もカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第二水溶液
に浸漬して、前記金属基材の表面にハイドロキシアパタ
イトを析出させるものであるので、簡単な方法でありな
がら金属基材の物性を低下させることなく、しかも金属
基材に対する固着強度が高いハイドロキシアパタイト皮
膜を形成することができる。
【図1】 本発明の一実施例により得られた試料表面の
X線回折図
X線回折図
【図2】 本発明の他の一実施例により得られた試料表
面のX線回折図
面のX線回折図
【図3】 本発明の一実施例により得られた試料の表面
及び断面の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真
及び断面の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野末 章 東京都千代田区紀尾井町7−1 上智大学 理工学部内 (72)発明者 竹内 啓泰 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリ アル株式会社総合研究所内
Claims (4)
- 【請求項1】 生体内で使用される金属基材上にハイド
ロキシアパタイト皮膜を形成するに際して、80℃〜3
00℃の範囲内に加熱された前記の金属基材を少なくと
も尿素、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む第一
の水溶液に浸漬し、次いで少なくともカルシウムイオン
及びリン酸イオンを含む第二の水溶液に浸漬して、前記
金属基材の表面にハイドロキシアパタイト皮膜を生成さ
せることを特徴とするハイドロキシアパタイト皮膜の形
成方法。 - 【請求項2】 前記金属基材がチタン又はチタン合金で
あることを特徴とする請求項1に記載のハイドロキシア
パタイト皮膜の形成方法。 - 【請求項3】 前記第一水溶液中の尿素の濃度を0.0
5mol/リットル〜2mol/リットルの範囲内とすることを特徴とす
る請求項1又は請求項2に記載のハイドロキシアパタイ
ト皮膜の形成方法。 - 【請求項4】 前記の第二水溶液を30℃〜60℃の範
囲内に保持することを特徴とする請求項1〜請求項3の
何れかに記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10134042A JPH11323570A (ja) | 1998-05-15 | 1998-05-15 | ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10134042A JPH11323570A (ja) | 1998-05-15 | 1998-05-15 | ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JPH11323570A true JPH11323570A (ja) | 1999-11-26 |
Family
ID=15119021
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP10134042A Withdrawn JPH11323570A (ja) | 1998-05-15 | 1998-05-15 | ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JPH11323570A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
1998
- 1998-05-15 JP JP10134042A patent/JPH11323570A/ja not_active Withdrawn
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