JPH11315351A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

Info

Publication number
JPH11315351A
JPH11315351A JP5592199A JP5592199A JPH11315351A JP H11315351 A JPH11315351 A JP H11315351A JP 5592199 A JP5592199 A JP 5592199A JP 5592199 A JP5592199 A JP 5592199A JP H11315351 A JPH11315351 A JP H11315351A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amount
bearing
inner ring
life
retained austenite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP5592199A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4320825B2 (ja
Inventor
Hiromichi Takemura
浩道 武村
Yasuo Murakami
保夫 村上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP05592199A priority Critical patent/JP4320825B2/ja
Publication of JPH11315351A publication Critical patent/JPH11315351A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4320825B2 publication Critical patent/JP4320825B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】オルタネータ用軸受などの高振動・高荷重で使
用される転がり軸受の寿命を大幅に延長する。 【解決手段】回転輪である内輪3を以下の組成の鉄鋼材
料で形成する。すなわち、この鉄鋼材料は、合金成分と
してCを0.65〜1.20重量%、Siを0.10〜
0.70重量%、Mnを0.20〜1.20重量%、C
rを0.20〜1.80重量%の範囲内で含み、且つO
の含有率は16ppm以下である。また、内輪3の熱処
理後の残留オーステナイト量を0〜6体積%とし、軌道
面の表面硬さをHRC57以上65以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受に関
し、特に、エンジン補機用(オルタネータ、電磁クラッ
チ、中間プーリ、カーエアー用コンプレッサ、水ポンプ
用等)のグリース封入軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の小型・軽量化に伴い、エ
ンジンの補機類にも小型・軽量化と共に高性能・高出力
化が求められている。例えばオルタネータ用の軸受に
は、エンジンの作動と同時に、高速回転に伴う高振動、
高荷重(重力加速度で4G〜20G位)がベルトを介し
て作用する。そのため、オルタネータ用軸受には、グリ
ース潤滑されている軸受を用いると焼付きが生じてロッ
クし易く、また、固定輪である外輪の軌道面に早期剥離
が生じ易いという問題があり、その結果、十分に長い寿
命が得られていなかった。
【0003】高振動、高荷重下で使用される軸受の寿命
向上を図る技術としては、例えば、特公平7−7256
5号公報に、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で形成さ
れた固定輪に対して通常の焼入れを施した後、サブゼロ
処理を施し、その後に高温焼戻し処理を施すことで、固
定輪の残留オーステナイト量を10体積%以下にするこ
とが開示されている。すなわち、固定輪の残留オーステ
ナイト量を少なくすることによって、固定輪の硬さを高
く維持し、且つ高振動、高荷重下における固定輪の軌道
面の塑性変形を低減して早期剥離を防止しようとしてい
る。
【0004】また、固定輪の早期剥離を防止する対策と
して、「SAEテクニカルペーパー:SAE95094
4(開催日1995年2月27日〜3月2日)」の第1
項〜第14項には、オルタネータ用軸受の疲労メカニズ
ムを解明し、封入グリースをEグリースからMグリース
に変更することが開示されている。このMグリースはダ
ンパー効果が高いため、高振動、高荷重下で使用される
軸受に使用すると、振動および負荷を十分に吸収して固
定輪の早期剥離を防止することができる。
【0005】一方、特公平6−33441号公報には、
Cを0.95〜1.10重量%、SiあるいはAlを1
〜2重量%、Mnを0.50重量%以下、Crを0.9
0〜1.60重量%の範囲で含み、酸素含有量が13p
pm以下とした鋼で軌道輪を形成し、焼入れ後に230
℃〜300℃の高温で焼き戻しを行って残留オーステナ
イト量を8体積%以下とし、且つ表面硬度をHRC60
以上とする技術が開示されている。この技術は、高温使
用時に高い寸法安定性と長い転動寿命を有する軸受を得
ることを目的としている。
【0006】また、特開平7−103241号公報に
は、軸受鋼またはステンレス鋼からなる軸受軌道輪の残
留オーステナイト量を6体積%以下にする技術が開示さ
れている。この技術は、HDD用やオーディオ用の転が
り軸受を対象とし、使用中に軌道面に圧痕が発生して振
動が生じることを防止して、音響特性の向上を図ること
を目的としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
7−72565号公報および前記SAEテクニカルペー
パーに開示された技術では、高振動、高荷重下で使用さ
れる軸受の固定輪の早期剥離防止効果は得られるが、エ
ンジン補機用軸受では高温使用時の耐焼付き性を更に向
上することが望まれる。
【0008】すなわち、雰囲気温度が100℃以上の高
温で長時間使用される場合には、回転輪である内輪の温
度が、固定輪である外輪の温度より10℃以上高くなり
やすい。これは、回転により軸受に発生した摩擦熱はシ
ャフトおよびハウジングを通じて放熱されるが、内輪が
固定されているシャフトより外輪が固定されているハウ
ジングの方が放熱条件が良いためである。そして、外輪
より温度の高い内輪の方が残留オーステナイト量の分解
量が多くなるため、内輪の軌道径が膨張して軸受隙間が
減少する。その結果、焼付きが生じ易くなる。
【0009】また、特公平6−33441号公報および
特開平7−103241号公報には、上記のような高温
使用時の焼付きを防止することを目的とする記載はな
い。さらに、特公平6−33441号公報に記載の技術
では、固定輪を形成する鋼におけるSiあるいはAlの
含有量が1〜2重量%と多いため酸素含有量を13pp
m以下に規定しているが、転がり寿命を著しく低下させ
るシリコン系やアルミナ系の巨大な介在物が生じやすく
なる傾向がある。
【0010】また、特開平7−103241号公報に記
載の技術は、軸受内径が10mm未満の小型玉軸受やミ
ニアチュア玉軸受のように、玉径が3mm以下で複数の
玉が配列されるピッチ円の直径が11mm以下である玉
軸受に効果を有するものであり、軸受内径が10mm以
上のエンジン補機用軸受の場合には、HDD用やオーデ
ィオ用の場合よりも高温、高振動下で使用されるため、
さらなる耐剥離性および耐焼付き性が求められる。
【0011】本発明は、このような従来技術の問題点に
着目してなされたものであり、高振動、高荷重、高温条
件下で使用されるエンジン補機用転がり軸受において、
早期剥離の防止および焼付き防止の両方の効果が高く、
軸受寿命の大幅な延長が可能な転がり軸受を提供するこ
とを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、本発明の転がり軸受は、グリース潤滑される固定輪
と回転輪との間に複数の転動体が配設された転がり軸受
において、少なくとも回転輪は、合金成分としてCを
0.65〜1.20重量%、Siを0.10〜0.70
重量%、Mnを0.20〜1.20重量%、Crを0.
20〜1.80重量%の範囲内で含み、且つOの含有率
は16ppm以下である鉄鋼材料で形成され、熱処理後
の残留オーステナイト量が0〜6体積%であり、軌道面
の表面硬さがHRC57以上65以下であることを特徴
とする。
【0013】本発明においては、回転輪を形成する鉄鋼
材料の組成について、前述のように、C、Si、Mn、
およびCrの含有範囲とOの含有率を限定する。各数値
限定の臨界的意義について以下に述べる。 〔C:0.65〜1.20重量%〕Cは鋼に硬さを付与
する元素であり、Cの含有量が0.65未満であると、
転がり軸受に要求される硬さ(スケールCの場合のロッ
クウェル硬さ(HRC)で57以上)を確保できない場
合がある。また、Cはマトリックスに固溶するとともに
他の合金成分元素(特にCr)と結合して炭化物となる
が、Cの含有量が1.20重量%を超えると、製鋼時に
巨大炭化物が生成しやすくなって、疲労寿命や耐衝撃性
が低下する恐れがある。 〔Si:0.10〜0.70重量%〕Siは製鋼時に脱
酸剤として作用し、焼入れ性を向上させるとともに、組
織変化を遅延させる元素であり、0.1重量%未満では
脱酸効果が十分ではない。また、Siの含有率が0.7
重量%を超えると、加工性が著しく低下するとともに、
靱性や耐久性を著しく低下させると考えられている珪酸
塩系介在物が生じる恐れがある。 〔Mn:0.20〜1.20重量%〕Mnは鋼の焼入れ
性を向上させる効果のある元素であり、0.20重量%
未満であるとその効果が不十分となる。Mnの含有率が
1.20重量%を超えると加工性が低下する。また、S
の存在により寿命低下の要因となり得る介在物であるM
nSが生じるため、Sの含有率を0.02重量%以下と
してMnSの生成量を少なくすることが好ましい。 〔Cr:0.20〜1.80重量%〕Crは焼入れ性を
向上させ、炭化物球状化を促進させる元素であるが、含
有量が0.20重量%未満であるとこれらの作用が実質
的に発揮されない。また、CrはCと結びついて巨大な
炭化物を形成する恐れがあり、含有量が多いと被切削性
を劣化させる場合もあるため、これを避けるためにCr
含有率の上限値を1.80重量%とする。 〔O≦16ppm〕Oは鋼において酸化物系の介在物
(例えばAl2 3 やCaO)を生成し、転がり寿命を
低下させる元素であり、その含有率が16ppmを超え
ると転がり寿命の低下が著しくなるため、16ppmを
上限値とした。 〔残留オーステナイト量が0〜6体積%〕本発明の限定
を満たす同一組成の鉄鋼材料を使用して多数の回転輪
(内輪)を形成し、異なる条件で熱処理を施すことによ
り、残留オーステナイト量が異なる回転輪を作製し、こ
れを用いて転がり軸受を組み立て、振動・高荷重・高温
下での転がり寿命試験を行ったところ、残留オーステナ
イト量が6体積%を超えると極端に寿命が低下すること
が判明した。なお、高温使用時の焼付き防止効果は残留
オーステナイト量が少ないほど高くなり、特に残留オー
ステナイト量が4体積%以下であることが好ましい。 〔軌道面の表面硬さがHRC57以上65以下〕HRC
57未満であると軸受として十分な剛性が得られない。
HRC65を超えると、靱性が低下し、亀裂伝搬特性が
著しく悪くなる。
【0014】以上のような鉄鋼材料および残留オーステ
ナイト量の特定により、固定輪に比べて放熱され難い回
転輪の高温使用時の寸法変化(内輪軌道径の膨張)が抑
制されるため、軸受隙間の減少が防止される。その結
果、高温使用時の焼き付けが防止されて転がり寿命が延
長される。また、鉄鋼材料の特定のうちの酸素含有率の
特定により、非金属介在物の生成が抑制される。この非
金属介在物生成の抑制および軌道面の表面硬さの特定の
結果、転がり軸受の寿命がさらに延長される。
【0015】なお、転動体の残留オーステナイト量を0
〜6体積%とすることにより、高温使用時に転動体の膨
張が防止されるため、焼付き防止効果がより高くなる。
また、グリース潤滑される固定輪と回転輪との間に複数
の転動体が配設された転がり軸受において、回転輪は、
合金成分としてCを0.65〜1.20重量%、Siを
0.10〜0.70重量%、Mnを0.20〜1.20
重量%、Crを0.20〜1.80重量%の範囲内で含
み、且つOの含有率は16ppm以下である鉄鋼材料で
形成され、熱処理後の残留オーステナイト量が0〜6体
積%であり、軌道面の表面硬さがHRC57以上65以
下であり、固定輪は、前記と同じ組成範囲の鉄鋼材料で
形成され、熱処理後の残留オーステナイト量が7体積%
以上であり、軌道面の表面硬さがHRC60以上65以
下である転がり軸受は、回転輪および固定輪ともに残留
オーステナイト量が0〜6体積%であるものと比較し
て、転がり寿命がより高くなる。
【0016】表1に、内輪(回転輪)と外輪(固定輪)
の残留オーステナイト量(γR )の組合せの違いによ
る、転がり軸受の特性の違いを示す。
【0017】
【表1】
【0018】この表から分かるように、内輪の残留オー
ステナイト量が0〜6体積%であると、高温使用時の内
輪軌道径の膨張が抑制されるため寸法安定性が高くな
る。これに対して、内輪の残留オーステナイト量が7体
積%以上であると寸法安定性は悪くなる。また、外輪の
残留オーステナイト量が7体積%以上であると、耐圧痕
性が良好となって転がり寿命が高くなる。これに対し
て、外輪の残留オーステナイト量が0〜6体積%である
と、耐圧痕性が不十分となって転がり寿命は低くなる。
【0019】したがって、タイプB,C,Dの組合せで
は、内輪の寸法安定性および転がり寿命のいずれかの点
が不十分となるが、タイプAの組合せでは、内輪の寸法
安定性および転がり寿命のいずれの点も良好になる。す
なわち、内輪の残留オーステナイト量が0〜6体積%で
あって、外輪の残留オーステナイト量が7体積%以上で
ある組合せの転がり軸受は、内輪の寸法安定性および転
がり寿命のいずれの点も良好になる。
【0020】つまり、高温使用時に内輪の寸法安定性を
高くして内輪の焼付き防止効果を得るためには、タイプ
AおよびBのように、内輪の残留オーステナイト量を0
〜6体積%とすることが好ましい。これにより、軸と内
輪内周面との間のクリープも発生しなくなり、内輪の発
熱も少なく抑えられる。外輪の剥離防止のためには、軌
道面の硬さを保持して耐圧痕性を高くするために、タイ
プAおよびCのように、外輪の残量オーステナイト量を
7体積%以上とすることが好ましい。
【0021】そして、残留オーステナイト量がこのよう
な好ましい値となっている内輪および外輪を組み合わせ
た転がり軸受(タイプA)は、高振動、高荷重、高温の
条件下で使用した場合に、寿命が最も長く、クリープも
生じない、最も優れた転がり軸受となる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を具体的
な実施例および比較例により説明する。図1は、本発明
の一実施形態である転がり軸受を示す断面図である。こ
の転がり軸受1はJIS呼び番6303の深みぞ玉軸受
であり、外輪2がハウジング8に固定されて固定輪とな
り、内輪3はシャフト7に外嵌されて回転輪となってい
る。また、外輪2と内輪3との間には、保持器5により
保持された多数の転動体4が配設され、保持器5の両側
位置の外輪2と内輪3との間には、シール部材6,6が
装着されている。また、シール部材6,6によって囲ま
れる空間にはグリース10として前述のグリースMが封
入されている。
【0023】そして、この転がり軸受1は、シャフト7
の回転に伴って内輪3が回転し、この回転による振動・
荷重は、シャフト7から内輪3及び転動体4を介して外
輪2の負荷圏に作用する。ここで、内輪3は、下記の表
2に示す組成の鉄鋼材料で形成され、下記のいずれかの
条件で焼入れ・焼き戻しすることによって、硬さ(HR
C)および残留オーステナイト量(γR )が、下記の表
2に示す値となっているものである。 〔焼入れ・焼き戻し条件〕 条件I:840℃で焼入れ後、160℃で焼き戻し。
【0024】 条件II:840℃で焼入れ後、200℃で焼き戻し。 条件III :840℃で焼入れ後、250℃で焼き戻し。 条件IV:840℃で焼入れ後、300℃で焼き戻し。 条件V:840℃で焼入れ後、400℃で焼き戻し。 条件VI:840℃で焼入れ後、−80℃でサブゼロ処
理後、160℃で焼き戻し。
【0025】
【表2】
【0026】また、実施例および比較例とも、外輪2及
び転動体4は、同じ高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ
2)で形成して条件Iの熱処理を施すことにより、残留
オーステナイト量を3〜5体積%とし、表面硬さをHR
C62とした。内輪3および外輪2の表面粗さをRaで
0.01〜0.04μm、転動体4の表面粗さをRaで
0.003〜0.010μmとした。
【0027】このようにして作製された、異なる内輪
(実施例1〜10および比較例1〜10)3と、同じ外
輪2及び転動体4を備えた転がり軸受1に対し、以下の
ようにして寿命試験を行った。試験機としては、特開平
9−89724号公報に開示されている軸受用寿命試験
装置を用い、回転数を所定時間毎(例えば9秒毎)に9
000rpmと18000rpmとに切り換える急加減
速試験を行った。転がり軸受1の軸受隙間を10〜15
μmとし、荷重条件は、P(負荷荷重)/C(動定格荷
重)=0.10とし、試験温度を130℃で一定にし
た。
【0028】この条件での転がり軸受1の計算寿命(理
論的な最大寿命)は1350時間であるため、試験打ち
切り時間を1500時間とした。また、この試験は、実
施例1〜10および比較例1〜10の試験体をそれぞれ
10個ずつ用意して、焼付きや剥離などの異常が生じる
までの時間を測定した。10個の試験体の結果のうち、
異常が生じるまでの時間が最も短い時間を評価時間(試
験寿命)とした。これらの結果を下記の表3に示す。
【0029】なお、表3で下線を施した数値は、本発明
の数値限定範囲から外れるものを示す。また、10個の
試験体すべてに試験打ち切り時間までに焼付きや剥離な
どの異常が生じなかった場合には、評価時間を1500
時間とした。
【0030】
【表3】
【0031】この寿命試験結果から分かるように、内輪
3を形成する鉄鋼材料の組成が C:0.65〜1.20重量% Si:0.10〜0.70重量% Mn:0.20〜1.20重量% Cr:0.20〜1.80重量% O:O≦16ppm を全て満たすとともに、その熱処理後の残留オーステナ
イト量が0〜6体積%であり、且つ軌道面の表面硬さが
HRC57〜65である場合(実施例1〜10)に限っ
て、高振動、高荷重、高温下での本寿命試験において、
計算寿命1350時間より長い寿命が得られた。
【0032】実施例1および2に関しては、残留オース
テナイト量が6体積%および5体積%と比較的大きかっ
たため、それぞれ10個中3個、10個中2個の試験体
について焼付きが生じたが、転がり寿命は計算寿命13
50時間より長く、比較例1〜10の2倍程度またはそ
れ以上となった。実施例1および2の試験体のうち焼付
きが生じていない軸受について、試験後に内輪の軌道径
の膨張量を測定したところ5〜10μmであった。焼付
きが生じた軸受では、これ以上の膨張量となっていた。
【0033】実施例3〜10に関しては、残留オーステ
ナイト量が4体積%以下であったため、全ての試験体に
ついて、試験打ち切り時間までに焼付きや剥離などの異
常が生じなかった。実施例3〜10の軸受について、試
験後に内輪の軌道径の膨張量を測定したところ5μm以
下であった。また、軌道面の表面状態を観察したところ
良好であり、この程度の軸受隙間の減少量では焼付きを
引き起こすまでには至らなかった。
【0034】比較例1および7は軌道面の表面硬さがH
RC55と低いため、評価時間は計算寿命の1/3程度
であった。試験終了後に内輪のミクロ組織を調査したと
ころ、塑性変形が極端に進行していることが分かった。
また、X線による疲労解析(「半値幅の減少量と残留オ
ーステナイトの分解量との組合せ」NSKベアリングジ
ャーナル No.643,p1〜10,1982年参照)を
行った結果、内部疲労が認められ、全ての剥離はマトリ
ックス起点型であることが分かった。
【0035】比較例2および5では、CおよびCrの含
有率が高い材料を使用しているため、熱処理後に軌道表
面に10μm以上の巨大な炭化物(Cr炭化物)が確認
された。そして、この炭化物を起点にして表面から剥離
が生じた結果、評価時間が525時間および504時間
と短くなった。比較例3では、Siの含有率が本発明の
範囲より大きい材料を使用しているため、Si系の介在
物を起点とした剥離が、計算寿命の1/2程度の時間で
発生した。比較例4では、Mnの含有率が本発明の範囲
より大きい材料を使用しているため、MnS系の介在物
を起点とした剥離が、計算寿命の1/2程度の時間で発
生した。比較例6では、Oの含有率が本発明の範囲より
大きい材料を使用しているため、アルミナ系の介在物を
起点とした剥離が、計算寿命の1/2程度の時間で発生
した。
【0036】比較例8〜10は、使用材料の組成および
軌道面の表面硬さは本発明の範囲内であったが、残留オ
ーステナイト量が6体積%よりも大きかったため、軸受
隙間の減少が生じた。その結果、計算寿命の1/7〜1
/10程度の時間で焼付きが生じた。次に、高炭素クロ
ム軸受鋼2種(SUJ2)を用いて、図1の軸受用の内
輪3、外輪2、および転動体4を形成し、内輪3および
外輪2については、前記I〜VIのいずれかの条件で熱
処理を施して、残留オーステナイト量および軌道面の表
面硬度を調整した。転動体4に対しては全て同じ熱処理
(通常の熱処理)を行った。内輪3および外輪2の表面
粗さはRaで0.01〜0.04μm、転動体4の表面
粗さはRaで0.003〜0.010μmとした。
【0037】このようにして作製された、異なる内輪と
外輪を、前記表1に示す4つのタイプに組合せて転がり
軸受1を組み立てた。表4に示すように、A〜Dの各タ
イプについて2種類の試験体を作製した。これらの試験
体に対して、前記と同じ試験装置を用い、回転数を変化
させないで(すなわち、振動を発生させないで)、高荷
重(P/C=0.4)、高速回転(10000rp
m)、高温(130℃)の条件で、Mグリース潤滑下で
寿命試験を行った。
【0038】ここで、この条件での転がり軸受1の計算
寿命は26時間であるため、試験打ち切り時間を50時
間とした。また、この試験は、各種類の試験体をそれぞ
れ10個ずつ用意して、焼付きや剥離などの異常が生じ
るまでの時間を測定した。10個の試験体の結果のう
ち、異常が生じるまでの時間が最も短い時間を評価時間
とした。これらの結果を下記の表4に示す。また、10
個の試験体すべてに試験打ち切り時間までに焼付きや剥
離などの異常が生じなかった場合には、評価時間を50
時間とした。
【0039】
【表4】
【0040】この寿命試験結果から分かるように、内輪
の残留オーステナイト量が0〜6体積%であって、外輪
の残留オーステナイト量が7体積%以上である組合せ
(タイプA)の転がり軸受は、高荷重、高温下での本寿
命試験において、剥離および焼き付きが生じないで計算
寿命より長い寿命が得られた。また、内輪および外輪の
両方の残留オーステナイト量が0〜6体積%である組合
せ(タイプB)の転がり軸受は、内輪には焼付きは生じ
なかった。しかし、外輪の軌道面硬さがHRC57,5
8であることから、高荷重での耐圧痕性が低下したた
め、ほぼ半分の試験体の外輪に剥離が生じて、計算寿命
程度の寿命となった。
【0041】また、内輪および外輪の両方の残留オース
テナイト量が7体積%以上である組合せ(タイプC)の
転がり軸受は、内輪の残留オーステナイト量が10体積
%または15体積%と大きいため、内輪軌道面の膨張に
より多数の試験体で内輪に焼付きが生じた。その結果、
評価時間は計算寿命より少し短かくなった。また、外輪
には剥離が生じていなかった。
【0042】また、内輪の残留オーステナイト量が6体
積%を超え、外輪の残留オーステナイト量が7体積%未
満である組合せ(タイプD)の転がり軸受は、内輪軌道
面の膨張により、多数の試験体の内輪に焼付きが生じ、
内輪と軸とのクリープも生じていた。また、外輪の残留
オーステナイト量が0.5体積%または3体積%と小さ
く、外輪軌道面の硬さもHRC58と低いため、外輪の
耐圧痕性が低くなって、外輪に剥離が生じた。これらの
点から、計算寿命の1/2程度の寿命となった。
【0043】なお、この実施形態で使用した高炭素クロ
ム軸受鋼に代えて高周波焼入れ鋼を用い、熱処理によっ
て残留オーステナイト量を所定範囲に調整した内輪およ
び外輪を用いてタイプAの組み合わせで組み立てた転が
り軸受についても、高炭素クロム軸受鋼を用いた場合と
同じ効果が得られる。
【0044】
【発明の効果】以上の説明したように、本発明によれ
ば、回転輪を形成する鉄鋼材料の組成限定、残留オース
テナイト量の限定、および軌道面の表面硬さの限定によ
って、高振動、高荷重、高温下で使用される転がり軸受
の寿命を、大幅に延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示
す断面図である。
【符号の説明】
1 転がり軸受 2 外輪(固定輪) 3 内輪(回転輪) 4 転動体 10 グリース

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリース潤滑される固定輪と回転輪との
    間に複数の転動体が配設された転がり軸受において、 少なくとも回転輪は、 合金成分としてCを0.65〜1.20重量%、Siを
    0.10〜0.70重量%、Mnを0.20〜1.20
    重量%、Crを0.20〜1.80重量%の範囲内で含
    み、且つOの含有率は16ppm以下である鉄鋼材料で
    形成され、 熱処理後の残留オーステナイト量が0〜6体積%であ
    り、軌道面の表面硬さがHRC57以上65以下である
    ことを特徴とする転がり軸受。
JP05592199A 1998-03-05 1999-03-03 転がり軸受 Expired - Fee Related JP4320825B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05592199A JP4320825B2 (ja) 1998-03-05 1999-03-03 転がり軸受

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10-53724 1998-03-05
JP5372498 1998-03-05
JP05592199A JP4320825B2 (ja) 1998-03-05 1999-03-03 転がり軸受

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11315351A true JPH11315351A (ja) 1999-11-16
JP4320825B2 JP4320825B2 (ja) 2009-08-26

Family

ID=26394433

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP05592199A Expired - Fee Related JP4320825B2 (ja) 1998-03-05 1999-03-03 転がり軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4320825B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7435308B2 (en) 2005-05-27 2008-10-14 Nsk Ltd. Rolling bearing
JP2009047273A (ja) * 2007-08-22 2009-03-05 Nsk Ltd 玉軸受
JP2020105618A (ja) * 2018-12-28 2020-07-09 日本製鉄株式会社 転がり軸受部品及びその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7435308B2 (en) 2005-05-27 2008-10-14 Nsk Ltd. Rolling bearing
JP2009047273A (ja) * 2007-08-22 2009-03-05 Nsk Ltd 玉軸受
JP2020105618A (ja) * 2018-12-28 2020-07-09 日本製鉄株式会社 転がり軸受部品及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4320825B2 (ja) 2009-08-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4423754B2 (ja) 転動軸の製造方法
US6409846B1 (en) Rolling bearing
US6485581B2 (en) Bearing for main spindle of machine tool
JPH084774A (ja) 転がり軸受
US7435308B2 (en) Rolling bearing
JP2001152252A (ja) 転がり軸受
US6267511B1 (en) Rolling bearing
JPH1030150A (ja) 転がり軸受
JP3509803B2 (ja) 転がり軸受
JP2008255399A (ja) 転がり軸受
JP2004011712A (ja) 転がり軸受、これを用いたベルト式無段変速機
JP2001165174A (ja) 転がり軸受
JP2002257144A (ja) 転がり軸受
JP3391345B2 (ja) 転がり軸受
JP5076274B2 (ja) 転がり軸受
JP2012031456A (ja) 転がり軸受
JPH11315351A (ja) 転がり軸受
JP2005069274A (ja) 転がり軸受
JP2004176156A (ja) 転がり軸受
JPH1151065A (ja) 転がり軸受
JP2000248954A (ja) ターボチャージャのロータ支持装置
JPH10122243A (ja) 転がり軸受
JP2006105363A (ja) 転がり軸受
JP2005147352A (ja) 転がり軸受
JP7379955B2 (ja) 浸炭窒化用鋼及び浸炭窒化部品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060222

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080321

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080401

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080523

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090512

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090525

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120612

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130612

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130612

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140612

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees