JPH11302943A - アパレル用生地及びブレード、それを用いた形態安定化繊維製品の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 アパレル用生地やブレードを素材として作ら
れる繊維製品の形態安定性を簡単かつ安価な方法で高め
ることである。 【解決手段】 繊維製品の素材となるアパレル用生地や
ブレードの構成糸の中に熱可塑性樹脂の低融点糸を含ま
せ、素材を縫合するなどしてできる製品を低融点糸の融
点を越える温度で熱成形して仕上げるようにしたのであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、形態安定化繊維
製品の製造方法と、その製品の専用素材として利用する
アパレル用生地並びにブレードに関する。

【０００２】

【従来の技術】形態安定化が要求される繊維製品は、
服、帽子、手提袋、手提バッグなど種々ある。

【０００３】この繊維製品の素材としては、織布、ニッ
ト（編物）が利用され、また、帽子等の素材としてブレ
ード（平打ちの組紐）もよく利用されている。ところ
で、服、帽子などの素材生地のうち、綿、麻、或いはそ
れ等の繊維の混紡率を高めた糸を織成して作られる生地
は特にしわがつき易い。このため、織成後の生地を樹脂
加工（防しわ加工）してしわをつき難くすることがなさ
れている。比較的しわになり難い合繊の高率混紡物に対
しても、より完全な防しわ性をもたせるためにその樹脂
加工がなされており、また、最近では、カッターシャツ
などに対して高度な形態安定加工（ウォッシュアンドウ
エア加工やパーマネント加工など）も施されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】樹脂加工等で防しわ性
を向上させる方法は、生地の製造工程が複雑になり、生
産性やコスト面で問題がある。また、樹脂加工や特殊加
工による形態安定機能は、クリーニング等によって徐々
に消失するなど長続きしないことが多い。

【０００５】また、ニットは、織布に比べてしわになり
難い反面、形崩れし易い欠点をもつが、防しわのための
樹脂加工でニットに形状保持機能をもたせるのは難し
い。

【０００６】さらに、帽子用真田と称される帽子用ブレ
ードの場合、材料として天然繊維の中で最も腰の強い麻
がよく用いられているが、麻のブレードで作った帽子は
小さく折り畳むと折り目が残って体裁が悪くなる。ま
た、麻は水に濡れると腰が弱くなって（しなやかになっ
て）製品が形崩れし易くなる。

【０００７】そこで、この発明は、形崩れし難く、かつ
しわになり難い形態安定化繊維製品を簡単に作るための
製造方法と、その方法用の専用素材を提供することを課
題としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、下記(1) 、(2) のこの発明の
アパレル用生地を裁断、縫合し、しかる後、低融点糸の
融点を越える温度で熱成形する方法を採る。 (1) よこ糸又は１本置きのたて糸と１本置きのよこ糸に
低融点糸を用い、この低融点糸と他の糸を織成して成る
アパレル用生地。 (2) ニットの地編組織の中に低融点糸を編込んで成るア
パレル用生地。

【０００９】また、上記(2) のアパレル用生地を所要形
状に成型編みし、しかる後、低融点糸の融点を越える温
度で熱成形する方法を採る。

【００１０】さらに、下記(3) 、(4) のこの発明のブレ
ードを縫合又は織成してブレード製シートを形成し、そ
のシートを低融点糸の融点を越える温度で熱成形する方
法を採る。 (3) 構成繊維の中に低融点糸を含ませた原糸を平打ちに
組んで成るブレード。 (4) 原糸の中に低融点糸を含ませ、その低融点糸の原糸
と非低融点糸の原糸を平打ちに組んで成るブレード。

【００１１】

【作用】この発明のアパレル用生地及びブレードに含ま
れる低融点糸がこの発明の製造方法による熱成形時に塑
性変形し、その後、冷え固まって成形後の形状を保とう
とする。また、熱成形時に低融点糸が他の糸に付着して
糸同志の熱固定もなされ、これによっても保形性が高ま
る。そのため、製品にしわがつき難く、製品の形崩れも
起こり難くなる。

【００１２】さらに、この発明の製造方法では、低融点
糸を含む素材を用いるので、仕上げ成形を熱成形とする
だけでよく、工程の複雑化やコストアップを招かない。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１〜図３に、この発明のアパレ
ル用生地の実施形態を示す。図１、図２はいずれも織布
である。これ等の織布１、２は、実際は密に織られる
が、図は判り易くするために糸の配列ピッチを粗くして
表わした。

【００１４】図１の織布１は、たて糸（経糸）３と、低
融点糸のよこ糸（緯糸）４を平織りしたものである。

【００１５】また、図２の織布２は、通常のたて糸３と
低融点糸のたて糸５を交互に配し、さらに、通常のよこ
糸６と低融点糸のよこ糸４を交互に配し、これ等を平織
したものである。

【００１６】たて糸３、よこ糸６には天然繊維（綿、麻
など）、合成繊維（ポリエステル、ナイロンなど）再生
繊維（レーヨン、ポリノジック、キュプラ）それ等の繊
維の混紡糸などを用いる。

【００１７】また、よこ糸４、たて糸５には、一緒に織
込む他の糸よりも融点の低い熱可塑性樹脂、例えば、ポ
リ塩化ビニル、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン、
アセテート、ポリウレタンなどで形成された糸を用い
る。この低融点糸のよこ糸４とたて糸５はモノフィラメ
ントであってもよいが、糸３、６が熱可塑性樹脂で形成
されている場合には、それよりも融点の低い材料樹脂を
選ぶ必要がある。

【００１８】なお、図２の織布２は、２本のよこ糸、即
ち、通常のよこ糸６と低融点糸のよこ糸４を交互に織込
む必要があるので、図１の織布に比べて織が面倒になる
が、熱成形後に得られる形態安定化の機能はこの糸配置
が最も優れる。

【００１９】織布の織り方は、平織りを例示したが、こ
の平織りに限定されるものではない。

【００２０】図３は、第３実施形態のニットを示してい
る。このニット７は、通常の編糸８と、低融点糸の編糸
９（これは編糸８よりも融点が低い）を用いて両面編し
たものであって、２つのゴム編組織が腹合わせになって
いる。ニットは、織物に比べて元々しわがつき難いが、
織物よりも形崩れし易い。しかし、例示のニット７は、
熱成形すると低融点糸９による保形性が生じて形崩れが
起こり難くなり、しわもつき難くなる。

【００２１】平編、或いはゴム編される通常の編糸に低
融点糸を添えて編成した添え編糸のニットや編組織の中
に低融点糸を編込んだレース地なども形態安定機能が高
まり、形崩れが起こり難くなる。

【００２２】図４は、この発明の生地を素材にして作っ
た帽子の一例である。この帽子１０に採用した生地は、
天然繊維のたて糸と低融点糸であるポリ塩化ビニルのよ
こ糸を杉織した後、表面を起毛処理した織布１であり、
その生地を所要形状に裁断、縫合し、さらに、成形型を
用い、ポリ塩化ビニルの融点よりも高い温度で熱生成し
て帽子１０に仕立ててある。この帽子１０は小さく折り
畳んでバッグや服のポケットなどに収納しても、取り出
して元の状態に広げると折り目が自然に消え、体裁が悪
くならない。

【００２３】なお、この発明の生地は、服、カーテン、
手提袋など、他の繊維製品の素材としても利用できる。

【００２４】図５は、ブレードの実施形態である。この
ブレード１１は、数本（図は２本）のたて糸１２を中に
通して数本（通常６〜１２本）の原糸１３を平打ちに組
んだものである。

【００２５】原糸１３は、図６（ａ）に示すように、麻
の繊維１４の中に低融点糸（ここではポリ塩化ビニルの
単繊維を用いた）１５を数本加えてこれを軽く撚り合わ
せたものや、図６（ｂ）に示すように、麻の繊維１４の
束の外周に低融点糸１５を巻き沿わせたもの、或いは図
６（ｃ）に示すように、低融点糸１５を芯にしてその外
周に麻の繊維１４を軽く撚り合わせたものなどを用い
た。

【００２６】低融点糸１５は、平打ちに組む原糸１３の
何本かを低融点糸に置き代える形で加えてもよい。

【００２７】なお、原糸１３を構成する繊維１４は、低
融点糸１５よりも融点の高い繊維であればよく、麻に限
定されない。

【００２８】図７は、図５のブレード１１を部分的にオ
ーバラップさせて渦状に巻き、隣り合うブレードの重ね
部を縫合して（１６が縫い目）して作られた円形シート
１７を示している。この円形シート１７を成形型（図示
せず）を用いて低融点糸の融点以上の温度（他の糸は溶
けたりちぢれたりしない温度）で熱成形し、図８に示す
ような帽子１８に仕上げる。

【００２９】このブレードは、籠、手提袋、手提バッグ
など、他の製品の素材としても利用できる。そのブレー
ドを縫合して継ぎ合わせる方法や、図９に示すように平
織する方法で材料シートを作り、そのシートを加工すれ
ば様々な形態安定化繊維製品を作ることができる。

【００３０】

【発明の効果】以上述べたように、この発明では素材と
成すアパレル用生地やブレードに低融点糸を含ませ、そ
の生地やブレードで作られた製品を熱成形することによ
り低融点糸を変形させ、さらに、他の糸に付着させるの
で製品の形態安定性を簡単に、しかも、コストをかけず
に高めることができる。

【００３１】なお、この発明の方法で得られる製品はし
わがつき難く、形態の回復性に優れるため、ブレード製
帽子等も小さく折り畳んでバッグ等に収納することがで
きる。

【００３２】また、熱成形後の低融点糸は水に濡れても
成形後の形を保つので、水を吸うセルロース系の繊維
（綿、麻など）を用いた生地やブレードで作られる繊維
製品にこの発明を適用すると、水濡れ、洗濯等による形
態悪化を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の生地（織布）の実施形態の組織図

【図２】他の実施形態（織布）の組織図

【図３】更に他の実施形態（ニット）の組織図

【図４】図１の生地で作った繊維製品の一例（帽子）を
示す斜視図

【図５】この発明のブレードの概要を示す平面図

【図６】低融点糸を含む原糸の具体例を示す図

【図７】ブレードを渦状に縫合して得られる円形シート
の平面図

【図８】図７の円形シートを熱成形して得られるブレー
ド製帽子の一例を示す斜視図

【図９】ブレードを平織りしてできるシートの平面図

【符号の説明】

１、２ 織布 ３ 通常のたて糸 ４ 低融点糸のよこ糸 ５ 低融点糸のたて糸 ６ 通常のよこ糸 ７ ニット ８ 編糸 ９ 低融点糸の編糸 １０ 帽子 １１ ブレード １２ たて糸 １３ 原糸 １４ 麻の繊維 １５ 低融点糸 １６ 縫い目 １７ 円形シート １８ ブレード製帽子

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植田 政彦 大阪府大阪市平野区平野上町１丁目10番14 号 (72)発明者 福山 満 大阪府羽曳野市碓井４丁目22番２号 (72)発明者 阿部 澄夫 兵庫県神戸市須磨区横尾２丁目26番地の４

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 よこ糸又は１本置きのたて糸と１本置き
   のよこ糸に低融点糸を用い、この低融点糸と他の糸を織
   成して成るアパレル用生地。
2. 【請求項２】 ニットの地編組織の中に低融点糸を編込
   んで成るアパレル用生地。
3. 【請求項３】 構成繊維の中に低融点糸を含ませた原糸
   を平打ちに組んで成るブレード。
4. 【請求項４】 原糸の中に低融点糸を含ませ、その低融
   点糸の原糸と非低融点糸の原糸を平打ちに組んで成るブ
   レード。
5. 【請求項５】 請求項１又は２記載のアパレル用生地を
   裁断、縫合し、しかる後、低融点糸の融点を越える温度
   で熱成形することから成る形態安定化繊維製品の製造方
   法。
6. 【請求項６】 請求項２記載のアパレル用生地を所要形
   状に成型編みし、しかる後、低融点糸の融点を越える温
   度で熱成形することから成る形態安定化繊維製品の製造
   方法。
7. 【請求項７】 請求項３又は４記載のブレードを縫合又
   は織成してブレード製シートを形成し、そのシートを低
   融点糸の融点を越える温度で熱成形することから成る形
   態安定化繊維製品の製造方法。