JPH11241106A - 摩擦部材およびその製造方法 - Google Patents

摩擦部材およびその製造方法

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JPH11241106A
JPH11241106A JP10047199A JP4719998A JPH11241106A JP H11241106 A JPH11241106 A JP H11241106A JP 10047199 A JP10047199 A JP 10047199A JP 4719998 A JP4719998 A JP 4719998A JP H11241106 A JPH11241106 A JP H11241106A
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ring
friction member
copper
powder
peripheral surface
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JP10047199A
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Inventor
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings

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  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本
体との十分な接合強度が得られ、かつ、銅系焼結摩擦部
材が所定の空孔率を有する摩擦部材とその製造方法を提
供する。 【解決手段】 Fe−P系合金粉末を1重量%以上10
重量%以下含み、残部が銅系合金粉末からなる混合粉末
を型押し成形することにより、リング形状の銅系粉末成
形体を作製する。シンクロナイザリング本体の内周面に
リング形状の銅系粉末成形体を当接して焼結することに
より、高い空孔率を有する銅系焼結摩擦部材を作製する
と同時に、その銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリン
グ本体とを固相拡散接合させて両者を一体化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は摩擦部材およびその
製造方法に関し、特に、マニュアルトランスミッション
(MT)に用いられる摩擦部材としてのシンクロナイザ
リングとその製造方法に関し、相手材であるコーン部と
接する内周面に焼結摩擦部材を有する2層構造の摩擦部
材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】本発
明に関連する先行技術としては、たとえば、「摩擦体お
よびその製造方法」(特開昭61−17723号公
報)、「摩擦もしくは滑り体を製造する方法および装
置」(特開平1−87702号公報)、「トルク伝達装
置用摩擦ライニング」(特開平8−35532号公
報)、「シンクロナイザ用摩擦材およびシンクロナイザ
リングの製造方法」(特開平9−25527号公報)な
どがある。これらの文献では、摩擦部材をシンクロナイ
ザリング本体の内周面に接合したシンクロナイザリング
が開示されている。シンクロナイザリング本体と摩擦部
材との接合方法として、有機系接着剤による接合、電子
ビームによる溶接または焼結・拡散接合が用いられてい
る。特に、焼結摩擦部材がシンクロナイザリング本体の
内周面に接合された2層構造のシンクロナイザリングを
創製する場合には、粉末冶金法による焼結・拡散接合法
を適用することが経済的に優れている。
【0003】たとえば、上記の特開平9−25527号
公報では、鉄系合金あるいは銅系合金製シンクロナイザ
リング本体の内周面に、銅系焼結摩擦部材を焼結により
接合し一体化させる方法を提案している。この先行技術
の特徴は、焼結摩擦部材の焼結温度よりも低い温度に固
相線を有し、または、その焼結温度よりも低い融点を持
つ金属および/または合金を用いていることである。具
体的には、Cu−P系合金、Cu−Sn系合金、Cu−
Zn系合金またはSnなどを用いている。これらの合金
を用いることは、実質的には焼結温度において液相が生
じることを意味している。焼結前の成形体が、このよう
な金属および/または合金成分を含有することによっ
て、焼結時に溶融した成分が毛細管現象により摩擦部材
とシンクロナイザリング本体との接合界面に移動する。
そこで、溶融成分が接合界面にて相互拡散することによ
り、シンクロナイザリング本体と焼結摩擦部材との接合
が確実となる。
【0004】しかしながら、上述したように、焼結前の
粉末成形体が焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体
との接合界面において液相を生成させる金属および/ま
たは合金成分を含有している。このために、焼結過程に
おいて生じた液相によって、粉末同士の拡散・焼結が進
行するために、本発明が規定する比較的高い空孔率を有
する焼結摩擦部材を作製することが困難であった。その
結果、焼結摩擦部材と相手材との接合界面で潤滑油の膜
を十分に除去することができず、高い摩擦係数を得るこ
とができなった。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、1つの目的は、焼結時に液相を生成さ
せることなく、所望の高い空孔率を有する焼結摩擦部材
を作製するとともに、この焼結摩擦部材をシンクロナイ
ザリング本体の内周面に固相拡散接合させた2層構造の
摩擦部材を提供することであり、他の目的は、そのよう
な摩擦部材の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の実
験および検討を行なった結果、まず第1に、摩擦部材が
比較的高い空孔率を適正量含有することにより、相手材
との摺動界面に存在する潤滑油がその空孔中を透過して
油膜が排除されて、摩擦部材が比較的高い摩擦係数を発
現できることがわかった。そして、第2に、適正な量の
リンを含む鉄合金(以下「Fe−P系合金」と記す)粉
末を銅系焼結摩擦部材の原料粉末に添加および混合する
ことにより、比較的高い空孔率を有する銅系焼結摩擦部
材を作製するとともに、この銅系焼結摩擦部材をシンク
ロナイザリング本体の内周面に拡固相散接合した2層構
造のシンクロナイザリングとその製造方法を発明するに
至った。
【0007】本発明に係る摩擦部材とその製造方法の構
成を以下に示す。本発明の1つの局面における摩擦部材
は、鉄合金または銅合金を含む第1部材と、第1部材の
表面上に固相拡散接合され、鉄合金粉末、銅合金粉末お
よび硬質粒子を含んで固相焼結された第2部材とを備
え、少なくとも第1部材と第2部材との接合界面近傍に
は、リンを含む金属間化合物が形成されている。
【0008】好ましくは、第2部材には、空孔率30容
積%以上55容積%以下の空孔が形成されている。
【0009】好ましくは、リンは、他の部分と比べて、
第1部材と第2部材との接合界面に高濃度に存在してい
る。
【0010】好ましくは、第2部材中の鉄合金粉末はリ
ンを含み、第2部材に対するその鉄合金粉末の含有量
は、1重量%以上10重量%以下である。
【0011】好ましくは、鉄合金粉末に対するリンの含
有量は5重量%以上30重量%以下である。
【0012】好ましくは、第2部材に対するリンの含有
量は0.3重量%以上である。好ましくは、銅合金は黄
銅である。
【0013】好ましくは、第1部材は、シンクロナイザ
リングにおける内周面を有する本体リングであり、第2
部材は、前記本体リングの内周面に固相拡散接合された
摩擦材である。
【0014】本発明の他の局面における摩擦部材の製造
方法は、以下の工程を備えている。鉄合金または銅合金
からなり、内周面を有するリング部材を準備する。リン
を含む鉄合金粉末、銅合金粉末および硬質粒子を含む混
合粉末を準備する。混合粉末を成形することにより、リ
ング部材の内周面に沿って、リング状成形体を形成す
る。リング状成形体を液相が生じない条件にて焼結する
ことにより、リング部材とリング状成形体とを固相拡散
接合する。
【0015】好ましくは、混合粉末に対するリンを含む
鉄合金粉末の含有量は、1重量%以上10重量%以下で
ある。
【0016】好ましくは、混合粉末に対するリンの含有
量は0.3重量%以上である。好ましくは、成形工程
は、混合粉末を予め成形することにより、外周面と内周
面とを有するリング状成形体を形成するとともに、リン
グ状成形体をリング部材に嵌め入れる工程を含んでい
る。
【0017】好ましくは、成形工程は、リング状成形体
を、温度400℃以上1050℃以下のもとで、不活性
ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中にて仮焼
結する工程を含んでいる。
【0018】好ましくは、成形工程は、リング部材の内
周面上に、混合粉末を充填および成形することにより、
リング状成形体を形成する工程を含んでいる。
【0019】本発明のさらに他の局面における摩擦部材
の製造方法は、以下の工程を備えている。鉄合金または
銅合金からなり、内周面を有するリング部材を準備す
る。銅合金粉末および硬質粒子を含む混合粉末を準備す
る。リング部材との間にリンを含む鉄合金粉末を介在さ
せた状態で混合粉末を成形することにより、リング部材
の内周面に沿って、リング状成形体を形成する。リング
状成形体を液相が生じない条件にて焼結することによ
り、リング部材とリング状成形体とを固相拡散接合す
る。
【0020】好ましくは、成形工程は、混合粉末を予め
成形することにより、外周面と内周面とを有するリング
状成形体を形成するとともに、リング状成形体をリング
部材に嵌め入れる工程を含んでいる。
【0021】好ましくは、成形工程は、接合工程におけ
る焼結の条件により分解する有機溶剤、有機バインダ
ー、有機樹脂および接着剤のうちいずれかを用いて、リ
ング部材の内周面またはリング状成形体の外周面に、リ
ンを含む鉄合金粉末を保持する工程を含んでいる。
【0022】好ましくは、接合工程は、温度800℃以
上1050℃以下のもと、不活性ガスもしくは還元性ガ
スの雰囲気または真空中にて行なわれる。
【0023】好ましくは、銅合金粉末は黄銅である。好
ましくは、リング状成形体を成形する工程は、最終焼結
後の空孔率が30容積%以上55容積%以下になるよう
に、予め所定の圧力をもってリング状成形体を成形する
工程を含んでいる。
【0024】好ましくは、銅合金は短繊維粉末またはカ
ール状粉末である。好ましくは、リンを含む鉄合金粉末
に対するリンの含有量は、5重量%以上30重量%以下
である。
【0025】好ましくは、接合工程は、少なくともリン
グ部材の内周面とリング状成形体の外周面との接合界面
近傍に、リンを含む金属間化合物を形成する工程を含ん
でいる。
【0026】好ましくは、リンを含む鉄合金粉末の平均
粒径は、20μm以上250μm以下である。
【0027】本発明に係る銅系焼結摩擦部材を有する摩
擦部材としてのシンクロナイザリングの特徴について説
明する。
【0028】本発明者は、ギア油やATF油などの潤滑
油が使用される環境下において、銅系焼結摩擦部材がク
ラッチやブレーキとして使用される際に、高い摩擦係数
を発現させるためには、潤滑油を空孔を介して透過させ
ることにより油膜を排除することが有効であり、そのた
めには、銅系焼結摩擦部材が特定の範囲内の空孔率を有
することが有効であることを見出した。具体的には、銅
系焼結摩擦部材全体に対して30容積%以上55容積%
以下、より好ましくは35容積%以上45容積%以下の
空孔が分散していることが望ましい。このような空孔中
を潤滑油が透過することによって、相手材との摺動界面
における油膜を破壊および除去することができるのであ
る。その結果、銅系焼結摩擦部材が相手材と摺動する際
の滑り速度や押しつけ圧力の変化に対しても安定して高
い摩擦係数を発現することができる。
【0029】このような高い空孔率を確保するために
は、たとえば、びびり振動切削法などによって得られる
曲線を有する短繊維粉末やカール状粉末などの比較的見
かけ密度(充填率)の小さい銅系粉末を原料粉末に用い
ることが望ましい。たとえば、かさ密度0.8〜4.0
g/cm3 、より好ましくは1.0〜3.0g/cm3
を有する粉末を出発原料として用いる。また、公知の成
形方法によってプレス成形時における成形面圧を制御す
ることが望ましい。なお、空孔率が55容積%超える
と、耐摩耗性が低下するとともに、相手材との実質的な
接触面積が減少するために摩擦トルクが低減し、高い摩
擦係数が得られなくなる。また、空孔率が30容積%を
下回ると、摺動界面における油膜の除去および破壊の効
果が十分に得られずに、その結果、摩擦係数の低下や、
特に高速度域における摩擦係数の低下および変動といっ
た問題が生じる。
【0030】一方、このような銅系焼結摩擦部材を鉄系
合金または銅系合金からなるシンクロナイザリング本体
に拡散接合によって一体化するためには、銅系焼結摩擦
部材の空孔率を低減させることなく拡散接合を促進させ
るような接合成分が必要である。すなわち、本発明が規
定する接合成分とは、焼結前の銅系粉末成形体中に含有
されて、焼結過程において液相が生成することなく粉末
同士の顕著な拡散現象を抑え、高い空孔率を確保する焼
結摩擦部材を作製するとともに、その焼結摩擦部材とシ
ンクロナイザリング本体との接合界面における相互拡散
現象による一体化接合を促進させる役割をもつ合金成分
粉末である。具体的には、発明者は、Fe−P系合金粉
末がこのような接合成分としての要求を十分に満足して
いることを見出した。
【0031】そして、発明者は、このFe−P系合金粉
末を銅系焼結摩擦部材の原料粉末中に適正量添加した混
合粉末を使用する方法と、このFe−P系合金粉末を銅
系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体との接合界
面に予め介在させた状態で焼結する方法が有効であるこ
とを見出した。これにより、少なくともシンクロナイザ
リング本体と銅系焼結摩擦部材との接合界面には、リン
を含む金属間化合物が形成されて、両者の接合強度が強
固になる。以上より、本発明の摩擦部材の製造方法とし
ては、図1(a)〜(d)にそれぞれ示された4つの工
程に分類することができる。
【0032】次に、本発明に係る摩擦部材の製造方法と
して、シンクロナイザリングの製造方法について詳細に
説明する。
【0033】シンクロナイザリング本体について 本発明に適用するシンクロナイザリング本体として、寸
法、形状および材質については公知のものを適用するこ
とができる。たとえば、材質に関しては、Cr−Ni−
Mo鋼、Cr−Mn鋼、Cr−Mo鋼、Cr−Ni鋼な
どの鉄系合金、Fe−Cu−Ni−Mo系、Fe−Cu
−Ni−Cr系などの鉄系焼結材料、Cu−Zn系、C
u−Al系、Cu−Sn系などの銅系合金などを使用す
ることができる。ただし、シンクロナイザリング本体の
強度やシンクロナイザリング外周の爪部の強度が要求さ
れることから、上述した材質は、540MPa以上の引
張り強度を有していることが必要である。
【0034】銅系焼結摩擦部材の製造方法とシンクロナ
イザリング本体との一体化接合方法について 「製造工程1」について(図1(a)参照) 銅系粉末成形体の作製方法 まず、必須含有成分としてのFe−P系合金粉末を1重
量%以上10重量%以下含み、残部が銅系合金粉末と硬
質粒子および/または黒鉛粉末とからなる混合粉末を準
備する。その混合粉末を型押し成形することにより、テ
ーパ状の内周面を有するリング形状の銅系粉末成形体を
作製する。
【0035】ここで、Fe−P系合金粉末は、上述した
ように焼結前の銅系粉末成形体中に含有させておく。こ
のFe−P系合金粉末は、焼結過程において液相を生成
せずに粉末同士の顕著な拡散および焼結現象を抑え、高
い空孔率を確保する焼結摩擦部材を作製するとともに、
その焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体との接合
界面において相互拡散現象による一体化接合を促進させ
る役割を有している。
【0036】また、本発明によれば、焼結摩擦部材中の
適正な空孔率は30容積%以上55容積%以下であり、
より好ましくは35容積%以上45容積%以下である。
このような空孔率を確保するために、前述した、短繊維
粉末やカール状粉末などの比較的見かけ密度(充填率)
の小さい銅系粉末を原料粉末として用いる。
【0037】なお、銅合金粉末は後述するような焼結の
際の条件によって液相を生成しない成分からなる必要が
ある。これは、液相が生成すると、上述した比較的高い
空孔率を確保することが困難になるからである。このよ
うな銅合金として、黄銅を挙げることができる。
【0038】また、硬質粒子としては、耐摩耗性に優
れ、かつ、摺動時に相手材を顕著に攻撃しないような特
性を有する鉄系金属間化合物または球状酸化物系セラミ
ックス粒子が望ましい。たとえば、鉄系金属間化合物粒
子としては、FeCr、FeMo、FeAl、FeS
i、FeTi、FeW等が望ましく、酸化物系セラミッ
クス粒子としては、Al2 3 、MgO2 、SiO2
Cr2 3 、TiO2 、ZrO2 等が望ましい。しか
し、SiCなどの炭化物系セラミックス粒子は、著しく
硬いために相手材を攻撃したり、機械加工性が低下する
という問題があるので、使用には適さない。
【0039】また、黒鉛粉末は、相手材との局所的な摩
擦を防止する。そして、上述した混合粉末をプレス成形
することによりリング形状の銅系粉末成形体を作製す
る。本発明による製造方法では、そのプレス成形する際
に次のような特徴を有している。成形圧力を制御するこ
とによって、最終焼結後の銅系焼結摩擦部材の空孔率を
30容積%以上55容積%以下に管理することができ
る。また、相手材のコーン面と接するテーパ状の面をリ
ング状銅系粉末成形体の内周面に形成するためには、成
形プレスに用いる上パンチまたは下パンチの形状をテー
パを有する円錐形状とし、しかもその円錐形状のパンチ
の表面に凸形状あるいはΛ形状の突起を圧縮方向(加圧
軸の上下方向)に形成することにより、銅系粉末成形体
の内周面に凹形状またはV形状の溝を全長方向に形成す
ることができる。この溝は、銅系焼結摩擦部材のシンク
ロナイザリングの全長方向(厚さ方向)における油膜除
去および破壊のための油溝となる。さらに、円錐形状の
パンチの表面に円周方向にΛ形状の突起を形成すること
によって、銅系粉末成形体の内周面に円周方向にV形状
の溝を形成することができる。この溝は、銅系焼結摩擦
部材において、シンクロナイザリングの円周方向におけ
る油膜除去および破壊のための油溝となる。なお、銅系
焼結摩擦部材の外周面の形状に関しては特に制約はな
く、シンクロナイザリングの全長方向に対してストレー
トであってもテーパ状の面を有していてもよい。また、
回り止めや位置決めのためのセレーションや凹凸部を有
していてもよい。しかしながら、銅系粉末成形体のリン
グの肉厚は比較的薄いため、強度、成形性、シンクロナ
イザリング本体との当接のしやすさを考慮すると、外周
面はストレートの方がより好ましい。
【0040】銅系粉末成形体とシンクロナイザリング本
体との当接および焼結同時拡散接合法 上述したシンクロナイザリング本体の内周面に、上述し
たリング形状の銅系粉末成形体を当接させる。このと
き、シンクロナイザリング本体の内周面は、リング形状
の銅系粉末成形体と嵌合する形状を有している。したが
って、シンクロナイザリング本体の内周面および銅系粉
末成形体の外周面においては、それぞれ全長方向でスト
レートである方が、より容易に嵌合および当接すること
ができる。
【0041】このようにして当接されたシンクロナイザ
リング本体と銅系粉末成形体とを800℃以上1050
℃以下に管理された不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲
気または真空中で焼結することにより、空孔率30容積
%以上55容積%以下の銅系焼結摩擦部材を得ると同時
に、シンクロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材とを
固相拡散接合により一体化する。
【0042】固相拡散接合は、上述したFe−P系合金
粉末の寄与によるものである。この固相拡散接合現象を
容易に促進させ、かつ、良好な銅系焼結摩擦部材を作製
するためには、上記のような管理された焼結条件を満足
する必要がある。たとえば、焼結温度が800℃未満で
は、銅系粉末成形体において、十分に焼結が進行しない
ために必要とする強度および耐摩耗性を有する焼結摩擦
部材が得られない。一方、1050℃を超えると、焼結
時に銅系粉末同士の拡散および焼結が顕著に進行して、
目標とする高い空孔率を得ることが困難となる。
【0043】また、焼結雰囲気として、上記以外の、た
とえば大気中などで行なった場合には、銅系粉末成形体
において酸化現象が生じて十分に焼結が進行しない。こ
のため、必要とする強度および耐摩耗性を有する焼結摩
擦部材が得られないといった問題が生じる。
【0044】「製造工程2」について(図1(b)参
照) 銅系焼結摩擦部材の作製方法 この場合も上述した「製造工程1」と同様に、まず、必
須含有成分としてのFe−P系合金粉末を1重量%以上
10重量%以下含み、残部が銅系合金粉末と硬質粒子お
よび/または黒鉛粉末とからなる混合粉末を準備する。
その混合粉末を型押し成形することにより、テーパ状の
内周面を有するリング形状の銅系粉末成形体を作製す
る。そして、この銅系粉末成形体を一旦、400℃以上
1050℃以下の温度範囲で、より好ましくは600℃
以下の下で仮焼結する。仮焼結とは、本焼結させるので
はなく、銅系粉末成形体の形状をある程度の強度をもっ
て維持するために行なうものである。したがって、この
仮焼結の温度が400℃未満の場合には、得られる焼結
摩擦部材の強度が十分ではないために、シンクロナイザ
リング本体に圧入する際に、焼結摩擦部材に亀裂および
割れ等が発生する。また、仮焼結温度が高くなると、焼
結時における収縮量が増加して、シンクロナイザリング
本体に圧入する際の圧入代の管理が困難になる。したが
って、圧入時に亀裂および割れが発生しない強度を有
し、かつ、焼結時に収縮現象を顕著に進行させない観点
からは、仮焼結温度は600℃以下がより好ましい。な
お、焼結摩擦部材の酸化抑制の観点から、仮焼結は、不
活性ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中で行
なう必要がある。
【0045】銅系粉末成形体とシンクロナイザリング本
体との圧入および焼結同時拡散接合法 上記のシンクロナイザリング本体の内周面に、上述した
仮焼結したリング形状の銅系焼結摩擦部材を圧入する。
このようにして得られた2層構造のシンクロナイザリン
グを800℃以上1050℃以下に管理された不活性ガ
スもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中で焼結する
ことにより、空孔率30容積%以上55容積%以下の銅
系焼結摩擦部材を得ると同時に、Fe−P系合金粉末に
より、液相を生成させることなくシンクロナイザリング
本体と銅系焼結摩擦部材とを固相拡散接合させて一体化
する。この固相拡散接合現象を容易に促進させ、かつ、
良好な銅系焼結摩擦部材を作製するためには、「製造工
程1」において説明した焼結条件を満足する必要があ
る。
【0046】「製造工程3」について(図1(c)参
照) 銅系焼結摩擦部材の作製方法 まず、所定の混合組成を有する銅系合金粉末と硬質粒子
および/または黒鉛粉末とからなる混合粉末を準備す
る。その混合粉末を型押し成形し、テーパ状の内周面を
有するリング形状の銅系粉末成形体を作製する。そし
て、この粉末成形体を、一旦、400℃以上1050℃
以下の下で仮焼結することにより、空孔率30容積%以
上55容積%以下の銅系焼結摩擦部材を作製する。この
場合も、銅系焼結摩擦部材の酸化抑制の観点から、不活
性ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中にて仮
焼結する必要がある。
【0047】Fe−P系合金粉末の塗布 製造工程3では、接合成分であるFe−P系合金粉末を
予め銅系粉末成形体または銅系焼結摩擦部材に含有させ
るのではなく、シンクロナイザリング本体と銅系焼結摩
擦部材との接合界面に予め介在させておくことが製造方
法上の特徴である。具体的には、シンクロナイザリング
本体の内周面および銅系焼結摩擦部材の外周面の少なく
とも一方に、Fe−P系合金粉末を塗布する。その後、
シンクロナイザリング本体に銅系焼結摩擦部材を圧入お
よび当接することによって、焼結および拡散接合前に両
者の接合界面にFe−P系合金粉末を介在させる。
【0048】Fe−P系合金粉末を塗布する方法として
は、たとえば、焼結温度よりも低い温度で分解する有機
溶剤、有機バインダ、有機樹脂、接着剤のいずれかを塗
布した後に、Fe−P系合金粉末を散布する方法が有効
である。また、スプレー糊のような接着剤を利用する方
法も容易である。さらに、Fe−P系合金粉末を有機溶
剤などに混合してスラリー化し、これを直接シンクロナ
イザリング本体の内周面または銅系焼結摩擦部材の外周
面に塗布する方法を用いてもよい。
【0049】銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング
本体との焼結同時拡散接合法 シンクロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材との接合
界面に予めFe−P系合金粉末を介在させた状態にある
2層構造のシンクロナイザリングを、800℃以上10
50℃以下に管理された不活性ガスもしくは還元性ガス
の雰囲気または真空中にて焼結する。これにより、空孔
率30容積%以上55容積%以下の銅系焼結摩擦部材が
得られると同時に、接合界面に存在するFe−P系合金
粉末が相互拡散を促進させることによりシンクロナイザ
リング本体と銅系焼結摩擦部材とを固相拡散接合し、両
者を一体化する。この拡散接合現象を容易に促進させ、
かつ、良好な銅系焼結摩擦部材を作製するためには、上
記のような管理された焼結条件を満足する必要がある。
また、それぞれの適正範囲を限定する理由は、「製造工
程1」で説明した理由と同じである。
【0050】この製造工程3によって得られたシンクロ
ナイザリングにおけるシンクロナイザリング本体と銅系
焼結摩擦部材との接合界面では、他の部分に比べてリン
が高濃度に存在している。
【0051】「製造工程4」について(図1(d)参
照) シンクロナイザリング本体の内周面への銅系焼結摩擦部
材用原料粉末の充填と2層化成形 まず、必須含有成分としてのFe−P系合金粉末を1重
量%以上10重量%以下含み、残部が銅系合金粉末と硬
質粒子および/または黒鉛粉末とからなる混合粉末を準
備する。そして、予め作製したシンクロナイザリング本
体をプレス金型内に挿入した後、このシンクロナイザリ
ング本体の内周面にこの混合粉末を充填して加圧および
成形することにより、シンクロナイザリング本体の内周
面にリング形状の銅系粉末成形体が当接した径方向に2
層構造を有するシンクロナイザリングを作製する。
【0052】なお、「製造工程1」において説明したよ
うに、この製造工程4においても、銅系焼結摩擦部材の
混合粉末をプレス成形する際には、成形圧力の制御によ
って30容積%以上55容積%以下の範囲で空孔率を管
理することができる。また、銅系粉末成形体の内周面に
凹形状またはV形状の溝を全長方向に形成することがで
きる。さらには、銅系粉末成形体の内周面に円周方向に
V形状の溝を形成することができる。
【0053】銅系焼結摩擦部材の作製とシンクロナイザ
リング本体との焼結同時拡散接合法 上記のシンクロナイザリング本体の内周面にリング形状
の銅系粉末成形体が当接した状態にある2層構造のシン
クロナイザリングを、800℃以上1050℃以下に管
理された不活性ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または
真空中で焼結することにより、空孔率30容積%以上5
5容積%以下の銅系焼結摩擦部材を得ると同時に、Fe
−P系合金粉末により、液相を生成させることなくシン
クロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材とを固相拡散
接合により一体化する。この拡散接合現象を容易に促進
させ、かつ、良好な銅系焼結摩擦部材を作製するために
は、上述したような管理された焼結条件を満足する必要
がある。また、焼結条件の適正範囲を限定する理由も
「製造工程1」において説明した理由と同じである。
【0054】上述した「製造工程1〜4」によって作製
された2層構造のシンクロナイザリングを、必要に応じ
て、さらに所定の寸法を有する金型内に挿入し、サイジ
ングまたはコイニング等により加圧および成形すること
により、内周面の銅系焼結摩擦部材のみならず、シンク
ロナイザリング本体も同時に寸法矯正することができ
る。
【0055】Fe−P系合金粉末の組成とその含有量お
よび粒径について Fe−P系合金粉末は、上述したように、焼結過程にお
ける温度域(〜1050℃)で液相を生成させることな
く、銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体との
相互拡散を促進させることにより両者を固相拡散接合
し、一体化する役割を有している。これは、特にFe−
P系合金粉末に含まれるPの効果によるものである。す
なわち、銅系焼結摩擦部材中のCu成分との間でCu−
P系金属間化合物を生成し、シンクロナイザリング本体
の鉄系合金中のFe成分との間でFe−P系金属間化合
物やFe−Cu−P系化合物を生成し、また、シンクロ
ナイザリング本体の銅系合金中のCu成分との間でCu
−P系金属間化合物やFe−Cu−P系化合物を生成す
ることにより、銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリン
グ本体との接合界面における濡れ性を改善し、相互拡散
による接合を促進させている。
【0056】このとき、特に、銅系焼結摩擦部材中のF
e−P系合金粉末の含有量が1重量%よりも小さい場合
には、十分に固相拡散接合を促進させることができな
い。一方、10重量%を越えてFe−P系合金粉末を混
合しても、固相拡散接合はあまり促進されず、高価なF
e−P系合金粉末を添加するために、かえって経済性の
問題が生じる。したがって、銅系焼結摩擦部材中のFe
−P系合金粉末の含有量は1重量%以上10重量%以下
であることが望ましい。
【0057】また、そのFe−P系合金粉末では、Fe
−P系合金粉末中のPの含有量が5重量%以上30重量
%以下である場合に、上述した固相拡散接合の促進効果
がある。Pの含有量が5重量%未満の場合では、銅系焼
結摩擦部材中に含有させるFe−P系合金粉末の比率を
10重量%を超えて増加させる必要がある。しかしなが
ら、この場合には、Fe−P系合金粉末は他の原料粉末
に比べて高価であるために、経済性の問題が生じる。一
方、Pの含有量が30重量%を超える場合では、そのF
e−P系合金粉末を製造する過程においてPの蒸発が顕
著になるために、その蒸発分を考慮して予め多量のPを
添加する必要が生じ、経済性の問題が生じる。したがっ
て、本発明では、Fe−P系合金中のPの含有量は5重
量%以上30重量%以下であることが望ましい。
【0058】ただし、銅系焼結摩擦部材の原料粉末全体
に対しては、Pの含有量が0.3重量%以上である必要
がある。上述したように、相互拡散現象は、Fe−P系
合金粉末中のP成分により進行する。銅系焼結摩擦部材
全体に含まれるPの成分の含有量が0.3重量%未満の
場合には、焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体と
の接合界面を十分に濡らすことができない。このため、
相互拡散が確実に進行しないために目標とする接合強度
が得られないといった問題が生じる。したがって、上述
した製造工程1、2および3において使用する銅系焼結
摩擦部材の原料混合粉末におけるP成分の含有量は、全
体の0.3重量%以上であることが好ましい。
【0059】また、Fe−P系合金粉末の平均粒径は2
0μm以上250μm以下であることが好ましい。たと
えば、20μmより小さい微粉末では、原料である混合
粉末の流動性を低下させるといった問題や混合粉末中に
偏析および凝集が生じるといった問題がある。また、混
合粉末が金型間の隙間に入り込んで金型との焼付きや噛
み込みが生じる。一方、250μmを超えるような粗大
粉末では、薄肉部分への粉末の充填が困難になること
や、他の原料粉末と分離するといった問題が生じる。し
たがって、流動性の低下、偏析および凝集、充填性の低
下などの問題を生じさせずに、シンクロナイザリング本
体と銅系焼結摩擦部材との接合界面にリンを均一に分散
させて金属間化合物を生成するためには、Fe−P系合
金粉末の平均粒径は20〜250μmであることが好ま
しく、より好ましくは60〜150μmである。
【0060】
【実施例】実施例1 Fe−Cu−Ni−Mo系焼結体(引張り強度580M
Pa)を用いて、内径70mmφのシンクロナイザリン
グ本体を作製した。そして、図1(a)に示された「製
造工程1」の製造方法に基づき、2層構造のシンクロナ
イザリングを作製した。具体的には、下の表1に示され
た銅系混合粉末を型押しおよび成形することにより、テ
ーパ角度約6°の内周面を有するリング状粉末成形体
(外径70mmφ)を準備した。このリング状粉末成形
体をシンクロナイザリング本体の内周面に当接して、2
層構造のシンクロナイザリングを作製した。なお、表1
に混合粉末全体に対するPの含有量(重量基準)も示し
ている。
【0061】また、表1に示されている黄銅系複合粉末
とは、平均粒径12μm、最大粒径26μmの硬質粒子
FeMo(硬度860〜1120マイクロビッカース硬
度)が黄銅系粉末の素地中に均一に分散した粉末であ
る。その合金組成は、重量基準でCu−20重量%Zn
−20重量%FeMoである。また、黄銅系短繊維粉末
とは、平均太さ20μm、平均カール直径180μmの
カール状短繊維黄銅粉末であり、充填率は38%の粉末
である。さらに、表1にFe−P系合金粉末の合金組成
(重量基準)を表示している。なお、Fe−P系粉末と
して、平均粒径30〜65μmの粉末を使用した。
【0062】この粉末成形体をシンクロナイザリング本
体の内周面に当接した2層構造のシンクロナイザリング
を、900℃に管理した窒素ガスの雰囲気中で1時間加
熱および保持することにより、リング状の銅系焼結摩擦
部材を作製すると同時に、シンクロナイザリング本体に
この銅系焼結摩擦部材を固相拡散接合させて一体化した
2層構造のシンクロナイザリングを作製した。得られた
銅系焼結摩擦部材の空孔率(容積%)を表1に示す。
【0063】そして、図2に示す治具を用いることによ
り、銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体との
せん断抜き強度を測定した。また、単体試験機を用い、
潤滑油(10W30油)環境下において相手材としての
SCM415浸炭処理鋼材製コーンとの5000サイク
ルの耐久試験を行ない、1000サイクル時点における
摩擦係数を測定した。これらの結果を下の表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】表1および表2に示されているように、本
発明が規定する混合組成を有する原料粉末を適正な条件
下で固化し得た所定の空孔率を有する銅系焼結摩擦部材
を作製し、適正条件下でこの銅系焼結摩擦部材をシンク
ロナイザリング本体に固相拡散接合させた本発明例(N
o.1〜5)では、シンクロナイザリング本体と銅系焼
結摩擦部材との接合界面において、十分な強度を有して
いることが確認された。また、シンクロナイザリング単
体耐久試験においても、摩耗損傷はなく、安定した摩擦
係数を発現することが確認された。一方、比較例(N
o.6〜12)では、次のような問題が確認された。比
較例(No.6)では、銅系焼結摩擦部材の原料混合粉
末において、Pの含有量が適正値よりも少ないために、
シンクロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材との接合
界面において、十分なせん断抜き強度が得られなかっ
た。比較例(No.7)では、Fe−P系合金粉末を適
正範囲の上限値10重量%を超えて添加したが、接合強
度は大きく増加せず、逆に、高価なFe−P系合金粉末
を多く添加することによる経済性の問題が生じた。比較
例(No.8)では、Fe−P系合金粉末中のPの含有
量を適正範囲の上限値30重量%を超えて添加したが、
接合強度は大きく増加せず、逆に、Pを多く含有する高
価なFe−P系合金粉末を使用することによる経済性の
問題が生じた。比較例(No.9)では、銅系焼結摩擦
部材の原料混合粉末において、Fe−P系合金粉末を含
有しないために、シンクロナイザリング本体と銅系焼結
摩擦部材との接合界面において、十分なせん断抜き強度
が得られず、単体試験開始直後にシンクロナイザリング
本体から銅系焼結摩擦部材が剥離した。比較例(No.
10)では、銅系焼結摩擦部材中の空孔率が5容積%で
あり、このために、摩擦係数の低下が認められた。比較
例(No.11)では、銅系焼結摩擦部材中の空孔率が
20容積%であり、このために、摩擦係数の低下が認め
られた。比較例(No.12)では、銅系焼結摩擦部材
中の空孔率が60容積%であり、このために、銅系焼結
摩擦部材に摩耗および焼付けが発生した。
【0067】実施例2 Cu−Mn系鋼材(引張り強度595MPa)を用い
て、内径70mmφのシンクロナイザリング本体を作製
した。そして、図1(a)に示された「製造工程1」の
製法に基づいて、2層構造のシンクロナイザリングを作
製した。
【0068】具体的には、本発明が規定する原料混合粉
末として、前記表1のNo.2に示された組成を有する
銅系混合粉末を準備した。その銅系混合粉末を型押しお
よび成形することにより、テーパ角度約6°の内周面を
有するリング状の銅系粉末成形体(外径70mmφ/空
孔率39容積%)を作製した。このリング状の銅系粉末
成形体をシンクロナイザリング本体の内周面に当接し
て、2層構造のシンクロナイザリングを作製した。この
2層構造のシンクロナイザリングを下の表3に記載され
た加熱条件の下で焼結を行ない、リング状の銅系焼結摩
擦部材を作製すると同時に、シンクロナイザリング本体
にこの銅系焼結摩擦部材を固相拡散接合させて一体化し
た2層構造のシンクロナイザリングを作製した。
【0069】実施例1と同様に、図2に示すような治具
を用いて、シンクロナイザリング本体の内周面側に接合
された銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体と
のせん断抜き強度を測定した。また、単体試験機を用
い、潤滑油(10W30油)環境下においてSCM41
5浸炭処理鋼材製コーンとの5000サイクルの耐久試
験を行ない、1000サイクル時点における摩擦係数を
測定した。これらの結果を下の表4に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】表3および表4に示すように、本発明が規
定する混合組成を有する原料粉末を適正な焼結条件下で
固化し得た所定の空孔率を有する銅系焼結摩擦部材を作
製するとともに、適正条件下でこの銅系焼結摩擦部材を
シンクロナイザリング本体に固相拡散接合させることに
よって得た本発明例(No.1〜3)では、シンクロナ
イザリング本体と焼結摩擦部材との接合界面において、
十分な接合強度を有していることが確認された。また、
シンクロナイザリング単体耐久試験においても摩耗損傷
がなく、安定した摩擦係数を発現できることが確認され
た。
【0073】一方、比較例(No.4〜7)において
は、次のような問題が確認された。比較例(No.4)
では、焼結温度が700℃であり、このために、銅系粉
末成形体において十分に焼結が進行しなかった。その結
果、単体摩耗試験において銅系焼結摩擦部材に摩耗が生
じた。また、シンクロナイザリング本体との接合強度の
低下も確認された。比較例(No.5)では、焼結温度
が750℃であり、このために、銅系粉末成形体におい
て十分に焼結が進行しなかった。その結果、単体摩耗試
験において銅系焼結摩擦部材に摩耗が生じた。また、シ
ンクロナイザリング本体との接合強度の低下も確認され
た。比較例(No.6)では、焼結を大気中で行なった
ために、銅系粉末成形体において酸化現象が進行し、十
分な強度および耐摩耗性を有する焼結体が得られなかっ
た。その結果、単体摩耗試験において銅系焼結摩擦部材
に摩耗が生じた。また、銅系焼結摩擦部材とシンクロナ
イザリング本体との接合強度の低下も確認された。比較
例(No.7)では、焼結温度が1090℃であり、こ
のために、銅系粉末成形体において焼結が顕著に進行し
て空孔が閉鎖し、銅系焼結摩擦部材中に適正な空孔率が
得られなかった。その結果、単体摩耗試験において摩擦
係数の低下が認められた。
【0074】実施例3 Cu−Mo系鋼材(引張り強度570MPa)を用い
て、内径70mmφのシンクロナイザリング本体を作製
した。そして、図1(b)に示された「製造工程2」の
製法に基づき、2層構造のシンクロナイザリングを作製
した。
【0075】具体的には、本発明が規定する原料混合粉
末として、表1のNo.4に示された組成を有する銅系
混合粉末を準備した。その銅系混合粉末を型押しおよび
成形することにより、テーパ角度約6°の内周面を有す
るリング状粉末成形体(外径70.1mmφ)を作製し
た。なお、成形時の面圧を管理することにより、下の表
5に示すような空孔率の異なる粉末成形体を作製した。
【0076】このリング状の銅系粉末成形体を表5に記
載された加熱条件の下で一旦、仮焼結させて銅系焼結摩
擦部材を作製した。その後、この銅系焼結摩擦部材をシ
ンクロナイザリング本体の内周面に圧入および当接する
ことにより2層構造のシンクロナイザリングを作製し
た。
【0077】この2層構造のシンクロナイザリングを、
900℃に管理した窒素ガスの雰囲気中で1時間加熱お
よび保持することにより、リング状の銅系焼結摩擦部材
を作製すると同時に、シンクロナイザリング本体にこの
銅系焼結摩擦部材を固相拡散接合させて一体化した2層
構造のシンクロナイザリングを作製した。
【0078】そして、図2に示すような治具を用いて銅
系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体とのせん断
抜き強度を測定した。また、単体試験機を用い、潤滑油
(10W30油)環境下においてSCM415浸炭処理
鋼材製コーンとの5000サイクルの耐久試験を行な
い、1000サイクル時点における摩擦係数を測定し
た。これらの結果を下の表6に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】表5および表6を参照して、本発明が規定
する混合組成を有する原料粉末を適正な条件下で固化し
得た所定の空孔率を有する銅系焼結摩擦部材を作製し、
これを適正条件下でシンクロナイザリング本体に固相拡
散接合させた本発明例(No.1〜5)では、シンクロ
ナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材との接合界面にお
いて、十分な接合強度を有していることが確認された。
また、シンクロナイザリング単体耐久試験においても摩
耗損傷がなく、安定した摩擦係数を発現することが確認
された。
【0082】一方、比較例(No.6〜10)では、次
のような問題が確認された。比較例(No.6)では、
粉末成形体の密度が小さいために、得られた銅系焼結摩
擦部材中の空孔率は28容積%であった。このため、銅
系焼結摩擦部材中に適正な量の空孔が形成されたいない
ために、単体摩耗試験において摩擦係数の低下が認めら
れた。比較例(No.7)では、粉末成形体の密度が大
きいために、得られた銅系焼結摩擦部材中の空孔率は5
8容積%であった。このため、空孔率が適正範囲よりも
大きいために銅系焼結摩擦部材に摩耗および焼付きが発
生した。比較例(No.8)では、粉末成形体の焼結温
度が350℃であった。このために、十分な強度を有す
る銅系焼結摩擦部材が得られず、その結果、シンクロナ
イザリング本体に銅系焼結摩擦部材を圧入した際にその
銅系焼結摩擦部材中に亀裂および割れが発生した。比較
例(No.9)では、焼結温度が1095℃であり、こ
のために、銅系粉末成形体において焼結が顕著に進行し
て空孔が閉鎖し、銅系焼結摩擦部材中に適正な空孔率が
得られなかった。その結果、単体摩耗試験において摩擦
係数の低下が認められた。比較例(No.10)では、
焼結を大気中で行なったために、粉末成形体において酸
化現象が進行し、十分な耐摩耗性を有する銅系焼結摩擦
部材を得ることができなかった。その結果、単体摩耗試
験において銅系焼結摩擦部材に摩耗が生じた。
【0083】実施例4 Cu−Mo系鋼材(引張り強度570MPa)を用い
て、内径60mmφのシンクロナイザリング本体を作製
した。そして、図1(c)に示された「製造工程3」の
製法に基づき、2層構造のシンクロナイザリングを作製
した。
【0084】具体的には、本発明が規定する原料混合粉
末として、下の表7に示された混合組成を有する銅系混
合粉末を準備した。その銅系混合粉末を型押しおよび成
形することにより、テーパ角度約6°の内周面を有する
リング状粉末成形体(外径60.1mmφ/空孔率41
容積%)を作製した。このリング状粉末成形体を下の表
8に示された加熱条件の下で一旦、仮焼結させて、銅系
焼結摩擦部材を作製した。そして、Fe−20重量%P
の組成を有する合金粉末(平均粒径35μm)をシンク
ロナイザリング本体の内周面上または銅系焼結摩擦部材
の外周面上の少なくとも一方に塗布した。このとき、ス
プレー糊を一旦、シンクロナイザリング本体の内周面上
または銅系焼結摩擦部材の外周面上に塗布した後、Fe
−P系合金粉末を均一に散布した。この状態で銅系焼結
摩擦部材をシンクロナイザリング本体の内周面に圧入お
よび当接することにより、2層構造のシンクロナイザリ
ングを作製した。
【0085】そして、この2構造のシンクロナイザリン
グを表8に示された加熱条件の下で加熱および保持する
ことにより、銅系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング
本体とを固相拡散接合させて一体化した2層構造のシン
クロナイザリングを作製した。
【0086】また、図2に示すような治具を用いて、銅
系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体とのせん断
抜き強度を測定した。その測定値と抜き試験後の破断面
観察により、破壊された場所を調査した。その結果を下
の表9に示す。また、単体試験機を用い、潤滑油(10
W30油)環境下においてSCM415浸炭処理鋼材製
コーンとの5000サイクルの耐久試験を行ない、10
00サイクル時点における摩擦係数を測定した。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】本発明が規定する混合組成を有する原料粉
末を適正な条件下で固化し得た所定の空孔率を有する銅
系焼結摩擦部材を作製するとともに、この銅系焼結摩擦
部材とシンクロナイザリング本体との接合界面にFe−
P系合金粉末を介在させた状態で両者を固相拡散接合さ
せた本発明例(No.1〜6)では、シンクロナイザリ
ング本体と銅系焼結摩擦部材との接合界面において、十
分な接合強度を有していることが確認された。また、比
較例(No.11)を除くいずれの銅系焼結摩擦部材に
おいても空孔率は38〜40容積%であり、1000サ
イクル時点における摩擦係数も0.11〜0.12の範
囲内で安定した摩擦係数を有していることが確認され
た。
【0091】一方、比較例(No.7〜11)では、次
のような問題が確認された。比較例(No.7)では、
シンクロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材との接合
界面にFe−P系合金粉末を介在させない状態で加熱お
よび保持したために、両者の間で十分な相互拡散現象が
進行せず、その結果、せん断抜き強度が低下した。比較
例(No.8)では、固相拡散接合温度が650℃であ
り、このために、両者の間で十分な相互拡散現象が進行
せず、その結果、せん断抜き強度が低下した。比較例
(No.9)では、固相拡散接合温度が730℃であ
り、このために、両者の間で十分な相互拡散現象が進行
せず、その結果、せん断抜き強度が低下した。比較例
(No.10)では、固相拡散接合のための加熱処理を
大気中で行なったために、接合界面が酸化し、その結
果、せん断抜き強度が低下した。比較例(No.11)
では、固相拡散接合温度が1090℃であり、このため
に、銅系焼結摩擦部材中の空孔率が32容積%に減少
し、その結果、平均摩擦係数が0.08に低下した。
【0092】実施例5 Cu−30重量%Zn黄銅合金(引張り強度550MP
a)を用いて、内径65mmφのシンクロナイザリング
本体を作製した。そして、図1(d)に示された「製造
工程4」の製法に基づき、2層構造のシンクロナイザリ
ングを作製した。
【0093】具体的には、本発明が規定する原料混合粉
末として、表1のNo.4、9に示された組成を有する
銅系混合粉末を準備した。次に、図3(a)に示すよう
に、金型2、コア部材3、下パンチ4および上パンチ6
を準備するとともに、黄銅製のシンクロナイザリング本
体8を金型2に挿入した。その後、図3(b)に示すよ
うに、シンクロナイザリング本体8の内周面側に銅系焼
結摩擦部材の原料混合粉末10を充填した。そして、上
パンチ6および下パンチ4にそれぞれ矢印に示す方向へ
力を加えて、この原料混合粉末10を型押しおよび成形
することにより、テーパ角度約5°の内周面を有するリ
ング状粉末成形体を有する2層構造のシンクロナイザリ
ングを作製した。なお、成形時における面圧を管理する
ことにより、粉末成形体の空孔率を制御した。
【0094】そして、この2層構造のシンクロナイザリ
ングを下の表10に記載された加熱条件の下で加熱およ
び保持することにより、銅系焼結摩擦部材を作製すると
同時に、シンクロナイザリング本体にこの銅系焼結摩擦
部材を固相拡散接合させて一体化した2層構造のシンク
ロナイザリングを作製した。
【0095】そして、図2に示すような治具を用いて銅
系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体とのせん断
抜き強度を測定した。また、単体試験機を用い、潤滑油
(10W30油)環境下においてSCM415浸炭処理
鋼材製コーンとの5000サイクルの耐久試験を行な
い、1000サイクル時点における摩擦係数を測定し
た。それらの結果を下の表11に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
【表11】
【0098】表10および表11を参照して、本発明例
(No.1〜5)では、本発明が規定する混合組成を有
する原料粉末を適正な条件下で成形および焼結固化する
ことにより、適正な空孔率を有する銅系焼結摩擦部材を
内周面を有する2層構造のシンクロナイザリングを創製
することができる。そのシンクロナイザリングでは、シ
ンクロナイザリング本体と銅系焼結摩擦部材との接合界
面において、十分な接合強度を有していることが確認さ
れた。また、シンクロナイザリング単体耐久試験におい
ても摩耗損傷がなく、安定した摩擦係数を発現できるこ
とが確認された。
【0099】一方、比較例(No.6〜11)では、次
のような問題が確認された。比較例(No.6)では、
粉末成形体の密度が小さいために、得られた銅系焼結摩
擦部材中の空孔率は25容積%であった。このため、銅
系焼結摩擦部材中には適正な量の空孔が形成されていな
いため、単体摩耗試験において摩擦係数の低下が認めら
れた。比較例(No.7)では、粉末成形体の密度が大
きいために、得られた銅系焼結摩擦部材中の空孔率は5
7容積%であった。このために、銅系焼結摩擦部材に摩
耗および焼付きが生じた。比較例(No.8)では、焼
結温度が630℃であり、このために、両者の間で十分
な相互拡散現象が進行せず、その結果、せん断抜き強度
が低下した。比較例(No.9)では、焼結温度が74
0℃であり、このために、両者の間で十分な相互拡散現
象が進行せず、その結果、せん断抜き強度が低下した。
比較例(No.10)では、焼結を大気中で行なったた
めに、粉末成形体において酸化現象が進行し、十分な耐
摩耗性を有する銅系焼結摩擦部材を得ることができなか
った。その結果、単体摩耗試験において銅系焼結摩擦部
材に摩耗が生じた。比較例(No.11)では、銅系焼
結摩擦部材の原料混合粉末において、Fe−P系粉末を
含有しないために、シンクロナイザリング本体と銅系焼
結摩擦部材との接合界面において十分なせん断抜き強度
が得られず、単体試験開始直後に、シンクロナイザリン
グ本体から銅系焼結摩擦部材が剥離した。
【0100】実施例6 Cu−Mo系鋼材(引張り強度570MPa)を用い
て、内径65mmφのシンクロナイザリング本体を作製
した。そして、図1(a)に示された「製造工程1」の
製法に基づき、2層構造のシンクロナイザリングを作製
した。原料粉末として、表1のNo.4に示された混合
粉末と同様の混合粉末を用いて、テーパ角度約6°の内
周面を有するリング状粉末成形体(外径70.1mm
φ)を作製した。
【0101】ただし、成形に用いるコア部材として、図
4に示すように、成形プレスの円錐形上のコア部材3の
表面にΛ形状の突起12を円周方向に付与したものを用
いた。そして、上パンチ6および下パンチ4にそれぞれ
矢印に示す方向へ力を加えて、原料粉末10を型押しお
よび成形することにより、内周面に円周方向に油溝14
を有するリング状の粉末成形体16を得た。得られた粉
末成形体をシンクロナイザリング本体の内周面に当接し
た状態で、900℃に管理した窒素ガス雰囲気中におい
て1時間加熱および保持することにより、リング状銅系
焼結摩擦部材(空孔率43容積%)を得ると同時に、シ
ンクロナイザリング本体にこの銅系焼結摩擦部材を固相
拡散接合させて一体化した2層構造のシンクロナイザリ
ングを作製した。
【0102】また、比較のために、銅系粉末成形体を同
一条件の下で焼結および固相拡散接合を施すことによ
り、円周方向に油溝を有していない銅系焼結摩擦部材
(空孔率43容積%)を有する2層構造のシンクロナイ
ザリングを作製した。
【0103】そして、図2に示すような治具を用いて銅
系焼結摩擦部材とシンクロナイザリング本体とのせん断
抜き強度を測定した。また、単体試験機を用い、潤滑油
(10W30油)環境下においてSCM415浸炭処理
鋼材製コーンとの5000サイクルの耐久試験を行な
い、1000サイクル時点における摩擦係数を測定し
た。その結果を下の表12に示す。
【0104】
【表12】
【0105】本発明が規定する製造方法によって、相手
材としてのコーン部と接する銅系焼結摩擦部材のテーパ
状の内周面上にL形状の油溝を付与することができる。
そのシンクロナイザリングでは、表12に示されている
ように、その油溝の油膜除去効果によって、摩擦係数が
増加することを確認することができた。
【0106】なお、上記各実施例では摩擦部材として、
MTに用いられるシンクロナイザリングを例に挙げた
が、このほかに、オートマティック・トランスミッショ
ン(AT)に用いられる湿式クラッチなどへも適用する
ことができる。
【0107】今回開示された実施例はすべての点で例示
であって制限的ではないものと考えられるべきである。
本発明の範囲は上記で説明した範囲ではなく、特許請求
の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味お
よび範囲でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0108】
【発明の効果】本発明による2層構造のシンクロナイザ
リングでは、シンクロナイザリングが相手材としてのコ
ーン部と接する内周面に、所定量の空孔が形成された銅
系焼結摩擦部材を有している。これにより、相手材との
高い摩擦係数を発現することができる。そして、本発明
のシンクロナイザリングの製造方法では、その銅系焼結
摩擦部材とシンクロナイザリング本体とは、Fe−P系
合金粉末の添加による相互拡散現象を利用して固相拡散
接合される。これにより、両者の接合強度が高められる
とともに、経済性よく2層構造のシンクロナイザリング
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る2層構造のシンクロナイ
ザリングの製造方法の4つの例を示し、(a)は「製造
工程1」に係る製造方法を示し、(b)は「製造工程
2」に係る製造方法を示し、(c)は「製造工程3」に
係る製造方法を示し、(d)は「製造工程4」に係る製
造方法を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る2層構造のシンクロナイ
ザリングの抜き試験を示す図である。
【図3】本発明の「製造工程4」に基づく製造方法を示
し、(a)は同製造方法の1工程を示す断面図であり、
(b)は、(a)に示す工程の後に行なわれる工程を示
す断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る2層構造のシンクロナイ
ザリングの製造方法の円周方向に溝を有するリング状粉
末成形体の型押し成形方法を示す断面図である。
【符号の説明】
2 金型 3 コア部材 4 下パンチ 6 上パンチ 8 シンクロナイザリング本体 10 原料混合粉末 12 突起 14 油溝 16 粉末成形体

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄合金または銅合金を含む第1部材と、 前記第1部材の表面上に固相拡散接合され、鉄合金粉
    末、銅合金粉末および硬質粒子を含んで固相焼結された
    第2部材とを備え、 少なくとも前記第1部材と前記第2部材との接合界面近
    傍には、リンを含む金属間化合物が形成された、摩擦部
    材。
  2. 【請求項2】 前記第2部材には、空孔率30容積%以
    上55容積%以下の空孔が形成されている、請求項1記
    載の摩擦部材。
  3. 【請求項3】 前記リンは、他の部分に比べて、前記第
    1部材と前記第2部材との接合界面に高濃度に存在して
    いる、請求項1または2に記載の摩擦部材。
  4. 【請求項4】 前記第2部材中の前記鉄合金粉末はリン
    を含み、 前記第2部材に対する前記鉄合金粉末の含有量は、1重
    量%以上10重量%以下である、請求項1または2に記
    載の摩擦部材。
  5. 【請求項5】 前記鉄合金粉末に対する前記リンの含有
    量は5重量%以上30重量%以下である、請求項4記載
    の摩擦部材。
  6. 【請求項6】 前記第2部材に対する前記リンの含有量
    は0.3重量%以上である、請求項1または2に記載の
    摩擦部材。
  7. 【請求項7】 前記銅合金は黄銅である、請求項1〜6
    のいずれかに記載の摩擦部材。
  8. 【請求項8】 前記第1部材は、シンクロナイザリング
    における内周面を有する本体リングであり、 前記第2部材は、前記本体リングの内周面に固相拡散接
    合された摩擦材である、請求項1〜7のいずれかに記載
    の摩擦部材。
  9. 【請求項9】 鉄合金または銅合金からなり、内周面を
    有するリング部材を準備する工程と、 リンを含む鉄合金粉末、銅合金粉末および硬質粒子を含
    む混合粉末を準備する工程と、 前記混合粉末を成形することにより、前記リング部材の
    内周面に沿って、リング状成形体を形成する成形工程
    と、 前記リング状成形体を液相が生じない条件にて焼結する
    ことにより、前記リング部材と前記リング状成形体とを
    固相拡散接合する接合工程とを備えた、摩擦部材の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 前記混合粉末に対する前記リンを含む
    鉄合金粉末の含有量は、1重量%以上10重量%以下で
    ある、請求項9記載の摩擦部材の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記混合粉末に対する前記リンの含有
    量は0.3重量%以上である、請求項9記載の摩擦部材
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記成形工程は、前記混合粉末を予め
    成形することにより、外周面と内周面とを有する前記リ
    ング状成形体を形成するとともに、前記リング状成形体
    を前記リング部材に嵌め入れる工程を含む、請求項9〜
    11のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記成形工程は、前記リング状成形体
    を、温度400℃以上1050℃以下のもとで、不活性
    ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中にて仮焼
    結する工程を含む、請求項12記載の摩擦部材の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 前記成形工程は、前記リング部材の内
    周面上に、前記混合粉末を充填および成形することによ
    り、前記リング状成形体を形成する工程を含む、請求項
    9〜11のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  15. 【請求項15】 鉄合金または銅合金からなり、内周面
    を有するリング部材を準備する工程と、 銅合金粉末および硬質粒子を含む混合粉末を準備する工
    程と、 前記リング部材との間にリンを含む鉄合金粉末を介在さ
    せた状態で前記混合粉末を成形することにより、前記リ
    ング部材の内周面に沿って、リング状成形体を形成する
    成形工程と、 前記リング状成形体を液相が生じない条件にて焼結する
    ことにより、前記リング部材と前記リング状成形体とを
    固相拡散接合する接合工程とを備えた、摩擦部材の製造
    方法。
  16. 【請求項16】 前記成形工程は、前記混合粉末を予め
    成形することにより、外周面と内周面とを有する前記リ
    ング状成形体を形成するとともに、前記リング状成形体
    を前記リング部材に嵌め入れる工程を含む、請求項15
    記載の摩擦部材の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記成形工程は、前記接合工程におけ
    る焼結の条件により分解する有機溶剤、有機バインダ
    ー、有機樹脂および接着剤のうちいずれかを用いて、前
    記リング部材の内周面または前記リング状成形体の外周
    面に、前記リンを含む鉄合金粉末を保持する工程を含
    む、請求項16記載の摩擦部材の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記接合工程は、温度800℃以上1
    050℃以下のもと、不活性ガスもしくは還元性ガスの
    雰囲気または真空中にて行なわれる、請求項9〜17の
    いずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記銅合金粉末は黄銅である、請求項
    9〜18のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記リング状成形体を成形する工程
    は、最終焼結後の空孔率が30容積%以上55容積%以
    下になるように、予め所定の圧力をもって前記リング状
    成形体を成形する工程を含む、請求項9〜19のいずれ
    かに記載の摩擦部材の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記銅合金は短繊維粉末またはカール
    状粉末である、請求項9〜20のいずれかに記載の摩擦
    部材の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記リンを含む鉄合金粉末に対するリ
    ンの含有量は、5重量%以上30重量%以下である、請
    求項10〜21のいずれかに記載の摩擦部材の製造方
    法。
  23. 【請求項23】 前記接合工程は、少なくとも前記リン
    グ部材の内周面と前記リング状成形体の外周面との接合
    界面近傍に、リンを含む金属間化合物を形成する工程を
    含む、請求項9〜22のいずれかに記載の摩擦部材の製
    造方法。
  24. 【請求項24】 前記リンを含む鉄合金粉末の平均粒径
    は、20μm以上250μm以下である、請求項9〜2
    3のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
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