JPH111749A - 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼 - Google Patents

曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼

Info

Publication number
JPH111749A
JPH111749A JP15265997A JP15265997A JPH111749A JP H111749 A JPH111749 A JP H111749A JP 15265997 A JP15265997 A JP 15265997A JP 15265997 A JP15265997 A JP 15265997A JP H111749 A JPH111749 A JP H111749A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel
induction hardening
excluding
fatigue strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP15265997A
Other languages
English (en)
Inventor
Sumie Nomura
澄恵 野村
Yoshitake Matsushima
義武 松島
Shinichi Yasuki
真一 安木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP15265997A priority Critical patent/JPH111749A/ja
Publication of JPH111749A publication Critical patent/JPH111749A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波焼入れにより、自動車などの歯車、シ
ャフト、等速ジョイント等の機械部品として優れた曲げ
疲労特性と転動疲労特性を備えた部品を与える高周波焼
入用鋼を提供すること。 【解決手段】 線状または棒状の圧延鋼材からなり、該
圧延鋼材の軸心を通る縦断面において、該軸心と平行で
且つ該軸心から 1/4・D(Dは圧延材の直径を表わす)
離れた仮想線を中心線として含む被検面積100mm2
中に存在する、酸化物系と硫化物系からなる平均粒径1
0μm以上の複合介在物の個数が20個以下であり、高
周波焼入れにより優れた曲げ疲労強度と転動疲労強度を
発現する高周波焼入用鋼を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面硬化処理の行な
われる鋼材に関し、特に高周波焼入れにより、自動車な
どの歯車、シャフト、等速ジョイント等の機械部品とし
て優れた曲げ疲労特性と転動疲労特性を備えた部品を与
える高周波焼入用鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高周波焼入れは、従来の浸炭処理や浸炭
窒化処理等の表面硬質化処理法に比べてエネルギー効率
が高く、しかもインライン熱処理が容易で部品の中間ス
トックを低減できることから、自動車用や建設機械用な
どを始めとする様々の機械部品、たとえば歯車、シャフ
ト、ピン等の製造に広く活用されている。
【0003】これらの機械部品は、使用時に過酷な曲げ
力や回転力、摩擦力などを受けるので、高度の曲げ疲労
特性と転動疲労特性が要求されるが、従来の鋼材を高周
波焼入れした機械部品の曲げ疲労特性や転動疲労特性
は、従来の浸炭もしくは浸炭窒化焼入れ処理を行なった
機械部品に比べると、かなり劣ることが知られている。
そこでこうした疲労特性不足の改善策として、鋼素材の
硬さや焼戻し軟化抵抗を高めることによる転動疲労特性
の向上(特開昭60−169547号)、高周波焼入条
件の適正化(特公平3−60898号)、鋼素材の焼入
性向上による曲げ疲労特性の改善(特開平5−2396
02号)などが提案されている。
【0004】一方最近では、特に燃費や排ガスの低減を
期して自動車の軽量化および高出力化の要望が強く、こ
うした要望に沿うべく機械部品には一層の高強度化が求
められ、それに伴って単位重量当たりにかかる負荷は益
々増大する傾向があり、上記の様な手段では対応し切れ
なくなっているのが実情である。特に上記方法によって
改質されたものであっても、高負荷がかかる用途に適用
すると粗大介在物を起点とする疲労破壊を起こし、需要
者の要望に応え得る様な曲げ疲労特性と転動疲労特性が
保障し切れなくなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、高周
波焼入れにより卓越した曲げ疲労特性と転動疲労特性を
発現し得る様な高周波焼入用鋼を提供しようとするもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明にかかる高周波焼入用鋼とは、線状また
は棒状の圧延鋼材からなり、該圧延鋼材の軸心を通る縦
断面において、該軸心と平行で且つ該軸心から 1/4・D
(Dは圧延材の直径を表わす)離れた仮想線を中心線と
して含む被検面積100mm2 中に存在する、酸化物系
と硫化物系からなる平均粒径10μm以上の複合介在物
の個数が20個以下であり、曲げ疲労強度および転動疲
労強度の改善された高周波焼入用鋼である。
【0007】上記介在物特性と強度特性を与える高周波
焼入用鋼の好ましい成分組成としては、 C :0.3%超0.7%以下 Mn:0.3〜2.5% Si:2%以下(0%を含む) P :0.03%以下(0%を含む) S :0.10%以下(0%を含む) Al:0.015〜0.05% O :0.002%以下(0%を含む) 残部:Feおよび不可避不純物 の要件を満たすものが挙げられ、あるいはこれらに加え
て、 Cu:0.03〜1.0% Ni:2%以下(0%を含まない) Cr:2%以下(0%を含まない) Mo:2%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む
鋼材を使用すると、高周波焼入性などを一層高めること
ができ、あるいは更に他の元素として V :1%以下(0%を含まない) Nb:0.1%以下(0%を含まない) Ti:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有
させると、結晶粒の微細化を図ることができ、あるいは
更に他の元素として Ca:0.0005〜0.01% Pb:0.3%以下(0%を含まない) Te:0.1%以下(0%を含まない) Bi:0.1%以下(0%を含まない) Zr:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有
させると、曲げ疲労特性や転動疲労特性等を阻害するこ
となく被削性を更に高めることができ、もしくは更に他
の元素としてB:0.01%以下(0%を含まない)を
含有させると共にN:0.006%以下(0%を含む)
に抑えれば、高周波焼入性の一層の向上と共に粒界強度
の向上を果たすことができるので好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】まず、本発明で重要な構成要素と
なる介在物の大きさ及び個数の限定理由について詳述す
る。本発明の高周波焼入用鋼は、鋼材を線状もしくは棒
状に圧延した圧延鋼材の軸心を通る縦断面において、該
軸心と平行で且つ該軸心から 1/4・D(Dは圧延鋼材の
直径を表わす)離れた仮想線を中心線として含む被検面
積100mm2 当たりに存在する介在物のうち、酸化物
系と硫化物系からなる平均粒径10μm以上の複合介在
物が20個以下、より好ましくは15個以下であるとこ
ろに特徴を有しており、こうした介在物個数を規定する
ことにより、安定して優れた曲げ疲労特性と転動疲労特
性を発現し得るものとなる。
【0009】この要件は、高周波焼入れ後の曲げ疲労特
性や転動疲労特性に及ぼす介在物の影響について様々の
角度から研究を重ねた結果到達した要件であって、介在
物のうち、酸化物系と硫化物系の複合介在物(以下、酸
化物系・硫化物系複合介在物ということがある)のうち
平均粒径が10μm以上の粗大複合介在物を極力少なく
抑えれば、高周波焼入れ後の曲げ疲労特性と転動疲労特
性が非常に優れたものになるという知見に基づいてい
る。
【0010】ちなみに図1は、多くの実験データの中か
ら上記被検面積100mm2 中に存在する平均粒径10
μm以上の複合介在物の個数が、高周波焼入れ後の曲げ
疲労強度と転動疲労強度におよぼす影響を整理して示し
たグラフ(但し、高周波焼入れ条件は、出力:150k
w,周波数:20kHz,ワークコイル移動速度:21
mm/sec)である。
【0011】図1からも明らかである様に、平均粒径1
0μm以上の粗大複合介在物が上記被検面積中に20個
以下であれば、高周波焼入れ後において高レベルの曲げ
疲労強度と転動疲労強度を示すが、その数が20個を超
えると、それら疲労強度は急激に低下傾向を示す様にな
る。
【0012】上記の様に本発明では、特定被検面積中に
存在する特定サイズ以上の粗大な酸化物・硫化物系複合
介在物の数を規定することにより、高周波焼入れにより
優れた曲げ疲労特性と転動疲労特性を発現し得る様にし
たところに特徴を有しており、こうした介在物数は、例
えば後述する様な成分組成の鋼材を使用し、鋳造乃至圧
延の際の温度条件として、例えば鋳造時における凝固点
から1000℃程度までの鋳片冷却速度を3℃程度以上
とし、圧延時における加熱温度を1200℃程度以下、
圧下率を30%程度以上、仕上圧延温度を1100℃程
度以下に制御することにより、その数をより少なく抑え
ることができるので好ましい。次に、本発明で好ましく
用いられる鋼材の化学成分を規定した理由について説明
する。
【0013】C:0.3%超0.7%以下 Cは、強化元素として芯部硬さを確保すると共に、高周
波焼入れにより表面硬さを与えるのに有用な元素であ
り、0.3%以下では十分な表面高度が得られ難く、満
足のいく疲労特性が得られ難くなる。しかし、0.7%
を超えて過多に含有させると、芯部の靭性が乏しくなる
他、被削性や冷間鍛造性も悪くなり、更には高周波焼入
れの際に焼割れを生じ易くなる。C量のより好ましい下
限値は0.45%、より好ましい上限値は0.55%で
ある。
【0014】Si:2%以下(0%を含む) Siは、溶製時に脱酸剤として有効に作用する他、強化
元素としても作用して芯部硬さの向上に寄与するが、多
過ぎると芯部の靭性を劣化させるばかりでなく、被削性
や冷間鍛造性にも悪影響を及ぼすので、多くとも2%以
下、好ましくは1%以下に抑えるべきである。
【0015】Mn:0.3〜2.5% Mnは溶製時に脱酸剤として有効に作用する他、強度や
芯部の靭性を高め、更には高周波焼入性を高め疲労強度
の向上に寄与する元素であり、それらの作用を有効に発
揮させるには0.3%以上含有させなければならない。
しかし、多過ぎると素材が硬くなり過ぎて被削性や冷間
鍛造性が悪くなるので、2.5%以下に抑えるべきであ
る。Mnのより好ましい範囲は0.3〜2.0%であ
る。
【0016】Al:0.015〜0.05% Alも溶製時に脱酸成分として有効に作用する他、加熱
時におけるオーステナイト結晶粒の成長を抑制して靭性
を高める作用も有している。こうした作用は、Alを
0.015%以上含有させることによって有効に発揮さ
れるが、それらの作用は約0.05%で飽和するので、
それ以上の添加は無意味であるばかりでなく、酸化物系
介在物が多量生成して粗大な複合介在物量を増大させ、
曲げ疲労特性や転動疲労特性に悪影響を及ぼす様になる
ので、0.05%以下、より好ましくは0.04%以下
に抑えるのが良い。
【0017】S:0.1%以下(0%を含む) Sは被削性向上成分として有効に作用するが、多量に含
有させ過ぎると、粗大な酸化物系・硫化物系複合介在物
が多量生成し、曲げ疲労特性と転動疲労特性に悪影響を
与え、特に加工方向に対して横目の強度を著しく低下さ
せるので、0.1%以下に抑えるべきである。Sのより
好ましい上限値は0.03%であり、実質的にゼロ%で
あっても構わない。
【0018】P:0.03%以下(0%を含む) Pは粒界偏析を起こして粒界強度を低下させ脆化の原因
になるので、0.03%以下、より好ましくは0.02
%以下に抑えるのがよい。
【0019】O:0.002%以下(0%を含む) Oは、含有量が多くなると複合介在物の核となるAl2
3 やSiO2 等の粗大酸化物系介在物を多量生成して
粗大な複合介在物量を増大させ、曲げ疲労特性や転動疲
労特性を劣化させるので、0.002%以下、より好ま
しくは0.0015%以下に抑えるべきである。
【0020】本発明で好ましく用いられる鋼材の残部成
分はFeおよび不可避不純物であるが、必要により更に
他の元素として下記の様な元素を適量含有させることに
よって、高周波焼入用鋼としての特性を一段と改善する
ことが可能である。
【0021】Cu:0.03〜1.0% Ni:2%以下(0%を含まない) Cr:2%以下(0%を含まない) Mo:2%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素 これらの元素は、高周波焼入性の向上に寄与する点で同
効元素であが、夫々の作用を詳述すると下記の通りであ
る。即ちCuは、焼入性の向上に寄与する他、耐食性の
向上にも有効に作用する元素であり、それらの効果は
0.03%程度以上、より好ましくは0.2%程度以上
含有させることによって有効に発揮される。しかし、多
過ぎると熱間割れを生じ易くなって熱間加工性を害する
ので、1.0%以下、より好ましくは0.6%以下に抑
えるべきである。またNiも高周波焼入性を高めると共
に靭性の向上に有効に作用する元素であり、こうした作
用は0.2%程度以上含有させることによって有効に発
揮されるが、その効果は2%程度で飽和し、それ以上に
多くなると高周波焼入れ時に焼割れを生じ易くなるの
で、2%以下に抑えるべきである。
【0022】Crも高周波焼入性の向上に寄与し、更に
は炭化物形成元素として作用して微細炭化物を生成させ
軟化抵抗を高めて転動疲労特性の向上にも寄与する。こ
うした効果は0.3%程度以上含有させることによって
有効に発揮されるが、2%を超えて過多に含有させる
と、素材硬さを低下させて曲げ疲労特性や靭性に悪影響
を及ぼす様になるので、2%以下に抑えなければならな
い。Moも高周波焼入性の向上に寄与する他、炭化物を
形成し軟化抵抗を高めて転動疲労特性の向上に寄与し、
更にはオーステナイト結晶粒を微細化し、また表層部の
圧縮残留応力を増大させる効果も発揮する。こうした効
果は0.05%程度以上含有させることによって有効に
発揮されるが、含有量が多くなり過ぎると被削性に悪影
響が現れてくるので、2%以下、より好ましくは1%以
下に抑えるのがよい。
【0023】V :1%以下(0%を含まない) Nb:0.1%以下(0%を含まない) Ti:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素 これらの元素は、結晶粒を微細化して靭性向上に寄与す
る点で同効元素であが、夫々の作用を詳述すると下記の
通りである。即ちVは、炭化物を生成して結晶粒を微細
化させる作用を有しており、また炭化物の安定性を高め
軟化抵抗を高めて転動疲労特性の向上に寄与する。こう
した作用は0.2%程度以上含有させることによって有
効に発揮されるが、含有量が多くなり過ぎると、芯部の
3 ,A 1 変態点が大幅に低下して芯部のγ化が不十分
となり、焼きが入りにくくなって硬さ不足となるので、
1%以下に抑えるべきである。Nbも、Vと同様に炭化
物や炭窒化物形成元素であり、結晶粒を微細化して靭性
向上に寄与し、また表面硬さの向上により曲げ疲労特性
の向上に有効な元素であり、その効果は0.01%程度
以上含有させることによって有効に発揮される。しかし
その効果は0.1%程度で飽和し、それ以上に添加して
も経済的に不利益となるだけである。Tiも結晶粒の微
細化に有効な元素であり、また鋼の脱酸、脱窒にも有効
に作用する。またBを同時に含有する場合は、鋼中のN
を固定して後述するBの作用をより効果的に発揮させる
作用も有している。しかし、多過ぎるとTiN等の硬質
介在物が多量生成して曲げ疲労特性や転動疲労特性を劣
化させるので、0.1%以下、より好ましくは0.05
%以下に抑えるべきである。
【0024】Ca:0.0005〜0.01% Pb:0.3%以下(0%を含まない) Te:0.1%以下(0%を含まない) Bi:0.1%以下(0%を含まない) Zr:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種 これらの元素は、いずれも被削性向上に寄与する点で同
効元素である。またCa,Te,Zrは、介在物を球状
化して異方性を改善する作用も有している。即ちCa
は、Mnと共に硫化物系介在物を生成し介在物を球状化
して異方性を改善し、且つ靭性や曲げ疲労特性を劣化さ
せずに被削性を高める作用を有しており、それらの効果
は0.0005%程度以上、より好ましくは0.000
8%以上含有させることによって有効に発揮される。し
かし多過ぎると、粗大なCaSや酸化物系介在物の周り
に硫化物系介在物が結びついた粗大な複合介在物が多量
生成して曲げ疲労特性を劣化させるので、0.01%以
下、より好ましくは0.005%以下に抑えるべきであ
る。Pbも被削性向上元素として有効に作用するが、多
過ぎると曲げ疲労特性やピッチング寿命を大幅に劣化さ
せるので、0.3%以下、より好ましくは0.1%以下
に抑えるべきである。
【0025】Teは、Mn−Teを形成してMnSの周
辺に共存し、熱間圧延時におけるMnSの変形を抑制し
てMnSの球状化を促し、鋼材の靭性や曲げ疲労特性を
劣化させずに被削性を高める作用を有している。しかし
0.1%を超えると、非金属系介在物量の増大によって
曲げ疲労特性を却って悪化させるので、0.1%以下に
抑えなければならない。Biも被削性の向上に寄与する
が、含有量が多くなりすぎると、曲げ疲労特性や転動疲
労特性に悪影響を及ぼすので、0.1%以下に抑えるべ
きである。Zrも、熱間圧延時におけるMnSの変形を
抑えてMnSの球状化に寄与し異方性の改善に有効に作
用する他、靭性や曲げ疲労特性を劣化させずに被削性を
高める作用を有しているが、多過ぎるとZrO2 等の非
金属系介在物量が多くなって曲げ疲労特性を逆に劣化さ
せるので、0.1%以下に抑えるのがよい。
【0026】 B:0.01%以下(0%を含まない)および N:0.006%以下(0%を含む) Bは極く少量で高周波焼入性を高める他、粒界強度を高
めるのに有効な元素であり、特に0.0005%以上含
有させるとその効果が有効に発揮される。しかしその効
果は0.01%で飽和するので、それ以上の添加は無駄
であり、好ましくは0.005%程度以下に抑えるのが
よい。またNは、上記Bと結合してBNを生成し、Bの
焼入性向上効果を阻害するので、0.006%以下に抑
えるべきである。なお、上記本発明の高周波焼入用鋼を
用いた高周波焼入れ条件は特に制限されない。
【0027】かくして本発明によれば、鋼材の成分組成
を特定すると共に、特定断面を被検面とする粗大な平均
粒径の酸化物・硫化物系複合介在物の個数を特定するこ
とによって、高周波焼入れにより優れた曲げ疲労特性と
転動疲労特性を発現する高周波焼入用鋼を提供し得るこ
とになった。
【0028】本発明の高周波焼入用鋼を用いて歯車等の
部品を製造する際には、常法に従って部品形状に加工し
た後、常法に従って高周波焼入れを行ない、必要により
ショットピーニング加工等を行なって、表面を硬質化す
れば良い。
【0029】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明の構成および作
用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下
記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の
趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿
論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に
含まれる。
【0030】実施例1 表1に示す成分組成の鋼材を使用し、鋳造時の冷却速度
を変化させて複合介在物の大きさと量を変えるため、N
o.1〜13,15,17では150kg真空溶解炉を
用いて溶製してから鋳造し、次いで直径65mmの丸棒
に鍛造し、またNo.14では150kg大気炉を用い
て溶製してから鋳造し、次いで直径65mmの丸棒に鍛
造し、No.16では5トンのインゴットに鋳造した後
直径65mmの丸棒に圧延した。
【0031】
【表1】
【0032】その後、各丸棒中の非金属介在物を調べる
ため、図2に示す如く、各丸棒の軸心を含む縦断面にお
いて、該軸心と平行で且つ該軸心から直径(縦断面の
幅)65mmの1/4・D離れた仮想線を中心線として
含む位置から幅20mm×長さ30mmのサンプルを切
り出し、EPMAを用いて該断面に存在する非金属介在
物の組成、大きさ、個数を調べた。測定は、連続自動運
転で倍率は400倍とし、被検面積100mm2 当たり
に存在する全ての非金属介在物の組成と大きさ及び個数
を測定し、そのうち平均粒径[(長径+短径)/2]が
10μm以上の酸化物・硫化物系複合介在物の個数を求
めた。
【0033】また、直径65mmの各鍛造・圧延材に、
「1200℃×2時間→空冷」の溶体化処理と、「93
0℃×2時間→空冷」の焼ならし処理を施した後、各丸
棒の1/4・Dの位置から小野式回転曲げ疲労試験片(平
滑)を作製した。また、各丸棒の縦断面方向から直径6
0mm×厚さ5mmの円盤を切り出し、スラスト型回転
疲労試験片を作製した。その後、出力150KW、周波
数20KHZ、ワークコイル移動速度21mm/sec
の条件で高周波焼入れ処理を行ない、更に「150℃×
2時間→空冷」の焼戻し処理を行なった。その後、回転
曲げ試験片はそのまま試験に供した。転動疲労試験につ
いては、ラッピング加工を行なった後、面圧527kg
f/mm2 の条件で転動疲労試験を行なった。結果を表
2に示す。なお転動疲労試験結果については、L10(1
0%累積破損率)で評価した。
【0034】
【表2】
【0035】表1,2より次の様に解析することができ
る。No.1〜13は本発明の規定要件を全て満たす実
施例であり、鋼材の成分組成が適正で平均粒径10μm
以上の酸化物・硫化物系複合介在物の数が20個以下で
あるため、曲げ疲労強度と転動疲労強度のいずれにおい
て優れた結果が得られている。
【0036】これに対しNo.14〜17は、本発明の
規定要件を欠く比較例であり、No.14は、溶製を大
気炉で行なったため鋼材のO量が多く、ひいては酸化物
・硫化物系複合介在物の平均粒径が大きく且つその数も
多くなり、曲げ疲労強度および転動疲労寿命のいずれも
悪い。No.16は、鋳造時の冷却速度が遅いため粗大
な酸化物・硫化物系複合介在物が多く、曲げ疲労強度が
低く且つ転動疲労寿命も短い。またNo.17は、鋼材
中のS含有量が多いため粗大な複合介在物が多くなり、
やはり曲げ疲労強度および転動疲労寿命が乏しい。
【0037】実施例2 表3に示す化学成分の鋼材を150kg真空溶解炉で溶
製し、鋳造後、直径65mmの丸棒に鍛造した。
【0038】
【表3】
【0039】その後、各丸棒中の非金属介在物を調べる
ため、図2に示した如く、各丸棒の軸心を含む縦断面に
おいて、該軸心から1/4 ・D離れた仮想線を中心線とし
て含む位置から幅20mm×30mmのサンプルを切り
出し、前記実施例1と同様にしてEPMAにより該断面
に存在する非金属介在物の組成、大きさ、個数を調べ
た。測定は、連続自動運転で倍率は400倍とし、被検
面積100mm2 当たりに存在する全ての非金属介在物
の組成と大きさ及び個数を測定し、そのうち平均粒径
[(長径+短径)/2]が10μm以上である粗大な酸
化物・硫化物系複合介在物の個数を求めた。
【0040】その後、「875℃×1時間→60℃油
冷」の焼入処理を行ない、「575℃×1時間→水冷」
の焼もどし処理を行なった後、丸棒の軸心から 1/4・D
離れた位置から小野式回転曲げ疲労試験片(平滑)を作
製した。また、各丸棒の縦断面方向から直径60mm×
厚さ5mmの円盤を切り出してスラスト型回転疲労試験
片を作製した。ついで、上記実施例1と同様に出力15
0KW、周波数20KHZ、ワークコイル移動速度21
mm/secの条件で高周波焼入れ処理を行ない、更に
「150℃×2時間→空冷」の焼もどし処理を行なっ
た。その後、回転曲げ試験片はそのまま試験に供した。
転動疲労試験については、ラッピング加工を行ない、面
圧527kgf/mm2 の条件で転動疲労試験を行なっ
た。結果を表4に示す。なお転動疲労試験結果について
は、L10(10%累積破損率)で評価した。
【0041】
【表4】
【0042】表3,4より次の様に考えることができ
る。No.18〜21は、本発明の規定要件を満たす実
施例であり、鋼材組成が適正で且つ平均粒径10μm以
上の酸化物・硫化物系複合介在物の数がいずれも20個
以下であり、曲げ疲労強度および転動疲労強度のいずれ
も優れた結果が得られている。なお本実施例の転動疲労
寿命は、実施例1の焼ならし処理鋼よりもやや劣ってい
るが、比較鋼よりも優れており、問題のないレベルであ
る。
【0043】これに対しNo.22,23は、本発明の
規定要件を欠く比較例であり、No.22は、溶製を大
気炉で行なったため鋼材のO量が多く、その結果として
酸化物系介在物のサイズが大きく且つ個数も多くなり、
ひいては粗大な酸化物・硫化物系複合介在物が多く、曲
げ疲労強度および転動疲労寿命のいずれも悪い。またN
o.23は、鋼材中のS含有量が多いため粗大な複合介
在物が多くなり、やはり曲げ疲労強度および転動疲労寿
命が乏しい。
【0044】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、特
定断面を被検面とする特性サイズの酸化物・硫化物系複
合介在物の個数を特定することによって、高周波焼入れ
により優れた曲げ疲労強度と転動疲労寿命を発現する高
周波焼入用鋼を提供し得ることになった。また、こうし
た特性を有する高周波焼入用鋼は、請求項2〜6で規定
する様な成分組成の鋼材を使用し、且つ真空炉等を用い
て溶製時の酸素の混入を抑え、また鋳造時における凝固
温度以下の鋳片冷却速度を早くする等の手段を講じるこ
とによって容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化物・硫化物系複合介在物(平均粒径10μ
m以上)の個数と曲げ疲労強度および転動疲労寿命の関
係を示すグラフである。
【図2】酸化物・硫化物系複合介在物数の測定領域を示
す説明図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 線状または棒状の圧延鋼材からなり、該
    圧延鋼材の軸心を通る縦断面において、該軸心と平行で
    且つ該軸心から 1/4・D(Dは圧延材の直径を表わす)
    離れた仮想線を中心線として含む被検面積100mm2
    中に存在する、酸化物系と硫化物系からなる平均粒径1
    0μm以上の複合介在物の個数が20個以下であること
    を特徴とする曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた
    高周波焼入用鋼。
  2. 【請求項2】C :0.3%(以下、特記しない限り質
    量%を意味する)超0.7%以下 Mn:0.3〜2.5% Si:2%以下(0%を含む) P :0.03%以下(0%を含む) S :0.1%以下(0%を含む) Al:0.015〜0.05% O :0.002%以下(0%を含む) 残部:Feおよび不可避不純物 の要件を満足する鋼材からなる請求項1記載の高周波焼
    入用鋼。
  3. 【請求項3】 鋼材が、他の元素として Cu:0.03〜1.0% Ni:2%以下(0%を含まない) Cr:2%以下(0%を含まない) Mo:2%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む
    ものである請求項2記載の高周波焼入用鋼。
  4. 【請求項4】 鋼材が、更に他の元素として V :1%以下(0%を含まない) Nb:0.1%以下(0%を含まない) Ti:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む
    ものである請求項2または3記載の高周波焼入用鋼。
  5. 【請求項5】 鋼材が、更に他の元素として Ca:0.0005〜0.01% Pb:0.3%以下(0%を含まない) Te:0.1%以下(0%を含まない) Bi:0.1%以下(0%を含まない) Zr:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む
    ものである請求項2〜4のいずれかに記載の高周波焼入
    用鋼。
  6. 【請求項6】 鋼材が、更に他の元素としてB:0.0
    1%以下(0%を含まない)を含み、N:0.006%
    以下(0%を含む)である請求項2〜5のいずれかに記
    載の高周波焼入用鋼。
JP15265997A 1997-06-10 1997-06-10 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼 Pending JPH111749A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15265997A JPH111749A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15265997A JPH111749A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH111749A true JPH111749A (ja) 1999-01-06

Family

ID=15545282

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15265997A Pending JPH111749A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH111749A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004300458A (ja) * 2003-03-28 2004-10-28 Kobe Steel Ltd 高周波焼入部の低温耐衝撃特性に優れた高周波焼入用鋼及び棒鋼
US9039962B2 (en) 2010-03-30 2015-05-26 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel for induction hardening, roughly shaped material for induction hardening, producing method thereof, and induction hardening steel part
EP2562283A4 (en) * 2010-04-19 2017-07-05 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel component having excellent temper softening resistance
CN115466900A (zh) * 2022-09-20 2022-12-13 西华大学 一种提高汽车曲轴抗疲劳性能的方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004300458A (ja) * 2003-03-28 2004-10-28 Kobe Steel Ltd 高周波焼入部の低温耐衝撃特性に優れた高周波焼入用鋼及び棒鋼
US9039962B2 (en) 2010-03-30 2015-05-26 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel for induction hardening, roughly shaped material for induction hardening, producing method thereof, and induction hardening steel part
US9890446B2 (en) 2010-03-30 2018-02-13 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel for induction hardening roughly shaped material for induction hardening
EP2562283A4 (en) * 2010-04-19 2017-07-05 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel component having excellent temper softening resistance
CN115466900A (zh) * 2022-09-20 2022-12-13 西华大学 一种提高汽车曲轴抗疲劳性能的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4956146B2 (ja) 鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼およびその製造方法並びに浸炭部品
JP5332646B2 (ja) 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法
JP4352261B2 (ja) 歯車
JP4706183B2 (ja) シームレス鋼管およびその製造方法
JPH0953148A (ja) 高靭性肌焼き鋼製機械部品およびその製法
JP6628014B1 (ja) 浸炭処理が行われる部品用の鋼材
JP4451808B2 (ja) 疲労特性と耐結晶粒粗大化特性に優れた肌焼用圧延棒鋼およびその製法
JP6881613B2 (ja) 浸炭軸受鋼部品、および浸炭軸受鋼部品用棒鋼
JP4957325B2 (ja) 非調質鋼材
JP4773118B2 (ja) 曲げ疲労強度に優れるクランクシャフト
WO2014027463A1 (ja) 高周波焼入れ用鋼材
JP4853366B2 (ja) ショットピーニングを施した鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品
JP2007113071A (ja) 転動疲労特性および結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼用鋼
JP4752800B2 (ja) 非調質鋼材
TW200538559A (en) The crank shaft excellent in bending fatigue strength
JP4983291B2 (ja) 鋼材
JP2005314810A (ja) 高周波焼入れ用鋼
WO2018212196A1 (ja) 鋼及び部品
JPH111749A (ja) 曲げ疲労強度および転動疲労強度に優れた高周波焼入用鋼
JP4280923B2 (ja) 浸炭部品又は浸炭窒化部品用の鋼材
WO2018047444A1 (ja) 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール
JP2004124127A (ja) 捻り疲労特性に優れた浸炭用鋼
JPH10147814A (ja) 熱処理歪みの少ない肌焼鋼製品の製法
JP2021091957A (ja) 摺動部品用鋼材及び摺動部品用鋼材の製造方法
JP4243852B2 (ja) 浸炭部品又は浸炭窒化部品用の鋼材、浸炭部品又は浸炭窒化部品の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20021029