JPH11124656A - 延性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼材及びその製造方法 - Google Patents

延性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼材及びその製造方法

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JPH11124656A
JPH11124656A JP28867597A JP28867597A JPH11124656A JP H11124656 A JPH11124656 A JP H11124656A JP 28867597 A JP28867597 A JP 28867597A JP 28867597 A JP28867597 A JP 28867597A JP H11124656 A JPH11124656 A JP H11124656A
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steel material
toughness
steel
damper
less
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JP28867597A
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English (en)
Inventor
Toshimichi Omori
俊道 大森
Hisaya Kamura
久哉 加村
Toru Kawanaka
徹 川中
Junichi Takagi
潤一 高木
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】塑性歪み履歴による降伏強さの顕著な上昇を防
止する観点から引張強さが270N/mm2 以下と低
く、かつ50%以上の降伏比を有し、さらに繰り返し塑
性変形に耐える塑性変形能を確保するために、65%以
下の降伏比を有し、延性と靭性に優れたダンパー用鋼材
及びそれを低コストで製造する方法を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.001〜0.006%
と、sol.Al:0.005〜0.07%と、T.
N.:0.001〜0.006%とを含有し、さらに、
C%+N%≦0.008%を満たし、残部Fe及び不可
避不純物よりなる鋼材であって、引張強さが270N/
mm2 以下でかつ降伏比が50〜65%であることを特
徴とする、延性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地震などにより期
せずしてもたらされる外力から構造物を保護する目的で
施される制震構造において、外力を自らの変形により主
体的に吸収する機能を有する延性と靭性に優れた制震ダ
ンパー用鋼材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】地震による建築物への被害に代表される
ように、期せずして突発的な外力が構造物に作用する
と、その構造物の継続的使用が不可能になることがあり
得る。この被害を最小限にくいとめることを目的に、建
築分野では「被害レベル制御設計法」が考案され、近年
実用化に向けて具体的な検討が盛んに行われている。特
開平3−233083号公報や特開平6−57820号
公報、及び実開平7−21927号公報は、この新耐震
設計の具現化を目的に発明された技術である。これらは
いずれも構造物の主構造と制震要素を分離させた構造に
特徴があり、予期せぬ外力が構造物に働いた場合、その
エネルギーを制震要素に集中させ吸収させることによ
り、主構造の塑性変形を防止する効果を発揮する。ま
た、橋梁の分野でも構造体に塑性変形し易い制震要素を
付加し活用する例として、特開平9−49209号公報
などの提案がなされている。
【0003】これらの技術を実現するためには、変位に
伴うエネルギー吸収が大きいデバイスが不可欠であり、
これまでに鉛などの素材とともにオイルダンパー等の機
械要素の適用も検討されてきた。しかし、鋼構造物との
一体構造化を図るための接合性や信頼性の観点から鋼材
の適用が要望された。
【0004】この要望に応えることを目的に、特開平3
−31467号公報、特開平6−235042号公報、
特開平8−157947号公報に示される技術は、均一
に塑性変形しやすい、即ち降伏比(YR)が低く、かつ
降伏強さ(YS)が低いダンパー用極軟鋼として提案さ
れたものである。特開平3−31467号公報は極低炭
素鋼にAlを添加し、高温で熱処理を施すことにより結
晶粒径1mmを超えるフェライト組織を得てYS=約1
00N/mm2 、YR=約50%の極軟鋼を得る技術で
ある。しかし、本技術による極軟鋼の延性と靭性は開示
されていない。また、実施例には2mmを超える著しい
粗粒化が認められていることから、制震要素部材の断面
形状によっては、例えば肉厚に比べて粒径が比較的大き
い場合、部材の均一な変形が期待できなくなり、外力の
繰り返しに耐えきれずに破断してしまうことが懸念され
る。
【0005】特開平6−235042号公報は、純鉄に
近い組成の軟鋼に6方晶窒化ボロン粒子を含有させるこ
とにより低YP(降伏点)を達成する技術である。明細
書に記載されているように6方晶窒化ボロン粒子の剪断
変形とその後の粒子−母相界面への応力集中によりYP
=約80N/mm2 かつ50%以上の伸びが達成されて
いるが、6方晶窒化ボロン粒子を内在することによる靭
性の低下が懸念される。
【0006】特開平8−157947号公報は、極低炭
素鋼にTi,Nb,Vを添加し、Ar3 点以下で30%
以上の熱間圧延を施し、その後焼鈍することで、結晶粒
の粗大化を図り降伏強さ100N/mm2 以下を得る技
術である。実施例から本技術による極軟鋼は40%以下
のYRが達成されていることを知れるが上述の従来技術
と同様に靭性については開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が目的とするダ
ンパー用鋼材は、制震要素部材用素材とはいえ構造用鋼
材として用いられ、その機能として予期せぬ外力を積極
的に吸収するため繰り返し塑性変形に耐える高延性が要
求される。また、塑性変形を繰り返す過程で脆性的に破
壊してはならないので靭性も要求される。
【0008】しかしながら、上述したように、従来技術
は積極的に外力を吸収するために必要な降伏強さの低減
にのみ主眼が置かれ、靭性はいずれの技術にも開示され
ていない。
【0009】さらに、ダンパー用鋼材を用いた構造設計
は、大規模地震に対して上述のように塑性変形によるエ
ネルギー吸収が期待されるが、通常考えられる中小規模
地震や強風に対しては弾性設計によりなされる。そのた
め、設計上は、ダンパー用鋼材の弾性限が明確になって
いることが望ましいが、降伏強さの低減に主眼が置かれ
た従来技術は、降伏棚を消失させ降伏強さを耐力表示と
することでその低減を図ったものである。従って、これ
らの技術で報告されている降伏強さが0.2%耐力であ
ることから真の弾性限界はさらに低く、ややもすると中
規模地震や強風による揺れで期せずして既にダンパー用
鋼材に塑性変形をもたらしかねない。加えて、降伏比が
40%程度以下の極軟鋼では、塑性変形に伴う加工硬化
が顕著であり、数%の歪み履歴を受けただけでその降伏
強度は2倍以上に上昇する。
【0010】一方、高度な設計技術により中小地震時や
強風時のダンパー用鋼材の塑性変形を防止することは可
能と思われる。しかし、大規模地震時の初期振幅で塑性
変形により加工硬化したダンパー用鋼材の降伏強さがこ
のように著しく上昇すると、その後の繰り返し振幅で所
要のエネルギー吸収の設計上の取扱いが困難となる。ま
た、ダンパー用鋼材の降伏強さが地震振幅によりもたら
される変形の歪み速度に大きく依存し変化すると、これ
も同様に制震要素としてのダンパー用鋼材の設計を困難
にする。
【0011】即ち、大規模地震時のみに自らの塑性変形
でそのエネルギーを吸収するダンパー用鋼材に求められ
る性能は降伏強さを極端に低減することではない。むし
ろ設計上の扱い易さの観点から初期状態のダンパー用鋼
材は、引張試験にて明確な降伏棚の現出により弾性域と
塑性変形領域が明確に区別され、かつ、塑性変形を開始
する応力として用いられる下降伏点が繰り返し塑性変形
や引張速度(歪み速度)により大きく変化しないことが
求められる。また、大規模地震の際、ダンパー用鋼材に
導入される歪み量は数%〜10%以下のレベルにまで達
する。即ち、ダンパー用鋼材の降伏応力は歪み履歴を受
けることにより概ね引張強さの70〜85%にまで達す
るため、歪み履歴を受けたダンパー用鋼材の降伏応力が
主構造の降伏強さを超えさらに上昇することがあって
は、主構造を弾性範囲にくい留めようとする設計の自由
度は大きく制約される。
【0012】この観点からダンパー用鋼材が歪み履歴を
受けても塑性変形できる応力の上限値の指標として引張
強さが挙げられ重要な意味を持つのである。即ち、その
値が低いほど設計は容易となりまた設計上の自由度が増
す。具体的には降伏強度が240N/mm2 以上の鋼材
により主構造が構成されることを勘案し、ダンパー用鋼
材の引張強さが270N/mm2 以下、好ましくは26
0N/mm2 以下、さらに好ましくは250N/mm2
以下であれば制震設計は容易でありその自由度は増大す
る。
【0013】即ち、本発明の目的は、塑性歪み履歴によ
る降伏強さの顕著な上昇を防止する観点から引張強さが
270N/mm2 以下と低く、かつ50%以上の降伏比
を有し、さらに繰り返し塑性変形に耐える塑性変形能を
確保するために、65%以下の降伏比を有し、延性と靭
性に優れた制震ダンパー用鋼材及びそれを低コストにて
製造する方法を提供することにある。なお、本発明にお
ける降伏比は、下降伏応力または耐力と引張強さの比を
示す。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の鋼材は、重量%で、C:0.001〜
0.006%と、sol.Al:0.005〜0.07
%と、T.N.:0.001〜0.006%とを含有
し、さらに、C%+N%≦0.008%を満たし、残部
Fe及び不可避不純物よりなる鋼材であって、引張強さ
が270N/mm2 以下(好ましくは260N/mm2
以下、さらに好ましくは250N/mm2 以下)でかつ
降伏比が50〜65%であることを特徴とする、延性と
靭性に優れた制震ダンパー用鋼材である。 (2)本発明の鋼材は、重量%で、C:0.001〜
0.006%と、sol.Al:0.005〜0.07
%と、T.N.:0.001〜0.006%とを含有
し、さらに、C%+N%≦0.008%を満たし、残部
Fe及び不可避不純物よりなるフェライト単相組織を有
する鋼材であって、その平均フェライト粒径が40μm
以上であり、引張強さが270N/mm以下(好まし
くは260N/mm 以下、さらに好ましくは250
N/mm2 以下)でかつ降伏比が50〜65%であるこ
とを特徴とする、延性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼
材である。 (3)本発明の製造方法は、上記(1)または(2)に
記載の組成を有する鋼を930〜1250℃に加熱し、
熱間圧延する際に、910〜1000℃の温度域で圧下
率10%以上かつ750〜900℃の温度域で圧下率2
0%以上の圧下を施し、750℃以上で圧延を終了する
工程と、熱間圧延された鋼材を、650℃以上900℃
未満で焼鈍する工程と、を備えたことを特徴とする、延
性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼材の製造方法であ
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記の課題を解決
するために鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに
至った。軟鋼の引張強さを低下させる手段は、第二相を
消失させることである。これは鋼材のミクロ組織をフェ
ライト単相とすることと同義であり、高延性を確保する
ことにも繋がる。この種の鋼材の選択として極低炭素鋼
の採用が挙げられるが、不純物元素の規制を量産を前提
にコスト高を招かない範囲で具体化することは極めて重
要である。そこで、本発明者らは、低引張強さと高延
性、さらには靭性とともに50%以上の降伏比を確保す
ることを目的に極低炭素鋼をベースに固溶C量を変化さ
せた鋼材を用いて、その圧延、焼鈍条件と、結晶粒径、
さらには引張強さ、降伏比、靭性との関係を詳細に調査
し、これらの特性の支配因子と解決策により構成される
本発明に至った。これら本発明の技術思想の骨子は以下
の通りである。
【0016】(1)固溶C量の最適化による粒界強度確
保と降伏比確保及び引張強さ低減 (2)そのためのC含有量と不純物元素の規制値の明確
化 (3)引張強さ低減のための加工熱処理条件の明確化 以上の知見に基づき、本発明者らは、極低炭素鋼材のC
含有量と、不純物元素の含有量を一定範囲内に規定し、
引張強さ低減のための結晶粒径の下限に調整するため鋼
材の加工熱処理条件(圧延条件、焼鈍条件)を一定範囲
内に制御するようにして、降伏強さ、降伏比、及び靭性
のいずれも良好な制震部材用極軟鋼を見出し、本発明を
完成させた。
【0017】すなわち、本発明は、鋼組成、結晶粒径及
び製造条件を下記範囲に限定することにより、塑性歪み
履歴による降伏強さの顕著な上昇を防止する観点から引
張強さが270N/mm2 以下と低く、かつ50%以上
の降伏比を有し、さらに繰り返し塑性変形に耐える塑性
変形能を確保するために、65%以下の降伏比を有し、
延性と靭性に優れた制震ダンパー用鋼材及びそれを低コ
ストにて製造する方法を提供することができる。以下に
本発明の成分添加理由、成分限定理由、結晶粒径の限定
理由及び製造条件の限定理由について説明する。
【0018】(1)成分組成範囲及び結晶粒径範囲 C:0.001〜0.006%,T.N.:0.001
〜0.006%,C%+N%≦0.008% C及びNは、侵入型固溶元素として鋼材の降伏強さを著
しく高める。0.007%超えるCは、鋼材に第二相を
生成させ引張強さの上昇と延性の低下をもたらす。一
方、近年の製鋼技術の進歩により極端なコスト高を伴わ
ずにC<0.002%、N<0.002%の高純度化が
可能となったが、これらの侵入型固溶元素の極端な低減
は降伏強さの低下に伴う降伏比の低下をもたらす。ま
た、粒界と粒内の強度差が大きくなると粒界破壊を起こ
しやすくなり、さらにこれを起点とする脆性破壊が懸念
される。この傾向は鋼材が塑性変形を受けることにより
助長されるので、初期状態で構造用鋼材に求められる靭
性を有していても繰り返し塑性変形による劣化を踏まえ
て高レベルを確保させる必要がある。
【0019】以上を根拠にC、Nはそれぞれ0.001
%以上含有させるが、引張強さの低減と降伏比65%以
下を確保するためそれぞれ0.006%以下に、好まし
くはそれぞれ0.004%以下に規制する。
【0020】また、以上述べた効果は侵入型固溶元素と
して加算的に現れるので、CとNの和は0.008%以
下に規制される。さらに、厳密には後述する他の不可避
不純物元素との兼ね合いで少なくとも固溶C量を0.0
005%以上確保させることで、明瞭な降伏棚を現出さ
せ同時に50%以上の降伏比と塑性変形後の靭性を確保
する。靭性は、通常の建設用鋼材に求められる特性(0
℃でのシャルピー吸収エネルギーvE0≧27J)はも
とより、繰り返し塑性変形後においても十分な特性(0
℃でのシャルピー吸収エネルギーvE0≧27J)が得
られる(固溶C量を0.0005%以上確保することの
効果)。
【0021】従って、C、Nの添加量はいずれも0.0
01〜0.006%であり、C%+N%≦0.008%
である。 sol.Al:0.005〜0.07% Alは、製鋼段階で脱酸のため添加する。効果的な脱酸
により健全な内質を得るためには鋼材にsol.Alと
して0.005%以上残存するように添加する。しか
し、過剰なAl添加によりsol.Alが0.07%を
超えて残存すると鋼の清浄性が劣化し、かつ製造過程で
鋼材に疵を発生する原因になる。従って、sol.Al
の添加量は0.005〜0.07%である。また、その
他の不純物元素:Ti,Nb,V,Si,Mn,P,
S,Cu,Ni,Cr,Moについては、以下のような
観点から規制することが望ましい。
【0022】Ti、Nb、Vは、炭化物や窒化物を生成
する効果を有する不可避不純物元素としてコスト高を招
かない範囲で極力含有しないように規制することが望ま
しい。
【0023】後述の焼鈍により炭窒化物の再固溶を図
り、固溶C,Nの確保が必要であるが、Tiの炭窒化物
生成能力は極めて高いため、Ti含有量は0.01%以
下に管理することが望ましい。
【0024】なお、Nb,Vも同様に炭化物や窒化物を
生成する効果を有する不可避不純物元素としてコスト高
を招かない範囲で極力含有しないよう規制することが望
ましい。
【0025】Si,Mn,P,S,Cu,Ni,Cr,
Moは、置換型固溶元素として鋼材の強度を上昇させる
不可避不純物元素である。Si、Pは特に固溶強化能が
高いため、Si≦0.05%、P≦0.03%好ましく
は0.015%以下に規制することが望ましい。Sは熱
間加工性を損なわないため0.02%以下、好ましくは
0.01%以下に規制することが望ましい。MnはSの
熱間加工性への悪影響を緩和する働きがあるので0.0
5%以上含有した方が好ましいが、過度の添加は固溶強
化による降伏強さの上昇を招くのでMn≦0.2%に規
制することが望ましい。
【0026】なお、Cu,Ni,Cr,Moも同様に置
換型固溶元素として引張強さを上昇させる不可避不純物
元素としてコスト高を招かない範囲で極力含有しないよ
う規制することが望ましい。 結晶粒径:平均フェライト粒径≧40μm フェライト平均結晶粒径が40μmを下回ると引張強さ
と降伏強さの上昇を招くので、下限は40μmである。
なお、鋼材の組織については、前述したように、フェラ
イト単相とすることにより、引張強さを低下させ高延性
を確保することができる。上記の成分組成範囲及び結晶
粒径範囲に調整することにより、塑性歪み履歴による降
伏強さの顕著な上昇を防止する観点から引張強さが27
0N/mm2 以下と低く、かつ50%以上の降伏比を有
し、さらに繰り返し塑性変形に耐える塑性変形能を確保
するために、65%以下の降伏比を有し、延性と靭性に
優れた制震ダンパー用鋼材を低コストで得ることが可能
となる。
【0027】このような特性を有する鋼材は以下の製造
方法により製造することができる。 (2)鋼材製造工程 (製造方法)上記(1)の成分組成範囲に調整した鋼を
溶製し鋼片または鋳片とした後、930〜1250℃に
加熱し、熱間圧延する際に、910〜1000℃の温度
域で圧下率10%以上かつ750〜900℃の温度域で
圧下率20%以上の圧下を施し、750℃以上で圧延を
終了する。その後、650℃以上900℃未満で焼鈍す
る。
【0028】a.圧延条件 上記した平均結晶粒径40μm以上のフェライト組織を
得るためには以下の加工熱処理技術を駆使する必要があ
る。
【0029】即ち、Ac3 温度以上のオーステナイト域
に相当する930〜1250℃に加熱しオーステナイト
域低温側で10%以上の圧下率で圧延加工を施し、オー
ステナイト組織の均一整粒化を図る。引き続き、フェラ
イト域に相当する750〜900℃の温度域で20%以
上の圧下を施し、フェライト組織に歪みを導入する。そ
の後の焼鈍熱処理でフェライト組織は前工程で付与され
た歪みの効果と相まって再結晶粒成長による結晶組織の
粗大化が達成され、平均粒径40μm以上の均一なフェ
ライト組織を得ることができる。本発明による鋼材のA
3 温度は概ね900℃以上である。上述の圧延条件を
容易に確保することを踏まえて加熱温度は930℃以
上、好ましくは950℃以上である。一方極端な高温加
熱はコスト高を招き、かつ組織の粗大化を助長するので
上限は1250℃である。
【0030】オーステナイト域の圧延にて再結晶による
整粒均一化を図り、これを通じて変態組織の均質化を達
成する。そのためには、910〜1000℃の温度域で
10%以上、好ましくは20%以上の圧下を施す。
【0031】フェライト域での圧下は焼鈍時の再結晶粒
成長のため750〜900℃の温度域で20%以上、好
ましくは40%以上の圧下を施さなければならない。圧
延仕上温度についても同様に、焼鈍時の再結晶粒成長の
ため750℃以上であり、Ac1 を超えない900℃以
下が好ましい。
【0032】b.焼鈍条件 再結晶粒成長による結晶組織の粗大化により、平均粒径
40μm以上のフェライト組織を得るため焼鈍熱処理を
施す。焼鈍温度はAc1 を超えない910℃以下でなく
てはならず、好ましくは900℃未満である。一方、6
50℃未満では所望のフェライト結晶組織が得られない
ため、下限は650℃である。なお、圧延仕上げ温度を
850℃以上に選択した場合は、その後の冷却を空冷以
下の徐冷とすることによりこれを焼鈍熱処理に換えるこ
とが可能である。
【0033】また、本発明が提供する制震部材用極軟鋼
は、鋼板に限らず通常の製鉄工程を経て製造される、型
鋼、棒鋼、パイプに対しても同様に適用できる。なお、
鋼板に適用する場合には、フェライト域での圧下を板厚
中央部まで十分に付与する観点から対象板厚は40mm
以下とすることが望ましい。以下に本発明の実施例を挙
げ、本発明の効果を立証する。
【0034】
【実施例】表1の化学成分の鋼(本発明鋼:A,E,
I、比較鋼:B〜D,F〜H)を溶製し鋼片とした後、
表2に示した条件(本発明例:No.2〜5,11,1
7、比較例:No.1,6〜10,12〜16)で熱間
圧延を施し板厚11〜30mmの本発明鋼及び比較鋼を
得た。全ての鋼に対して、熱間圧延に際して少なくとも
910〜1000℃の範囲で圧下率10%以上の圧延を
施した。これらの鋼材よりミクロ組織観察用試験片、引
張試験片及びシャルピー衝撃試験片を採取し、表2に示
した温度にて焼鈍を施した後、結晶粒径、降伏強さ、引
張強さ、0℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE0)
及びシャルピー破面遷移温度(vTs)を測定した。測
定結果を併せて表2に示す。
【0035】実施例No.1〜6は、極低炭素鋼による
比較例(No.1,6)及び本発明例(No.2〜5)
である。比較例No.1は、圧延仕上げ温度が高く、平
均フェライト粒径が40μmを下回った。そのため、降
伏比が本発明の目標である65%を超えた。
【0036】一方、本発明例No.2〜5及び比較例N
o.6は圧延条件が本発明の要件を満たしており、焼鈍
温度が本発明の要件を満たさない比較例No.6を除い
て、目標とする機械的性質が得られた。
【0037】実施例No.7,8は、炭窒化物生成元素
であるTiを含有した極低炭素鋼の比較鋼B,Cを用い
た比較例であり、実施例No.9は、同じく炭窒化物生
成元素であるVを含有した極低炭素鋼の比較鋼Dによる
比較例である。比較例No.7〜9は、TiまたはVを
含有することによりC,Nが固定され、降伏強さが低下
し降伏比が目標とした50%を下回った。また、粒界を
強化していた固溶C,Nが固定された影響として、靭性
の著しい低下が認められた。
【0038】実施例No.10〜12は、本発明の要件
を満たす本発明鋼Eによる比較例(No.10,12)
及び本発明例(No.11)である。圧延条件を変化さ
せたところ、本発明の要件を満たす本発明例No.11
は良好な機械的性質を示した。一方、圧延条件が本発明
の範囲外である比較例No.10,12は降伏比または
引張強さの上昇が認められる。
【0039】実施例No.13,14は、C量を高めた
比較鋼F,Gによる比較例である。いずれの場合も引張
強さと降伏比の上昇が認められる。実施例No.15,
16は、比較鋼Hによる比較例である。C含有量は高め
であるが、Ti添加により本発明鋼A,Eと同様の固溶
Cを確保しようとしたものである。比較例No.16に
て本発明の要件を満たす圧延・熱処理条件により、目標
とする引張強さと降伏比が得られたものの靭性の劣化が
顕著であった。実施例No.17は、Cが高めの本発明
鋼Iに本発明の要件を満たす圧延、焼鈍を施した本発明
例であり、目標とする機械的性質が得られた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】また、上記した実施例No.3,7,13
の鋼板(本発明例No.3、比較例No.7,13)に
ついては、塑性変形後の靭性(vE0,vTs)を調査
するため、5%の塑性歪みを付与した後のシャルピー衝
撃試験を実施した。さらに、塑性歪み付与後の経年変化
による靭性劣化を、5%塑性歪み付与後250℃にて時
効処理を施して同様に調査した。これらの調査結果を表
3に示す。
【0043】塑性変形後の靭性に関しては、本発明の要
件を全て満たし適度に固溶Cを含有する本発明例No.
3では、極めて良好な値が確保され、さらに時効処理を
施しても建設用鋼材として十分な性能が得られている。
【0044】しかし、比較例No.7では、固溶CがT
i添加により不足し、塑性変形により粒界脆化が助長さ
れ、これが起点となり靭性が劣化した。また、固溶Cが
過多に存在する比較例No.13では、塑性変形及びそ
の後の時効に伴う靭性劣化は顕著である。
【0045】
【表3】
【0046】
【発明の効果】本発明によれば鋼組成、結晶粒径及び製
造条件を特定することにより、降伏強さ、降伏比、及び
靭性のいずれも良好な制震部材用極軟鋼を低コストで提
供することができる。本発明の鋼材は、通常の建設用鋼
材に求められる靭性(vE0≧27J)はもとより繰り
返し塑性変形後においても十分な靭性(vE0≧27
J)を有しており、外力を自らの変形により主体的に吸
収する機能を有する延性と靭性に優れた制震ダンパー用
鋼材として好適であるなど、産業上の利用価値は大き
い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 潤一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.001〜0.006
    %と、sol.Al:0.005〜0.07%と、T.
    N.:0.001〜0.006%とを含有し、さらに、
    C%+N%≦0.008%を満たし、残部Fe及び不可
    避不純物よりなる鋼材であって、 引張強さが270N/mm2 以下でかつ降伏比が50〜
    65%であることを特徴とする、延性と靭性に優れた制
    震ダンパー用鋼材。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.001〜0.006
    %と、sol.Al:0.005〜0.07%と、T.
    N.:0.001〜0.006%とを含有し、さらに、
    C%+N%≦0.008%を満たし、残部Fe及び不可
    避不純物よりなるフェライト単相組織を有する鋼材であ
    って、 その平均フェライト粒径が40μm以上であり、引張強
    さが270N/mm2以下でかつ降伏比が50〜65%
    であることを特徴とする、延性と靭性に優れた制震ダン
    パー用鋼材。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の組成を有する
    鋼を930〜1250℃に加熱し、熱間圧延する際に、
    910〜1000℃の温度域で圧下率10%以上かつ7
    50〜900℃の温度域で圧下率20%以上の圧下を施
    し、750℃以上で圧延を終了する工程と、 熱間圧延された鋼材を、650℃以上900℃未満で焼
    鈍する工程と、 を備えたことを特徴とする、延性と靭性に優れた制震ダ
    ンパー用鋼材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103882300A (zh) * 2012-12-21 2014-06-25 鞍钢股份有限公司 一种160MPa高性能建筑结构用软钢及其制造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103882300A (zh) * 2012-12-21 2014-06-25 鞍钢股份有限公司 一种160MPa高性能建筑结构用软钢及其制造方法
CN103882300B (zh) * 2012-12-21 2016-05-11 鞍钢股份有限公司 一种160MPa高性能建筑结构用软钢及其制造方法

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