【発明の詳細な説明】
高密度ポリエチレンの繊維及び布及びそれらの製造方法発明の分野
本発明は、一般に、ポリエチレンから製造された繊維及び布に関する。本発明
はまたそのような繊維及び布を製造する方法に関する。より詳細に述べると、本
発明は、高密度の(0.940g/cm3より高い)ポリエチレンから製造された繊維及
び布、並びにそれらの製造方法に関する。発明の背景
これまで、繊維及び織物を形成するためのポリエチレンの使用は主に線状低密
度ポリエチレン(LLDPE)に限られてきた。LLDPEはエチレンともう1
つのオレフィン又はジエンとのコポリマーであり、典型的には0.940g/cm3未満
の密度を有する。
一般に、ポリエチレンの繊維と布は、ポリプロピレンから製造された繊維と布
の強度特性を欠いている。本技術分野においてよく知られているように、引張り
強度のような与えられたポリマーの特定の機械的特性はポリマーの密度と分子量
と共に変化する。従って、ポリエチレンとポリプロピレンの間の強度の差は、よ
り高密度で及び/又はより高分子量のポリエチレン樹脂を使用して繊維及び布を
製造することによって部分的には克服できた。さらに、特定の用途においては、
ポリエチレンの布はポリプロピレンの布よりも好ましい。例えば、医療用衣服は
ガンマ線を使用して殺菌されることがしばしばある。ガンマ線にさらされた場合
、ポリプロピレンの布は脆くなり臭いを発生する傾向があるが、ポリエチレンは
そうではないことはよく知られている。ポリエチレンの布はまた紫外線及びベー
タ線環境中における使用に対してポリプロピレン布よりも適している。
オレフィンを重合する様々な方法が開発されてきた。1940年代にはオレフィン
のラジカル重合が開発された。この技術は、高圧、高温、及びペルオキシドのよ
うなラジカル開始剤を使用してポリエチレンのようなポリマーを製造する。しか
しながら、ラジカル法は、一般に、様々な長さのランダムな枝分かれと約0.910
乃至約0.935g/cm3の範囲内の密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)を
製造する。
1950年代の終りから1960年代の初めにかけて「チーグラー−ナッタ触媒」の使
用が一般的になった。これらの触媒は、低圧、中圧、及び高圧法を含む広範囲の
プロセスにおいて使用されている。一般に、チーグラー−ナッタ触媒を使用して
エチレンを重合する場合、「線状」の生成物が得られ、そのポリマー分子は実質
的に枝分かれがない。そのような線状ポリオレフィンは、一般に、約0.941乃至
約0.965g/cm3の範囲内の比較的高い密度を有し、これは、より高度に枝分かれ
した詰まり具合の低い物質と比較して、ポリマー分子のより密集した充填と最小
のポリマー鎖の絡み合いによるものである。チーグラー−ナッタ触媒を使用して
エチレンをコモノマーとしての高級α−オレフィンと共重合させた場合、検出可
能な長鎖枝分かれを有していない生成物が得られるが、高級α−オレフィンコモ
ノマーの組み入れ量が増加するにつれて密度は低下する。そのような線状低密度
ポリエチレン(LLDPE)の密度は0.860〜0.940g/cm3の範囲内である。チ
ーグラー−ナッタ触媒を使用して製造されたポリマー種の特徴の1つはそれらの
非常に広い分子量分布である(MWD)である。
過去において高密度ポリエチレン樹脂から繊維を製造することにともなう問題
点は、与えられたMWDにおいてそのような繊維は、低密度ポリエチレンの繊維
よりも頻繁に加工中に破断したり「スラブ(slub)」を形成する傾向があること
である。「スラブ」はダイフェースの表面上又は繊維がダイを通って形成される
ときに繊維上に形成されるポリマー又は異物の小球である。そのような繊維の破
断又はスラブはウェブの品質を損ない、そして加工装置を停止させて製造時間の
損失とプロセスコストの上昇をもたらす可能性がある。
チーグラー−ナッタ型ポリエチレン中において非常に低分子量の種と非常に高
分子量の種が比較的多量に存在することが、高密度ポリエチレンの加工において
経験された加工上の問題の1つの原因である。非常に高分子量の物質が比較的多
量に存在すると、繊維の破断をもたらすポリマー鎖の絡み合いが増加するので、
繊維を許容可能な程度に小さい直径まで延伸する際にも問題を生じる。高密度ポ
リエチレンから繊維及び布を製造することにともなうもう1つの問題は、そのよ
うな繊維が堅くなる傾向があり、そしてきめの粗い又は堅い布をもたらすという
ことであった。そのような繊維はまた脆い可能性もある。従って、チーグラー−
ナッタ触媒によって製造された高密度ポリエチレンからの繊維の製造は従来的に
は商業的に非実用的であった。
米国特許第4,830,907号中において、ソーヤー(Sawyer)らは、チーグラー−ナ
ッタ触媒によって製造されたLLDPEの微細デニールの繊維への加工を記載し
ている。ソーヤーらは、約0.86乃至約0.95g/cm3の範囲内の密度を有するLL
DPEコポリマーから製造された約15デニール未満のマルチ−フィラメント組成
物をクレームに記載しているが、0.926g/cm3より大きい密度を有するLLDP
E樹脂からそのような組成物を製造する例は与えていない。
米国特許第5,068,141号中において、クボ(Kubo)らは、0.900乃至約0.940g/c
m3の密度を有するエチレン/オクテン−1LLDPEコポリマーから製造された
布を記載している。しかしながら、クボらは、形成されたフィラメントの重量の
許容可能な減少を達成するために彼等の発明中で使用されるLLDPEの密度を
0.940にはっきりと限定しており、0.937g/cm3の樹脂からの繊維の製造しか例
示していない。
重合プロセスにおいてチーグラー−ナッタ触媒の代わりにメタロセンのような
単座(single-site)触媒を使用すると、高密度ポリエチレンの加工上の問題の幾
つかが解決される。メタロセン触媒系を使用して製造されたポリエチレンは、チ
ーグラー−ナッタ触媒を使用して製造されたポリエチレンと比較して、より狭い
分子量分布とより均一なコモノマー分布を有する。そのような狭い分子量分布を
有するポリエチレンは、一般に高い平均分子量のものであるが、ストランドの形
成において問題を生じる低分子量フラクションを含まないポリマーを有効に提供
する。これらの狭い分子量分布の生成物は、低分子量フラクションを含んでいな
いので、一般により高い水準の結晶性を有する。しかしながら、これらのポリエ
チレンは高分子量の種を大きな割合で有していないので、従来技術の高密度ポリ
エチレンよりも容易に繊維を小さい直径まで延伸することができ、従って、繊維
は許容可能な程度に柔軟であり、体の動きに従って曲がることができる。
デービー(Davey)らは、米国特許第5,322,728号中において、繊維の形成におい
てメタロセン触媒系を使用して製造されたLLDPEを使用することを記載して
いるが、樹脂の密度を約0.86乃至約0.93g/cm3に限定している。
加工性又は布の品質を犠牲にすることなく、低密度ポリエチレン樹脂から製造
された繊維よりも改善された機械的特性を達成するために高密度ポリエチレン樹
脂から繊維又は布を製造することは望ましいだろう。発明の概要
本発明は、エチレンのホモポリマー又はエチレンとコモノマーのコポリマーの
新規な繊維であって、前記ポリマーが少なくとも0.940g/cm3の密度、約3.6未
満のMWD、約4乃至約1000の範囲内のメルトインデックス、及び約2.2未満の
Mz/Mwを有する繊維、並びにこれらの繊維を含む布を提供する。本発明は、
また、そのような繊維及び布を製造するための新規な方法を提供する。これらの
繊維及び布は改善された加工性及び機械的特性を有し、類似のメルトインデック
スと密度を有しているがチーグラー−ナッタ触媒で製造されたポリエチレン樹脂
からの繊維及び布よりも良好な触感を有する。ポリプロピレン繊維と異なり、こ
れらの繊維はガンマ線殺菌に耐えることができ、そのため医療用の用途において
特に有用である。それらから製造された繊維及び布は、ポリプロピレンの繊維及
び布と異なり、紫外線及びベータ線環境にも耐えることができる。良好な加工性
は、チーグラー−ナッタ触媒で製造されたポリエチレン繊維よりも細い繊維の形
成を可能にし、このことはより柔軟でよりドレープ性に富んだ布をもたらす。高
い密度は、加工性又は布の品質を犠牲にすることなく、特定の機械的特性を最大
にすることができる。これらの繊維は、溶融紡糸、溶融ブローン(meltblown)、
及びスパンボンド(spunbond)法を含む多くの方法によって製造することができる
。これらの繊維は、比較的高い加工速度において、チーグラー−ナッタ触媒で製
造されたポリエチレンよりも、少ない繊維の破断及び少ないスラブしか示さない
。
そのようなポリエチレン繊維が高密度の樹脂から容易に形成できるというのは
驚くべきことである。また、本発明の繊維がそのような柔軟でドレープ性に富ん
だ布を形成し、チーグラー−ナッタ触媒又はその他の多座触媒系を使用して製造
された類似のメルトインデックス及び密度を有するポリマーと比較して改善され
た強度と伸びを示すことも驚くべきことである。多座触媒を使用して製造された
ポリマーを使用して製造された類似の材料と比較したときの改善されたプロセス
の性能も利点である。好ましい実施態様の説明 樹脂の製造において使用される触媒
本発明において使用されるポリエチレン樹脂は担持メタロセン触媒を使用して
製造するのが好ましい。メタロセン触媒は、典型的には、式:
[L]mM[A]n
から誘導され得る嵩高な配位子の遷移金属化合物であり、式中、Lは嵩高の配位
子であり、Aは少なくとも1つのハロゲン脱離基(leaving group)であり、Mは
遷移金属であり、m及びnは、総配位子原子価が遷移金属原子価に相当するよう
なものである。好ましくは、触媒は、その化合物が1+の原子価状態にイオン化
されるような4配位体(co-ordinate)である。
配位子L及びAは互いに架橋されていてもよく、2つの配位子L及び/又はA
が存在する場合、それらは架橋されてもよい。メタロセン化合物は、シクロペン
タジエニル配位子又はシクロペンタジエンから誘導された配位子でよい2つ以上
の配位子Lを有する完全サンドイッチ型(full-sandwich)化合物、又はシクロ
ペンタジエニル配位子又は誘導された配位子である1つの配位子Lを有する半サ
ンドイッチ型(half-sandwich)化合物でよい。
メタロセン化合物は、基(これは環状でもよい)を形成する多種にわたる結合
原子、好ましくは炭素原子を含む。嵩高な配位子はシクロペンタジエニル配位子
又はシクロペンタジエニル誘導配位子(これは単環又は多環でよい)、又は遷移
金属にη-5結合することができる他の配位子でよい。1つ以上の嵩高の配位子が
遷移金属原子にπ−結合されてもよい。遷移金属原子は、第4族、第5族、又は
第6族遷移金属及び/又はランタニド及びアクチニド系列からの遷移金属でよい
。遷移金属から分離できる脱離基のような少なくとも1つのハロゲンようなその
他の配位子も遷移金属に結合できる。メタロセン触媒及び触媒系の非限定例は、
例えば、米国特許第4,530,914号、第5,124,418号、第4,808,561号、第4,897,455
号、欧州特許公開第0 129 368号、欧州特許公開第0 520 732号、欧州特許公開第
0 277 003号、欧州特許公開第0 277 004号、欧州特許公開第0 420 436号、PC
T国際公開WO91/04257号、WO92/00333号、WO93/08221号、及びWO93
/08199号に記載されている。
メタロセン型の触媒系の種々の形態が本発明の重合方法において使用できる。
エチレンの重合用の技術におけるメタロセン触媒の開発の例としては、ホエル(H
oel)らの米国特許第4,871,705号、ユーイン(Ewen)らの第4,937,299号、及び1989
年7月26日に公開された欧州特許公開第0 129 368号、及びウェルボーン・ジュ
ニア(Welborn,Jr)の第5,017,714号及び第5,120,867号の開示がある。これらの
刊行物は、メタロセン触媒の構造を教示しており、助触媒としてアルモキサンを
含む。アルモキサンを製造する種々の方法があり、その例1つが米国特許第4,66
5,208号に記載されている。
さらに、本発明のメタロセン触媒成分は、モノシクロペンタジエニルヘテロ原
子含有化合物でもよい。このヘテロ原子は、アルモキサン単独又はアルモキサン
とイオン化活性剤によって活性化され、本発明において有用なポリマーを製造す
るための活性な重合触媒系を生成する。これらのタイプの触媒系は、例えば、P
CT国際公開WO92/00333号、WO94/07928号、及びWO91/04257号、米国
特許第5,057,475号、第5,096,867号、第5,055,438号、及び第5,227,440号、及び
欧州特許公開第0 420 436号に記載されている。その他に、本発明において有用
なメタロセン触媒は、非シクロペンタジエニル触媒成分、又は遷移金属と組み合
わせたボロール(boroles)又はカルボライド(carbollides)のような補助配位
子を含むことができる。さらに、これらの触媒及び触媒系が、米国特許第5,064,
802号、1993年4月29日に公開されたPCT公開WO93/08221及びWO93/0819
9に記載されたものであることは本発明の範囲外ではない。
本発明の触媒の好ましい遷移金属成分は、第4族のもの、特にジルコニウム、
チタニウム、及びハフニウムのものである。遷移金属はどのような酸化状態でも
よく、好ましくは+3又は+4又はそれらの混合物である。本発明の触媒系は全
て予備重合するか、或いは添加剤又は掃去剤と共に使用して、触媒の生産性を改
善することができる。
本明細書では、「メタロセン」という用語は、1つ以上の未置換の又は置換さ
れたシクロペンタジエニル又はシクロペンタジエニル部分を遷移金属と共に含む
ものとして定義される。1つの態様においてメタロセン触媒成分は、一般式(C
p)mMeRnR′p(式中、少なくとも1つのCpは未置換又は好ましくは置換
されたシクロペンタジエニル環、より好ましくはモノ置換シクロペンタジエニル
環であり;Meは、第4族、第5族、又は第6族遷移金属であり;R及びR′は
、独立して、ハロゲン、1乃至20の炭素原子を有するヒドロカルビル基又はヒド
ロカルボキシル基から選択され;m=1〜3であり、n=0〜3であり、p=0
〜3であり、そしてm+n+pの合計はMeの酸化状態に等しい)で表わされる
。
もう1つの態様においては、メタロセン触媒成分は、式:
(C5R′m)pR″s(C5R′m)MeQ3-p-x又は
R″s(C5R′m)2MeQ′
[式中、Meは、第4族、第5族又は第6族遷移金属であり、C5R′mは置換さ
れたシクロペンタジエニルであり、各R′は、同一か又は異なり、水素、1乃至
20の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、
又はアリールアルキル基であるか、又は2つの炭素原子が一緒になってC4乃至
C20個の環の部分を形成し、R″は、2つの(C5R′m)環を架橋するか又は1
つの(C5R′m)環とMeを架橋する、炭素、ゲルマニウム、ケイ素、燐、又は
窒素原子含有基の1つ以上又は組み合わせであり、pが0のときは、xが1であ
り、pが0以外のときはxは常に0であり、各Qは、同じか又は異なり、1乃至
20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール又
はアリールアルキル基、又はハロゲンであり、Q′は1乃至20個の炭素原子を有
するアルキリデン基であり、sは0又は1であり、sが0のときはmは5であり
、pは0、1又は2であり、sが1のときは、mは4であり、pは1である]で
表される。
任意のメタロセン触媒成分を本発明中において使用することができるが、モノ
置換メタロセンはジ置換メタロセンよりも好ましい。しかしながら、ジ置換及び
ポリ置換メタロセンも従来技術の方法に従って製造されたチーグラー−ナッタ触
媒系のような対応する触媒系よりも良好である。さらに別の実施態様においては
、本発明の好ましいメタロセン触媒成分は、式:
(C5HnR′)R″s(C5HnR′)MeQ2及び
R″(C5HnR′)2MeQ′
によって表され、式中、Meは、第4族、第5族又は第6族遷移金属であり、各
R′は、同一か又は異なり、水素、1乃至20の炭素原子を有する、アルキル、ア
ルケニル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、R″
は、2つの(C5H4R′)環を架橋する、炭素、ゲルマニウム、ケイ素、燐、又
は窒素原子含有基の1つ以上又は組み合わせであり、各Qは、同じか又は異なり
、1乃至20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルア
リール又はアリールアルキル基、又はハロゲンであり、Q′は1乃至20個の炭素
原子を有するアルキリデン基であり、sは0又は1であり、sが1のときはnは
3であり、sが0のときは、nは4である。
もう1つの実施態様においては、メタロセン触媒成分は式:
R″(C5H3R′)2MeQ2
によって表され、式中、Meは、第4族、第5族又は第6族遷移金属であり、各
R′は、同一か又は異なり、水素、1乃至20の炭素原子を有する、アルキル、ア
ルケニル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、R″
は、(C5R′m)環とMeを架橋する、炭素、ゲルマニウム、ケイ素、燐、又は
窒素原子含有基の1つ以上の組み合わせであり、各Qは、同じか又は異なり、1
乃至20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリー
ル又はアリールアルキル基、又はハロゲンである。
本明細書において、「助触媒」及び「活性剤」という用語は、互換的に用いら
れ、嵩高の配位子遷移金属化合物、又は先に定義したメタロセンを活性化するこ
とができる化合物又は成分として定義される。アルモキサンの使用に加えて、中
性のメタロセン化合物をイオン化する、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(
ペンタフルオロフェニル)硼素のような、イオン化イオン性活性剤又は化合物の
使用も本発明の範囲内である。そのようなイオン化化合物は、活性プロトン、又
はイオン化イオン性化合物の残存するイオンと会合しているが配位していない
か、又はゆるく配位しているだけのある種の他のカチオンを含むことができる。
そのような化合物は、欧州特許公開公報第0 520 732号、第0 277 003号、及び第
0 277 004号、及び米国特許第5,153,157号、第5,198,401号、及び第5,241,025号
に記載されている。
本明細書中において、「担体」又は「支持体」という用語は互換的に用いられ
、例えば、タルク、無機酸化物、無機塩化物、及びポリオレフィンのような樹脂
支持体物質又は高分子化合物又はその他の有機支持体物質のようないずれかの支
持体物質でよく、吸収又は吸着された水を含むことができる多孔質支持体物質が
好ましい。
好ましい支持体物質は無機酸化物物質であり、元素の周期表の第2、3、4、
5、13又は14族の金属酸化物からの物質を含む。好ましい態様では、触媒支持体
物質には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ及びそれらの混合物が含まれる
。単独で又はシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナと組み合わせて用いられ得る
他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。ポリエチレンの
ような微粉砕ポリオレフィン又はポリマー化合物又は二塩化マグネシウムのよう
な無機化合物などのその他の適する化合物も使用できる。
本発明によれば、支持体物質は、支持体物質とその中に含まれる水との総重量
に基づいて約3重量%乃至約27重量%の範囲内の水含有率を有するのが好ましく
、約7重量%乃至約15重量%の範囲内がより好ましく、約9重量%乃至約14重量
%の範囲内が最も好ましい。支持体物質内に含まれる水の量は、強熱減量(LO
I)のような本技術分野で公知の技術によって測定することができる。樹脂を製造するのに使用される触媒の調製
本発明の好ましい触媒系の製造方法においては、支持体物質を初めに、上述し
たような、メタロセン触媒成分用の活性剤を形成することができる成分と接触さ
せる。
1つの態様においては、好ましい成分は第1、2、3、及び4族有機金属アル
キル、アルコキシド、及びハリドから成る有機金属化合物である。好ましい有機
金属化合物は、アルキルリチウム、アルキルマグネシウム、アルキルマグネシウ
ムハリド、アルキルアルミニウム、アルキル珪素、珪素アルコキシド、及びアル
キル珪素ハリドである。より好ましい有機金属化合物は、アルキルアルミニウム
とアルキルマグネシウムである。最も好ましい有機金属化合物は、アルキルアル
ミニウム、例えば、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリメチルアルミニ
ウム(TMAL)、トリ−イソブチルアルミニウム(TIBAL)、及びトリ−
n−ヘキシルアルミニウム(TNHAL)等である。
最も好ましい有機金属化合物は、本発明の水含有支持体物質と接触したとき以
下の一般式によって表されるオキシ含有有機金属化合物を形成するものである:
環式化合物である(R−Al−O)n及び
線状又は非環式化合物であるR(R−Al−O)nAlR2及び
多次元構造体であるそれらの混合物。これらの一般式中おいて、RはC1乃至C2 0
アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシ
ル、オクチル、ノニルであり、nは約1乃至20の整数である。最も好ましいオキ
シ含有有機金属化合物はアルモキサンであり、例えば、メチルアルモキサン及び
/又はエチルアルモキサンである。
好ましい実施態様においては、支持体物質は有機金属化合物の溶液に、有機金
属化合物を含む溶液の温度が支持体物質の導入の間に実施的に一定に保たれ、そ
れによって温度が常に後述の温度範囲内にあるように、導入される。
機械式撹拌機を備えた1リットルのフラスコに、ヘプタン中のTMAL溶液(
15重量%)の180 ml及び90 mlのヘプタンを入れた。この溶液を冷却し45°F(7.
2℃)に維持した。12.5重量%の水を含むシリカゲル(70ミクロンの平均粒度を
有するダビソン(Davison)D-948)の40gのサンプルをフラスコにゆっくりと70分
間にわたって添加した。TMAL/H2Oのモル比は0.91であった。次に、0.9g
の(n-ブチルシクロペンタジエニル)2ZrCl2を20 mlのヘプタン中でスラリ
ー化し、その後容器に添加した。この混合物を165°F(74℃)で1時間反応させ
た。反応の終了時に、窒素パージによって固体を乾燥させた。調製の終りに、さ
らさらの固体が得られた。樹脂の製造に使用される方法
本発明の方法において使用される樹脂は連続式スラリー法を使用して製造する
のが好ましい。そのような連続式スラリー重合方法は当業者には公知である。
スラリー重合方法は一般に約1乃至約500気圧及びそれ以上の範囲内の圧力及び
−60乃至約280℃の範囲内の温度を使用する。スラリー重合においては、固体の
粒状のポリマーの懸濁液が液体の重合媒体中に形成され、これにエチレン及びコ
モノマーそしてしばしば水素が触媒と共に添加される。重合媒体中において使用
される液体はアルカン又はシクロアルカン、或いはトルエン、エチルベンゼン、
又はキシレンのような芳香族炭化水素であるのが好ましい。使用される媒体は、
重合条件下で液体であり比較的不活性でなければならない。ヘキサン又はイソブ
タンを使用するのが好ましい。第I表は、本発明のポリエチレン樹脂グレード(
樹脂A及び樹脂B)を製造するのに使用される運転パラメーターを示す。樹脂A
及び樹脂Bは少量のヘキセンコモノマーを含むことに注目されたい。当業者は、
高圧、中圧、低圧、塊状相、気相、及び溶液相重合のようなその他の重合プロセ
スも樹脂の製造に使用できることを理解するだろう。樹脂の特性
本発明の好ましい実施態様においては、エチレンと1種以上のコモノマーとの
コポリマーを含む繊維が提供され、このコポリマーは0.940g/cm3より大きい密
度、好ましくは0.945g/cm3より大きい密度、そして最も好ましくは0.950g/c
m3より大きい密度、3.6未満のMWD、及び約4乃至約1000のメルトインデック
ス(MI、ASTM D1238(E))を有する。当業者は、これらと同じ特性を
有するホモポリマーも使用できることを理解するだろう。
コモノマーが使用される場合、各々のコモノマーは3乃至20個の炭素原子を有
するのが好ましく、3乃至10個の炭素原子を有するのがより好ましく、例えば、
プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン又
はそれらの組み合わせを含む。好ましい樹脂は検出可能な長鎖枝分かれを有して
いない。
一般に、MWD、即ち、多分散性指数(Mw/Mn)が狭ければ狭いほど繊維
の製造が良好であり、従って、好ましいMWD範囲は約3.6未満であり、1.8乃至
3.5のMWDが好ましく、2.0乃至3.1のMWDが最も好ましい。
分子量分布曲線の三次モーメント(Mz)の二次モーメント(Mw)に対する
比率は、ポリマー中に存在する非常に高分子量の鎖と非常に低分子量の鎖の割合
の目安を与える。上述したように、非常に低分子量の鎖を大きな割合で有するポ
リマーは繊維の加工中にスラブを形成する傾向があり、一方、非常に高分子量の
鎖が大きな割合で存在すると布の品質が悪くなり、許容可能なほど小さい直径ま
で繊維を延伸するのが難しくなる。従って、Mz/Mwが小さければ小さいほど
繊維の加工は良好になる。本発明の繊維及び布に対して好ましいMz/Mw比は
約2.2未満である。約2.0未満のMz/Mw比がより好ましく、約1.9未満のMz
/Mw比が最も好ましい。
ポリマー樹脂の分子の分子量分布を調整することができる非常に望ましい特性
を作り出すことに加えて、メタロセン型触媒は、チーグラー−ナッタ触媒よりも
、ポリマーの主鎖内においてより均一に異なるサイズのコモノマーを組み入れる
ことできるという望ましい特性も有する。また、メタロセン型触媒は、例えば、
高圧、中圧、低圧、溶液相、塊状相、スラリー相、及び気相重合を含む異なる重
合プロセスにおいても有利に使用することができる。
ポリマーの好ましいMIは繊維が形成される方法に依存する。本発明の繊維は
、スパンボンド(spunbond)、溶融ブローン(meltblown)、及び溶融紡糸法を含む
、本技術分野で公知の様々な方法を使用して形成することができる。スパンボン
ド法による製造に対しては、好ましい範囲は4乃至60であり、約15乃至約35のM
Iがより好ましく、約25乃至約30のMIが最も好ましい。溶融ブローン法に対し
ては、好ましいMIは約10乃至約1000である。溶融紡糸法に対しては、好ましい
MIは約4乃至約150である。第II表は、本発明において使用された樹脂と幾つ
かの比較用の市販の樹脂に対する融点、分子量、及び分子量分布に関するデータ
を示す。メルトインデックスと密度はそれぞれASTM D−1238(E)と
ASTM D−1505に従って測定した。
第II表に示されているように、樹脂A及び樹脂BのMWDはそれぞれ3.1と3.3
であり、これと比較してチーグラー−ナッタ型高密度ポリエチレン樹脂(テキサ
ス州、ヒューストンのエクソン・ケミカル・カンパニー(Exxon Chemical Compan
y)から市販されているHD−6705)の値は4.0であった。また、樹脂A及び
樹脂Bの分子量分布曲線の「テール(tail)」、即ち、高分子量と低分子量の末端
はチーグラー−ナッタ型ポリエチレンのものよりもかなり小さかった。樹
脂A及び樹脂Bがそれぞれ1.81と1.86のMz/Mw値を有するのに対し、HD−
6705樹脂が2.74のMz/Mw値を有することに注目されたい。
当業者は、ポリエチレンサンプルのMWDを決定するのに利用できる幾つかの
方法が存在することを理解するだろう。第II表に示されている分子量は、145℃
で運転されるウルトラスチロゲル(ultrastyro gel)カラムを備えたウォーターズ
・ゲル・パーミエーション・クロマトグラフを使用して測定した。トリクロロベ
ンゼンを溶離溶媒として使用した。校正基準は、500の分子量から5,200,000の分
子量までの正確な既知分子量を有する16種のポリスチレンであった。NBS14
75ポリスチレンも校正基準として使用した。
本発明の繊維の好ましい用途は、布、特に不織布の形成である。本発明の繊維
から形成された布は良好な機械的特性と良好なドレープ性を有することが判明し
た。そのような繊維は衣類、例えば、外科用ドレープ、医療用ガウン、及びおむ
つの裏地、並びにフィルター及び吸収材を製造するのに使用できる。樹脂から製造された繊維及び布の特性
スパンボンド法及び溶融ブローン法によって樹脂A及び樹脂Bから繊維を形成
した。比較のために、HD−6705樹脂及びEXACT(登録商標)4023
樹脂からも繊維を形成した。EXACT(登録商標)4023はメタロセン触媒
を使用して製造されたエチレン/ブテンコポリマーであり、テキサス州ヒュース
トンのエクソン・ケミカル・カンパニーから市販されている。第III表は、スパ
ンボンド法用の加工条件を示す。スパンボンド不織布は、ライフェンハウザー・
カンパニー(Reifenhauser Company)製の1メートルライコフィル・ライン(Reico
fil line)を使用して製造した。押出し機のサイズは7cm(2.75インチ)であり
、30:1の長さ:直径比を有していた。3719個のダイプレート穴が存在し、各々
の穴が0.4 mmの直径と4/1のL/D比を有していた。スパンボンド法は布の製
造の技術分野においてよく知られている。一般に、連続の繊維が押し出され、エ
ンドレスのベルトの上におかれ、その後(しばしば加熱されたカレンダーロール
によって)結合される。スパンボンド法の概要は、ノックスビルのテネシー大学
のTANDECによって後援され、1990年7月30日〜8月3日に開かれたProcee
dings Eighth Annual Non-Wovens Workshopにおいて発表されたWadsworth,
L.C.とGoswami,B.C.の“Non-Woven Fabrics: Spunbonded and Meltblown Pro
cesses”から得られる。
樹脂A及び樹脂Bから製造されたスパンボンド繊維は、チーグラー−ナッタに
基づく繊維及び布よりも、多くの点で優れていた。第III表は、試験された樹脂
の各々の2つのサンプルについてスパンボンド法のデータを与えている。第III
表中のデータは、本発明の高密度ポリエチレン樹脂が比較例のチーグラー−ナッ
タに基づく材料よりも長く運転され加工上の問題も少ないことを示している(樹
脂Aの試験時間の方が長いにもかかわらず、樹脂Aのスラブは0であるのに対し
てHD−6705のスラブは2である)。全体として、本発明の樹脂は良好に繊
維に紡糸され、チーグラー−ナッタに基づく樹脂よりも、定性的により容易に繊
維に形成された。
また、得られた繊維から製造された布は、チーグラー−ナッタに基づく繊維か
ら製造された布よりもきめの粗さが少なく、低密度ポリエチレンの繊維及び布に
通常はつきものの「油っぽい(greasy)」感触がない。
第IV表は、スパンボンド法によって製造された布に対する物理的特性試験の結
果を示す。破断までのストリップの引張り力と伸びはASTM D−1682−
75を使用して測定した。スパンボンド布の測定はユナイテッド・モデル(Unite
d Model)SSTM−1−E−PC引張り試験機上で、13cm(5インチ)のジョー
ギャップと13cm/分(5インチ/分)のクロスヘッド速度を使用して行った。ト
ータルハンド(total hand)は、TAPPI 4998 CM−85試験法に従っ
て、スウィング・アルバート・ハンドル−オー−メーター(Thwing Albert Handl
e-O-Meter)211−5型を使用し、20cm×20cm(8インチ×8インチ)のサンプ
ル0.64cm(0.25インチ)のスロットを使用して測定した。
第IV表から明らかなように、布の与えられた基本重量に対して、本発明の樹脂
は、同じメルトインデックスと密度を有するチーグラー−ナッタに基づく対応物
よりも、高い引張り強さ(破断点引張り力)とより大きい破断点伸びを有する繊
維を製造する。従って、本発明の布は、チーグラー−ナッタ触媒によって製造さ
れた樹脂から製造された布よりも強くより伸びやすい。また、本発明の繊維は、
EXACT(登録商標)の繊維よりも改善された機械的特性を有している。
溶融ブローン法を使用して繊維を紡糸することによって別の試験を行った。第
V表は、溶融ブローン法のためのプロセス条件を示す。溶融ブローン技術も布の
製造の技術分野においてよく知られている。溶融ブローン法の概要は、ノックス
ビルのテネシー大学のTANDECによって後援され、1990年7月30日〜8月3
日に開かれたProceedings Eighth Annual Non-Wovens Workshopにおいて発表さ
れたWadsworth,L.C.とGoswami,B.C.の“Non-Woven Fabrics: Spunbonded an
d Meltblown Processes”、及び“Meltblown Process”,Meltblown Technology
Today、カリフォルニア州サンフランシスコのMiller Freeman Publications,I
nc.1989年、7〜12頁から得られる。一般に、溶融ブローン法においては、典型
的には高速で高温の細長化空気と共に、不連続の繊維が押し出され、その後コレ
クタードラム上で回収される。繊維は、典型的には、繊維の絡み合い及び残留の
押出し熱と高温の細長化空気に由来する熱結合の組み合わせによってお互いに保
持される。布の最終用途に応じて、さらに押出し後の結合が必要な場合とそうで
ない場合がある。この試験は、51cm(20インチ)のアキュアレート・プロダクツ
・溶融ブローン・ライン(Accurate Products Meltblown Line)を使用して行っ
た。押出し機は、30:1の長さ:直径比を有する5cm(2インチ)のデービス・
スタンダード(Davis Standard)であった。ダイのノズルは501個のダイホールを
有していた。各々のダイホールの直径は0.4 mm(0.015インチ)であった。ダイ
長さは15:1であり、エアーギャップは1.5mm(0.060インチ)に設定した。
第VI表は、溶融ブローンプロセスによって製造された布についての物理的特性
の結果を示す。溶融ブローン布の引張り強さ及び伸びの試験はASTM 方法1
682−75(スパンボンド布の場合と同じ方法)に従い、シー・ステーション
・ユナイテッド(C station United)7−VI型引張り試験機を使用して行った。ト
ータル・ハンドはスパンボンド布に使用したのと同じ装置と方法によって測定し
た。第VI表に示されているように、樹脂A及びBから製造された布は、ずっと高
いメルトインデックスにおいてさえ、チーグラー−ナッタに基づく布と同じか又
はより改善された機械的特性を有している(HD−6705の20MIと比較して
樹脂Bは64MI)。さらに本発明の繊維は、チーグラー−ナッタに基づく樹脂
から製造された繊維よりも細かった。これは、多座触媒によって製造された対応
物(HD−6705)と比較したとき、樹脂AのMWDがより狭くMz/Mw比
がより小さいことの結果である。樹脂Bの低い粘度はより細い繊維の製造に対し
ても貢献している。狭いMWDと低い粘度(MI>100)の組み合わせはこのプ
ロセスにおいて理想的である。
実質的に100重量%のポリエチレンホモポリマー又はコポリマーの使用が繊維
の製造において好ましい。しかしながら、樹脂A及びBを、LLDPE、PP、
EVA、EMA、EPR、EPDM、SBS、SIS、SEBSなどのような極
性及び非極性のポリオレフィン及び熱可塑性ゴムとブレンドでき、これも本発明
の範囲内であることは理解されるだろう。本発明の高密度ポリエチレン樹脂は、
加工助剤、顔料、染料、安定剤、及び難燃剤のような添加剤も含むことができる
。
当業者は、本発明の範囲から離れることなく、本明細書に記載した好ましい態
様の多くの改良を思い付くだろう。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年11月22日
【補正内容】
スラリー重合方法は一般に約1乃至約507バール(約1乃至約500気圧)及びそれ
以上の範囲内の圧力及び−60乃至約280℃の範囲内の温度を使用する。スラリー
重合においては、固体の粒状のポリマーの懸濁液が液体の重合媒体中に形成され
、これにエチレン及びコモノマーそしてしばしば水素が触媒と共に添加される。
重合媒体中において使用される液体はアルカン又はシクロアルカン、或いはトル
エン、エチルベンゼン、又はキシレンのような芳香族炭化水素であるのが好まし
い。使用される媒体は、重合条件下で液体であり比較的不活性でなければならな
い。ヘキサン又はイソブタンを使用するのが好ましい。第I表は、本発明のポリ
エチレン樹脂グレード(樹脂A及び樹脂B)を製造するのに使用される運転パラ
メーターを示す。樹脂A及び樹脂Bは少量のヘキセンコモノマーを含むことに注
目されたい。当業者は、高圧、中圧、低圧、塊状相、気相、及び溶液相重合のよ
うなその他の重合プロセスも樹脂の製造に使用できることを理解するだろう。樹脂の特性
本発明の好ましい実施態様においては、エチレンと1種以上のコモノマーとの
コポリマーを含む繊維が提供され、このコポリマーは0.940g/cm3より大きい密
度、好ましくは0.945g/cm3より大きい密度、そして最も好ましくは0.950g/c
m3より大きい密度、3.6未満のMWD、及び約4乃至約1000のメルトインデック
ス(MI、ASTM D1238(E))を有する。当業者は、これらと同じ特性を
有するホモポリマーも使用できることを理解するだろう。
コモノマーが使用される場合、各々のコモノマーは3乃至20個の炭素原子を有
するのが好ましく、3乃至10個の炭素原子を有するのがより好ましく、例えば、
プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン又
はそれらの組み合わせを含む。好ましい樹脂は検出可能な長鎖枝分かれを有して
いない。
一般に、MWD、即ち、多分散性指数(Mw/Mn)が狭ければ狭いほど繊維
の製造が良好であり、従って、好ましいMWD範囲は約3.6未満であり、1.8乃至
3.5のMWDが好ましく、2.0乃至3.1のMWDが最も好ましい。
分子量分布曲線の三次モーメント(Mz)の二次モーメント(Mw)に対する
比率は、ポリマー中に存在する非常に高分子量の鎖と非常に低分子量の鎖の割合
脂A及び樹脂Bがそれぞれ1.81と1.86のMz/Mw値を有するのに対し、HD−
6705樹脂が2.74のMz/Mw値を有することに注目されたい。
当業者は、ポリエチレンサンプルのMWDを決定するのに利用できる幾つかの
方法が存在することを理解するだろう。第II表に示されている分子量は、145℃
で運転されるウルトラスチロゲル(ultrastyro gel)カラムを備えたウォーターズ
・ゲル・パーミエーション・クロマトグラフを使用して測定した。トリクロロベ
ンゼンを溶離溶媒として使用した。校正基準は、500の分子量から5,200,000の分
子量までの正確な既知分子量を有する16種のポリスチレンであった。NBS14
75ポリスチレンも校正基準として使用した。
本発明の繊維の好ましい用途は、布、特に不織布の形成である。本発明の繊維
から形成された布は良好な機械的特性と良好なドレープ性を有することが判明し
た。そのような繊維は衣類、例えば、外科用ドレープ、医療用ガウン、及びおむ
つの裏地、並びにフィルター及び吸収材を製造するのに使用できる。樹脂から製造された繊維及び布の特性
スパンボンド法及び溶融ブローン法によって樹脂A及び樹脂Bから繊維を形成
した。比較のために、HD−6705樹脂及びEXACT(登録商標)4023
樹脂からも繊維を形成した。EXACT(登録商標)4023はメタロセン触媒
を使用して製造されたエチレン/ブテンコポリマーであり、テキサス州ヒュース
トンのエクソン・ケミカル・カンパニーから市販されている。第III表は、スパ
ンボンド法用の加工条件を示す。スパンボンド不織布は、ライフェンハウザー・
カンパニー(Reifenhauser Company)製の1メートルライコフィル・ライン(Reico
fil line)(商標登録)を使用して製造した。押出し機のサイズは7cm(2.75イ
ンチ)であり、30:1の長さ:直径比を有していた。3719個のダイプレート穴が
存在し、各々の穴が0.4 mmの直径と4/1のL/D比を有していた。スパンボン
ド法は布の製造の技術分野においてよく知られている。一般に、連続の繊維が押
し出され、エンドレスのベルトの上におかれ、その後(しばしば加熱されたカレ
ンダーロールによって)結合される。スパンボンド法の概要は、ノックスビルの
テネシー大学のTANDECによって後援され、1990年7月30日〜8月3日に開
かれたProceedings Eighth Annual Non-Wovens Workshopにおいて発
表されたWadsworth,L.C.とGoswami,B.C.の“Non-Woven Fabrics: Spunbonded a
nd Meltblown Processes”から得られる。
樹脂A及び樹脂Bから製造されたスパンボンド繊維は、チーグラー−ナッタに
基づく繊維及び布よりも、多くの点で優れていた。第III表は、試験された樹脂
の各々の2つのサンプルについてスパンボンド法のデータを与えている。第III
表中のデータは、本発明の高密度ポリエチレン樹脂が比較例のチーグラー−ナッ
タに基づく材料よりも長く運転され加工上の問題も少ないことを示している(樹
脂Aの試験時間の方が長いにもかかわらず、樹脂Aのスラブは0であるのに対し
てHD−6705のスラブは2である)。全体として、本発明の樹脂は良好に繊
維に紡糸され、チーグラー−ナッタに基づく樹脂よりも、定性的により容易に繊
維に形成された。
また、得られた繊維から製造された布は、チーグラー−ナッタに基づく繊維か
ら製造された布よりもきめの粗さが少なく、低密度ポリエチレンの繊維及び布に
通常はつきものの「油っぽい(greasy)」感触がない。
第IV表は、スパンボンド法によって製造された布に対する物理的特性試験の結
果を示す。破断までのストリップの引張り力と伸びはASTM D−1682−
75を使用して測定した。スパンボンド布の測定はユナイテッド・モデル(Unite
d Model)SSTM−1−E−PC引張り試験機上で、13cm(5インチ)のジョー
ギャップと13cm/分(5インチ/分)のクロスヘッド速度を使用して行った。ト
ータルハンド(total hand)は、TAPPI 4998 CM−85試験法に従っ
て、スウィング・アルバート・ハンドル−オー−メーター(Thwing Albert Handl
e-O-Meter)211−5型を使用し、20cm×20cm(8インチ×8インチ)のサンプ
ルで0.64cm(0.25インチ)のスロットを使用して測定した。
第IV表から明らかなように、布の与えられた基本重量に対して、本発明の樹脂
は、同じメルトインデックスと密度を有するチーグラー−ナッタに基づく対応物
よりも、高い引張り強さ(破断点引張り力)とより大きい破断点伸びを有する繊
維を製造する。従って、本発明の布は、チーグラー−ナッタ触媒によって製造さ
れた樹脂から製造された布よりも強くより伸びやすい。また、本発明の繊維は、
EXACT(登録商標)の繊維よりも改善された機械的特性を有している。
から製造された繊維よりも細かった。これは、多座触媒によって製造された対応
物(HD−6705)と比較したとき、樹脂AのMWDがより狭くMz/Mw比
がより小さいことの結果である。樹脂Bの低い粘度はより細い繊維の製造に対し
ても貢献している。狭いMWDと低い粘度(MI>100)の組み合わせはこのプ
ロセスにおいて理想的である。
実質的に100重量%のポリエチレンホモポリマー又はコポリマーの使用が繊維
の製造において好ましい。しかしながら、樹脂A及びBを、LLDPE、PP、
EVA、EMA、EPR、EPDM、SBS、SIS、SEBSなどのような極
性及び非極性のポリオレフィン及び熱可塑性ゴムとブレンドでき、これも本発明
の範囲内であることは理解されるだろう。本発明の高密度ポリエチレン樹脂は、
加工助剤、顔料、染料、安定剤、及び難燃剤のような添加剤も含むことができる
。
請求の範囲
1.ポリエチレンから成る繊維であって、前記ポリエチレンが、少なくとも0.94
0g/cm3、好ましくは少なくとも0.945g/cm3、そして最も好ましくは少なくと
も0.950g/cm3の密度、3.6未満、好ましくは1.8乃至3.5の範囲内、より好まし
くは2.0乃至3.1の範囲内のMWD、4乃至1000の範囲内のメルトインデックス、
及び2.2未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.9未満のMz/Mw比を有
することを特徴とする、繊維。
2.前記ポリマーがエチレンと1種以上のC3乃至C20のアルファ−オレフィン
コモノマーとのコポリマーから成り、前記コポリマーはメタロセン触媒を使用し
て製造されたものである、請求項1の繊維。
3.コモノマーが、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、及び4-メチル-1
-ペンテンから成る群から選択される、請求項2の繊維。
4.前記ポリエチレンがスラリー法で製造される、請求項1乃至3のいずれか1
請求項の繊維。
5.前記ポリエチレンが検出可能な長鎖枝分かれを有していない、請求項1乃至
4のいずれか1請求項の繊維。
6.ポリマー繊維の製造方法であって、前記方法は、ポリエチレンから成るポリ
マーをオリフィスを通して押出す工程を含み、前記ポリエチレンが、少なくとも
0.940g/cm3、好ましくは少なくとも0.945g/cm3、そして最も好ましくは少な
くとも0.950g/cm3の密度、3.6未満、好ましくは1.8乃至3.5の範囲内、より好
ましくは2.0乃至3.1の範囲内のMWD、4乃至1000の範囲内のメルトインデック
ス、及び2.2未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.9未満のMz/Mw比
を有することを特徴とする、方法。
7.布の製造方法であって、ポリマーを複数のオリフィスを通して押出して複数
の繊維を製造する工程、前記繊維を回収装置上で回収する工程、及び前記繊維を
含む布を形成する工程を含み、前記ポリマーはポリエチレンを含んでなり、前記
ポリエチレンが、0.940g/cm3より大、好ましくは少なくとも0.945g/cm3、そ
して最も好ましくは少なくとも0.950g/cm3の密度、3.6未満、好まし
くは1.8乃至3.5の範囲内、より好ましくは2.0乃至3.1の範囲内のMWD、4乃至
1000の範囲内のメルトインデックス、及び2.2未満のMz/Mw比を有すること
を特徴とする、方法。
8.前記ポリエチレンがスラリー法で製造される、請求項6乃至7のいずれか1
請求項の方法。
9.前記ポリエチレンが検出可能な長鎖枝分かれを有していない、請求項6乃至
8のいずれか1請求項の方法。
10.前記ポリマーがエチレンと1種以上のC3乃至C20のアルファ−オレフィン
コモノマーとのコポリマーから成り、前記コポリマーはメタロセン触媒を使用し
て製造されたものである、請求項6乃至9のいずれか1請求項の方法。
11.前記方法がスパンボンド法であり、メルトインデックスが4乃至60、好まし
くは15乃至35、より好ましくは25乃至30の範囲内である、請求項7乃至10のいず
れか1請求項の方法。
12.前記方法が溶融ブローン法であり、メルトインデックスが10乃至1000の範囲
内である、請求項7乃至10のいずれか1請求項の方法。
13.前記方法が溶融紡糸法であり、メルトインデックスが4乃至150の範囲内で
ある、請求項7乃至10のいずれか1請求項の方法。
14.請求項1乃至5のいずれか1請求項の繊維を含む布。
15.請求項14の布を含んで成る製品。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ブランデンバーガー、ウェイン・ロバート
アメリカ合衆国、テキサス州 77586、シ
ーブルック、ナサ・ロード・1・3535、ア
パートメント・ナンバー59