【発明の詳細な説明】
二環式化合物
発明の分野
本発明は医薬上活性な二環式化合物、該化合物を含む医薬組成物、および該化
合物の使用法に関する。該化合物は血小板凝集を阻害する。これらの化合物はま
た、ビトロネクチンレセプターを阻害し、骨粗鬆症の治療にも有用である。
発明の背景
血小板凝集は、主に、インテグリンと称される接着性レセプター群のメンバー
である、フィブリノゲンレセプター、またはGPIIb−IIIa血小板レセプター
複合体により媒介されると考えられている。インテグリンレセプターの天然のリ
ガンドは、Arg-Gly-Asp配列を含有する蛋白質であることが多いことが判明し
ている。GPIIb−IIIaレセプターについての天然のリガンドと考えられる、
フォン・ウィルブランド(von Willebrand)因子およびフィブリノゲンは、そ
の一次構造においてRGD配列(一文字アミノ酸コードではRGD)を有する。
機能的には、これらの蛋白質は隣接する血小板上のGPIIb−IIIaレセプター
と結合し、架橋することが可能であって、その結果、血小板の凝集が起こる。
フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびトロンボスポンジンも、GPIIb−
IIIaと結合することが知られているRGD含有蛋白質である。フィブロネクチ
ンは、血漿中に見られ、細胞内マトリックスにおける構造蛋白質として機能する
。構造蛋白質およびGPIIb−IIIa間の結合は、血小板を損傷した血管壁に付
着させるように機能する。
さらに、最近の研究は、破骨細胞の骨マトリックスへの付着が、インテグリン
と称される細胞表面接着性レセプターを介してなされることを示している。例え
ば、Daniesら、J.Cell Biol.1989,109,1817は、骨吸収の調節
に関与している破骨細胞の機能的抗原が、生化学的にビトロネクチンレセプター
に関連付けされることを開示する。ビトロネクチンレセプター、またはαvβ3
インテグリンは、Arg−Gly−Asp(またはRGD)主要素を含有する、オステ
オポンチン、骨シアロプロテインおよびトロンボスポンジンのような骨マトリッ
クス蛋白質に結合することが知られている。かくして、Hortonらは、Exp.Ce
ll Res.1991,195,368において、RGD含有ペプチドおよび抗ビト
ロネクチンレセプター抗体(23C6)が破骨細胞による象牙質吸収および細胞
拡散を阻害すると開示する。加えて、Sanoらは、J.Cell Biol.1990,1
11,1713において、RGD配列を含有する、ヘビ毒ペプチドのエチスタチ
ンが組織培養にて骨吸収の強力な阻害剤であり、破骨細胞の骨への付着を阻害す
ることを開示する。Fisherらは、Endocrinology 1993,132,1411
において、さらに、エチスタチンがin vivoにてラットの骨吸収を阻害すること
を明らかにした。EP528587および528586は破骨細胞介在骨吸収を
阻害する置換フェニル誘導体を報告する。
本発明は、GPIIb−IIIaレセプターの阻害剤であり、血小板凝集を阻害す
る、ベンズアゼピンおよびベンゾジアゼピンを包含する、新規な二環式化合物を
開示する。また、当該化合物はビトロネクチンレセプターの阻害剤である。これ
らの物質は骨吸収を阻害し、骨粗鬆症の治療に有用である。
発明の要約
一態様において、本発明は、以下の式(I)に記載するような、置換7員環に
縮合した置換6員環からなる二環式化合物を提供する。
本発明はまた、式(I)の化合物および医薬上許容される担体を含有してなる
医薬組成物を提供する。
本発明はさらに、有効量の式(I)の化合物を内服することからなる、血小板
凝集の阻害を必要とする哺乳動物における血小板凝集方法を提供する。
別の態様において、本発明は、フィブリン溶解療法の後の哺乳動物における動
脈または静脈の再閉塞の阻害法であって、有効量のフィブリン溶解剤および式(
I)の化合物を内服することからなる阻害法を提供する。本発明はまた、卒中、
一過性虚血発作、または心筋梗塞の治療法を提供する。
本発明はまた、ビトロネクチンレセプターに結合するリガンドにより媒介され
る疾患の治療法を提供する。個々の態様において、本発明の化合物は骨粗鬆症お
よび骨吸収がファクターである疾患の治療に有用である。
発明の詳細な記載
本発明は、血小板凝集を阻害し、かつ骨吸収を阻害する二環式化合物を開示す
る。この新規二環式化合物は、芳香族6員環に縮合した7員環からなり、該化合
物は6員環に窒素含有置換基を有し、7員環に酸性基を含有する脂肪族置換基を
有する。7員環は、窒素、酸素および硫黄のようなヘテロ原子を含有し、6員環
は炭素環である。
本発明の化合物は、式(I):
[式中、
AはNR'、CHR'、OまたはSであり;
X1およびX2はC=OまたはCH2である。ただし、X1またはX2の一方だけ
がC=Oであり;
R1はH、C1-6アルキルまたは(CHR')mYであり;
R2は−(CH2)tCO2R3であり;
R3はH、C1-6アルキルまたは(CHR')mArであり;
であり;
YはH、Ar、C3-7シクロアルキル、CO2R3またはTetであり;
R'はH、C1-6アルキルまたは(CH2)mArであり;
Arは、置換されていないか、または1ないし3個のC1-6アルキル、トリフル
オロメチル、ハロゲン、OR'、SR'、CONR'R1、CO2R1、NO2または
R5R1Nで置換されているフェニルまたはナフチルであり;
R5はH、C1-6アルキル、(CHR')mYまたはCO(CHR')mYであり;
ン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホ
リン、ピリジン、ピリジニウム、テトラヒドロピリジン、テトラヒドロアゼピン
またはヘキサヒドロアゼピンであり、
mは0ないし6であり;
sは1ないし4であって;
tは1または2を意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である。
本発明の化合物の医薬上許容される酸付加塩、複合体またはプロドラッグもま
た、本発明に含まれる。プロドラッグは、in vivoにて式(I)の活性な親薬剤
を放出する共有結合した担体であると考えられる。
本発明の化合物が1またはそれ以上のキラル中心を有する場合、特に記載しな
い限り、本発明は通常の技術により合成され、分割される各独自の非ラセミ化合
物を包含する。いずれか一にある置換基の意義は、特に記載しない限り、その意
義または他にある別の置換基の意義とは独立したものである。
式(I)に関して、適当には、X1はCH2であり、X2はC=Oであって、A
はNR'である。
好ましくは、式(I)に関して、
X1はCH2であり、X2はC=Oであり、AはNR'であり、R1はC1-4アルキ
ルまたは(CHR')mY(ここに、R'はHまたはC1-4アルキルであり、mは1な
いし3であり、YはArまたはC3-7シクロアルキルである)であり、R4および
ジン、ピリジン、ピリジニウムまたはテトラヒドロピリジンである)であり、s
る。
本発明の好ましい化合物は:
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ
ン−2−酢酸、
(±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−3−オ
キソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−
ベンゾジアゼピン−2−酢酸、
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼ
ピン−2−酢酸、および
(±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
(2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H
−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸、
またはその医薬上許容される塩である。
本発明の最も好ましい化合物は:
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼ
ピン−2−酢酸、および
(±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
(2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H
−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸、
またはその医薬上許容される塩である。
前記の記載において、C1-4アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イ
ソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびt−ブチルを含むことを意味する。
C1-6アルキルはさらに、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチ
ルおよびヘキシルおよびその単純な脂肪族異性体を包含する。
C3-7シクロアルキルは3ないし7個の炭素原子を有する所望により置換され
ていてもよい炭素環系をいい、2個までの不飽和炭素−炭素結合を含有していて
もよい。典型的なC3-7シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シ
クロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルおよびシ
クロヘプチル、特にシクロヘキシルである。通常の化学合成により得ることがで
き、安定している、シクロアルキル環上のC1-6アルキル、トリフルオロメチル
、ハロゲン、OR'、SR'、CONR'R1、CO2R1、NO2またはR5R1Nよ
り選択されるような3個までの置換基のいずれの組み合わせも本発明の範囲に含
まれる。
式(I)でいう利用できる置換7員環は、(i)2個までのN、OおよびSか
ら選択されるヘテロ原子を有し、ここにSおよびNは、所望により、酸化されて
いてもよく、(ii)安定しており、当業者が2個の隣接する環炭素原子を介して
フェニルに縮合した形態を合成できる飽和7員環である。典型的な利用可能な7
員環は、アゼピン、ジアゼピン、チアゼピンおよびオキサゼピンの一般的な飽和
環である。利用可能な7員環とフェニル環を組み合わせることで形成される代表
的な二環式環は、ベンズアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンズオキサゼピンおよ
びベンゾチアゼピン化合物である。ベンゾジアゼピン化合物が、本発明の好まし
い二環式化合物である。
ある種の基を本明細書にて略語で表す。t−Buは第3ブチル基をいい、Boc
はt−ブチルオキシカルボニル基をいい、Fmocはフルオレニルメトキシカルボ
ニル基をいい、Phはフェニル基をいい、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を
いい、BrZはo−ブロモベンジルオキシカルボニル基をいい、ClZはo−クロ
ロベンジルオキシカルボニル基をいい、Bzlはベンジル基をいい、4−MBzlは
4−メチルベンジル基をいい、Meはメチルをいい、Etはエチルをいい、Acは
アセチルをいい、AlkはC1-6アルキルをいい、Nphは1−または2−ナフチル
をいい、cHexはシクロヘキシルをいう。MeArgはNα−メチルアルギニンで
ある。Tetは5−テトラゾリルをいう。
ある種の試薬を本明細書にて略語で表す。DCCはジシクロヘキシルカルボジ
イミドをいい、DMAPはジメチルアミノピリジンをいい、DIEAはジイソプ
ロピルエチルアミンをいい、EDCはN−エチル−N'(ジメチルアミノプロピル
)カルボジイミドをいい、HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールをいい、
THFはテトラヒドロフランをいい、DMFはジメチルホルムアミドをいい、N
BSはN−ブロモスクシンイミドをいい、Pd/Cは炭素上パラジウム触媒をい
い、PPAは1−プロパンホスホン酸環状無水物をいい、DPPAはジフェニル
ホスホリルアジドをいい、BOPはベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリ
ス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートをいい、HFはフ
ッ化水素酸をいい、TEAはトリエチルアミンをいい、TFAはトリフルオロ酢
酸をいい、PCCはクロロクロム酸ピリジニウムをいう。
式(I)の化合物は、一般に、式(II)の化合物を、式(III)の化合物と反
応させ:
[式中、X1、X2、R1、R2、AならびにR4およびR4'は式(I)において定
義したとおりであり、反応性官能基はいずれも保護されている]
その後、保護基を除去し、所望により医薬上許容される塩を形成することにより
調製される。
式(II)の化合物は、1993年1月7日付け公開のBondinellら、PCT公
開番号WO93/00095(PCT/US92/05463)に記載のベンゾ
ジアゼピン、ベンズアゼピン、ベンズオゼピンおよびベンゾチアゼピンである。
そのように公開されている特許出願の開示のすべてを参考にし、それを出典明示
により本明細書の一部とする。
式(I)の化合物は、スキームIおよびIIに記載の一般的方法により調製され
る。
Bondinellら(WO93/00095)の記載にしたがって製造した、(±)−
8−カルボキシ−3−オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テト
ラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(I−1)を、例
えば、EDCおよびHOBTまたはSOCl2を用いて、カルボン酸の活性形に変
え、その後、その活性形をビス[2−(4−ピリジル)エチル]アミンのような適当
なトリアミンと反応させて対応するアミンI−2を得る。カルボン酸をアミドに
変換するのにさらに多くの方法が知られており、“Compendium of Organic
Synthetic Methods”,Vol.I−VI(Wiley-Interscience発行)のような標
準的参考書に記載されている。I−2のメチルエステルを水性塩基、例えば、T
HF中水性LiOHまたはメタノール中水性NaOHを用いて加水分解し、その中
間体のカルボン酸塩を適当な酸、例えばTFAまたはHClで酸性化し、そのカ
ルボン酸I−3を得る。別法として、所望により、その中間体のカルボン酸塩を
単離することができる。
II−3のようなピペリジン含有の化合物は、スキームIに記載の方法にしたが
って、適宜N−保護したピペリジン誘導体より、あるいはII−1のようなピリジ
ン先駆体より製造できる。例えば、II−1のピリジンのサブユニットは、HCl
などの酸の存在下、適当な触媒、好ましくはPtO2で水素添加することにより対
応するピペリジン基に還元することができる。これらの条件下では、4−位の置
換基にあるような、分子中の他の芳香族環も同時に還元されるかもしれない。つ
いで、得られたピペリジニウム塩II−2をスキームIに記載の方法により化合物
II−3に変換する。
本発明において用いられるカップリング剤はペプチド結合を形成するのに用い
ることができる試薬を意味する。典型的なカップリング法は、カルボジイミド、
活性化無水物およびエステルおよび酸ハロゲン化物を用いる。EDC、DCC、
DPPA、PPA、BOP試薬、HOBt、N−ヒドロキシスクシンイミドおよ
び塩化オキサリルなどの試薬が典型的なものである。
ペプチド結合を形成するカップリング法は、一般に、当該分野において周知で
ある。Bodanskyらがザ・プラクティス・オブ・ペプチド・シンセシス(THE PRA
CTICE OF PEPTIDE SYNTHESIS),Springer-Verlag,ベルリン,1984にて、
Aliらがジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー(J.Med.Chem.),29
,984(1986)およびジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー,3
0,2291(1987)にて開示しているペプチド合成法がその一般例であり
、その開示を出典明示により本明細書の一部とする。
アミドまたはペプチド結合を形成するための溶液合成は、アミド結合を形成す
るのに用いられる慣用的方法を用いて達成される。典型的には、式(III):H
NR4R4'で示される化合物の遊離アミノ基を、所望により触媒、例えば1−ヒ
ドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびジメチルアミノピリジン(DM
AP)の存在下に、適当なカルボジイミドカップリング剤、例えば N,N'−ジ
シクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて、スキームI、式1の化合物
のような適当なカルボン酸基質に結合させる。スキームI、式1の化合物の遊離
カルボキシルの活性化エステル、無水物または酸ハロゲン化物を形成し、その
後、式(III)のHNR4R4'化合物の遊離アミンを反応させる他の方法も適当で
ある。
その化合物の酸付加塩は、適当な溶媒中、親化合物および塩酸、臭化水素酸、
硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸またはメタンスルホン酸のような過
剰の酸より標準方法で調製される。ある種の化合物は、許容できる内部塩または
双性イオンを形成する。カチオン性塩は、親化合物を、適当なカチオンを含有す
る水酸化物、炭酸塩またはアルコキシドのような過剰のアルカリ試薬;または適
当な有機アミンで処理することにより調製される。Li+、Na+、K+、Ca++、M
g++およびNH4 +などのカチオンが、例えば、医薬上許容される塩において存在
するカチオンである。
本発明はまた、式(I)の化合物および医薬上許容される担体を含有してなる
医薬組成物を提供する。したがって、式(I)の化合物は医薬の製造において用
いられる。前記したように調製した式(I)の化合物の医薬組成物を非経口投与
用溶液または凍結乾燥粉末として処方してもよい。粉末は使用前に適当な希釈剤
または他の医薬上許容される担体を添加することにより復元される。液体処方は
緩衝等張水性溶液である。適当な希釈剤の例は、通常の等張塩溶液、標準5%水
中デキストロースまたは緩衝酢酸ナトリウムまたはアンモニウム溶液である。こ
のような処方は特に非経口投与に適しているが、経口投与にも用いられ、または
吸入用の用量計量吸入器またはネブライザーに入れる。ポリビニルピロリドン、
ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニ
トール、塩化ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムのような賦形剤を添加するこ
とが望ましい。
また、これらの化合物は経口投与用にカプセル化、打錠化またはエマルジョン
またはシロップに調製される。医薬上許容される固体または液体担体を添加して
、組成物を強化または安定化させ、または組成物の調製を容易にする。固体担体
は、澱粉、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシ
ウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天またはゼラチンを
包含する。液体担体は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、食塩水および水
を包
含する。担体は、また、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリ
セリルなどの除放性物質を単独でまたはワックスと一緒に有していてもよい。固
体担体の量は変化するが、好ましくは、投与単位当たり約20mgないし約1g
の間である。医薬調製物は、錠剤形の場合、粉砕、混合、顆粒化、および必要な
らば、圧縮化;またはハードゼラチンカプセル形の場合、粉砕、混合および充填
を含む通常の調剤技術に従って調製される。液体担体を用いる場合、調製物はシ
ロップ、エリキシル、エマルジョンまたは水性または非水性懸濁剤の形態である
。このような液体処方は、直接的に経口投与、またはソフトゼラチンカプセルに
充填して投与される。
経直腸投与の場合、本発明の化合物はまた、カカオ脂、グリセリン、ゼラチン
またはポリエチレングリコールのような賦形剤と組み合わせて、坐剤を成型して
もよい。
本発明の化合物は、例えば、貯蔵のため、または診断または研究における使用
などのex vivoの操作のために、in vitroにて用い、血液および血液製品中の血
小板の凝集を阻害してもよい。
本発明はまた、哺乳動物、特にヒトにおける血小板凝集および血餅形成を阻害
する方法であって、式(I)のペプチドおよび医薬上許容される担体を内部投与
することからなる方法を提供する。このような療法についての適応症は、急性心
筋梗塞(AMI)、深静脈血栓症、肺塞栓症、解剖無尿症、一過性虚血発作(T
IA)、卒中および他の梗塞関連障害、および不安定アンギナを包含する。分散
性静脈内凝固(DIC)、敗血症、手術または感染性ショック、術後および分娩
後外傷、心肺バイパス手術、不適合輸血、胎盤早期剥離、血栓症性血小板減少性
紫斑症(TTP)、ヘビ毒および免疫病などの慢性または急性の高凝集性症状が
このような治療に対して反応しやすい。加えて、本発明の化合物は、転移病態の
予防、免疫刺激を誘発する真菌性または細菌性感染症の予防または治療および鎌
状赤血球貧血の治療において有用である。
本明細書に記載の化合物はビトロネクチンレセプターのアンタゴニストであり
、基礎となる病状がビトロネクチンレセプターと相互作用するリガンドまたは細
胞
に起因する疾患を治療するのに有用である。例えば、これらの化合物は、骨マト
リックスの喪失が病状を形成する疾患の治療に有用である。かくして、当該化合
物は骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、パジェット病、悪性の高カルシウム血症、
骨転移により形成される骨溶解性病変、不動化による骨喪失または性ホルモン欠
損症の治療に有用である。本発明の化合物はまた、抗腫瘍および抗炎症剤として
の有用性を有し、アテローム性動脈硬化症および再狭窄の治療にて有用であると
思われる。
本発明の化合物は、血漿中の薬剤濃度が血小板凝集または骨吸収、あるいは他
の適応症を阻害するのに十分な濃度になる程度に、患者に経口または非経口投与
される。該化合物を含有する医薬組成物を、約0.2ないし約50mg/kgの
用量で、患者の症状に合うように投与する。急性療法の場合、非経口投与が好ま
しい。化合物の水または生理食塩水中5%デキストロース中の静脈内注入または
適当な賦形剤を有する同様の処方が、最も効果的であるが、筋肉内ボーラス注射
もまた有用である。典型的には、非経口用量は、約0.01ないし約100mg
/kg;好ましくは0.1ないし20mg/kgである。化合物をある濃度で一
日に1ないし4回投与し、約0.4ないし約400mg/kg/日の一日用量を
達成する。正確な濃度および化合物を投与する方法は、薬剤の血中濃度を治療効
果を得るに必要な濃度と比較することにより当業者であれば容易に決定される。
本発明はさらにフィブリン溶解療法後の動脈または静脈の再閉塞の阻害法であ
って、式(I)のペプチドおよびフィブリン溶解剤を内部投与することからなる
阻害法を提供する。フィブリン溶解療法におけるペプチドの投与は、再閉塞を完
全に防止するかまたは再閉塞までの時間を延長することが判明している。
本明細書において用いる場合、フィブリン溶解剤なる語は、天然または合成製
品のいずれであっても、フィブリン血餅の溶解を直接または間接的に生じさせる
化合物を意味する。プラスミノーゲン活性化剤は周知の一群のフィブリン溶解剤
である。有用なプラスミノーゲン活性化剤は、例えば、アニストレプラーゼ、ウ
ロキナーゼ(UK)、プロ−ウロキナーゼ(pUK)、ストレプトキナーゼ(S
K)、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、および化学的に修飾され
ているか、または1個またはそれ以上のアミノ酸が付加、欠失または置換されて
いるか、または1個またはそれ以上の機能領域が付加、欠失もしくは1個のプラ
スミノーゲン活性化剤の活性部位を別のプラスミノーゲン活性化剤またはフィブ
リン結合分子のフィブリン結合領域と合するように変更されている変異体などの
、プラスミノーゲン活性化剤活性を保持する、その突然変異体または変異体を包
含する。他の変異体として、1個またはそれ以上のグリコシル化部位が変更され
ているtPA分子が挙げられる。プラスミノーゲン活性化剤のうち好ましいのは
、第一アミノ酸配列が成長因子領域でプラスミノーゲン活性化剤の血清半減期が
増加するように変更されているtPA変異体である。tPA成長因子変異体は、
例えば、Robinsonら、EP−A0297589およびBrowne、EP−A024
0334に開示されている。他の変異株は、ハイブリッドタンパク、例えば、E
P 0028489、EP 0155387およびEP 0297882(そのす
べてを出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているものを包含する
。アニストレプラーゼが本発明にて用いる場合に好ましいハイブリッドタンパク
質である。フィブリン溶解剤は、天然源から単離されるが、通常は遺伝子工学の
伝統的方法により産生される。
tPA、SK、UKおよびpUKの有用な処方は、例えばEP−A02115
92、EP−A0092182および米国特許第4,568,543号(そのすべ
てを出典明示により本明細書の一部とする)に開示されている。典型的には、フ
ィブリン溶解剤は、水性緩衝等張溶液、例えば、酢酸またはアジピン酸ナトリウ
ムまたはアンモニウム緩衝液(pH3.3〜5.5)に処方される。ポリビニルピ
ロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコー
ル、マンニトールおよび塩化ナトリウムのような別の賦形剤を添加してもよい。
このような組成物は凍結乾燥できる。
医薬組成物は、式(I)の化合物およびフィブリン溶解剤の両方を同一容器中
に処方してもよいが、別の容器内に処方するのが好ましい。両方の薬剤を溶液形
態にした場合、同時投与用の注入/注射系に、またはタンデム装置中に含めるこ
とができる。
このような療法の適応症は、心筋梗塞、深静脈血栓症、肺塞栓症、卒中および
他の梗塞関連障害を包含する。本発明の化合物をtPAまたは他のフィブリン溶
解剤の非経口投与の直前、同時、または直後に投与する。再潅流が、最大限、療
法後の再閉塞を阻害するように確立された後も、該ペプチドでの治療を十分な期
間続けるのが望ましいことが判明している。tPA、SK、UKまたはpUKの
有効用量は、0.5ないし5mg/kgであり、ペプチドの有効用量は、約0.1
ないし25mg/kgである。
阻害剤およびフィブリン溶解剤を同時または別々に都合よく投与するために、
ボックスのような1個の容器に、カートンまたは他の容器、個別のビン、袋、バ
イアルまたは他の容器からなり、各々、前記した有効量の非経口投与用阻害剤お
よび前記した有効量の非経口投与用tPAまたは他のフィブリン溶解剤を入れた
ものからなるキットが調製される。このようなキットは、例えば、別々の容器ま
たは同一の容器に入れた両薬剤と、所望の凍結乾燥プラグと、復元用溶液の容器
とからなっていてもよい。この変形は、復元用溶液および凍結乾燥プラグを1個
の容器の2つのチャンバーに含めるものであり、これを使用前に混合できる。こ
のような装置では、フィブリン溶解剤および本発明の化合物を、別々に、2個の
容器にパッケージしたり、一緒に凍結乾燥して粉末にし、1個の容器で提供でき
る。
両薬剤を溶液形にて提供する場合、これらの薬剤は同時投与用の注入/注射系
またはタンデム装置に含めることができる。例えば、血小板凝集阻害剤は、静脈
内注射可能な形態、またはチューブで一列に別の注入バッグ内のフィブリン溶解
剤に連結した注入バッグに入れてもよい。このような系を用いた場合、患者は、
ペプチド阻害剤の初期ボーラス型注射または注入を受け、続いてフィブリン溶解
剤の注入を受けることができる。
所定の薬理効果を有する必要の化合物の濃度を測定するために、数種の生物学
的検定のうち一の検定にて当該化合物を試験してもよい。
RGD−媒介GPIIb−IIIa結合の阻害
GPIIb−IIIaの精製
10ユニットの旧式の、洗浄したヒト血小板(赤十字より入手)を、3%オク
チルグルコシド、20mMトリス−HCl(pH7.4)、140mM NaCl、2
mM CaCl2中、4℃で2時間、穏やかに撹拌するで溶解させた。その溶解物を
100,000gで1時間遠心分離に付した。得られた上清液を、20mMトリ
ス−HCl(pH7.4)、100mM NaCl、2mM CaCl2、1%オクチルグ
ルコシド(緩衝液A)で予め平衡にした、5mlのレンチル・レクチン・セファ
ロース4Bカラム(E.Y.Labs)に加えた。2時間インキュベーションした後
、該カラムを冷緩衝液A(50ml)で洗浄した。レクチン保持GPIIb−III
aを10%デキストロース含有の緩衝液Aで溶出した。すべての操作は4℃で行
った。得られたGPIIb−IIIaは、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動操
作によれば、>95%純度であった。
GPIIb−IIIaのリポソームへの組み込み
ホスファチジルセリン(70%)およびホスファチジルコリン(30%)の混
合物(Avanti Polar Lipid)を、窒素流下、ガラス管の壁にて乾燥させた。精製
したGPIIb−IIIaを最終濃度0.5mg/mLにまで希釈し、1:3(w:w)
のタンパク質:リン脂質の比にてリン脂質と混合した。該混合物を再び懸濁させ
、バスソニケーターにて5分間超音波処理に付した。ついで、該混合物を、10
00倍過剰の50mMトリス−HCl(pH7.4)、100mM NaCl、2mM
CaCl2(2回交換)に対する12,000−14,000分子量カットオフ透析
を用いて一夜透析した。GPIIb−IIIa含有リポソームを、12,000gで1
5分間遠心分離に付し、約1mg/mLの最終タンパク質濃度で再び透析緩衝液
に懸濁させた。該リポソームを必要になるまで−70℃で貯蔵した。
GPIIb−IIIaへの競合結合
フィブリノゲンレセプター(GPIIb−IIIa)に対する結合を、RGD−型
リ
ガンドとして[3H]−SK&F−107260を用いる間接的競合結合法によ
り検定した。該結合検定は、22μmの親水性デュラポアー(durapore)膜を用
い、96−ウェルの濾過プレート装置(Millipore Corporation,Bedford,
MA)にて行った。該ウェルを10μg/mLのポリリシン(Sigma Chemical
Co.),St.Louis,MO.)0.2mLで、室温で1時間、プレコートし、非特
異的結合を遮断した。種々の濃度の非標識化ベンザジアザピンを四重試験にてウ
ェルに加えた。[3H]−SK&F−107260を4.5nMの最終濃度にて各
ウェルに加え、つづいて精製した血小板GPIIb−IIIa含有リポソーム1μg
を加えた。混合物を室温で1時間インキュベートした。GPIIb−IIIa結合[3
H]−SK&F−107260を、ミルポール(Millipore)濾過マニホールド
を用いる濾過により非結合体より分離し、つづいて氷冷緩衝液(2回、各0.2
mL)で洗浄した。フィルター上に保持している結合放射活性を、40%効率の
、ベックマン・リキッド・シンチレーション・カウンター(Beckman Liquid
Scintillation Counter)(モデルLS6800)中、Ready Solve(Beckm
an Instruction,Fullerton,CA)1.5mLにて計数した。非特異的結合を
2μMの非標識化SK&F−107260の存在下で測定し、それは一貫してサ
ンプルに加えた全放射活性の0.14%未満であった。すべてのデータは4重試
験の平均点である。
競合結合データを非線状最小二乗曲線適合操作により分析した。この方法によ
りアンタゴニストのIC50([3H]−SK&F−107260の特異的結合を
平衡状態で50%まで阻害するアンタゴニストの濃度)が得られる。IC50は、
ChengおよびPrusoffの式:Ki=IC50/(1+L/Kd)(Lは競合結合検
定にて用いる[3H]−SK&F−107260の濃度(4.5nM)であり、K
dは[3H]−SK&F−107260の解離定数であり、Scatchard分析により
測定した場合、4.5nMである)に基づき、アンタゴニストの平衡解離定数(
Ki)に関係付けられる。本発明の化合物は[3H]−SK&F−107260結
合を約2nMないし約1.0μMの範囲のKiで阻害する。好ましい化合物は、、
一般に、60nM未満のKiを有する。
血小板凝集の阻害
ナイーブな雑種成犬より血液を収集した(凝固作用を抑制するのにシトレート
処理に付した)。血小板に富む血漿、PRPを、150×gで10分間、室温で
遠心分離に付すことにより調製した。洗浄した血小板をPRPを800×gで1
0分間遠心分離に付して調製した。こうして得られた細胞ペレットを、Ca++不
含のTyrode緩衝液(pH6.5)にて2回洗浄し、3×105細胞/mLの濃度で
、1.8mM Ca++含有のTyrode緩衝液(pH7.4) に再び懸濁させた。すべて
の血小板凝集の検定において、アゴニストの3分前にペプチドを加えた。最終ア
ゴニスト濃度は0.1単位/mlトロンビンおよび2mM ADP(シグマ社)で
あった。凝集をChrono−Log Lumi−Aggregometerにてモニターした。アゴニ
ストを添加した5分後の光透過率を用い、
式:%凝集=[(90−CR)÷(90−10)]×100
[式中、CRはチャートの読み、90はベースライン、10はPRPのブランク
の読みを意味する]
に従って凝集%を算定した。IC50を[凝集の%阻害]対[ペプチドの濃度]を
プロットすることにより測定した。ペプチドを200mMで検定し、逐次、2つ
のファクターで希釈し、適当な用量応答曲線を確立した。
本発明の化合物は、ADPで刺激されたヒト血小板の凝集を約0.02〜約2.
0μMのIC50で阻害する。好ましい化合物はIC50が1μM未満である。最も
好ましい化合物はIC50が0.1μM未満である。
化合物の血漿中プロテアーゼに対する安定性を評価するために、アゴニストの
添加前に化合物をPRP中で3時間(3分ではなく)培養する。
血小板凝集のin vivo阻害
血栓形成のin vivo阻害を、Aikenら、Prostaglandins,19,629(19
80)に記載の方法にしたがって、麻酔したイヌにペプチドを注入し、全身性お
よび血液力学的効果を記録することにより測定する。
ビトロネクチン結合の阻害
αvβ3に対する固相[3H]−SK&F−107260結合:
緩衝液T(2mM CaCl2および1%オクチルグルコシド)中のヒト胎盤また
はヒト血小板αvβ3(0.1−0.3mg/ml)を、1mM CaCl2、1mMM
nCl2、1mM MgCl2(緩衝液A)および0.05%NaN3を含有する緩衝液T
で希釈し、ついで直ちに96−ウェルノELISAプレート(NY、ニューヨー
ク、Corning)に1ウェルに付き0.1mlを加えた。各ウェルに0.1−0.2
μgのαvβ3を加えた。プレートを4℃で一夜インキュベートした。実験の時点
で、該ウェルを緩衝液Aで一度洗浄し、0.1mlの3.5%同緩衝液中ウシ血清
アルビミンと一緒に室温で1時間インキュベートした。インキュベートした後、
該ウェルを十分に吸引し、0.2mlの緩衝液Aで2回洗浄した。
化合物を100%DMSOに溶かして2mMのストック溶液を得、それを結合
緩衝液(15mM トリス−HCl(pH7.4)、100mM NaCl、1mM C
aCl2、1mM MnCl2、1mM MgCl2)で100μMの最終化合物濃度まで
希釈した。種々の濃度の非標識化アンタゴニスト(0.001−100μM)を
三重反復にてウェルに加え、つづいて5.0nMの[3H]−SK&F−1072
60(65−86Ci/ミリモル)を加えた。
プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベートした後、ウェル
を十分に吸引し、ウェル−ツー−ウェルの方法で、0.2mlの氷冷緩衝液Aで
一度洗浄した。0.1mlの1%SDSを用いてレセプターを可溶化させ、結合
した[3H]−SK&F−107260を、40%効率の、ベックマン・KS・
リッキド・シンチレーション・カウンターにて3mlのReady Safeを添加して
液体シンチレーション計数操作で測定した。[3H]−SK&F−107260
の非特異的結合を2μMのSK&F−107260の存在下で測定し、それは一
貫して投入した放射性リガンド全体の1%未満であった。IC50([3H]−S
K&F−107260の結合を50%阻害するアンタゴニストの濃度)を、LU
NDON−2プログラムを修飾した、非線状最小二乗曲線適合慣用的操作により
測定した。式:Ki=IC50/(1+L/Kd)(LおよびKdは、各々、[3H]
−SK&F−107260の濃度および解離定数である)に従って、Ki(アン
タゴニストの解離定数)を算定した。
本発明の化合物は、約15ないし100μM以上の濃度でビトロネクチンのS
K&F−107260への結合を阻害する。好ましい化合物は、50μM以下の
濃度でビトロネクチン結合を阻害する。
本発明の化合物をまた、EP528587に開示されているピット形成検定の
ような、骨形成の阻害を評価するための当該分野での標準的検定にて、in vitro
およびin vivoにおける骨吸収について試験し、それをまたラット破骨細胞の代
わりにヒト破骨細胞を、およびWronskiらにより、Cells and Materials 19
91、Sup.1、69−74において記載されている卵巣切除したラットモデル
を用いて行ってもよい。
以下の実施例は、本発明の範囲を何ら制限するものではなく、本発明の化合物
の調製法および使用を説明するものである。別の多くの具体例も、当業者には自
明であり容易に利用可能である。
実施例
実施例において、温度はすべて摂氏である。質量スペクトルは電子スプレー(
ES)イオン化法を用いて行った。融点はThomas-Hooverキャピラリー融点測
定装置を用いて測定し、何ら修正していない。
セライトは、酸洗浄した珪藻土の濾過助剤であり、コロラド州、デンバー、M
ansville-Corp.の登録商標である。薄層クロマトグラフィーには、アナルテク
シリカゲルGFおよびEMシリカゲル薄層プレートを用いた。フラッシュおよび
重力クロマトグラフィーは共にMerch60(230−400メッシュ)シリカゲ
ルで実施した。ODSはオクタデシルシリル誘導のシリカゲルクロマトグラフィ
ー支持体をいう。
(±)−7−カルボキシ−4−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒド
ロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチルおよび(±)−8−カルボ
キシ−3−オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−
1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチルを、Bondinellら、WO93
/00095の方法により調製した。
以下の方法は本発明の化合物を調製するためのある種の有用な中間体の製法を
説明するものである。
実施例1 ( ±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メチ ル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン −2−酢酸の調製
a)ビス[2−(4−ピリジル)エチル]アミン
4−ビニルピリジン(10.0g、95.1ミリモル)および塩化アンモニウム
(5.1g、95.1ミリモル)のMeOH(90ml)中混合物を、アルゴン下
、27℃で加熱還流した。得られた混合物を濾過し、濾液をロータリーエバポレ
ーターで濃縮した。残渣をH2O(200ml)に溶かし、その溶液を2NNaO
Hを用いてpH10.5の塩基性にした。CH2Cl2抽出(3x100ml)、乾
燥(MgSO4)および濃縮に付して黄色油(5.73g、49%粗製物)を得た
。この油のうち2.9gをシリカゲル上のクロマトグラフィー(12%MeOH/
CH2Cl2)に付し、黄色油として標記化合物(1.81g、16%)を得た。M
S(ES)m/e 228(M+H)+。
b)(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼ
ピン−2−酢酸メチル
ジイソプロピルエチルアミン(0.35g、2.7ミリモル)を、0℃でアルゴ
ン下、ビス[2−(4−ピリジル)エチル]アミン(0.37g、1.65ミリモル)
、(±)−7−カルボキシ−4−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒド
ロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(0.44g、1.50ミ
リ
モル)、EDC(0.34g、1.8ミリモル)およびHOBT・H2O(0.24
g、1.8ミリモル)のDMF(8ml)中撹拌混合物に一度に添加し、反応物
を室温に加温した。19.5時間経過した後、反応物を氷水(100g)および
5%NaHCO3(10ml)の混合物中に注ぎ、CH2Cl2(2x100ml)
で抽出した。合した有機層を5%NaHCO3(50ml)で洗浄し、乾燥(Mg
SO4)し、濃縮した。シリカゲル上のクロマトグラフィー(7%MeOH/CH2
Cl2)に付し、標記化合物(0.7g、88%)を得た。MS(ES)m/e5
02.4(M+H)+。
c)(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−
メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼ
ピン−2−酢酸
1.0N LiOH(0.66ml、0.66ミリモル)を、(±)−7−[[ビス[2
−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メチル−3−オキソ−2,
3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(
0.16g、0.3ミリモル)のTHF(7ml)およびH2O(10ml)中混
合物に室温で滴下した。22.5時間経過した後、反応混合物をロータリーエバ
ポレーターで濃縮した。得られた残渣を1.0N AcOH(1.5ml)で中和し
、冷凍装置にて保持し、結晶生成物(0.114g、73%)を得た。ODS結
合溶出クロマトグラフィー(CH3CN/H2O)により精製し、標記化合物を得
た。MS(ES)m/e 488.2(M+H)+。
実施例2 ( ±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ ン−2−酢酸の調製
a)(±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4
−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジア
ゼピン−2−酢酸メチル
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ
ン−2−酢酸メチル(0.35g、0.65ミリモル)、PtO2(0.11g、0.
48ミリモル)、1.0N HCl(1.3ml、1.3ミリモル)およびMeOH(
30ml)の混合物を、Parr装置中、45psiで水素添加した。5時間経過
した後、反応混合物をセライトを介して濾過し、濃縮して粗標記化合物(0.6
g)を得、それをさらに精製することなく用いた。MS(ES) m/e514.
4(M+H)+。
b)(±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4
−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジア
ゼピン−2−酢酸
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ
ン−2−酢酸メチルの代わりに、(±)−7−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エ
チル]アミノ]カルボニル]−4−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒド
ロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(0.32g、0.51ミ
リモル)を用いる以外、実施例1(c)の操作に従って、標記化合物(0.41
g)を調製した。MS(ES) m/e500.5(M+H)+。
実施例3 ( ±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−3−オキ ソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベ ンゾジアゼピン−2−酢酸の調製
a)(±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−3−
オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4
−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル
(±)−7−カルボキシ−4−メチル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒド
ロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチルの代わりに、(±)−8−
カルボキシ−3−オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒ
ドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(0.57g、1.5ミ
リモル)を用いる以外、実施例1(b)の操作に従って、標記化合物(0.83
g、93%)を得た。MS(ES) m/e592.4(M+H)+。
b)(±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−3−
オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4
−ベンゾジアゼピン−2−酢酸
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼビ
ン−2−酢酸メチルの代わりに、(±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチ
ル]アミノ]カルボニル]−3−オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5
−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(0.15g
、0.25ミリモル)を用いる以外、実施例1(c)の操作に従って、標記化合
物(0.21g)を調製した。MS(ES) m/e578.2(M+H)+。
実施例4 ( ±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−( 2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H− 1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸の調製
a)(±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4
−(2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1
H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ
ン−2−酢酸メチルの代わりに、(±)−8−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチ
ル]アミノ]カルボニル]−3−オキソ−4−(2−フェニルエチル)−2,3,4,5
−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(0.53g
、0.90ミリモル)を用いる以外、実施例2(a)の操作に従って、標記化合
物(0.63g)を調製した。MS(ES) m/e305.6(M+2H)2+。
b)(±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4
−(2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1
H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸
(±)−7−[[ビス[2−(4−ピリジニル)エチル]アミノ]カルボニル]−4−メ
チル−3−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピ
ン−2−酢酸メチルの代わりに、(±)−8−[[ビス[2−(4−ピペリジニル)エ
チル]アミノ]カルボニル]−4−(2−シクロヘキシルエチル)−3−オキソ−2,
3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−酢酸メチル(
0.26g、0.38ミリモル)を用いる以外、実施例1(c)の操作に従って、
標記化合物を調製した。ODSクロマトグラフィー(段階的勾配、5−22%C
H3CN/H2O(0.1%TFA含有))に付し、標記化合物(0.25g)を得
た。MS(ES) m/e 596.4(M+H)+。
実施例5 非経口投与単位組成物
滅菌乾燥粉末として実施例1の化合物20mgを配合する調製物を以下のよう
に調製する:20mgの化合物を15mlの蒸留水に溶かす。この溶液を滅菌条
件下で25mlの複数回投与用アンプル中に濾過し、凍結乾燥する。静脈内また
は筋肉内注射用の20mlの5%水中デキストロース(D5W)を加えることに
より、粉末を復元する。投与量を注射容量により決定する。その後、計量した容
量のこの投与量を単位を別の容量の注射用D5Wに添加することにより希釈を行
ってもよく、または計量した容量をIV点滴注入または他の注射−注入系用の瓶
も
しくは袋にあるような薬剤分散機構に加えてもよい。
実施例6 経口投与単位組成物
経口投与用カプセルを、実施例1の化合物50mgをラクトース75mgおよ
びステアリン酸マグネシウム5mgと混合し、粉砕することにより調製する。得
られた粉末をスクリーンに付し、硬ゼラチンカプセルに充填する。
実施例7 経口投与単位組成物
経口投与用錠剤を、シュークロース20mg、硫酸カルシウム・二水和物15
0mgおよび実施例1の化合物50mgを10%ゼラチン溶液と一緒に混合し、
顆粒化することにより調製する。該湿式顆粒をスクリーンに付し、乾燥し、澱粉
10mg、タルク5mgおよびステアリン酸3mgと混合し、打錠する。
以上は、本発明の調製法および使用法を例示するものである。しかし、本発明
は、本願明細書に記載した具体例に限定されるものではなく、次に示す特許請求
の範囲内にある修飾をずべて包含するものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 クウォン,チェット
アメリカ合衆国19406ペンシルベニア州キ
ング・オブ・プルシア、サウス・ヘンダー
ソン・ロード 649番 アパートメント・
ディ503
(72)発明者 ミラー,ウィリアム・ヘンリー
アメリカ合衆国19473ペンシルベニア州
シュウェンクスビル、フェル・レイン333
番