JPH1036154A - セメント硬化遅延用樹脂懸濁液、およびこれを利用したコンクリート構造物の製造法 - Google Patents

セメント硬化遅延用樹脂懸濁液、およびこれを利用したコンクリート構造物の製造法

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JPH1036154A
JPH1036154A JP19505196A JP19505196A JPH1036154A JP H1036154 A JPH1036154 A JP H1036154A JP 19505196 A JP19505196 A JP 19505196A JP 19505196 A JP19505196 A JP 19505196A JP H1036154 A JPH1036154 A JP H1036154A
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JP
Japan
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cement
resin suspension
cement setting
concrete
curable composition
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JP19505196A
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English (en)
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Tatsu Ikuta
達 生田
Yoshiyuki Ikemoto
義行 池本
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Daicel Evonik Ltd
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Daicel Huels Ltd
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Publication date
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    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B24/00Use of organic materials as active ingredients for mortars, concrete or artificial stone, e.g. plasticisers
    • C04B24/24Macromolecular compounds
    • C04B24/28Macromolecular compounds obtained otherwise than by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
    • C04B24/283Polyesters
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B2103/00Function or property of ingredients for mortars, concrete or artificial stone
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンクリート製品の表面に洗い出し面や模様
を精度よく形成する上で有用なセメント硬化遅延用樹脂
懸濁液を得る。 【解決手段】 セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は加水分
解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマー粒子
を含む。前記ポリマー粒子を構成するポリマーには、マ
レイン酸などの多価カルボン酸成分と、エチレングリコ
ールなどのポリオール成分との反応により得られる不飽
和ポリエステルが含まれる。不飽和ポリエステルは架橋
による硬化物であってもよい。無機硬化性組成物の表面
に、前記セメント硬化遅延用樹脂懸濁液又はこの懸濁液
から溶媒を除去して得られる樹脂組成物を接触させ、無
機硬化性組成物を硬化処理した後、得られたコンクリー
ト硬化物の表面から非硬化の無機硬化性組成物を除去す
ることにより、表面に洗い出し面が形成されたコンクリ
ート構造物を製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメントを含む硬
化性組成物の硬化を遅延させる上で有用なセメント硬化
遅延用樹脂懸濁液、およびこれを利用したコンクリート
構造物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】セメントの硬化遅延剤は、セメントの水
和反応を遅らせることによりモルタルやコンクリートの
凝結及び硬化を遅延させるため、セメントに混和される
セメント混和剤の一種である。セメント硬化遅延剤に関
し、特開平1−172250号公報には、酸化鉛、酸化
ホウ素、硼砂、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ケイフッ化マグネ
シウムなどの無機系硬化遅延剤、ポリヒドロキシ化合物
(砂糖、アルコール、メチルセルロース、エチルセルロ
ース、ポリビニルアルコール、デキストリンなど)、ポ
リアクリル酸ナトリウム、オキシカルボン酸塩、リグニ
ンスルホン酸塩、グルコン酸又はその塩、ピルビン酸、
α−ケトグルタール酸などのケト酸等の有機系硬化遅延
剤が記載されている。これらのセメント硬化遅延剤の使
用目的は、夏期において硬化を抑制しつつ生コンクリー
トを長期間に亘り輸送すること、大型コンクリート構造
物において温度による応力を緩和することなどである。
【0003】また、コンクリート成形品及び各種建築物
の表面に、左官技術の1つである洗い出し工法を利用し
て装飾を施することがしばしば行われている。この洗い
出し工法は、セメントが硬化する直前に水洗して、コン
クリート表面層のモルタルを洗い流すことにより、骨材
の一部を露出させる方法である。この方法は、コンクリ
ートの硬化速度が密接に関係するため、洗い出すタイミ
ングが時間的に極めて狭い範囲に限定され、多量生産、
または大型建築物への応用には不適な技術である。
【0004】また、コンクリート表面へのタイルの施工
について、粘着テープの粘着剤層の表面に複数枚のタイ
ルを貼着して配列したユニットタイルを用いる方法が提
案されている。このユニットタイルを用いる方法では、
コンクリートが打設される型枠にユニットタイルを配置
し、モルタルを型枠に流し込んで養生した後、脱型し、
粘着シートを除去することにより表面にタイルを露出さ
せた後、タイルの表面に回り込んで硬化したセメントを
除去し、表面仕上げすることによりタイルを施工してい
る。この表面仕上げは、タイルに付着した硬化セメント
を手作業で削り取る場合が多く、表面の綺麗さを特徴と
するタイルの施工には欠くことができない工程である。
しかし、タイルに付着した硬化セメントを除去する作業
は、時間と手間がかかり煩雑であり、タイル施工経費が
高騰するだけでなく、硬化セメントの除去作業によりタ
イル表面が損傷する原因ともなる。
【0005】このような問題を解決するため、前記セメ
ント硬化遅延剤を応用して、コンクリートの表面層だけ
の硬化を阻害し、コンクリート製品の表面を加工した
り、表面に模様を形成することが提案されている。例え
ば、硬化遅延剤を紙に含浸させ、含浸紙を型枠の底に貼
付などにより固定し、モルタルを打設し、コンクリート
が硬化した後、コンクリート成形品を脱型し、含浸紙と
接触した表面の未硬化モルタルを洗い流すことにより、
骨材を露出させ、自然な風合いを得る方法が提案されて
いる。特開昭63−216703号公報には、硬化遅延
剤を紙に含浸させた型紙をカッティングして所定の文字
や図形などの模様に対応する裁断型紙を作製する工程、
型枠内面の所定部位に裁断型紙を接着する工程、前記型
枠内にモルタル組成物を打設し養生を施す工程、前記型
枠を解体してコンクリート製品を取り出す工程、コンク
リート製品の型紙部位を洗浄する工程を経て、コンクリ
ート製品の表面に所定の凹凸模様を形成している。特開
昭61−202803号公報には、セメント硬化遅延剤
を塗布した紙にタイルなどを貼り付けて型枠内にセット
し、上記と同様にして洗い出す方法が開示されている。
【0006】特開平5−38711号公報及び特開平5
−50411号公報には、超遅延剤、粘着付与剤、増量
剤及び白色系顔料を含む混合物を型枠内面に付着させ、
モルタル又はコンクリートを打設し、養生及び脱型し、
セメント製品のうち型枠との当接面のセメントペースト
を洗い出し、セメント製品の表面を仕上げる方法が開示
されている。
【0007】しかし、セメントの水和機構を抑制する従
来の硬化遅延剤は、水に対して高い溶解性を有してお
り、セメントコンクリート中の水分に溶解する。従っ
て、モルタルやコンクリートの打設に伴って、硬化遅延
剤が溶解し、型枠内又は成形品や構造物表面においてモ
ルタル又はコンクリート中の過剰なブリード水とともに
流動する。そのため、洗い出しが不要な箇所に硬化遅延
剤が流動したり、硬化遅延剤が局所的に集中したりする
反面、洗い出しや装飾が必要とされる部位では硬化遅延
剤が流出する。また、ブリーディング水が通過した面で
は、洗い出しの深さも特に深くなる。従って、コンクリ
ート成形品又は建築物の表面のうち所定の部位に、均一
な洗い出し面を形成したり、装飾文字、図形などのパタ
ーンを精度よく形成することが困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、コンクリート製品の表面に洗い出し面や模様を精度
よく形成する上で有用なセメント硬化遅延用樹脂懸濁液
を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、コンクリート製品の
表面に洗い出し面や模様を簡便かつ効率よく形成できる
セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を提供することにある。
【0010】本発明のさらに他の目的は、損傷を抑制し
つつ装飾材などにより表面を装飾した表面装飾コンクリ
ート製品を得る上で有用なセメント硬化遅延用樹脂懸濁
液を提供することにある。
【0011】本発明の別の目的は、表面に洗い出し面や
模様が精度よく形成されたコンクリート構造物を簡便且
つ効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0012】本発明のさらに別の目的は、装飾性の高い
表面装飾コンクリート構造物を、装飾材を損傷させるこ
となく、しかも簡便に製造する方法を提供することにあ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討した結果、加水分解によりセメ
ント硬化遅延能を発現可能なポリマー粒子を含む樹脂分
散液を用いると、無機硬化性組成物のうち前記ポリマー
粒子との接触部においてセメントの硬化が均一に抑制さ
れ、コンクリート構造物の表面に、均一な洗い出し面や
模様を容易に形成できることを見出だし本発明を完成し
た。
【0014】すなわち、本発明は、加水分解によりセメ
ント硬化遅延能を発現可能なポリマー粒子を含むセメン
ト硬化遅延用樹脂懸濁液を提供する。
【0015】前記ポリマー粒子を構成するポリマーには
不飽和ポリエステルなどが含まれる。不飽和ポリエステ
ルは、主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸又
はその誘導体を含む多価カルボン酸成分と、主鎖の炭素
数が2〜4の多価アルコール又はその縮合物を含むポリ
オール成分との反応により得られる不飽和ポリエステル
であってもよい。また、不飽和ポリエステルは架橋によ
る硬化物であってもよい。
【0016】本発明は、また、表面に洗い出し面が形成
されたコンクリート構造物の製造法であって、無機硬化
性組成物の表面に、前記のセメント硬化遅延用樹脂懸濁
液又はこの懸濁液から溶媒を除去して得られる樹脂組成
物を接触させ、無機硬化性組成物を硬化処理した後、得
られたコンクリート硬化物の表面から非硬化の無機硬化
性組成物を除去するコンクリート構造物の製造法を提供
する。
【0017】本発明は、さらに、装飾材と一体化した表
面装飾コンクリート構造物の製造法であって、基体の表
面に請求項1記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液を塗
布または含浸させて、加水分解によりセメント硬化遅延
能を発現可能なポリマー粒子で構成されたセメント硬化
遅延層を形成し、このセメント硬化遅延層の上に装飾材
を配設し、無機硬化性組成物を打設して硬化処理した
後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を除去するコン
クリート構造物の製造法を提供する。
【0018】なお、本明細書において、特に断りのない
限り、「セメント」とは、水との混和により硬化性を示
す無機物質を意味し、気硬性セメント、水硬性セメント
などを含む意味に用いる。さらに、セメントを含む硬化
性組成物にはセメントペースト、モルタル組成物及びコ
ンクリート組成物が含まれ、これらを単に「無機硬化性
組成物」と総称する場合がある。「コンクリート構造物
(製品)」とは、無機硬化性組成物の硬化によって得ら
れる構造物(製品)を意味する。また、「シート」とは
厚さの如何を問わず、二次元的構造物を意味し、フィル
ムを含む意味に用いる。また、「粘着剤又は接着剤」を
総称して「粘着剤」と称することがある。「多価カルボ
ン酸の誘導体」とは、多価カルボン酸の酸無水物、多価
カルボン酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエ
ステル、エチルエステルなどの脱離可能なC1-4 アルキ
ルエステル)を含む意味に用いる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明のセメント硬化遅延用樹脂
懸濁液はポリマー粒子を含んでいる。ポリマー粒子を構
成するポリマーとしては、加水分解によりセメント硬化
遅延能を発現可能なポリマーであれば特に制限されな
い。このようなポリマーには、加水分解によりヒドロキ
シル基やカルボキシル基などのセメント硬化遅延能を有
する基が生成可能な基、例えばエステル基を有するポリ
マーなどが含まれる。前記ポリマーとして、例えば、ポ
リエステルなどが挙げられる。前記ポリマーは一種又は
二種以上混合して使用できる。
【0020】ポリエステルは、多価カルボン酸又はその
誘導体を含むカルボン酸成分と、多価アルコール又はそ
の縮合物を含むポリオール成分との縮合反応により得る
ことができる。多価カルボン酸には、シュウ酸、マロン
酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの主鎖の炭
素数が2〜6の飽和多価カルボン酸;マレイン酸、無水
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、
シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの主
鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸などが含ま
れる。前記飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸は組合せ
て使用してもよい。これらの多価カルボン酸は単独で又
は2種以上組合せて使用できる。
【0021】多価カルボン酸成分は、前記多価カルボン
酸以外に、脂肪族多価カルボン酸(例えば、アゼライン
酸、セバシン酸など)、芳香族多価カルボン酸(例え
ば、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタ
ル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)を含んで
いてもよい。特に、フタル酸、テレフタル酸、イソフタ
ル酸又はこれらの誘導体から選択された芳香族ジカルボ
ン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分を用いる
と、ポリエステルの強度、伸度、可撓性、柔軟性、耐水
性などの特性を調整するのに有用である。
【0022】ポリエステル全体に対する芳香族多価カル
ボン酸の含有量は、例えば、0.1〜30重量%、好ま
しくは0.1〜20重量%(例えば1〜15重量%)、
さらに好ましくは0.1〜10重量%(例えば2〜10
重量%)程度である。
【0023】好ましい多価カルボン酸成分には、(1)
主鎖の炭素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又は
その誘導体を含む多価カルボン酸成分(特に、少なくと
もマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はそれら誘
導体を含む多価カルボン酸成分)、又は(2)主鎖の炭
素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又はその誘導
体と、フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸から
選択された少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸又はそ
のその誘導体とを含む多価カルボン酸成分が含まれる。
【0024】ポリオール成分には、炭素数2〜4の多価
アルコール、例えば、ジオール(例えば、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオー
ル、テトラメチレングリコールなどのC2-4 アルキレン
グリコール)、C2-4 アルキレングリコールの縮合物で
あるポリオキシアルキレングリコール、例えば、ジオキ
シエチレングリコール、トリオキシエチレングリール、
ポリオキシエチレングリコール(以下、特に言及しない
限り、これらを単にポリエチレングリコールと総称する
場合がある)、ジオキシプロピレングリコール、トリオ
キシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリ
コール(以下、特に言及しない限り、これらを単にポリ
プロピレングリコールと総称する場合がある)、ポリオ
キシテトラメチレングリコールなど;ポリオール(例え
ば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなど)
が含まれる。これらのポリオール成分は単独で又は組合
せて使用してもよい。
【0025】好ましい多価アルコールには、エチレング
リコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコ
ール、テトラメチレングリコール、ジオキシエチレング
リコール、トリオキシエチレングリール、ポリオキシエ
チレングリコール、ジオキシプロピレングリコール、ト
リオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン
グリコール及びグリセリンが含まれる。多価アルコール
は、炭素数2〜4の脂肪族多価アルコール(特にジオー
ル)又はその縮合物で構成された多価アルコール成分を
含む場合が多い。
【0026】ポリオキシアルキレングリコールの分子量
は、例えば、重量平均分子量100〜7500、好まし
くは200〜5000(例えば、200〜2500)程
度であり、ポリエチレングリコールを用いる場合、重量
平均分子量が300以下である場合が多い。
【0027】多価アルコールは、必要に応じて他のポリ
オール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロー
ルプロパン、ペンタエリスリトールなどと併用してもよ
い。これらのポリエステルのうち不飽和ポリエステル、
特にマレイン酸又は無水マレイン酸を多価カルボン酸成
分とする不飽和ポリエステルが好ましい。
【0028】ポリエステルの分子量は特に制限されず、
例えば、重量平均分子量300〜100000(例え
ば、300〜25000)、好ましくは300〜500
00(例えば、500〜15000)、さらに好ましく
は500〜20000程度の範囲から選択できる。不飽
和ポリエステルの分子量は、重量平均分子量300〜1
00000、好ましくは300〜50000、さらに好
ましくは500〜10000程度であり、重量平均分子
量300〜5000(例えば、500〜5000)、特
に500〜2500程度である場合が多い。分子量は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリス
チレン換算の重量平均分子量である。
【0029】不飽和ポリエステルなどのポリエステル
は、慣用の方法、例えば、多価カルボン酸成分と多価ア
ルコール成分とを、触媒の存在下に縮合させることによ
り得ることができる。マレイン酸や無水マレイン酸など
の不飽和多価カルボン酸を用いる場合には、ハイドロキ
ノンなどのラジカル重合禁止剤の存在下で縮合反応させ
る場合が多い。ポリエステルは、多価カルボン酸1当量
に対して多価アルコール0.5〜3当量、好ましくは
0.7〜2当量程度の範囲から選択できる。分子量の小
さなポリエステルは多価カルボン酸およびポリオールの
うちいずれか一方の成分を過剰に使用することにより得
る場合が多い。
【0030】前記不飽和ポリエステルは架橋による硬化
物であってもよい。不飽和ポリエステルの硬化物は、不
飽和ポリエステルと重合開始剤とを含む重合性組成物
(i)を硬化させることにより得られる。重合開始剤と
しては、種々の有機過酸化物、例えば、メチルエチルケ
トンパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベン
ゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエー
ト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト、ジクミルパーオキシドなどが使用できる。重合開始
剤の使用量は、重合性を損なわない範囲、例えば、不飽
和ポリエステル100重量部に対して、0.5〜5重量
部、好ましくは1〜4重量部程度であり、2〜3重量部
程度である場合が多い。不飽和ポリエステルの硬化物
は、不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマー(反応
性希釈剤)と前記重合開始剤とを含む重合性組成物(i
i)の硬化物であってもよい。前記重合性ビニルモノマ
ーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、
ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー、メチル(メ
タ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチ
ル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜
20(特に炭素数1〜10)程度のアルキル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3
−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)
アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官
能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基
など)を有するモノマー、(メタ)アクリル酸と前記多
価アルコール(特に、ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコールなどのグリコール類)とのエステル
(例えば、エチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)
アクリレート、ジエチレングリコールモノ(又はジ)
(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ
(又はジ)(メタ)アクリレートなど)などが挙げられ
る。また、ビニルモノマーとしては、酢酸ビニルなどの
ビニルエステル、塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニル
モノマー、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、エ
チレン、プロピレンなどのオレフィン系モノマーも使用
できる。これらの重合性モノマーは一種又は二種以上組
み合わせて使用できる。
【0031】好ましい重合性ビニルモノマーには、アク
リル系モノマーおよびメタクリル系モノマー、特に(メ
タ)アクリル酸グリコールエステル類が含まれる。重合
性ビニルモノマーの使用量は、不飽和ポリエステルの分
子量などに応じて、硬化遅延能や不飽和ポリエステルの
取扱い性を損なわない範囲、例えば、不飽和ポリエステ
ル100重量部に対して、1〜500重量部(例えば、
1〜100重量部)、好ましくは5〜200重量部(例
えば、5〜100重量部)程度の範囲から選択でき、5
〜30重量部程度の範囲であってもよい。
【0032】不飽和ポリエステルの硬化物は、前記重合
性組成物を構成する成分(すなわち、重合性組成物
(i)を構成する不飽和ポリエステルと重合開始剤と、
重合性組成物(ii)を構成する不飽和ポリエステルと重
合性ビニルモノマーと重合開始剤)に加えて、重合促進
剤を含む重合性組成物(iii)の硬化物であってもよ
い。重合促進剤には、例えば、ナフテン酸コバルト、オ
クチル酸コバルトなどの有機酸コバルト塩、アセチルア
セトン、アセト酢酸エチルなどのβ−ジケトン又はβ−
ケトエステル類、芳香族第3級アミン類、メルカプト類
などが含まれる。これらの重合促進剤は単独で又は二種
以上組み合わせて使用できる。重合性組成物における重
合促進剤の濃度は、例えば、10〜1000ppm、好
ましくは10〜500ppm(例えば、10〜100p
pm)程度の範囲から選択でき、30〜50ppm程度
であってもよい。不飽和ポリエステルの硬化(架橋)
は、常温でも可能であるが、短時間(例えば、0.5〜
50分程度)で硬化させるためには、温度60〜200
℃程度で行なうのが有利である。
【0033】セメント硬化遅延用懸濁液の分散媒(溶
媒)としては、水または有機溶媒を使用でき、二種以上
の混合溶媒であってもよい。有機溶媒としては、分散質
である前記ポリマー粒子の種類に応じて選択でき、例え
ば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの
アルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水
素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ハロゲン化
炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン
類;エーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;非プロ
トン性極性溶媒などが挙げられる。好ましい分散媒に
は、水、メタノールなどのアルコール類(例えば、C
1-3 アルコール)およびこれらの混合溶媒などが含まれ
る。前記分散媒として水が用いられる場合が多い。
【0034】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液中
の、前記ポリマー粒子の含有量は、分散安定性を損なわ
ない範囲で適宜選択でき、例えば5〜80重量%、好ま
しくは10〜60重量%、さらに好ましくは20〜50
重量%程度である。
【0035】前記ポリマー粒子の粒子径は、分散安定
性、機械的安定性、造膜性などを損なわない範囲であれ
ばよく、例えば、0.01〜500μm、好ましくは
0.01〜200μm、さらに好ましくは0.01〜1
00μm程度である。
【0036】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液の粘度は、
取扱性、分散安定性などを損なわない範囲で適宜設定で
き、例えば、2000〜100000センチポイズ、好
ましくは5000〜20000センチポイズ、さらに好
ましくは7000〜15000センチポイズ程度であ
る。
【0037】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、前記加
水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマー
のほか、セメント硬化遅延剤を含んでいてもよい。セメ
ント硬化遅延剤としては、セメントの硬化速度を低下さ
せる硬化遅延剤又は凝結遅延剤であればよく、無機又は
有機硬化遅延剤が使用できる。無機硬化遅延剤には、リ
ン酸、ホウ酸又はそれらの塩、ヘキサフルオロケイ酸塩
などが含まれる。有機硬化遅延剤には、ホスホン酸類、
オキシカルボン酸類、多価カルボン酸類、ケト酸類、多
価フェノール類、糖類、フミン酸、リグニンスルホン酸
類、カルボキシル基を有するモノマーの単独又は共重合
体若しくはその塩などが含まれる。
【0038】ホスホン酸類としては、アミノジ(メチレ
ンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エ
チレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチ
レントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサ
メチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はこ
れらの塩(例えば、アンモニウム塩;ナトリウム、カリ
ウムなどのアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウ
ム、バリウムなどのアルカリ土類金属塩など)などが挙
げられる。
【0039】オキシカルボン酸類としては、グリコール
酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、
没食子酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸などの
オキシカルボン酸又はその塩、及びアスコルビン酸、イ
ソアスコルビン酸などのオキシカルボン酸に対応するラ
クトン類などが挙げられる。多価カルボン酸類として
は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの飽和多価カル
ボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽
和多価カルボン酸などが例示できる。ケト酸類として
は、ピルビン酸、α−ケトグルタール酸などのケト酸又
はその塩などが挙げられる。多価フェノール類として
は、ピロガロールなどが挙げられる。糖類には、スクロ
ースなどの多糖類、コーンシロップなどが含まれる。リ
グニンスルホン酸類としては、リグニンスルホン酸又は
リグノスルホネート(例えば、リグノスルホン酸カルシ
ウムなど)などが挙げられる。カルボキシル基を有する
モノマーの単独又は共重合体若しくはその塩としては、
ポリマレイン酸、ポリフマル酸、スチレン−マレイン酸
共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレ
ン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸
エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンスル
ホン酸−アクリル酸コポリマーなどのポリマー又はその
塩(好ましくは、低分子量ポリマー又はその塩)などが
例示される。これらの硬化遅延剤のなかでも、無機硬化
遅延剤、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノー
ル類、糖類、リグニンスルホン酸類などが好ましい。こ
れらのセメント硬化遅延剤は、一種又は二種以上混合し
て使用できる。セメント硬化遅延剤の含有量は、例え
ば、前記ポリマー粒子100重量部に対して、0〜10
00重量部(例えば、5〜1000重量部)、好ましく
は0〜700重量部(例えば、10〜700重量部)、
さらに好ましくは0〜500重量部(例えば、25〜5
00重量部)程度である。
【0040】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液
は、ポリマー粒子の分散性を高めるため、通常、分散剤
を含んでいる。
【0041】分散剤としては、アニオン系界面活性剤
(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ア
ルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ア
ルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸
ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸
ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエー
テル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリ
ウムなど)、カチオン系界面活性剤(アルキルトリメチ
ルアンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(例え
ば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシ
エチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプ
ロピレンブロックコポリマーなど)などの界面活性剤;
タンパク質、植物ゴム、水溶性ポリマー等の保護コロイ
ドなどを用いることができる。分散剤の使用量は、前記
ポリマー粒子に対して、例えば0.01〜10重量%、
好ましくは0.02〜5重量%、さらに好ましくは0.
05〜2重量%程度である。
【0042】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、また、
粘着剤又は接着剤を含んでいてもよい。粘着剤又は接着
剤としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ネ
オプレン、イソプレンなど)などのゴム系粘着剤、ポリ
酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸
ビニル系エラストマー、アクリルゴムなどのアクリル系
エラストマー、ポリエステルエラストマーなどの粘着剤
のエマルジョンであってもよく、溶剤型の粘着剤であっ
てもよい。また、水溶性粘性物質、例えば、ポリビニル
アルコール、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアクリル
アミド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースなどの合成水溶性高分
子、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアゴ
ム、トラガカントガム、ペクチン、アルギン酸ソーダ、
カラゲニンなどの天然水溶性高分子なども利用できる。
これらの粘着剤又は接着剤は一種又は二種以上組合せて
使用できる。また、粘着剤は、粘着付与剤(例えば、石
油樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂
などの炭化水素系樹脂、ロジン誘導体など)と併用して
もよい。
【0043】粘着剤又は接着剤を含むセメント硬化遅延
用樹脂懸濁液では、この懸濁液を基材シートや型枠の底
板などに塗布又は含浸させて前記ポリマー粒子で構成さ
れるセメント硬化遅延層を形成する際、基材シートなど
との固着性を高めることができる。また、上記のセメン
ト硬化遅延層に、コンクリート構造物の表面装飾に用い
る装飾材などを貼着でき、装飾材のずれ、脱離、脱落を
防止できる。なお、得られた表面装飾コンクリート構造
物の洗浄、化粧作業において、コンクリート表面や装飾
材の表面を効率よく清浄化するため、前記粘着剤又は接
着剤としては、装飾材を仮止め可能な程度の粘着力、接
着力を付与できる材料、又は装飾材を強固に接着する場
合には、洗浄により除去可能な材料が好ましい。
【0044】粘着剤又は接着剤の含有量は、硬化遅延性
が損なわれない範囲であればよく、前記ポリマー粒子1
00重量部に対して0〜2000重量部(例えば、1〜
2000重量部)、好ましくは0〜500重量部(例え
ば、2〜500重量部)、さらに好ましくは0〜50重
量部(例えば、3〜50重量部)程度である。
【0045】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、また、
取扱性、造膜性などを向上させるため、増粘剤が添加さ
れていてもよい。増粘剤としては、例えば、シリカ、ア
ルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシ
ウムなどの酸化物(周期表1〜15族元素の酸化物な
ど);ケイソウ土、カオリン、タルク、ベントナイト、
クレー、石粉、火山灰、石炭灰などの粘土・鉱物類;カ
ーボンブラック、グラファイト;鉄粉、アルミニウム末
などの金属粉;炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどのア
ルカリ土類金属塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシ
ウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;二硫化モリブデ
ンなどが例示される。
【0046】増粘剤の含有量は、硬化遅延性を損なわな
い範囲であればよく、前記ポリマー粒子100重量部に
対して0〜2000重量部(例えば、1〜2000重量
部)、好ましくは0〜500重量部(例えば、2〜50
0重量部)、さらに好ましくは0〜50重量部(例え
ば、3〜50重量部)程度である。
【0047】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、さら
に、必要に応じて他の添加剤、例えば、結合剤、表面調
整剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、抗酸化剤、紫
外線吸収剤、着色剤、体質顔料、充填材、帯電防止剤、
重合禁止剤などを含んでいてもよい。
【0048】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液
は、樹脂の懸濁液を得る際に通常使用される方法により
容易に調製できる。例えば、セメント硬化遅延用樹脂懸
濁液は、加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能
なポリマーの単量体を、慣用の重合法(例えば、塊状重
合、溶液重合、懸濁重合等)により重合し、得られた重
合物を、必要に応じて所望の大きさに粉砕、分級し、適
当な溶媒中に分散させることにより調製できる。粉砕は
乾式粉砕、湿式粉砕の何れの方法で行ってもよい。ま
た、粉砕には、慣用の粉砕手段、例えば、ジョークラシ
ャー、ハンマーミル、コーンミル、ロールクラッシャ
ー、ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル、カッ
タミルなどを利用できる。分散は、慣用の撹拌手段、振
盪手段などによって行うことができる。撹拌手段とし
て、ホモジナイザー、スーパーミキサーなどを用いるこ
とにより、分散効率および分散性を著しく向上できる。
【0049】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液
は、加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポ
リマー粒子を含むので、水を含む無機硬化性組成物と接
触すると、前記ポリマー粒子が加水分解され、セメント
の硬化が遅延、抑制される。また、ポリマー粒子が溶媒
中に分散しているので、粉体や粘稠な液体などと比べ取
扱性に優れ、基材シートなどの基体に、前記ポリマー粒
子で構成されるセメント硬化遅延層を均一かつ簡易に形
成できる。そのため、セメント硬化後の洗い出しによ
り、コンクリート構造物の表面に骨材が露出した自然な
風合いを有する洗い出し面を形成したり、文字や図形な
どのパターンを形成したり、さらに装飾材と一体化した
コンクリート製品を製造する上で極めて有用である。
【0050】洗い出し面が形成されたコンクリート構造
物は、例えば、以下の方法により製造できる。すなわ
ち、基材シートの表面に、前記セメント硬化遅延用樹脂
懸濁液を塗布または含浸させ、乾燥して、前記ポリマー
粒子で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、セメン
ト硬化遅延用シートを作製する。そして、このシートを
型枠内に、硬化遅延層が表面となるように、貼付などに
より配設し、無機硬化性組成物(セメントを含む硬化性
組成物)を打設し、養生などの慣用の硬化法により硬化
処理した後、型枠および前記シートを除去し、得られた
コンクリート硬化物の表面から非硬化の無機硬化性組成
物を除去することにより、表面に洗い出し面が形成され
たコンクリート構造物を製造できる。
【0051】前記基材シートとしては、例えば、プラス
チックシートや金属箔などの無孔性シート、紙、織布や
不織布などの多孔性シートなどを使用できる。基材シー
トを構成するポリマーは特に限定されず、例えば、ポリ
エチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ
エチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート
などのポリエステル(特にポリアルキレンテレフタレー
ト);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アク
リル酸共重合体;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリ塩
化ビニル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリビニル
アルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など
が例示される。これらのポリマーは一種または二種以上
使用できる。好ましい基材シートには、ポリエチレンテ
レフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを用
いたプラスチックシートや不織布などが含まれる。基材
シートは単層のシートであってもよく複数の層が積層さ
れた複合シートであってもよい。また、基材シートは未
延伸シートであってもよく、一軸または二軸延伸シート
であってもよい。さらに、基材シートの表面は、火炎処
理、コロナ放電処理、プラズマ処理などにより表面処理
されていてもよい。
【0052】基材シートの厚みは、特に限定されない
が、例えば、5〜500μm(例えば、5〜400μ
m)、好ましくは10〜300μm(例えば、10〜2
00μm)、さらに好ましくは15〜150μm(例え
ば、20〜100μm)程度である。また、セメント硬
化遅延層の厚みは、セメントの硬化に対して遅延効果が
発現する厚みであればよく、例えば、1〜2000μm
(例えば、5〜1500μm)、好ましくは10〜12
00μm、さらに好ましくは50〜1000μm程度で
ある。
【0053】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液の塗布は、
通常のコーティングに使用される塗布手段、例えば、デ
ィップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、
エアーナイフコーター、リバースロールコーター、コン
マコーター、バーコーター、カーテンコーター、スプレ
ーなどを利用できる。簡易かつ均一に懸濁液を塗布でき
ることから、スプレー法などが繁用される。
【0054】上記のようにして得られたセメント硬化遅
延用シートは、打設した無機硬化性組成物に対して均一
な厚みの硬化遅延層により硬化遅延作用を均等に作用さ
せることができると共に、硬化遅延層が薄くても高い硬
化遅延性を付与できる。また、基材フィルムにより補強
できると共に、取扱性に優れるという利点がある。
【0055】なお、前記シートを所望する模様などに対
応した形状に裁断して使用することにより、コンクリー
ト構造物の表面のうちシートと接触する部位に模様や骨
材などが露出した洗い出し面を形成できる。
【0056】コンクリート硬化物の表面の非硬化の無機
硬化性組成物は、水、加圧水、ジェット流などを用いて
洗浄することにより容易に除去できる。洗浄に際し、非
硬化のモルタル組成物を除去するため、刷毛、ブラシな
どを用いてもよい。また、非硬化のモルタル組成物や未
反応のポリマー粒子などは、吸引などの乾式法により除
去することもできる。
【0057】表面に洗い出し面が形成されたコンクリー
ト構造物は以下の方法によっても得ることができる。す
なわち、前記コンクリート構造物は、型枠の底板に、前
記セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を塗布または含浸さ
せ、乾燥して、前記ポリマー粒子で構成されたセメント
硬化遅延層を形成し、無機硬化性組成物を打設して硬化
処理した後、脱型し、得られたコンクリート硬化物の表
面から非硬化の無機硬化性組成物を洗浄等により除去す
ることにより製造できる。この方法において、セメント
硬化遅延用樹脂懸濁液の塗布は前記と同様の方法によっ
て行うことができる。セメント硬化遅延層の厚みは、前
記セメント硬化遅延用シートにおける硬化遅延層と同様
である。
【0058】この方法では、型枠の底板に直接前記懸濁
液を塗布するので、硬化後に基材シートを剥離する必要
がなく、作業効率を高めることができる。
【0059】また、コンクリート表面に洗い出し面が形
成されたコンクリート構造物は、型枠内に無機硬化性組
成物を打設し、その表面に前記セメント硬化遅延用樹脂
懸濁液を撒布し、必要に応じて溶媒を乾燥などにより除
去した後、無機硬化性組成物を養生などの慣用の手段で
硬化させ、脱型すると共に、得られたコンクリート硬化
物の表面から非硬化の無機硬化性組成物を除去すること
により製造することもできる。
【0060】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、無機硬
化性組成物の表面全体に撒布してもよく、部分的、例え
ばパターン状に撒布してもよい。撒布方法は特に限定さ
れないが、均一に撒布できる方法、例えばスプレー法な
どが好ましい。
【0061】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液の撒布量
(撒布密度)は、コンクリート表面に洗い出し面が形成
できる程度であればよく、例えば、洗い出し面を形成す
べきコンクリート表面に対し、ポリマー粒子換算で、1
0〜2000g/m2 、好ましくは20〜1000g/
2 、さらに好ましくは30〜300g/m2 程度であ
る。
【0062】さらに、本発明のセメント硬化遅延用樹脂
懸濁液を利用して、コンクリート表面に凹凸形状が形成
されたコンクリート舗装道路を得ることができる。例え
ば、地面上に無機硬化性組成物を所定幅で所定距離に亘
って打設し、その表面に前記セメント硬化遅延用樹脂懸
濁液を撒布し、必要に応じて溶媒を除去した後、無機硬
化性組成物を硬化処理し、表面から非硬化の無機硬化性
組成物を除去することによりコンクリート舗装道路が得
られる。このコンクリート道路では、表面に凹凸形状を
有する洗い出し面が形成されるので、タイヤとの摩擦係
数が増大し、スリップを防止できる。
【0063】セメント硬化遅延用樹脂懸濁液は、無機硬
化性組成物の表面全体に撒布してもよく、部分的、例え
ばパターン状に撒布してもよい。セメント硬化遅延用樹
脂懸濁液の撒布量(撒布密度)、硬化後の洗浄方法は、
前記と同様である。この方法によれば、スプレー撒布な
どの簡易な手段により道路表面に凹凸形状を形成できる
ので、リング状の石板などを道路表面に埋め込む従来の
方法と比較して、作業効率を大幅に向上できる。
【0064】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液に
含まれるポリマー粒子を構成するポリマーは、加水分解
によってセメント硬化遅延能を発現する。そのため、無
機硬化性組成物と接触した当初はセメント硬化遅延能は
ほとんど発揮されないが、未硬化モルタルやコンクリー
トの強いアルカリ性により加水分解されて、次第に硬化
遅延に有用な成分が遊離し、セメント硬化遅延能が発揮
されるようになる。この加水分解の速度は、無機硬化組
成物中のセメントの硬化が進行するにつれて上昇し、養
生中のコンクリートの発熱により、さらには加熱養生の
場合にはその加熱により最大となり、大きなセメント硬
化遅延能を発現させる。一方、硬化遅延能が発現する段
階のコンクリートは未だ未硬化状態であるものの、既に
流動性がなく、加水分解により硬化遅延成分が遊離して
も、もはやブリード水に溶解して移動することもない。
従って、所望の部位でのみ硬化遅延能を発現でき、セメ
ントの硬化後に洗い出すことにより、コンクリート構造
物の表面を美麗に仕上げることができ、また、例えば文
字、絵画などのパターンを精度よく形成できる。
【0065】装飾材と一体化した表面装飾コンクリート
構造物は、例えば以下の方法により製造できる。すなわ
ち、基体の表面に前記セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を
塗布または含浸させ、乾燥し、加水分解によりセメント
硬化遅延能を発現可能なポリマー粒子で構成されたセメ
ント硬化遅延層を形成し、このセメント硬化遅延層の上
に装飾材を配設し、必要に応じて前記装飾材を硬化遅延
層内に押入し、無機硬化性組成物を打設して、養生など
の慣用の方法により硬化処理した後、脱型し、非硬化の
無機硬化性組成物を除去し、必要に応じて得られたコン
クリート硬化物に固着した装飾材の表面を洗浄すること
により、表面に装飾材が一体に固着したコンクリート構
造物(化粧仕上げブロック、プレキャストコンクリート
など)を得ることができる。
【0066】基体としては、前記基材シート、コンクリ
ート型枠の底板などを利用できる。基体として前記基材
シートを用いる場合には、基材シートの表面に硬化遅延
層が形成されたシートを型枠内に配設し、前記硬化遅延
層の上に装飾材を配設すればよく、基体としてコンクリ
ート型枠の底板を用いる場合には、底板上に形成された
硬化遅延層の上に装飾材を直接配設できる。前記懸濁液
の塗布、装飾材表面の洗浄には、前記の塗布法、洗浄法
を利用できる。
【0067】装飾材としては、種々の材料、例えば、玉
石、黒石、鉄平石などの天然石、人造石などの石材、タ
イルなどのセラミック材、金属材、ガラス材、木材、織
布などが使用される。装飾材は平板状であってもよく、
タイルは通常のタイルのほか、モザイクタイルや割りタ
イルであってもよい。なお、装飾材間には、目地溝を形
成するため、必要に応じて目地棒などの詰め物を施して
もよい。この方法では、タイルなどの装飾材の表面側に
無機硬化性組成物が回りこんでも、加水分解によって生
成した硬化遅延成分により無機硬化性組成物の硬化を抑
制でき、非硬化(半硬化又は未硬化)状態となるため、
装飾材の表面から無機硬化性組成物を除去するための表
面仕上げを、水洗などの洗浄という簡単な操作で効率よ
く、しかも完璧に行うことができる。
【0068】なお、本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸
濁液は、上記の用途のほか、従来の硬化遅延剤と同様の
用途、例えば、夏期における生コンクリートの長期間に
亘る硬化の抑制、大型コンクリート構造物における温度
による応力の緩和などのために、モルタルやコンクリー
トなどの無機硬化性組成物に添加してもよい。
【0069】無機硬化性組成物に含まれるセメントに
は、例えば、気硬性セメント(セッコウ、消石灰やドロ
マイトプラスターなどの石灰);水硬性セメント(例え
ば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメン
ト、アルミナセメント、急硬高強度セメント、焼きセッ
コウなどの自硬性セメント;石灰スラグセメント、高炉
セメントなど;混合セメント)などが含まれる。好まし
いセメントには、例えば、セッコウ、ドロマイトプラス
ターおよび水硬性セメントなどが含まれる。
【0070】前記セメントは、水とのペースト組成物
(セメントペースト)として使用してもよく、砂、ケイ
砂、パーライトなどの細骨材、粗骨材を含むモルタル組
成物やコンクリート組成物として使用してもよい。前記
ペースト組成物及びモルタル組成物は、必要に応じて、
着色剤、硬化剤、塩化カルシウムなどの硬化促進剤、ナ
フタレンスルホン酸ナトリウムなどの減水剤、凝固剤、
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリ
ビニルアルコールなどの増粘剤、発泡剤、合成樹脂エマ
ルジョンなどの防水剤、可塑剤等の種々の添加剤を含ん
でいてもよい。
【0071】
【発明の効果】本発明のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液
によれば、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面
を精度よく形成できる。また、コンクリート製品の表面
に洗い出し面や模様を簡便かつ効率よく形成できる。さ
らに、損傷を抑制しつつ装飾材などにより表面を装飾し
た表面装飾コンクリート製品を得ることができる。
【0072】本発明のコンクリート構造物の製造法によ
れば、表面に洗い出し面や模様が精度よく形成されたコ
ンクリート構造物を簡便且つ効率よく製造できる。ま
た、装飾性の高い表面装飾コンクリート構造物を、装飾
材を損傷させることなく、しかも簡便に製造できる。
【0073】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0074】実施例1 撹拌翼を備えた容量10リットルのオートクレーブに、
無水マレイン酸3452g(35.2モル)、エチレン
グリコール2539g(40.9モル)を入れるととも
に、重合禁止剤としてのハイドロキノン100ppm、
重合触媒としてのテトラ−n−ブトキシチタン50pp
mを添加した。内容物を撹拌し、反応により生成する水
分を除去するため窒素ガスを流通させながら、常圧下、
常温から150℃まで3時間かけて昇温した後、150
℃から210℃まで24時間かけて昇温し、反応を停止
した。得られた不飽和ポリエステルを80℃に冷却し、
油状不飽和ポリエステル(重量平均分子量2250)1
00重量部に対して、ジエチレングリコールモノメタク
リレート40重量部、有機過酸化物(日本油脂(株)
製,「パーブチルオー」)3重量部、架橋触媒としての
酢酸コバルトを50ppmの濃度で添加し混合し、重合
性組成物を得た。この重合性組成物をステンレス製バッ
ト(25cm×40cm×5cm)に高さ2cmになる
ように流し込み、炉内で、120℃で15分間加熱処理
して硬化させた。
【0075】硬化物を室温に冷却し、クラッシャーで粗
粉砕し、さらに冷凍粉砕機により粉砕し、分級して粒径
100μm以下(平均粒径約60μm)の粉末状樹脂を
得た。
【0076】1200mlの水の中に、前記粉末状樹脂
500g、分散剤としてポリオキシエチレンラウリルエ
ーテル0.5g、粘着剤としてポリアクリル酸ソーダ3
0gとポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分30重量
%)150gを添加し、攪拌機により激しく撹拌して、
セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を得た。この懸濁液の粘
度は約10000センチポイズであった。次いで、幅5
cmのテープ(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
の一方の面に、前記セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を、
乾燥後の樹脂層の厚みが500μmとなるように塗布
し、常温で24時間放置して乾燥した。得られたテープ
を、木製コンクリート板用型枠(内容積1m×1m×
(深さ)10cm)の底面に10cm間隔で、前記樹脂
層を上にして貼付した。型枠内に、ポルトランドセメン
ト/砂/水=100/200/55(重量比)のモルタ
ルを高さ3cmとなるように打設し、20cm間隔で鉄
筋(直径1cm×80cm)を配設した後、前記モルタ
ルをさらに合計高さ6cmとなるように打設した。常温
で168時間放置し、硬化した成形プレートを型枠から
離型し、テープを除去した後、水洗しながらタワシで洗
い出し作業を行なった。その結果、テープとの接触部位
だけが2〜3cmの深さで洗い出され、砂の自然色と砂
粒子による粗面を有する幅5cmの洗い出し面が10c
m間隔で明瞭に形成された。
【0077】実施例2 モノマー処方を、無水マレイン酸3136g(32.0
モル)、テレフタル酸531g(3.2モル)、エチレ
ングリコール2538g(40.9モル)とした以外は
実施例1と同様にして得られた不飽和ポリエステル(重
量平均分子量2200)100重量部に、ジエチレング
リコールモノアクリレート20重量部、有機過酸化物
(日本油脂(株)製;パーブチルオー)3重量部、架橋
触媒としての酢酸コバルト0.005重量部を加えて混
合し、重合性組成物を調製した。この重合性組成物をス
テンレス製バット(25cm×40cm×5cm)に高
さ2cmになるように流し込み、炉内で、120℃で1
5分間加熱処理して硬化させた。硬化物を室温に冷却
し、クラッシャーで粗粉砕し、さらに冷凍粉砕機により
粉砕し、分級して粒径100μm以下(平均粒径約60
μm)の粉末状樹脂を得た。
【0078】1200mlの水の中に、前記粉末状樹脂
500g、分散剤としてポリオキシエチレンラウリルエ
ーテル0.5g、粘着剤としてポリアクリル酸ソーダ3
0gとポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分30重量
%)150gを添加し、攪拌機により激しく撹拌して、
セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を得た。得られた懸濁液
を、実施例1で用いた木製型枠の底面に10cm幅にス
プレーにより、乾燥後の厚みが約200μmとなるよう
に塗布し、常温で24時間放置して乾燥させた。型枠内
に実施例1で用いたモルタルを高さ5cmで打設し、2
0cm間隔で実施例1で用いた鉄筋を配設し、モルタル
を合計高さ10cmとなるようにさらに打設した。実施
例1と同様にして硬化させた後、コンクリート成形品を
型枠から離型し、洗い出したところ、前記懸濁液の塗布
部位だけ、砂およびセメントが深さ約2mmで洗い出さ
れた。乾燥後の洗い出し部位には、砂の自然色と砂粒子
の露出した浅い溝状の粗面が形成された。また、懸濁液
の非塗布部は硬化しており、硬化遅延効果は及んでいな
かった。
【0079】実施例3 モノマー処方を、無水マレイン酸3603g(31.1
モル)とグリセリン2674g(29.1モル)とした
以外は実施例1と同様にして得られた不飽和ポリエステ
ル(重量平均分子量1950)100重量部に、ブチル
アクリレート10重量部を添加すると共に、両者の合計
量100重量部に対して、有機過酸化物(日本油脂
(株)製;パーブチルオー)3重量部を添加し、50℃
で混合して重合性組成物を調製した。この重合性組成物
をステンレス製バット(25cm×40cm×5cm)
に高さ2cmになるように流し込み、炉内で、120℃
で15分間加熱処理して硬化させた。硬化物を室温に冷
却し、クラッシャーで粗粉砕し、さらに冷凍粉砕機によ
り粉砕し、分級して粒径100μm以下(平均粒径約6
0μm)の粉末状樹脂を得た。
【0080】1200mlの水の中に、前記粉末状樹脂
500g、分散剤としてポリオキシエチレンラウリルエ
ーテル0.5g、粘着剤としてポリアクリル酸ソーダ3
0gとポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分30重量
%)150gを添加し、攪拌機により激しく撹拌して、
セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を得た。
【0081】型枠(60cm×55cm×(深さ)10
cm)に、実施例1で用いたモルタルを高さ5cmで打
設し、20cm間隔で鉄筋を配設し、モルタルを合計高
さ10cmとなるようにさらに打設した。打設したモル
タルの表面に、上記のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液を
スプレーにより撒布した(ポリマーとして100g/m
2 )。50℃の条件下で24時間養生処理を施し、さら
に24時間室温で放置した後、脱型した。脱型後、硬化
したコンクリート表面上の未硬化のモルタル組成物およ
び残存するポリマー粒子を、ブラシにより取り除き、加
圧水をかけながら、箒でコンクリート表面を洗浄したと
ころ、砂の自然色と砂粒子の露出した美麗な洗い出し面
が形成された。
【0082】実施例4 地面の上に、コンクリートを2m幅で打設した後、その
表面の一部に、実施例3と同様の操作により得られたセ
メント硬化遅延用樹脂懸濁液を、スプレー装置により、
1m2 当たり約100g(ポリマー換算)の割合で撒布
した。常温で3日間放置した後、残存するポリマー粒子
などを、ブラッシングしながら真空掃除機により吸引除
去した結果、コンクリート表面のうち前記懸濁液を撒布
した箇所に凹凸形状を有する洗い出し面が形成された。
こうして得られた道路上で雨天下、車を運転したとこ
ろ、凹凸形状が形成された箇所では、他の箇所と比較し
てタイヤのスリップを顕著に抑制できた。
【0083】実施例5 実施例2と同様の操作により得られたセメント硬化遅延
用樹脂懸濁液を、実施例1で用いた木製型枠の底面の全
面に、乾燥後の厚みが約100μmとなるように塗布
し、常温で24時間乾燥し、ポリマー粒子で構成された
セメント硬化遅延層を形成した。この硬化遅延層の上
に、正方形のタイル(10cm×10cm×(厚み)8
cm)と目地棒(断面10mm×10mmの正方形)を
交互に並べ、実施例1で用いたモルタルを打設した。常
温で168時間放置して硬化させた後、コンクリート成
形品を型枠から離型し、残存するポリマー粒子などを箒
で払い除け、加圧水をかけながらタイル表面を洗浄し
た。その結果、極めて美麗な外観を有する表面装飾コン
クリート板が得られた。なお、タイル表面の付着物は水
洗のみで円滑に除去でき、ワイヤーブラシ、ヘラなどに
よる除去作業は不要であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08F 290/06 MSN C08F 290/06 MSN C08G 63/52 NPD C08G 63/52 NPD E04F 13/02 0231−2E E04F 13/02 F // C04B 103:24

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加水分解によりセメント硬化遅延能を発
    現可能なポリマー粒子を含むセメント硬化遅延用樹脂懸
    濁液。
  2. 【請求項2】 ポリマー粒子を構成するポリマーが不飽
    和ポリエステルである請求項1記載のセメント硬化遅延
    用樹脂懸濁液。
  3. 【請求項3】 不飽和ポリエステルが、主鎖の炭素数が
    4〜6の不飽和多価カルボン酸又はその誘導体を含む多
    価カルボン酸成分と、主鎖の炭素数が2〜4の多価アル
    コール又はその縮合物を含むポリオール成分との反応に
    より得られる不飽和ポリエステルである請求項2記載の
    セメント硬化遅延用樹脂懸濁液。
  4. 【請求項4】 不飽和多価カルボン酸が、マレイン酸、
    無水マレイン酸、フマル酸又はこれらの誘導体である請
    求項3記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液。
  5. 【請求項5】 多価カルボン酸成分が、さらに芳香族多
    価カルボン酸を含む請求項3記載のセメント硬化遅延用
    樹脂懸濁液。
  6. 【請求項6】 多価アルコールが、エチレングリコー
    ル、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの縮
    合物である請求項3記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁
    液。
  7. 【請求項7】 不飽和ポリエステルの重量平均分子量が
    300〜100000である請求項2記載のセメント硬
    化遅延用樹脂懸濁液。
  8. 【請求項8】 不飽和ポリエステルが架橋による硬化物
    である請求項2記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液。
  9. 【請求項9】 硬化物が、不飽和ポリエステルと重合性
    ビニルモノマーと重合開始剤とを含む重合性組成物の硬
    化物である請求項8記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁
    液。
  10. 【請求項10】 表面に洗い出し面が形成されたコンク
    リート構造物の製造法であって、無機硬化性組成物の表
    面に、請求項1記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液又
    はこの懸濁液から溶媒を除去して得られる樹脂組成物を
    接触させ、無機硬化性組成物を硬化処理した後、得られ
    たコンクリート硬化物の表面から非硬化の無機硬化性組
    成物を除去するコンクリート構造物の製造法。
  11. 【請求項11】 基材シートの表面に、請求項1記載の
    セメント硬化遅延用樹脂懸濁液を塗布または含浸させ
    て、加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポ
    リマー粒子で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、
    得られたシートを前記セメント硬化遅延層が表面となる
    ように型枠内に配設し、無機硬化性組成物を打設して硬
    化処理した後、型枠および前記シートを除去すると共
    に、得られたコンクリート硬化物の表面から非硬化の無
    機硬化性組成物を除去する請求項10記載のコンクリー
    ト構造物の製造法。
  12. 【請求項12】 型枠の底板に、請求項1記載のセメン
    ト硬化遅延用樹脂懸濁液を塗布または含浸させて、加水
    分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマー粒
    子で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、無機硬化
    性組成物を打設して硬化処理した後、脱型し、得られた
    コンクリート硬化物の表面から非硬化の無機硬化性組成
    物を除去する請求項10記載のコンクリート構造物の製
    造法。
  13. 【請求項13】 型枠内に無機硬化性組成物を打設し、
    その表面に請求項1記載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁
    液を撒布し、無機硬化性組成物を硬化処理した後、脱型
    すると共に、得られたコンクリート硬化物の表面から非
    硬化の無機硬化性組成物を除去する請求項10記載のコ
    ンクリート構造物の製造法。
  14. 【請求項14】 地面上に無機硬化性組成物を所定幅で
    所定距離に亘って打設し、その表面に請求項1記載のセ
    メント硬化遅延用樹脂懸濁液を撒布し、無機硬化性組成
    物を硬化処理した後、表面から非硬化の無機硬化性組成
    物を除去してコンクリート舗装道路を得る請求項10記
    載のコンクリート構造物の製造法。
  15. 【請求項15】 装飾材と一体化した表面装飾コンクリ
    ート構造物の製造法であって、基体の表面に請求項1記
    載のセメント硬化遅延用樹脂懸濁液を塗布または含浸さ
    せて、加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能な
    ポリマー粒子で構成されたセメント硬化遅延層を形成
    し、このセメント硬化遅延層の上に装飾材を配設し、無
    機硬化性組成物を打設して硬化処理した後、脱型し、非
    硬化の無機硬化性組成物を除去するコンクリート構造物
    の製造法。
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