JPH10306233A - 表面にエポキシ基を有する無機粉末とその製法及び用途 - Google Patents

表面にエポキシ基を有する無機粉末とその製法及び用途

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JPH10306233A
JPH10306233A JP11830197A JP11830197A JPH10306233A JP H10306233 A JPH10306233 A JP H10306233A JP 11830197 A JP11830197 A JP 11830197A JP 11830197 A JP11830197 A JP 11830197A JP H10306233 A JPH10306233 A JP H10306233A
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JP
Japan
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powder
inorganic powder
epoxy group
resin
polyepoxide compound
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JP11830197A
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English (en)
Inventor
Akira Nishihara
明 西原
Yukiya Yamashita
行也 山下
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無機粉末 (例、シリカ、チタニア、アルミナ
等のサブミクロンの微粉末) を、少ない量のエポキシ基
含有有機化合物で表面処理して、粉末表面にエポキシ基
を効果的に付与する。 【解決手段】 2以上のエポキシ基を含有し、Si等の金
属を含有しないポリエポキシド化合物 (例、ビスフェノ
ールAジグリシジルエーテル) またはその溶液を、流動
状態の無機粉末に滴下または噴霧した後、不活性ガス雰
囲気下80〜230℃で熱処理して表面処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面にエポキシ基
を有し、樹脂への添加剤として使用した時にマトリック
スである樹脂に対して優れた密着性と均一分散性とを示
す無機粉末とその製造方法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の無機粉末が、充填材、顔料、チキ
ソトロピー性付与剤、導電粉、滑剤、紫外線吸収剤、難
燃剤などとして、樹脂に添加されている。
【0003】無機粉末の製造方法には、湿式法と乾式法
(気相法)とがあるが、乾式法で製造された無機粉末
は、一般に粒径が非常に小さい微粉末である上、湿式法
で製造された粉末に比べて凝集が少なく、樹脂中での分
散性がよいため、樹脂に練り込んで使用する添加剤とし
て有利である。一方、例えば、水系塗料に添加する顔料
などの粉末では、湿式法で製造された粉末の方が凝集が
起こりにくく、分散性に優れていることがある。従っ
て、用途や使用環境に応じて乾式法または湿式法で製造
された無機粉末が選択される。
【0004】このように無機粉末を樹脂への添加剤とし
て配合する場合、無機粉末が、その表面に樹脂中の成分
と反応する官能基が存在するように表面処理等で修飾さ
れていると、無機粉末の樹脂中での密着性が向上して、
強度、伸び率、耐候性等の性能が向上するという効果が
得られることが知られている。
【0005】この粉末表面に官能基を付与する方法とし
て、官能基を有する加水分解性有機ケイ素化合物(例、
アルコキシシラン) からなるシランカップリング剤で無
機粉末を表面処理する方法が、特にシリカ、チタニア、
アルミナなどの金属酸化物粉末において一般的に行われ
ている。
【0006】一般に無機粉末の表面には水酸基などの官
能基が存在し、この基がシランカップリング剤の加水分
解性の基 (例、アルコキシ基) またはその加水分解で生
じた水酸基と縮合反応することにより、シランカップリ
ング剤が無機粉末の表面に化学的に結合し、粉末表面に
シランカップリング剤が有している官能基が存在するよ
うになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】樹脂との密着性を改善
するために無機粉末の表面に存在させることが望ましい
官能基として、アミノ基などの塩基性の基、カルボン酸
やスルホン酸などの酸基があるが、特に重要なのはエポ
キシ基である。アミノ基や酸基では、密着性の向上が達
成される樹脂種が非常に限定され、また密着性の向上効
果も不十分となることがある。これに対して、エポキシ
基は活性水素と非常に高い反応性を示し、非常に多くの
有機樹脂が活性水素を含有しているので、密着性の向上
が得られる樹脂種が多く、しかも密着性向上効果が大き
い。従って、エポキシ基は無機粉末の修飾に実用上最も
有用な官能基であると言える。
【0008】無機粉末の表面にエポキシ基を付与する方
法として、エポキシ基を有するシランカップリング剤で
無機粉末を表面処理する方法が従来より行われており、
エポキシ基を有するアルコキシシランからなるシランカ
ップリング剤も数種類が市販されている。
【0009】しかし、本発明者らが、エポキシ基を有す
るアルコキシシランからなるシランカップリング剤で無
機粉末を実際に表面処理してみたところ、乾式法で製造
されたシリカ、アルミナ、チタニア等の粉末のようにエ
ポキシ基と高い反応性を示す無機粉末では、無機粉末表
面の水酸基は、シランカップリング剤のアルコキシ基ま
たはその加水分解で生じた水酸基と縮合反応すると同時
に、シランカップリング剤のエポキシ基とも反応してエ
ポキシ基の開環反応が起こり、効果的にエポキシ基を粉
末表面に残留させることが困難であることが判明した。
これはエポキシ基の反応性が非常に高いことに原因があ
る。ただし、エポキシ基の反応性が高いからこそ、エポ
キシ基が残っていれば、樹脂との反応による樹脂への密
着性の向上効果は大きくなる。
【0010】官能基を有するアルコキシシラン類(シラ
ンカップリング剤)は工業用材料としては比較的高価で
あり、また市販されている化合物の種類が極めて少ない
という問題点がある。例えば、無機粉末の配合相手であ
るマトリックス樹脂との相溶性を高めるため、その樹脂
種に応じて脂肪族系、芳香族系、あるいは複素環系など
の化合物が求められるが、エポキシ基を有する入手の容
易な市販のシランカップリング剤としては、グリシドキ
シ型化合物のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ランとエポキシシクロヘキシル型化合物のβ−(3,4−エ
ポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシランにほ
ぼ限られる。
【0011】さらに、シランカップリング剤は、種類の
少なさや価格を度外視しても、分子中に珪素という原子
量の大きい金属元素を有しているため、化合物の分子量
が大きくなるので、無機粉末の表面処理に必要な重量基
準での使用量が多くなる。特に無機粉末が乾式法で製造
された微粉末のように表面積が大きいと、粉末表面に結
合するシランカップリング剤のモル基準での量が増える
ので、分子量の大きいシランカップリング剤の使用は不
利となる。
【0012】このように、エポキシ基を有するシランカ
ップリング剤で無機粉末を表面処理することによる従来
のエポキシ基の付与方法には多くの問題点がある。本発
明は、シランカップリング剤を利用せずに、無機粉末の
表面に効果的にエポキシ基を付与することができる無機
粉末の表面処理手段を確立することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、2以上の
エポキシ基を有する有機化合物であるポリエポキシド化
合物を使用して無機粉末を表面処理することにより上記
課題を解決できることを見出した。即ち、ポリエポキシ
ド化合物で表面処理すると、複数のエポキシ基の1個が
無機粉末の表面の水酸基と反応して開環しても、残りの
エポキシ基は未反応のまま残り易く、少なくとも1個の
未反応のエポキシ基が残留した状態でポリエポキシド化
合物が粉末表面に結合することによって、粉末表面に効
果的にエポキシ基を付与することができる。
【0014】本発明により、「無機粉末の表面に、金属
を含有しないポリエポキシド化合物が結合した、表面に
エポキシ基を有することを特徴とする無機粉末」と、
「無機粉末を、金属を含有しないポリエポキシド化合物
を用いて表面処理することを特徴とする、表面にエポキ
シ基を有する無機粉末の製造方法」とが提供される。こ
の表面にエポキシ基を有する無機粉末は樹脂への添加剤
として有用である。
【0015】好適態様にあっては、無機粉末が乾式法で
製造された酸化ケイ素、酸化チタン、または酸化アルミ
ニウムの粉末であり、表面処理を乾式法により、不活性
ガス雰囲気下80〜230 ℃の範囲で行う。
【0016】本発明において「金属」とは、ケイ素やホ
ウ素のような半金属も含む意味である。従って、本発明
で用いるポリエポキシド化合物はケイ素やホウ素を含有
しておらず、シランカップリング剤のような有機ケイ素
化合物、ならびに有機ボラン類は、本発明で用いるぽり
エポキシド化合物から除外される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において表面をエポキシ基
を付与するために表面処理される無機粉末は、特に制限
されない。無機粉末は湿式法(例、水溶液からの析出)
で製造されたものでも、乾式法で製造されたものでもよ
い。また、無機粉末の化合物種も酸化物に限られるもの
ではなく、窒化物、ホウ化物、硫化物、炭化物、ならび
に硫酸塩、炭酸塩などの各種の水不溶性の塩、さらには
金属粉末のように元素単体であってもよい。さらに、無
機粉末の粒径にも制限はなく、平均粒径が10 nm (0.01
μm) といった微粉末から、平均粒径が1μm以上の比
較的粗大な粉末にまで本発明を適用することができる。
【0018】しかし、本発明により表面にエポキシ基を
付与するのに特に適した無機粉末は、乾式法(即ち、気
相法)で製造された酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アル
ミニウムといった金属酸化物の粉末である。乾式法で製
造されたかかる金属酸化物からなる無機粉末は特に表面
活性が高く、前述したように、従来のエポキシ基含有シ
ランカップリング剤では粉末表面に多量のエポキシ基を
付与することは極めて困難であった。
【0019】乾式法による金属酸化物の粉末の製造は、
一般に対応する塩化物を気相で酸素存在下に加水分解ま
たは燃焼させることにより行われる。例えば、ヒューム
ドシリカとも呼ばれる乾式法シリカやホワイトアルミナ
とも呼ばれる乾式法アルミナは、それぞれ四塩化ケイ素
または無水三塩化アルミニウムを気相で酸水素炎中で燃
焼加水分解することにより製造される。塩素法と呼ばれ
る酸化チタンの製造では、四塩化チタンを気化させ、酸
素ガスと接触させて燃焼させることにより製造が行われ
る。
【0020】このような乾式法で製造された無機酸化物
は、一般に粒径がサブミクロン、通常は数nm〜数百nm、
例えば、10〜100 nmの範囲内と非常に微細であるが、製
造過程で水のような液体と接触していないため凝集は非
常に少ない。また、微粉末であることに加えて、揮発性
の原料塩化物の精製が容易であるため、粉末の純度が湿
式法による粉末に比べて非常に高いという特徴も有す
る。
【0021】しかし、これらの粉末は、一般に表面に水
酸基 (例えば、酸化ケイ素の場合にはシラノール基) を
有しているため、表面が親水性であり、樹脂とのなじみ
(親和性) が必ずしも良好ではなく、配合時に粉末が凝
集して均一に練り込むことが困難である。
【0022】かかる粉末を本発明に従って表面処理する
と、粉末表面に樹脂と反応性を有するエポキシ基が多量
に付与される結果、樹脂に対する密着性が向上すると同
時に、粉末表面が有機物で被覆されるので、粉末表面の
樹脂との親和性が向上し、粉末を樹脂中に均一に練り込
む作業も容易になる。
【0023】本発明によれば、無機粉末を、金属を含有
しないポリエポキシド化合物により表面処理する。この
表面処理により、ポリエポキシド化合物が持っている複
数のエポキシ基の1個が無機粉末の表面の水酸基と反応
して開環するが、残りのエポキシ基は未反応のまま残
り、少なくとも1個の未反応のエポキシ基が残留した状
態でポリエポキシド化合物がエポキシ基の開環反応によ
って粉末表面に化学的に結合し、粉末表面に効果的にエ
ポキシ基を付与することができる。即ち、無機粉末は、
粉末表面に化学的に結合したエポキシを含有する有機物
で被覆されるようになり、多量のエポキシ基を粉末表面
に付与することが可能となる。
【0024】表面処理に使用するポリエポキシド化合物
は、シランカップリング剤、シリコーンオイル、有機ボ
ラン等のようにケイ素やホウ素などの金属を含有せず、
2個以上のエポキシ基を有している有機化合物であれば
よい。分子中のエポキシ基の結合位置も特に限定されな
いが、分子の両端に2個のエポキシ基が存在する化合物
が好ましい。本発明で使用するのに適したポリエポキシ
ド化合物の1例は次式で示されるジエポキシド化合物で
ある。
【0025】
【化1】
【0026】上記式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素
または低級アルキル基であり、Xはモノマーまたはオリ
ゴマー型の2価有機基であって、ヘテロ原紙(例、酸
素、窒素、イオウなど)および/または置換基(例、ハ
ロゲン、ヒドロキシル、シアノ、アミノ等)を含有して
いてもよく、R1とR2およびR3とR4は一緒に結合してアル
キレンまたはアルケニレン鎖を形成していてもよい。
【0027】上記ジエポキシド化合物と粉末表面の水酸
基との反応は次式で示すことができる。
【0028】
【化2】
【0029】但し、本発明で表面処理に使用するポリエ
ポキシド化合物は、上の式で示されるジエポキシド化合
物に限定されるものではなく、トリエポキシド化合物や
テトラエポキシド化合物といった、3個以上のエポキシ
基を有するものでもよい。それにより、少ないポリエポ
キシド化合物でより多くのエポキシ基を粉末表面に付与
することできる。
【0030】この種のポリエポキシド化合物は、エポキ
シ樹脂のモノマーまたはオリゴマーとして多様な化合物
が市販されている。従って、例えば、無機粉末を配合す
る樹脂が芳香族系の樹脂である場合には芳香族系のポリ
エポキシド化合物、脂肪族系の樹脂の場合には脂肪族系
のポリエポキシド化合物というように、樹脂種に合わせ
て親和性の高い同種のポリエポキシド化合物を選択する
ことができる。
【0031】本発明において使用可能なポリエポキシド
化合物(エポキシ樹脂)の例としては、ビスフェノール
Aジグリシジルエーテル、N,N-ジ (グリシジル) アニリ
ン、1,1,1-トリス (グリシドキシメチル) プロパン、3,
4-エポキシシクロヘキシルメチル・3,4-シクロヘキシル
カルボキシレート、テトラメチレングリコールジグリシ
ジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、グリ
シドールなどが挙げられるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0032】上記のエポキシ樹脂はいずれも市販されて
おり、製品名を示すと、日本化薬社製:BREN-S, EPPN-2
01, GAN, GOT, AK601 、日本チバガイキー社製:PY307,
EPN-1138, EPN-1139, PY-306, MY-720, XN-1034, DY-0
22, CY-184, CY-192, CY-179, CY-177, CY-175, PT-81
0) 、住友化学社製:ELM-434, ELM-434HV, 旭電化社
製:EP-4900, EP-4080, EP-4000, ED-505, ED-506 、三
井石油化学社製:R540, R508, R581、東都化成社製:YH
-434, YH-434L, ST-3000, YD-716, YH-300, PG-202, PG
-207, YD-171等が挙げられる。
【0033】表面処理は、ポリエポキシド化合物を適当
な有機溶媒に溶解させた溶液中に無機粉末を懸濁させる
といった湿式法で行うことも可能である。ただし、無機
粉末が乾式法で製造されたものである場合には、乾式法
で製造された無機粉末に固有の特性、特に凝集しておら
ず分散性に優れているという特性を損なわないために、
乾式法で表面処理を行うことが好ましい。乾式法による
表面処理は、この利点に加えて、表面処理に用いるポリ
エポキシド化合物の量が少量でよく、その付着量の制御
が容易であり、さらに湿式法では必要な処理後の粉末の
分離が不要であるという利点もある。
【0034】乾式法による無機粉末の表面処理は、例え
ば無機粉末を容器内で適当な手段により流動状態に保持
しておき、ここにポリエポキシド化合物それ自体 (液状
の場合) またはその溶液を滴下または噴霧して、粉末表
面にポリエポキシド化合物を均一に付着させ、次いで粉
末を適当な温度に加熱して、上記のエポキシ基の反応を
十分に進行させることにより実施できる。ポリエポキシ
ド化合物が液状の場合でも、均一に付着させるには、適
当な溶媒で希釈した溶液状で使用する方が好ましい。
【0035】処理に用いる溶媒は、使用するポリエポキ
シド化合物を溶解できるものであれば特に限定されない
が、代表例としては、アセトン、メタノール、エタノー
ル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジイソプロピ
ルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0036】乾式法で製造されたサブミクロンの無機微
粉末は、攪拌だけで容易に流動状態にすることができる
が、流動状態にする手段は別の方法でもよい。無機粉末
が例えば平均粒径で1μm以上と比較的粗大である場合
には、流動床で採用されているような粉末の流動手段を
採用してもよい。流動状態に保持した粉末へのポリエポ
キシド化合物またはその溶液の噴霧または滴下は、常温
で加熱下でも実施できる。滴下または噴霧したポリエポ
キシド化合物はほぼ全量が無機粉末に付着するので、表
面処理に用いるポリエポキシド化合物の量は、最大で
も、粉末表面の全ての水酸基のモル数と等モル量または
それよりやや過剰 (例、化学量論量の1.2倍以下) で十
分である。
【0037】粉末表面の水酸基の全部にポリエポキシド
化合物を結合させなくても、粉末表面に十分なエポキシ
基が付与されるので、粉末表面に付与したいエポキシ基
の量や疎水性の程度の程度に応じて、表面処理に用いる
ポリエポキシド化合物の量を決定すればよい。例えば、
上記等モル量の20〜50%程度と少量のポリエポキシド化
合物を使用しても、粉末表面に十分なエポキシ基を付与
することができる。いずれにしても、乾式法による表面
処理では、ポリエポキシド化合物の使用量は湿式法に比
べて少なくてすむ。
【0038】その後、上に示したような粉末表面の水酸
基とポリエポキシド化合物の1つのエポキシ基との反応
を進行させるため、無機粉末を加熱して熱処理する。こ
の熱処理は、処理剤 (ポリエポキシド化合物) の酸化を
防ぐため、不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性
ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ
る。熱処理中の無機粉末は、流動状態に保持する必要は
ない。
【0039】熱処理温度は、使用するポリエポキシド化
合物によってエポキシ基の反応温度が異なるため特に限
定されないが、通常は80〜250 ℃、好ましくは 100〜20
0 ℃の範囲内で熱処理を行う。温度が250 ℃を超える
と、ポリエポキシド化合物の揮発または分解が進み、粉
末表面に十分な量のポリエポキシド化合物を結合させる
ことが困難となる場合がある。一方、温度が80℃より低
いと、ポリエポキシド化合物の粉末表面への化学結合が
十分に進行しなかったり、溶媒が完全に蒸発せずに残留
して、粉末の性能を妨害することがある。
【0040】熱処理時間は特に限定されず、熱処理温度
やポリエポキシド化合物の種類によっても異なるが、好
ましくは1〜6時間、より好ましくは1〜3時間であ
る。熱処理時間が短すぎると、熱処理温度が低すぎる場
合と同様の問題を生ずる。熱処理温度は長くなってもよ
いが、不必要に長くしても効果の改善はそれ以上に得ら
れず、コストの無駄である。
【0041】この熱処理により、上記
【化2】の反応式に示すように、ポリエポキシド化合物
の1つのエポキシ基が粉末表面の水酸基と反応する。し
かし、立体障害もあって残りのエポキシ基、特に分子の
反対側に結合したエポキシ基は粉末表面と反応しにく
い。その結果、少なくとも1つの未反応のエポキシ基を
残してポリエポキシド化合物が粉末表面に結合し、こう
して粉末表面にエポキシ基が付与される。また、粉末が
エポキシ基を有する有機物で被覆されるため、粉末表面
は疎水性が増し、樹脂やゴムとの親和性が向上する。無
機粉末が、酸化物以外のものでも、無機粉末表面には一
般に活性水素を有する官能基が存在し、この官能基の活
性水素とエポキシ基との反応によりモノエポキシド化合
物は粉末表面に結合する。
【0042】無機粉末の表面に存在するエポキシ基の量
は、次に述べる溶媒抽出等の手段で粉末表面に結合して
いないポリエポキシド化合物を粉末から除去した後、例
えばJIS: K7236に記載されているエポキシ当量の測定方
法に従って求めることができる。
【0043】また、乾式法で粉末表面に結合させたポリ
エポキシド化合物の量 (以下、粉末表面への固定化量と
いう) は、溶媒抽出法により求めることが簡便である。
溶媒抽出法は、表面処理後の無機粉末を、未反応のポリ
エポキシド化合物を溶解することができる適当な有機溶
媒中に懸濁させて加熱攪拌することにより、未反応のポ
リエポキシド化合物を溶媒中に完全に抽出し、粉末を濾
過して分離した後、濾液 (抽出液) 中に溶解しているポ
リエポキシド化合物の量または無機粉末中の炭素量を定
量する方法である。
【0044】濾液中の未反応ポリエポキシド化合物の定
量は、抽出液を蒸発させて溶媒を完全に除去し、残渣の
重量から求める方法、或いはガスクロマトグラフィー、
核磁気共鳴等の機器分析によって定量する方法などが可
能であり、無機粉末の炭素含有量は、例えば、濾液から
分離した無機粉末を減圧乾燥して溶媒を完全に除去した
後、元素分析等の手法で決定することができる。
【0045】本発明による表面処理法では、エポキシ基
の開環反応により二級または三級アルコール性の水酸基
が生成するので、粉末表面を被覆している有機基中にか
かる水酸基が存在する。このアルコール性水酸基が実用
上何らかの弊害を生じる可能性があるときは、これをさ
らに他の化合物と反応させて保護することが可能であ
る。この保護方法は特に限定されないが、一般にアルコ
ール化合物と反応性の高い、カルボン酸塩化物、酸無水
物、イソシアン酸、有機シリル化合物等との反応が挙げ
られる。
【0046】本発明に従って表面処理することにより得
られた、表面にエポキシ基を有する無機粉末は、各種の
樹脂への添加剤として有用であり、添加剤の機能は、そ
の無機粉末の特性に応じて、充填材、顔料、チキソトロ
ピー性付与剤、導電粉、滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤な
ど多様であり、特に制限されるものではない。
【0047】このエポキシ基含有無機粉末の添加が特に
適していて、それにより粉末の密着性が著しく向上する
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、
アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、フェ
ノール樹脂等が挙げられが、場合によってはフッ素樹
脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等へ
の適用も可能である。
【0048】以下の実施例は本発明を例示するものであ
り、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0049】
【実施例】
(実施例1〜8)いずれも対応する塩化物から乾式法によ
り製造された下記の金属酸化物型の無機粉末 (全て日本
アエロジル社製) を、本発明に従って表面処理した。
【0050】無機粉末 アエロジル200 :平均粒径12 nm 、1g当たり約1mmol
のシラノール性水酸基を粉末表面に含有するシリカ微粉
末; アエロジル300 :平均粒径7 nm、1g当たり約0.6 mmol
のシラノール性水酸基を粉末表面に含有するシリカ微粉
末; アエロジルP-25:平均粒径21 nm のチタニア微粉末; アエロジルAluminum Oxide C:平均粒径13 nm のアルミ
ナ微粉末。
【0051】表面処理は、水酸基当量で20 mmol に相当
する量の無機粉末 (アエロジル200の場合で20g) をミ
キサーに入れ、2000 rpmで攪拌して流動状態に保持し、
これに表1に示す種類および量のポリエポキシド化合物
をアセトン8gに溶解した溶液を約3分間かけて滴下す
ることにより添加した後、得られた粉末を1リットルの
セパラブルフラスコに移し、窒素気流下で表1に示す温
度および時間で熱処理して表面処理を終了した。
【0052】こうして表面処理した無機粉末から、次に
述べるようにして溶媒抽出法により未反応の結合してい
ないポリエポキシド化合物を除去した。即ち、粉末試料
10gをアセトン500 mlに懸濁させ、アセトン還流温度に
一晩加熱攪拌した。その後、この懸濁液を濾過し、回収
された無機粉末をアセトンとヘキサンで十分に洗浄し、
減圧乾燥して付着する溶媒を完全に除去した。
【0053】こうして表面処理後に未反応ポリエポキシ
ド化合物を除去した無機粉末の表面に存在するエポキシ
基を、JIS: K7236に記載のエポキシ当量の測定方法に従
って求めた。エポキシ当量の測定結果を、エポキシ基1
モル当たりの粉末のグラム数として表1に一緒に示す。
【0054】また、上記のように未反応ポリエポキシド
化合物を除去した無機粉末の炭素含有量を元素分析法に
より測定し、表面処理により粉末に結合したポリエポキ
シド化合物の量を求めた。その結果から、使用したポリ
エポキシド化合物のうち無機粉末に固定化されたポリエ
ポキシド化合物の割合 (固定化率、%) を算出し、その
結果の表1に併せて示す。
【0055】(比較例1)モノエポキシド化合物を用い
て、実施例1〜8と同様に表面処理およびその後の測定
を行った。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】表1の実施例に示すように、本発明に従っ
て、ポリエポキシド化合物で無機粉末を表面処理する
と、ポリエポキシド化合物を高い固定化率で化学結合に
より無機粉末に固定することができ、表面処理された無
機粉末の表面にエポキシ基が付与された。こうして無機
粉末の表面にエポキシ基を有する有機物が化学結合によ
り固定されると、この粉末を樹脂に配合した時に、樹脂
中の活性水素と粉末表面のエポキシ基が化学反応するこ
とで無機粉末が樹脂中に固定され、粉末の樹脂への密着
性が著しく向上する。その結果、強度、耐食性、耐候性
などにも好影響を生ずる。
【0058】また、この表面処理により無機粉末の表面
がポリエポキシド化合物で被覆される結果、無機粉末の
表面が疎水性になり、特に無機粉末を樹脂に練り込んで
使用する場合には、粉末をより均一に練り込むことがで
き、かつ練り込み作業も容易になる。
【0059】無機粉末が、実施例で使用したような乾式
法で製造された微粉末であると、表1に示すようにエポ
キシ当量が約1800〜8000というように、粉末表面に多量
のエポキシ基が存在するので、エポキシ基による樹脂へ
の密着性向上効果はさらに一層高まる。
【0060】これに対して、比較例1に示すように、モ
ノエポキシド化合物を使用した場合には、この化合物の
粉末への固定は可能であるが、粉末への結合時にエポキ
シ基がすべて開環してしまい、粉末表面にエポキシ基を
付与するという目的は達成することができない。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、無機粉末をポリエポキ
シド化合物で表面処理することによって、少量の有機物
を使用して、無機粉末の表面の確実かつ効果的にエポキ
シ基を付与することができ、無機粉末を樹脂に配合した
時の樹脂への粉末の密着性を改善することができる。
【0062】特に表面処理を乾式法で実施すると、表面
処理に用いたポリエポキシド化合物のほとんどを粉末表
面に化学結合させることができ、効率が非常に高い。ま
た、無機粉末が乾式法で製造された粉末である場合に
は、表面処理も乾式法で実施すると、表面処理中に粉末
の凝集が起こりにくく、乾式法で製造された無機粉末の
特性、特に良好な分散性が表面処理により悪影響を受け
ることが防止される。
【0063】また、表面処理により無機粉末の表面がポ
リエポキシド化合物で被覆されて、無機粉末の表面が疎
水性になるので、樹脂への練り込みが均一かつ容易にな
るという別の効果も生ずる。
【0064】さらに、シランカップリング剤とは異な
り、多様なポリエポキシド化合物が市販されており、表
面処理する粉末の用途や求められる特性に応じて多種類
のポリエポキシド化合物から最適の種類のものを選択し
て表面処理に使用することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機粉末の表面に、金属を含有しないポ
    リエポキシド化合物が結合した、表面にエポキシ基を有
    することを特徴とする無機粉末。
  2. 【請求項2】 無機粉末が乾式法で製造された酸化ケイ
    素、酸化チタン、または酸化アルミニウムの粉末であ
    る、請求項1記載の無機粉末。
  3. 【請求項3】 無機粉末を、金属を含有しないポリエポ
    キシド化合物を用いて表面処理することを特徴とする、
    表面にエポキシ基を有する無機粉末の製造方法。
  4. 【請求項4】 表面処理を不活性ガス雰囲気下80〜230
    ℃の範囲で行う、請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 無機粉末が乾式法で製造された酸化ケイ
    素、酸化チタン、または酸化アルミニウムの粉末であ
    り、表面処理を乾式法で行う、請求項3または4記載の
    方法。
  6. 【請求項6】 請求項1または2記載の表面にエポキシ
    基を有する無機粉末からなる樹脂への添加剤。
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