JPH1030512A - 筒内噴射エンジンの燃料圧力制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】エンジンによって駆動される高圧燃料ポンプに
負担をかけることなく、始動時の燃料圧力の立上がりを
良好にし、インジェクタの燃料噴霧特性を向上させて、
始動時間の短縮を図る。 【解決手段】燃料ライン３に、エンジン１によって駆動
される高圧燃料ポンプ７と電動式補助燃料ポンプ１２と
を併設し、始動時に電動式補助燃料ポンプ１２を駆動し
て高圧ライン３ｂの燃料圧力を立上げ、インジェクタ２
から各気筒の燃焼室１ａへ噴射される燃料の噴霧特性を
良好にする。そして、高圧ライン３ｂの燃料圧力が設定
圧力以上で、しかもエンジン回転数が完爆回転数以上に
達したとき、電動式補助燃料ポンプ１２を停止させ、高
圧ライン３ｂに対し高圧燃料ポンプ７のみから燃料を加
圧送給する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、始動時に電動式補
助燃料ポンプを駆動させて燃料圧力を早期に立ち上げる
筒内噴射エンジンの燃料圧力制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】周知のように、燃焼室内に燃料を直接噴
射する、この種の筒内噴射エンジンでは、燃料を燃焼室
内の圧力（いわゆる筒内圧）に抗し得る圧力で噴射させ
る必要があり、この燃料圧力を発生させる高圧燃料ポン
プとしては、エンジンの出力を駆動源とするエンジン駆
動式高圧燃料ポンプが広く採用されている。

【０００３】しかし、エンジン駆動式高圧燃料ポンプ
は、始動時等、エンジン回転数の低い状態では吐出量が
少なく、インジェクタに連通する高圧ラインの燃料圧力
を十分に高めることができない。その結果、インジェク
タの燃料噴霧特性が悪くなり良好な始動性能を得ること
ができず、始動に要する時間が長時間化してしまう。

【０００４】特に、極低温下（例えば、−２５℃以下）
での始動においては、バッテリ電圧が低下し、しかもオ
イル粘性が高くなるためクランキング回転数が８０rpm
程度に低下してしまい、高圧燃料ポンプの燃料圧力、燃
料流量が共に不足し、始動性能の低下がより顕著に現れ
る。

【０００５】例えば、特開昭６０−２３７１５８号公報
には、始動時の燃料流量を確保する手段として、エンジ
ン駆動式高圧燃料ポンプに燃料を送給するフィードポン
プを逆止弁を介して高圧ラインにバイパス接続し、始動
時等においてフィードポンプの吐出圧が高圧ラインの燃
料圧力より高いときは、フィードポンプからの吐出燃料
を逆止弁を経て上記高圧ラインへ直接供給する技術が開
示されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記先行技術
では、通常のフィードポンプから送給される燃料を、エ
ンジン駆動式高圧燃料ポンプを迂回して高圧ラインに導
いているに過ぎないため、高圧ラインに対する燃料流量
を確保することはできるものの、燃料圧力を十分に上昇
させることができない。すなわち、筒内噴射エンジンに
おいて、インジェクタから筒内圧に抗して燃料を噴射さ
せるためには高圧ラインの燃料圧力が、3〜15MPa 程度
必要であるが、フィードポンプのフィード圧は0.3MPa
程度に過ぎず、このフィードポンプからの送給圧では高
圧ラインの燃料圧力を十分な噴霧特性を得るまでに高め
ることができず、結局、始動後のエンジン回転の上昇に
よりエンジン駆動式高圧燃料ポンプからの吐出燃料量が
増加して高圧ラインの燃圧が高くなるまでは良好な始動
性能を得ることが出来ず、始動時に高圧ラインの燃料圧
力を短時間で高めることはできない。

【０００７】始動時等において短時間で高圧ラインの燃
料圧力を高める手段として、上記先行例においては、フ
ィードポンプの容量を大きし、又、従来のシステムにお
いてはエンジン駆動式高圧燃料ポンプの容量を大きくす
れば良いが、必要以上のポンプ容量の大型化は、駆動損
失が大きくなり、通常運転時のエンジン負荷が増加する
ばかりでなく、コストの高騰を招くだけ実現性に乏し
い。

【０００８】本発明は、上記事情に鑑み、エンジン負荷
を増加させることなく、始動時の燃料圧力を短時間で上
昇可能とし、良好な始動性能を得ることの出来る筒内噴
射エンジンの燃料圧力制御装置を提供することを目的と
する。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、燃料ラインにエンジン駆動式高圧燃料ポンプ
を配設すると共に、このエンジン駆動式高圧燃料ポンプ
の下流に高圧プレッシャレギュレータを配設し、上記エ
ンジン駆動式高圧燃料ポンプと上記高圧プレッシャレギ
ュレータとの間を高圧ラインとし、燃料タンクから上記
エンジン駆動式高圧燃料ポンプ上流までを低圧デリバリ
ラインとし、上記高圧プレッシャレギュレータ下流から
上記燃料タンクまでを低圧リターンラインとし、上記低
圧デリバリラインにフィードポンプを介装し、又上記高
圧ラインに燃焼室へ燃料を直接噴射するインジェクタを
接続した筒内噴射エンジンにおいて、上記高圧ラインと
上記低圧デリバリラインの上記フィードポンプ下流とを
補助ラインを介して連通し、この補助ラインに、始動時
に駆動し、エンジン完爆後或いは上記高圧ラインの燃料
圧力が設定値以上のときの少なくとも一方の状態で停止
する電動式補助燃料ポンプを介装したことを特徴とす
る。

【００１０】すなわち、本発明では、エンジン始動時、
電動式補助燃料ポンプを駆動させ該電動式補助燃料ポン
プによりフィードポンプから送給される燃料を高圧ライ
ンへ加圧送給して、この高圧ラインの燃料圧力を上昇さ
せる。そして、エンジン完爆、或いは高圧ラインの燃料
圧力が設定値以上の少なくとも一方の状態のとき上記電
動式補助燃料ポンプの駆動を停止し、エンジン駆動式燃
料ポンプのみから上記高圧ラインへ燃料を加圧送給す
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の一
実施の形態を説明する。図１に燃料ラインを中心とする
筒内噴射エンジンの全体概略を示す。同図の符号１はエ
ンジンで、このエンジン１の各気筒の燃焼室１ａに筒内
噴射用インジェクタ２が臨まされている。

【００１２】又、符号３は上記インジェクタ２に対して
燃料を供給する燃料ラインで、この燃料ライン３の燃料
タンク４側に電動式フィードポンプ５が介装され、その
下流に燃料フィルタ６を介して高圧燃料ポンプ７が介装
されている。この高圧燃料ポンプ７は、エンジン１の出
力軸であるクランクシャフト１ｂにベルト８を介して連
設し、このエンジン１の出力により回転駆動する。又、
上記高圧燃料ポンプ７の吐出側がコモンレール９に連通
され、このコモンレール９に、気筒毎に配設したインジ
ェクタ２が連通されている。更に、上記コモンレール９
に連通する燃料リターンラインが高圧プレッシャレギュ
レータ１０、低圧プレッシャレギュレータ１１を介して
上記燃料タンク４に連通されている。

【００１３】上記燃料ライン３は、燃料タンク４から高
圧燃料ポンプ７の上流までが低圧デリバリライン３ａ、
高圧燃料ポンプ７の下流からコモンレール９を経て高圧
プレッシャレギュレータ１０までが高圧ライン３ｂ、こ
の高圧プレッシャレギュレータ１０の下流から上記燃料
タンク４までが低圧リターンライン３ｃを構成してい
る。

【００１４】更に、上記低圧デリバリライン３ａの上記
燃料フィルタ６下流と上記コモンレール９とが補助ライ
ン３ｄを介して連通され、この補助ライン３ｄに電動式
補助燃料ポンプ１２が介装され、又、上記各燃料ポンプ
７，１２の下流に上記コモンレール９から各燃料ポンプ
７，１２側へ燃料が逆流するのを防止する逆止弁１３
ａ，１３ｂが介装され、更に上記両燃料ポンプ７，１２
へ送給される燃料の余剰分を排出する燃料リリーフライ
ン３ｅが上記低圧リターンライン３ｃの高圧プレッシャ
レギュレータ１０と低圧プレッシャレギュレータ１１と
の間に連通されている。

【００１５】上記電動式補助燃料ポンプ１２は、周知の
マイクロコンピュータを中心に構成する電子制御装置
（ＥＣＵ）１４からの制御信号に従ってＯＮ／ＯＦＦ動
作される。この電子制御装置１４の入力端子には、エン
ジン回転数ＮEをクランクシャフト１ｂの回転等から検
出する回転数センサ１５と上記コモンレール９等の高圧
ライン３ｂに臨まされて、この高圧ライン３ｂの燃料圧
力ＰFUを検出する燃料圧力センサ１６、及びスタータス
イッチ１７等が接続され、この両センサ１５，１６の検
出信号、及びスタータスイッチ１７のＯＮ／ＯＦＦ信号
に基づき上記電動式補助燃料ポンプ１２の駆動、或いは
停止を制御する。

【００１６】以下、図２に示すフローチャートに従い上
記電子制御装置１４で実行する上記電動式補助燃料ポン
プ（以下、補助燃料ポンプと略す）１２の制御動作につ
いて説明する。

【００１７】図示しないイグニッションスイッチをＯＮ
すると、電動式フィードポンプ５がＯＮ動作して、燃料
タンク４の燃料を燃料ライン３へ供給すると共に、電子
制御装置１４に電源が投入される。電子制御装置１４で
は、先ず、システムをイニシャライズ（フラグの値をク
リア等）した後、図２に示す補助燃料ポンプ制御ルーチ
ンが実行される。そして、ステップＳ１でスタータスイ
ッチ１７がＯＮか否かを調べる。イグニッションスイッ
チをＯＮした直後のスタータスイッチ１７はＯＦＦ状態
に有るため、ステップＳ２へ進み、スタータスイッチ判
別フラグＦｌａｇ１の値を参照する。このスタータスイ
ッチ判別フラグＦｌａｇ１のイニシャル値は０であるた
め、そのままルーチンを抜ける。

【００１８】そして、スタータスイッチ１７をＯＮして
エンジンを始動させると、上記ステップＳ１からステッ
プＳ３へ進み、上記スタータスイッチ判別フラグＦｌａ
ｇ１をセットし（Ｆｌａｇ１←１）、ステップＳ４へ進
み、補助燃料ポンプ１２をＯＮ動作させ、ルーチンを抜
ける。

【００１９】上記補助燃料ポンプ１２がＯＮ動作する
と、電動式フィードポンプ５から送給された燃料が補助
ライン３ｄに介装されている上記補助燃料ポンプ１２に
て加圧され、高圧燃料ポンプ７を迂回して高圧ライン３
ｂへ送られ、高圧ライン３ｂの燃料圧力ＰFUを急速に上
昇させる。

【００２０】そして、エンジンが自立運転した後、スタ
ータスイッチ１７をＯＦＦすると、ステップＳ１からス
テップＳ２へ分岐し、スタータスイッチ判別フラグＦｌ
ａｇ１の値を参照し、Ｆｌａｇ１＝１であるため、ステ
ップＳ５へ進む。ステップＳ５，Ｓ６では、上記補助燃
料ポンプ１２の停止時期を、燃料圧力ＰFUとエンジン回
転数ＮEとに基づいて判別する。そして、燃料圧力ＰFU
が設定圧力ＰFUO（例えば、３ＭＰａ）未満、或いはエ
ンジン回転数ＮEが完爆回転数ＮEO未満のときは、ステ
ップＳ４へ進み、補助燃料ポンプ１２のＯＮ動作を維持
し、ルーチンを抜ける。

【００２１】そして、上記燃料圧力ＰFUが設定圧力ＰFU
O 以上で、且つ、エンジン回転数ＮEが完爆回転数ＮEO
以上になったとき、ステップＳ７へ進み、補助燃料ポン
プ１２をＯＦＦ動作させてルーチンを抜ける。

【００２２】補助燃料ポンプ１２がＯＦＦ動作したとき
の高圧ライン３ｂの燃料圧力ＰFUは設定圧力ＰFUOまで
十分に高められており、しかも、エンジン回転数ＮEが
完爆回転数ＮEO以上に上昇しているため、エンジン１に
よって駆動する高圧燃料ポンプ７にて十分に加圧された
燃料が高圧ライン３ｂへ送給される。従って、始動時等
において高圧ライン３ｂの燃料圧力ＰFUが低いときであ
っても、エンジン回転数が上昇して高圧燃料ポンプ７か
ら送給される燃料の圧力が十分に高められる前に、上記
補助燃料ポンプ１２により高圧ライン３ｂの燃料圧力Ｐ
FUが急激に上昇されるため、始動時のインジェクタ２か
らは良好な噴霧特性を有する燃料が噴射され、始動時間
の短縮化が図れる。

【００２３】従って、高圧燃料ポンプ７の容量を、アイ
ドル時から最大出力時までの必要流量に対応して設定す
れば良く、相対的に、高圧燃料ポンプ７の容量を小さく
することができ、この高圧燃料ポンプ７の小型軽量化に
より、製造コストの軽減が図れるばかりでなく、通常運
転時の駆動損失が低減し、しかもエンジン房内の艤装性
が良くなり、設計の自由度を確保することができる。
又、エンジン始動時における高圧燃料ポンプ７の燃料圧
力の立ち上がり特性を緩く設定することが可能となり、
その分、ポンプ内摺動部のクリアランスを十分確保する
ことができ、製造コストの削減、及び耐久性の向上を図
ることができる。一方、始動時の高圧ライン３ｂの燃料
圧力ＰFUの立ち上がり特性は、補助燃料ポンプ１２にて
上記高圧燃料ポンプ７とは別個に設定することができる
ため、始動時の燃料圧力ＰFUの立ち上がり特性を、該ポ
ンプを組み付けるエンジンに対応して比較的自由に設定
することができる。

【００２４】

【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
エンジン駆動式高圧燃料ポンプの上下流を補助ラインを
介してパイパスし、この補助ラインに電動式補助燃料ポ
ンプを介装し、この電動式補助燃料ポンプを、始動時か
らエンジン完爆後或いは高圧ラインの燃料圧力が設定値
以上の少なくとも一方の状態になるまで駆動させ、エン
ジン完爆或いは高圧ラインの燃料圧力が設定値以上の少
なくとも一方の状態になったとき停止させるようにした
ので、エンジン駆動式高圧燃料ポンプの燃料送給量の少
ない始動時等の低エンジン回転時には、電動式補助燃料
ポンプにより高圧ラインの燃料圧力を速やかに上昇させ
ることができ、始動時におけるインジェクタの噴霧特性
が向上し、良好な始動性能が得られる。

【００２５】又、始動時の燃料圧力の立ち上がりが電動
式補助燃料ポンプにより補償されるため、エンジン駆動
式高圧燃料ポンプの容量はアイドル時から最大出力時ま
での必要流量に応じて設定すればよく、相対的にポンプ
容量が小さくなり、その分、エンジン駆動式高圧燃料ポ
ンプを小型軽量化することができ、エンジン房内の艤装
性が良くなり設計の自由度が増す。しかも、エンジン駆
動式高圧燃料ポンプの小型軽量化により、通常運転時の
駆動損失を低減することができるばかりでなく、製造コ
ストを削減することができる。

【００２６】更に、始動時の燃料圧力の立ち上がり特性
は電動式補助燃料ポンプで設定すればよいため、エンジ
ン駆動式高圧燃料ポンプでは燃料圧力の立ち上がり特性
を考慮する必要がなく、その分、ポンプ内摺動部のクリ
アランスを十分確保することができ、製造が容易になる
ばかりでなく、耐久性の向上が図れる。

【００２７】又、始動時の燃料圧力の立ち上がり特性
を、上記エンジン駆動式高圧燃料ポンプとは別個に電動
式補助燃料ポンプで設定することができるので、始動時
の燃料圧力の立ち上がり特性を、搭載されているエンジ
ンに応じて比較的自由に設定することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】筒内噴射エンジンの燃料ラインを中心とする全
体概略図

【図２】電動式補助燃料ポンプ制御ルーチンを示すフロ
ーチャート

【符号の説明】

１…エンジン １ａ…燃焼室 １ｂ…出力軸（クランクシャフト） ２…インジェクタ ３…燃料ライン ３ａ…低圧デリバリライン ３ｂ…高圧ライン ３ｃ…低圧リターンライン ３ｄ…補助ライン ４…燃料タンク ５…フィードポンプ ７…エンジン駆動式高圧燃料ポンプ １０…高圧プレッシャレギュレータ １２…電動式補助燃料ポンプ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料ラインにエンジン駆動式高圧燃料ポ
   ンプを配設すると共に、このエンジン駆動式高圧燃料ポ
   ンプの下流に高圧プレッシャレギュレータを配設し、 上記エンジン駆動式高圧燃料ポンプと上記高圧プレッシ
   ャレギュレータとの間を高圧ラインとし、 燃料タンクから上記エンジン駆動式高圧燃料ポンプ上流
   までを低圧デリバリラインとし、 上記高圧プレッシャレギュレータ下流から上記燃料タン
   クまでを低圧リターンラインとし、 上記低圧デリバリラインにフィードポンプを介装し、又
   上記高圧ラインに燃焼室へ燃料を直接噴射するインジェ
   クタを接続した筒内噴射エンジンにおいて、 上記高圧ラインと上記低圧デリバリラインの上記フィー
   ドポンプ下流とを補助ラインを介して連通し、 この補助ラインに、始動時に駆動し、エンジン完爆後或
   いは上記高圧ラインの燃料圧力が設定値以上のときの少
   なくとも一方の状態で停止する電動式補助燃料ポンプを
   介装したことを特徴とする筒内噴射エンジンの燃料圧力
   制御装置。