JPH10256080A - 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ - Google Patents

薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ

Info

Publication number
JPH10256080A
JPH10256080A JP5754397A JP5754397A JPH10256080A JP H10256080 A JPH10256080 A JP H10256080A JP 5754397 A JP5754397 A JP 5754397A JP 5754397 A JP5754397 A JP 5754397A JP H10256080 A JPH10256080 A JP H10256080A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
capacitor
dielectric constant
film capacitor
capacitance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5754397A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinji Nanbu
信次 南部
Fumio Fukumaru
文雄 福丸
Shiyouken Nagakari
尚謙 永仮
Yasuyo Kamigaki
耕世 神垣
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Corp filed Critical Kyocera Corp
Priority to JP5754397A priority Critical patent/JPH10256080A/ja
Publication of JPH10256080A publication Critical patent/JPH10256080A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Fixed Capacitors And Capacitor Manufacturing Machines (AREA)
  • Inorganic Insulating Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】高速デジタル回路に対応可能な、大容量で、か
つ低インダクタンスの薄膜コンデンサおよび積層型薄膜
コンデンサを提供する。 【解決手段】基板上に、短辺と長辺とからなる長方形状
電極、誘電体薄膜、前記長方形状電極を順次形成してな
り、前記長方形状電極の同一方向の長辺にそれぞれ容量
取出部を形成してなるもので、長辺の長さをa、短辺の
長さをbとした時、b/aが2以上であることが望まし
い。また、誘電体薄膜として、金属元素としてPb、M
g、Nbを含むペロブスカイト型複合酸化物結晶からな
る膜厚1μm以下の誘電体薄膜であって、100MHz
(室温)での比誘電率が2000以上で、かつ比誘電率
の温度特性が±15%以内であり、直流電界5V/μm
印加時の比誘電率の減少率が40%以内のものが用いら
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は薄膜コンデンサおよ
び積層型薄膜コンデンサに関し、特に、高速動作する電
気回路に配設され、高周波ノイズのバイパス用、もしく
は電源電圧の変動防止用に供される、大容量、低インダ
クタンスの薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ
に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の小型化、高機能化に伴い、電
子機器内に設置される電子部品にも小型化、薄型化、高
周波対応などの要求が強くなってきている。特に大量の
情報を高速に処理する必要のあるコンピュータの高速デ
ジタル回路では、メインフレームをはじめパーソナルコ
ンピュータレベルにおいても、CPUチップ内のクロッ
ク周波数は100MHzから数百MHz、チップ間バス
のクロック周波数も30MHzから75MHzと高速化
が顕著である。
【0003】また、LSIの集積度が高まりチップ内の
素子数の増大につれ、消費電力を抑えるために電源電圧
は低下の傾向にある。これらIC回路の高速化、高密度
化、低電圧化に伴い、コンデンサ等の受動部品も小型大
容量化と併せて、高周波もしくは高速パルスに対して優
れた特性を示すことが必要になってきている。
【0004】コンデンサを小型高容量にするためには一
対の電極に挟持された誘電体を薄くし、薄膜化すること
が最も有効である。薄膜化は上述した電圧の低下の傾向
にも適合している。一方、IC回路の高速動作に伴う諸
問題は各素子の小型化よりも一層深刻な問題である。こ
のうち、コンデンサの役割である高周波ノイズの除去機
能において、特に重要となるのは、論理回路の同時切り
替えが同時に発生したときに生ずる電源電圧の瞬間的な
低下を、コンデンサに蓄積されたエネルギーを瞬時に供
給することにより低減する機能である。いわゆるデカッ
プリングコンデンサである。
【0005】デカップリングコンデンサに要求される性
能は、クロック周波数よりも速い負荷部の電流変動に対
して、いかにすばやく電流を供給できるかにある。従っ
て、100MHzから1GHzにおける周波数領域に対
してコンデンサとして確実に機能しなければならない。
しかし、実際のコンデンサ素子は静電容量成分の他に、
抵抗成分、インダクタンス成分を持つ。容量成分のイン
ピーダンスは周波数増加とともに減少し、インダクタン
ス成分は周波数の増加とともに増大する。
【0006】すなわち、コンデンサの静電容量をC、イ
ンダクタンスをLとすると、この素子の共振周波数はf
0 =1/(2π(CL)1/2 )と書け、共振周波数での
インピーダンスが抵抗成分Rを与える。f<f0 ではこ
の素子は電荷供給源のコンデンサとしてふるまい、逆に
f>f0 ではインダクタンスとしてふるまい、この素子
自体が高周波ノイズの発生源となってしまう。このた
め、ICの動作周波数が高くなるにつれ、コンデンサ素
子自体の持つインダクタンスが、供給すべき過渡電流を
制限してしまい、ロジック回路側の電源電圧の瞬時低
下、または新たな電圧ノイズを発生させてしまう。結果
として、ロジック回路上のエラーを引き起こしてしま
う。
【0007】特に最近のLSIは総素子数の増大による
消費電力増大を抑えるために電源電圧は低下しており、
電源電圧の許容変動幅も小さくなっている。従って、高
速動作時の電圧変動幅を最小に抑えるため、デカップリ
ングコンデンサ素子自身の持つインダクタンスを減少さ
せ、f0 をICの動作周波数よりも高周波側にもってゆ
くことが望まれている。
【0008】コンデンサのインダクタンスは電極構造や
その大きさに依存することが知られており、電極形状と
そこを流れる高周波電流分布の最適化が必要であるが、
それにも限界がある。電荷の供給源としてのデカップリ
ングコンデンサを考えれば、低インダクタンスのみなら
ず、電圧変動をできるだけ小さくするためには大容量で
あることが必要である。
【0009】しかしながら、上記式から理解できるよう
に、単に容量を大きくすれば、f0が小さくなり高周波
でのコンデンサとしての機能が劣化してしまう。高周波
特性の観点からは、Cを小さくしなければならないが、
電源電圧の瞬時低下に対応する電荷供給源としては大容
量が必要であり、この二律背反を解決しなければ1GH
zまでのクロック周波数に対応できるデカップリングコ
ンデンサの実現は困難である。
【0010】ところで、インダクタンスを減少させる方
法は3種類考えられる。第1は電流経路の長さを最小に
する方法、第2は電流経路をループ構造としループ断面
積を最小にする方法、第3は電流経路をn個に分配して
実効的なインダクタンスを1/nにする方法である。
【0011】第1の方法は、単位面積あたりの容量を増
加させて小型化を図ればよく、コンデンサ素子を薄膜化
・小型化することにより達成できる。大容量で高周波特
性の良好なコンデンサを得る目的で、誘電体厚さを1μ
m以下に薄膜化した例として特開昭60−94716号
公報がある。
【0012】薄膜誘電体層を利用した例としては特開平
4−211191号、特開平8−88318号がある
が、コンデンサの単位面積当たりの容量は最大で、4n
F/mm2 程度にとどまっている。
【0013】第2の方法は、一本の電流経路が形成する
磁場を、近接する別の電流経路が形成する磁場により相
殺低減する効果であるから、コンデンサを形成する一対
の電極板、または電極層に流れる電流の向きをできるだ
け同一方向にしないようにすればよい。
【0014】第3の方法では、多数に分割したコンデン
サを並列接続することによって低インダクタンス化が図
れると同時に低インピーダンス化が実現できる。分割さ
れた一つ一つのコンデンサの容量は小さく、高周波特性
を示す共振周波数f0 を大きくすることができ、このこ
とは文献(T. H. Hubung他、IEEE Transcations on Ele
ctromagnetic Compatibility, Vol.37, NO.2 (1995), 1
55) においても、チップ間バスのプリント基板に多数の
チップコンデンサを配置した例において、理論的・実験
的に実証されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現行の
積層チップコンデンサにおいては実現可能なインダクタ
ンスの値はたかだか100pHであり、容量が100n
Fのデカップリングコンデンサでは、共振周波数f0
50MHz程度となる。それゆえ、今後の数百MHzか
ら1GHzの高速デジタル回路に対応するためには、少
なくともインダクタンスが数十pH以下のレベルのデカ
ップリングコンデンサが必要となる。
【0016】さらに、パッケージや多層基板に内蔵され
るタイプにおいても、同様の課題が存在する。コンデン
サの低インダクタンス化を図る方法は前述したように、
3種類の方法があるが、上記大幅な低インダクタンス化
を図るには数百MHzにおいても高い比誘電率を示す誘
電体薄膜を用いて、1)電極面積を小さくし、2)対面
する電極に流れる電流を逆方向にし、その電流経路をで
きるだけ短くする構造を実現し、3)並列分割構造によ
り共振周波数を100MHz以上にする必要がある。
【0017】一方、チタン酸バリウムに代表される、自
発分極をもち、高い比誘電率を示す強誘電体において
は、薄膜化にしたがってその比誘電率が減少してゆく事
実が最近明らかにされつつあり、チタン酸バリウムやジ
ルコン酸チタン酸鉛では1μm以下の膜厚では比誘電率
はたかだか1000程度以下であり、高容量の観点から
も限界がある。
【0018】さらに、1000以上の高い比誘電率をも
つ強誘電体では、その巨視的な自発分極が高周波に応答
できなくなり、数十MHz以上での周波数分散(周波数
とともに、比誘電率が大幅に減少すること)を示すこと
が知られている。高速デジタルIC回路でのノイズは、
広いバンド幅にわたる高周波成分を含むため、高周波に
おける誘電分散を示す材料では正常な電荷供給源として
の機能を果たせない可能性がある。
【0019】本発明は、数百MHzから1GHzの高速
デジタル回路に対応しうる大容量で、かつ低インダクタ
ンスの薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサを提
供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜コンデンサ
は、基板上に、短辺と長辺とからなる長方形状電極、誘
電体薄膜、前記長方形状電極を順次形成してなり、前記
長方形状電極の同一方向の長辺にそれぞれ容量取出部を
形成してなるものである。ここで、長辺の長さをa、短
辺の長さをbとした時、b/aが2以上であることが望
ましい。
【0021】さらに、誘電体薄膜は、金属元素としてP
b、MgおよびNbを含むペロブスカイト型複合酸化物
結晶からなる膜厚2μm以下の薄膜であって、測定周波
数1kHz(室温)での比誘電率が2500以上、10
0MHz(室温)での比誘電率が2000以上であり、
かつ比誘電率の温度特性が±15%以内(−40℃〜8
5℃)であり、直流電界5V/μm印加時の比誘電率の
減少率が40%以内であることが望ましい。
【0022】また、誘電体薄膜は、金属元素としてB
a、Ti、ZrおよびSnを含有するペロブスカイト型
複合酸化物からなる薄膜であって、これらの成分をBa
Ti1- x-y Zrx Sny 3 と表した時のxおよびy
が、図1における線分A−B−C−D−E−F−Aで囲
まれる範囲内にあり、かつ、ペロブスカイト結晶の平均
結晶粒径dが0.10〜0.25μmであることが望ま
しい。
【0023】 本発明の積層型薄膜コンデンサは、基板上に、短辺と長
辺とからなる複数の長方形状電極と、複数の誘電体薄膜
とを交互に積層してなり、前記長方形状電極の同一方向
の長辺にそれぞれ容量取出部を形成してなるものであ
る。
【0024】
【作用】本発明の薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コン
デンサでは、長方形状電極の長辺に、同一方向に容量取
出部を形成したので、電極を流れる電流の向きが逆方向
となり、しかも、電流の流れる経路を短くでき、これに
より、低インダクタンス化を図ることができる。特に、
長方形状電極の短辺の長さをa、長辺の長さをbとした
時、b/aが2以上である場合にはインダクタンスを最
小とすることが可能となる。
【0025】そして、上記薄膜コンデンサおよび積層型
薄膜コンデンサの誘電体薄膜として、上記した所定の組
成のものを用いることにより、容量を増大することがで
き、しかも上記した誘電体薄膜は比誘電率の周波数依存
性が小さいため、高周波領域においても高い比誘電率を
有することができ、高周波領域における容量を増大する
ことができる。
【0026】従って、本発明の薄膜コンデンサおよび積
層型薄膜コンデンサでは、高周波においても高容量、低
インダクタンスを達成することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の薄膜コンデンサは、基板
上に、短辺と長辺とからなる長方形状電極、誘電体薄
膜、前記長方形状電極を順次形成してなり、長方形状電
極の同一方向の長辺にそれぞれ容量取出部を形成してな
るものである。
【0028】図2に本発明の薄膜コンデンサの基本構成
の例を示す。この図2において、基板1の上面には短辺
aと長辺bとからなる長方形状電極2が形成され、この
長方形状電極2の上面には誘電体薄膜3が形成され、こ
の誘電体薄膜3の上面には長方形状電極4が形成されて
いる。そして、容量取出部5が電極2、4の同一方向の
長辺bに形成されており、誘電体薄膜3の上下の電極
2、4に流れる電流が逆方向とされている。
【0029】尚、図3に従来の薄膜コンデンサを示す。
従来の薄膜コンデンサでは、基板11の上面には短辺a
と長辺bとからなる長方形状電極12が形成され、この
長方形状電極12の上面には誘電体薄膜13が形成さ
れ、この誘電体薄膜13の上面には長方形状電極14が
形成されている。そして、容量取出部15は電極12、
14の対向する短辺aに形成されており、誘電体薄膜1
3の上下の電極12、14に流れる電流が同一方向とさ
れている。
【0030】本発明で用いられる基板としては、アルミ
ナ、サファイア、MgO単結晶、SrTiO3 単結晶、
チタン被覆シリコン、または銅(Cu)、ニッケル(N
i)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ステンレスステ
ィール(Fe)薄膜もしくは薄板が望ましい。特に、薄
膜との反応性が小さく、安価で強度が大きく、かつ金属
薄膜の結晶性という点からアルミナ、サファイアが望ま
しく、高周波領域における低抵抗化の点で銅(Cu)薄
板または銅(Cu)薄膜が望ましい。
【0031】また、本発明の長方形状電極は、例えば、
白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅
(Cu)薄膜等からなるもので、これらのうちでも白金
(Pt)と金(Au)薄膜が最適である。Pt、Auは
誘電体との反応性が小さく、また酸化されにくい為、誘
電体との界面に低誘電率相が形成されにくい為である。
【0032】電極形成は、蒸着、メタライズ、CVD、
スパッタ法により作製できるが、低温合成が可能で誘電
体薄膜との反応が抑止できるマグネトロンスパッタ法な
どの気相合成法が望ましい。
【0033】本発明の長方形状電極は短辺と長辺とから
なるものであるが、短辺と長辺が同一長さの正方形状電
極も含まれる概念である。そして、長辺に容量取出部が
形成され、かつ、短辺の長さをa、長辺の長さをbとし
た時、b/aが2以上である場合には、低インダクタン
ス化をさらに促進できる。容量取出部には、例えば、ハ
ンダ等によりパンプが形成され外部回路に接続される。
【0034】また、誘電体薄膜は、金属元素としてP
b、MgおよびNbを含むペロブスカイト型複合酸化物
結晶からなる膜厚2μm以下の薄膜であって、測定周波
数1kHz(室温)での比誘電率が2500以上、10
0MHz(室温)での比誘電率が2000以上であり、
かつ比誘電率の温度特性が±15%以内(−40℃〜8
5℃)であり、直流電界5V/μm印加時の比誘電率の
減少率が40%以内であるものが望ましい。
【0035】また、誘電体薄膜の他の例として、金属元
素としてBa、Ti、ZrおよびSnを含有するペロブ
スカイト型複合酸化物からなる薄膜であって、これらの
成分をBaTi1-x-y Zrx Sny 3 と表した時のx
およびyが、図1における線分A−B−C−D−E−F
−Aで囲まれる範囲内にあり、かつ、ペロブスカイト結
晶の平均結晶粒径dが0.10〜0.25μmのものも
用いられる。
【0036】尚、本発明においては上記した誘電体薄膜
が特に望ましいが、上記した以外のPZT、PLZT、
BaTiO3 、SrTiO3 、Ta2 5 等の誘電体薄
膜であっても良く、特に限定されるものではない。この
ような誘電体薄膜層は、PVD法、CVD法、ゾルゲル
法等の公知の方法により作製される。
【0037】上記したPb−Mg−Nb系およびBaT
1-x-y Zrx Sny 3 で表される組成の誘電体薄膜
が望ましい理由は、巨視的な自発分極を持たないため高
周波での誘電分散が小さく、かつナノメータースケール
におけるイオン配列のゆらぎによって高い比誘電率を示
すことが理論的に予測されたためである。これらバルク
形態におけるナノメータースケールの構造ゆらぎを変化
させることなく薄膜形態として作製するためには、組成
比およびナノスケールにおけるイオン配列を材料合成の
初期の段階からコントロールできるゾル・ゲル法、また
はマグネトロンスパッタやMOCVD等の気相合成法が
最適である。よって、薄膜候補材料として、バルクセラ
ミックスにおいて、巨視的な自発分極はもたないが、局
所的なナノメータースケールにおいて分極構造をとるい
わゆるPb系リラクサー誘電体と、やはり自発分極をも
たないが、相の共存によって高い誘電率を示すBa(Z
r,Sn,Ti)O3 系材料に着目したのである。
【0038】Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (PMN)
薄膜の作製について説明する。
【0039】まず鉛(Pb)の有機酸塩、無機塩、アル
コキシドから選択される少なくとも1種の鉛化合物をR
1 OH、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1 、R
2 、R3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶媒
に混合する。この時、鉛化合物が結晶水を含む場合に
は、作製したPb前駆体溶液中に水が存在しないように
脱水処理する。
【0040】次にMg、及びNbの有機酸塩、無機塩、
アルコキシドから選択される少なくとも1種のMg化合
物、Nb化合物をMg:Nb=1:2のモル比でR1
H、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1 、R2
3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶媒に混
合する。混合後、所定の操作を行い、IRスペクトルに
おいて656cm-1付近に吸収を有し、他の求核性の有
機金属化合物の存在下においても安定なMg−O−Nb
結合を有するMgNb複合アルコキシド分子を合成す
る。
【0041】IRスペクトルにおいて656cm-1付近
に吸収を有するMgNb複合アルコキシド分子を得るに
は、以下のような方法がある。(1)MgおよびNbの
アルコキシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点まで溶液
の温度を上昇させ、例えば酸等の触媒の共存下で還流操
作を行うことにより、分子内での脱エーテル反応を促進
する方法。(2)上記のようにMgおよびNbのアルコ
キシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点まで溶液の温度
を上昇させ、還流操作による複合化を行った後、無水酢
酸,エタノールアミン等に代表される安定化剤を添加す
る方法。(3)Mgのカルボン酸塩とNbのアルコキシ
ドとの還流操作により、分子内での脱エステル反応を促
進する方法。(4)Mgの水酸化物とNbのアルコキシ
ド、あるいはMgのアルコキシドとNbの水酸化物の還
流操作により、分子内での脱アルコール反応を促進する
方法。(5)鉛前駆体の求核性を小さくする為、前述の
無水酢酸,エタノールアミン等の安定化剤を添加する方
法。以上のいずれかの手法を用いる事により、他の求核
性有機金属化合物の存在下においても安定なMg−O−
Nb結合を有するMgNb複合アルコキシド分子を合成
できる。これらのうちでも、安定なMg−O−Nb結合
を有するという点から、(2)および(3)の方法が望
ましい。
【0042】また、合成した上記MgNb複合アルコキ
シド溶液に水と溶媒の混合溶液を適下し、部分加水分解
を行い、前述のMgNb複合アルコキシドが重縮合した
MgNbゾルを形成させる。部分加水分解とは、分子内
のアルコキシル基の一部を水酸基と置換し、置換された
分子内での脱水、あるいは脱アルコール反応により、重
縮合させる方法である。
【0043】作製したPb前駆体溶液とMgNb複合ア
ルコキシド溶液、あるいはMgNbゾルをPb:(Mg
+Nb)=1:1のモル比で混合し、PMN前駆体溶液
とする。
【0044】作製したPMN前駆体溶液を基板上にスピ
ンコート法、ディップコート法、スプレー法等の手法に
より成膜する。
【0045】成膜後、300℃〜400℃の温度で1分
間熱処理を行い、膜中に残留した有機物を燃焼させ、ゲ
ル膜とする。1回の膜厚は0.1μm以下が望ましい。
【0046】成膜−熱処理を所定の膜厚になるまで繰り
返した後、750℃〜850℃で焼成を行い、本発明の
結晶質の誘電体薄膜が作製される。得られた誘電体薄膜
の膜厚は2μm以下であるが、これより厚くなると工程
数が増加し、また、コンデンサを構成した場合、容量が
小さくなるからである。誘電体薄膜の膜厚は、製造の容
易性、膜質劣化の点で1μm以下が望ましく、さらに膜
の絶縁性を考慮すると特に0.3μm〜1μmが望まし
い。
【0047】このようなPMN薄膜は、MgNb複合ア
ルコキシド分子を合成する際、Mg及びNbの金属化合
物間の反応促進、及び複合アルコキシド分子を安定化す
る手法を用い、他の求核性有機金属化合物の存在下にお
いても、安定なMg−O−Nb結合を有するMgNb複
合アルコキシドを合成させ、このMgNb複合アルコキ
シド分子を含む溶液とPb前駆体溶液とを混合してPb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体溶液を合成する点に特
徴がある。
【0048】この様な手法で得られたMgNb前駆体溶
液は、赤外吸収スペクトル(以下、IRスペクトル)に
おいて、656cm-1付近に吸収を有し、溶液の段階で
既にコランバイト(MgNb2 6 )に近い構造を持
つ、強固なMg−O−Nb結合を有するMgNb複合ア
ルコキシド分子が形成されている。このため、他の求核
性有機金属化合物(例えば酢酸鉛)に対して安定であ
り、Mg−O−Nb結合が破壊されることなく、Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体が形成される。
【0049】このPMN前駆体溶液を塗布し、焼成する
ことにより、本発明の誘電体薄膜が得られる。これによ
り、PMN薄膜の場合には、測定周波数1kHz(室
温)での比誘電率が2500以上、100MHz(室
温)での比誘電率が2000以上、比誘電率の温度特性
が±15%以内(−40℃〜85℃)、直流電界5V/
μm印加時の比誘電率の減少率が40%以内となる。
【0050】また、上記のMgNb複合アルコキシド分
子を部分的に加水分解処理することにより数nmオーダ
ーのMgNbゾルが形成され、この数nmオーダーのM
gNbゾルを含むPb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体
が形成される。このPMN前駆体溶液を塗布し、焼成す
ることにより、本発明の誘電体薄膜が得られる。これに
より、上記と同様の特性が得られる。
【0051】BaTi1-x-y Zrx Sny 3 系薄膜に
ついて説明する。
【0052】本発明の誘電体薄膜は、BaTi1-x-y
x Sny 3 と表した時、xとyが図1に示した関係
にあり、しかも平均結晶粒径dが0.10〜0.25μ
mを満足するものである。
【0053】ここでxとyが図1に示した線分A−B−
C−D−E−F−Aで囲まれる範囲内としたのは、図1
において線分B−C−D−Eよりも上方にある場合に
は、−25〜85℃において静電容量の温度変化率が±
8%よりも大きくなるからである。また、線分E−Fよ
りも右側にある場合、即ち、xが0.10よりも大きい
場合には比誘電率が1200よりも小さくなるからであ
る。
【0054】さらに、線分A−Bよりも左側にある場
合、即ちxが0.01よりも小さい場合には、DCバイ
アスに対する比誘電率の変化率が30%よりも大きくな
る傾向にあるからである。さらにまた、線分F−Aより
も下方にある場合、即ちyが0.01よりも小さい場合
には、BaTiO3 のサイズ効果により比誘電率が小さ
くなる傾向にあるからである。
【0055】本発明においては、xとyとの関係が、図
1における線分A−B−D−G−Aで囲まれる範囲内に
あることが、比誘電率が大きく、静電容量の温度特性お
よびDCバイアス特性を向上するという点から望まし
い。ここで、点G(x,y)は(0.05,0.01)
である。
【0056】また、平均結晶粒径dを0.10〜0.2
5μmとしたのは、平均結晶粒径dが0.10よりも小
さい場合には比誘電率が小さく、その温度特性も悪くな
るからである。また、平均結晶粒径dが0.25μmよ
りも大きくなると、DCバイアスに対する比誘電率の変
化率が大きくなるからである。平均結晶粒径dは、比誘
電率の向上という点から0.14〜0.25μmである
ことが望ましい。
【0057】本発明の誘電体薄膜の膜厚は、耐絶縁性お
よび膜の均質性という観点から、5μm以下、特には、
0.3〜1μmが望ましい。
【0058】本発明の誘電体薄膜は、先ず、金属元素と
してBa,Ti,Zr,Snを含有するペロブスカイト
型複合酸化物であって、これらの成分をBaTi1-x-y
Zrx Sny 3 と表した時のx及びyの値が図1の線
分で囲まれる範囲内の原料溶液を作製し、この溶液を基
板上に塗布した後、熱処理乾燥し、塗布と熱処理を繰り
返して所望厚さの膜を形成し、焼成することにより得ら
れる。
【0059】即ち、本発明の誘電体薄膜は、各成分の組
成の制御、膜厚、微粒領域(0.05〜1μm)での結
晶粒径の制御が比較的容易な、以下のような方法で形成
することが望ましい。
【0060】先ず、Ba,Ti,Zr,Snの各金属イ
オンを含有する有機酸塩,無機塩,あるいは金属アルコ
キシドのような有機金属化合物を出発原料とし、BaT
1- x-y Zrx Sny 3 におけるx及びyの範囲が図
1の線分の範囲内を満足する組成となるように混合し、
原料溶液を調製する。次に、この原料溶液を基板上に塗
布する。溶液の塗布はスピンコーティング,ディップコ
ーティングなどの種々の方法により行うことができる。
また、Ba(Ti,Zr)O3 およびBa(Ti,S
n)O3 溶液を別々に作製し、交互に塗布することによ
り、所望の組成に調製しても良い。
【0061】次に、こうして基板上に塗布された塗膜か
ら有機物を取り除くために大気中で200〜600℃で
5秒〜2分間熱処理を行い、この後、結晶化するために
大気中で700〜900℃で30秒〜10分間結晶化用
熱処理を行う。これらの塗布〜結晶化用熱処理の一連の
プロセスを繰り返すことにより所望の膜厚の誘電体薄膜
を得、最後に0.10〜0.25μmの平均結晶粒径を
得るために酸素含有雰囲気中で1050〜1140℃で
10分間〜3時間焼成を行い、5μm以下、例えば、膜
厚0.3〜2μmの本発明の誘電体薄膜を得る。平均結
晶粒径は焼成温度や焼成時間により制御できる。
【0062】本発明においては、不可避不純物として、
Sr,Ca,Na等が1重量%以下で混入する場合があ
るが、特性には影響はない。
【0063】また、得られた誘電体薄膜は、BaTi
1-x-y Zrx Sny 3 で表される結晶相の他に、Ba
(Ti,Zr)O3 、Ba(Ti,Sn)O3 が析出し
ていても良い。
【0064】このようなBaTi1-x-y Zrx Sny
3 系薄膜では、BaTiO3 のTi原子をZr原子及び
Sn原子にて所定量置換することにより、3点の相転移
点は室温付近にシフトし、室温で3種類の相転移ピーク
が重なることにより、高い比誘電率を実現している。
【0065】また、BaTi1-A ZrA 3 とBaTi
1-B SnB 3 では、同じBサイト置換量に対して3点
の相転移点が異なる為、BaTi1-x-y Zrx Sny
3 においてxとyを調整することにより、高誘電率を保
ちながら温度特性は良好になる。
【0066】さらに薄膜中の平均結晶粒径を細かくして
いった場合、強誘電体的性質に常誘電体的性質が現れる
ために、比誘電率は多少低下するが直流電圧がかかった
状態の比誘電率の低下が抑制され、DCバイアス特性は
良好となる。
【0067】さらにまた、測定周波数100MHz(室
温)のような高周波領域においても、強誘電性の起源で
ある自発分極が消失するため自発分極に起因する誘電率
の周波数分散が小さくなり、高周波領域においても大き
な比誘電率を有する。
【0068】即ち、誘電体薄膜の比誘電率が、測定周波
数1KHzおよび100MHzでそれぞれ1200およ
び1100以上であり、静電容量の温度特性もコンデン
サのJIS規格におけるB特性を満足し、且つ直流電圧
印加による静電容量の減少率(DCバイアス特性)も5
V/μmの電界印加時に30%未満と小さいため、低周
波においてだけでなく、バイパスコンデンサやデカップ
リングコンデンサのようなIC等の高周波回路用のコン
デンサとして優れたセラミックコンデンサを得ることが
できる。
【0069】本発明の積層型薄膜コンデンサは、基板上
に、短辺と長辺とからなる複数の長方形状電極と、複数
の誘電体薄膜とを交互に積層してなり、長方形状電極の
同一方向の長辺にそれぞれ容量取出部を形成してなるも
のであり、基板、電極、誘電体薄膜は上記した通りであ
る。
【0070】本発明の積層型薄膜コンデンサの一実施例
を図4および図5に示す。この積層型薄膜コンデンサ
は、短辺と長辺とからなる長方形状電極21と、誘電体
薄膜22とが交互に複数積層されており、しかも長方形
状電極21は奇数層の長方形状電極21aと、偶数層の
長方形状電極21bとから構成されている。
【0071】そして、図5に示すように、長方形状電極
21a、21bの同一方向の長辺にはそれぞれ容量取出
部23a、23bが一個づつ形成され、奇数層の長方形
状電極21aに形成された容量取出部23aは端子電極
25aと接続され、偶数層の長方形状電極21bに形成
された容量取出部23bは端子電極25bと接続されて
いる。端子電極25a、25bはL字状に形成されてお
り、その上面には、例えば、ハンダによりバンプが形成
され外部回路に接続される。
【0072】また、最上層に形成される奇数層の長方形
状電極21aの上面には、誘電体薄膜22が形成され、
端子電極25a、25bの絶縁が図られている。端子電
極25aと長方形状電極21bの側先端との間、端子電
極25bと長方形状電極21aの側先端との間は絶縁
層、例えば、誘電体層と同一材料の絶縁材が充填され、
絶縁が図られている。また、積層体の端子電極以外の側
面にも誘電体層と同一材料の絶縁材が被覆され、絶縁が
図られている。
【0073】このような積層型薄膜コンデンサの長方形
状電極21a、21bおよび誘電体薄膜22は上記と同
様に形成される。図6〜図9に、本発明の積層型薄膜コ
ンデンサの概念図を示す。
【0074】
【実施例】先ず、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 からな
る誘電体薄膜と、BaTi1-x-yZrx Sny 3 とし
て表される誘電体薄膜を作製し、その特性を評価した。
【0075】Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 からなる
誘電体薄膜の作製 酢酸MgとNbエトキシドを1:2のモル比で秤量し、
2−メトキシエタノール中で還流操作(124℃で24
時間)を行い、MgNb複合アルコキシド溶液(Mg=
4.95mmol、Nb=10.05mmol、2−メ
トキシエタノール150mmol)を合成した。次に酢
酸鉛(無水物)15mmolと150mmolの2−メ
トキシエタノールを混合し、120℃での蒸留操作によ
り、Pb前駆体溶液を合成した。
【0076】MgNb前駆体溶液とPb前駆体溶液をモ
ル比Pb:(Mg+Nb)=1:1になるよう混合し、
室温で十分撹拌し、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (P
MN)前駆体溶液を合成した。この溶液の濃度を2−メ
トキシエタノールで約3倍に希釈し、塗布溶液とした。
【0077】電極となるPt(111)が650℃でス
パッタ蒸着されたサファイア単結晶基板上の上記Pt電
極の表面に、前記塗布溶液をスピンコーターで塗布し、
乾燥させた後、300℃で熱処理を1分間行い、ゲル膜
を作製した。塗布溶液の塗布−熱処理の操作を繰り返し
た後、830℃で1分間(大気中)の焼成を行い、膜厚
0.5μm、1.0μm、2.0μmの3種類のPb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 薄膜を得た。得られた薄膜の
X線回折結果より、ペロブスカイト生成率を計算すると
それぞれ約95%であった。
【0078】作製した全ての薄膜表面に直径0.2mm
の金電極をスパッタ蒸着により形成し、薄膜コンデンサ
を作製し、LCRメータ(ヒュウレットパッカード社製
4284A)を用いて、25℃、1kHz(Ac100
mV)の条件で比誘電率、誘電損失を求めた結果、それ
ぞれ比誘電率が2620、誘電損失が0.036であっ
た。また、図10に−40℃から+85℃の温度範囲で
の比誘電率の温度特性評価結果を示す。比誘電率kの温
度変化率(Δk/k(25℃))は−9.6%から+
6.0%と±15%以内であった。尚、Δkは−40℃
から+85℃の比誘電率の変化量、k(25℃)は25
℃における比誘電率である。
【0079】図11に比誘電率の直流電界依存性を示
す。直流電界5V/μmでの比誘電率の減少率は40%
以内であった。
【0080】上記の薄膜コンデンサの1MHzから1.
8GHzでのインピーダンス特性を、インピーダンスア
ナライザー(ヒュウレットパッカード社製HP4291
A)を用いて測定した。薄膜コンデンサの共振周波数が
300MHz以上になるよう、電極面積および電極厚み
を変更し、薄膜コンデンサの容量CとインダクタンスL
を調整した。測定周波数100MHzでのインピーダン
スから容量を算出し、比誘電率を求めると、2040で
あった。図12に比誘電率の周波数特性を示す。また、
温度特性および直流電界依存性は1kHzでの結果と同
様であった。
【0081】BaTi1-x-y Zrx Sny 3 として
表される誘電体薄膜の作製 出発原料であるテトラ−イソ−プロポキシチタン、テト
ラ−n−プロポキシジルコニウム及びテトラ−イソ−プ
ロポキシスズを、溶媒である2−メトキシエタノールに
溶かし、それぞれ0.4M(mol/l)濃度のチタン
溶液、ジルコニウム溶液及びスズ溶液を作製した。また
金属バリウムを、溶媒である2−メトキシエタノールに
溶解させ、0.4M濃度のバリウム溶液を作製した。こ
れらの4種の溶液を、BaTi1-x-y Zrx Sny 3
と表した時のx及びyが表1の値となるように混合し、
原料溶液を調製した。
【0082】ついで、これら各原料溶液を白金(Pt)
基板上にそれぞれスピンコートし、得られた塗膜に対し
て大気中300℃で1分間熱処理乾燥を行い、この後、
大気中750℃で5分間結晶化用熱処理を行った。この
ようなスピンコートによる溶液の塗布から結晶化用熱処
理までの一連のプロセスを30回繰り返し行い、膜厚が
0.8μmの薄膜を形成し、酸素雰囲気中1050〜1
140℃で1時間焼成を行い、膜厚0.6μmで表1の
平均結晶粒径dを有する誘電体薄膜を得た。
【0083】得られた誘電体薄膜をX線回折測定(XR
D)により分析を行ったところ、いずれもペロブスカイ
ト型酸化物のピークが確認された。また誘電体薄膜を走
査電子顕微鏡(SEM)により観察し、平均結晶粒径を
測定した。さらに、誘電特性の評価は、誘電体薄膜上に
Auを蒸着して上部電極とし、下部電極であるPt層と
平板コンデンサを形成することにより行った。測定はL
CRメーターによって行い、測定周波数f=1kHz、
印加電圧Vrms =100mVとした。室温での比誘電率
(K)、誘電損失(DF)および−25℃と85℃の静
電容量の変化率を測定し、これらの結果を表1に示す。
【0084】尚、−25℃の静電容量の変化率(%)
は、−25℃の静電容量をC-25 とし、25℃の静電容
量をC25とした時、(C-25 −C25)×100/C25
求め、85℃の静電容量の変化率(%)は、85℃の静
電容量をC85とし、25℃の静電容量をC25とした時、
(C85−C25)×100/C25で求めた。またDCバイ
アス特性を、電圧を印加しない場合の静電容量C0 、5
V/μmの電圧を印加したときの静電容量C1 とした時
に、(C0 −C1 )/C0 ×100で求め、表1に記載
した。
【0085】また、インピーダンスアナライザ(ヒュウ
レットパッカード社製HP4291A,フィクスチャー
HP16092A)を用いて1MHz〜1.8GHzに
おける特性評価をおこなった。インピーダンスー周波数
特性の測定により、100MHz(室温)における等価
直列容量を評価し、比誘電率を求めた。これらの結果を
表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】表1から判るように、図1の点A、B、
C、D、E、F、Aの線分で囲まれる本発明の誘電体薄
膜は、1KHzおよび100MHz(室温)における比
誘電率はそれぞれ1200および1100以上の高誘電
率を有し、静電容量の温度変化率も±8%以下と小さ
く、また誘電損失も2.76%以下と小さいことが判
る。
【0088】また0.10μm未満の粒径の試料(N
o.27,29)では、1KHzにおける比誘電率は1
200未満であるか、100MHzの比誘電率が110
0未満となってしまう。
【0089】また、本発明では、DCバイアスに対する
静電容量の変化は、5V/μm印加時においても30%
未満の低下であり、1KHzおよび100MHz(室
温)における比誘電率はそれぞれ1200および110
0以上であり、静電容量の温度変化率は±8%未満であ
ることが判る。
【0090】実施例1 厚さ0.25mmのアルミナ焼結体基板上に第1のマス
クパターンで白金ターゲットのスパッタにより第1の白
金電極層を形成した。電極層の形成は高周波マグネトロ
ンスパッタ法を用いた。スパッタ用ガスとしてプロセス
チャンバー内にArガスを導入し、真空排気により圧力
は6.7Paに維持した。
【0091】プロセスチャンバー内には基板ホルダーと
3個のターゲットホルダーが設置され、3種類のターゲ
ット材料からのスパッタが可能である。スパッタ時には
成膜する材料種のターゲット位置に基板ホルダーを移動
させ、基板−ターゲット間距離は60mmに固定した。
【0092】基板ホルダーとターゲット間には外部の高
周波電源により13.56MHzの高周波電圧を印可
し、ターゲット背面に設置された永久磁石により形成さ
れたマグネトロン磁界により、ターゲット近傍に高密度
のプラズマを生成させてターゲット表面のスパッタを行
った。高周波電圧の印可は3個のターゲットに独立に可
能であり、本実施例では基板に最近接のターゲットにの
み印可してプラズマを生成した。基板ホルダーはヒータ
による加熱機構を有しており、スパッタ成膜中の基板温
度は一定となるよう制御した。
【0093】また、基板ホルダーに設置された基板のタ
ーゲット側には厚さ0.1mmの金属マスクが3種類設
置されており、成膜パターンに応じて必要なマスクが基
板成膜面にセットできる構造とした。
【0094】上記したようにして得られたPb(Mg
1/3 Nb2/3 )O3 からなる塗布溶液を、第1の電極層
が形成されたアルミナ基板上にスピンコーターで塗布
し、乾燥させた後、300℃で熱処理を1分間行い、ゲ
ル膜を作製した。塗布溶液の塗布−熱処理の操作を繰り
返した後、830℃で1分間(大気中)の焼成を行い、
Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 薄膜を得た。
【0095】得られた上記誘電体薄膜の上にレジストを
塗布しフォトリソグラフィー工程によって露光、現像
し、これをマスクとするウェットエッチングにより、パ
ターン形状に誘電体薄膜のパターニングを行った。その
後、スパッタ法により第2の白金電極層を形成した。図
2、図3に示すコンデンサを作製した。
【0096】作製した誘電体薄膜1層よりなる基本構造
の薄膜コンデンサの1MHzから1.8GHzのインピ
ーダンス特性を、インピーダンスアナライザー(ヒュウ
レットパッカード社製HP4291A)を用いて測定し
た。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】この表2から、例えば、試料番号4の場
合、図2の構造で、a=0.71mm、b=0.35m
mであり、容量成分は8.9nF、インダクタンス成分
290pHの値を示し、共振周波数が99MHzであ
り、共振周波数における抵抗成分(インピーダンス)が
0.6Ωであった。
【0099】また試料No.1〜8について、薄膜コンデ
ンサを破断して走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行っ
たところ、誘電体薄膜の厚さは約0.5μmであった。
また、a=0.35mm、b=0.70mmの試料番号
2の場合、容量成分は8.7nF、インダクタンス成分
130pHの値を示し、共振周波数が147MHzであ
り、抵抗成分は0.5Ωであった。また、電極面積をよ
り小さくすれば容量、インダクタンス、抵抗のいずれの
値も小さくすることが可能である。
【0100】また、図3の構造で対の電極に流れる電流
が順方向の場合、a=0.71mm、b=0.35mm
のとき(試料番号8)、容量成分は9.0nF、インダ
クタンス成分は840pH、抵抗成分は0.6Ωあり、
共振周波数は58MHzであった。さらに、電流経路が
短いa=0.35mm、b=0.70mmのとき(試料
番号7)の場合でも、容量成分は9.0nF、インダク
タンス成分は440pH、抵抗成分は0.6Ωであり、
共振周波数は80MHzであった。
【0101】試料番号1から9の結果を表2に示した
が、試料番号9にはBaTiO3 のバルク焼結体より構
成される厚み10μmの単層コンデンサの結果を比較の
ために挿入した。単位面積当たりの容量が本発明の薄膜
コンデンサに比べ、一桁以上小さいことがわかる。
【0102】これら表2の結果から、一層当たりの容量
が1から10nFで、かつ単位面積当たり20nF/m
2 以上の大容量で、共振周波数が100MHz以上の
単板コンデンサを得ることができるのは、電極に流れる
電流が逆方向であるような電極構造をもち、図2のアス
ペクト比(b/a)が1以上、すなわちインダクタンス
が200pH以下であることが必要であり、b/aが2
以上の時に最も好ましいことが判る。
【0103】図2および図3の両構造とも一層あたり2
0nF/mm2 以上の大容量が得られた。特に図2の構
造をとり、前記PMN薄膜を用いて電極形状がa=0.
35mm、b=0.70mmのとき、容量が8.7nF
(35nF/mm2 )、インダクタンス130pH、共
振周波数が147MHzの特性を示したが、図3の構造
では、容量はほぼ同等の値が得られるが、インダクタン
スは440pHで、共振周波数が80MHzと低かっ
た。この図3の電極構造は従来の積層チップコンデンサ
と同じであり、これではインダクタンスの値を従来レベ
ルから大幅に減少させることはできず、100MHz以
上の大容量デカップリングコンデンサは実現できないこ
とが判る。
【0104】実施例2 BaTi1-x-y Zrx Sny 3 (x=0.05、y=
0.02、表1の試料No.14)からなる塗布溶液を上
記のように作製し、実施例1の試料と同様の電極形状の
薄膜コンデンサを上記実施例1と同様にして作製した。
この薄膜コンデンサの特性について上記実施例と同様に
して求めた。その結果を表3に記載した。
【0105】
【表3】
【0106】この表3から、一層当たりの容量が1から
10nFで、かつ単位面積当たり20nF/mm2 の大
容量で、共振周波数が100MHz以上の単板コンデン
サを得ることができるのは、電極に流れる電流が逆方向
であるような電極構造をもち、図2のアスペクト比(b
/a)が1以上、すなわちインダクタンスが200pH
以下であることが判る。
【0107】実施例3 実施例1と同様にして、図4に示すような積層型薄膜コ
ンデンサを作製した。
【0108】即ち、アルミナ基板上に白金電極をマグネ
トロンスパッタで作製し、その上にゾルゲル法で誘電体
薄膜を作製するプロセスを繰り返すことにより行った。
【0109】また、端子電極として、最上部に取出電極
部を2箇所設けた構造である。
【0110】作製した薄膜コンデンサの1MHzから
1.8GHzでのインピーダンス特性を、インピーダン
スアナライザー(ヒュウレットパッカード社製HP42
91A)を用いて測定した。有効電極面積がa×b=
0.35×0.70mm2 で、誘電体薄膜が5層の場
合、実効容量が42.5nF(一層当たり、34.2n
F/mm2 )、実効インダクタンスが35pH、実効抵
抗が100mΩであり、共振周波数は130MHzであ
った。さらに、電極面積がa×b=0.2×0.2mm
2 で、誘電体薄膜が10層の場合には実効容量が14.
3nF(一層当たり、35.8nF/mm2 )、実効イ
ンダクタンスが20pH、実効抵抗が55mΩであり、
共振周波数は298MHzであった。
【0111】
【発明の効果】以上詳述した様に、本発明によれば、長
方形状電極の長辺に、同一方向に容量取出部を形成した
ので、電極を流れる電流の向きが逆方向となり、しか
も、電流の流れる経路を短くでき、これにより、低イン
ダクタンス化を図ることができる。また、高周波領域に
おいても高い比誘電率を有する誘電体薄膜を用いること
により、高周波領域において大容量の薄膜コンデンサを
得ることができる。
【0112】よって、一層の単位面積当たり20nF/
mm2 以上の大容量、かつ低インダクタンス(100p
H以下)、100MHz以上の共振周波数をもつ薄膜デ
カップリングコンデンサを提供することができ、数10
0MHzから1GHzのクロック周波数で動作する高速
デジタルIC回路における同時切り替えノイズの効果的
な除去、および電源電圧の定常的な安定化を図ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成式BaTi1-x-y Zrx Sny 3 におい
て、横軸にx、縦軸にyを記載した図である。
【図2】本発明の薄膜コンデンサの基本構成を示す斜視
図である
【図3】従来の薄膜コンデンサの基本構成を示す斜視図
である
【図4】本発明の積層型薄膜コンデンサの基本構成を示
す斜視図である
【図5】(a)は図3のa−a線に沿った断面図、
(b)は図3のb−b線に沿った断面図である。
【図6】本発明の積層型薄膜コンデンサの概念図を示す
斜視図である。
【図7】図6のA方向から見た側面図である。
【図8】図6のB方向から見た側面図である。
【図9】図6のC方向から見た正面図である。
【図10】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3
3 薄膜の測定周波数1kHzにおける比誘電率の温度
特性を示す図である。
【図11】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3
3 薄膜の測定周波数1kHzにおける比誘電率の直流
電界依存性を示す図である。
【図12】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3
3 薄膜の比誘電率の周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
1・・・基板 2、4、21a、21b・・・長方形状電極 3、22・・・誘電体薄膜 5、23a、23b・・・容量取出部 25a、25b・・・端子電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神垣 耕世 鹿児島県国分市山下町1番4号 京セラ株 式会社総合研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に、短辺と長辺とからなる長方形状
    電極、誘電体薄膜、前記長方形状電極を順次形成してな
    り、前記長方形状電極の同一方向の長辺にそれぞれ容量
    取出部を形成してなることを特徴とする薄膜コンデン
    サ。
  2. 【請求項2】短辺の長さをa、長辺の長さをbとした
    時、b/aが2以上であることを特徴とする請求項1記
    載の薄膜コンデンサ。
  3. 【請求項3】誘電体薄膜は、金属元素としてPb、Mg
    およびNbを含むペロブスカイト型複合酸化物結晶から
    なる膜厚2μm以下の薄膜であって、測定周波数1kH
    z(室温)での比誘電率が2500以上、100MHz
    (室温)での比誘電率が2000以上であり、かつ比誘
    電率の温度特性が±15%以内(−40℃〜85℃)で
    あり、直流電界5V/μm印加時の比誘電率の減少率が
    40%以内であることを特徴とする請求項1または2記
    載の薄膜コンデンサ。
  4. 【請求項4】誘電体薄膜は、金属元素としてBa、T
    i、ZrおよびSnを含有するペロブスカイト型複合酸
    化物からなる薄膜であって、これらの成分をBaTi
    1-x-y Zrx Sny 3 と表した時のxおよびyが、図
    1における線分A−B−C−D−E−F−Aで囲まれる
    範囲内にあり、かつ、ペロブスカイト結晶の平均結晶粒
    径dが0.10〜0.25μmであることを特徴とする
    請求項1または2記載の薄膜コンデンサ。
  5. 【請求項5】基板上に、短辺と長辺とからなる複数の長
    方形状電極と、複数の誘電体薄膜とを交互に積層してな
    り、前記長方形状電極の同一方向の長辺にそれぞれ容量
    取出部を形成してなることを特徴とする積層型薄膜コン
    デンサ。
JP5754397A 1997-03-12 1997-03-12 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ Pending JPH10256080A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5754397A JPH10256080A (ja) 1997-03-12 1997-03-12 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5754397A JPH10256080A (ja) 1997-03-12 1997-03-12 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10256080A true JPH10256080A (ja) 1998-09-25

Family

ID=13058691

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5754397A Pending JPH10256080A (ja) 1997-03-12 1997-03-12 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10256080A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008108862A (ja) * 2006-10-25 2008-05-08 Nec Corp コンデンサ素子およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008108862A (ja) * 2006-10-25 2008-05-08 Nec Corp コンデンサ素子およびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6266227B1 (en) Thin-film capacitor
US7601181B2 (en) Methods of making thin film capacitors comprising a manganese doped barium titantate dielectric
US7580241B2 (en) Thin film capacitor element composition, high permittivity insulation film, thin film capacitor element, thin film multilayer capacitor, and method of production of thin film capacitor element
JP2006523153A (ja) 金属箔上におけるチタン酸バリウムストロンチウムを含む多層構造
TW200811891A (en) Thin film dielectrics with co-fired electrodes for capacitors and methods of making thereof
JP2004002956A (ja) 誘電構造物
JP2007165854A (ja) 部分的にジルコニウム、スズまたはハフニウムによって置換されたチタニウムを有するチタン酸バリウム薄膜
JPWO2003021615A1 (ja) 薄膜容量素子用組成物、高誘電率絶縁膜、薄膜容量素子および薄膜積層コンデンサ
JPH10335178A (ja) 薄膜コンデンサおよびコンデンサ内蔵基板
JPH10256080A (ja) 薄膜コンデンサおよび積層型薄膜コンデンサ
JP3457892B2 (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
JPH10189390A (ja) 積層型薄膜コンデンサ
Paik et al. Ba titanate and barium/strontium titanate thin films from hydroxide precursors: Preparation and ferroelectric behavior
JP3681844B2 (ja) 誘電体薄膜及びセラミックコンデンサ
JP3652129B2 (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
JP2004253294A (ja) 誘電体薄膜と薄膜コンデンサおよびそれを用いた電子回路部品
JP3481807B2 (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
WO2004077461A1 (ja) 電極層および誘電体層を含む積層体ユニット
JPH11273989A (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
JP3631570B2 (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
JP2001338839A (ja) 可変容量コンデンサ
JP3652073B2 (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ
CN100380540C (zh) 介电结构
JPH11103022A (ja) 誘電体薄膜およびその製法
JPH1045469A (ja) 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ