JPH10237598A - 加工割れ感受性の低いオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

加工割れ感受性の低いオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法

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JPH10237598A
JPH10237598A JP9039027A JP3902797A JPH10237598A JP H10237598 A JPH10237598 A JP H10237598A JP 9039027 A JP9039027 A JP 9039027A JP 3902797 A JP3902797 A JP 3902797A JP H10237598 A JPH10237598 A JP H10237598A
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淳一 香月
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非金属介在物を無害なMnO−SiO2 系に
し、オーステナイト系ステンレス鋼の加工割れ感受性を
高める。 【解決手段】 このオーステナイト系ステンレス鋼は、
C:0.08%以下,Si:0.2〜1.0%,Mn:
1.0%以下,S:0.007%以下,Ni:8.0〜
15.0%,Cr:15.0〜19.0%,N:0.0
3%以下,Al:0.003%以下,残部が実質的にF
eの組成を持ち、Si/Alの重量比が100以上で、
非金属介在物の組成がMnO−SiO2 を主成分とし、
MgO:7%以下,Al23 :35%以下,Cr2
3 :10%以下である。ドロマイト系耐火物をライニン
グした精錬炉を用いてステンレス溶鋼を精錬し、精錬終
了後のスラグのCaO/SiO2 比を1.4〜2.4
に、Al23 濃度を8%以下に維持することにより製
造される。ドロマイト系耐火物には、MgO:40〜6
3%及び主成分としてCaO:34〜57%を含む耐火
物が使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加工割れ感受性が低い
オーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】加工性に優れたオーステナイト系ステン
レス鋼は、近年、機能材料としても使用されるようにな
ってきている。オーステナイト系ステンレス鋼の中で
も、常温で非磁性の鋼種は、電子部品用材料として使用
されることが多い。この種の材料には、高い清浄度が要
求される。そのため、素材製造時の精錬工程で不活性ガ
スの吹込みにより溶鋼を十分撹拌しながら、CaOを主
体とする塩基性フラックス及びAl等の強還元剤を添加
し、脱硫,脱酸及び非金属介在物除去を十分に行わせて
いる。たとえば、特開平6−306438号公報では、
二次精錬炉の耐火物を特定すると共に精錬後のスラグ組
成を調整することにより、有害なAl23 −MgO系
非金属介在物の生成を抑制している。このような処理に
よって、ある程度まで高清浄度化される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電子部品用材料に供さ
れる素材の中でも、鋼板の板厚が0.5mm程度以下の
極薄で製品形状が複雑なものでは、加工時に僅かな割れ
や表面疵が発生しても、製品として使用不可となる。そ
のため、機能材料として用いられる用途では、加工精度
や品質に対する要求が苛酷である。加工割れや表面疵
は、硬質な非金属介在物に原因があることが多い。しか
し、精錬工程で溶鋼を強撹拌することにより非金属介在
物を完全に浮上分離することは困難である。また、非金
属介在物の硬さは組成によって大きく変わるが、生成す
る非金属介在物の組成までを制御してない。本発明は、
このような問題を解消すべく案出されたものであり、非
金属介在物の組成を制御することにより、熱間加工時に
粘性変形し冷間加工時に微細分散するMnO−SiO2
系にし、非金属介在物起因の加工割れがないオーステナ
イト系ステンレス鋼を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のオーステナイト
系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.
08重量%以下,Si:0.2〜1.0重量%,Mn:
2.0重量%以下,S:0.007重量%以下,Ni:
8.0〜15.0重量%,Cr:15.0〜19.0重
量%,N:0.03重量%以下,Al:0.003重量
%以下,残部が実質的にFeの組成を持ち、Si/Al
の重量比が100以上で、非金属介在物の組成がMnO
−SiO2 を主成分とし、MgO:7重量%以下,Al
23 :35重量%以下,Cr23 :10重量%以下
であることを特徴とする。このオーステナイト系ステン
レス鋼は、ドロマイト系耐火物をライニングした精錬炉
を用いてステンレス溶鋼を精錬し、精錬終了後のスラグ
のCaO/SiO 2 比を1.4〜2.4に、Al23
濃度を8重量%以下に維持することにより製造される。
ドロマイト系耐火物には、MgO:40〜63重量%及
び主成分としてCaO:34〜57重量%を含む耐火物
が使用される。
【0005】
【作用】本発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼
に絞り加工を施して得た製品について、非金属介在物に
由来する加工割れが発生しているものを調査した。オー
ステナイト系ステンレス鋼に分散している非金属介在物
は、通常、約30重量%のMgOを含むスピネル型Al
23 −MgO系,約50重量%のAl23 を含むM
nO−SiO2 −Al23 系,約15重量%のCr2
3 を含むMnO−SiO2 系である。本発明者等によ
る調査・研究の結果、これらの介在物に含まれるAl2
3 濃度,MgO濃度及びCr23 濃度が加工割れに
大きく影響していることが判った。そして、MnO−S
iO2 を主成分とする非金属介在物を生成させると共
に、MgO:7重量%以下,Al23 :35重量%以
下,Cr23 :10重量%以下に調整するとき、非金
属介在物が無害化し、加工割れ感受性の低いオーステナ
イト系ステンレス鋼が得られることを見い出した。更
に、介在物組成に影響を及ぼす因子としてメタル組成,
スラグ組成,耐火物組成等について検討を進めたとこ
ろ、精錬終了後のスラグ組成及び取鍋の耐火物組成を特
定することが有効であることが判った。
【0006】以下、本発明オーステナイト系ステンレス
鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。 C:0.08重量%以下 固溶強化元素であり、多量に含まれると0.2%耐力が
上昇し、鋼材を硬質化する。絞り加工が供される鋼材で
は、耐力及び硬さの上昇により加工性が阻害され、加工
時に耳割れを発生させることもある。そこで、本発明に
おいては、C含有量の上限を0.08重量%に設定し
た。 Si:0.2〜1.0重量% 溶鋼の脱酸に使用される成分であり、0.2重量%未満
では脱酸不足となる。そして、非金属介在物中のCr2
3 濃度が10重量%よりも高くなり、加工割れ原因の
非金属介在物が生成する。しかし、1.0重量%を超え
る多量のSiが含まれると、鋼材が硬質化し、冷間加工
で薄板を製造する際に所定板厚まで圧延するために多く
のパス回数を必要とし、生産性が大きく低下する。ま
た、鋼材の硬質化に伴って、絞り加工時に耳割れが発生
することもある。
【0007】Mn:2.0重量%以下 熱間加工性の確保に有効な合金成分であり、0.2%耐
力を低下させ、鋼材を軟質化する作用も呈する。Mn添
加の効果は、2.0重量%で飽和し、それ以上添加して
も増量に見合った性質改善がみられない。 S:0.007重量%以下 熱間加工性に悪影響を及ぼす元素であることから、S含
有量の上限を0.007重量%に規制した。なお、一層
良好な熱間加工性を得るためには、S含有量を0.00
5重量%以下に規制することが好ましい。 Ni:8.0〜15.0重量% オーステナイト系ステンレス鋼の主要合金成分であり、
加工性及び常温非磁性を確保するために8.0重量%以
上のNi量が必要である。しかし、高価な元素であるこ
とから、Niの多量添加は鋼材コストを上昇させる原因
となる。また、15.0重量%を超えると、却って非磁
性化できなくなる。
【0008】Cr:15.0〜19.0重量% 耐食性の改善に必要な合金成分であり、15.0重量%
以上の含有量でCr添加の効果が顕著になる。しかし、
過剰量のCrが含まれると鋼材が硬質化し、加工性が劣
化することから、本発明ではCr含有量の上限を19.
0重量%に設定した。
【0009】N:0.03重量%以下 Cと同様な固溶強化元素であり、多量に含まれると0.
2%耐力が上昇し、鋼材を硬質化する。絞り加工が供さ
れる鋼材では、耐力及び硬さの上昇により加工性が阻害
され、加工時に耳割れを発生させることもある。そこ
で、本発明においては、N含有量の上限を0.03重量
%に設定した。 Al:0.003重量%以下 加工割れの起点となる非金属介在物の組成に大きく影響
する成分である。Al含有量が0.003重量%を超え
ると、有害な非金属介在物が生成し易くなる。 Si/Alの重量比:100以上 加工割れの起点となる非金属介在物の組成は、Si/A
lの重量比で調整できる。Si/Al<100では有害
な非金属介在物が生成するが、Si/Al≧100にす
ると熱間加工時に粘性変形し冷間加工時に微細分散する
MnO−SiO2 系非金属介在物になる。
【0010】非金属介在物:MnO−SiO2 系にする
ことにより非金属介在物は無害化されるが、更にMg
O:7重量%以下,Al23 :35重量%以下,Cr
23 :10重量%以下にすることにより加工割れ感受
性が一層改善される。MgOは、耐火物やスラグに含ま
れており、不可避的に介在物中に含まれることが多い。
MgO濃度が7重量%を超えると、介在物が熱間加工中
に粘性変形しなくなり、加工割れの原因になり易い。こ
のような欠陥は、MgO濃度を7重量%以下にすること
により抑制される。Al23 は、種々の添加原料に含
まれているAlから生成すると考えられるが、Al2
3 も介在物中の濃度により介在物の変形能に大きな影響
を及ぼす。Al23 濃度が35重量%よりも高いと有
害な介在物が生成されるが、35重量%以下であると介
在物は熱間圧延で粘性変形し、冷間圧延で微細分散する
ため加工割れを発生させることがない。Cr23は、
10重量%を超える濃度では加工割れ原因の介在物とな
るが、10重量%以下の濃度では無害な介在物となる。
【0011】精錬終了時のスラグ組成:精錬終了時のス
ラグ組成も、非金属介在物の組成に大きな影響を及ぼ
す。スラグ中のCaO/SiO2 比が1.4よりも低
く、且つAl23 濃度が8重量%以下の場合、介在物
の主組成がMnO−SiO2 となり、加工割れに悪影響
を及ぼす介在物中のAl23 やMgOが極く僅かに含
まれる程度になる。しかし、この場合でも、介在物にC
23 が20重量%程度含まれることがあり、加工割
れ原因になることがある。CaO/SiO2 比が1.4
より低く且つAl23 濃度が8重量%を超えると、M
nO−Al23 系の介在物が生成し易くなる。MnO
−Al23 系介在物は、変形能が良好でないため加工
割れの原因になる。一方、CaO/SiO2 比が2.4
を超えるようなスラグ組成では、代表的な硬質介在物で
あるMgO−Al23 系スピネル型介在物が生成し易
くなる。このようなことから、スラグ組成は、CaO/
SiO2比を1.4〜2.4の範囲に、Al23 濃度
を8重量%以下にする必要がある。
【0012】取鍋の耐火物:MgO含有量が50〜85
重量%で残部の主成分がCr23 のマグクロ系耐火物
を取鍋耐火物として用いた場合、スラグ中のCaO/S
iO2 比が1.9を超えると耐火物の溶損が大きくな
り、スラグ中のMgO濃度が上昇するため、介在物中の
MgO濃度が高くなる。その結果、加工割れを招く介在
物になる可能性が高い。また、マグクロ系耐火物は十分
な脱硫能を有していないため、鋼中のS濃度規制が厳し
い場合、精錬によって成分規格を満足できない場合が生
じる。これに対し、MgO含有量が40〜63重量%で
残部の主成分がCaOであるドロマイト系耐火物は、ス
ラグ中のCaO/SiO2 比の上昇によっても耐火物の
溶損が加速されないため、介在物組成に及ぼす悪影響が
小さく、また製造コストを低く抑えることもできる。更
に、十分な脱硫能をもっていることから、鋼中S規制を
精錬によって十分満足させることが可能になる。
【0013】
【実施例】
実施例1:表1に示した成分組成をもつオーステナイト
系ステンレス鋼を70トン電気炉で溶解し、転炉処理,
VOD精錬,連鋳,熱延,酸洗,冷延を経て、種々の非
金属介在物が分散した板厚3.0mmのステンレス鋼薄
板を製造した。このステンレス鋼薄板に絞り比3の絞り
加工を施し、精錬時に生成したCaO−SiO2 系スラ
グの組成が非金属介在物の組成及び加工割れの発生有無
に及ぼす影響を調査した。
【0014】
【0015】図1〜3の調査結果にみられるように、精
錬時のスラグに含まれるAl23の濃度及びCaO/
SiO2 の重量比が絞り加工時の加工割れに大きく影響
していることが判った。なお、図1〜3では、非金属介
在物に含まれる各成分の濃度を縦軸に示し、加工割れが
発生した場合を白抜き記号で、加工割れが発生しなかっ
た場合を中実記号で示した。図1,2から、スラグのA
23 濃度が8.0重量%以下でCaO/SiO 2
が1.4より低い場合、MnO−SiO2 系の非金属介
在物が生成していることが判る。生成した非金属介在物
は、Al23 (丸印)やMgO(四角印)を僅かに含
む程度であったが、約13〜18重量%のCr23
(三角印)を含んでいた。このことから、スラグのAl
23 濃度が8.0重量%以下でCaO/SiO2 比が
1.4より低いと、Cr23 の還元が十分に進行せ
ず、加工割れの原因となる非金属介在物が生成するもの
と推察される。
【0016】Cr23 の還元は、CaO/SiO2
が大きくなるに従って減少しており、CaO/SiO2
比が2.4を超える条件下では非金属介在物にほとんど
Cr 23 が含まれていなかった。しかし、Al23
濃度が約42〜70重量%,MgO濃度が約26〜30
重量%になっていた。特にCaO/SiO2 比が2.6
以上になると、Al23 濃度が約70重量%,MgO
濃度が約30重量%の硬質なスピネル型介在物となって
いた。これらの非金属介在物が原因して、図1,2に示
すように加工割れが発生するものと推察される。また、
スラグ中のAl23 濃度が9.5重量%では、図3に
示すようにCaO/SiO2 比に拘らず、全ての条件下
で加工割れの原因となる非金属介在物が生成していた。
【0017】これに対し、スラグ中のAl23 濃度を
8.0重量%以下に規制し、CaO/SiO2 比を1.
4〜2.4の範囲に維持して精錬すると、生成した非金
属介在物は、Cr23 濃度10重量%以下,Al2
3 濃度35重量%以下,MgO濃度7重量%以下の組成
をもつMnO−SiO2 系介在物となった。この非金属
介在物は、熱間加工時に粘性変形し、冷間加工時に微細
分散する特性をもっている。そのため、図1,2に中実
記号で示すように、加工割れの発生がないステンレス鋼
板が得られた。
【0018】次いで、非金属介在物の組成に及ぼすメタ
ル組成の影響を調査した。介在物組成に影響を及ぼすメ
タル組成としては精錬時に添加する脱酸剤が挙げられ、
脱酸剤としてはSi,Alが使用されることから、介在
物組成に及ぼすSi濃度及びAl濃度の影響を調べた。
図4の調査結果にみられるように、Al濃度が0.00
3重量%より高い場合、Si濃度の如何に拘らず加工割
れや表面疵の発生が検出された。そこで、Al濃度を
0.003重量%以下としてSi濃度を変化させたとこ
ろ、Si/Alの重量比が100以上になると加工割れ
や表面疵が発生しなくなった。更に、ステンレス鋼の精
錬に使用される耐火物の組成が非金属介在物に及ぼす影
響を調査した。MgO含有量が40〜63%で残部の主
成分がCaOであるドロマイト系耐火物、MgO含有量
が50〜85重量%で残部の主成分がCr2 3 であ
り、その他にSiO2 やAl23 を含むMgO−Cr
23 系耐火物(マグクロ系)を使用し、精錬後の介在
物組成を比較調査した。
【0019】図5の調査結果にみられるように、マグク
ロ系耐火物ではCaO/SiO2 比が大きくなると溶損
量が増加する傾向を示し、CaO/SiO2 比が1.9
を超える付近で溶損量が増大した。溶損量の増加に伴っ
て、介在物中のMgO濃度も増加する傾向を示し、Ca
O/SiO2 比2.0以上で介在物中のMgO濃度が7
重量%を超えるようになった。MgO濃度の上昇は、溶
損した耐火物中のMgOが還元されて鋼中Mgとなり、
介在物中の酸素と結び付くことに起因するものと推察さ
れる。また、マグクロ系耐火物では十分な脱硫能が得ら
れず、精錬後のS濃度が本発明で規定する範囲に達しな
いこともあった。
【0020】他方、ドロマイト系耐火物を使用した場
合、CaO/SiO2 比が高くなっても精錬時の耐火物
の溶損が少ないため、非金属介在物中のMgO濃度が7
重量%を超えることはなかった。MgO濃度の上昇が抑
制される理由は明らかでないが、耐火物成分であるCa
O−MgOがスラグ成分であるCaO−SiO2 と反応
して耐火物表層部のCaO/SiO2 比が高くなり、結
果として耐火物表層部が高融点の耐火物でコーティング
された状態になることに起因するものと推察される。脱
硫に関しても、ドロマイト系耐火物を使用して精錬した
後のS濃度は、本発明で規定される範囲に十分収まって
いた。しかも、ドロマイト系耐火物は、マグクロ系耐火
物に比較して安価であるため、製造コストの面でも有利
である。
【0021】実施例2:オーステナイト系ステンレス鋼
を70トン電気炉で溶解し、転炉で製錬し、取鍋に注入
した。取鍋としては、MgO:40〜63重量%,残部
CaOのドロマイト系耐火物をライニングした取鍋、M
gO:50〜85重量%,Cr23 :7〜30重量%
でその他にSiO2 ,Al23 を含むマグクロ系耐火
物を退任具した取鍋を使用した。取鍋に収容した溶鋼を
VPD炉で精錬し、メタル組成及びスラグ組成を変化さ
せた。精錬時、スラグ量を約40kg/トンに維持し
た。このようにして製造されたオーステナイト系ステン
レス鋼の成分・組成を表2に示す。
【0022】
【0023】精錬後の溶鋼を厚み200mm,幅1mの
スラブに連続鋳造した。得られたスラブを1230℃で
熱間圧延した後、板厚0.3mmの薄板に仕上げ、更に
絞り比4の加工を施した。加工された鋼板を観察し、加
工割れの発生有無を調査した。そして、VOD精錬後の
スラグ組成,薄板のメタル組成が絞り加工後の加工割れ
に及ぼす影響を調査した。表3の調査結果にみられるよ
うに、本発明に従った条件下で製造されたオーステナイ
ト系ステンレス鋼は、何れも加工割れが検出されず、非
金属介在物が無害化されていることが判る。これに対
し、スラグ組成やメタル組成が本発明で規定した範囲を
外れる比較例のオーステナイト系ステンレス鋼では、有
害な非金属介在物が分散しており、絞り加工後に加工割
れが発生していた。
【0024】
【0025】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のオース
テナイト系ステンレス鋼は、非金属介在物を熱間加工時
に粘性変形し、冷間加工時に微細分散するMn−SiO
2 系に調整しているため、加工割れの起点となる非金属
介在物がなく、加工割れ感受性の低い材料であり、過酷
な加工に供される各種機能材料として使用される。ま
た、メタル組成,精錬後のスラグ組成,耐火物組成等を
調整することにより非金属介在物が組成制御されるた
め、製造自体も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラグのAl23 濃度3.2重量%,メタ
ルのSi/Al比500の条件下でスラグのCaO/S
iO2 比が介在物の組成及び加工割れに及ぼす影響を示
したグラフ
【図2】 スラグのAl23 濃度8.0重量%,メタ
ルのSi/Al比500の条件下でスラグのCaO/S
iO2 比が介在物の組成及び加工割れに及ぼす影響を示
したグラフ
【図3】 スラグのAl23 濃度9.5重量%,メタ
ルのSi/Al比500の条件下でスラグのCaO/S
iO2 比が介在物の組成及び加工割れに及ぼす影響を示
したグラフ
【図4】 メタル中のSi濃度及びAl濃度が加工割れ
に及ぼす影響を示したグラフ
【図5】 CaO/SiO2 比が耐火物の溶損及び介在
物中のMgO濃度に及ぼす影響を示したグラフ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.08重量%以下,Si:0.2
    〜1.0重量%,Mn:2.0重量%以下,S:0.0
    07重量%以下,Ni:8.0〜15.0重量%,C
    r:15.0〜19.0重量%,N:0.03重量%以
    下,Al:0.003重量%以下,残部が実質的にFe
    の組成を持ち、Si/Alの重量比が100以上で、非
    金属介在物の組成がMnO−SiO2 を主成分とし、M
    gO:7重量%以下,Al23 :35重量%以下,C
    23 :10重量%以下である加工割れ感受性の低い
    オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 ドロマイト系耐火物をライニングした精
    錬炉を用いて請求項1記載の組成をもつステンレス溶鋼
    を精錬し、精錬終了後のスラグのCaO/SiO2 比を
    1.4〜2.4に、Al23 濃度を8重量%以下に維
    持することを特徴とする加工割れ感受性の低いオーステ
    ナイト系ステンレス鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 MgO:40〜63重量%及びCaO:
    34〜57重量%を含む組成のドロマイト系耐火物を使
    用する請求項2記載の加工割れ感受性の低いオーステナ
    イト系ステンレス鋼の製造方法。
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Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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