JPH1017974A - 焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金板及びその製造方法 - Google Patents

焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金板及びその製造方法

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JPH1017974A
JPH1017974A JP18885196A JP18885196A JPH1017974A JP H1017974 A JPH1017974 A JP H1017974A JP 18885196 A JP18885196 A JP 18885196A JP 18885196 A JP18885196 A JP 18885196A JP H1017974 A JPH1017974 A JP H1017974A
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鈴木義和
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温での長時間保持や人工時効処理を加えな
くても高い強度を示し、曲げなどを含む成形性が良好で
あり、成形および塗装焼付後の強度が高く、室温で保存
されている間に機械的性質が変わりにくいT4合金板を
得る。 【解決手段】 特定組成のAl−Mg−Cu系合金板の
特に溶体化焼入れ時の300℃から100℃までの冷却
速度を制御することにより、焼入れ冷却時に生じる析出
物を実質的に含まない製法を採った場合のT4合金板の
導電率と比べて0.97〜0.99の範囲の導電率をも
たらすようなAl−Cu−Mg系析出物の分布を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、焼入時に析出硬
化を起こすことにより強度が優れ室温保持中の機械的性
質の経時変化が少ないAl−Mg−Cu系T4合金板に
関するもので、自動車や電気機器等の外板や各種成形部
品などの成形用素板として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】従来よりAl−Mg系合金板は、板形状
のままあるいは成形加工した形で多く用いられている。
このうち、自動車外板のようにある程度の強度が必要と
される用途に対しては、JISの5182合金等の約
4.5%のMgを含む合金あるいはこれ以上のMgが含
有された合金が用いられている。しかし、この系の合金
は、非熱処理型合金であり、成形後の塗装焼付時の加熱
により軟化する欠点(ヘ゛ークソフトニンク゛)を有する。これに対
し、強度の改善のためCuを添加したAl−Mg−Cu
系合金板を用いる技術についても既に開示されている。
このCu添加により、析出硬化性が生じるためヘ゛ークソフトニ
ンク゛が抑えられ、条件によっては塗装焼付時に強度が上
昇するヘ゛ークハート゛ニンク゛が可能となる。しかし、およそ4.
5%以上のMgを含む合金に対して多量のCuを添加す
ることは、熱間加工性を低下させるため工業的な生産が
難しく、また耐食性の点で問題が生じるためCu添加量
は0.4%以下に抑えられて使用されているのが現状で
ある。これに対し、より低Mg合金2.5〜3%程度の
合金にCuを添加した場合、ヘ゛ークハート゛性を付与すること
が可能になるが、絶対的な強度が不足しており本格的に
使用されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Al−Mg
−Cu系合金において、なんら室温での長時間保持や人
工時効処理を加えなくても高い強度を示し、曲げなどを
含む成形性が良好であり、成形および塗装焼付後の強度
が高く、室温で保存されている間に機械的性質が変わり
にくいT4合金板を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、限定され
た組成範囲のAl−Mg−Cu系合金が特異な析出挙動
を示す事に着目し、種々の検討を行った。そして、溶体
化処理後の焼入れ冷却中に析出硬化を起こさせることを
主眼とした組織制御により、特に優れたAl−Mg−C
u系T4合金板が得られることを見出し、本発明にいた
ったものである。
【0005】すなわち、請求項1の、3.0%(重量
で。以下同じ。)を超え4.2%未満のMgおよび0.
5%を超え1.2%未満のCuを含み、残部Alと不可
避不純物とから成る組成を持ち、溶体化後の焼入れ冷却
過程で生じて式1を満たすような導電率C1をもたらすA
l−Cu−Mg系析出物の分布を有することを特徴とす
る焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金
板。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 但し、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際の
T4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に生
じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4
合金板の導電率(IACS%)。 であり、
【0006】請求項2の、3.0%を超え4.2%未満
のMgおよび0.5%を超え1.2%未満のCuを含
み、Mn,Cr,Zr,Vのうち1種または2種以上を
各0.05%〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、
残部Alと不可避不純物とから成る組成を持ち、溶体化
後の焼入れ冷却過程で生じて式1を満たすような導電率
C1をもたらすAl−Cu−Mg系析出物の分布を有する
ことを特徴とする焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−
Cu系T4合金板。
【0007】請求項3の、3.0%を超え4.2%未満
のMgおよび0.5%を超え1.2%未満のCuを含
み、残部Alと不可避不純物とから成る組成を持ち、溶
体化後の焼入れ冷却過程で生じて式1を満たすような導
電率C1をもたらすAl−Cu−Mg系析出物の分布を有
し、かつ結晶粒界上に存在し粒界と直角方向の寸法が
0.5μm以上である金属間化合物粒子の粒界長に対す
る分布線分率が10%以下である事を特徴とする焼入れ
同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金板。
【0008】請求項4の、3.0%を超え4.2%未満
のMgおよび0.5%を超え1.2%未満のCuを含
み、Mn,Cr,Zr,Vのうち1種または2種以上を
各0.05%〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、
残部Alと不可避不純物とから成る組成を持ち、溶体化
後の焼入れ冷却過程で生じて式1を満たすような導電率
C1をもたらすAl−Cu−Mg系析出物の分布を有し、
かつ結晶粒界上に存在し粒界と直角方向の寸法が0.5
μm以上である金属間化合物粒子の粒界長に対する分布
線分率が10%以下である事を特徴とする焼入れ同時析
出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金板。
【0009】請求項5の、3.0%を超え4.2%未満
のMgおよび0.5%を超え1.2%未満のCuを含
み、必要によりMn,Cr,Zr,Vのうち1種または
2種以上を各0.05%〜0.4%、合計で0.6%未
満含有し、残部Alと不可避不純物とから成る組成を持
つ合金の板材を、460〜560℃での溶体化処理を行
い、この後の焼入れ冷却において溶体化処理温度から3
00℃までの冷却速度を10〜1000℃/秒とし、3
00℃から100℃までの冷却速度を5〜50℃/秒に
制御することを特徴とする、焼入れ同時析出硬化型のA
l−Mg−Cu系T4合金板の製造方法。
【0010】請求項6の、3.0%を超え4.2%未満
のMgおよび0.5%を超え1.2%未満のCuを含
み、必要によりMn,Cr,Zr,Vのうち1種または
2種以上を各0.05%〜0.4%、合計で0.6%未
満含有し、残部Alと不可避不純物とから成る組成を持
つ合金の板材を、460〜560℃での溶体化処理を行
い、この後の焼入れ冷却において溶体化処理温度から3
00℃までの冷却速度を40〜1000℃/秒とし、3
00℃から100℃までの冷却速度を5〜50℃/秒に
制御することを特徴とする、焼入れ同時析出硬化型のA
l−Mg−Cu系T4合金板の製造方法。である。
【0011】
【発明の実施の形態】まず、組成の限定理由について述
べる。Mgは、焼入れ同時析出処理により強度を高くす
るために必須の合金元素であり、良好な強度および成形
性を実現するのに必要であり、3.0%を超えて4.2
%未満となる添加量に限定される。これより添加量が少
ないと、焼入れ同時析出が不十分となり、強度や成形性
が良好とならない。一方、この範囲より添加量が多い
と、熱間加工性が悪くなり実質的に工業生産が困難にな
り、耐食性が悪くなるなどの問題が生じるため適当でな
い。
【0012】Cuも焼入れ同時析出処理により強度を高
くするために必須の合金元素であり、強度や成形性に寄
与するもので、0.5%を超え1.2%未満となる添加
量に限定される。この範囲より添加量が少ないと、焼入
れ同時析出硬化による強度上昇が達成できず、強度が不
十分となる。一方、これより添加量が多いと、熱間加工
性が悪くなり、耐食性が悪化するなどの問題が生じる。
【0013】Mn,Cr,Zr,Vは、結晶粒の粗大化
抑制および結晶粒径のバラツキ低減に有効であり、強度
向上にも寄与する合金元素であり、請求項2、4、5、
6で、これらのうち1種または2種以上を各0.05%
〜0.4%、合計で0.6%未満添加することを規定し
ている。この範囲より少ない添加では、特に効果が無
く、これを超える添加は、延性、成形性の低下を招き適
当でない。
【0014】不純物としては、アルミニウム合金に不可
避的に含まれる元素としてFeとSiが挙げられる。こ
れらの含有量は各0.4%以下が望ましい。これを超え
ると、延性、成形性の低下を招くため適当でない。
【0015】また、アルミニウム合金の鋳造の際に一般
的に添加されるTi系あるいはTi−B系の微細化剤に
起因するTiは0.1%以下、Bは0.03%以下の範
囲で含んでもよい。
【0016】本発明で、対象とする合金組成は、300
℃の平衡状態においてCuおよびMgで形成される相が
主にCuMg4Al6となるものである。これが、組成が
本発明の範囲をはずれ300℃での平衡状態においてC
uとMgで形成される相が主にCuMgAl2(S相)
やCuAl2(θ相)であったり、この温度でも平衡的
にCuおよびMgが全固溶される場合には、焼入れ同時
析出処理による強度向上が十分に起こらない。
【0017】本発明のT4合金板の、金属組織中には、
溶体化後の焼入れ冷却過程で生じて式1を満たすような
導電率C1をもたらすAl−Cu−Mg系析出物の分布を
有する。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 ここで、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際
のT4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に
生じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT
4合金板の導電率(IACS%)である。「焼入れ冷却時に生じ
る析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4合
金板」とは、溶体化処理後の焼入れを非常に速い冷却速
度で行って析出を抑えることにより得られ、具体的には
460〜560℃での溶体化処理後、100℃までの平
均冷却速度で1200℃/秒以上となる水焼入れで室温
まで冷却することにより得られる。
【0018】式1を満たさず、C1/C0>0.99であると、
焼入れ同時析出硬化が不十分で機械的強度が不十分とな
り、室温保存中の機械的性質の変化が増大するため不適
当である。逆に、C1/C0<0.97であると析出が過度に進ん
でいるため、粒界への析出が起こっており曲げ性などに
悪影響を与え、また後の成形後の塗装焼き付け時に析出
硬化を起こす余地がなくなる。
【0019】焼入れ同時析出硬化に関与する析出物は導
電率を下げる作用を持ち、結晶格子に歪みを及ぼす非常
に微細なもので、格子とほぼ整合の状態で析出するGP
ゾーンあるいはクラスターがこれに当たる。ここで、こ
のGPゾーンあるいはクラスターはCuMg4Al6の前
駆体を為すものと推定され、この析出物は発明者らの調
査の結果、焼入れ冷却中の300℃から100℃にかけ
て、主には300℃から200℃にかけて析出する事が
わかっている。これが、焼入れ冷却中に析出しかつ強度
向上に寄与するための条件としては、Mg、Cu添加量
の制御のほか、後で述べるように焼入れ冷却速度の制御
が必要となる。なお、この析出物はS’相あるいはS相
の前駆体である析出物(いわゆるGPBソ゛ーン)とは性質
の異なる物であり、300℃での平衡状態においてCu
とMgで形成される相が主にS相である場合には焼入れ
同時析出硬化という独特な特性が十分に現れない。すな
わち、300℃での平衡状態においてCuとMgで形成
される相が主にS相である合金組成範囲と、本発明の範
囲はこの焼入れ同時析出硬化という点で全く異なる特性
であるため、この両者を区別しない先行の技術があった
としても未完成であり、それは本発明を導く助けになら
ない。
【0020】請求項3、4においては、結晶粒界上に存
在し粒界と直角方向で0.5μm以上の寸法を持つ金属
間化合物粒子の分布線分率が10%以下である事を規定
している。これは、ある断面での結晶粒界の長さの合計
に対して、その上に存在しその断面に露出している結晶
粒界に直角な方向で測って0.5μm以上の寸法の金属間
化合物粒子の結晶粒界上で占める合計長さを割合で表し
たもので、これが10%を超えると曲げ性や粒界腐食感
受性が低下するため適当でない。なお、具体的な測定と
しては、少なくとも結晶50個分に相当する粒界を調査
する必要がある。ここで、対象とする金属間化合物粒子
は、主にAl,CuおよびMgを含む粒界析出物であ
る。この粒界析出物は、溶体化処理および焼入れの一連
の処理の比較的高温域すなわち溶体化処理温度から30
0℃までの冷却の間で生じるものであり、強度に寄与し
ない他、曲げ性や粒界腐食感受性の低下の原因となる。
この点で、主に300℃から100℃で析出する焼入れ
同時析出硬化に寄与する前記のAl−Cu−Mg系析出
物とは異質のものである。
【0021】次に、本発明合金板の製造方法について説
明する。本発明合金の熱間圧延用鋳塊は、通常のDC法
により鋳造され、必要により460〜560℃の温度範
囲で3〜24時間の均質化熱処理が施され、その後、熱
間圧延される。ここで、熱間圧延のみで所定の板厚とし
てもよいが、この後に冷間圧延を施して所定板厚とする
事も可能であり、また、適宜中間焼鈍をはさんで、数次
の冷間圧延を行ってもよい。
【0022】次に、溶体化処理および焼入れを行い、こ
の際に焼入れ同時析出硬化処理とする。まず、溶体化処
理温度は460〜560℃とする。典型的には、2℃/
秒以上の昇温速度で460〜560℃まで昇温し、ここ
で0〜300秒保持する条件で行う。なお、保持0秒は
材料温度到達後直ちに冷却することを示すものである。
溶体化処理温度が460℃より低いと、合金元素を十分
に固溶することができず結果的に強度が不十分となる
か、粒界析出物の割合を増すため適当でない。また、溶
体化処理温度が560℃より高いと結晶粒の過度な成長
を起こし、局部的に共晶融解を起こす可能性があるため
適当でない。
【0023】この後の焼入れ冷却において溶体化処理温
度から300℃までの冷却速度を10〜1000℃/秒
さらに望ましくは40〜1000℃/秒とし、300℃
から100℃までの冷却速度を5〜50℃/秒に制御す
る。
【0024】焼入れ冷却において溶体化処理温度から3
00℃までの冷却速度を10〜1000℃/秒さらに望
ましくは40〜1000℃/秒とするのは、この温度域
で起こる粒界析出を抑制するために必要な条件であり、
冷却速度10℃/秒未満では過度の粒界析出が起こり曲
げ性や耐粒界腐食性に関し悪影響を与える。これが40
℃/秒以上であると、粒界析出物が少なくなり十分に
「結晶粒界上に存在し粒界と直角方向の寸法が0.5μ
m以上である金属間化合物粒子の粒界長に対する分布線
分率が10%以下」となる。これが1000℃/秒を超
えると焼入れ時に板の歪みが大となり、平坦度の良い板
材を得ることが困難になる。
【0025】また、焼入れ過程の300℃から100℃
までの冷却速度を5〜50℃/秒に制御する。これによ
り、焼入れ冷却中のこの温度範囲で析出硬化が起こり、
これが強度の向上、室温保存中の機械的性質の安定性の
向上およびストレッチャーストレインマークの低減に寄与する。冷却速
度が5℃/秒未満であれば、この冷却中に過度な析出が
起こりT4板が成形後の塗装焼き付けの加熱時に析出硬
化を起こす余地がなくなり、この温度範囲でも粒界析出
が起って延性や耐粒界腐食性に悪影響を与える恐れがあ
るため適当でない。また、冷却速度が50℃/秒を超え
ると、焼入れ同時析出が十分に起らず、強度が十分に上
がらないことになる。
【0026】なお、焼入れ後には平坦度の向上及びスト
レッチャーストレインマークの低減のためにスキンパス
あるいはローラーレベリングの加工を施してもかまわな
い。
【0027】
【実施例】以下に実施例にもとづき本発明を更に詳細に
説明する。
【0028】
【表1】
【0029】表1の組成のDC鋳塊(厚さ500mm)
を、500℃で10時間均質化処理し、両面10mmの面削
の後、圧延開始温度475℃で熱間圧延し、厚さ4mm
の熱間圧延板とした。これを1mmまで冷間圧延した。
板作製の過程で、表1の比較例組成L、Mについては、
熱間圧延割れが大きく健全な圧延板が得られなかった。
表2に示す本発明範囲や他の比較例組成については問題
無く圧延板が得られた。なお、これらの材料は、全て平
均結晶粒が40〜60μmの範囲にあった。
【0030】
【表2】
【0031】次に表2のような条件で、ソルトハ゛ス(SB)あ
るいは連続焼鈍ライン(CAL)によって溶体化処理・焼
き入れした。ソルトハ゛ス後の冷却方法としては、強制空冷
(AC)の他、ミスト冷却(MC)を組み合わせた。なお、各
々の材料のC0(焼入れ冷却時に生じる析出物を実質的に
含まない製法を採った場合のT4合金板の導電率)は溶
体化まではその実験番号の材料と同じ工程で処理し、溶
体化後の焼入れ冷却条件だけを比較例13〜20と同じ
水焼入れの条件とした材料の導電率を測定することで得
た。比較例13〜20の溶体化後の焼入れ冷却条件では
析出が生じないのでC1欄はは空白である。
【0032】
【表3】
【0033】焼入れ時のYS(耐力。以下同じ。)上昇
は、焼入れ同時析出によるYS上昇分を算出したもので
あり、該当材料のYSと、それと同一組成で実質的に焼
入れ時の析出硬化の無い材料(実験番号13〜20)のY
Sとの差で求めた。
【0034】なお、曲げは成形後の端部処理加工として
重要なので、成形加工での加工硬化を想定した2%スト
レッチ後の曲げ性で評価した。すなわち、ストレッチし
たのち、180°曲げ(密着曲げおよびR0.5mm
曲げ)を行い、10件中のクラック発生件数で評価し
た。
【0035】そして、深絞り成形に対応する2%ストレ
ッチを施した後に、170℃×20分の塗装焼き付けに
対応する加熱処理を行いベーク後YSを測定し焼付け硬
化後の強度を評価した。
【0036】粒界の金属間化合物の分布線分率は具体的
には、試料断面研磨の後、バーカー法および偏光顕微鏡
観察による粒界位置の確認と0.5〜1%フッ酸によるエッ
チングによる金属間化合物の観察を併用し、500倍以上
にて観察測定した。
【0037】さらに、一部の材料に対し、室温での保管
時の機械的性質の経時変化を評価するために、焼入れ1
日後と3ヶ月経過後のYSを測定しその増分を測定し
た。
【0038】
【表4】
【0039】さらに、これも、一部の材料に対し、JI
S5号引張試験を用い、引張速度5mm/分で引張変形
を与え、 一定歪みで停止し、試料表面の模様ストレッ
チャーストレインマークを確認した。
【0040】
【表5】
【0041】表2、表3のように本発明範囲の合金板
は、焼入れ同時析出硬化により強度向上が得られ、冷却
速度の制御により、粒界析出を抑えることにより曲げ性
が良好に保たれている。また、表4のように、本発明例
では室温保持中のYSの変化が非常に小さく、保管中に
成形性の変化をきたす事がきわめて少ない。さらに、表
5のように、本発明例では、ストレッチャーストレイン
マークの発生が少なくなっている。
【0042】
【発明の効果】以上、詳しく説明したように、本願の焼
入れ同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合金板
は、室温保持中の機械的性質の変化が少なく、またT4
のままあるいは成形・塗装焼付後の強度に優れ、組織制
御により曲げ性を含む成形性にも優れる。また、さら
に、焼入れ同時析出によりCu、Alと結合し析出物を
形成するMgの分だけフリーなMg量が減じている事にな
るため、このフリーのMgを根本原因とするストレッチャーストレインマ
ークも軽微となるという利点も有している。よって、自動
車や電気機器等の外板や各種成形部品などの成形用素板
としての適用範囲を拡大するものである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3.0%(重量で。以下同じ。)を超え
    4.2%未満のMgおよび0.5%を超え1.2%未満
    のCuを含み、残部Alと不可避不純物とから成る組成
    を持ち、溶体化後の焼入れ冷却過程で生じて式1を満た
    すような導電率C1をもたらすAl−Cu−Mg系析出物
    の分布を有することを特徴とする焼入れ同時析出硬化型
    のAl−Mg−Cu系T4合金板。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 但し、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際の
    T4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に生
    じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4
    合金板の導電率(IACS%)。
  2. 【請求項2】 3.0%を超え4.2%未満のMgおよ
    び0.5%を超え1.2%未満のCuを含み、Mn,C
    r,Zr,Vのうち1種または2種以上を各0.05%
    〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、残部Alと不
    可避不純物とから成る組成を持ち、溶体化後の焼入れ冷
    却過程で生じて式1を満たすような導電率C1をもたらす
    Al−Cu−Mg系析出物の分布を有することを特徴と
    する焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−Cu系T4合
    金板。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 但し、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際の
    T4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に生
    じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4
    合金板の導電率(IACS%)。
  3. 【請求項3】 3.0%を超え4.2%未満のMgおよ
    び0.5%を超え1.2%未満のCuを含み、残部Al
    と不可避不純物とから成る組成を持ち、溶体化後の焼入
    れ冷却過程で生じて式1を満たすような導電率C1をもた
    らすAl−Cu−Mg系析出物の分布を有し、かつ結晶
    粒界上に存在し粒界と直角方向の寸法が0.5μm以上
    である金属間化合物粒子の粒界長に対する分布線分率が
    10%以下である事を特徴とする焼入れ同時析出硬化型
    のAl−Mg−Cu系T4合金板。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 但し、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際の
    T4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に生
    じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4
    合金板の導電率(IACS%)。
  4. 【請求項4】 3.0%を超え4.2%未満のMgおよ
    び0.5%を超え1.2%未満のCuを含み、Mn,C
    r,Zr,Vのうち1種または2種以上を各0.05%
    〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、残部Alと不
    可避不純物とから成る組成を持ち、溶体化後の焼入れ冷
    却過程で生じて式1を満たすような導電率C1をもたらす
    Al−Cu−Mg系析出物の分布を有し、かつ結晶粒界
    上に存在し粒界と直角方向の寸法が0.5μm以上であ
    る金属間化合物粒子の粒界長に対する分布線分率が10
    %以下である事を特徴とする焼入れ同時析出硬化型のA
    l−Mg−Cu系T4合金板。 0.97 ≦ C1/C0 ≦ 0.99 ・・・・式1 但し、C1は、焼入れ冷却時に生じる析出物を含む実際の
    T4合金板の導電率(IACS%)、C0は、焼入れ冷却時に生
    じる析出物を実質的に含まない製法を採った場合のT4
    合金板の導電率(IACS%)。
  5. 【請求項5】 3.0%を超え4.2%未満のMgおよ
    び0.5%を超え1.2%未満のCuを含み、必要によ
    りMn,Cr,Zr,Vのうち1種または2種以上を各
    0.05%〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、残
    部Alと不可避不純物とから成る組成を持つ合金の板材
    を、460〜560℃での溶体化処理を行い、この後の
    焼入れ冷却において溶体化処理温度から300℃までの
    冷却速度を10〜1000℃/秒とし、300℃から1
    00℃までの冷却速度を5〜50℃/秒に制御すること
    を特徴とする、焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−C
    u系T4合金板の製造方法。
  6. 【請求項6】 3.0%を超え4.2%未満のMgおよ
    び0.5%を超え1.2%未満のCuを含み、必要によ
    りMn,Cr,Zr,Vのうち1種または2種以上を各
    0.05%〜0.4%、合計で0.6%未満含有し、残
    部Alと不可避不純物とから成る組成を持つ合金の板材
    を、460〜560℃での溶体化処理を行い、この後の
    焼入れ冷却において溶体化処理温度から300℃までの
    冷却速度を40〜1000℃/秒とし、300℃から1
    00℃までの冷却速度を5〜50℃/秒に制御すること
    を特徴とする、焼入れ同時析出硬化型のAl−Mg−C
    u系T4合金板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN117286376A (zh) * 2023-11-27 2023-12-26 中国第一汽车股份有限公司 一种变屈服强度铝合金及其制备方法和用途

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