JPH1014592A - ラットpai−1に対するモノクローナル抗体 - Google Patents

ラットpai−1に対するモノクローナル抗体

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JPH1014592A
JPH1014592A JP8174675A JP17467596A JPH1014592A JP H1014592 A JPH1014592 A JP H1014592A JP 8174675 A JP8174675 A JP 8174675A JP 17467596 A JP17467596 A JP 17467596A JP H1014592 A JPH1014592 A JP H1014592A
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pai
antibody
rat
monoclonal antibody
rat pai
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JP8174675A
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English (en)
Inventor
Susumu Chishima
進 千島
Fumiko Wakimoto
文子 脇本
Tamotsu Takagi
保 高木
Yasushi Omachi
康 大町
Akio Otani
章雄 大谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tanabe Seiyaku Co Ltd
Original Assignee
Tanabe Seiyaku Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラットPAI−1と特異的に結合し、またラ
ットPAI−1/PA複合体と特異的に結合する、およ
び/またはラットPAI−1の活性中和作用を有するモ
ノクローナル抗体、および該抗体を用いたラットPAI
−1の定量、検出方法を提供する。 【解決手段】 活性化した精製ラットPAI−1を抗原
として用い、所望のモノクローナル抗体およびこれを産
生するハイブリドーマ細胞株を得る。この抗体を用いて
ラットPAI−1を定量、検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】ラットPAI−1(タイプ1
プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター)に対す
るモノクローナル抗体およびそれを産生するハイブリド
ーマに関する。さらに、該モノクローナル抗体を用いる
ラットPAI−1の検出または定量方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生体内において線維素溶解(線溶)系
は、血栓の溶解、組織の破壊や修復、細胞の移動などに
重要な役割を果たしており、線溶系は、プラスミノーゲ
ンアクチベーター(PA)によりプラスミンが生じるこ
とにより活性化される。PAI−1は、この線溶系をそ
の開始段階において制御しており、種々の血栓症、糖尿
病、動脈硬化症等の病態の形成、進展に関与していると
考えられている。動物モデルを用いて種々の病態とPA
I−1の関係を明らかにすることは、PAI−1の機能
を調整あるいは阻害する新しい薬物等、血栓症、糖尿
病、動脈硬化症等の治療薬の開発に有用と考えられる。
【0003】このようなPAI−1は、各種動物の細
胞、主に血管内皮細胞で産生され、周辺の組織あるいは
血流中に分泌される一本鎖糖蛋白質である。PAI−1
の反応中心であるアルギニンがPAのセリンと共有結合
することにより、PAを失活させることが知られてい
る。PAI−1は、分子内にシステイン残基を有してい
ないため立体構造が変化しやすく、活性のある構造(活
性型)から活性のない潜在型(不活性型)へと移行しや
すい。また、PAI−1は血漿中のビトロネクチンと結
合して存在し(Declerckら、Journal of Biological Ch
emistry、第269巻、15454頁、1988年)、血漿中のビト
ロネクチンと結合することで潜在型への移行が抑制され
ると考えられている。このようにPAI−1は産生直後
の活性型から潜在型へ、あるいはビトロネクチンとの複
合体形成と、複雑な存在形態をとることが知られてい
る。病態モデルを用いて種々の病態とPAI−1の関係
を明らかにするためには、PAI−1の変化(量的変化
および活性に相関する構造変化)を捉えることが必要で
あるが、上記のようにPAI−1は複雑な構造変化をす
るため、抗体が均一でなく交差反応物と反応する確率の
高いポリクローナル抗体では、PAI−1の変化を正確
に捉えることが困難であった。このような背景から、種
々の病態とPAI−1の関係を明らかにするために、P
AI−1の定量・検出、あるいは活性の中和に用い得る
特異性の高い抗PAI−1モノクローナル抗体が望まれ
ていた。
【0004】PAI−1は、各種動物の血管内皮細胞の
ほか、血小板、肝細胞等でも産生され、また、種々の細
胞株からの産生も知られており、ヒトまたはウシのPA
I−1に関して現在まで細胞培養上清からの単離・精製
について多数報告されている。例えば、ウシ内皮細胞か
らの精製〔Journal of Biological Chemistry、第259
巻、14914〜14921頁、1984年、およびBiochemistry、第
27巻、2911〜2918頁、1988年)、ヒトメラノーマ細胞
(MJZT)からの精製〔Journal of BiologicalChemi
stry、第261巻、14474〜14481頁、1986年)、ヒト線維
肉腫細胞(ファイブロザルコーマ)HT−1080から
の精製(Blood、第70巻、1645〜1653頁、1987年)など
が報告されている。
【0005】ラットPAI−1に関しては、ラットHT
C細胞の培養上清中に、ヒトあるいはウシの細胞培養上
清と同様に、線溶系を抑制するPAI−1様物質が存在
することが報告されている〔Proceedings of National
Academy of Scienses USA、第75巻、6130〜6133頁、197
8年、Journal of Biological Chemistry、第257巻、426
0〜4264頁、1982年、Journal of Biological Chemistr
y、第259巻、6847〜6851頁、1984年、Thrombosis and H
aemostasis、第55巻、8〜11頁、1986年、等〕。また、
ヒトPAI−1遺伝子の配列をもとに、HTC細胞から
ラットPAI−1遺伝子がクローニングされている〔Jo
urnal of Biological Chemistry、第265巻、2078〜2085
頁、1990年〕が、組換えラットPAI−1を活性な形で
発現させた報告は知らない。また、ラット生体試料ある
いはラット細胞からPAI−1を、モノクローナル抗体
を作製するのに充分な純度まで精製した報告はない。
【0006】PAI−1に対するモノクローナル抗体に
関して、ヒトPAI−1に対するモノクローナル抗体あ
るいはそれらを利用した定量法が知られており(特開昭
63−500564、Blood、第71巻、220〜225頁、198
8年、Blood Coagulation andFibrinolysis、第6巻、520
〜526頁、1995年)、定量用キットも市販されている。
しかし、ラットPAI−1については、ウサギのポリク
ローナル抗体が市販されているのみであり、ラットPA
I−1に特異的に結合するモノクローナル抗体は知られ
ていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かかる現状にかんが
み、本発明者らはラットPAI−1と特異的に結合し得
るモノクローナル抗体を得るべく種々研究した結果、ラ
ットPAI−1で免疫感作した哺乳動物の抗体産生細胞
を用い、細胞融合技法により所望のモノクローナル抗体
を産生するハイブリドーマを得ることに成功し、本発明
を完成するに至った。しかして本発明の目的は、ラット
PAI−1を特異的に認識して結合し得るモノクローナ
ル抗体、PAと複合体を形成したラットPAI−1を特
異的に認識して結合し得るモノクローナル抗体、および
/またはラットPAI−1の活性を中和するモノクロー
ナル抗体を提供することにある。本発明の他の目的は、
かかる抗ラットPAI−1モノクローナル抗体を産生す
るハイブリドーマを提供することにある。本発明のさら
に他の目的は、かかる抗ラットPAI−1モノクローナ
ル抗体を用いたラットPAI−1の優れた定量・検出方
法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、活性化
した精製ラットPAI−1を用いて哺乳動物、例えばマ
ウスを免疫感作させ、その動物の抗体産生細胞を常法に
より哺乳動物の骨髄腫細胞と融合させ、得られるハイブ
リドーマの中からラットPAI−1に特異的に結合する
抗体、PA、とくに組織型プラスミノーゲンアクチベー
ター(t−PA)と複合体を形成したラットPAI−1
を特異的に認識して結合し得る抗体、および/またはラ
ットPAI−1の活性を中和する抗体を産生しているも
のを選択し、該選択されたハイブリドーマを常法にした
がってモノクローン化することにより、所望のモノクロ
ーナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができ
る。このようにして得られるハイブリドーマ細胞株を常
法により、例えば免疫に使用した動物の腹腔内に移植し
て抗体濃度の高い腹水を得、それから目的のモノクロー
ナル抗体を得ることができ、また該ハイブリドーマ細胞
株を培地で培養し、その培養液から目的のモノクローナ
ル抗体を得ることができる。
【0009】本発明のモノクローナル抗体は、ラットP
AI−1と特異的に結合し、またラットPAI−1とt
−PAとの複合体も認識し、および/またはラットPA
I−1に対して活性中和作用を有するなどの優れた性質
を有する。したがって、本発明のモノクローナル抗体
は、検体中あるいは組織中のラットPAI−1の免疫化
学的検出および定量に用いることができ、また複雑な構
造変化を生じたりt−PAと複合体を形成するPAI−
1の病態モデルにおける動態解析等に用いられる。さら
に、本発明のモノクローナル抗体は、そのPAI−1の
活性中和作用により、生体内におけるPAI−1の機能
解明等にも有用である。本発明のモノクローナル抗体に
は、抗原認識部位の異なる複数の抗体が含まれるので、
上記ラットPAI−1の検出、定量に際して、適当な2
種類のモノクローナル抗体を組み合わせて、感度のよ
い、サンドイッチEIAが実施できる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のモノクローナル抗体は、
例えば、精製したラットPAI−1を抗原として用い、
これで免疫した哺乳動物の抗体産生細胞と、哺乳動物の
不死化細胞とを融合して得られるハイブリドーマにより
産生される。ハイブリドーマの製造に際して哺乳動物の
免疫感作に用いられるラットPAI−1としては、ラッ
ト血小板、ラット肝細胞、ラット肝癌細胞、ラット内皮
細胞などから精製したPAI−1もしくはそのペプチド
等が挙げられる。またすでに報告されているラットPA
I−1遺伝子に基づいて、遺伝子組換え技術により発現
させたラットPAI−1もしくはそのペプチドも使用で
きる。ただし、そのような遺伝子組換え技術による生成
物では、糖鎖の付加、などの問題があり、またPAI−
1は生体内で複雑な構造変化をする蛋白質であることか
ら、できるだけ生体由来のものに近いものを使用するこ
とが好ましく、このような観点から、ラット細胞(ラッ
トヘパトーマHTC細胞など)から精製したものが好ま
しい。好適な例として、例えばデキサメタゾン処理した
ラット肝癌細胞HTC細胞の培養液から精製したPAI
−1を用い得る。精製方法としては、ファストプロテイ
ン液体クロマトグラフィ(FPLC;Fast protein li
quid chromatography)や高速液体クロマトグラフィ
(HPLC)により精製する方法が挙げられる。例えば
コンカナバリンA−セファロース(ConA-Sepharos
e)、DEAE−セファセル(DEAE−Sephacel)、
ブルー−セファロース(Blue−Sepharose)およびス
ーパーデックス(Superdex)PG200等のカラムにより
精製できる。精製過程においてはPAI活性を指標とし
て活性画分の選択を実施すればよく、PAI活性の測定
は、例えば、リバースフィブリンオートグラフィーや合
成基質を用いて実施できる。このようにして得られる精
製ラットPAI−1は、通常不活性な潜在型として存在
するため、これを活性型に変換し、活性化した精製ラッ
トPAI−1として哺乳動物の免疫感作に用いるのが好
ましい。活性化手段としては、例えばグアニジン塩酸や
SDSで処理する方法が挙げられる。
【0011】モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの
作製はケーラーおよびミルシュタインの方法(G. Kohle
r & C. Milstein; Nature; 第256巻、495〜897頁、1975
年)に準じて下記の手順で行う。
【0012】(i)活性化した精製ラットPAI−1に
よる哺乳動物の免疫感作 免疫する哺乳動物としてはとくに制限されず、マウス、
ウサギ、モルモット、ヒツジなどが挙げられるが、とく
にマウス(BALB/c マウスなど)が好適に用いら
れる。免疫方法は常法により行い、例えば生理食塩水に
溶かしたラットPAI−1をフロイントの完全アジュバ
ントと混合し、乳懸濁液として投与する。ラットPAI
−1の濃度は適当な量の抗原刺激されたリンパ球が生成
するように選択する。 (ii)抗体産生細胞の採取 免疫感作された哺乳動物の抗体産生細胞、例えば脾細胞
またはリンパ節細胞などを採取し、適当な媒体に懸濁し
て、細胞懸濁液を調製する。
【0013】(iii)細胞融合 適当な融合促進剤(例えばポリエチレングリコール)を
使用して、上記懸濁された抗体産生細胞を適当な不死化
細胞、例えば骨髄腫細胞のセルライン(例えばNSI−
Ag 4/1、Sp2/O−Ag14など)と細胞融合させ
る。この際、骨髄腫細胞当たり約10の脾細胞またはリ
ンパ節細胞の比率が好ましい。106個の脾細胞または
リンパ節細胞のために全容量約1mlの融合媒体が適当
である。使用される骨髄腫セルラインは好ましくはいわ
ゆる“薬剤耐性”型であり、これによって選択培地中で
未融合骨髄腫細胞は死滅し、他方ハイブリドは生存す
る。酵素ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルト
ランスフェラーゼを欠き、そのためHAT培地(ヒポキ
サンチン、アミノプテリン、チミジン)中で増殖するこ
とができない8−アザグアニン耐性セルラインが最も頻
繁に使用される。使用される骨髄腫セルラインはまた、
それ自身が抗体または免疫グロブリンのH鎖もしくはL
鎖を産生しないように“非分泌”型であるのが好まし
い。
【0014】(iv)融合細胞の単離 融合処理された細胞を、適当に希釈したのち、例えばH
AT培地中で1〜2週間培養することにより、例えば8
−アザグアニンに対する耐性を有する未融合骨髄腫セル
ラインは増殖せず死滅し、また未融合の脾細胞またはリ
ンパ節細胞も限られた数の***サイクルのみを有するた
め、約1〜2週間後に死滅する。一方、融合した細胞は
親骨髄腫細胞からの遺伝的な永久増殖性と親脾細胞また
はリンパ節細胞からの酵素ヒポキサンチン−グアニン・
ホスホリポシルトランスフェラーゼ合成能とを有するた
め、***を続け、選択培地中で生存することができる。 (v)所望の抗体を産生するハイブリドーマの選別およ
びクローニング 上記培養後、その上清について、例えばエンザイムイム
ノアッセイにより抗ラットPAI−1抗体(IgG)の
有無を検出して、所望のモノクローナル抗体を産生する
ハイブリドーマを選択する。このように選別されたハイ
ブリドーマを、例えば限界希釈法によってクローニング
することにより、ラットPAI−1と特異的に結合する
および/またはラットPAI−1の活性中和作用を有す
るモノクローナル抗体を産生する能力を有する増殖可能
なハイブリドーマ細胞株が得られる。本発明によって得
られるハイブリドーマ細胞株のうち、ラットPAI−1
およびPAI−1/t−PA複合体との高い反応性を示
し、ラットPAI−1に対する強い活性中和作用を有す
るハイブリドーマD1.B12−3について工業技術
院、生命工学工業技術研究所に寄託している(受託番号
FERM P−15658号)。
【0015】上記のようにして得られる所望のモノクロ
ーナル抗体を産生し得るハイブリドーマ細胞株を、常法
により例えば免疫に使用した動物(例えばBALB/c
マウス)の腹腔内に移植し、一定期間後、所望の抗体
濃度が高くなった腹水を取り出し、それから目的のモノ
クローナル抗体を採取することができる。また、該ハイ
ブリドーマ細胞株を適当な培地、例えば牛胎児血清を添
加したRPMI−1640培地などの動物細胞用培地中
で培養し、その培養液から目的のモノクローナル抗体を
採取することもできる。また、いったん所望のモノクロ
ーナル抗体を産生するハイブリドーマを得たら、このハ
イブリドーマからこのモノクローナル抗体をコードする
遺伝子源(cDNA、ゲノムDNAなど)を得て、これ
を用いて通常の遺伝子組換え技術により、適当な宿主細
胞で目的のモノクローナル抗体あるいはその断片を発
現、産生させることもできる。得られたモノクローナル
抗体の分離、精製は通常の抗体類の精製法にしたがって
行うことができる。例えば腹水を飽和硫酸アンモニムと
混合し遠心分離して得られるペレットをリン酸緩衝生理
食塩水で透析後、アフィニティクロマトグラフィ等に付
す。また培養液の場合は、それを遠心分離して得られる
上清液を限外濾過、ゲルクロマトグラフィ、アフィニテ
ィクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ等に
付す。
【0016】本発明のモノクローナル抗体は、イムノグ
ロブリン(IgG)クラスで、サブクラスはIgG2a、I
gG1で、L鎖はいずれもカッパ鎖である。これらのモノ
クローナル抗体は、エンザイムイムノアッセイ(ELI
SA)によるテストの結果、いずれもラットPAI−1
と反応し、これと特異的に結合する性質を有し、またP
AI−1/t−PA複合体に対しても特異的に結合する
性質を有する。本発明のモノクローナル抗体は、さら
に、ラットPAI−1のt−PA阻害活性に対する中和
作用について調べた結果、強い中和作用を有するものが
含まれている。
【0017】本発明のモノクローナル抗体を用いれば、
血清等の被験試料中のラットPAI−1を定量または検
出することができる。本発明によるラットPAI−1の
定量、検出には、公知のラジオイムノアッセイ、エンザ
イムイムノアッセイ、ケミルミネッセントイムノアッセ
イ、バイオルミネッセントイムノアッセイ、フルオロイ
ムノアッセイ等のいずれの方法も採用され得る。例えば
本発明のモノクローナル抗体と、125I等の放射性同位
元素やペルオキシダーゼ等の酵素で標識したラットPA
I−1を用いる競合法、ラットPAI−1に対する抗原
認識部位が異なる2種類のモノクローナル抗体を用いる
非競合法によるイムノアッセイが挙げられる。標識を、
アクリジニウムエステルやイソルミノール等の化学発光
物質、ルシフェリン等の生物発光物質、フルオレッセイ
ンイソチオシアネート等の蛍光物質を用いて行うことも
できる。また、例えば本発明のモノクローナル抗体をポ
リスチレンビーズ等の固相に吸着あるいは化学結合させ
て用いる固相法も採用され得る。
【0018】本発明によるラットPAI−1の定量、検
出方法を、さらに、具体的な工程で示せば、下記のよう
な方法が例示できる。 (A)固相化した本発明のモノクローナル抗体を用いる
方法: (1)ラットPAI−1と特異的に結合する本発明のモ
ノクローナル抗体(第1抗体)を固相化し、この固相化
したモノクローナル抗体に、被験試料を接触せしめて、
該モノクローナル抗体と被験試料中のラットPAI−1
を結合させる工程、(2)ラットPAI−1と特異的に
結合し、第1抗体とは抗原認識部位が異なる本発明のモ
ノクローナル抗体(第2抗体)もしくはラットPAI−
1に対するポリクローナル抗体(第2'抗体)であっ
て、必要に応じて標識物で標識された第2もしくは第
2'抗体を、(1)で得られた結合物に結合させる工
程、(3)工程(2)で用いる抗体が、標識物で標識さ
れていない場合は、(2)で得られた結合物にさらに、
第2抗体もしくは第2'抗体を認識しかつ標識物で標識
された抗体(第3抗体)(例えばビオチン化抗体)を結
合させる工程、および(4)化学発光基質等を用いて標
識物の活性を測定する工程からなることを特徴とするラ
ットPAI−1の定量、検出方法。
【0019】(B)PAI−1/t−PA複合体を形成
させる方法: (1)ラットPAI−1と複合体を形成し得るt−PA
を固相化し、この固相化したt−PAに、被験試料を接
触せしめて、該t−PAと被験試料中のラットPAI−
1を結合させる工程、(2)ラットPAI−1と特異的
に結合し、かつ必要に応じて標識物で標識されたモノク
ローナル抗体を、(1)で得られた結合物に結合させる
工程、(3)工程(2)で用いる抗体が標識物で標識さ
れていない場合は、(2)で得られた結合物にさらに、
(2)で用いる抗体を認識しかつ標識物で標識された抗
体(第2抗体)を結合させる工程、および(4)化学発
光基質等を用いて標識物の活性を測定する工程からなる
ことを特徴とするラットPAI−1の定量、検出方法。
【0020】
【発明の効果】本発明のモノクローナル抗体は、ラット
PAI−1を特異的に認識しこれと結合し得るので、こ
のモノクローナル抗体を用いることにより、交差反応物
の影響を受けず、検体中あるいは組織中のラットPAI
−1を免疫化学的定量法、免疫組織化学的検出法により
精度良く定量・検出することができる。また、本発明の
モノクローナル抗体は、PA、ことにt−PAと複合体
を形成したPAI−1を認識しこれと結合し得るもので
ある。従って、複雑な構造変化と複合体形成をするPA
I−1の病態モデルにおける動態解析等に有用である。
また、本発明のモノクローナル抗体は、PAI−1の活
性中和作用を有するので、生体内におけるPAI−1の
機能解明等に有用である。
【0021】
【実施例】
実施例1 抗ラットPAI−1モノクローナル抗体の作
製 (1)ラットヘパトーマHTC細胞培養上清からのラッ
トPAI−1の精製 ラット肝癌細胞株HTCの培養上清中に、ヒトあるいは
ウシの細胞培養上清と同様に、線溶系を抑制する物質が
存在することが報告されているので、ラットHTC細胞
培養上清からラットPAI−1を精製した。精製方法
は、ウシおよびヒトの細胞培養上清からのPAI−1精
製方法〔Journal of Biological Chemistry、第259巻、
14914〜14921頁、1984年、Biochemistry、第27巻、2911
〜2918頁、1988年、Journal of Biological Chemistr
y、第261巻、14474〜14481頁、1986年、Blood、第70
巻、1645〜1653頁、1987年〕に準じて以下のようにして
実施した。
【0022】<HTC細胞株の培養>ラット肝癌細胞株
HTC(Morris Hepatoma 7288C)[Proceedings
of National Academy of Sciences USA、第75巻、6130
〜6133頁、1978年]は大日本製薬より購入したものを用
いた。培養は、10%新生仔牛血清および1%非必須ア
ミノ酸含有MEM増殖用培地を用い、37℃、5%CO
2インキュベータ中にて実施した。HTC細胞株を3×
106cells/フラスコになるように225cm2培養フ
ラスコに接種後、これを培養し、コンフルエントになっ
た培養4日目に培地を除去して、細胞を30mlのPB
Sで洗浄した。この細胞に無血清培地40mlを添加
し、さらにデキサメタゾン10-7M(最終濃度)を加え
た。これをさらに24時間培養して得られた培養液を4
℃、3000rpmで10分間遠心し、培養上清を、使
用時まで−80℃で保存した。同様の培養を適宜行なっ
て、合計2.7Lの培養上清を得た。
【0023】<PAI−1の精製>得られた培養上清
2.7Lを、メンブレンフィルター(フィルター孔径0.
2μm以下)でろ過した後、ペンシル型モジュール(旭
化成社製)を用いて約140mlまで限外濃縮した。得
られた濃縮培養上清を、FPLCにより分画した。FP
LCのカラム操作は4℃で行い、溶出液は280nmで
検出した。カラム操作は、以下のように実施した。ま
ず、0.05M トリス−HCl(pH7.4)で平衡化し
たConA−セファロースカラム(1.6×20cm、容
量40ml)(Pharmacia社製)に、濃縮培養上清を添
加した。続いてカラムを、40mlの0.05M トリ
ス−HCl含有 0.1M NaCl(pH7.4)、次いで
40mlの0.05M トリス−HCl含有1M NaCl
(pH7.4)で洗浄した後、0.05M トリス−HCl
含有0.5M NaCl、0.5M α−メチル−D−マン
ノシッド(pH7.4)を用いて溶出を行ない、溶出液を
5mlずつ分画・採取した。各分画の一部をとり、SD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAG
E)に付した後、このゲルについて、後記参考例記載の
方法によりリバースフィブリンオートグラフィー(RF
A;reverse fibrin autography)を行ない各分画中の
PAI−1活性を検出した。活性が認められた画分を集
め、4Lの水で2回透析後、1/10容の0.1Mトリ
ス−HCl 含有0.1M NaCl(pH8.4)を添加し
た。次いでこれを、0.01M トリス−HCl含有
0.01M NaCl、(pH8.4)で平衡化したDEA
E−セファセルカラム(1.6×1.5cm、容量3m
l)(Pharmacia社製)に、流速9ml/hで添加し
た。同緩衝液30mlで洗浄した後、0.01M トリ
ス−HCl(pH8.4)を用いNaClの濃度段階法で溶
出を行った。NaCl濃度は0.02M、0.04M、0.
08M、0.1M、0.12M、0.2M、0.4M、1M
とし、容量は各30mlで行った。溶出時の流速は60
ml/hとし、溶出液を3mlずつ分画・採取した。各
分画の一部をとり、SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動(以下、SDS−PAGEと略す)に付した後、
このゲルについて、RFAを行ない各分画中のPAI−
1活性を検出した。
【0024】活性が認められた画分を集め、3Lの0.
05M トリス−HCl(pH7.4)で2回透析した後
これを、0.05M トリス−HCl(pH7.4)で平衡
化したブルー−セファロースカラム(1×5cm、容量
3.9ml)(Pharmacia社製)に、流速30ml/h
で添加した。溶出は、0.05M トリス−HCl(pH
7.4)で開始し、0〜10分までは0M NaCl、流
速30ml/hで、10〜50分までは0〜3M Na
Cl、流速60ml/hの濃度勾配で行った。各分画の
PAI−1活性をRFAにより検出し、活性の認められ
た画分をセントリコン(Centricon)−30(AMIC
ON社製)で1mlに濃縮した。得られた濃縮液につい
て、0.05M トリス−HCl含有0.1M NaCl(p
H7.4)で平衡化したスーパーデックス(Superdex)
16/60(1.6×60cm、容量120ml)(Ph
armacia社製)を用い、ゲルろ過した。各分画のPAI
−1活性をRFAにより検出し、PAI−1活性を含む
分画をセントリコン−30で濃縮し、精製ラットPAI
−1を含む溶液を得た。精製PAI−1について、SD
S−PAGEを行ない、コマシー・ブリリアント・ブル
ー(Comassie Brilliant Blue;CBB)染色した結
果、分子量約52Kdの位置にメインのバンドが、ま
た、分子量約49Kdに薄いバンドが認められた(グリ
コシレーションの異なる複数の型で存在している可能性
が考えられる)。さらに、同電気泳動ゲルを用いて、R
FAにより生物活性を調べたところ、前記の2つのバン
ドと対応する位置に、組織型プラスミノーゲンアクチベ
ータ(t−PA)活性に対する阻害活性が認められた。
SDS−PAGEによる推定分子量(52Kd)および
t−PA対する阻害活性により、精製物がラットPAI
−1であることを確認した。
【0025】得られた精製ラットPAI−1(非活性化
PAI−1)は、不活性な潜在型として存在するため、
最終濃度4Mグアニジン塩酸を添加し、室温にて10分
間放置することにより活性型に変換した。得られた活性
化PAI−1を、2Lの0.01%ツイーン80含有0.
1M酢酸緩衝液(pH5.5)に対して透析した後、−8
0℃にて保存した。バイオプール(Biopool)社製測定
キット(商品名:Spectrolyse/fibrin)を用いる酵素
阻害活性測定法[Chmielewskaら、Thrombosis Researc
h、第31巻、427〜436頁、1983年]により、活性化PA
I−1のPAI活性を測定した結果、比活性は2200
0u/mgであった。また、活性化精製ラットPAI−
1について、市販ヒトPAI−1測定キット(Biopool
社製 Imlyse PAI−1)を用いて、抗ヒトPAI−
1マウスモノクローナル抗体との交差反応性を調べたと
ころ、精製ラットPAI−1は抗ヒトPAI−1モノク
ローナル抗体とは反応がみられなかった。以下の実施例
中「非活性化PAI−1」と特記する場合を除き、「精
製ラットPAI−1」は、活性化した精製ラットPAI
−1を意味する。
【0026】(2)抗ラットPAI−1モノクローナル
抗体産生マウスハイブリドーマの作製 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製は、ケー
ラーとミルシュタインの方法〔G.Kohler & C.Mi
lstein;Nature、第256巻、495〜497頁、1975年〕に準
じて以下のように実施した。 <マウスの免疫>前記(1)で得られた精製ラットPA
I−1 10μgを、完全フロイントアジュバントと共
に、5週令BALB/c雌マウスの鼠径部皮下に投与し
て免疫し、この初回免疫後、2回の追加免疫を3週間間
隔で行った。免疫の初回は完全フロイントアジュバント
を、2回目および3回目は不完全フロイントアジュバン
トを用いて同量の抗原を投与した。免疫時には尾採血に
より血液を採取し、血漿中の抗体価の高かった個体につ
いて、追加免疫の3週間後、さらに同量の抗原を腹腔内
投与し、3日後に脾臓を摘出し、常法により脾細胞懸濁
液を(4.25×106cells/ml)調製した。
【0027】<細胞融合とクローニング>ミエローマ親
株としてマウス骨髄腫細胞Sp2/O−Ag14(ATC
C CRL 1580)を用いた。Sp2/O−Ag14細
胞は、RPMI1640培地(10%FCS、ピルビン
酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、グルタミン
およびアザグアニン含有)で培養した。前記免疫マウス
の脾細胞とミエローマ細胞を、5:1の比率で混ぜ
(8.6×107cells:1.7×107cells)、PEG1
500を用いて細胞融合を行なった。融合を終了した細
胞は遠心し、上清を除去した後、エス・クロンクローニ
ングメデュームCM−B(三光純薬製)にHAT(ヒポ
キサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)を添加し
たHATセレクション用培地(HAT含有CM−B培
地)50mlに浮遊させた。得られた細胞浮遊液を、9
6穴プレートに、各ウェル5×105cells/100μl
ずつ添加し培養した。4日間培養した後、アミノプテリ
ンを含まずヒポキサンチンおよびチミジンを添加したH
T含有CM−B培地に培地を交換し、以後必要に応じて
同培地の追加または交換を行った。2週間目に培養上清
を採取し、培養上清中の抗ラットPAI−1抗体(Ig
G)の有無をELISA法で検出することにより、抗体
スクリーニングを行った。ELISAは、精製ラットP
AI−1を物理的吸着により固相化した96穴プレート
を用い、該培養上清を添加してインキュベートした後、
二次抗体としてペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウス
IgG(Cappel社製)を添加して反応させ、発色基質を
用いて抗原に結合した抗体を検出することにより行なっ
た。抗体陽性ウェルについては、10%FCS含有CM
−B培地を用い、96穴プレートにて1cell/ウェルと
なるように限界希釈を行なって単クローン化した。単ク
ローン化後、約2週間培養しコロニーが増殖した段階
で、再度抗体スクリーニングを行い、同様にして2次お
よび3次クローニングを行った。得られたハイブリドー
マは、前記と同様の10%FCS含有RPMI1640
培地にて培養した。このようにして、ラットPAI−1
に対して強い結合能を有するモノクローナル抗体(Ig
G)を産生するマウスハイブリドーマ10クローンが得
られた。これらハイブリドーマ10種を、それぞれB
2.H12.2、D1.H1.1、D1.B12、A
5.H11.1、B2.B10.1、C2.F5.1、
C2.F5.2、C2.H10.2、A5.F11.2
およびD1.C2.1と命名し(それらが産生するモノ
クローナル抗体も同一名称を付した)、そのうち1株D
1.B12(寄託時の細胞株名:D1.B12−3)に
ついて、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した
(受託番号:FERM P−15658)。
【0028】また、各モノクローナル抗体のサブクラス
は、マウス−ハイブリドーマ・サブタイピング・キット
(Boehringer Mannheim社製)を用いて決定し、下記
表1に示した。
【表1】
【0029】(3)モノクローナル抗体の大量調製と精
製 前記(2)の方法によって得られた抗ラットPAI−1
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、以下のよう
にしてマウス腹腔内で培養した。5週令BALB/c
雌マウスの腹腔内にプリスタン(2,6,10,14−テ
トラメチルペンタデカン)0.5mlを投与し、2週間
後にハイブリドーマ細胞(2×106cells/0.5m
l)を腹腔内投与した。細胞投与の10日後に、腹水を
採取した。得られた腹水から、モノクローナル抗体を以
下のようにして精製した。腹水と飽和硫酸アンモニウム
を等量混合、撹拌した後、4℃で1時間放置し、これを
遠心した。ペレットを50%飽和硫酸アンモニウムに懸
濁し、4℃、30分間放置後、遠心分離し、同様の操作
を2回繰り返した。ペレットをリン酸緩衝生理食塩水
(PBS;pH7.4)に溶解し、PBSで透析した。透
析液を、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化し
たアフィニティカラム(HiTrap ProteinG、カラム
容積;5ml;Pharmacia社製)に添加して吸着させ
た。平衡化に使用した緩衝液(ベッド体積の10倍容)
でこれを洗浄した後、15mlの0.1M グリシン−
HCl(pH2.7)で結合した抗体を溶出し、1M ト
リス−HCl(pH9)が分注された受器に分画を採取し
た。抗体を含む画分を集め、これをPBSで透析し、精
製抗体溶液を得た。精製抗体溶液は−80℃にて保存し
た。
【0030】実施例2 抗ラットPAI−1モノクロー
ナル抗体の反応特異性 実施例1で得られた10種類の抗ラットPAI−1モノ
クローナル抗体について、PAI−1およびPAI−1
/t−PA複合体に対する反応性を、ウェスタンブロッ
ティングおよびELISAにより、以下のようにして調
べた。(1)ウェスタンブロッティングPAI−1に対
するモノクローナル抗体の反応性を以下のようにして確
認した。精製ラットPAI−1を、SDS−PAGEで
分離した後、これをPVDF(Polyvinylidene difluo
ride)膜(ミリポア社製)に転写した。これをブロッキ
ングした後、一次抗体として抗ラットPAI−1マウス
モノクローナル抗体、二次抗体としてワサビペルオキシ
ダーゼ(HRP;Horse Raddish peroxidase)標識し
たヤギ抗マウスIgG(カッペル社製)、発色基質とし
てDAB(3,3'−diaminobenzidine terahydrochlori
de)/H22を用いて、PAI−1に結合したモノクロ
ーナル抗体を検出した。10種類の抗ラットPAI−1
モノクローナル抗体について、上記のようにウェスタン
ブロッティングを行った結果、いずれのモノクローナル
抗体も50Kd付近のPAI−1を認識した。すなわ
ち、CBB染色で52および49KDの2バンドが認め
られたのに対して、ウェスタンブロッティングでもほぼ
同位置に2バンドが認められた。この結果から、これら
10種類の抗ラットPAI−1モノクローナル抗体は、
PAI−1対して特異的に結合することが確認できた。
【0031】さらに、PAI−1/t−PA複合体に対
する抗ラットPAI−1モノクローナル抗体の反応性を
以下のように調べた。PAI−1とt−PAとの複合体
ラットは、PAI−1とヒトt−PA(ヒトメラノーマ
細胞由来一本鎖t−PA、Biopool社製)を、0.3M
NaClおよび0.01M CaCl2含有0.1M トリ
ス−HCl(pH7.5)緩衝液中で25℃、30分イン
キュベーションして形成させた。この反応液についてS
DS−PAGEで分離し、PVDF膜に転写した後、上
記と同様にしてPAI−1/t−PA複合体に結合した
モノクローナル抗体を検出した。10種類の抗ラットP
AI−1モノクローナル抗体について、上記のようにウ
ェスタンブロッティングを行った結果、いずれのモノク
ローナル抗体も117Kd付近のPAI−1/t−PA
複合体を認識した。
【0032】(2)ELISA PAI−1に対するモノクローナル抗体の反応性を、固
相化したPAI−1を用いて以下のようにして確認し
た。すなわち、0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)
で溶解した精製ラットPAI−1を96穴マイクロタイ
タープレートに添加(45ng/ウェル)して物理的吸
着により固相化した。プレートをBSA含有PBSでブ
ロッキングし、洗浄した後、抗ラットPAI−1マウス
モノクローナル抗体を添加して反応させ、さらに洗浄
後、HRP標識抗マウスIgGヤギIgG(カッペル社
製)と反応させた。発色基質としてTMBlue(TM10
2、ビーエム機器社製)を用いてPAI−1に結合した
モノクローナル抗体を検出した。10種類の抗ラットP
AI−1モノクローナル抗体について、上記のようにE
LISAを行った結果、いずれのモノクローナル抗体も
固相化ラットPAI−1と用量依存的に反応した。ただ
し、抗体により反応性の強弱があり、特にA5.F1
1.2(抗体No.9)は非常に弱い反応性を示した。
【0033】さらに、PAI−1/t−PA複合体に対
する抗ラットPAI−1モノクローナル抗体反応性を、
レイモンドらの方法〔Raymond et al., J. Lab. Clin.
Med.、第106巻、408−415頁、1985年〕に準じて、固相
上に形成させた複合体を用いて以下のように調べた。す
なわち、0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)で溶解
したヒトt−PAを96穴マイクロタイタープレートに
添加(45ng/ウェル)して物理的吸着により固相化
した。プレートをBSA含有PBSでブロッキングし洗
浄した後、精製ラットPAI−1を0.3μg/ウェル
添加し、25℃、30分間反応させて複合体を形成させ
た。プレートを洗浄後、この複合体に抗ラットPAI−
1マウスモノクローナル抗体を添加して反応させ、以下
前記と同様にしてPAI−1/t−PAに結合したモノ
クローナル抗体を検出した。10種類の抗ラットPAI
−1モノクローナル抗体について、上記のようにELI
SAを行った結果、いずれのモノクローナル抗体もPA
I−1/t−PA複合体と用量依存的に反応した。ただ
し、抗体により反応性の強弱があり、特にD1.C2.
1(抗体No.10)は非常に弱い反応性を示した。
【0034】上記ウェスタンブロッティングおよびEL
ISAの結果を表2にまとめて示した。なお、mAb10
の複合体との反応性は、実験系により異なっていたが、
ウェスタンブロッティング(イムノブロッティング)で
はSDS−PAGEにより複合体のコンフォメーション
が変化するため、ELISAによる実験系の結果の方
が、生体中の複合体に対する抗体の反応性を正しく表し
ているものと考えられる。
【表2】
【0035】実施例3 抗ラットPAI−1モノクロー
ナル抗体のPAI−1活性中和作用 合成基質を用いてPAI−1のt−PA阻害活性を測定
する方法〔Keijerら、Blood、第78巻、401〜409頁、199
1年〕に準じて、PAI−1のt−PA阻害活性に対す
る抗ラットPAI−1モノクローナル抗体の中和作用を
以下のように調べた。ラットPAI−1はt−PA活性
を20%前後阻害させる量を添加した。精製ラットPA
I−1溶液(110U/ml、220ng/ml)15
0μlに、1、3または6.25mg/mlの抗体溶液
5μlを混合し、4℃で一晩放置して反応させた。反応
液25μlを氷冷下で96穴プレートに添加し、これに
二本鎖(two-chain)ヒトt−PA(Biopool社製)を
0.1%(v/v)ツイーン20含有150mM NaC
l−20mM トリス−HCl(pH7.8)で希釈した溶
液(100U/ml)25μlを加え、37℃で15分
間反応させた。これに0.1%(v/v)ツイーン80
含有100mM トリス−HCl(pH8.4)150μ
lを添加して反応を停止させた後、5mM S2288
(合成基質、CHROMOGENIX社製)を50μl加えた。S
2288は10mM水溶液とし、等量の100mM ト
リス−HCl(pH8.4)で希釈して用いた。残余のt
−PA活性は、合成基質の発色を経時的にプレートリー
ダーで測定(測定波長:405nm)してOD/minを
算出することにより測定した。
【0036】実施例1で得られた10種類の抗ラットP
AI−1モノクローナル抗体について、上記のようにP
AI−1のt−PA阻害活性に対する中和作用を調べた
結果を下記表3および図1に示した。モノクローナル抗
体D1.H1.1(表中、抗体No.2)、D1.B1
2(同No.2)およびD1.C2.1(同No.1
0)はPAI−1活性を45%以上を阻害し、強い中和
作用を示した。これら強い中和を示す抗体は、PAI−
1とt−PAとの結合部位、つまり活性中心との反応部
位および二次的結合部位を認識している可能性が考えら
れる。
【表3】
【0037】実施例4 モノクローナル抗体の競合性
(交差反応性) 実施例1で得たモノクローナル抗体、およびこれらをビ
オチン標識したモノクローナル抗体を用いて、競合性を
ELISAにより調べた。ビオチン標識モノクローナル
抗体の調製は以下のように行った。すなわち、2mgの
精製モノクローナル抗体(1gG)を含む溶液を、セン
トリコン−30(アミコン社製、限外濃縮器)を用いて
0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.6)に溶
媒交換し、0.6mlに濃縮した後、2.6μMになるよ
うNHS−LC−ビオチン(sulfosuccinimidyl−6−(b
iotinamide)hexanoate)(ピアス社製)のDMSO溶液
を添加した。これを室温で30分間反応させて抗体をビ
オチン化した後、反応液をPBSで透析した。
【0038】抗体の競合(交差反応性)の試験は、以下
のように実施した。96穴マイクロタイタープレート
に、精製ラットPAI−1を物理的吸着により固相化
し、これに一定量のビオチン標識モノクローナル抗体
と、非標識モノクローナル抗体(0.01〜100μg
/mlもしくは0μg/ml)を添加して競合反応させ
た。ウェルを洗浄した後、ABCキット(アビジン溶液
およびビオチン化ペルオキシダーゼ溶液を用いるビオチ
ン化抗体検出用キット、ベクスタイン社製)および発色
基質TMBlueを用いて、固相化PAI−1に結合した
ビオチン標識モノクローナル抗体量を吸光度により測定
し、競合(交差反応)の有無を判定した。それらの結果
を図2および図3に示した。ビオチン標識したモノクロ
ーナル抗体 B2.H12.2(抗体No.1)、D
1.B12(同No.3)、C2.F5.1(同No.
6)およびA5.F11.2(同No.9)は、いずれ
も単独では用量依存的に固相化ラットPAI−1と反応
することが確認された。これらビオチン標識したモノク
ローナル抗体の各々に対して、実施例1で得られた10
種類のモノクローナル抗体(非標識)各々を組み合わせ
て競合反応させた。その結果、抗体No.3に対して
は、図2および図3に示したとおり、抗体No.2およ
び抗体No.10が競合し、固相化PAI−1との結合
を阻害した。このことから抗体No.2、抗体No.
3、抗体No.10は認識するエピトープが同じかある
いは近傍であると考えられた。また、この結果と他のビ
オチン標識モノクローナル抗体に対して同様に行った競
合反応の結果から、実施例1で得られた10種類のモノ
クローナル抗体は、認識部位の差異により4つのグルー
プ、すなわち、B2.H12.2(抗体No.1)、B
2.B10.1(同No.5)、C2.F5.1(同N
o.6)、C2.F5.2(同No.7)、C2.H1
0.2(同No.8)およびA5.F11.2(同N
o.9)からなるグループ、D1.H1.1(同No.
2)とD1.B12(同No.3)からなるグループ、
A5.H11.1(同No.4)のグループ、およびD
1.C2.1(同No.10)のグループに分類される
と考えられる。
【0039】実施例5 抗ラットPAIモノクローナル
抗体のヒトPAI−1との交差反応性 ヒトPAI−1を含むことが知られているヒト血小板お
よびヒト線維肉腫細胞株HT1080の培養上清を用い
て、抗ラットPAIモノクローナル抗体の交差反応性を
以下のように試験した。ヒト血小板は、3.8%クエン
酸ナトリウムを1/10容添加して採取した血液より遠
心により調製し、得られた血小板を10mMHEPES
(pH7.4)により洗浄した。これに2%SDS/10
mMHEPESを0.5ml加えて超音波処理すること
により可溶化し、可溶化液をサンプルとした。ヒト線維
肉腫細胞株HT1080(ATCC CCL 121)お
よびラットヘパトーマHTC細胞株は、10%新生仔牛
血清および1%非必須アミノ酸含有MEM増殖用培地を
用い、37℃、5%CO2インキュベータ中にて3〜4
日間培養し、コンフルエントになった後培地を除去して
細胞をPBSで洗浄した。この細胞に無血清培地40m
lを添加し、さらに最終濃度10-7Mとなるようデキサ
メタゾンを加えた。これを24時間培養して、培養上清
を採取し、サンプルとした。これらサンプルをSDS−
PAGEに供し、以下、実施例2に記載した方法に準じ
て、ウェスタンブロッティングを行なった。抗体として
は、実施例5に準じて調製した酵素標識抗ラットPAI
−1モノクローナル抗体D1.B12を用い、発色基質
はDAB(DAB/H22)を用いた。その結果を図4
に示した。ラットHTC細胞培養上清については、52
kd付近にバンドが認められたが、ヒト血小板、および
ヒト細胞株HT1080の培養上清については、バンド
を検出できなかった。この結果から、ハイブリドーマD
1−B12は、ラットPAI−1に対して高い選択性を
有し、ヒトPAI−1とは結合しないと考えられる。
【0040】実施例6 モノクローナル抗体を用いたラ
ットPAI−1の免疫化学的定量法 (1)サンドウィッチエンザイムイムノアッセイによる
定量 抗原認識部位の異なる二つのモノクローナル抗体を用い
て、サンドウィッチ型の酵素免疫測定法(以下EIAと
略)によりPAI−1の定量を実施した。実施例1で得
られた10種のモノクローナル抗体のうち、異なるエピ
トープを認識する2種類の抗体を組み合わせることと
し、また、生体内のPAI−1を測定することを考慮し
てフリー型PAI−1だけでなくt−PA/PAI−1
複合体とも高い反応性を示す抗体を選出した。このよう
な抗体組合せの例として、D1.B12とB2H12.
2を組合せ、D1.B12を固相化し、B2H12.2
をペルオキシダーゼ標識Fab’として用いたサンドウ
ィッチEIAを実施した。ペルオキシダーゼ標識Fa
b’は、イシカワらの方法〔Journal of Immunoassay、
第4巻、209−227頁、1983年〕に準じ、以下のようにモ
ノクローナル抗体をペプシンで消化、還元後Fab’フ
ラグメントとHRPを結合することにより調製した。
【0041】<F(ab')2の調製>抗ラットPAI−
1モノクローナル抗体B2.H12.2(IgG2a)1
0mgについて、セントリコン−30を用いて0.1M
クエン酸緩衝液(pH4.1)に溶媒交換し、最終容量を
0.8mlにした後、これにブタ胃ペプシン(Sigma社
製)1.25mgを添加した。37℃で2時間インキュ
ベーションした後、1M トリス−HCl(pH8.5)
0.1mlを添加することにより反応を停止した。これ
を、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したセ
ファクリル200HR(2.5×70cm)(Pharmaci
a社製)でゲルろ過し、F(ab')2を含む画分を得
た。これをセントリコン−30を用いて0.1Mリン酸
緩衝液(pH6.0)に溶媒交換し、濃縮して最終容量を
1.35mlとした。 <Fab'の調製>上記で得たF(ab')2 5.4mg
/1.35mlに、0.1M 2−メルカプトエタノール
アミン・HClおよび10mMEDTA・2Naを含む
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)150μlを添加
し、37℃で110分間反応させた。その後、5mM
EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)で平
衡化したセファクリル200HR(Pharmacia社製)で
ゲルろ過し、Fab'を含む画分を得た。これをセント
リコン−30を用いて濃縮し、得られたFab'溶液を
以下用いた。 <HRP標識Fab'の調製>西洋ワサビペルオキシダ
ーゼ(HRP;Horseradish peroxidase、ベーリンガ
ーマンハイム社製、EIA用)6.7mgとSulfo−S
MCC(Pierce社製)1.2mgとを0.1Mリン酸緩
衝液(pH7.0)中、30℃、60分間インキュベート
して反応させた。反応液をゲルろ過した後、ペルオキシ
ダーゼを含む分画を403nmの吸光度により確認し、
セントリコン−30を用いて濃縮した。得られたマレイ
ミド・ペルオキシダーゼ2.52mgと前記で得たFa
b'2.69mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中
で混合して4℃、16時間反応させた。反応液をゲルろ
過し、HRP標識Fab'化抗ラットPAI−1モノク
ローナル抗体mAb1を得た。
【0042】<精製PAI−1のEIAによる測定>9
6穴マイクロタイタープレート(Nunc社製;Maxi So
rp)に、抗ラットPAI−1モノクローナル抗体D1.
B12を添加(450ng/100μl/穴)し、4℃
下一晩放置することにより抗体を物理的に吸着させて固
相化した。固相化プレートを0.1%ツイーン20含有
PBS(PBS−ツイーン)で5回洗浄後、市販のブロ
ッキング用液(商品名:Block Ace、大日本製薬社
製)でブロッキングした。同様にプレートを洗浄後、
0.1牛血清アルブミン含有PBSツイーンで1.95〜
125ng/mlの濃度に希釈した活性化ラットPAI
−1を添加し、室温で3時間もしくは4℃で16時間反
応させた。プレートを洗浄後、前記で得たHRP標識F
ab'化抗ラットPAI−1モノクローナル抗体B2.
H12.2を添加し、室温で2時間反応させた。洗浄
後、200μlの発色基質TMBlueを添加し25分
間室温で振とうした。50μlの1N硫酸を添加して反
応を停止させた後、マイクロプレートリーダーで、吸光
度を測定した(波長450nm/600nm)。その結
果、図5に示したように、1.95〜125ng/ml
の範囲で精製ラットPAI−1を測定することが可能で
あった。このようなモノクローナル抗体組合せを用いた
サンドイッチEIAにより、フリー型のPAI−1(t
−PAとの複合体を形成していないPAI−1)および
PAI−1/t−PA複合体の定量測定が可能と考えら
れる。
【0043】(2)固相化t−PAを用いた活性型PA
I−1の定量 固相化t−PA利用し、実施例2の(2)記載の方法に
準じて以下のように、活性型PAI−1の定量を行なっ
た。この活性型PAI−1の定量方法は、レイモンドら
の方法〔RAYMOND R. et. al., J. Lab. Clin. Med. 106
(4) 408−415(1985)〕を参考に実施した。96ウェ
ルマイクロタイタープレートにt−PAを物理的に吸着
させ、得られたt−PA固相化プレートに、1.95〜
125ng/mlの活性化ラットPAI−1溶液の10
0μlを添加し、一定時間反応させた。プレートを洗浄
した後、HRP標識Fab'抗ラットPAI−1マウス
モノクローナル抗体B2.H12.2(抗体No.1)
を添加し、固相化t−PAと複合体形成したPAI−1
を定量する。この方法により定量されるPAI−1は、
t−PAと複合体を形成した後に測定しているため活性
型PAI−1である。その測定結果を図6に示した。こ
の結果から、3.95〜125ng/mlの範囲で活性
型ラットPAI−1を測定することが可能であった
【0044】実施例7 抗ラットPAI−1モノクロー
ナル抗体を用いた組織中PAI−1の検出 (1)ラット組織中PAI−1のウェスタンブロティン
グによる検出 エーテル麻酔下リポポリサッカライド(LPS、Sigma
社製)を50μg/kg静脈内投与し、投与後3、6、
24時間にペントバルビタール麻酔下、腹部大動脈より
採血後、右心室より生理食塩水を点滴(110cmH2
O)し、3分間かん流した。その後直ぐに各種組織(大
動脈、腎、肝)を摘出し凍結した。組織100mg当た
り2mlの可溶化緩衝液(0.15M−NaCl、1%S
DS、10mM−EDTA・2Naを含む50mM ト
リス−HCl緩衝液、pH7.4)を加え、ポッター型ガ
ラスホモジナイザーで、蛋白を可溶化し抽出した後、抽
出液を遠心分離し上清を得た。これをSDS−PAGE
で分離した後、これをPVDF膜に転写した。これをブ
ロッキングした後、一次抗体として抗ラットPAI−1
マウスモノクローナル抗体D1.B12、二次抗体にH
RP標識抗マウスIgGヤギIgG(カッペル社製)を用
い、順次反応させた後、DABとH22で発色させた。
その結果、ラット大動脈、腎および肝の組織中PAI−
1に相当する蛋白を特異的に検出できた。大動脈組織に
おいては、LPS投与3時間後でPAI−1抗原が検出
され始め6時間後で最も産生量が増大しているのが明確
に観察できた。この結果を図8に示した。一方、モノク
ローナル抗体D1.B12にかえて、抗ラットPAI−
1ウサギIgG(American diagnosis社製)(市販ポリ
クローナル抗体)を用い、同様に検出を試みたが、ラッ
ト大動脈組織中のPAI−1を検出することはできなか
った。
【0045】(2)免疫組織染色による組織中PAI−
1の検出 組織中PAI−1の検出には、前記実施例6の(1)に
準じてHRP標識Fab'に調製した抗ラットPAI−
1モノクローナル抗体D1.B12を用い、以下のよう
に、免疫組織染色を実施した。前記(1)と同様にし
て、LPS投与ラットから摘出した各種組織(大動脈、
肝、腎)を、直ちにティシュウ−テック・オー・シィ・
ティ・コンパウンド(Tissue−Tek O.C.T.Compo
und、商品名、マイルス三共製)に包埋し、ドライアイ
ス中で凍結した。包埋した組織からは、ミクロトーム・
クリオスタットを用いて10μm厚の凍結切片を作製
し、アミノプロピルトリエトキシシランコートグラス
(松浪硝子製)に貼付し、免疫組織化学用検査材料とし
た。凍結切片を、冷アセトン固定後、内因性ペルオキシ
ダーゼ活性阻止するためH22添加メタノールで処理
し、また非特異的吸着を防止するため10%正常マウス
血清を添加したブロッキング用液(商品名:Block Ac
e、大日本製薬社製)にて処理した後、HRP標識抗ラ
ットPAI−1モノクローナル抗体D1.B12(Fa
b’フラグメント)と4℃一晩反応させた。これをPB
Sで洗浄後、DAD/H22で発色させた。対比染色と
してはメチルグリーン染色を行った。コントロールとし
ては、特異抗体の代わりに希釈非免疫BALB/c マ
ウス血清を用いて同様にして免疫組織染色を実施した。
その結果、抗ラットPAI−1モノクローナル抗体を用
いた免疫組織染色では、大動脈、肝、腎に陽性像が見ら
れた。特に大動脈内膜では強い陽性像が認められた。一
方、コントロールとして非特異的血清を用いた染色で
は、いずれの臓器においても陽性像は認められなかっ
た。以上(1)および(2)の結果から本発明の実施例
で得られた抗ラットPAI−1モノクローナル抗体は、
分離精製したラットPAI−1のみならず、ラット生体
組織中のPAI−1とも特異的に結合し、組織中のPA
I−1検出のために実際に使用可能であることがわかっ
た。
【0046】参考例1 RFAによるPAI−1活性の
検出 リバースフィブリンオートグラフィー(RFA;revers
e fibrin autography)によるPAI−1活性の検出
は、グラネリ−ピペルノ(Granelli−Piperno)らの
方法〔Journal of Experimental Medicine、第148巻、2
23−234頁、1978年〕に準じて以下のように実施した。 <フィブリンプレートの作製>リバースフィブリンオー
トグラフィー用のフィブリンプレートを以下のように調
製した。すなわち、アガロースを2%になるようにPB
Sに入れ加熱融解して調製し42℃に保温した溶液(溶
液A)と、ウシトロンビン(三共社製)を0.6U/m
lになるようにPBSで希釈し42℃に保温した溶液
(溶液B)とを混合した後、ウシプラスミノーゲン(S
igma社製)(最終濃度0.0625U/ml)と一本鎖
(single-chain)のヒトt−PA(Biopool社製)(最
終濃度0.6IU/ml)を加えた。最後に、あらかじ
め37℃で保温したPBSに1%となるようにウシフィ
ブリノーゲン(プラスミノーゲン−リッチ)(Sigma社
製)を加えて溶解した後濾過をして調製した溶液(溶液
C)を添加し、すばやく撹拌した後、角シャーレに注ぎ
ゲル化させた。 <RFA>被験サンプルについて、10%アクリルアミ
ドゲルを用いてSDS−PAGEを行なった後、泳動後
のゲルを2.5%トリトンX−100含有0.15MN
aCl−0.05M トリス・HCl(pH7.5)溶液
に浸し、2時間おだやかに振とうした。このゲルを精製
水で2回洗浄した後、前記のフィブリンプレート上にの
せ、水浴中30℃で3時間インキュベートした。PAI
−1活性は、フィブリン分解の抑制によりプレート上
(50kD前後の位置)に生じる白色バンドとして検出
される。また、被験サンプル中の潜在型(不活性)PA
I−1は、SDS処理により活性化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のモノクローナル抗体のラットPAI
−1のt−PA阻害活性に対する中和作用を示すグラ
フ。
【図2】 本発明のモノクローナル(抗体No.1〜
5)の抗体No.3との競合性(交差反応性)試験結果
を示すグラフ。
【図3】 本発明のモノクローナル抗体(抗体No.6
〜10)の抗体No.3との競合性(交差反応性)試験
結果を示すグラフ。
【図4】 ヒト血小板、HT1080培養上清およびH
TC培養上清中本発明のモノクローナル(抗体No.
3)を用いたウエスタンブロッティングによる検出にお
ける電気泳動写真。
【図5】 本発明のモノクローナル抗体(抗体No.
1)によるラットPAI−1測定の検量線。
【図6】 本発明のモノクローナル抗体(抗体No.
1)による活性型PAI−1測定の検量線。
【図7】 本発明のモノクローナル抗体(抗体No.
3)を用いたラット大動脈PAI−1のウエスタンブロ
ッティングによる検出結果を示す電気泳動写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:91) (72)発明者 大谷 章雄 埼玉県川口市並木1丁目6番35−519号

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラットPAI−1(タイプ1プラスミノ
    ーゲンアクチベーターインヒビター)と特異的に結合す
    るモノクローナル抗体。
  2. 【請求項2】 ラットPAI−1とt−PA(組織型プ
    ラスミノーゲンアクチベーター)との複合体と特異的に
    結合するモノクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 ラットPAI−1の活性を中和する作用
    を有する請求項1または2記載のモノクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 ヒトPAI−1とは結合しない請求項1
    または2記載のモノクローナル抗体。
  5. 【請求項5】 マウスIgGである請求項1または2記
    載のモノクローナル抗体。
  6. 【請求項6】 ハイブリドーマ細胞株D1.B12−3
    (生命工学工業技術研究所受託番号FERM P−15
    658号)が産生する請求項1または2記載のモノクロ
    ーナル抗体。
  7. 【請求項7】 ラットPAI−1で免疫感作した哺乳動
    物の抗体産生細胞と、哺乳動物の骨髄腫細胞とを融合さ
    せて得られた、請求項1〜6のいずれかの項に記載のモ
    ノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
  8. 【請求項8】 免疫感作に使用されるラットPAI−1
    が、ラットヘパトーマ由来であることを特徴とする請求
    項7記載のハイブリドーマ。
  9. 【請求項9】 免疫感作に使用されるラットPAI−1
    が、デキサメタゾン処理されたHTC細胞の培養液から
    精製単離された、t−PAの活性阻害作用を有する分子
    量約52000ダルトンの物質であることを特徴とする
    請求項8記載のハイブリドーマ。
  10. 【請求項10】 ハイブリドーマ細胞株D1.B12−
    3(生命工学工業技術研究所受託番号FERM P−1
    5658号)。
  11. 【請求項11】 請求項1〜6記載のモノクローナル抗
    体を用いることを特徴とするラットPAI−1の検出ま
    たは定量法。
  12. 【請求項12】 ラットPAI−1に対する抗原認識部
    位が互いに異なる2種類のモノクローナル抗体を用いた
    酵素免疫測定法である請求項11記載の検出または定量
    法。
  13. 【請求項13】 ラット組織中のPAI−1を免疫組織
    化学的に検出する請求項11記載の検出または定量法。
  14. 【請求項14】 (1)ラットPAI−1と特異的に結
    合するモノクローナル抗体(第1抗体)を固相化し、こ
    の固相化したモノクローナル抗体に、被験試料を接触せ
    しめて、該モノクローナル抗体と被験試料中のラットP
    AI−1を結合させる工程、(2)ラットPAI−1と
    特異的に結合し、第1抗体とは抗原認識部位が異なるモ
    ノクローナル抗体(第2抗体)もしくはラットPAI−
    1に対するポリクローナル抗体(第2'抗体)であっ
    て、必要に応じて標識物で標識された第2もしくは第
    2'抗体を、(1)で得られた結合物に結合させる工
    程、(3)工程(2)で用いる抗体が標識物で標識され
    ていない場合は、(2)で得られた結合物にさらに、第
    2抗体もしくは第2'抗体を認識しかつ標識物で標識さ
    れた抗体(第3抗体)を結合させる工程、および(4)
    標識物の活性を測定する工程を含むことを特徴とする、
    請求項11記載の検出または定量法。
  15. 【請求項15】 (1)ラットPAI−1と複合体を形
    成し得るt−PAを固相化し、この固相化したt−PA
    に、被験試料を接触せしめて、該t−PAと被験試料中
    のラットPAI−1を結合させる工程、(2)ラットP
    AI−1と特異的に結合し、かつ必要に応じて標識物で
    標識されたモノクローナル抗体を、(1)で得られた結
    合物に結合させる工程、(3)工程(2)で用いる抗体
    が標識物で標識されていない場合は、(2)で得られた
    結合物にさらに、(2)で用いる抗体を認識しかつ標識
    物で標識された抗体(第2抗体)を結合させる工程、お
    よび(4)標識物の活性を測定する工程を含むことを特
    徴とする、請求項11記載の検出または定量法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016529255A (ja) * 2013-08-13 2016-09-23 サノフイ プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(pai−1)に対する抗体及びその使用

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