JPH0966679A - 溶融転写型記録シートおよびその形成方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、熱ヘッドを用いる溶融転写型熱転
写用プリンターに使用されたとき、階調再現性およびド
ット再現性が優れたプリントインク画像が得られ、かつ
透明保護層の積層により画像部に光沢性または艶消し性
を自由に付与でき、画像の耐擦過性、耐汚染性、耐光性
等の耐久性や保存性に優れた溶融転写型記録シートおよ
びその形成方法を提供するものである。 【解決手段】 シート状支持体と、このシート状支持体
の一面上に形成され、かつ多孔性樹脂含有被膜からなる
多孔性インク受容層とを有し、前記多孔性インク受容層
の表面の平均気孔直径が０．５〜３０μｍの範囲にあ
り、かつ前記多孔性インク受容層上に熱転写画像が形成
されており、該熱転写画像上に透明保護層を有する溶融
転写型記録シートおよびその形成方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、溶融転写型記録シ
ートおよびその形成方法に関するものである。更に詳し
く述べるならば、本発明は熱ヘッドを用いる溶融転写型
熱転写用プリンターに使用されたとき、高記録濃度が得
られるとともに階調再現性およびドット再現性が優れた
プリントインク画像が得られ、かつ透明保護層の積層に
より画像部に光沢性または艶消し性を自由に付与でき、
また画像の耐擦過性、耐汚染性、耐光性等の耐久性や保
存性に優れた溶融転写型記録シートおよびその形成方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】熱転写インクシートとサーマルヘッドと
を利用する熱溶融転写記録方式は、機構が簡単で保守が
容易なため、ワードプロセッサーやファクシミリ等のプ
リンターに広く用いられているが、画像のフルカラー化
に伴い、高精度の階調再現性並びにインクのドット形状
が忠実に再現されるドット再現性に優れた記録画像が望
まれている。また用途としても、近年、簡便な印刷方法
としても広く用いられる様になり、各種文字、記号、顔
写真等の画像が簡便に形成されるので、印刷枚数が比較
的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証、定期券、プ
リペードカード、名札の作成等に利用される様になって
いる。よって、優れた記録画像が望まれるとともに、定
期券等は、使用頻度が高いため、記録画像の耐摩耗性、
耐汚染性、耐光性等の耐久性や保存性が要求されるよう
になってきた。

【０００３】従来、この熱転写記録方式用の受像シート
としては一般上質紙よりも平滑性のやや高い用紙（上
質、塗工紙）が使用されてきた。しかし、熱溶融転写方
式において従来の用紙を用いると、断熱性の低さに起因
すると考えられる記録濃度の低下や、クッション性の不
足によるドット再現性不良が発生することがある。ま
た、転写されたインクを吸収する空隙が少ないためのイ
ンクがインクリボンに逆転写してしまったり、或は、受
容層上で著しくインクが拡がってしまう。これらはいず
れもドット再現性不良の原因となる。よって、上述のよ
うな熱転写画像のフルカラー化に対して、満足のいくよ
うな品質を得られなかった。

【０００４】この記録の高画質化（フルカラー化）の問
題を解決する試みとして、受像シートのクッション性の
向上のために、支持体上に中空粒子を含有するアンダー
コート層を設けることが提案されている（特開平２−８
９６９０号公報、特開昭６４−２７９９６号公報）。し
かし、この方法では、受像シートに高いクッション性や
断熱性は得られるが、インクを吸収する空隙については
十分でないため良好なドットの再現性を得ることができ
ないでいるのが現状である。

【０００５】また、記録画質の耐久性及び保存性につい
ては、溶融インクを用いた熱転写方法では、形成された
画像のインクが柔らかいワックスを主成分とすることか
ら、爪等で容易に剥離してしまうため、記録画像の耐摩
耗性、耐汚染性、耐光性等の耐久性や保存性の要求性能
を有することができないのが現状である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
欠点を解消し、熱転写カラープリンターに使用した場合
でもドット再現性、階調再現性およびカラー鮮明性が良
好で、記録濃度の高いインク画像記録が得られ、かつ記
録画像に光沢性または艶消し性を自由に付与でき、ま
た、画像の耐擦過性、耐汚染性、耐光性等の耐久性や保
存性に優れた溶融転写型記録シートおよびその形成方法
に関するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の溶融転写型記録
シートは、シート状支持体と、このシート状支持体の一
面上に形成され、かつ多孔性樹脂含有皮膜からなる多孔
性インク受容層とを有し、前記多孔性インク受容層表面
の平均気孔直径が０．５〜３０μｍの範囲にあり、かつ
前記多孔性インク受容層上に熱転写画像が形成されてお
り、さらに該熱転写画像上に透明保護層を有することを
特徴とするものである。本発明の溶融転写型記録シート
においては、多孔性インク受容層が、樹脂含有液に機械
的撹拌を施すことにより形成された多数の微細気泡を有
し、気泡含有樹脂含有液の発泡倍率（一定重量の原液で
比較した、発泡後の体積と発泡前の体積の比）が１〜１
０倍であることが好ましい。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明は、シート状支持体の一面
上に多孔性インク受容層を設けた熱転写受像シートにお
いて、前記多孔性インク受容層上に熱転写画像が形成さ
れており、さらに該熱転写画像上に透明保護層を有する
ことを特徴とするものである。多孔性インク受容層を設
けた溶融熱転写型インク受像シートは、熱転写カラープ
リンターに使用した場合、ドット再現性、階調再現性お
よびカラー鮮明性などが良好で、記録濃度の高いインク
画像記録が得られるが、使用の目的によっては、画像の
耐擦過性などにおいて不十分であった。これらについて
鋭意検討した結果、多孔性インク受容層を設けた溶融熱
転写型インク受像シートの受容層上に熱転写画像を形成
した後に、該熱転写画像上に透明保護層を形成すること
により、画像の耐擦過性は勿論、耐汚染性、耐光性等の
耐久性や保存性において極めて優れた溶融転写型記録シ
ートを得ることが可能となった。

【０００９】本発明における溶融インク熱転写方法の機
構は、基材フィルムの表面の熱溶融性インク層と、熱転
写受像シートの受容層とを対向させて重ね、熱転写シー
トの背面から画像状に加熱して画像を形成するものであ
る。そこで、溶融インクの転写性を向上させるために
は、まず、受容層の断熱性及びクッション性が必要とな
り、次に、溶融インクを受理する空隙として、インク受
容層表面に適当な細孔が必要となる。従って、優れた溶
融インク転写性能の発現のためには、多孔性インク受容
層の構造的特性、断熱性、クッション等の物理的特性が
関与しているものと考えられる。

【００１０】本発明のインク受容層には、無数の細孔が
存在するものである。表面の気孔については、孔径で毛
細管力による溶融インクの吸収性があることから大きさ
は重要である。すなわち、溶融インクを転写したとき、
良好な画像を本発明の受像シート上に形成するには、イ
ンク受容層の表面の平均気孔直径が０．５から３０μｍ
の範囲にあることが必要であり、好ましくは、１．０か
ら１５μｍの範囲である。気孔直径は、そのサイズ（大
きさ）に起因する毛細管現象により溶融インクを捕獲す
る能力と関係しており、気孔が小さいほどその能力は大
きいが、溶融インクの流動性が小さいため、０．５μｍ
未満であるとインクの吸収能力が低下する。一方、３０
μｍを越える（サイズが過大になる）と、気孔内に転写
インクが埋没したり、インクリボンと多孔性インク受容
層表面との良好な接触を阻害するために転写不良あるい
は転写むらの原因となり、またドット再現不良を起こし
て良好な画像が形成できなくなる。なお、多孔性インク
受容層表面の気孔直径は、光学顕微鏡もしくは走査型電
子顕微鏡写真と画像解析装置を用いて、計測することが
可能である。

【００１１】本発明においては、好ましくは、多孔性イ
ンク受容層の表面の開孔面積率を１０〜６０％に調整す
ることにより、ドット再現性、階調再現性およびカラー
鮮明性が良好で、記録濃度の高いインク画像記録を得る
ことが可能である。ちなみに、１０％未満では、断熱性
並びにインクを受理する空隙が不十分である。一方、６
０％を越えると、熱転写記録時にインク受容層の層強度
が不十分となり、良好な記録画像を得ることができな
い。なお、ここで開孔面積率とは、受容層の全塗膜表面
に対する孔の面積の占める割合である。

【００１２】本発明の多孔性インク受容層は、樹脂また
は樹脂および顔料を主成分として含むものである。この
ような多孔性インク受容層は、樹脂、または樹脂と顔料
との混合物を含む液状物に、機械的撹拌を施してこれに
微小な多数の気泡を分散含有させ、この気泡含有樹脂含
有液を支持体上に塗設して形成することができる。気泡
含有液の原液に対する体積比（以下発泡倍率と記す）は
１倍を越え１０倍以下が好ましく、より好ましくは１倍
を越え５倍以下である。すなわち発泡倍率は気泡含有樹
脂含有液中の気泡含有率を示す尺度であり、発泡倍率が
大きくなると受容層の断熱性並びに気泡を構成する樹脂
膜（壁）の厚さが薄くなることを意味している。ちなみ
に、発泡倍率が１０倍を越えると、樹脂膜が薄くなり、
得られるインク受容層の塗膜強度が不十分となる。

【００１３】また、気孔の大きさは、気泡形成・分散処
理前の樹脂含有混合液の組成、すなわち材料の種類、配
合比率、固形分濃度すなわち、起泡、塗工、乾燥後に多
孔性インク受容層中の膜厚さに直接関係する成分として
残存する量、あるいは前記の起泡倍率、塗工方式など、
種々の要因によって影響されることが多いので適正な条
件の設定が必要である。さらに本発明におけるインク受
容層の表面の気孔の大きさは、機械的撹拌によって得
た、気泡含有樹脂液中の気泡の大きさとも関係してお
り、おおむね樹脂含有液中の気泡が小さいほど、塗工、
乾燥後のインク受容層表面の気孔も小さくなるので、樹
脂含有混合液の気泡含有状態には特に制限はないもの
の、前記の多孔性インク受容層の表面と同じ大きさ、す
なわち平均直径が０．５から３０μｍの微小気泡が分
散、混合されていることが好ましく、より好ましくは、
平均直径が０．５から２０μｍの範囲にあるのが良い。
含有された気泡の大きさは、その一部を光学顕微鏡で写
真撮影し、画像解析装置で計測することが可能である。

【００１４】本発明においてインク受容層の形成に用い
られる樹脂としては、例えば、種々の分子量およびケン
化度のポリビニルアルコールおよびその誘導体、デンプ
ン、デンプンの誘導体（例えば酸化デンプン、カチオン
化デンプンのような各種加工デンプン）、メトキシセル
ロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロー
ス、およびエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポ
リアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル
酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸ア
ミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重
合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ
塩、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、ポリエチレ
ングリコール等の水溶性樹脂、並びに、ポリ酢酸ビニ
ル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ア
クリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸
エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチ
ルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ス
チレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、アクリロニ
トリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の
ラテックス等の水分散型樹脂さらには、ニカワ、カゼイ
ン、大豆タンパク、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等
を用いることができるが、これらに限定されるものでは
ない。これらの樹脂は必要に応じて、単独または２種類
以上混合して使用することができる。

【００１５】本発明において、多孔性インク受容層に含
ませることができる顔料としては、例えば酸化亜鉛、酸
化チタン、炭酸カルシウム、珪酸、珪酸塩、クレー、タ
ルク、マイカ、焼成クレー、水酸化アルミニウム、硫酸
バリウム、リトポン、コロイダルシリカ等の無機顔料、
ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキ
シ樹脂、スチレン−アクリル共重合体等の真球、中空あ
るいは、さまざまな形状に加工されたタイプのプラスチ
ックピグメントと称される有機顔料やデンプン粉末、セ
ルロース粉末等を用いることができるが、これらに限定
されるものではない。また、これらの顔料は必要に応じ
て単独にまたは２種以上混合して使用することができ
る。

【００１６】なお、良好な溶融熱転写画像を得るための
前記の樹脂と顔料との配合比としては、樹脂の固形分１
００重量部に対して、顔料が０から９００重量部の範囲
にあることが好ましい。顔料配合部数がこの範囲を越え
ると、必要な塗膜強度が得られず、画像形成に際して塗
膜が剥離するなどのトラブルを発生し、良好な画像が得
られないことが多い。

【００１７】気泡形成前の樹脂あるいは樹脂および顔料
の混合物を含む液状物中には、必要に応じて公知の粘度
調節剤、分散剤、染色剤、耐水化剤、潤滑剤、架橋剤、
可塑剤などを添加することができる。

【００１８】シート状支持体上の多孔性インク受容層の
塗設量は、即ち塗工量は、得られる支持体の一面上の１
ｍ² 当たりの乾燥重量が２から４０ｇ（２〜４０ｇ／ｍ
² ）の範囲にあるようにするのが好ましい。塗工量が２
ｇ／ｍ² より少ない場合には、支持体の表面の粗さを充
分に被覆するのが困難になることが多く、受像シート表
面の適正な平滑性が得られなかったり、充分な断熱性や
圧縮変形性が得られないことがある。一方それが４０ｇ
／ｍ² を越えるような場合は、多孔性インク受容層の厚
さが過大となり、多孔性インク受容層内の結合強度が低
下して、画像を形成した際にこの多孔性インク受容層が
剥離するなどのトラブルを発生し、良好な画像が形成で
きないこともある。従って、多孔性インク受容層の塗工
量の適正化は、樹脂含有液組成の適正化と同様に充分な
注意を払うのは当然である。

【００１９】本発明において、樹脂含有液に気泡を含有
分散させる方法（以下これを発泡方法と記す）は、例え
ば遊星運動をしつつ回転する撹拌翼を有するいわゆる製
菓用の発泡機、一般に乳化分散等に利用されているホモ
ミキサー、カウレスディゾルバー等の撹拌機あるいは密
閉系内に空気と樹脂含有液の混合物とを連続的に送入し
ながら機械的に撹拌を施し、空気を微細な気泡に分散、
混合できる装置、例えば米国ガストンカウンティー社、
オランダのストーク社等の連続発泡機を用いることがで
きるが、特に厳格な制限はない。また機械的撹拌を施す
ための設備の能力が不足であるために、所期の気泡含有
状態が得られなかったり、あるいは気泡含有樹脂液中の
気泡の安定性を向上する目的で、整泡剤、発泡剤と称さ
れている、広範な界面活性作用のある材料の中から適宜
選定された添加剤を配合してもよい。

【００２０】このような界面活性剤としては、高級脂肪
酸、高級脂肪酸変性物、高級脂肪酸のアルカリ塩等は、
特に樹脂含有液の発泡性を高める効果や、分散、含有さ
せた気泡の安定性向上効果が高いので使用することがで
きる。これらの選定には特に厳格な制限はないが、樹脂
含有混合液の流動性を著しく阻害したり、塗工作業性を
損なうおそれのある材料の使用は避けるのが至当であ
る。また、上記の整泡剤や発泡剤の前記の樹脂液、ある
いは前記の樹脂液と顔料との混合液に対する配合比率
は、樹脂液、あるいは樹脂液と顔料との混合液の固形分
１００重量部に対して、固形分で０〜３０重量部、好ま
しくは１〜２０重量部であり、３０重量部を越えて配合
しても所期の効果を大幅に向上できないことが多い。

【００２１】多孔性インク受容層を支持体上に形成する
ための塗工方式としては、メイヤーバー方式、グラビア
ロール方式、ロール方式、リバースロール方式、ブレー
ド方式、ナイフ方式、エアーナイフ方式、押し出し方
式、キャスト方式等の既知の方法から任意に選定するこ
とができる。

【００２２】本発明の多孔性インク受容層を有するシー
トは、気泡含有樹脂液をシート状支持体上に塗工、乾燥
したままの状態でも良好な溶融熱転写画像を示すことが
できるが、さらに金属製ロール２段以上で構成されるマ
シンカレンダー、あるいは金属製ロールおよび樹脂製ロ
ールあるいは金属製ロールとコットン製ロールなどを適
宜組み合わせて構成されるスーパーカレンダーを使用し
て、この多孔性インク受容層に仕上げ処理を施し、その
表面の平滑性をさらに向上させることができる。また塗
工後、半乾燥状態もしくは乾燥状態にあるシートの多孔
性インク受容層の表面を鏡面仕上げを施した加温あるい
は非加温状態キャストドラム等に接触させて、その表面
平滑性を向上させてもよい。しかし過度の加圧力下で上
記平滑仕上げ処理を施すと、多孔性インク受容層中の気
泡を取り囲む樹脂壁が破壊され、インク受容層の緻密化
が生じて、断熱性やクッション性が低下するあるいはイ
ンク受容層表面の気孔の変形や破壊が起こるため、多孔
性インク受容層が有するすぐれた溶融インク転写性能が
得られなくなることもある。従って、前記の平滑仕上げ
処理に際しては処理条件を十分に検討することが必要で
ある。

【００２３】また本発明に用いられるシート状支持体と
しては、セルロースを主成分とする紙、塗工紙、ラミネ
ート紙等の紙類をはじめとして、織布、不織布等の布類
が使用可能である。またポリオレフィン、メタクリレー
ト、酢酸セルロース等のプラスチックフィルム類、ポリ
オレフィンと顔料からなる合成紙や発泡ポリエチレンテ
レフタレートフィルム、発泡ポリプロピレンフィルム等
の多孔質合成樹脂フィルム等を使用することができる。

【００２４】さらに前記のシート状支持体上に気泡含有
樹脂液を塗工して、裏面にカール防止層及び帯電防止層
を塗工あるいはラミネートしてもよい。この場合、支持
体の裏面に個別に形成して所期性能を得ることは可能で
あるが、製造工程の簡略化、製造コストの低減あるいは
所期の機能水準等、必要に応じて材料、形成方法を適宜
選定することにより、単一層に形成して目的を達成する
することができる。すなわち単一層でカール防止、およ
び帯電防止などのトラブル防止性能を付与することも可
能である。従ってシート状支持体の裏面に形成される層
の数においてはなんら制限はない。

【００２５】本発明の熱転写記録方法は、熱転写インク
シートと溶融転写型インク受像シートとを使用して、イ
ンク受容層上に熱転写画像を形成した後に、該熱転写画
像上に透明保護層を形成することを特徴とするものであ
る。係る透明保護層に用いられる樹脂としては、ポリエ
チレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アク
リル樹脂、アクリル−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹
脂、塩化ゴム、アクリルアクリル−塩化ゴム樹脂、塩化
ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、紫外線硬化性または電
子線硬化性樹脂等が挙げられる。前記透明保護層用の樹
脂は、例えば、基材フィルム上に被膜化して使用され、
その厚さは０．５〜１０μｍ程度が好ましく、加熱など
によって転写することが可能である。また、係る樹脂中
に紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び／または蛍光増白剤
等の添加剤を含有させることによって被覆される画像の
耐光性、耐候性、白色度等を向上させることができる。
さらに、耐擦過性や印刷適性を向上させるために、ワッ
クス類、微粒子（ポリエチレンパウダー、マイクロシリ
カ等）を含有させてもよい。上記の如き樹脂からなるフ
ィルムを、熱転写画像形成後の記録シートに、直接貼り
付けることも勿論可能であり、光沢表面、もしくは艶消
し表面を有するフィルムを適宜選択することができる。

【００２６】熱転写画像上への透明保護層の形成におい
ては、熱転写記録に使用したサーマルプリンターのサー
マルヘッドを使用しても良いし、一般公知のラミネータ
ー、熱ロール、アイロン等、さらにはコーティング方式
でもよく特に限定されるものではない。これらの中で
も、サーマルヘッドを使用する方法は簡便であり、実用
性の高い方法である。この場合には、透明保護層の樹脂
をコーティングした基材フィルムと感熱インクシートが
実質的に一体化されていてもよい。

【００２７】

【実施例】下記実施例によって本発明をさらに具体的に
説明する。但し本発明はこれらによって制限されるもの
ではない。なお、実施例および比較例中の「部」および
「％」は、特に断りのない限り、「固形分重量部」およ
び「重量％」を表す。 実施例１ 〔インク受像シートの作製〕下記に示す組成を有する樹
脂混合液（固形分濃度３０％）を、撹拌機（商標：ケン
ミックスアイコーＰＲＯ、愛工舎製作所製）を用いて、
撹拌速度４９０rpmで１５分間撹拌して発泡処理を施し
た。発泡倍率は、３．０倍であった。 樹脂混合液組成 スチレン−ブタジエンラテックス （商標：ＪＳＲ０６１９、日本合成ゴム製） １００部 ステアリン酸系整泡剤 （商標：ＳＮフォーム２００、サンノプコ製） ５部 カルボキシメチルセルロース （商標：セロゲンＡＧガム、第一工業製薬製） １０部 上記の気泡含有樹脂混合液を発泡後直ちに、米坪７５ｇ
／ｍ² の上質紙の表面上にアプリケーターバーを用いて
乾燥後の塗工量が１０ｇ／ｍ² となるように塗工し、乾
燥して、インク受容層を形成し、インク受像シートを作
製した。インク受容層表面の開孔面積率は４０％、平均
孔直径は３．５μｍであった。 〔透明保護層用熱転写シートの作製〕基材フィルムとし
てポリエチレンテレフタレートフィルム（商標：Ｓ−Ｐ
ＥＴ、 東洋紡製、厚み１０μｍ) を用い、その裏面側
に、剥離層用としてアクリル樹脂（商標：ＴＰ−６４ニ
ス、大日本インキ化学製）０．５ｇ／ｍ² 、透明保護層
用樹脂としてアクリル樹脂（商標：ＢＲ−５３、三菱レ
イヨン製）３．０ｇ／ｍ ² 、および感熱接着層用として
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体（商標：デンカ１００
０Ａ、電気化学製）０．５ｇ／ｍ² を順次塗工、乾燥さ
せて透明保護層用熱転写シートを作製した。 〔溶融転写記録および透明保護層の形成〕上記のインク
受像シートと、熱転写インクシートとを、各々のインク
層とインク受容層面とを対向させて重ね合わせ、熱転写
カラープリンター（商標：Ｔｒｕｅｐｒｉｎｔ２２０
０、日本ビクター製、本プリンターは昇華転写用だが、
溶融転写記録が可能なように改造した）により、インク
画像を溶融転写記録し、熱転写記録シートを作製した。
更に前記の熱転写記録シートの画像上に透明保護層用熱
転写シートの透明保護層樹脂面とを対向させて重ね合わ
せ、記録の際と同様なサーマルヘッドで基材フィルム側
より加熱し、透明保護層を画像上に積層せしめて、透明
保護層を画像上に有する熱転写型記録シートを得た。

【００２８】実施例２ インク受容層の形成において下記の組成を有する樹脂混
合液（固形分濃度４０％、発泡倍率３．０倍）を用いた
以外は、実施例１と同様な方法で透明保護層を有する熱
転写記録シートを得た。但し、インク受容層表面の開孔
面積率は２０％、平均孔直径は１０μｍであった。 樹脂混合液組成 スチレン−ブタジエンラテックス （商標：ＪＳＲ０６９２、日本合成ゴム製） １００部 カオリナイトクレー （商標：ＨＴクレー、エンゲルハード製） １００部 ステアリン酸系整泡剤 （商標：ＳＮフォーム２００、サンノプコ製） １０部

【００２９】実施例３ インク受容層の形成において下記の組成を有する樹脂混
合液（固形分濃度４０％、発泡倍率５．０倍）を用いた
以外は、実施例１と同様の方法で透明保護層を有する熱
転写記録シートを得た。但し、インク受容層表面の開孔
面積率は５０％、平均孔直径は１．０μｍであった。 樹脂混合液組成 水性ポリウレタン樹脂 （商標：アデカボンタイター、旭電化工業製） １００部 カオリナイトクレー （商標：ＨＴクレー、エンゲルハード製） １００部 ステアリン酸系整泡剤 （商標：ＳＮフォーム２００、サンノプコ製） １０部 カルボキシメチルセルロース （商標：セロゲンＡＧガム、第一工業製薬製） １０部

【００３０】実施例４ 実施例１と同様にしてインク受像シートを作製し、イン
ク画像を溶融転写記録して熱転写型記録シートを得た。
次に、この記録シートのインク画像表面上に、マットス
ーパー処理をした２軸延伸ポリプロピレンフィルム（厚
み１０μｍ）を合成ゴム系接着剤で張り合わせてラミネ
ートを行い、艶消し表面の透明保護層を有する熱転写型
記録シートを得た。

【００３１】比較例１ 実施例１と同様にしてインク受像シートを作製し、イン
ク画像を溶融転写記録して熱転写型記録シートを得た。
但し、透明保護層の積層は省略した。

【００３２】比較例２ 実施例２と同様にしてインク受像シートを作製し、イン
ク画像を溶融転写記録して熱転写型記録シートを得た。
但し、透明保護層の積層は省略した。

【００３３】比較例３ 実施例３と同様にしてインク受像シートを作製し、イン
ク画像を溶融転写記録して熱転写型記録シートを得た。
但し、透明保護層の積層は省略した。

【００３４】比較例４ インク受容層の形成において樹脂混合液の発泡処理を施
さなかった以外は、実施例１と同様にして熱転写型記録
シートを得た。

【００３５】比較例５ 比較例４と同様にしてインク受像シートを作製し、イン
ク画像を溶融転写記録して熱転写型記録シートを得た。
但し、透明保護層の積層は省略した。

【００３６】品質評価方法、および測定方法 各実施例、および比較例において、転写インク画像の評
価や、開孔面積率および気孔直径の測定方法については
下記の方法で行ない、その結果を表１に示す。 〔画質の評価〕 （１）１７階調で形成されるインク画像（黒単色画像）
について、マクベス反射型濃度計（商標：ＲＤ−９１
４、マクベス社製）を用いて印加エネルギー別に、その
反射濃度を測定し、最高反射濃度と階調再現性を評価し
た。階調再現性は良好に再現されているものから順に
◎、○、△、×の４段階で評価した。 （２）ドット再現性は、インクリボンから受像層に転写
されたインクのドットを観察し、階調再現性と同様に良
好に再現されているものから順に◎、○、△、×の４段
階で評価した。 （３）画像光沢性は、画像の光沢性を目視により評価し
た。光沢性の高いものから順にグロス、ダル、マットの
３段階で評価した。 （４）画像の堅牢性（耐擦過性）の評価方法 画像部にゼムクリップの曲面を押し付け、５０回擦り、
記録部の剥がれを目視評価した。剥がれのないものから
順に◎、○、△、×の４段階で評価した。

【００３７】〔開孔面積率および気孔直径の測定方法〕
多孔性インク受容層表面の開孔面積率および気孔直径
は、走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡を使用して、
受容層の表面を写真撮影した後、表面の気孔の輪郭を正
確に透明フィルム上に黒色のペン等で描き写し、さら
に、ドラムスキャナー（商標：２６０５型ドラムスキャ
ンデンシトメーター、（株）阿部設計製）により、光学
的に気孔の輪郭の情報を読み取り、これを画像解析装置
（商標：ルーゼックスIII 、（株）ニレコ製）を用いて
測定した。なお、前記多孔性インク受容層表面上に形成
された気孔の形状は、必ずしも真円ではないので、気孔
直径は画像解析装置で得られる気孔の輪郭内の面積をも
とに、円相当直径に換算して表示した。

【００３８】

【表１】

【００３９】

【発明の効果】本発明は、熱ヘッドを用いる溶融転写型
熱転写用プリンターに使用されたとき、高記録濃度が得
られるとともに階調再現性およびドット再現性が優れた
プリントインク画像が得られ、かつ透明保護層の積層に
より画像部に光沢性または艶消し性を自由に付与でき、
また画像の耐擦過性、耐汚染性、耐光性等の耐久性や保
存性に優れた溶融転写型記録シートおよびその形成方法
に関するものであり、産業界に寄与するところが大であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の透明保護層用熱転写シートの一
実施態様の構成を示す断面説明図。

【図２】図２は本発明の溶融転写型記録シートの一実施
態様の構成を示す断面説明図。

【符号の説明】

１．基材フィルム ２．透明保護層 ３．剥離層 ４．接着層 ５．シート状支持体 ６．多孔性インク受容層 ７．熱転写画像 ８．受像シート層

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シート状支持体と、このシート状支持体
   の一面上に形成され、かつ多孔性樹脂含有皮膜からなる
   多孔性インク受容層とを有し、前記多孔性インク受容層
   の表面の平均気孔直径が０．５〜３０μｍの範囲にあ
   り、かつ前記多孔性インク受容層上に熱転写画像が形成
   されており、該熱転写画像上に透明保護層を有すること
   を特徴とする溶融転写型記録シート。
2. 【請求項２】 前記多孔性インク受容層が、樹脂含有液
   に機械的撹拌を施すことにより形成された多数の微細気
   泡を有し、気泡含有樹脂含有液の発泡倍率（一定重量の
   原液で比較した、発泡後の体積と発泡前の体積の比）が
   １〜１０倍である請求項１記載の溶融転写型記録シー
   ト。
3. 【請求項３】 シート状支持体と、このシート状支持体
   の一面上に形成され、かつ多孔性樹脂含有皮膜からなる
   多孔性インク受容層とを有し、前記多孔性インク受容層
   表面の平均気孔直径が０．５〜３０μｍの範囲にある溶
   融転写型インク受像シートの多孔性インク受容層（ａ）
   と、基材フィルムの表面に熱溶融性インク層を形成した
   熱転写インクシートのインク層（ｂ）とを対向させて重
   ね、前記熱転写シートの背面から画像状に加熱して多孔
   性インク受容層上に熱転写画像を形成した後、該熱転写
   画像上に透明保護層を形成することを特徴とする溶融熱
   転写型記録シートの形成方法。