JPH0942431A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動変速機における実際の変速時間を正確に
検出して、変速時の変速ショックを軽減する自動変速機
の制御装置を提供するものである。 【構成】 エンジン回転落下判定定数δを用いて自動変
速機２の変速開始時を検出して変速時間を計測し、この
変速時間が予め設定した目標値となるように変速動作に
係る油圧値を学習制御する自動変速機制御装置であっ
て、スロットル開度センサ７が検出したエンジン負荷信
号およびエンジン回転センサ８が検出したエンジン回転
数信号を、エンジン回転落下判定定数算出手段１２に送
信して、エンジン落下判定定数δをエンジン負荷および
エンジン回転数により補正するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は自動変速機付車両の変速
ショック軽減を目的とした自動変速機の制御装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】一般に、自動変速機付車両では、ライン
圧により各種摩擦要素（クラッチやブレーキ等）を選択
的に油圧作動させて所定の変速段数を選択し作動する摩
擦要素の変更により、他の変速段への変速を行ってい
る。しかし、この変速時には、変速ギヤ比の変化に伴う
変速ショックが生じるのを免れない。

【０００３】この変速ショックを軽減するための従来技
術として、例えば、特開平２−３８７４８号公報に記載
されたものが提案されている。これによれば、自動変速
機の出力回転数に変速後のギヤ比を乗じて擬似入力回転
数を求め、更にこの擬似入力回転数とエンジンの出力回
転数との比で示されるトルクコンバータの擬似速度比を
演算し、変速検知手段により、変速開始をエンジン回転
数の落下にて検出し、前記トルクコンバータの擬似速度
比が予め定めた設定値になった時を変速終了時とみなし
て、この間を変速時間として計測して、計測した変速時
間が目標時間となるよう変速中のライン圧を学習制御す
ることにより、変速ショックを軽減しようとするもので
ある。

【０００４】そして、上述した従来例の制御装置では、
エンジン回転数Neが、変速直前のエンジン回転数の最大
値NeS からエンジン回転落下判定定数δ以上に低下した
か否かによって、変速の開始か否かを判定するようにな
っており、エンジン落下判定定数δは、スロットル開度
によるエンジン負荷やエンジン回転数に関係なく固定値
として与えるように構成されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このエンジン
回転落下判定定数δを、エンジン負荷やエンジン回転数
に関係なく固定値とした場合、次のような問題が発生す
る。

【０００６】i)エンジン落下判定定数δの値を大きくす
ると、エンジン負荷が小さい低スロットル開度（低ＴＶ
Ｏ）の時に、変速の開始検出が遅れ、実際の変速時間を
正確に検出することができない。結果として、誤った変
速時間を学習制御することになる。

【０００７】ii)エンジン回転落下判定定数δの値を小
さくすると、エンジン負荷が大きい高スロットル開度
（高ＴＶＯ）の時の、ノッキング制御等の点火時期リタ
ードによりエンジン回転数が変動した場合、変速開始と
して誤判定し、誤った変速時間を学習することになる。

【０００８】以下、その理由を図５および図６に基づい
て詳細に説明する。まず、図５は、エンジン低負荷時及
び高負荷時における変速中のエンジン回転数および出力
回転数の変化状態を示すタイムチャートである。ここ
で、変速開始検出に用いるエンジン回転落下判定定数δ
を固定値にし、エンジン低負荷および高負荷時での実際
の変速時間が同じであるとした場合には、高負荷時に対
し低負荷時は変速前後のエンジンの回転数差が小さいた
め低負荷では変速の開始が高負荷に対して遅くなる。

【０００９】このため、変速時間を正確に検出すること
ができず誤った変速時間を学習制御することになり変速
ショックを軽減することができなくなる。

【００１０】また、図６はエンジン回転数をベースにし
て、このエンジン回転数の変動に最も関係すると推察さ
れる点火時期リタード変化量とエンジン回転数の変化量
との関係を示している。

【００１１】これによれば、例えば、リタード変化量を
５度にするとエンジンが2,000 回転の場合、１５回転変
動するが、5,000 回転では、同じリタード量でも倍の３
０回転以上変動してしまう。

【００１２】この結果、エンジン回転落下判定定数δ
を、エンジンの低回転時（低負荷時）に合わせて小さく
した場合、逆に、エンジンの高回転時（高負荷時）にお
いて、ノッキング制御等の点火時期リタードによりエン
ジン回転数が変化した場合も、変速開始と誤って判定
し、誤った変速時間を学習制御することとなってしま
う。

【００１３】本発明は、上述した従来の課題を解決する
ためになされたものであり、自動変速機における実際の
変速時間を正確に検出し、変速時の変速ショックを軽減
することを目的とした自動変速機の制御装置を提供する
ものである。

【００１４】

【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明は、自動変速機の制御装置におけるエ
ンジン回転落下判定定数δを、エンジン負荷又はエンジ
ン回転数に応じて補正するように構成するものである。

【００１５】

【作用】このような構成に基づいて、本発明によれば、
変速開始検出のためのエンジン回転落下判定定数δをエ
ンジン負荷やエンジン回転数に応じて補正するようにし
たため、エンジン低負荷においては変速開始タイミング
を早めることが可能であり、またエンジン高負荷におい
ては点火時期リタードの影響を受けず、変速開始検出を
誤判定することなく正確に検出することが可能になる。

【００１６】したがって、エンジン低負荷から高負荷ま
で、変速時間を正確に検出して正しい変速時間を学習制
御することが可能になり、確実に変速ショックを軽減す
ることができる。

【００１７】

【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて詳細に
説明する。

【００１８】図１（１）は本発明による自動変速機の制
御装置を説明するブロック図、図１（２）は図１（１）
の全体構成を説明するシステム図であり、図１（２）に
おいて、１はエンジン、２は自動変速機、３はエンジン
制御コンピュータ、４は自動変速機制御コンピュータを
それぞれ示している。エンジン１の動力は、トルクコン
バータ５を経て自動変速機２に入力され、自動変速機２
は自動変速機制御コンピュータ４より出力された変速制
御信号により選択変速段数に応じたギヤ比で動力を出力
軸６に伝え、車両を走行させる。

【００１９】エンジン１は多気筒エンジンで、各気筒の
点火プラグには、エンジン制御コンピュータ３からの点
火信号により点火電流が供給されるようになっており、
エンジン制御コンピュータ３は、スロットルバルブの開
度を検出するスロットル開度センサ７（エンジン負荷を
検出する手段）からのスロットル開度信号およびアイド
ルＳＷ信号、エンジン回転数を検出するエンジン回転セ
ンサ８（エンジン回転数検出手段）からのエンジン回転
信号、車両の速度を検出する出力軸回転センサ９（変速
機出力軸回転数検出手段）からの出力軸回転信号などに
基づいて、エンジン１の点火信号を演算した後、この点
火信号によりエンジン１の運転を可能にしている。

【００２０】また、自動変速機制御コンピュータ４は、
スロットル開度センサ７からのスロットル開度信号およ
びアイドルＳＷ信号、エンジン回転センサ８からのエン
ジン回転信号、出力軸回転センサ９からの出力軸回転信
号などに基づいて、自動変速機２の変速制御信号を演算
した後、この変速制御信号により自動変速機２に備えて
いる変速制御用コントロールバルブ１０を制御するよう
になっている。

【００２１】次いで、上述した自動変速機の制御装置
を、図１（１）に示したブロック図に基づいて説明す
る。まず、エンジン１のスロットル開度センサ７からの
スロットル開度信号と、エンジン回転センサ８からのエ
ンジン回転信号と、エンジン回転落下判定定数δを検索
する１次元テーブル１１からの信号とが、エンジン回転
落下判定定数算出手段（エンジン回転落下判定定数を切
換える手段）１２に入力され、ここで算出されたエンジ
ン回転落下判定用定数δが変速開始判定手段１３に入力
される。そして変速開始判定手段１３により算出された
変速開始信号が変速時間検出手段（変速検出手段）１４
に入力される。

【００２２】一方、エンジン回転信号、変速後のギヤ比
および出力軸回転センサ９からの出力軸回転信号がトル
クコンバータ擬似速度比算出手段１５に入力され、この
トルクコンバータ擬似速度比算出手段（擬似速度比演算
手段）１５から変速終了判定手段１６を介して算出され
た変速終了信号が変速時間検出手段１４に入力される。

【００２３】そして、変速時間検出手段１４では、変速
開始判定手段１３から入力された変速開始信号と、変速
終了判定手段１６から入力された変速終了信号とにより
変速時間が算出され、この変速時間が変速時のライン圧
補正手段である学習制御部（油圧学習制御手段）１７に
入力される。上記学習制御部１７では目標変速時間に応
じてライン圧補正量を所定値だけアップ・ダウンさせる
ことにより学習制御補正を実施している。

【００２４】図２（ａ）および図２（ｂ）は、それぞれ
本発明による自動変速機の制御装置が実行するメインの
フローチャートおよび変速時間の学習制御用フローチャ
ートであり、変速によってエンジン回転数が低下するア
ップシフト変速時の変速時間（イナーシャフェーズ時
間）検出および学習制御について示しており、例えば１
０ms毎にこれらの演算が行われるものである。

【００２５】まず、ステップ２１で、エンジン回転セン
サ８、スロットル開度センサ７および出力軸回転センサ
９によって現時点でのエンジン回転数Ｎｅ、出力軸回転
数Ｎo 、車速Ｖsp、スロットル開度Ｔvo、アイドルＳＷ
Ｉdle Ｓw などの基本的物理量を読み込み、ステップ
２２に進む。

【００２６】なお、ここで各パラメータの算出方法はコ
ンピュータで計測される方法に準じるものであり、詳細
は省略する。

【００２７】ステップ２２では予め設定したシフトパタ
ーンに従い、現時点でのスロットル開度と車速からギヤ
位置を決定して変速判定を行い、ステップ２３にて、変
速開始判定手段１３の変速判定によりアップシフト変速
か否かを判定する。

【００２８】アップシフト変速でなければステップ２４
にて変速開始検出用エンジン回転Ｎesをクリア（０にす
る）するとともに、変速時間検出タイマーＴimerをクリ
アして終了し、今後のアップシフトに備える。

【００２９】ステップ２３でアップシフト変速が行われ
る場合は、ステップ２５にてエンジン落下判定定数算出
手段１２がテーブル１１より変速開始検出に用いるエン
ジン回転落下判定定数δの検索を行う。このエンジン回
転落下判定定数δは、図３（ａ）に示すように、予め設
定された一次元テーブルを参照して、エンジン回転やエ
ンジン負荷（スロットル開度）により検索する。

【００３０】次に、ステップ２６にて変速開始判定手段
１３により変速が開始（イナーシャフェーズが開始）し
たかを判定する。基本的にはアップシフト変速が開始さ
れると、それまではエンジン回転が上昇していたものが
変速後のエンジン回転に向かって落下するので、それを
検出している。ここで、エンジン回転Ｎe ＞Ｎesならば
エンジン回転はまだ上昇中と判断し、ステップ２７にて
変速開始検出用エンジン回転Ｎesを更新（Ｎes←Ｎe ）
して終了する（この結果Ｎesはその変速時の最大エンジ
ン回転数を検出する役割となる）。

【００３１】ステップ２６でＮe ＞Ｎesでないならば、
ステップ２８へ進み、次に変速が開始したかを判定す
る。すなわち、ここでは、変速の誤判定を避けるため
に、（Ｎes−Ｎe ）≧δとなったか否かを判定し、最大
エンジン回転数Ｎesからδ回転数以上低下したことをも
って変速開始と判断している。そして変速開始と判断し
た場合、ステップ２９に進み、変速時間タイマーＴimer
のインクリメント（変速時間＝イナーシャフェーズ時間
＝タイマー値×演算周期である）を行う。次にトルクコ
ンバータ擬似速度比算出手段１５が変速終了の判定を行
うために、トルクコンバータ擬似速度比の判定を行う。

【００３２】まず、ステップ３０にて変速終了時のトル
クコンバータ擬似速度比設定値ｅ０（スライスレベル）
をスロットル開度、出力軸回転数に基づき、図３（ｂ）
に示した２次元テーブルを参照して検索する。この２次
元テーブルは、変速の種類毎に、例えば、１速→２速へ
変速、２速→３速へ変速等、に設定されるものとする。
そして、ステップ３１に進み、ここでトルクコンバータ
擬似速度比算出手段１５が出力軸回転数Ｎo に変速後ギ
ヤ比を乗じ、エンジン回転数Ｎe で割ってトルクコンバ
ータ擬似速度比ｅを求めた後、ステップ３２にて変速終
了判定手段１６がｅ≧ｅ0 となったか否かを判断する。
ここで、ｅ≧ｅ0 の場合、変速終了と判断し、ステップ
３３により変速時間検出手段１４が検出した変速時間に
基づき、学習制御部１７が学習制御を行う。この学習制
御は図２（ｂ）の学習制御フローチャートにより行う。
なお、これによりアップシフト変速での変速時間検出が
終了し、次回演算ではステップ２３でアップシフト変速
中とはみなされず、この演算が繰り返されることはな
い。

【００３３】次いで、図２（ｂ）による学習制御ルーチ
ンについて説明する。まず、ステップ４１により学習制
御部１７は変速の種類（例えば１速→２速へ変速、２速
→３速へ変速等）、及びスロットル開度に応じて予め設
定した目標変速時間（イナーシャフェーズ時間）を算出
する。そして、ステップ４２により、この目標変速時間
と今回計測した変速時間を比較する。目標変速時間に対
して変速時間が大きければステップ４４にてライン圧補
正量を所定値だけアップさせ、目標変速時間に対して変
速時間が小さければステップ４３にてライン圧補正量を
所定値ダウンさせるなどの学習制御補正を実施してい
る。

【００３４】なお、ここでは、変速時のライン圧制御に
ついては詳述していないが、基本的には変速に応じて最
適なライン圧（各種摩擦要素に最適な供給油圧）が与え
られるものとし、それに対して上述した学習制御による
油圧補正が行われる。

【００３５】図４（ａ）は、スロットル開度１／８（低
開度）のとき、変速開始検出に用いるエンジン落下判定
定数δを変化（δ＝３０，６０，９０，１２０，１５０
rpm）させた場合の実変速開始（ギヤ比で算出）との時
間差を示すものである。図から解るように、δを小さく
することにより、低開度（スロットル開度１／８）で
も、実変速開始に近いタイミングで、変速開始を検出し
ていることが理解できる。

【００３６】また、図４（ｂ）は、同様にスロットル開
度１／８にて、δを変化させた場合の変速時間検出状態
を示しており、図からも明らかなように、δを小さくす
ることにより、スロットル開度が低開度でも油圧の違い
による変速時間差をきちんと検出していることが理解で
きる。

【００３７】なお、上記実施例では、エンジン回転数の
算出を点火信号を用いた周期計測方式により説明した
が、周波数計測方式によっても同様の作用効果を得るこ
とが可能である。また、上記実施例では、変速終了をト
ルクコンバータ擬似速度比を用いて判定したが、これに
限定されるものでなく、変速後のエンジン回転数を用い
て判定するようにしても良い。

【００３８】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
る自動変速機の制御装置では、変速開始検出のためのエ
ンジン回転落下判定定数δをエンジン負荷又はエンジン
回転数にて補正するよう構成したので、エンジン低負荷
においては変速開始タイミングを早めることが可能であ
り、またエンジン高負荷においては点火時期リタードの
影響を受けず、変速開始検出において誤判定することな
く正確に検出することが可能になる。

【００３９】したがって、本発明によれば、エンジン低
負荷から高負荷まで、変速時間を正確に検出して正しい
変速時間を学習制御することが可能になり、確実に変速
ショックを軽減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（１）は本発明による自動変速機の制御装置を
説明するブロック図、（２）は（１）の全体構成を説明
するシステム図である。

【図２】図２ａは本発明による自動変速機の制御装置が
実行するメインのフローチャートであり、図２ｂは変速
時間の学習制御用フローチャートである。

【図３】図３ａは本発明によるアップシフト変速時の変
速開始検出に用いるエンジン回転落下判定定数の検索を
行う１次元テーブル、図３ｂは変速終了時のトルクコン
バータ速度比を検索する２次元テーブルである。

【図４】図４ａはエンジン回転落下判定定数をスロット
ル開度１／８にて変化させた場合の変速開始検出結果の
説明図、図４ｂは変速時間検出を示す説明図である。

【図５】従来の自動変速機でエンジン低負荷時及び高負
荷時における変速中のエンジン回転数、擬似速度比の変
化状態、変速機の出力回転数などの変化状態を示すタイ
ムチャートである。

【図６】従来のエンジン回転数をベースにした点火時期
リタード変化量とエンジン回転数の変化量との関係を示
した説明図である。

【符号の説明】

１ エンジン ２ 自動変速機 ３ エンジン制御コンピュータ ４ 自動変速機制御コンピュータ ５ トルクコンバータ ６ 出力軸 ７ スロットル開度センサ（エンジン負荷を検出する手
段） ８ エンジン回転センサ（エンジン回転数検出手段） ９ 出力軸回転センサ（変速機出力軸回転数検出手段） １２ エンジン回転落下判定定数算出手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジン回転数検出手段と、変速機出力
   軸回転数検出手段と、変速機出力軸回転数に変速後のギ
   ヤ比を乗じて求めた擬似入力回転数とエンジン回転数と
   の比で表わされるトルクコンバータの擬似速度比を求め
   る擬似速度比演算手段と、エンジン負荷を検出する手段
   と、変速機出力軸回転数により予め設定された変速終了
   後のトルクコンバータ擬似速度比又は変速終了後のエン
   ジン回転数により変速終了を判定する変速終了判定手段
   と、エンジン回転数が低下し始めてエンジン回転落下判
   定定数以上低下したときから前記変速終了判定手段によ
   り変速の終了を判定するまでの間を変速時間として検出
   する変速検出手段と、この変速検出手段により検出した
   変速時間が目標変速時間になるよう変速中のライン圧を
   学習制御するようにしたライン圧学習制御手段とを有す
   る自動変速機の制御装置において、 前記エンジン回転落下判定定数を、エンジン負荷又はエ
   ンジン回転数に応じて補正するように構成したことを特
   徴とする自動変速機の制御装置。