JPH09329090A - スクロール式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】始動時の大きなトルクを必要とせず、あらゆる
運転条件下で適正な押付け力を得ることができ、高い信
頼性のもとで、圧縮性能の向上を図ったスクロール式圧
縮機を提供する。 【解決手段】固定スクロール７を旋回スクロール６方向
へ弾性的に押圧付勢して、固定スクロールと旋回スクロ
ールとのシールをなすコイルバネ１５と、圧縮運転と同
期して発生する圧縮ガスの力によって軸方向に移動し、
上記コイルバネに弾性力を発生させる移動リング１６
と、上記コイルバネが所定の弾性力で固定スクロールを
押圧付勢するよう、コイルバネの弾性力が所定値に達し
たときに上記移動リングの移動を阻止するストッパ部１
７とを具備した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば空気調和
機の冷凍サイクルを構成する圧縮機として用いられるス
クロール式圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】たとえば、空気調和機の冷凍サイクルを
構成する圧縮機においては、通常のロータリ式圧縮機と
比較して、運動騒音が極めて低く、かつ吸込み弁や吐出
弁など不要で部品点数が少なくてすみ、しかも圧縮性能
のよいスクロール式圧縮機が多用される傾向にある。

【０００３】この種のスクロール式圧縮機は、固定スク
ロールの渦巻状の翼部と、旋回スクロールの渦巻状の翼
部とを噛合させ、これら翼部と各スクロールの鏡板部と
で圧縮空間を形成し、旋回スクロールを旋回運動させ
て、圧縮空間に冷媒ガスを吸込み、圧縮して吐出するよ
うになっている。

【０００４】ところで、このスクロール式圧縮機の圧縮
空間に対するシールは、固定，旋回スクロールの互いの
翼部端面が対向するスクロール鏡板面に摺接することに
より保持される。

【０００５】すなわち、固定スクロールに対して旋回ス
クロールを強固に押し付ければ、圧縮空間のシールが保
持されるが、その反面、旋回スクロールの円滑な旋回運
動が阻害されてしまう。

【０００６】また、圧縮空間は常に正常な圧力状態にな
っているとは限らない。たとえば、液冷媒を吸い込んで
圧縮する、液バック運転の場合は、圧縮空間が異常昇圧
状態に陥る。この状態が長時間継続すると、各スクロー
ルの翼部に大きなストレスがかかって、ついには破断す
る虞れがある。

【０００７】そこで、上記固定スクロールを旋回スクロ
ールに対して適宜な力で押し付けて圧縮空間のシールを
行なう方式が提案され、以上のごとき不具合の解消を図
っている。

【０００８】たとえば、ＵＳＰ３，８７４，８２７（Ａ
ＤＬ特許）では、バネ部材と圧縮された高圧ガスの吐出
圧とを合わせた圧力で、固定スクロールを旋回スクロー
ル側に押し付けるようになっている。

【０００９】また、特開昭５８−２２２９０１号公報
（豊田自動織機）や、特開平７−７２５４１号公報（コ
ープランド）では、圧縮された高圧ガスの吐出圧と、圧
縮途中の中間圧とを合わせた圧力で、固定スクロールを
旋回スクロール側に押し付ける提案がなされている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先のＵ
ＳＰのものは、運転停止時において、運転時に必要とす
るバネ力が固定スクロールを旋回スクロール側へ押し付
けている。したがって、始動時には大きなトルクが必要
となり、そのために圧縮機構部を駆動する大きな容量の
モータを備えなければならず、筺体の大型化や、部品費
の増大およびランニングコストの増大が避けられない。

【００１１】たとえ、より小さな弾性力のバネを備え
て、より小さな始動トルクで始動可能としても、運転条
件で吐出圧は変動するので、吐出圧の高い条件下では、
押付ける力が過大となってしまう。

【００１２】これを回避するために、吐出圧のかかる径
を小さくして、吐出圧の高い運転条件下でも適正な押付
け力を得ようとすると、逆に吐出圧の小さい運転条件下
で押付け力が不足となって、固定スクロールが旋回スク
ロールから離れ易くなり、互いのシール性が損なわれて
ガス漏れし、圧縮性の低下を招いてしまう。

【００１３】また、特開昭５８−２２２９０１号公報
や、特開平７−７２５４１号公報の技術のように、吐出
圧と中間圧を利用して固定スクロールを旋回スクロール
側に押付ける構造では、圧縮機の運転条件によっては、
旋回スクロールに働くスラスト力や、固定スクロールと
旋回スクロールとの間で働く接触力が過大になってしま
う。

【００１４】本発明は上記事情に着目してなされたもの
であり、その目的とするところは、始動時の大きなトル
クを必要とせず、あらゆる運転条件下で適正な押付け力
を得ることができ、高い信頼性のもとで、圧縮性能の向
上を図ったスクロール式圧縮機を提供しようとするもの
である。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため
第１の発明のスクロール式圧縮機は、請求項１として、
固定スクロールの渦巻状の翼部と、旋回スクロールの渦
巻状の翼部とを噛合させ、これら翼部と各鏡板部とで圧
縮空間を形成し、旋回スクロールを旋回運動させて上記
圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して吐出するスク
ロール式圧縮機において、上記固定スクロールを上記旋
回スクロール方向へ弾性的に押圧付勢して、固定スクロ
ールと旋回スクロールとのシールをなす弾性部材と、圧
縮運転と同期して発生する圧縮ガス圧の力によって軸方
向に移動し、上記弾性部材に弾性力を発生させる移動部
材と、上記弾性部材が所定の弾性力で固定スクロールを
押圧付勢するよう、弾性部材の弾性力が所定値に達した
ときに上記移動部材の移動を阻止するストッパ部とを具
備したことを特徴とする。

【００１６】請求項２として、請求項１記載の圧縮運転
と同期して発生し上記移動部材を移動させる力は、圧縮
された高圧ガスの吐出圧であることを特徴とする。請求
項３として、請求項１記載の圧縮運転と同期して発生し
上記移動部材を移動させる力は、圧縮途中のガスを取り
出した中間圧のガスであることを特徴とする。

【００１７】請求項４として、請求項１記載の弾性部材
は、圧縮運転の停止時に、固定スクロールを旋回スクロ
ールに押し付けることを特徴とする。請求項５として、
請求項１記載の上記弾性部材は複数備えられていて、中
心軸に対して所定のピッチで配置したことを特徴とす
る。

【００１８】上記目的を満足するため第２の発明のスク
ロール式圧縮機は、請求項６として、固定スクロールの
渦巻状の翼部と、旋回スクロールの渦巻状の翼部とを噛
合させ、これら翼部と各鏡板部とで圧縮空間を形成し、
旋回スクロールを旋回運動させて圧縮空間に被圧縮ガス
を吸込み、圧縮して吐出する圧縮機構部を備えたスクロ
ール式圧縮機において、上記圧縮機構部を収容するケー
ス体と、このケース体内を、上記圧縮機構部側と、それ
以外の部分である吐出チャンバとに仕切る仕切り体と、
この仕切り体によって仕切られる吐出チャンバ側に設け
られ、上記圧縮機構部で圧縮され吐出される高圧ガスを
一旦受け入れる吐出圧室を形成する内側シリンダ部と、
この内側シリンダ部の外周部に、内側シリンダ部と所定
間隔を存して設けられる外側シリンダ部と、この外側シ
リンダ部と内側シリンダ部との間の空間部に亘って架設
され、かつ圧縮運転と同期して発生する力によって軸方
向に移動する移動部材と、上記外側シリンダ部に設けら
れ、上記移動部材の移動量を規制するストッパ部と、上
記仕切り体と上記移動部材との間に介在され、移動部材
の移動力を受けて上記固定スクロールを旋回スクロール
側へ弾性的に押圧付勢する弾性部材とを具備したことを
特徴とする。

【００１９】請求項７として、請求項６記載の上記仕切
り体は、上記固定スクロールおよび固定スクロールとは
所定間隔を存して設けられる背圧板の、いずれか一方で
あることを特徴とする。

【００２０】請求項８として、請求項７記載の上記背圧
板は、上記移動部材を固定スクロールとは反対側の対向
面から挿入可能な上記外側シリンダ部を備えるととも
に、吐出圧逆止弁機構部が設けられることを特徴とす
る。

【００２１】請求項９として、請求項１および請求項６
記載の上記移動部材は、複数枚の板状リング部材と、こ
れら板状リング部材間に介在され、かつ内側シリンダ部
と外側シリンダ部との周面に摺接して、この両面側の圧
力差を保持するシール部材とからなることを特徴とす
る。

【００２２】以上のような課題を解決する手段を備える
ことにより、請求項１ないし請求項９記載の発明によれ
ば、大きな始動トルクは必要とせず、あらゆる運転条件
下で、固定スクロールを旋回スクロール側へ適正な押付
け力で押付ける。

【００２３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面にもとづいて説明する。図１に、たとえば冷凍装置に
用いられるスクロール式圧縮機の一部を示す。図中１は
ケース体である密閉ケースであり、この密閉ケース１内
上部に支持フレーム２が設けられ、回転軸３を回転自在
に枢支している。

【００２４】上記回転軸３上部には、後述する圧縮機構
部４が連結され、下部には図示しない電動機部が設けら
れる。そして、回転軸３の下端部は電動機部から下方に
突出していて、上記密閉ケース１に取付けられる図示し
ない副軸受に回転自在に枢支される。

【００２５】上記圧縮機構部４は、上記支持フレーム２
にスラスト受け５を介して旋回自在に支持される旋回ス
クロール６と、この旋回スクロール６と噛合する固定ス
クロール７と、固定スクロール７を旋回スクロール６側
に押圧付勢する固定スクロール押圧手段８とから構成さ
れる。

【００２６】上記旋回スクロール６は、上記回転軸３の
上端偏心部３ａに掛合するボス部６ｃを備えた鏡板部６
ａと、この鏡板部６ａの上面側に一体に突設される渦巻
状の翼部６ｂとからなる。

【００２７】上記固定スクロール７は、鏡板部７ａと、
この鏡板部７ａの下面側に一体に突設され旋回スクロー
ル６の翼部６ｂと噛合する渦巻状の翼部７ｂとからな
る。これら旋回，固定スクロール６，７の鏡板部６ａ，
７ａと翼部６ｂ，７ｂとで、一対の圧縮空間Ｓが形成さ
れ、周端部側から被圧縮ガスである冷媒ガスを取り込ん
で、中心部側に移動するとともにその容積を縮小させ、
圧縮作用を行えるようになっている。

【００２８】上記固定スクロ−ル鏡板部６ａには、上記
圧縮空間Ｓの渦巻き中心部と連通するよう貫通する吐出
ポート９が設けられる。なお、上記固定スクロール７
は、ごく狭い所定の距離の間を軸方向に移動可能に支持
される。すなわち、固定スクロール鏡板部７ａ外周部に
は、フランジ状となっていて、この上下面に複数のピン
用孔１０が貫通して設けられる。それぞれのピン用孔１
０と連通するように、上記支持フレーム上面からねじ穴
１１が設けられている。

【００２９】固定スクロール鏡板部７ａのピン用孔１０
には、この上面側からカラー１２が緩挿され、この下端
縁は支持フレーム２の上面に載る。カラー１２の上端縁
は固定スクロール鏡板部７ａ面からわずかに上部に突出
する長さを有している。

【００３０】このカラー１２の内筒部には、位置規制用
ボルト１３が挿入され、ねじ部は上記支持フレーム２の
ねじ穴１１に螺挿される。上記位置規制用ボルト１３頭
部とカラー１２上端縁との間にはワッシャ１４が介在さ
れている。

【００３１】このような構成であるから、カラー１２が
ワッシャ１４を介して位置規制用ボルト１３と支持フレ
ーム２上面との間に強固に介挿固定されるのに対して、
固定スクロール７のピン用孔１０にカラー１２が緩挿さ
れるところから、固定スクロール７はカラー１２の軸方
向に沿って移動自在である。

【００３２】ただし、この移動範囲は、固定スクロール
鏡板部７ａ上面と上記ワッシャ１４下面との間のごく狭
い範囲でしかなく、それ以上の移動は位置規制用ボルト
１３によって規制される。すなわち、固定スクロール鏡
板部７ａ上面とワッシャ１４下面との間隙は、固定スク
ロール７の移動量を規制するためのクリアランスとなっ
ている。

【００３３】上記固定スクロール押圧手段８は、固定ス
クロール７を旋回スクロール６方向へ弾性的に押圧付勢
して、固定スクロール７と旋回スクロール６とのシール
をなす弾性部材であるコイルバネ１５と、圧縮運転と同
期して発生する力によって移動し、上記コイルバネ１５
に弾性力を発生させる移動部材である移動リング１６
と、コイルバネ１５の弾性力が所定値に達したときに移
動リング１６の移動を阻止して、コイルバネが所定の弾
性力で固定スクロールを押圧付勢できるようにするスト
ッパ部１７とを具備した。

【００３４】なお説明すれば、固定スクロール鏡面部７
ａの中央部に設けられる上記吐出ポート９周囲の鏡面部
上面側は、上方に一体に突出する内側シリンダ部１８と
なっている。この内側シリンダ部１８は、上面部が開口
する円筒体であり、上記吐出ポート９と連通するところ
から、内部は高圧ガスを一旦溜める吐出圧室１８ａとな
る。

【００３５】上記内側シリンダ部１８の外周面に、上記
移動リング１６が気密を保持した構造で、かつ摺動自在
に掛合している。この移動リング１６は上部側が下部側
と比較して外方へ大きく突出しており、内側シリンダ部
１８との掛合部分は断面リング状であるけれども、その
ほとんど大部分は直径の大なるフランジ状をなす。

【００３６】この移動リング１６と固定スクロール鏡板
部７ａとの間に上記コイルバネ１５が介在されている。
すなわち、コイルバネ１５の内径は上記移動リング１６
の内側シリンダ部１８に対する掛合部外径よりも大であ
り、コイルバネ１５は移動リング１６のフランジ状部下
面に当接して、移動リングを弾性的に支持する。

【００３７】また、密閉ケース１内の圧縮機構部４の上
部空間は、仕切り体である背圧板１９と、この背圧板１
９に載設される吐出圧逆止弁機構部２０によって上下部
に仕切られる。

【００３８】この背圧板１９は、中心軸に沿う上部側
が、上記移動リング１６のフランジ状部分周面が摺動自
在に、かつ気密を保持した状態で掛合する外側フランジ
部２１となっている。

【００３９】この外側フランジ部２１の下部側に上記ス
トッパ部１７が連設されていて、ストッパ部は上記コイ
ルバネ１５と接触しない程度の範囲で内方に突出してお
り、移動リング１６が所定量以上下降した位置で移動リ
ングのフランジ状部分を掛止し、それ以上の下降を規制
するようになってる。

【００４０】上記吐出圧逆止弁機構部２０は、上記内側
シリンダ部１８の上端縁とは所定の間隔を存して、背圧
板１９に設けられる外側シリンダ部２１の上面開口部を
閉成する。

【００４１】この中央部には逆止弁を備えた弁座部２２
が設けられ、上記吐出ポート９と連通する。換言すれ
ば、上記吐出ポート９は逆止弁を備えた弁座部２２を介
して、背圧板１９の上部側空間と連通する。

【００４２】そして、これら吐出圧逆止弁機構部２０と
背圧板１９とで密閉ケース１内部を上下に仕切るところ
から、これらの上部側空間は吐出された高圧ガスを一旦
集溜する吐出チャンバ２３となる。

【００４３】一方、密閉ケース１の上部側面には吐出管
２４が接続されていて、これは上記吐出チャンバ２３
と、冷凍装置の図示しない凝縮器とを連通する。密閉ケ
ース１の下部側面には、図示しない吸込管が接続されて
いて、これは背圧板１９と吐出圧逆止弁機構２０によっ
て仕切られる密閉ケース１内の下部空間と、冷凍装置の
図示しない蒸発器とを連通する。

【００４４】しかして、このようにして構成されるスク
ロール式圧縮機において、電動機部に通電して圧縮機構
部４を駆動すると、吸込管から低圧の冷媒ガスが密閉ケ
ース１内に導入され、背圧板１９より下部空間に充満す
る。

【００４５】冷媒ガスは、旋回スクロール６と固定スク
ロール７とで形成される圧縮空間Ｓの外周側に取込まれ
る。そして、旋回スクロール６の旋回運動にともなって
圧縮空間Ｓの外周側から内周側である中心部に徐々に移
送され、かつ空間容量が減少することにより圧縮され
る。

【００４６】所定圧まで上昇したところで、圧縮された
高圧ガスは吐出ポート９から吐出され、一旦吐出圧室１
８ａに溜められる。そして、吐出圧逆止弁機構部２０の
弁座部２２を介して吐出チャンバ２３に導かれ、ここで
充満したあと吐出管２４を介して外部の凝縮器に吐出さ
れる。

【００４７】このような圧縮運転の開始とともに、吐出
ポート９から吐出された高圧ガスが吐出圧室１８ａに充
満したあと、一部の高圧ガスは内側シリンダ部１８と外
側シリンダ部２１との間の空間部に充満する。そして高
圧ガスは、移動自在な移動リング１６に背圧をかける。

【００４８】背圧を受けた上記移動リング１６は、コイ
ルバネ１５の弾性力に抗して下方向に移動する。そし
て、所定量下降したところで、ストッパ部１７に掛止さ
れ、それ以上の下降は阻止される。

【００４９】一方、コイルバネ１５は移動リング１６の
下降によって圧縮変形する。移動リング１６がストッパ
部１７に掛止され、下降移動が規制された状態で、コイ
ルバネ１５は所定の弾性力を固定スクロール７に作用す
る。

【００５０】したがって、コイルバネ１５の弾性力で固
定スクロール７は旋回スクロール６に押付けられ、圧縮
運転中における圧縮空間Ｓのシールが完全に確保され
る。すなわち、効率のよい圧縮運転がなされることにな
る。

【００５１】また、上記構成では、圧縮運転と同期して
発生する力である吐出圧により移動リング１６を移動さ
せ、かつコイルバネ１５に弾性力を付与するのであるか
ら、始動時のトルクが小さくてすむ。

【００５２】圧縮運転中に、何らかの理由で圧縮空間の
圧力が異常高圧化した場合、圧縮空間Ｓの異常高圧の影
響を受けて、固定スクロール７は位置規制用ボルト１３
に当接する範囲で浮き上がる。したがって、圧縮空間Ｓ
に対するシールが一旦解除されて、ある程度の隙間が確
保される。

【００５３】ここから異常高圧化したガスが圧縮空間Ｓ
外部へ漏出し、固定，旋回両スクロール７，６を構成す
る翼部７ｂ，６ｂなどに対するストレスを与えずにす
む。いわゆる、コンプライアンス機能が発揮される。

【００５４】一方、圧縮運転を停止すれば、吐出圧がな
くなって移動リング１６のコイルバネ１５に対する付勢
力が除去される。そして移動リング１６は、コイルバネ
１５の弾性復帰力を受けて浮き上がる。

【００５５】移動リング１６は吐出圧逆止弁機構部２０
下面に当接して、それ以上の浮き上がりが規制される。
この状態で、コイルバネ１５は移動リング１６を上方向
に、かつ固定スクロール７を下方向に弾性的に移動付勢
する作用を有している。

【００５６】すなわち、圧縮機の停止時においても、固
定スクロール７は自重ばかりでなく、ある程度のコイル
バネ１５の弾性力を受けて旋回スクロール５に接触し、
圧縮空間Ｓにおけるシール性が依然として確保される。

【００５７】なお、上記実施の形態においては、弾性部
材としてのコイルバネ１５を、移動リング１６の掛合部
周面を巻装するように形成したが、これに限定されるも
のではなく、図２に示すような構成にしてもよい。

【００５８】同図において、後述する構成部材以外の構
成部材は、先に図１で説明したものと同一であるので、
同番号を付して新たな説明は省略する。（以下同様）す
なわち、固定スクロール押圧手段８Ａを構成する弾性部
材１５Ａは、極く小径のコイルバネからなり、複数（１
このみ図示）備えられる。固定スクロール鏡板部７ａ上
面と、移動部材である移動リング１６のフランジ部下面
との対向する部位には凹部である取付け座２５が設けら
れていて、上記コイルバネ１５Ａの上下端部と掛合す
る。

【００５９】このような構成であれば、コイルバネ１５
Ａを複数にしたことが相違する以外、先に説明した圧縮
機の作用効果と全く同一の作用効果が得られる。また、
図３に示すような、固定スクロール押圧手段８Ｂであっ
てもよい。

【００６０】固定スクロール鏡板部７ａ上面には、内側
シリンダ部１８と所定間隔を存した外周部に外側フラン
ジ部２１ａが一体に突設される。この外側フランジ部２
１ａの上端部には、内側フランジ部１８側へ突出するス
トッパ部１７ａが取付け固定されている。

【００６１】内側フランジ部１８と外側フランジ部２１
ａとの間には、弾性部材１５Ｂによって弾性的に押圧さ
れる後述する移動部材１６Ａが架設され、かつ上下方向
に移動自在に収容される。

【００６２】上記弾性部材１５Ｂは、複数のコイルバネ
からなっていて、ここでは吐出圧逆止弁機構部２０を一
体に備えた背圧板１９ａと、上記移動部材１６Ａとの間
に介在される。

【００６３】上記移動部材１６Ａは、図４に拡大して示
すようになっている。断面逆Ｕ字状に形成されたシール
部材３０が平面リング状に形成される。このシール部材
３０の上下両面にそれぞれ金属板であるリング板３１，
３１が密着され、カシメ具３２をもってリング板３１，
３１とシール板３０が一体にカシメ固定される。

【００６４】再び図３に示すように、このような移動部
材１６Ａが内外側シリンダ部１８，２１ａ間に介在され
る。上記シール材３０の内周面は内側シリンダ部１８周
面に、かつシール材３０の外周面は外側シリンダ部２１
ａ周面にそれぞれ摺接自在に掛合される。

【００６５】一方、固定スクロール７と旋回スクロール
６とで形成される圧縮空間Ｓと、内外側フランジ部１
８，２１ａおよび移動部材１６Ａで囲繞される空間部と
は、固定スクロール鏡板部７ａに設けられる中間圧案内
孔３３を介して連通される。

【００６６】すなわち、圧縮空間で圧縮されるガスの一
部は所定圧力に上昇する以前に中間圧案内孔３３を介し
て内外側フランジ部１８，２１ａおよび移動部材１６Ａ
で囲繞される空間部に案内されるようになっており、こ
のことから、内外側フランジ部および移動部材で囲繞さ
れる空間部を中間圧室３４と呼ぶ。

【００６７】しかして、停止時はコイルバネ１５Ｂの弾
性力で移動部材１６Ａを押圧し、移動部材は固定スクロ
ール鏡板部７ａに当接して、弾性力を付勢する。したが
って、固定スクロール７は旋回スクロール６に当接し
て、圧縮空間Ｓのシールが保持される。

【００６８】圧縮運転の開始にともなって、圧縮空間Ｓ
から中間圧のガスが中間圧案内孔３３を介して中間圧室
３４へ導かれ、ここに充満して固定スクロール鏡板部７
ａ，内外側シリンダ部１８，２１ａの一部および移動部
材１６Ａに中間圧の背圧をかける。

【００６９】ここでは移動部材１６Ａのみが自由である
ところから図の上方へ移動して、コイルバネ１５Ｂを収
縮弾性変形させる。ついには、移動部材１６Ａはストッ
パ部１７ａに掛止して、それ以上の移動が阻止される。

【００７０】圧縮運転中は、中間圧のガスが中間圧室３
４に充満するので、移動部材１６Ａがストッパ部１７ａ
に掛止したまま継続する。換言すれば、固定スクロール
７と移動部材１６Ａとが一体化したのと同様の状態とな
る。

【００７１】したがって、コイルバネ１５Ｂの弾性力が
移動部材１６Ａを介して固定スクロール７に伝達するこ
ととなり、固定スクロール７は旋回スクロール６側へ押
圧され、圧縮空間Ｓにおけるシールが保持される。

【００７２】このようにして、中間圧で導かれる容積が
吐出圧で導かれる容積よりも小さいため、先に説明した
ように吐出圧を導く構造のものよりも、始動時からコイ
ルバネ１５Ｂを押し縮めるまでの時間が短くてすみ、始
動から安定時間までの時間の短縮化を得られる。

【００７３】図５は、基本的には、先に図２で示した固
定スクロール押圧手段８Ａを備えた圧縮機であり、さら
に冷凍サイクル回路Ｒに、いわゆるレリース機構４０が
併用される。

【００７４】すなわち、同図の５０は凝縮器、５１は絞
り装置、５２は蒸発器であり、これらと上記スクロール
式圧縮機とともに冷凍サイクル回路Ｒが構成される。上
記レリース機構４０は、圧縮空間Ｓに連通して、圧縮途
中のガスを冷凍サイクル回路Ｒに直接導出するようにな
っている。

【００７５】すなわち、たとえば昼間の冷房運転状態を
夜間まで継続すると、冷え過ぎの状態になる。そこで、
レリース機構４０の開閉弁４１を開放して圧縮途中のガ
スを冷凍サイクル回路Ｒに戻し、冷房能力を意識的に低
下させる。

【００７６】上記レリース機構４０は、基本的には上記
固定スクロール７に設けられるレリース孔４２と、この
レリース孔４２端部に接続され密閉ケース１を貫通して
上記冷凍サイクル回路Ｒの蒸発器５２とスクロール式圧
縮機との間の冷媒管Ｐに接続されるレリース管４３およ
びこのレリース管の中途部に設けられる上記開閉弁４１
とから構成される。

【００７７】ここでは、密閉ケース１内におけるレリー
ス管４３部位に、フレキシブル管部４４が設けられる。
このフレキシブル管部４４は、通常の配管をコイル状に
形成してフレキシブルにしてもよい。

【００７８】したがって、旋回スクロール６の旋回運動
にともなう微振動が固定スクロール７に伝達し、さらに
固定スクロールに接続されるレリース管４３に伝達して
も、このフレキシブル管部４４は、確実に吸収して外部
への伝達を阻止する。

【００７９】すなわち、フレキシブル管部４４を備えた
ことによって、レリース管４３の破損を確実に防止でき
る。なお、ヒートポンプ式冷凍サイクル回路を備えた空
気調和機においては、暖房運転時における暖房能力の増
大を図るため、圧縮機から吐出される冷媒の一部をバイ
パスさせて再び圧縮空間に導く、いわゆるインジェクシ
ョン回路を備えたものがある。

【００８０】この場合も、インジェクション回路を構成
するインジェクション管が、固定スクロール７に設けら
れ圧縮空間Ｓに連通するインジェクション孔端部に接続
される。すなわち、密閉ケース１内部においては、先に
図５で説明した圧縮機と全く同様の構成であり、したが
って密閉ケース１内のインジェクション管部位にフレキ
シブル部を備えることにより、同様の作用効果を得られ
ることとなる。

【００８１】図５は、横軸に代表的な空気調和機の使用
条件Ａ〜Ｆをとり、縦軸にスラスト力・接触力／本発明
における固定スクロールと旋回スクロールの翼端の最小
接触力をとる。

【００８２】本発明の固定スクロールと旋回スクロール
の接触力の最小値を１としたときの、本発明構造と従来
構造の圧縮機におけるスクロール相互の押付け力（スラ
スト力）および接触力を理論計算してグラフ化してい
る。

【００８３】同図の、ａは本発明構造の押付け力、ｂは
従来構造の押付け力、ｃは本発明構造の接触力、ｄは従
来構造の接触力である。本発明構造の接触力ｃは、運転
条件Ｄにおいて最小であり、従来構造の接触力ｄは運転
条件Ｃにおいて最小である。それぞれの最小値は１であ
り、互いにほぼ同等である。

【００８４】これに対して、本発明構造の接触力ｃの最
大は運転条件Ｂの約３．２倍であり、従来構造の接触力
ｄの最大は運転条件Ｆにおける約４．９倍である。一
方、押付け力に関して言えば、本発明構造の押付け力ａ
の最大は運転条件Ｆの約９．７倍であり、従来構造の押
付け力ｄの最大は運転条件Ｅにおける１２．２倍であ
る。

【００８５】このようにして、最大値に関しては、本発
明構造の圧縮機は従来構造の圧縮機と比較して荷重を小
さく抑えることができ、圧縮性能の向上と信頼性の向上
を得られることが理解できる。

【００８６】なお、上記スクロール式圧縮機は、必ずし
も冷凍サイクルを構成する機器に備えられるものに限定
されず、他の種類の被圧縮ガスもしくは空気を圧縮する
場合にも用いることができる。

【００８７】

【発明の効果】以上説明したように請求項１の発明によ
れば、固定スクロールを旋回スクロール方向へ弾性的に
押圧付勢し互いのスクロールのシールをなす弾性部材
と、圧縮運転と同期して発生する圧縮ガス圧の力によっ
て軸方向に移動し、弾性部材に弾性力を発生させる移動
部材と、弾性部材が所定の弾性力で固定スクロールを押
圧付勢するよう、弾性部材の弾性力が所定値に達したと
きに移動部材の移動を阻止するストッパ部とを備えたか
ら、始動時に大きなトルクを必要とせず、あらゆる運転
条件下で適正な押付け力を得ることができ、高い信頼性
のもとで、圧縮性能の向上を図れる効果を奏する。

【００８８】請求項２の発明によれば、圧縮運転と同期
して発生し移動部材を移動させる力は、圧縮された高圧
ガスの吐出圧としたから、構成を簡素化でき、シール部
分を最小にできる。

【００８９】請求項３の発明によれば、圧縮運転と同期
して発生し移動部材を移動させる力は、圧縮途中のガス
を取り出した中間圧のガスとしたから、始動時に固定ス
クロール押付け力の立上がりが早く、固定スクロールが
素早く安定する。

【００９０】請求項４の発明によれば、弾性部材は、圧
縮運転の停止時に、固定スクロールを旋回スクロールに
押し付けるから、始動時の固定スクロールと旋回スクロ
ールのガタツキを抑制して、騒音振動の低減を得られ
る。

【００９１】請求項５の発明によれば、弾性部材は複数
備えられていて、中心軸に対して所定のピッチで配置し
たから、運転時の固定スクロールのガタツキを抑制し
て、高い性能化を得る。

【００９２】請求項６の発明によれば、ケース体内を、
圧縮機構部側と、それ以外の部分である吐出チャンバと
に仕切る仕切り体と、吐出チャンバ側に設けられ吐出圧
室を形成する内側シリンダ部と、この内側シリンダ部と
所定間隔を存して設けられる外側シリンダ部と内側シリ
ンダ部との間の空間部に亘って、圧縮運転と同期して発
生する力によって軸方向に移動する移動部材と、外側シ
リンダ部に設けられ移動部材の移動量を規制するストッ
パ部と、移動部材の移動力を受けて固定スクロールを旋
回スクロール側へ弾性的に押圧付勢する弾性部材とを具
備したから、シール部分を最小にして構造が簡素化し、
始動時に大きなトルクを必要とせず、あらゆる運転条件
下で適正な押付け力を得ることができ、高い信頼性のも
とで、圧縮性能の向上を図れる効果を奏する。

【００９３】請求項７の発明によれば、仕切り体は、上
記固定スクロールおよび固定スクロールとは所定間隔を
存して設けられる背圧板の、いずれか一方としたから、
構造が簡素化する。

【００９４】請求項８の発明によれば、背圧板は、移動
部材を固定スクロールとは反対側の対向面から挿入可能
な上記外側シリンダ部を備えるとともに、吐出圧逆止弁
機構部が設けられるから、弾性体と移動体のシール材の
組み付けミスをなくして、正確にしかも簡単に組立てる
ことができ、作業性の向上を得る。

【００９５】請求項９の発明によれば、移動部材は、複
数枚の板状リング部材と、これら板状リング部材間に介
在され、かつ内側シリンダ部と外側シリンダ部との周面
に摺接して、この両面側の圧力差を保持するシール部材
とからなるから、シールを確実に、しかも簡単にでき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態を示す、スクロール式圧縮
機の一部省略した縦断面図。

【図２】他の実施の形態を示す、スクロール式圧縮機の
一部省略した縦断面図。

【図３】さらに他の実施の形態を示す、スクロール式圧
縮機の一部省略した縦断面図。

【図４】図３のスクロール式圧縮機に用いられる移動部
材の縦断面図。

【図５】さらに他の実施の形態を示す、スクロール式圧
縮機の一部省略した縦断面図および冷凍サイクル回路
図。

【図６】本発明と従来構成の運転条件に対するスラスト
力と接触力の比較を表す特性図。

【符号の説明】

７…固定スクロール、 ７ｂ…（固定スクロールの）翼部、 ７ａ…（固定スクロールの）鏡板部、 ６…旋回スクロール、 ６ｂ…（旋回スクロールの）翼部、 ６ａ…（旋回スクロールの）鏡板部、 Ｓ…圧縮空間、 ４…圧縮機構部、 １５…弾性部材（コイルバネ）、 １６…移動部材（移動リング）、 １７…ストッパ部、 １…ケース体、 ２３…吐出チャンバ、 １９…仕切り板（背圧板）、 １８ａ…吐出圧室、 １８…内側シリンダ部、 ２１…外側シリンダ部、 ２０…吐出圧逆止弁機構部、 ３１…板状リング部材、 ３０…シール部材。

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定スクロールの渦巻状の翼部と、旋回ス
   クロールの渦巻状の翼部とを噛合させ、これら翼部と各
   鏡板部とで圧縮空間を形成し、旋回スクロールを旋回運
   動させて上記圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して
   吐出するスクロール式圧縮機において、 上記固定スクロールを上記旋回スクロール方向へ弾性的
   に押圧付勢して、固定スクロールと旋回スクロールとの
   シールをなす弾性部材と、 圧縮運転と同期して発生する圧縮ガス圧の力によって軸
   方向に移動し、上記弾性部材に弾性力を発生させる移動
   部材と、 上記弾性部材が所定の弾性力で固定スクロールを押圧付
   勢するよう、弾性部材の弾性力が所定値に達したときに
   上記移動部材の移動を阻止するストッパ部とを具備した
   ことを特徴とするスクロール式圧縮機。
2. 【請求項２】請求項１記載の圧縮運転と同期して発生し
   上記移動部材を移動させる力は、圧縮された高圧ガスの
   吐出圧であることを特徴とするスクロール式圧縮機。
3. 【請求項３】請求項１記載の圧縮運転と同期して発生し
   上記移動部材を移動させる力は、圧縮途中のガスを取り
   出した中間圧のガスであることを特徴とするスクロール
   式圧縮機。
4. 【請求項４】請求項１記載の弾性部材は、圧縮運転の停
   止時に、固定スクロールを旋回スクロールに押し付ける
   ことを特徴とするスクロール式圧縮機。
5. 【請求項５】請求項１記載の上記弾性部材は複数備えら
   れていて、中心軸に対して所定のピッチで配置したこと
   を特徴とするスクロール式圧縮機。
6. 【請求項６】固定スクロールの渦巻状の翼部と、旋回ス
   クロールの渦巻状の翼部とを噛合させ、これら翼部と各
   鏡板部とで圧縮空間を形成し、旋回スクロールを旋回運
   動させて圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して吐出
   する圧縮機構部を備えたスクロール式圧縮機において、 上記圧縮機構部を収容するケース体と、 このケース体内を、上記圧縮機構部側と、それ以外の部
   分である吐出チャンバとに仕切る仕切り体と、 この仕切り体によって仕切られる吐出チャンバ側に設け
   られ、上記圧縮機構部で圧縮され吐出される高圧ガスを
   一旦受け入れる吐出圧室を形成する内側シリンダ部と、 この内側シリンダ部の外周部に、内側シリンダ部と所定
   間隔を存して設けられる外側シリンダ部と、 この外側シリンダ部と内側シリンダ部との間の空間部に
   亘って架設され、かつ圧縮運転と同期して発生する力に
   よって軸方向に移動する移動部材と、 上記外側シリンダ部に設けられ、上記移動部材の移動量
   を規制するストッパ部と、 上記仕切り体と上記移動部材との間に介在され、移動部
   材の移動力を受けて上記固定スクロールを旋回スクロー
   ル側へ弾性的に押圧付勢する弾性部材とを具備したこと
   を特徴とするスクロール式圧縮機。
7. 【請求項７】請求項６記載の上記仕切り体は、上記固定
   スクロールおよび固定スクロールとは所定間隔を存して
   設けられる背圧板の、いずれか一方であることを特徴と
   するスクロール式圧縮機。
8. 【請求項８】請求項７記載の上記背圧板は、上記移動部
   材を固定スクロールとは反対側の対向面から挿入可能な
   上記外側シリンダ部を備えるとともに、吐出圧逆止弁機
   構部が設けられることを特徴とするスクロール式圧縮
   機。
9. 【請求項９】請求項１および請求項６記載の上記移動部
   材は、複数枚の板状リング部材と、これら板状リング部
   材間に介在され、かつ内側シリンダ部と外側シリンダ部
   との周面に摺接して、この両面側の圧力差を保持するシ
   ール部材とからなることを特徴とするスクロール式圧縮
   機。