JPH0926018A - トランスアクスルの潤滑回路 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、トランスアクスルの潤滑油噴射パ
イプを廃止して、部品点数を減少させコストの上昇や組
付け工数の増加を軽減する。 【解決手段】 オイルポンプ、Ｖベルト式無段変速装
置、アイドラギア及び、ディファレンシャルギアを収納
するトランスアクスルケース１に設けた潤滑油路８に、
油路孔６に接続されたパイプ７を挿設し、第二中間軸部
Ｏ3 のアイドラギアと、副軸部Ｏ4 のディファレンシャ
ルギアの軸受部を潤滑すると共に、パイプ７の側面部に
設けられた吐出孔Ｐから潤滑油をディファレンシャルギ
ア及びアイドラギアに噴射することで、別のパイプを設
けずに直接潤滑することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、液圧供給源と、変
速装置と、該変速装置と歯車付き中間軸を介して連結す
る差動伝動装置とを収納するケースを有し、前記液圧供
給源に接続されたパイプを前記ケースに設けた潤滑液路
に挿設し、前記液圧供給源の流体を各潤滑部に供給する
トランスアクスルの潤滑回路の改良に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】油圧供給源と、エンジン特性と車両の要
求する動力性能とを適合させる変速装置と、歯車付き中
間軸を介して、前記変速装置と連結する差動伝動装置と
を共通のケースに収納したトランスアクスルにおいて、
前記ケース内の各潤滑部への潤滑手段は、ケース内下部
に貯留したオイルを各種ギア要素により攪拌し、そのか
き上げオイルを潤滑油として各潤滑部に供給するものが
知られている。

【０００３】しかし、前記トランスアクスルは、変速装
置を配置する主軸部と、歯車付き中間軸を配置する中間
軸部及び、差動伝動装置を配置する副軸部の３軸構成で
あり、こうした複数軸構成になると、かき上げオイルを
潤滑油として各潤滑部に供給する方法では完全に潤滑を
行うことができない。

【０００４】そこで、前記油圧供給源からの流体を潤滑
油として供給するために、該油圧供給源にパイプを接続
し、該パイプを経由して強制潤滑する構成が考えられ
た。

【０００５】例えば、トヨタ自動車（株）昭和６１年３
月発行の「トヨタＡ２４０Ｌ ２４１Ｌ ２４２Ｌ オ
ートマチックトランスアクスル修理書」には、油圧供給
源、変速装置、歯車付き中間軸及び、差動伝動装置とを
共通のケースに収納し、トルクコンバータの作動油供給
路に接続されたパイプの先端を、前記ケースに設けられ
た潤滑油路に挿設し、前記トルクコンバータの作動油に
よって差動伝動装置の軸受を潤滑する構成が記載されて
いる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、例えば、前記
差動伝動装置は全ギア要素を収納するギアケースにより
包囲する構成であるため、差動伝動装置を完全に潤滑す
る時には、かき上げオイルとは別に、潤滑油を直接供給
しなければならない。

【０００７】また、この「トヨタＡ２４０Ｌ ２４１Ｌ
２４２Ｌ オートマチックトランスアクスル修理書」
の場合、運転中に負担が係り易い前記歯車付き中間軸
は、ケース内下部より高い配置となるため、かき上げオ
イルとは別の潤滑油を直接供給しなければならない。

【０００８】さらに、駆動プーリと従動プーリとを備
え、これらをＶベルトで連結したＶベルト式無段変速装
置で構成されるトランスアクスルの場合も、従動プーリ
と差動伝動装置とを連結する歯車付き中間軸が、有段自
動変速装置を連結する構成よりも高い位置に配置される
ために、同様の課題を有する。

【０００９】従って、こうした潤滑回路では、歯車付き
中間軸及び、差動伝動装置の軸受を潤滑するための潤滑
油供給パイプに加えて、歯車付き中間軸及び、差動伝動
装置を直接潤滑するための潤滑油噴射パイプをそれぞれ
別個に備えて潤滑部の潤滑を行う必要があることから、
部品点数の増加によって、コストの上昇や組付け工数の
増加が起こる。

【００１０】本発明は、上述した事実に鑑みなされたも
ので、トランスアクスルケース内の各潤滑部を直接潤滑
するための潤滑油噴射パイプを廃止することで、部品点
数を減少させ、コストの上昇や組付け工数の増加を軽減
することを目的にする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この目的により、本発明
である、請求項１に係る、トランスアクスルの潤滑回路
は、液圧供給源と、エンジン特性と車両の要求する動力
性能とを適合させる変速装置と、該変速装置と歯車付き
中間軸を介して連結する差動伝動装置とをケース内に収
納し、前記液圧供給源に接続されたパイプを前記ケース
に設けた潤滑液路に挿設し、該潤滑液路を介して、前記
液圧供給源の流体を各潤滑部に供給すると共に、前記パ
イプの側面部に設けた吐出孔からの吐出圧によって、前
記ケース内の各潤滑部を直接潤滑することで、各潤滑部
を直接潤滑するための潤滑油噴射パイプを廃止でき、部
品点数を減少させることで組付け工数と製造コストを軽
減することができる。

【００１２】また、本発明である、請求項２に係る、ト
ランスアクスルの潤滑回路において、前記潤滑液路は、
前記歯車付き中間軸の軸受を潤滑し、前記吐出孔は、前
記差動伝動装置を直接潤滑することで、運転中に負担が
係り易い歯車付き中間軸及び、差動歯車装置を重点的
に、且つ、確実に潤滑でき、配置位置が高くなった歯車
付き中間軸の軸受や、差動伝動装置のギアケースに収納
された全ギア要素の焼付きを防止することができる。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添
付した図面に基づいて詳細に説明する。

【００１４】図１は、前置きエンジン前輪駆動車（ＦＦ
車）、或いは後置きエンジン後輪駆動車（ＲＲ車）のパ
ワーユニットとして用いられ、油圧供給源であるオイル
ポンプと、トルクコンバータを経由してエンジンと繋が
るＶベルト式無段変速装置と、差動伝動装置であるディ
ファレンシャルギアと、両装置を連結する歯車付き中間
軸であるアイドラギアとを収納する４軸構成の自動トラ
ンスアクスルのトランスアクスルケースを示す。

【００１５】１はトランスアクスルケースで、実際は２
個のトランスアクスルケースを合体させて構成するが、
図面では説明の都合上、一方のトランスアクスルケース
のみを示し、図面手前側に他方のトランスアクスルケー
スがあるものとする。

【００１６】２はトルクコンバータを収納するトルクコ
ンバータケースを示し、３はトランスアクスルケース１
内の窪みを示し、その窪み３には駆動プーリのプーリ軸
線を示す主軸部Ｏ1 、従動プーリのプーリ軸線を示す第
一中間軸部Ｏ2 、アイドラギアのアイドラ軸線を示す第
二中間軸部Ｏ3 、ディファレンシャルギアのディファレ
ンシャル軸線を示す副軸部Ｏ4 のように、Ｖベルト式無
段変速装置の駆動プーリ及び従動プーリと、アイドラギ
アと、ディファレンシャルギアとを収納しているものと
する。

【００１７】ここで、トランスアクスルケース内での作
用を、ＦＦ車のパワーユニットとした場合で説明する
と、トルクコンバータを経由して得られるエンジンの出
力は、トランスアクスルケース内の窪み３に設けた孔４
を貫通する入力軸により、この入力軸を同軸とする主軸
部Ｏ1 に配置された駆動プーリに入力され、駆動プーリ
と第一中間軸部Ｏ2 に配置された従動プーリとを連結す
る伝達ベルトを介して従動プーリに出力される。このと
き、従動プーリは第一中間軸部Ｏ2 上を移動自在とする
から、駆動プーリと従動プーリとの相互間隔を従動プー
リの進退移動により変更して、連続的な変速を行う。

【００１８】そして、従動プーリの出力は、第二中間軸
部Ｏ3 に配置されたアイドラギアを介して副軸部Ｏ4 に
配置されたディファレンシャルギアに伝えられ、トラン
スアクスルケース内の窪み３に設けた孔５及び図面手前
側の図示せぬトランスアクスルケースに設けた孔からト
ランスアクスルケースを突出するサイドギアシャフトに
より駆動輪（前２輪）に分配して出力され、左右の駆動
輪に回転差を生じた場合、差動を与えて車輪のスリップ
を防止する。

【００１９】このとき、ディファレンシャルギアを構成
する全ギア要素は、アイドラギアのファイナルドライブ
ギアと噛合するファイナルドリブンギアと結合するディ
ファレンシャルケースに収納されているから、潤滑油は
加圧状態で、しかも冷却済みであるトルクコンバータの
作動油供給路のオイルを利用すると焼付き防止に一層の
効果がある。

【００２０】図１中の６はトルクコンバータの作動油供
給路からトランスアクスルケース１の窪み３に形成され
た油路孔で、潤滑油供給パイプ７によりトランスアクス
ルケースの窪み３に形成した潤滑油路８まで配管され
る。

【００２１】潤滑油供給パイプ７の側面部には吐出孔Ｐ
が設けられており、この吐出孔Ｐからトルクコンバータ
の作動油を、回転中のディファレンシャルギアに噴射
し、ディファレンシャルギアを直接潤滑する。従って、
ディファレンシャルギアを直接潤滑するための潤滑油噴
射パイプを別個に備えることなく、ディファレンシャル
ギアケース内部の全ギア要素及びこれらを支持する軸部
を確実に潤滑することができる。

【００２２】また、Ｖベルト式無段変速装置で構成され
るトランスアクスルの場合、アイドラギアが、高い位置
に配置される構成であるために、潤滑油供給パイプ７
に、図示せぬ、別の吐出孔Ｐを設けて回転中のアイドラ
ギアに噴射し、ケース下部のかき上げオイルでは不十分
なアイドラギアを直接潤滑することもできる。

【００２３】図２は、図１のＥ−Ｅ断面図で、第二中間
軸部Ｏ3 のアイドラギア及び副軸部Ｏ4 のディファレン
シャルギアの軸部に嵌合した軸受を潤滑するための潤滑
油路を示し、潤滑油供給パイプ７は漏れのないよう圧入
等により潤滑油路８に挿設されており、また、アイドラ
ギアへの潤滑油路９及び、ディファレンシャルギアへの
潤滑油路１０にそれぞれ連通している。

【００２４】潤滑油路８に挿設された潤滑油供給パイプ
７の側面部には、潤滑油路９，１０の内径ｂより小なる
孔Ｐ1 を形成してオリフィスとし、オリフィスプラグを
用いずに、流量調整のなされたオイルをディファレンシ
ャルギア及び、アイドラギアに嵌合した軸受部に供給し
潤滑を行う。

【００２５】このとき、潤滑油供給パイプ７を挿設する
潤滑油路８の内径ａが潤滑油路９，１０の内径ｂと比較
して大径となるよう構成した場合、潤滑油路９の加工時
に生じてしまう抜け穴Ｅを密閉するために挿入する密封
栓が不必要となる。

【００２６】また、潤滑油供給パイプ７を経由して、こ
れらアイドラギア及び、ディファレンシャルギアの各潤
滑部に供給される潤滑油を、高圧であるトルクコンバー
タの作動油供給路の作動油をもってなすことから、吐出
孔Ｐでの圧力損失によって、この孔Ｐ1 への潤滑油が供
給不足になることはない。

【００２７】以上、説明した実施の形態では、Ｖベルト
式無段変速装置を有する自動トランスアクスルのアイド
ラギア及び、ディファレンシャルギアで説明を行った
が、変速装置の種類はこれのみに限定されることはな
く、有段自動変速装置であっても構わないことから、有
段自動変速装置を、かき上げオイルに加えて、潤滑油供
給パイプを利用した同様の手段で直接潤滑することも可
能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明であるトランスアクスルの潤滑回路にお
ける実施の形態を示す構成図である。

【図２】同実施の形態における、ディファレンシャルギ
ア及びアイドラギアの軸受部に連通する潤滑油路を示す
Ｅ−Ｅ断面図である。

【符号の説明】 １ トランスアクスルケース ２ トルクコンバータケース ３ 窪み ４ 主軸部孔 ５ 副軸部孔 ６ 油路孔 ７ 潤滑油供給パイプ ８，９，１０ 潤滑油路 Ｏ1 主軸部 Ｏ2 第一中間軸部 Ｏ3 第二中間軸部 Ｏ4 副軸部 Ｐ 吐出孔 Ｐ1 孔 ａ，ｂ 潤滑油路内径

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 液圧供給源と、エンジン特性と車両の要
   求する動力性能とを適合させる変速装置と、該変速装置
   と歯車付き中間軸を介して連結する差動伝動装置とを収
   納するケースを有し、前記液圧供給源に接続されたパイ
   プを前記ケースに設けた潤滑液路に挿設し、前記液圧供
   給源の流体を各潤滑部に供給する構成であるトランスア
   クスルの潤滑回路において、 前記パイプの側面部に吐出孔を設け、該吐出孔からの吐
   出圧によって、前記ケース内の各潤滑部を直接潤滑する
   構成にしたことを特徴とするトランスアクスルの潤滑回
   路。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記潤滑液路は、前
   記歯車付き中間軸の軸受を潤滑し、前記吐出孔は、前記
   差動伝動装置を直接潤滑する構成にしたことを特徴とす
   るトランスアクスルの潤滑回路。