JPH09249680A - 抗生物質tkr842、製造方法及び微生物 - Google Patents

抗生物質tkr842、製造方法及び微生物

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JPH09249680A
JPH09249680A JP8084713A JP8471396A JPH09249680A JP H09249680 A JPH09249680 A JP H09249680A JP 8084713 A JP8084713 A JP 8084713A JP 8471396 A JP8471396 A JP 8471396A JP H09249680 A JPH09249680 A JP H09249680A
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JP
Japan
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tkr842
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methanol
antibiotic
substance
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Application number
JP8084713A
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English (en)
Inventor
Kazutada Takesako
一任 竹迫
Mitsuhiro Ueno
充博 上野
Toshiaki Inoue
利明 井上
Junko Yamamoto
純子 山本
Ikunoshin Katou
郁之進 加藤
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Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真菌感染症の治療剤として有用な新規抗生物
質を提供する。 【解決手段】 (1)FAB−MS法による質量スペク
トルが、m/z454[M+H]+ のピークを有する、
(2)炭素数が、24であり、窒素数が、1である、
(3)メタノール中における紫外線吸収スペクトルの主
要な吸収波長が、212nm、289nmであり、それ
らのE1% 1cm は、それぞれ603、106である、
(4)KBr法による赤外線吸収スペクトルの主要な吸
収波数が、3380cm-1、2920cm-1、1660
cm-1、1570cm-1、1460cm-1、1400c
-1、1250cm-1、1130cm-1、1040cm
-1である、(5)クロロホルム、メタノールに可溶であ
り、ヘキサン、水に難溶である、の理化学的性質を有す
る抗生物質TKR842又はその薬理学的に許容される
塩。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真菌感染症の治療
剤として有用な抗生物質TKR842及びその製造方法
並びにこれを産生する微生物に関する。
【0002】
【従来の技術】真菌は、ヒト、動物、植物等に感染して
種々の疾病を引き起こすことが知られている。例えば、
ヒトの皮膚、口腔等に表在性真菌症を起こし、内臓、脳
等に全身性真菌症を起し、ペット、家畜等の動物に対し
ても同様の感染症を起こす。更に、果樹、野菜等の植物
に対しても、種々の病害を起こす。このうち、ヒトに感
染して、全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとし
ては、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス
Cryptococcus)、アスペルギルス(As
pergillus)等が知られ、表在性真菌症では、
皮膚、口腔、膣等に感染するカンジダ、手足の皮膚等に
感染する白癬菌等が主なものと考えられている。生活環
境中にはこれら以外にも多様な真菌が存在し、動植物の
汚染を引き起こす原因と考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような真菌による
感染症、汚染に対する治療、防御の目的に使用可能であ
る抗真菌剤は、現在のところ、非常に少数のものが知ら
れているに過ぎない。このうち、特にヒトを始めとする
動物の全身性感染症に対する治療剤としては、アンホテ
リシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾー
ル等を挙げることができる。しかし、これらのものは、
効力、毒性、抗菌スペクトル等の点で問題があり、治療
剤としては充分なものではなかった。
【0004】本発明の目的は、上述の現状に鑑み、真菌
感染症の治療剤として有用な新規抗生物質を提供すると
ころにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、新規な抗
生物質の探索を目的として、多数の微生物を自然界より
分離し、その産生する抗生物質を単離し、生物学的性質
を調べたところ、カララ(Chalara)属に属する
微生物の培養物中に、クリプトコッカス・ネオホルマン
ス、アスペルギルス・フミガタス等の病原性真菌に対し
て抗菌活性を示す抗生物質が存在していることを見いだ
した。その後、本発明者らは、この抗生物質を単離し、
その理化学的性質を調べた結果、特有の理化学的性質を
有する文献未記載の新規物質であることを確認し、この
抗生物質をTKR842と命名した。本発明は、上記抗
生物質TKR842及びその製造方法を提供するもので
ある。
【0006】上記抗生物質TKR842は、下記
(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の理化学的
性質を有する。 (1)FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z
454[M+H]+ のピークを有する (2)炭素数が、24であり、窒素数が、1である (3)メタノール中における紫外線吸収スペクトルの主
要な吸収波長が、212nm、289nmであり、それ
らのE1% 1cm は、それぞれ603、106である (4)KBr法による赤外線吸収スペクトルの主要な吸
収波数が、3380cm-1、2920cm-1、1660
cm-1、1570cm-1、1460cm-1、1400c
-1、1250cm-1、1130cm-1、1040cm
-1である (5)クロロホルム、メタノールに可溶であり、ヘキサ
ン、水に難溶である
【0007】上記TKR842は、また、図3に示す 1
H−NMRスペクトル、図4に示す13C−NMRスペク
トルを有し、逆相分配高速液体クロマトグラフィーにお
いて、図5示す位置に溶出される特性を有する。
【0008】上記TKR842は、カララ(Chala
ra)属に属し、上記TKR842を産生する菌株を培
養し、その後、上記菌株の培養物から単離することによ
り製造することができる。本発明で使用される上記菌株
としては、カララ(Chalara)属に属し、上記T
KR842を産生するものであれば特に限定されず、例
えば、カララ・エスピー(Chalara sp.)T
KR842株(以下「TKR842株」という)等を挙
げることができる。
【0009】上記TKR842株は、文献未記載の新菌
株であって、本発明者らによって、滋賀県にて採取され
た試料中より初めて分離同定されたものであり、TKR
842を有利に産生する特性を有するものである。以
下、上記TKR842株の菌学的性質を詳細に説明す
る。
【0010】上記TKR842株は、各種培地における
コロニー(以下「集落」ともいう)の色調が、表1に示
す通りである。なお、表中の色調は、日本工業規格JI
SZ 8102(1985年)による色名を基準とし、
培地に接種後25℃で培養し、14日後に観察した結果
によって示したものである。
【0011】
【表1】
【0012】上記TKR842株は、麦芽エキス寒天培
地、ポテトデキストロース寒天培地、サブロー寒天培地
等での成育は遅く、そのコロニーの表面はビロード状
で、中心部は密な硬い菌糸体となって盛り上がる。TK
R842株の分生子柄は、菌糸より直立した長円筒形
で、下部は太く、先端が細まってフィアライドとなる。
分生子は、単細胞又は長く連鎖する。表面が平滑な円筒
形から樽形で、その両端は、丸いか裁断状となる。又、
その大きさは、6〜10×2.0〜3.0μmである。
また、上記の培地では子のう胞子及び厚膜胞子は形成さ
れない。
【0013】上記TKR842株の菌学的性質のうち、
生理学的性質は、下記に示す通りである。 生育温度範囲:生育可能温度範囲が、10〜30℃であ
り、生育最適温度が、25℃付近である。 生育pH範囲:生育可能pH範囲が、pH4〜pH9で
あり、生育最適pHが、pH5〜8である。
【0014】上述の菌学的性質を有する菌種を、ジョセ
フ・シー・ギルマン(JosephC.Gilman)
著、ア・マニュアル・オブ・ソイル・ファンジャイ(A
manual of soil fungi)、コンス
タブル・アンド・カンパニー・リミテッド(Const
able and company ltd)(195
9年)等の文献に記載されたカララ属の菌種について検
索することにより、上記TKR842株は、カララ属に
属する菌株であると同定することができる。
【0015】しかしながら、カララ属に属する菌株であ
って、TKR842の産生能を有するものについては、
これまで報告がなされたことはなく、本発明者らは、こ
れを新菌株とし、カララ・エスピー TKR842株
(Chalara sp.TKR842)と命名し、C
halara sp. TKR842と表示し、工業技
術院生命工学工業技術研究所(あて名;日本国茨城県つ
くば市東1丁目1番3号(郵便番号305))に、寄託
番号FERM P−15474(寄託日;平成8年2月
23日)として寄託した。
【0016】本発明においては、上記TKR842株の
他に、TKR842株の自然的又は人工的変異株、その
他のカララ属に属する菌種等であって、TKR842の
産生能を有する微生物を使用することができる。
【0017】本発明においては、TKR842は、上記
TKR842を産生する菌株を、栄養源含有培地に接種
し、培養することによって製造される。上記栄養源のう
ち、炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトー
ス、サッカロース、澱粉、デキストリン、グリセリン、
糖蜜、水飴、油脂類、有機酸等を挙げることができる。
【0018】上記栄養源のうち、窒素源としては、例え
ば、大豆粉、綿実粉、コーンスチープリカー、カゼイ
ン、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、胚芽、尿素、ア
ミノ酸、アンモニウム塩等の有機窒素化合物、無機窒素
化合物等を挙げることができる。上記栄養源のうち、塩
類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カル
シウム塩、マグネシウム塩、りん酸塩等の無機塩類を挙
げることができる。これらはそれぞれ単独で使用されて
もよく、適宜組み合わせて使用されてもよい。
【0019】上記栄養源含有培地には、更に必要に応じ
て、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の重金属;ビオ
チン、ビタミンB1 等のビタミン類;その他、菌の生育
を助け、TKR842の産生を促進する有機物、無機物
等を適宜添加することができる。上記栄養源含有培地に
は、上記栄養源の他に、更に必要に応じて、シリコーン
オイル、ポリアルキレングリコールエーテル等の消泡
剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0020】上記TKR842を産生する菌株を、上記
栄養源含有培地で培養するに際しては、抗生物質の産生
を微生物の培養によって行う際に一般的に使用される方
法を採用することができるが、液体培養法、なかでも振
盪又は深部通気攪拌培養法を好適に使用することができ
る。上記培養は、15〜25℃で行うことが好ましく、
培地のpHは、通常pH3〜8であるが、pH5付近で
あることが好ましい。培養期間は、通常6〜15日で充
分な産生量を得ることができる。
【0021】上述の培養方法によって、TKR842
は、培養液及び菌体に含有されて培養物中に蓄積され
る。本発明においては、培養物中に蓄積されたTKR8
42は、これら抗真菌性物質の理化学的性質を利用して
培養物中から分離した後、必要に応じて更に精製し、取
得することができる。上記分離は、培養物全体を、酢酸
エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ブタノール、メチ
ルイソブチルケトン等の非親水性有機溶媒で抽出するこ
とにより行うことができる。また、培養物を濾過又は遠
心分離によって培養液と菌体とに分離した後、培養液、
菌体のそれぞれから分離することもできる。
【0022】上記培養液からTKR842を分離するに
は、上記非親水性有機溶媒で抽出する方法を採用するこ
ともでき、また、培養液を吸着性の担体に接触させ、培
養液中のTKR842を担体に吸着させた後、溶媒で溶
出する方法を採用することもできる。上記担体として
は、例えば、活性炭、粉末セルロース、吸着性樹脂等を
挙げることができる。上記溶媒としては、担体の種類、
性質等によって適宜1種又は2種以上を組み合わせて使
用することができ、例えば、含水アセトン、含水アルコ
ール類等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を適宜組み合わ
せたもの等を挙げることができる。上記菌体からTKR
842を分離するには、アセトン等の親水性有機溶媒で
抽出する方法を採用することができる。
【0023】本発明においては、このようにして培養物
中から分離されたTKR842の粗抽出物を、必要に応
じて、更に精製する工程に付することができる。上記精
製は、脂溶性抗生物質の分離、精製に通常使用される方
法によって行うことができ、このような方法としては、
例えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、吸着性樹
脂等の担体を用いるカラムクロマトグラフィー法、高速
液体クロマトグラフィー法等を挙げることができる。シ
リカゲルを担体として用いるカラムクロマトグラフィー
法を採用する場合は、溶出溶媒としては、例えば、クロ
ロホルム、酢酸エチル、メタノール、アセトン、水等を
挙げることができ、これらは2種以上を併用することが
できる。
【0024】上記高速液体クロマトグラフィー法を採用
する場合は、担体としては、例えば、オクタデシル基、
オクチル基、フェニル基等が結合した化学結合型シリカ
ゲル;ポリスチレン系ポーラスポリマーゲル等を挙げる
ことができ、移動相としては、例えば、含水メタノー
ル、含水アセトニトリル等の水溶性有機溶媒の含水溶液
等を使用することができる。
【0025】本発明のTKR842は、そのまま、又
は、その薬理学的に許容される塩として医薬に使用する
ことができる。上記塩としては薬理学的に許容されるも
のであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝
酸、りん酸、ふっ化水素酸、臭化水素酸等の鉱酸の塩;
ぎ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マ
レイン酸、こはく酸、メタンスルホン酸、エタンスルホ
ン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフ
タレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の
塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金
属又はアルカリ土類金属等の塩等を挙げることができ
る。
【0026】本発明のTKR842、又は、その薬理学
的に許容される塩を医薬として投与する場合、本発明の
TKR842、又は、その薬理学的に許容される塩は、
そのまま、又は、医薬的に許容される無毒かつ不活性の
担体中に、例えば、0.1〜99.5%、好ましくは
0.5〜90%含有する医薬組成物として、ヒトを含む
動物に投与される。上記担体としては、例えば、固形、
半固形若しくは液状の希釈剤、充填剤又はその他の処方
用の助剤等を挙げることができ、これらは、1種以上を
用いることができる。
【0027】上記医薬組成物は、投与単位形態で投与す
ることが好ましく、経口投与、組織内投与、局所投与
(経皮投与等)又は経直腸的に投与することができる。
上記医薬組成物は、これらの投与方法に適した剤型で投
与されることは当然である。本発明のTKR842、又
は、その薬理学的に許容される塩を医薬として投与する
場合、抗真菌剤としての用量は、年齢、体重等の患者の
状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で調
整することが望ましいが、通常は、ヒトについては、成
人に対して本発明の有効成分量として、一日当たり、1
0〜2000mgの範囲である。上記範囲未満の用量で
足りる場合もあるが、逆に上記範囲を超える用量を必要
とする場合もある。多量に投与するときは、一日数回に
分割して投与することが望ましい。
【0028】上記経口投与は、固形、粉末又は液状の用
量単位で行うことができ、例えば、末剤、散剤、錠剤、
糖衣剤、カプセル剤、ドロップ剤、舌下剤、その他の剤
型等により行うことができる。上記非経口投与は、例え
ば、溶液や懸濁剤等の皮下、筋肉内又は静脈内注射用の
液状用量単位形態を用いることによって行うことができ
る。これらのものは、本発明のTKR842、又は、そ
の薬理学的に許容される塩の一定量を、例えば、水性や
油性の媒体等の注射の目的に適合する非毒性の液状担体
に懸濁又は溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌する
ことにより製造される。
【0029】上記局所投与(経皮投与等)は、例えば、
液、クリーム、粉末、ペースト、ゲル、軟膏剤等の外用
製剤の形態を用いることによって行うことができる。こ
れらのものは、本発明のTKR842、又は、その薬理
学的に許容される塩の一定量を、外用製剤の目的に適合
する香料、着色料、充填剤、界面活性剤、保湿剤、皮膚
軟化剤、ゲル化剤、担体、保存剤、安定剤等のうちの一
種以上と組み合わせることにより製造される。直腸投与
は、本発明のTKR842、又は、その薬理学的に許容
される塩の一定量を、例えば、パルミチン酸ミリスチル
エステル等の高級エステル類、ポリエチレングリコー
ル、カカオ脂、これらの混合物等の低融点の固体に混入
した座剤等を用いて行うことができる。
【0030】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではな
い。
【0031】実施例1 TKR842株(FERM P−15474)の斜面培
養から一白金耳を、100mlの液体培地(ディフコイ
ーストナイトロジェンベース0.67%(W/V)、グ
ルコース2.0%(W/V))を入れた500ml容の
三角フラスコに接種し、25℃で7日間振盪し、種培養
液を得た。この種培養液1.0mlを、上記液体培地1
40mlを入れた500ml容の三角フラスコ36本に
接種し、25℃、13日間振盪培養(振盪220rp
m)を行った。このようにして得た培養液を遠心分離
し、上澄み液と菌体とに分離した。得られた上澄み液に
2Lの酢酸エチルを加え、充分混合して、酢酸エチル抽
出操作を行った。この抽出液を減圧濃縮することによ
り、残渣468mgを得た。
【0032】また、得られた菌体にメタノール800m
lを加えて充分混合して抽出操作をした後、減圧濃縮を
行った。得られた残渣に水と酢酸エチルを300mlず
つ加え、充分混合して、酢酸エチル抽出操作を行った。
この抽出液を減圧濃縮することにより、残渣198mg
を得た。上澄み液及び菌体の酢酸エチル抽出物をあわせ
て、メタノール抽出を行い、残渣549mgを得た。
【0033】これを少量のメタノールに溶解し、高速液
体クロマトグラフィーに付し、活性画分を得た。この画
分を減圧濃縮することにより、残渣238mgを得た。
なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によっ
た。 装置:LC6A(島津製作所社製) カラム:YMCpackC18(2.0cm×25cm)
(ワイエムシー社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む25〜10
0%(V/V)メタノール
【0034】これを少量のメタノールに溶解し、メタノ
ールで平衡化したセファデックスLH−20(ファルマ
シア社製)カラム(150ml)に付し、メタノールで
溶出することにより、活性画分を得た。この画分を減圧
濃縮することにより、残渣98mgを得た。これを少量
のメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィーに
付し、活性画分を得た。この画分を減圧濃縮することに
より、TKR842の精製物11.4mgを白色粉末と
して得た。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は
下記によった。 装置:LC6A(島津製作所社製) カラム:YMCpackC18(2.0cm×25cm)
(ワイエムシー社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む51%(V
/V)アセトニトリル/水
【0035】理化学的性質 質量分析には、JMS−DX302型質量分析装置(日
本電子社製)を用いた。 1H−NMRスペクトル(重ク
ロロホルム中、標準物質:テトラメチルシラン)及び13
C−NMRスペクトル(重クロロホルム中、標準物質:
重クロロホルム)の測定には、JNM−A500核磁気
共鳴装置(日本電子社製)を用いた。紫外線吸収スペク
トル分析(メタノール中)には、UV−250型自記分
光光度計(島津製作所社製)を用いた。赤外線吸収スペ
クトル分析(KBr法)には、270−30型赤外分光
光度計(日立製作所社製)を用いた。以下にTKR84
2物質の理化学的性質を述べる。
【0036】(1)質量分析 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、
質量分析計によるFAB−MS測定で、m/z454
[M+H]+ であることが判明した。
【0037】(2)炭素数、窒素数 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、
1H−NMRスペクトル測定、13C−NMRスペクトル
測定及びその解析により、炭素数24であり、窒素数1
であることが判った。その 1H−NMRスペクトルを図
3に、13C−NMRスペクトルを図4に示した。
【0038】(3)紫外線吸収スペクトル 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物の、
メタノール中における紫外線吸収スペクトルは下記の通
りであった。 UV(nm)(E1% 1cm ):212(603)、289
(106)。 その紫外線吸収スペクトルを図1に示した。
【0039】(4)赤外線吸収スペクトル 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、
KBr法による赤外線スペクトル測定結果は、下記の通
りであった。 IR(KBr)(cm-1):3380、2920、16
60、1570、1460、1400、1250、11
30、1040。 その赤外線吸収スペクトルを図2に示した。
【0040】また、本物質の各種溶媒に対する溶解性
は、クロロホルム、メタノールに可溶、ヘキサン、水に
は難溶であった。上記分析結果により、高速液体クロマ
トグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮する
ことにより得られた白色粉末精製物は、TKR842で
あることが判明した。
【0041】上記TKR842を、LC−10A型高速
液体クロマトグラフィー装置(島津製作所社製)を用い
た逆相分配高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に
よる分析に供した。なお、高速液体クロマトグラフィー
の条件は下記によった。 カラム:CAPCELLPAKC18(6mm×150m
m)(資生堂社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む50%(V
/V)アセトニトリル/水 カラム温度:40℃ 検出UV波長:220nm その結果、上記TKR842は、図5に示す位置に溶出
されることが明らかとなった。
【0042】生物学的性質 得られたTKR842を使用して各種微生物に対する抗
菌スペクトルを調べた。測定は、液体培地希釈法によ
り、菌の増殖をほぼ完全に阻止した濃度を最少生育阻害
濃度(μg/ml)として求めた。結果を表2に示し
た。表中、YNBGは、イーストナイトロジェンベース
(ディフコ社製)0.67%、グルコース1.0%を含
有するYNBG培地を、BHIは、ブレインハートイン
ヒュージョンブイヨン(日水製薬社製)0.5%を含有
するBHI培地をそれぞれ表す。
【0043】
【表2】
【0044】表2の結果から、本発明の抗真菌性物質T
KR842は、クリプトコッカス・ネオホルマンス、ア
スペルギルス・フミガタス等の病原性真菌に対して抗菌
活性を有することが判明した。
【0045】また、得られたTKR842を、それぞ
れ、ICR系マウスに100mg/kgを腹腔内投与し
たが、毒性は認められなかった。
【0046】
【発明の効果】本発明により、真菌症の治療剤等の臨床
医薬として有用である抗真菌性物質TKR842及びそ
の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗真菌性物質TKR842の紫外線吸収スペク
トルを示す図である。縦軸は波長(nm)を示す。
【図2】抗真菌性物質TKR842の赤外線吸収スペク
トルを示す図である。横軸は波数(cm-1)を示す。
【図3】抗真菌性物質TKR842の 1H−NMRスペ
クトルを示す図である。横軸は化学シフト値(ppm)
を示す。
【図4】抗真菌性物質TKR842の13C−NMRスペ
クトルを示す図である。横軸は化学シフト値(ppm)
を示す。
【図5】抗真菌性物質TKR842のHPLCでの溶出
位置を示す図である。縦軸は相対吸収強度を示し、横軸
は保持時間(分)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:645) (C12P 1/02 C12R 1:645) (72)発明者 山本 純子 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)、(2)、(3)、(4)及
    び(5)の理化学的性質を有することを特徴とする抗生
    物質TKR842又はその薬理学的に許容される塩。 (1)FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z
    454[M+H]+ のピークを有する (2)炭素数が、24であり、窒素数が、1である (3)メタノール中における紫外線吸収スペクトルの主
    要な吸収波長が、212nm、289nmであり、それ
    らのE1% 1cm は、それぞれ603、106である (4)KBr法による赤外線吸収スペクトルの主要な吸
    収波数が、3380cm-1、2920cm-1、1660
    cm-1、1570cm-1、1460cm-1、1400c
    -1、1250cm-1、1130cm-1、1040cm
    -1である (5)クロロホルム、メタノールに可溶であり、ヘキサ
    ン、水に難溶である
  2. 【請求項2】 カララ(Chalara)属に属する菌
    株であって、抗生物質TKR842を産生する菌株を培
    養し、その後、前記菌株の培養物から目的物を単離する
    ことを特徴とする抗生物質TKR842の製造方法。
  3. 【請求項3】 カララ(Chalara)属に属し、抗
    生物質TKR842を産生することを特徴とする微生
    物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO1999032498A1 (fr) * 1997-12-22 1999-07-01 Takara Shuzo Co., Ltd. Antibiotique tkr2999, son procede de preparation et microbe

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999032498A1 (fr) * 1997-12-22 1999-07-01 Takara Shuzo Co., Ltd. Antibiotique tkr2999, son procede de preparation et microbe
US6333305B1 (en) 1997-12-22 2001-12-25 Takara Shuzo Co., Ltd. Antibiotic TKR2999, process for the preparation thereof and microbe

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