JP2000316592A - 新規抗生物質tkr2993およびその製造方法 - Google Patents

新規抗生物質tkr2993およびその製造方法

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JP2000316592A
JP2000316592A JP11129973A JP12997399A JP2000316592A JP 2000316592 A JP2000316592 A JP 2000316592A JP 11129973 A JP11129973 A JP 11129973A JP 12997399 A JP12997399 A JP 12997399A JP 2000316592 A JP2000316592 A JP 2000316592A
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tkr2993
antibiotic
cylindrocarpon
strain
methanol
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Kazutada Takesako
一任 竹迫
Naoyuki Awazu
尚之 粟津
Yoshimi Onishi
佳美 大西
Ikunoshin Kato
郁之進 加藤
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Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗真菌剤として有用な新規抗生物質を提供す
る。 【解決手段】 新規ペニシリウム属菌株から産生される
図1〜4の紫外線吸収スペクトル、赤外線吸収スペクト
ル、1H-NMRスペクトルおよび13C-NMRスペクトルを示
す、抗真菌作用を有する新規抗生物質TKR2993。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗真菌剤として有
用な新規抗生物質TKR2993およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】真菌は、ヒト、動物、植物等に感染して
種々の疾病を引き起こすことが知られている。例えば、
ヒトの皮膚、口腔等に表在性真菌症を起こし、内臓、脳
等に全身性真菌症を起こし、ペット、家畜等の動物に対
しても同様の感染症を起こす。更に、果樹、野菜等の植
物に対しても種々の病害を起こす。このうち、ヒトに感
染して、全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとし
ては、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Crypt
ococcus)、アスペルギルス(Aspergillus)等が知ら
れ、表在性真菌症では、皮膚、口腔、膣等に感染するカ
ンジダ、手足の皮膚に感染する白癬菌等が主なものと考
えられている。生活環境中にはこれら以外にも多様な真
菌が存在し、動植物の汚染を引き起こす原因と考えられ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような真菌による
感染症、汚染に対する治療、防御の目的に使用可能であ
る抗真菌剤は、現在のところ、非常に少数のものが知ら
れているに過ぎない。このうち、特にヒトを始めとする
動物の全身性感染症に対する治療剤としては、アンホテ
リシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾー
ル等を挙げることができる。しかし、これらのものは、
効力、毒性、抗菌スペクトル等の点で問題があり、治療
剤としては充分なものではなかった。本発明の目的は、
このような現状に鑑み、抗真菌剤として有用な新規抗生
物質を提供するところにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは新規な抗生
物質の探索を目的として、多数の微生物を自然界より分
離し、その産生する抗生物質を単離し、生物学的性質を
調べたところ、シリンドロカルポン(Cylindrocarpon)
属に属する微生物の培養物中にカンジダ・アルビカンス
等の病原性真菌に対して抗菌活性を示す抗生物質が 存
在していることを見いだした。その後、本発明者らは、
この抗生物質を単離し、その理化学的性質を調べた結
果、特有の理化学的性質を有する文献未載の新規物質で
あることを確認し、この抗生物質をTKR2993と命名し
た。かくして、本発明は、上記抗生物質TKR2993および
その製造方法を提供するものである。また、本発明は、
この製造方法に有用な抗生物質TKR2993産生能を有する
新規シリンドロカルポン属菌株、および該微生物の処理
物を提供する。本発明の抗生物質TKR2993は、または該
抗生物質産生能を有する微生物もしくはその処理物は、
ヒト、動物または植物の真菌性疾患の予防剤または治療
剤として有用であり、本発明はまた、該抗生物質を有効
成分とする抗真菌剤も提供するものである。なお、本明
細書において、「抗真菌剤」には、医薬、動物薬、化粧
料、農園芸用薬剤などが包含される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の抗生物質TKR2993は、下
記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)および
(6)の理化学的性質を有する。 (1)質量分析:FAB-MS m/z 1410 [M+H]+。 (2)炭素数:72、窒素数:14。 (3)紫外線吸収スペクトル(メタノール中):図1に
示す通り、末端吸収を示す。 (4)赤外線吸収スペクトル(KBr 法):主要な吸収波
数(cm-1)は図2に示す通り、3440、2960、1640、147
0、1210、840、800、720である。 (5)溶解性:メタノールに可溶。ヘキサン、クロロホ
ルム、水に難溶である。 (6)アミノ酸分析(ニンヒドリン反応により検出):
スレオニン、アラニン、バリン、ロイシンおよびプロリ
ンが検出される。 上記 TKR2993は、また、図3に示す1H-NMRスペクトル、
図4に示す13C-NMRスペクトルを有し、逆相分配高速液
体クロマトグラフィーにおいて図5に示す位置に溶出さ
れる特性を有する。
【0006】本発明の抗生物質TKR2993は、シリンドロ
カルポン(Cylindrocarpon)属に属するTKR2993産生能
を有する菌株を培養し、その後、上記菌株の培養物から
産生されたTKR2993を単離することにより製造すること
ができる。本発明で使用される上記菌株としては、TKR2
993産生能を有する菌株であれば特に限定されるもので
はない。かかる菌株としては、例えば、シリンドロカル
ポン・エスピー(Cylindrocarpon sp.)TKR2993株(以
下単に TKR2993株という)等を挙げることができる。TK
R2993株は、文献未記載の新菌株であって、本発明者ら
によって初めて分離同定されたものであり、 TKR2993を
有利に産生する特性を有するものである。以下、TKR299
3株の菌学的性質を詳細に説明する。TKR2993株は、各種
培地におけるコロニー(以下「集落」ともいう)の色調
が、表1に示す通りである。なお、表中の色調は、日本
工業規格 JIS Z8102(1985年)による色名を基準とし、
培地に接種後、25℃で培養し、7日後に観察した結果
によって示したものである。
【0007】
【表1】 ________________________________________________________________________ 集落の直径 集落の色 集落裏面の色 集落の状態 (mm) ________________________________________________________________________ 1)麦芽エキス 55 ネープルスイエロー うすい黄赤 綿毛状 寒天培地 5Y8/8 2.5YR8/4 2)ポテトデキ 69 からし色 ピーチ 綿毛状 ストロース 2.5Y7/6 5YR8/3 寒天培地 3)サブロー 81 肌色 くすんだ黄 綿毛状 寒天培地 5YR8/6 2.5Y8/6 4)YpSs 55 ネープルスイエロー 明るい灰黄赤 綿毛状 寒天培地 5Y8/8 10R8/4 ________________________________________________________________________
【0008】TKR2993株は、ポテトデキストロース寒天
培地、サブロー寒天培地等で速やかに生育し、そのコロ
ニーの表面は綿毛状で、中心部は湿性となり、やや***
している。TKR2993株のフィアライドは紡錐形または変
形した円筒状で、菌糸から側生している。大型分生子
は、円筒形から腎臓形で1〜3隔壁を有し、その大きさ
は、10〜14×2.6〜4.0 μm である。小型分生子は、1
〜2細胞の、表面が平滑な楕円形から円筒形で、その大
きさは、3〜8×1.2〜2.2 μm である。また上記の培地
では子のう胞子および厚膜胞子は形成されない。
【0009】TKR2993株の菌学的性質のうち生理学的性
質は、下記に示す通りである。 生育温度範囲:生育可能温度範囲が、10〜37℃であり、
生育最適温度が、30℃付近である。 生育pH範囲:生育可能pH範囲が、pH3〜pH9であり、
生育最適 pHが、pH4〜7である。 上記の菌学的性質を有する菌種を、ジョセフ・シー・ギ
ルマン(Joseph C. Gilman)著、ア・マニュアル・オブ
・ソイル・ファンジャイ (A manual of soilfungi)、
コンスタブル・アンド・カンパニー・リミテッド(Cons
table and company ltd)(1959年)等の文献に記載さ
れたシリンドロカルポン属の菌種について検索すること
により、上記TKR2993株は、シリンドロカルポン属に属
する菌株であると同定することができる。しかしなが
ら、シリンドロカルポン属に属する菌株であって、TKR2
993の産生能を有するものについては、これまで報告が
なされたことはない。そこで本発明者らはこれを新菌株
とし、シリンドロカルポン・エスピーTKR2993株(Cylin
drocarpon sp. TKR2993)と命名し、Cylindrocarpon s
p. TKR2993と表示し、平成11年4月13日に工業技術院生
命工学工業技術研究所に、寄託番号 FERM P-17365の下
で寄託した。本発明においては、上記TKR2993株の他
に、TKR2993株の自然的または人工的変異株、その他の
シリンドロカルポン属に属する菌種等であって、TKR299
3の産生能を有する微生物を使用することができる。
【0010】本発明においては、 TKR2993は、上記TKR2
993産生能を有する菌株を、栄養源含有培地に接種し、
培養することによって製造される。栄養源のうち、炭素
源としては、例えば、グルコース、フルクトース、サッ
カロース、澱粉、デキストリン、グリセリン、糖蜜、水
飴、油脂類、有機酸等を挙げることができる。窒素源と
しては、例えば、大豆粉、綿実粉、コーンスチープリカ
ー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、胚
芽、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機窒素化合
物、無機窒素化合物等を挙げることができる。塩類とし
ては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム
塩、マグネシウム塩、りん酸塩等の無機塩類を挙げるこ
とができる。これらはそれぞれ単独で使用されてもよ
く、適宜組み合わせて使用されてもよい。上記栄養源含
有培地には、さらに、必要に応じて、鉄塩、銅塩、亜鉛
塩、コバルト塩等の重金属;ビオチン、ビタミンB1等の
ビタミン類;その他、菌の生育を助け、 TKR2993の産生
を促進する有機物、無機物等を適宜添加することができ
る。また、上記栄養源の他に、さらに必要に応じて、シ
リコーンオイル、ポリアルキレングリコールエーテル等
の消泡剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0011】TKR2993産生能を有する菌株を、上記栄養
源含有培地で培養するに際しては、抗生物質の産生を微
生物の培養によって行う際に一般的に使用される方法を
採用することができるが、液体培養法、とりわけ、振と
うまたは深部通気攪拌培養法を好適に使用することがで
きる。上記培養は、15〜25℃で行うことが好ましく、培
地の pHは、通常 pH3〜8であるが pH5付近であるこ
とが好ましい。培養期間は、通常6〜11日で充分な産生
量を得ることができる。上記の培養方法によって、TKR2
993は、培養液および菌体に含有されて培養物中に蓄積
される。本発明においては、培養物中に蓄積されたTKR2
993は、これら抗真菌性物質の理化学的性質を利用して
培養物から分離した後、必要に応じてさらに精製し、取
得することができる。
【0012】培養物からの分離は、培養物全体を、酢酸
エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ブタノール、メチ
ルイソブチルケトン等の非親水性有機溶媒で抽出するこ
とにより行うことができる。また、培養物を濾過または
遠心分離によって培養液と菌体とに分離した後、培養
液、菌体のそれぞれから分離することもできる。培養液
からTKR2993を分離するには、上記非親水性有機溶媒で
抽出する方法を採用することもでき、また、培養液を吸
着性の担体に接触させ、培養液中のTKR2993を担体に吸
着させた後、溶媒で溶出する方法を採用することもでき
る。担体としては、例えば、活性炭、粉末セルロース、
吸着性樹脂等を挙げることができる。上記溶媒として
は、担体の種類、性質等によって適宜1種または2種以
上を組み合わせて使用することができ、例えば、含水ア
セトン、含水アルコール類等の水溶性有機溶媒の含水溶
液等を適宜組み合わせたもの等を挙げることができる。
上記菌体から TKR2993を分離するには、アセトン等の親
水性有機溶媒で抽出する方法を採用することができる。
【0013】本発明においては、このようにして培養物
中から分離された TKR2993の粗抽出物を、必要に応じ
て、さらに精製する工程に付することができる。精製
は、脂溶性抗生物質の分離、精製に通常使用される方法
によって行うことができ、このような方法としては、例
えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、吸着性樹脂
等の担体を用いるカラムクロマトグラフィー法、高速液
体クロマトグラフィー法等を挙げることができる。シリ
カゲルを担体として用いるカラムクロマトグラフィー法
を採用する場合は、溶出溶媒としては、例えば、クロロ
ホルム、酢酸エチル、メタノール、アセトン、水等を挙
げることができ、これらは2種以上を併用することがで
きる。高速液体クロマトグラフィー法を採用する場合
は、担体としては、例えば、オクタデシル基、オクチル
基、フェニル基等が結合した化学結合型シリカゲル;ポ
リスチレン系ポーラスポリマーゲル等を挙げることがで
き、移動相としては、例えば、含水メタノール、含水ア
セトニトリル等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を使用す
ることができる。
【0014】本発明のTKR2993産生能を有する微生物
は、TKR2993を菌体内または菌体外に産生する。したが
って、本発明の微生物は、生きたまま必要に応じてTKR2
993の産生に適した栄養培地と共に使用すれば、農園芸
用薬剤の有効成分として用いることが可能である。さら
に、本発明のTKR2993産生能を有する微生物を公知の殺
菌方法、例えば、加熱殺菌やエチレンオキサイドガス殺
菌、紫外線殺菌を行なった場合、その処理物は微生物と
しての増殖能を失ってはいるが、TKR2993を処理菌体内
に保持している。したがって、TKR2993産生能を有する
微生物および/またはその処理物は、植物の真菌性疾患
の予防または治療を目的とした農園芸用薬剤の有効成分
として用いることが可能である。
【0015】本発明のTKR2993は、そのまま、または、
その薬理学的に許容される塩として医薬に使用すること
ができる。上記塩としては薬理学的に許容されるもので
あれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、り
ん酸、ふっ化水素酸、臭化水素酸等の鉱酸の塩;ぎ酸、
酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン
酸、こはく酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、
ベンゼンスルホン 酸、トルエンスルホン酸、ナフタレ
ンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩;
ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属等の塩等を挙げることができる。
本発明のTKR2993またはその薬理学的に許容される塩を
医薬として投与する場合、本発明のTKR2993またはその
薬理学的に許容される塩は、そのまま、または、医薬的
に許容される無毒かつ不活性の担体中に、例えば、0.1
〜99.5%、好ましくは0.5〜90%含有する医薬組成物と
して、ヒトを含む動物に投与される。上記担体として
は、例えば、固形、半固形若しくは液状の希釈剤、充填
剤またはその他の処方用の助剤等を挙げることができ、
これらは、1種以上を用いることができる。医薬組成物
は、投与単位形態で投与することが好ましく、自体公知
の方法により、その投与方法に適した剤型とすることが
でき、例えば、経口投与、組織内投与、局所投与(経皮
投与等)または経直腸的に投与することができる。経口
投与は、固形、粉末または液状の用量単位で行うことが
でき、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル
剤、ドロップ剤、舌下剤、その他の剤型等により行うこ
とができる。非経口投与は、例えば、溶液や懸濁剤等の
皮下、筋肉内または静脈内注射用の液状用量単位形態を
用いることによって行うことができる。これらのもの
は、本発明の TKR2993、またはその薬理学的に許容され
る塩の一定量を、例えば、水性や油性の媒体等の注射の
目的に適合する非毒性の液状担体に懸濁または溶解し、
ついで該懸濁液または溶液を滅菌することにより製造さ
れる。局所投与(経皮投与等)は、例えば、液、クリー
ム、粉末、ペースト、ゲル、軟膏剤等の外用製剤の形態
を用いることによって行うことができる。これらのもの
は、本発明の TKR2993、または、その薬理学的に許容さ
れる塩の一定量を、外用製剤の目的に適合する香料、着
色料、充填剤、界面活性剤、保湿剤、皮膚軟化剤、ゲル
化剤、担体、保存剤、安定剤等のうちの一種以上と組み
合わせることにより製造される。直腸投与は、本発明の
TKR2993、または、その薬理学的に許容される塩の一定
量を、例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル等の高
級エステル類、ポリエチレングリコール、カカオ脂、こ
れらの混合物等の低融点の固体に混入した座剤等を用い
て行うことができる。
【0016】本発明のTKR2993またはその薬理学的に許
容される塩を医薬として投与する場合、抗真菌剤として
の用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気
の性質と程度等を考慮した上で調整することが望ましい
が、通常は、ヒトについては、成人に対して本発明の有
効成分量として、一日当たり、10〜2000 mgの範囲であ
り、この範囲において重篤な副作用なしに所望の薬効が
得られる。一日数回に分割して投与することもできる。
【0017】また、本発明のTKR2993は、そのまま、ま
たは、その塩として農園芸用薬剤の有効成分として使用
することができる。さらに、上記のごとく、本発明のTK
R2993産生能を有する微生物および/またはその処理物
も農園芸用薬剤の有効成分として使用することができ
る。なお、本発明の農園芸用薬剤には、上記有効成分か
ら選択される少なくとも1種の成分が含有されていれば
よく、また、他の有効成分が含有されていてもよい。他
の有効成分としては、例えば、特開平4−45792、
特開平9−25286、特開平9−249680、WO95
/18147、WO96/28456、WO97/26367、WO97/34012、WO98/2
1196、WO98/23767、WO98/56755およびPCT/JP98/05797各
号に記載された抗生物質または抗生物質産生能を有する
微生物もしくはその処理物あるいはWO99/1289号記載の
化合物が挙げられる。なお、これらの抗生物質、抗生物
質産生能を有する微生物もしくはその処理物または上記
化合物は、それら単独でも農園芸用薬剤の有効成分とし
て使用できる。
【0018】本発明における農園芸用薬剤は、上記有効
成分をそのまま使用することもできるが、通常は、製剤
補助剤とともに、粉剤、水和剤、粒剤、乳剤などの種々
の剤形の製剤として使用する。この際、製剤中に、1種
または2種以上の有効成分が0.1〜95重量%、好ま
しくは0.5〜90重量%、さらに好ましくは2〜70
重量%含まれるようする。製剤補助剤として使用する担
体、希釈剤、界面活性剤の例としては、固体担体とし
て、タルク、カオリン、ベントナイト、珪藻土、ホワイ
トカーボン、クレーなど、液体希釈剤として、水、キシ
レン、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シ
クロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、N−メチルピロリドンアルコールなどが挙げ
られ、界面活性剤は、その効果により使い分けるのがよ
く、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリー
ルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレ
ートなど、分散剤として、リグニンスルホン酸塩、ジブ
チルナフタリンスルホン酸塩など、潤滑剤として、アル
キルスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩など
を挙げることができる。
【0019】上記製剤には、そのまま使用するものと、
水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものとがあ
る。希釈して使用する時の本発明化合物濃度は0.00
1〜1.0%の範囲が好ましい。また、本発明の化合物
の使用量は、畑、田、果樹園、温室などの農園芸用地1
ha当り、5〜5000g、好ましくは5〜500g、
さらに好ましくは50〜500gである。これらの使用
濃度および使用量は剤形、使用期間、使用方法、使用場
所、対象作物等によっても異なるため、上記の範囲に限
定されるものではない。なお、本発明における農園芸用
薬剤は、他の農園芸用薬剤、例えば、殺菌剤、殺虫剤、
殺ダニ剤、除草剤などと組み合わせて使用することもで
きる。
【0020】
【実施例】以下の実施例により、本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるも
のではない。 実施例1 TKR2993株(FERM P-17365)の斜面培養から一白金耳
を、100mlの液体培地(ディフコイーストナイトロジェ
ンベース 0.67%(w/v)、グルコース 2.0%(w/
v))を入れた500ml容の三角フラスコに接種し、25℃で
3日間振とうし、種培養液を得た。この種培養液1.0mlを
上記液体培地140mlを入れた500ml容の三角フラスコ5本
に接種し、25℃、10日間振とう培養(振とう220rpm)を
行った。このようにして得た培養液を遠心分離し、上澄
液と菌体とに分離した。得られた菌体にメタノール500m
lを加えて、充分混合して抽出操作をした後、減圧濃縮
を行った。得られた残渣に水とブタノールを300mlずつ
加え、充分混合して、ブタノール抽出操作 を行った。
この抽出液を減圧濃縮することによって得られた残渣に
メタノールを加え、溶解した。このメタノール溶解液を
減圧濃縮して得た残渣に、水と酢酸エチルを300mlずつ
加え、充分混合して、酢酸エチル洗浄操作 を行った。
この水層を減圧濃縮することにより、残渣489mg を得
た。これを6mlの50%メタノールに溶解し、水で平衡化
した YMC-GEL ODS-A 60-230/70(ワイエムシー社製)カ
ラム(100 ml)に付し、50%メタノールで洗浄後、80%
メタノールで溶出することにより、活性画分を得た。こ
の画分を減圧濃縮することにより、残渣110mgを得た。
これをメタノール0.8mlに溶解し、高速液体クロマトグ
ラフィー に付し、活性画分を得た。この画分を減圧濃
縮することにより、残渣77mg を得た。なお、高速液
体クロマトグラフィーの条件は下記によった。 装置:LC8A(島津製作所社製) カラム:PEGASIL C8(2.0cm×25cm)(センシュー科学
社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む45%(v/v)ア
セトニトリル/水 これをメタノール2.8mlに溶解し、高速液体クロマトグ
ラフィー に付し、活性画分を得た。この画分を減圧濃
縮することにより、TKR2993の粗精製物36.2mg を得た。
なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によっ
た。 装置:LC8A(島津製作所社製) カラム:PEGASIL C8(2.0cm×25cm)(センシュー科学
社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む40%(v/v)ア
セトニトリル/水 これをメタノール1.2mlに溶解し、再度、高速液体クロ
マトグラフィー に付し、活性画分を得た。この画分を
減圧濃縮することにより、 TKR2993の精製物15.7mg を
白色粉末として得た。なお、再度の高速液体クロマトグ
ラフィーの条件は下記によった。 装置:LC8A(島津製作所社製) カラム:PEGASIL C8(2.0cm×25cm)(センシュー科学
社製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む40%(v/v)ア
セトニトリル/水
【0021】実施例2 実施例1で得られたTKR2993の理化学的性質を以下のと
おり測定した。質量分析には、JMS-DX302型質量分析装
置(日本電子社製)を用いた。1H-NMRスペクトル(重メ
タノール中、標準物質:テトラメチルシラン)、および
13C-NMRスペクトル(重メタノール中、標準物質:重メ
タノール)の測定には、JNM-A500核磁気共鳴装置(日本
電子社製)を用いた。紫外線吸収スペクトル分析(メタ
ノール中)には、UV-250型自記分光光度計(島津製作所
社製)を用いた。赤外線吸収スペクトル分析(KBr法)
には、270-30型赤外分光光度計(日立製作所社製)を用
いた。 (1)質量分析 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、
質量分析によるFAB-MS測定でm/z 1410 [M+H]+であるこ
とが判明した。 (2)炭素数、窒素数 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、
1H-NMRスペクトル測定、および13C-NMRスペクトル測定
およびその解析により、炭素数72であり、窒素数14
であることが判った。その1H-NMRスペクトルを図3に、
13C-NMRスペクトルを図4に示す。
【0022】(3)紫外線吸収スペクトル 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物の、
メタノール中における紫外線吸収スペクトルは、図1に
示すように、末端吸収を示すことが判った。 (4)赤外線吸収スペクトル 高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分
を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物の、
KBr 法による赤外線スペクトル測定結果は、下記の通り
である。 IR(KBr)(cm-1):3440、2960、1640、1470、1210、8
40、800、720。 その赤外線吸収スペクトルを図2に示す。また、本物質
の各種溶媒に対する溶解性は、メタノールに可溶、ヘキ
サン、クロロホルム、水には難溶であった。上記分析結
果により、高速液体クロマトグラフィーに付し、得られ
た活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末
精製物は、TKR2993であることが判明した。上記TKR2993
をLC-10A型高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作
所社製)を用いた逆相分配高速液体クロマトグラフィー
(HPLC)による分析に供した。なお、高速液体クロマト
グラフィーの条件は下記によった。 カラム:CAPCELL PAK C18(6mm×150mm)(資生堂社
製) 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む50%(v/v)ア
セトニトリル/水 カラム温度:40℃ 検出UV波長:220nm その結果、上記TKR2993は図5に示す位置に溶出される
ことが明らかになった。
【0023】実施例3 実施例1で得られたTKR2993の生物学的性質を以下のと
おり測定した。得られたTKR2993を使用して各種微生物
に対する抗菌スペクトルを調べた。測定は、液体培地希
釈法により、菌の増殖をほぼ完全に阻止した濃度を最小
生育阻害濃度(μg/ml)として求めた。結果を表2に示
した。表中、YNBGは、イーストナイトロジェンベース
(ディフコ社製)0.67%、グルコース1.0%を含有する
培地を表す。
【0024】
【表2】 _______________________________________________________________________ 検定菌 培地 最小生育阻止濃度(μg/ml) _______________________________________________________________________カンシ゛タ゛ ・アルヒ゛カンス TIMM0136 YNBG 12.5 カンシ゛タ゛ ・ケフィール TIMM0301 YNBG 100 _______________________________________________________________________
【0025】表2の結果から、本発明の抗真菌性物質TK
R2993は、カンジダ・アルビカンス等の病原性真菌に対
して抗菌活性を有することが判明した。また、得られた
TKR2993を、ICR系マウスに50mg/kgを腹腔内投与した
が、毒性は認められなかった。
【0026】
【発明の効果】本発明により、ヒト、動物および植物の
真菌性疾患の予防剤または治療剤として有用である抗真
菌性物質TKR2993およびその製造方法を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 抗真菌性物質TKR2993の紫外線吸収スペクト
ルを示す図である。横軸は波長(nm)を示す。
【図2】 抗真菌性物質TKR2993の赤外線吸収スペクト
ルを示す図である。横軸は波数(cm-1)を示す。
【図3】 抗真菌性物質TKR2993 の1H-NMRスペクトルを
示す図である。横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
【図4】 抗真菌性物質TKR2993 の13C-NMRスペクトル
を示す図である。横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
【図5】 抗真菌性物質TKR2993 のHPLCでの溶出位置を
示す図である。縦軸は相対紫外吸収強度を示し、横軸は
保持時間(分)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大西 佳美 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4B064 AH19 BA10 BE09 BG01 BG09 BH02 BH04 BH05 BH06 BH10 BH20 CA05 DA03 DA04 DA12 4B065 AA58X AC14 BA22 CA02 CA44 4C087 AA01 AA02 AA04 AA10 BC04 CA22 CA28 CA38 CA45 MA01 NA14 ZA90 ZB35 ZC61 4H055 AA01 AA02 AA03 AB29 AC62 AD20 AD32 BA50 CA40 DA10 DA79 DA88 DA89 DA91

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)、(2)、(3)、(4)、
    (5)および(6)の理化学的性質を有することを特徴
    とする抗生物質TKR2993またはその塩: 質量分析:FAB-MS m/z 1410 [M+H]+; (2)炭素数:72、窒素数:14; (3)紫外線吸収スペクトル(メタノール中):末端吸
    収を示す; (4)赤外線吸収スペクトル(KBr 法):主要な吸収波
    数(cm-1)は下記の通り、3440、2960、1640、1470、12
    10、840、800、720である; (5)溶解性:メタノールに可溶。ヘキサン、クロロホ
    ルム、水に難溶である; (6)アミノ酸分析(ニンヒドリン反応により検出):
    スレオニン、アラニン、バリン、ロイシンおよびプロリ
    ンが検出される。
  2. 【請求項2】 シリンドロカルポン(Cylindrocarpon)
    属に属する菌株であって、抗生物質TKR2993産生能を有
    する菌株を培養し、その培養物から抗生物質TKR2993を
    単離することを特徴とする抗生物質TKR2993の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 シリンドロカルポン(Cylindrocarpon)
    属にする抗生物質TKR2993産生能を有する微生物。
  4. 【請求項4】 シリンドロカルポン・エスピー(Cylind
    rocarpon sp.) TKR2993(FERM P-17365)。
  5. 【請求項5】 請求項3または4記載の微生物の処理
    物。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の抗生物質TKR2293および
    その塩、請求項3〜4記載の微生物ならびに請求項5記
    載の処理物からなる群から選択される少なくとも1種の
    有効成分を含有することを特徴とする抗真菌剤。
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