JP4132665B2 - 抗生物質tkr2999、製造方法及び微生物 - Google Patents
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Description
本発明は、真菌感染症の治療剤として有用な抗生物質TKR2999及びその製造方法並びにこれを産生する微生物に関する。
背景技術
真菌は、ヒト、動物、植物等に感染して種々の疾病を引き起こすことが知られている。例えば、ヒトの皮膚、口腔等に表在性真菌症を起こし、内臓、脳等に全身性真菌症を起こし、ペット、家畜等の動物に対しても同様の感染症を起こす。更に、果樹、野菜等の植物に対しても種々の病害を起こす。
このうち、ヒトに感染して、全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとしては、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、アスペルギルス(Aspergillus)等が知られ、表在性真菌症では、皮膚、口腔、膣等に感染するカンジダ、手足の皮膚に感染する白癬菌等が主なものと考えられている。生活環境中にはこれら以外にも多様な真菌が存在し、動植物の汚染を引き起こす原因と考えられている。
このような真菌による感染症、汚染に対する治療、防御の目的に使用可能である抗真菌剤は、現在のところ、非常に少数のものが知られているに過ぎない。このうち、特にヒトを始めとする動物の全身性感染症に対する治療剤としては、アンホテリシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール等を挙げることができる。しかし、これらのものは、効力、毒性、抗菌スペクトル等の点で問題があり、治療剤としては充分なものではなかった。
本発明の目的は、上述の現状に鑑み、真菌感染症の治療剤として有用な新規抗生物質を提供するところにある。
本発明者らは新規な抗生物質の探索を目的として、多数の微生物を自然界より分離し、その産生する抗生物質を単離し、生物学的性質を調べたところ、不完全糸状菌網に含まれる微生物の培養物中にカンジダ・アルピカンス、カンジダ・ケフィール、クリプトコッカス・ネオホルマンス、アスペルギルス・フミガタス等の病原性真菌に対して抗菌活性を示す抗生物質が存在していることを見いだした。その後、本発明者らは、この抗生物質を単離し、その理化学的性質を調べた結果、特有の理化学的性質を有する文献未記載の新規物質であることを確認し、この抗生物質をTKR2999と命名した。本発明は上記抗生物質TKR2999及びその製造方法を提供するものである。
以下に本発明を詳述する。
発明の開示
上記抗生物質TKR2999は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の理化学的性質を有する。
(1)FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z971[M+H]+のピークを有する
(2)分子式が、C44H78N10O14で表され、高分解能FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z971.5776[M+H]+である
(3)紫外線吸収スペクトル(メタノール中)が、末端吸収を示す
(4)赤外線吸収スペクトル(KBr法):主要な吸収波数(cm−1)が、3320、2920、1680、1540、1210、1140、840、800、720である
(5)ニンヒドリン反応によるアミノ酸分析において,アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グリシン、アラニン、β−アラニン及びオルニチンが検出される
(6)溶解性は、メタノールに可溶であり、ヘキサン、クロロホルム及び水に難溶である
上記TKR2999は、また、図3に示す1H−NMRスペクトル、図4に示す13C−NMRスペクトルを有し、逆相分配高速液体クロマトグラフィーにおいて図5に示す位置に溶出される特性を有する。
上記TKR2999は、不完全糸状菌網に属し、上記TKR2999を産生する菌株を培養し、その後、上記菌株の培養物から単離することにより製造することができる。
本発明で使用される上記菌株としては、上記TKR2999を産生する菌株であれば特に限定されるものではない。本物質の生産に用いられる菌株としては、例えば、不完全糸状菌網に含まれる糸状菌TKR2999株(以下単に「TKR2999株」という)等を挙げることができる。
上記TKR2999株は、文献未記載の新菌株であって、本発明者らによって初めて分離同定されたものであり、TKR2999を有利に産生する特性を有するものである。以下、上記TKR2999株の菌学的性質を詳細に説明する。
上記TKR2999株は、各種培地におけるコロニー(以下「集落」ともいう)の色調が、表1に示す通りである。なお、表中の色調は、日本工業規格JIS Z 8102(1985年)による色名を基準とし、培地に接種後、25℃で培養し、14日後に観察した結果によって示したものである。
上記TKR2999株は、麦芽エキス寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地、サブロー寒天培地等での生育は遅く、そのコロニーの表面はビロード状で、中心部は密な硬い菌糸体となって盛り上がる。TKR2999株の分生子は、単細胞の、表面が平滑な円筒形で、その両端は、丸みをおびている。又、その大きさは、3〜8×1.5〜2.5μmである。上記の培地上での分生子形成は良好であるが、分生子柄からの分生子形成様式は不明であった。
上記TKR2999株の菌学的性質のうち生理学的性質は、下記に示す通りである。
生育温度範囲:生育可能温度範囲が、10〜30℃であり、生育最適温度が、25℃付近である。
生育pH範囲:生育可能pH範囲が、pH3〜pH9であり、生育最適pHが、pH5である。
上述の菌学的性質を有する菌種を、ジョセフ・シー・ギルマン(JosephC.Gilman)著、ア・マニュアル・オブ・ソイル・ファンジャイ(Amanual of soilfungi)、コンスタブル・アンド・カンパニー・リミテッド(Constable and company Ltd)(1959年)等の文献に記載された不完全糸状菌網の菌種について検索を行ったが、TKR2999株の分生子形成様式が不明であることにより、属の同定は行えなかった。
しかしながら、不完全糸状菌網に属する菌株であって、TKR2999の産生能を有するものについては、これまで報告がなされたことはない。そこで本発明者らはこれを新菌株とし、不完全糸状菌網に含まれる糸状菌TKR2999株と命名し、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−0046))に、寄託番号FERM BP−6524(原寄託日;平成9年11月21日、国際寄託への移管請求日;平成10年9月24日)として寄託した。
本発明においては、上記TKR2999株の他に、TKR2999株の自然的又は人工的変異株、その他の不完全糸状菌網属に属する菌種等であって、TKR2999の産生能を有する微生物を使用することができる。
本発明においては、TKR2999は、上記TKR2999を産生する菌株を、栄養源含有培地に接種し、培養することによって製造される。上記栄養源のうち、炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、サッカロース、澱粉、デキストリン、グリセリン、糖蜜、水飴、油脂類、有機酸等を挙げることができる。
上記栄養源のうち、窒素源としては、例えば大豆粉、綿実粉、コーンスチープリカー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、胚芽、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機窒素化合物、無機窒素化合物等を挙げることができる。上記栄養源のうち、塩類としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、りん酸塩等の無機塩類を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で使用されてもよく、適宜組み合わせて使用されてもよい。
上記栄養源含有培地には、更に必要に応じて、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の重金属塩;ビオチン、ビタミンB1等のビタミン類;その他、菌の生育を助け、TKR2999の産生を促進する有機物、無機物等を適宜添加することができる。
上記栄養源含有倍地には、上記栄養源の他に、更に必要に応じて、シリコーンオイル、ポリアルキレングリコールエーテル等の消泡剤、界面活性剤等を添加することができる。
上記TKR2999を産生する菌株を、上記栄養源含有培地で培養するに際しては、抗生物質の産生を微生物の培養によって行う際に一般的に使用される方法を採用することができるが、液体培養法、中でも振とう又は深部通気攪拌培養法を好適に使用することができる。
上記培養は、15〜25℃で行うことが好ましく、培地のpHは、通常pH3〜8であるがpH5付近であることが好ましい。培養期間は、通常6〜15日で充分な産生量を得ることができる。
上述の培養方法によって、TKR2999は、培養液及び菌体に含有されて培養物中に蓄積される。本発明においては、培養物中に蓄積されたTKR2999は、これら抗真菌性物質の理化学的性質を利用して培養物中から分離した後、必要に応じて更に精製し、取得することができる。
上記分離は、培養物全体を、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ブタノール、メチルイソブチルケトン等の非親水性有機溶媒で抽出することにより行うことができる。また、培養物を濾過又は遠心分離によって培養液と菌体とに分離した後、培養液、菌体のそれぞれから分離することもできる。
上記培養液からTKR2999を分離するには、上記非親水性有機溶媒で抽出する方法を採用することもでき、また、培養液を吸着性の担体に接触させ、培養液中のTKR2999を担体に吸着させた後、溶媒で溶出する方法を採用することもできる。
上記担体としては、例えば、活性炭、粉末セルロース、吸着性樹脂等を挙げることができる。上記溶媒としては、担体の種類、性質等によって適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、含水アセトン、含水アルコール類等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を適宜組み合わせたもの等を挙げることができる。上記菌体からTKR2999を分離するには、アセトン等の親水性有機溶媒で抽出する方法を採用することができる。
本発明においては、このようにして培養物中から分離されたTKR2999の粗抽出物を、必要に応じて、更に精製する工程に付することができる。上記精製は、脂溶性抗生物質の分離、精製に通常使用される方法によって行うことができ、このような方法としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、吸着性樹脂等の担体を用いるカラムクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等を挙げることができる。シリカゲルを担体として用いるカラムクロマトグラフィー法を採用する場合は、溶出溶媒としては、例えば、クロロホルム、酢酸エチル、メタノール、アセトン、水等を挙げることができ、これらは2種以上を併用することができる。
上記高速液体クロマトグラフィー法を採用する場合は、担体としては、例えば、オクタデシル基、オクチル基、フェニル基等が結合した化学結合型シリカゲル;ポリスチレン系ポーラスポリマーゲル等を挙げることができ、移動相としては、例えば、含水メタノール、含水アセトニトリル等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を使用することができる。
本発明のTKR2999は、そのまま、又は、その薬理学的に許容される塩として医薬に使用することができる。上記塩としては薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、ふっ化水素酸、臭化水素酸等の鉱酸の塩;ぎ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン酸、こはく酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の塩等を挙げることができる。
本発明のTKR2999、又は、その薬理学的に許容される塩を医薬として投与する場合、本発明のTKR2999、又は、その薬理学的に許容される塩は、そのまま、又は、医薬的に許容される無毒かつ不活性の担体中に、例えば、0.1〜99.5%、好ましくは0.5〜90%含有する医薬組成物として、ヒトを含む動物に投与される。
上記担体としては、例えば、固形、半固形若しくは液状の希釈剤、充填剤又はその他の処方用の助剤等を挙げることができ、これらは、1種以上を用いることができる。
上記医薬組成物は、投与単位形態で投与することが好ましく、経口投与、組織内投与、局所投与(経皮投与等)又は経直腸的に投与することができる。上記医薬組成物は、これらの投与方法に適した剤型で投与されることは当然である。
本発明のTKR2999、又は、その薬理学的に許容される塩を医薬として投与する場合、抗真菌剤としての用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で調整することが望ましいが、通常は、ヒトについては、成人に対して本発明の有効成分量として、1日当たり、10〜2000mgの範囲である。上記範囲未満の用量で足りる場合もあるが、逆に上記範囲を超える用量を必要とする場合もある。多量に投与するときは、1日数回に分割して投与することが望ましい。
上記経口投与は、固形、粉末又は液状の用量単位で行うことができ、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、ドロップ剤、舌下剤、その他の剤型等により行うことができる。
上記非経口投与は、例えば、溶液や懸濁剤等の皮下、筋肉内又は静脈内注射用の液状用量単位形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本発明のTKR2999、又はその薬理学的に許容される塩の一定量を、例えば、水性や油性の媒体等の注射の目的に適合する非毒性の液状担体に懸濁又は溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌することにより製造される。
上記局所投与(経皮投与等)は、例えば、液、クリーム、粉末、ペースト、ゲル、軟膏剤等の外用製剤の形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本発明のTKR2999、又は、その薬理学的に許容される塩の一定量を、外用製剤の目的に適合する香料、着色料、充填剤、界面活性剤、保湿剤、皮膚軟化剤、ゲル化剤、担体、保存剤、安定剤等のうちの1種以上と組み合わせることにより製造される。
直腸投与は、本発明のTKR2999、又は、その薬理学的に許容される塩の一定量を、例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル等の高級エステル類、ポリエチレングリコール、カカオ脂、これらの混合物等の低融点の固体に混入した座剤等を用いて行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
TKR2999株(FERM BP−6524)の斜面培養から一白金耳を、100mlの液体培地(ディフコイーストナイトロジェンベース 0.67%(w/v)、グルコース2.0%(w/v))を入れた500ml容の三角フラスコに接種し、25℃で10日間振とうし、種培養液を得た。この種培養液1.0mlを上記液体培地120mlを入れた500ml容の三角フラスコ26本に接種し、25℃、12日間振とう培養(振とう220rpm)を行った。このようにして得た培養液を遠心分離し、上澄み液と菌体とに分離した。
得られた菌体にメタノール1Lを加えて充分混合して抽出操作をした後、減圧濃縮を行った。得られた残渣に水とブタノールを300mlずつ加え、充分混合して、ブタノール抽出操作を行った。この抽出液を減圧濃縮することにより、残渣362mgを得た。
これをメタノール2mlに溶解し、高速液体クロマトグラフィーに付し、活性画分を得た。この両分を減圧濃縮することにより、TKR2999の精製物1.2mgを白色粉末として得た。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によった。
装置:LC8A(島津製作所社製)
カラム:YMC pack C18(2.0cm×25cm)(ワイエムシー社製)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む60%(v/v)アセトニトリル/水
理化学的性質
質量分析には、JMS−DX302型質量分析装置(日本電子社製)を用いた。1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホキシド中、標準物質:重ジメチルスルホキシド)、及び13C−NMRスペクトル(重ジメチルスルホキシド中、標準物質:重ジメチルスルホキシド)の測定には、JNM−A500核磁気共鳴装置(日本電子社製)を用いた。紫外線吸収スペクトル分析(メタノール中)には、UV−250型自記分光光度計(島津製作所社製)を用いた。赤外線吸収スペクトル分析(KBr法)には、270−30型赤外分光光度計(日立製作所社製)を用いた。以下にTKR2999物質の理化学的性質を述べる。
(1)質量分析及び分子式の決定
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、質量分析によるFAB−MS測定で、m/z971[M+H]+であることが判明した。さらに、高分解能FAB−MS測定を行ったところ、m/z971.5776[M+H]+が観測され、その結果よりTKR2999の分子式をC44H78N10O14(計算値971.5699)と決定した。
(2)紫外線吸収スペクトル
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物の、メタノール中における紫外線吸収スペクトルは末端吸収を示した。
その紫外線吸収スペクトルを図1に示す。
(3)赤外線吸収スペクトル
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物の、KBr法による赤外線スペクトル測定結果は、下記の通りである。
IR(KBr)(cm−1):3320、2920、1680、1540、1210、1140、840、800、720。
その赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
(4) 1H−NMR及び13C−NMRスペクトル
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物を、1H−NMRスペクトル測定、及び13C−NMRスペクトル測定にかけた。
その1H−NMRスペクトルを図3に、13C−NMRスペクトルを図4に示す。
(5)アミノ酸分析
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物を、6N塩酸中で、110℃、24時間加水分解した。分解後、アミノ酸分析計にかけたところ、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グリシン及びアラニンが検出された。この他に、β−アラニン及びオルニチンが検出された。
(6)また、本物質の各種溶媒に対する溶解性は、メタノールに可溶、ヘキサン、クロロホルム及び水には難溶であった。
上記分析結果により、高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、TKR2999であることが判明した。
上記TKR2999をLC−10A型高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所社製)を用いた逆相分配高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析に供した。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によった。
カラム:CAPCELL PAK C18(6mm×150mm)(資生堂社製)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む50%(v/v)アセトニトリル/水
カラム温度:40℃
検出UV波長:220nm
その結果、上記TKR2999は図5に示す位置に溶出されることが明らかになった。
生物学的性質
得られたTKR2999を使用して各種微生物に対する抗菌スペクトルを調べた。測定は、液体培地希釈法により、菌の増殖をほぼ完全に阻止した濃度を最小生育阻害濃度(μg/ml)として求めた。結果を表2に示した。また、部分的に菌の増殖を阻害する最小濃度を半阻止濃度(μg/ml)として求め、併せて表2の括弧内に示した。表中、YNBGは、イーストナイトロジェンペース(ディフコ社製)0.67%、グルコース1.0%を含有する培地を表す。BHIは、ブレインハートインヒュージョンブイヨン(日水製薬社製)0.5%を含有する培地を表す。
表2の結果から、本発明の抗生物質TKR2999は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・ケフィール、クリプトコッカス・ネオホルマンス、アスペルギルス・フミガタス等の病原性真菌に対して抗菌活性を有することが判明した。
また、得られたTKR2999を、ICR系マウスに50mg/kgを腹腔内投与したが、毒性は認められなかった。
産業上の利用可能性
本発明により、真菌症の治療剤等の臨床医薬として有用である抗生物質TKR2999及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、抗生物質TKR2999の紫外線吸収スペクトルを示す図である。縦軸は吸光度を示し、横軸は波長(nm)を示す。
図2は、抗生物質TKR2999の赤外線吸収スペクトルを示す図である。縦軸は透過率(%)を示し、横軸は波数(cm−1)を示す。
図3は、抗生物質TKR2999の1H−NMRスペクトルを示す図である。縦軸はシグナルの強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
図4は、抗生物質TKR2999の13C−NMRスペクトルを示す図である。縦軸はシグナルの強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
図5は、抗生物質TKR2999のHPLCでの溶出位置を示す図である。横軸は相対紫外吸収強度を示し、縦軸は保持時間(分)を示す。
Claims (3)
- 下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の理化学的性質を有することを特徴とする抗生物質TKR2999又はその薬理学的に許容される塩。
(1)FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z971[M+H]+である
(2)分子式が、C44H78N10O14で表され、高分解能FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z971.5776[M+H]+である
(3)紫外線吸収スペクトル(メタノール中)が、末端吸収を示す
(4)赤外線吸収スペクトル(KBr法):主要な吸収波数(cm−1)が、3320、2920、1680、1540、1210、1140、840、800、720である
(5)ニンヒドリン反応によるアミノ酸分析において、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グリシン、アラニン、β−アラニン及びオルニチンが検出される
(6)溶解性は、メタノールに可溶であり、ヘキサン、クロロホルム及び水に難溶である - 不完全糸状菌綱に含まれる菌株であって、請求項1記載の抗生物質TKR2999を産生する糸状菌TKR2999株(FERM BP−6524)、又はその自然的若しくは人工的変異株であって、かつ前記TKR2999の産出能を有する微生物を培養し、その後、前記菌株の培養物から目的物を単離することを特徴とする請求項1記載の抗生物質TKR2999の製造方法。
- 不完全糸状菌綱に含まれる微生物であって、請求項1記載の抗生物質TKR2999を産生することを特徴とする糸状菌TKR2999株(FERM BP−6524)、又はその自然的若しくは人工的変異株であって、かつ前記TKR2999の産出能を有する微生物。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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