JPH09209879A - 内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】複数の方向に燃料を噴射可能な少なくとも一つ
以上のオリフィスを備えた燃料噴射弁により、複数の気
筒に燃料を安定供給する多気筒の燃料噴射装置におい
て、燃料をできるだけ均等にかつ安定して各気筒に分配
できるようにする燃料供給装置および供給方法を提供す
ることにある。 【解決手段】内燃機関の燃料供給装置において、燃料噴
射弁は複数の方向に燃料を噴射可能な一つ以上のオリフ
ィスを備えており、吸気通路は、エンジンの各気筒へ分
岐して延びた複数の吸気分岐管を含んでおり、また、前
記燃料噴射弁の上流部には、気液分離板を配置し、前記
気液分離板により、前記燃料噴射弁の噴射領域が干渉し
ない上流部で、吸気分岐管の分岐部より下流にて前記燃
料と吸入空気とを合流させることにより、噴射燃料の巻
上げが防止できる。 【効果】エンジンにおける気筒間のＡ／Ｆ変動を小さく
することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、先端に複数の方向
に燃料を噴射可能な少なくとも一つ以上のオリフィスを
備えた燃料噴射弁を用いて、一個の燃料噴射弁で内燃機
関の複数の気筒に燃料を供給するようにした多気筒内燃
機関の燃料供給装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の多気筒内燃機関の燃料噴射方法と
して、各気筒毎に燃料噴射弁を持つものが一般的である
が、噴射弁自体のコストが高いため、各気筒毎に噴射弁
を取付け使用することは装置全体のコストも上昇させる
ことになる。

【０００３】この対策として、特開昭56−41452号公
報，特開昭59−39965号公報等に記載されたように、多
気筒内燃機関の吸気分岐管に対応して噴射方向が定めら
れた一つの噴射弁で複数の気筒に燃料を噴射する方法が
提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ように構成された燃料噴射装置により、発明者が実験的
に確認を行った結果、下記の課題があることを発見し
た。

【０００５】まず、実験に供試した吸気分岐管４の形状
を図２および図３に示す。図２は吸気系の従来例を一部
断面した正面図である。実験に供試したエンジンは３気
筒のため、吸気分岐管４も４ａ，４ｂ，４ｃと３方向に
分かれている。図３は、吸気系の従来例を一部断面した
側面図である。噴射弁６から６６ａの通り燃料が噴射さ
れ、吸気管の分岐部４ｄより先の吸気弁７近傍まで到達
する構成となっている。実験結果を、図６に示す。図６
は、エンジン回転数が２０００rpm の時の気筒毎に空燃
比Ａ／Ｆを示している。

【０００６】結果によれば、吸気管圧力にともない燃料
の分配特性が悪化していることが、Ａ／Ｆの変動幅ΔＡ
／Ｆの大きさでわかる。つまり、ΔＡ／Ｆの値が大きい
ほど、気筒間の燃料量に偏りがあるといえる。上記結果
では、２０００rpm ，−200mmＨｇにおいて、ΔＡ／Ｆ
＝３.３ と大きな値を示している。このことは、エンジ
ンの出力低下や排出ガスの有害成分の増加を招くことと
なる。

【０００７】本発明の目的は、複数の方向に燃料を噴射
可能な少なくとも一つ以上のオリフィスを備えた燃料噴
射弁により、複数の気筒に燃料を供給する多気筒内燃機
関の燃料噴射装置において、燃料をできるだけ均等にか
つ安定して各気筒に分配できるようにする燃料供給装置
および供給方法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的は、吸入空気の
量を制御する絞弁を備えた絞弁組立体と、前記絞弁組立
体に接続されると共に、エンジンの各気筒に空気を供給
する吸気通路と、前記吸気通路に取付けられた燃料噴射
弁とを備え、前記燃料噴射弁には複数の方向に燃料を噴
射可能な少なくとも一つ以上のオリフィスを備えてお
り、前記吸気通路は、前記エンジンの各気筒へ分岐して
延びた複数の吸気分岐管を含んでおり、前記吸気通路よ
り吸入される吸入空気は、前記燃料噴射弁の噴射方向に
対し略直角から導入するような構成の吸気分岐管を備え
た内燃機関の燃料噴射装置において、前記略直角方向の
吸入空気に対し、前記燃料噴射弁の燃料噴射領域よりも
上流部に、前記吸気分岐管の分岐部より下流で前記燃料
と前記吸入空気とを合流させるような通路構成となる部
材を設置するようにしたことにより達成される。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を説明す
る。まず、図１は、本発明が適用される燃料噴射装置の
システム構成図を示している。１はエアクリーナ、２は
吸入空気の量を制御する絞り弁を備えた絞弁組立体すな
わちスロットルボディであり、出口にはエンジン５の各
気筒に空気を分岐供給する複数の吸気分岐管４が接続さ
れている。６は吸気分岐管４に取付けられた電子制御式
の燃料噴射弁である。エンジン５の吸気側には吸気弁７
があり、吐出側に排気管８が設けられている。１０はコ
ントロールユニットであり、Ｏ₂ センサ１１，水温セン
サ１２，カム角センサ１３，圧力センサ１４，スロット
ルセンサ１５等の各出力を入力として、燃料噴射弁６，
イグニッションコイル９，ＩＳＣバルブ２１，燃料ポン
プ３２等に対して制御信号を出力する。２２はバッテリ
ー、２３はコントロールユニット１０に対するメインリ
レー、２４は燃料ポンプリレーである。３０は燃焼室で
あり、燃料は、燃料ポンプ３１により吸い出され、調圧
された後、燃料配管３３を経て燃料噴射弁６に至る。燃
料噴射弁６の適正な噴射量は、各種センサからの入力を
基にコントロールユニット１０により算出されて決定さ
れる。

【００１０】燃料噴射弁６は後述するように、複数の方
向に燃料を噴射可能な一つ以上のオリフィスを具備して
おり、エンジン５の各気筒に一本の噴射弁ではなく、一
本の噴射弁で各気筒へ、複数の分岐管の少なくとも２つ
に燃料を噴射すべく複数の噴射口を備えている。

【００１１】図４，図５は、本発明の一実施例になる燃
料噴射弁６のノズル近傍を示す図である。燃料噴射弁６
の本体は、燃料を本体の側部から導入するサイドフィー
ド型である、燃料噴射弁６に入った燃料は、電磁力によ
って上下動する可動弁６３及びノズル６４に設けられた
３個のオリフィス６５、即ち第１気筒用オリフィス６５
ａ，第２気筒用オリフィス６５ｂ，第３気筒用オリフィ
ス６５ｃによって計量，噴射される。

【００１２】ここで、図３に示した吸気系の従来例につ
いて、前記ΔＡ／Ｆの悪化要因について、原因分析のた
めにシミュレーションを行った結果を図７に示す。矢印
４ａ，４ｂは空気の流れを示している。６６ａは噴射弁
６から噴射された燃料を示している。図７より空気の流
れは、Ｌ字型の吸気分岐管４の底面にぶつかり、そのあ
と４ａの通り、上流へ逆流している。このことは、噴射
された燃料６６ａが、空気の流れ４ａにより吸気分岐管
の集合部に巻上げられていることを意味する。したがっ
て、特定気筒へ狙って噴射された燃料は、吸気分岐管の
集合部に戻されるため、他の気筒の吸気行程時に吸入さ
れることとなる。

【００１３】したがって、上記逆流を防止するために、
吸入空気を吸気分岐管４の底面に略垂直に当たることを
抑制する部材を設ける方法がある。一例を図８に示す。
吸気分岐管４の垂直方向の壁面は、４ｇに示すとおりな
めらかに水平方向へ形状を変えている。これにより、空
気の流れは４ａの通り上流への逆流は緩和されているも
のゼロではないため、多少の燃料６６ａの巻上げが残
る。この時、吸気分岐部４ｄは、４ｇの先端部４ｈとは
離れているため、巻上げられた燃料は、他の気筒に吸入
される。一方、上記問題を解消するために、前記４ｇの
形状をさらに延長そせ、吸気分岐部４ｄに接続させた場
合を図９に示す。この場合、４ｈ部が、空気の流れを４
ａのとおり水平方向へ変えるため、噴射燃料６６ａの方
向性に影響を与えないことがわかる。また、他の例とし
て、吸入空気が噴射燃料６６ａに対し直角にあたること
を防止するように配置した部材４ｉを設置したものを図
１０に示す。空気の流れは４ａの通り、部材４ｉに衝突
後上流に逆流するが、噴射燃料６６ａには影響を与えて
いない。したがって、燃料の分配を良好にすることがで
きる。図１１は、図１０に対し、空気通路面積４ｊを大
きくとったものである。これにより、エンジンへの流入
空気量を制限させることがなくなるため、出力低下を抑
制することができる。

【００１４】以上のシミュレーション結果をもとに、本
発明の実施例における吸気分岐管の平面図および側面図
を図１２に示す。吸気分岐管４に対し、噴射燃料は６６
ａとなる。吸入空気が噴射燃料６６ａに対し直角にあた
ることを防止するように配置した部材４ｉが設置され、
吸気分岐部４ｄに接続している。

【００１５】前記吸気分岐管４をもとに、効果を確認し
た実験結果を、図１３に示す。図１３は、エンジン回転
数が２０００rpm の時の気筒毎に空燃比Ａ／Ｆを示して
いる。

【００１６】結果によれば、吸気管圧力にともない燃料
の分配特性が図６の結果に対し改善していることがわか
る。つまり、ΔＡ／Ｆの値が、従来の３.３に対し、０.
４まで減少している。

【００１７】本発明によれば吸気行程中に燃料を噴射し
た場合、直角方向の流入空気に対し、燃料噴射弁の噴射
領域の上流部に、吸気分岐管の分岐部より後方で空気を
合流させるような通路構成となる仕切板を設置するよう
にしたことにより、燃料噴射弁の噴射口上流部に隔壁が
あるため、吸入空気の流れは吸気管底部に垂直に当たる
ことはなくスムースに吸気分岐部に向かうことにより噴
射弁より噴射された燃料は、空気の流れに阻害されるこ
となく吸気弁近傍まで到達する。これにより、燃料を均
等にかつ安定してエンジンの各気筒に分配できるように
する方法および構成を提供することができる。

【００１８】

【発明の効果】本発明によれば、複数の方向に燃料を噴
射可能な少なくとも一つ以上のオリフィスを備えた燃料
噴射弁により、複数の気筒に燃料を供給する多気筒内燃
機関の燃料噴射装置において、各気筒へ均一な燃料分配
を行い各気筒管のＡ／Ｆの差を少なくできる。これによ
り、エンジンの運転性向上および有害排気ガスの低減を
図り、また低コストな燃料噴射装置を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される燃料噴射装置のシステム構
成図である。

【図２】吸気系の従来例を一部断面した正面図である。

【図３】吸気系の従来例を一部断面した側面図である。

【図４】本発明の実施例における噴射弁のオリフィス部
の一例を示す縦断面図である。

【図５】本発明の実施例における噴射弁のオリフィス部
の一例を示す底面図である。

【図６】従来の吸気系における気筒毎のＡ／Ｆの実験結
果を示す図である。

【図７】従来の吸気系における空気の流れのシミュレー
ション結果を示す図である。

【図８】空気の流れのシミュレーション結果の一例を示
す図である。

【図９】空気の流れのシミュレーション結果の一例を示
す図である。

【図１０】空気の流れのシミュレーション結果の一例を
示す図である。

【図１１】空気の流れのシミュレーション結果の一例を
示す図である。

【図１２】本発明の実施例における吸気分岐管の平面図
および側面図である。

【図１３】本発明の吸気系における気筒毎のＡ／Ｆの実
験結果を示す図である。

【符号の説明】

１…エアクリーナ、２…スロットルボディ、３…コレク
タ、４…吸気分岐管、５…エンジン、６…燃料噴射弁、
７…吸気弁、８…排気管、１０…コントロールユニッ
ト、３２…燃料調圧弁、６５ａ…第１気筒用オリフィ
ス、６５ｂ…第２気筒用オリフィス、６５ｃ…第３気筒
用オリフィス、７０…吸気分岐壁、７１…気液分離板。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 七尾 勇一郎 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 田村 誠 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸入空気の量を制御する絞弁を備えた絞弁
   組立体と、前記絞弁組立体に接続されると共に、エンジ
   ンの各気筒に空気を供給する吸気通路と、前記吸気通路
   に取付けられた燃料噴射弁とを備え、 前記燃料噴射弁には複数の方向に燃料を噴射可能な少な
   くとも一つ以上のオリフィスを備えており、前記吸気通
   路は、前記エンジンの各気筒へ分岐して延びた複数の吸
   気分岐管を含んでおり、前記吸気通路より吸入される吸
   入空気は、前記燃料噴射弁の噴射方向に対し略直角から
   導入するような構成の吸気分岐管を備えた内燃機関の燃
   料噴射装置において、 前記略直角方向の吸入空気に対し、前記燃料噴射弁の燃
   料噴射領域よりも上流部に、前記吸気分岐管の分岐部よ
   り下流で前記燃料と前記吸入空気とを合流させるような
   通路構成となる部材を設置するようにしたことを特徴と
   する内燃機関の燃料供給装置。
2. 【請求項２】請求項１に記載の内燃機関の燃料供給装置
   において、前記複数の吸気分岐管は、前記燃料噴射弁の
   取付け位置から前記エンジンの各気筒までほぼ直線状に
   延びていることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。