JPH09207331A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電セラミックスの隔壁により隔てられた互
いに並行する複数のチャンネルを有し、前記チャンネル
の隔壁に形成された信号電極への電圧に応じて前記隔壁
を変形せしめて、チャンネル内に充填されているインク
をインク吐出口より選択的に突出せしめるインクジェッ
ト記録ヘッドに関するもので、隣接チャンネルの信号電
極間でインクの電極反応をなくすことができ、特に、電
極保護膜の形成を必要としない構成を提供する。 【解決手段】 インク吐出口５と反対側の前記チャンネ
ル８の他端部に複数のチャンネル８に共通してインクを
供給するインク供給口７を設け、そのインク供給口７の
形成された近傍を除く各チャンネルの隔壁に信号電極４
を形成し、前記チャンネル８を覆うように設けられたカ
バープレート３に形成されたビアホール１４を介して信
号電圧を信号電極４に印加する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、圧電セラミックス
の隔壁により隔てられた互いに並行する複数のチャンネ
ルを有し、前記チャンネルの隔壁に形成された信号電極
への印加電圧に応じて、前記隔壁を変形せしめ、その変
形にともなって前記チャンネル内に充填されているイン
クをそのチャンネルに連通したノズルより選択的に突出
せしめるインクジェット記録ヘッドに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来より、例えば特開昭６３−２５２７
５０号公報に開示のようにインク吐出原理として圧電素
子のせん断モード変形を利用したインクジェット記録装
置が考えられている。この構成は図４に示すように、大
きく圧電セラミックスのアクチュエータ部材１とノズル
プレート２とカバープレート３とプリント配線板６とか
ら構成されている。そのアクチュエータ部材１には、ダ
イヤモンドプレート等により切削加工された互いに並行
する複数のチャンネル８が形成されている。また、その
チャンネル８間の隔壁１０は溝深さ方向に分極処理が施
されている。

【０００３】それらのチャンネル８は同じ深さであり、
かつ平行で、チャンネル８の深さは図５に示すようにア
クチュエータ部材１の後端面１１近傍においては後端面
に近づくに従い、次第に浅くなっており、後端面１１付
近にはチャンネル浅溝１６が形成されている。そして、
各チャンネル８の両側面の上側半分には信号電極４がス
パッタリングや蒸着等により形成されている。またチャ
ンネル浅溝１６においても同様に側面及び底面に信号電
極４がスパッタリングや蒸着等によって形成されてい
る。これによりチャンネル８の両側面に形成された信号
電極４はチャンネル浅溝１６の底面に形成された信号電
極４によって電気的に接続されている。

【０００４】次に、カバープレート３は、セラミックス
材料または樹脂材料等から形成され、このカバープレー
ト３には、研削または切削加工等によって、それぞれの
チャンネル８に共通してインクを供給するインク供給口
７が形成されている。そして、アクチュエータ部材１の
チャンネル８の加工側の面とカバープレート３のインク
供給口７の加工側の面とをエポキシ系接着剤１２によっ
て接着する（図５）。

【０００５】このようにして、インクジェットヘッドに
はチャンネル溝の上面が覆われて横方向に同じ間隔を有
する複数のインク流路としてのチャンネル８が形成され
る。そのチャンネル８は長方形断面の細長い形状であ
り、全てのチャンネル内には共通のインク供給口７から
常時インクが充填されている。

【０００６】図４に示すように、アクチュエータ部材１
及びカバープレート３の端面に、各チャンネル８の位置
に対応した位置にノズル５が位置するようにノズルプレ
ート２が接着されている。このノズルプレート２はポリ
イミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポ
リエーテルスルホン、ポリカーボネイト等のプラスチッ
クによって形成されている。

【０００７】そして、アクチュエータ部材１のチャンネ
ル８と反対側の面には、プリント配線板６がエポキシ系
接着剤等によって接着されている。そのプリント配線板
６には各チャンネル８の位置に対応した位置に導電性パ
ターン９が形成されている。その導電性パターン９とチ
ャンネル浅溝１６の底面の信号電極４はワイヤーボンデ
ィング１３で接続されている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】この従来の構成ではカ
バープレート内のチャンネル隔壁を変形させ、インクを
突出させるのに必要とする部分だけでなく、チャンネル
後端部のプリント配線板と連結させるために蒸着による
信号電極を長く形成する必要があった。そのためインク
供給口の信号電極はインク供給口７内のインクを通じて
隣のチャンネルの信号電極とつながっており、この隣接
するチャンネルの信号電極間の電圧によりインク中に溶
解もしくは分散されている成分が電極反応により凝集や
分解を生じるため、信号電極の表面に絶縁膜となる電極
保護膜をつける必要性があった。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明のインクジェット
記録ヘッドは、インク吐出口と反対側のチャンネルの他
端部に複数のチャンネルに共通してインクを供給するイ
ンク供給口を設け、そのインク供給口の形成された近傍
を除く各チャンネルの隔壁に信号電極を形成したことを
特徴とするものであり、インクを介して隣のチャンネル
と近接する部分に信号電極を形成していないため、隣の
チャンネルの信号電極間で生じるインクの電極反応をな
くすことができ、特に、電極保護膜の形成を必要としな
いものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明の請求項１に記載の発明
は、圧電セラミックスの隔壁により隔てられた互いに並
行する複数のチャンネルを有し、前記チャンネルの隔壁
に形成された信号電極への電圧に応じて前記隔壁を変形
せしめ、その変形にともなって前記チャンネル内に充填
されているインクをそのチャンネルの一端に形成され、
チャンネルに連通したインク吐出口より選択的に突出せ
しめるインクジェット記録ヘッドであって、前記インク
吐出口と反対側の前記チャンネルの他端部に複数のチャ
ンネルに共通してインクを供給するインク供給口を設
け、そのインク供給口の形成された近傍を除く各チャン
ネルの隔壁に信号電極を形成したことを特徴とするもの
であり、インクの電極反応が生じるインク供給口近傍に
は、信号電極が形成されていないため、隣のチャンネル
の信号電極間でのインクの電極反応をなくすことがで
き、特に、電極保護膜の形成を必要としないものであ
る。

【００１１】本発明の請求項２に記載の発明は、各チャ
ンネルの隔壁に形成された信号電極への電圧の印加は前
記各チャンネルを覆うカバープレートを貫通するビアホ
ールを通じて行われることを特徴とする請求項１記載の
インクジェット記録ヘッドであり、簡単な構成により各
チャンネルの信号電極に信号電圧を印加できるものであ
る。 （実施の形態）図１乃至図３を参照して本発明の実施の
形態を説明する。なお、図４〜５で示した従来例と実質
的に同一な構成部品には同一符号を付している。

【００１２】まず、厚さ約１ｍｍの板状の圧電セラミッ
クスのアクチュエータ部材１の片面に、厚さが数十μｍ
の感光性のレジストフィルム１７を通常のホットローラ
ーラミネートなどの方法で形成し、その後前記レジスト
フィルム１７の上から、圧電セラミックスの部材１に、
ダイシングソーなどの切削手段により図３（ａ）に示す
ように最終的に必要とするチャンネル８の溝幅より２０
μｍ広い幅で、深さ方向が約２０μｍの浅溝１８を形成
する。この浅溝１８はカバープレート３のインク供給口
７の後端面まで同幅、同深さでノズルピッチ、ノズル数
に合わせて加工する。

【００１３】さらにダイシングソーなどの切削手段によ
り前記浅溝１８の中央に溝幅７０〜１００μｍ、深さ約
３００〜５００μｍのチャンネル８を形成する（図３の
ｂ）。このチャンネル８も同様にインク供給口７の後端
面まで加工する。このような加工を施した後、圧電セラ
ミックスのウエハーにメタルマスク等のマスキング手段
を接合して、カバープレート３のインク供給口７が位置
する部分の近傍以外の、前記チャンネル８の隔壁１０に
信号電極４が形成されるようにした後に、圧電セラミッ
クスのウエハーを真空蒸着装置内に、ある角度で傾けて
保持することで前記浅溝１８の残された部分及び前記チ
ャンネル隔壁１０の上部半分の領域の前記アクチュエー
タ部のみに信号電極４を形成する（図３のｃ）。

【００１４】次に、前記レジストフィルム１７をアセト
ンなどの溶剤を用いてリフトオフすることで前記各チャ
ンネル内壁に形成した信号電極４が、インク吐出のため
のチャンネル壁の駆動手段として機能することになる
（図３のｄ）。次に、アクチュエータ部材１に貼付され
るカバープレート３には、従来のＨＩＣ技術により図２
に示すように上下方向に貫通したビアホール１４を形成
する。ビアホール１４の配置はノズル数およびノズルピ
ッチにより異なるがチャンネル側壁面に蒸着により形成
された信号電極の１部分で連結できればよいが、望まし
くは隣接ノズルのビアホール１４はクロストーク等の影
響があるため避けた方がよい。またビアホール１４の穴
径は最大径でチャンネル溝幅＋１／２チャンネル側壁幅
で望ましくはチャンネル溝幅以下が良い。

【００１５】図２にてこのカバープレート３をアクチュ
エータ部材１へ貼付する様子を示す。前記アクチュエー
タ部材１のアクチュエータ側壁の頂部の突起領域に、エ
ポキシ系接着剤１２を数十μｍの厚さでスクリーン印刷
や転写方式で塗布する。一方、カバープレート３のチャ
ンネルと接合する面上のビアホール１４にチャンネル頂
部電極と連結させるための導電性接着剤１５をスクリー
ン印刷法により印刷塗布し、前記アクチュエータ部材１
と貼付する。

【００１６】このときビアホール１４をもつカバープレ
ート３をアクチュエータ部材１に位置合わせして貼付す
るとき、導電性接着剤１５が塗布されたビアホール１４
を、チャンネル内壁に形成された向い合った信号電極４
を橋渡しするように位置合わせした後に接合する。その
後、これら部材をオーブン中へ投入することで接着剤を
加熱硬化させる。

【００１７】以上のようにして形成したヘッド部材への
信号付与手段としては、前記カバー部材の上面にあるビ
アホールパッド部に、ピングリッドなどのコネクターで
電気接続することでインクを吐出させる。このようにし
て従来のようにインクに触れる信号電極の表面を覆うた
めにプラズマ−ＣＶＤなどの手段によりパッシベーショ
ン膜の形成手段を要することもなく、ワイヤーボンディ
ング等の装置も不要となることでコストも安く信頼性の
高いせん断モード型インクジェットヘッドを作ることが
できる。

【００１８】

【発明の効果】本発明のインクジェット記録ヘッドによ
れば、インクチャンネル内壁に形成した信号電極の表面
をインクから保護するために従来より必要としていた保
護膜を形成するための大がかりな装置を要することもな
く、さらにはヘッドの小型化にもなり、信頼性の高い長
寿命のインクジェット記録ヘッドが得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施の形態によるインクジェット記
録ヘッドのチャンネル長手方向断面図

【図２】同実施の形態によるインクジェット記録ヘッド
のチャンネル断面図

【図３】同実施の形態によるインクジェット記録ヘッド
の製造工程におけるチャンネル断面図

【図４】従来のせん断モード型インクジェット記録ヘッ
ドの分解斜視図

【図５】同従来のインクジェット記録ヘッドのチャンネ
ル長手方向断面図

【符号の説明】

１ アクチュエータ部材 ２ ノズルプレート ３ カバープレート ４ 信号電極 ５ ノズル ６ プリント配線板 ７ インク供給口 ８ チャンネル ９ 導電性パターン １０ アクチュエータ側壁（隔壁） １１ アクチュエータ部材後端面 １２ エポキシ系接着剤 １４ ビアホール

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】圧電セラミックスの隔壁により隔てられた
   互いに並行する複数のチャンネルを有し、前記チャンネ
   ルの隔壁に形成された信号電極への電圧に応じて前記隔
   壁を変形せしめ、その変形にともなって前記チャンネル
   内に充填されているインクをそのチャンネルの一端に形
   成され、チャンネルに連通したインク吐出口より選択的
   に突出せしめるインクジェット記録ヘッドであって、前
   記インク吐出口と反対側の前記チャンネルの他端部に複
   数のチャンネルに共通してインクを供給するインク供給
   口を設け、そのインク供給口の形成された近傍を除く各
   チャンネルの隔壁に信号電極を形成したことを特徴とす
   るインクジェット記録ヘッド。
2. 【請求項２】複数のチャンネルは、圧電セラミックス板
   の一方の面に切削加工により形成されており、その各チ
   ャンネルの隔壁に形成された信号電極への電圧の印加は
   前記各チャンネルを覆うカバープレートを貫通するビア
   ホールを通じて行われることを特徴とする請求項１記載
   のインクジェット記録ヘッド。