JPH09195926A - ラジアルプランジャポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 部品点数が少なく、構成部品に大きな応力の
作用しない構造により、駆動軸の周域に作動液が流入す
るのを防止する。製造コストの増大、構成部品の耐久性
の低下、装置の大型化等を招くことなく、駆動軸支持部
回りの潤滑性能を向上させる。 【解決手段】 駆動軸１１に偏心カム１５を一体に設
け、ハウジング６に複数個のプランジャ１８を放射状に
設ける。偏心カム１５の外周に補助リング３９を相対回
転可能に取り付け、各プランジャ１８をこの補助リング
３９を介して押圧する。補助リング３９とハウジング６
の間に、駆動軸１１を囲繞してハウジング６内を作動液
室４４と潤滑液室４５とに隔成するベローズ４１ａ，４
１ｂを配設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の燃料噴射
装置の燃料加圧用ポンプ等に用いられるラジアルプラン
ジャポンプに関し、とりわけ、ハウジング内の潤滑性能
を高めたラジアルプランジャポンプに関する。

【０００２】

【従来の技術】ラジアルプランジャポンプとして、駆動
軸に断面円形状の偏心カムが一体に設けられ、ハウジン
グ内の、この偏心カムの外周面に対向する位置に、複数
個のプランジャが放射方向に進退自在に設けられた構造
のものがある。このラジアルプランジャポンプは、駆動
軸の回転に伴って偏心カムが回転すると、これに対向す
る複数個のプランジャが偏心カムによって順次押されて
突出と後退を繰り返し、各プランジャが突出する際に吸
入通路から吸い入れられた作動液がそのプランジャの後
退時に吐出通路に送り出されるようになっている。

【０００３】ところで、この種のラジアルプランジャポ
ンプは、近年、自動車の燃料噴射装置の燃料加圧用ポン
プとして用いられるようになってきている。ところが、
ラジアルプランジャポンプをこのような用途で用いた場
合には、ガソリン等の低粘度の作動液が、プランジャと
シリンダ穴との摺動隙間等から駆動軸支持部の周域に漏
出し、その周域部にある軸受やシール部品の潤滑性能が
低下することが考えられる。

【０００４】そこで、従来ではこれに対処し得るラジア
ルプランジャポンプとして、例えば、実開平６−４３２
７４号公報に示されるようなものが案出されている。

【０００５】このラジアルプランジャポンプは、各プラ
ンジャの頭部にかしめ材を突設し、この各プランジャの
かしめ材とそれに対応するシリンダ穴の周縁部との間
に、ダイアフラムを液密的に配設し、この各ダイアフラ
ムによってプランジャ部分と分離された駆動軸支持部周
域の空間に所定粘度の潤滑液を充填して、駆動軸支持部
回りの軸受やオイルシールに作動液とは別に潤滑液を供
給するようにしている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のラジアルプランジャポンプの場合、各プランジャ毎
にかしめ材やダイヤフラムを取り付けなければならない
ため、部品点数が多くなって構造が複雑になり、その結
果、製造コストの増大や装置の大型化を招くという不具
合がある。

【０００７】また、上記従来のラジアルプランジャポン
プにおいては、ダイヤフラムを各プランジャとそれに対
応するシリンダ穴の周縁部との間に配設するようにして
いるため、そのダイヤフラムの径は充分に大きくするこ
とができず、そのため、ダイヤフラムに作用する応力が
大きくなってその耐久性の面において不利になることが
考えられる。

【０００８】そこで本発明は、部品点数が少なく、しか
も構成部品に大きな応力の作用することのない簡素な構
造により、駆動軸支持部の周域に作動液が流入するのを
確実に防止して、製造コストの増大、構成部品の耐久性
の低下、装置の大型化等の不具合を招くことなく、駆動
軸支持部回りの潤滑性能を確実に向上させることのでき
るラジアルプランジャポンプを提供しようとするもので
ある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は上述した課題を
解決するための手段として、ハウジング内に回転自在に
支持された駆動軸に断面円形状の偏心カムが固設される
一方で、前記ハウジグ内の前記偏心カムの外周面に対向
する位置に複数個のプランジャが放射方向に進退自在に
設けられ、前記複数個のプランジャが前記偏心カムの回
転により順次押圧されて吸入通路から吸い入れた作動液
を吐出通路に送り出すラジアルプランジャポンプにおい
て、前記偏心カムの外周に相対回転可能に補助リングを
嵌装し、この補助リングとハウジングの間に、駆動軸を
囲繞してハウジング内を作動液室と潤滑液室とに隔成す
る可撓性の隔成部材を設けた。補助リングは、偏心カム
に対して相対回転可能となっているため、駆動軸と共に
偏心カムが回転すると、自転をすることなく駆動軸回り
を公転する。この補助リングと隔成部材との協働により
駆動軸支持部の周域の潤滑液室が作動液室から完全に分
離されることとなる。

【００１０】また、前記隔成部材は補助リングの駆動軸
回りの公転に対して柔軟に追従できるようにベローズで
形成した。

【００１１】さらに、ベローズは、金属材料で形成すれ
ば耐久性が向上し、ゴム材料や樹脂材料で形成すれば低
コストでの製造が可能となる。

【００１２】

【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。

【００１３】この実施の形態は、自動車の燃料噴射装置
の燃料加圧用ポンプに、本発明にかかるラジアルプラン
ジャポンプ１を適用したもので、図１に示すように、燃
料タンク２から供給ポンプ３を介して低圧状態で供給さ
れたガソリン等の燃料（作動液）をこのラジアルプラン
ジャポンプ１によって所定の圧力に加圧してインジェク
ター４に供給し、その燃料をインジュクター４でエンジ
ンのシリンダ（図示せず。）内に噴射すると共に、余剰
燃料をインジェクター４からポンプ１の吸入通路５に戻
すようになっている。

【００１４】このラジアルプランジャポンプ１は、ハウ
ジング６が、シリンダブロックを兼ねる略円筒状のハウ
ジング本体７と、その前後の端面にボルト８によって結
合されるフロントカバー９とリヤカバー１０とから構成
され、このハウジング６にフロントカバー９側から挿通
された駆動軸１１がリヤカバー１０とフロントカバー９
とに夫々軸受１２，１３を介して支持されると共に、駆
動軸１１とフロントカバー９の間がオイルシール１４に
よって密閉されている。そして、ハウジング６内に収容
されている駆動軸１１の略中央部には、その中心が駆動
軸１１の回転中心に対して所定量オフセットした円形状
の偏心カム１５が一体に設けられ、駆動軸１１のハウジ
ング６から突出する側の端部にはエンジンのカムシャフ
ト（図示せず。）が結合されるようになっている。

【００１５】また、前記ハウジング本体７には、径方向
に沿うシリンダ孔１７が放射状に複数個設けられ、この
各シリンダ孔１７に、前記偏心カム１５方向にスプリン
グ付勢されたプランジャ１８が進退自在に収容されてい
る。尚、図中１９は、各シリンダ孔１７のハウジング６
外周側の端部を閉塞するためのプラグである。また、ハ
ウジング本体７には、図２，図３に示すように、各シリ
ンダ孔１７内に連通する接続ポート２０が設けられると
共に、この各接続ポート２０に連通する吸入ポート２１
と吐出ポート２２とが軸方向に沿って設けられている。
吸入ポート２１と吐出ポート２２は互いに対を成して同
一直線上に形成され、両ポート２１，２２の連接部に前
記接続ポート２０が接続されている。そして、前記両ポ
ート２１，２２には、吸入チェック弁２３と吐出チェッ
ク弁２４が夫々設けられていて、プランジャ１８の突出
する吸入時には、吐出チェック弁２４が閉じて吸入チェ
ック弁２３が開き、プランジャ１８の後退する吐出時に
は、逆に吸入チェック弁２３が閉じて吐出チェック２４
が開くようになっている。つまり、プランジャ１８が突
出するときには、吸入ポート２１の作動液が接続ポート
２０を通ってシリンダ孔１７内に吸い入れられ、その状
態からプランジャ１８が後退すると、そのシリンダ孔１
７内の作動液が同じ接続ポート２０を通って吐出ポート
２２に送り出される。また、すべての吸入ポート２１
は、ハウジング本体７のフロントカバー９側の端面に形
成された吸入側環状溝２５に連通しており、同様にすべ
ての吐出ポート２２は、ハウジング本体７のリヤカバー
１０側の端面に形成された吐出側環状溝２６に連通して
いる。これらの環状溝２５，２６はハウジング６内の吸
入通路５と吐出通路２７に夫々連通されている。

【００１６】図面において、２８，２９は、リヤカバー
１０に組み込まれた低圧レギュレータと高圧レギュレー
タであり、低圧レギュレータ２８は吸入通路５の途中に
介装されて吸入圧を設定低圧に維持し、高圧レギュレー
タ２９はインジェクター４からの戻り配管に接続されて
（図中、高圧レギェレータ２９の戻り配管接続口を符号
３０で示す。）インジェクター４の噴射圧を設定高圧に
維持するようになっている。これらのレギュレータ２
８，２９はいずれも通路の圧力が設定圧以上になると、
その通路内の作動液の一部をドレンさせる概略構成とな
っているが、図６に示すように、低圧レギュレータ２８
側のドレンポート３１は、戻し配管接続プラグ３２を通
して燃料タンク２に連通し、高圧レギュレータ２９側の
ドレンポート３３は吸入通路５に連通している。

【００１７】ここで、ハウジング６内の吸入通路５の形
状について簡単に説明すると、吸入通路５は、リヤカバ
ー１０に形成された吸入配管接続口３４から高圧レギュ
レータ２９方向に延び、この高圧レギュレータ２９の周
域の環状溝３５を介して向きを変え、ハウジング本体７
の端面の吸入側環状溝２５に連通している。

【００１８】一方、駆動軸１１に形成された前記偏心カ
ム１５の外周面には、メタル軸受３８を介して補助リン
グ３９が相対回転可能に嵌装されており、さらに、その
補助リング３９の外周面には、硬度が高く、摩擦係数の
小さい金属から成るシートカム４０が被着され、このシ
ートカム４０に、スプリング付勢された前記各プランジ
ャ１８の頭部が押し付けられるようになっている。そし
て、前記補助リング３９の軸方向両端には、駆動軸１１
の周域を覆う金属製のベローズ４１ａ，４１ｂの各一端
が夫々密閉状態で溶接されている。この各ベローズ４１
ａ，４１ｂの他端側は環状の取付リング４２，４３に夫
々同様に密閉状態で溶接されており、この各取付リング
４２，４３は、フロントカバー９とリヤカバー１０の各
内側凹部９ａ，１０ａに圧入固定されている。前記両ベ
ローズ４１ａ，４１ｂは、本発明における可撓性の隔成
部材を構成するもので、駆動軸１１を囲繞するその内部
空間には所定粘度の潤滑液が封入されている。つまり、
両ベローズ４１ａ，４１ｂは、ハウジング６の内部を、
プランジャ１８の摺動隙間等からの漏出作動液（燃料）
で満たされる作動液室４４と、潤滑液で満たされる潤滑
液室４５とに隔成している。

【００１９】尚、図６中、４６は、作動液室４４の作動
液を吸入通路５に戻すためのドレンポートであり、４７
は、吐出側環状溝２６に接続された安全弁である。この
安全弁４７は、そのドレン側が作動液室４４に接続さ
れ、吐出通路２７の吐出圧が設定圧以上に高まったとき
に、吐出通路２７の作動液の一部を作動液室４４を介し
て吸入通路５に戻すようになっている。また、３６は、
吐出側環状溝２６と吐出配管接続口３７の間に設けられ
た吐出圧センサである。

【００２０】以上の構成において、エンジンの始動に伴
って駆動軸１１が回転すると、駆動軸１１に一体に設け
られた偏心カム１５が回転し、これにより、補助リング
３９がベローズ４１ａ，４１ｂに自転を阻止された状態
で駆動軸１１回りを公転する。こうして補助リング３９
が公転すると、補助リング３９の外周のシートカム４０
が各プランジャ１８を順次押し上げ、それによってプラ
ンジャ１８が進退動作を繰り返して、ポンプ作用が連続
的に為されるようになる。このとき、燃料タンク２から
供給ポンプ３を介して吸入配管接続口３４に供給された
作動液（燃料）は、吸入通路５の途中において低圧レギ
ュレータ２８で設定低圧に調圧された後、高圧レギュレ
ータ２９の環状溝３５、ハウジング本体７の吸入側環状
溝２５、吸入ポート２１、吸入チェック弁２３、接続ポ
ート２０を順次通ってシリンダ孔１７に吸い入れられ、
ここでプランジャ１８によって加圧された後にシリンダ
孔１７から接続ポート２０、吐出チェック弁２４、吐出
ポート２２、吐出側環状溝２６、吐出通路２７を順次通
って吐出配管接続口３７からインジェクター４へと供給
される。そして、インジェクター４で使用された作動液
の余剰分は、高圧レギュレータ２９の戻し配管接続口３
０に入り、高圧レギュレータ２９からその外周の環状溝
３５を介して吸入通路５に戻される。

【００２１】このようにラジアルプランジャポンプ１の
運転が続けられると、プランジャ１８の摺動隙間等から
作動液がハウジング本体７の内部に漏出することとなる
が、このハウジング本体７の内部は、補助リング３９と
ベローズ４１ａ，４１ｂによって作動液室４４と潤滑液
室４５とに完全密閉状態で分離されているため、駆動軸
１１回りの軸受１２，１３やオイルシール１４部分に低
粘度の作動液が入り込むことがない。そして、潤滑液室
４５には所定粘度の潤滑液が充填されていて、軸受１
２，１３やオイルシール１４に常にこの潤滑液が行き渡
るようになっているため、軸受１２，１３やオイルシー
ル１４は初期の性能が長期間に渡って保証される。

【００２２】ここで、このラジアルプランジャポンプ１
においては、作動液室４４と潤滑液室４５を隔成する隔
成部材がベローズ４１ａ，４１ｂで構成され、しかも、
その軸方向長さが補助リング３９の公転に伴う補助リン
グ側接続部の変位に対して充分に長く設定されているた
め、補助リング３９の公転に対し、隔成部材（ベローズ
４１ａ，４１ｂ）がその全域に渡って緩やかに変形して
柔軟に追従することとなる。このため、隔成部材である
ベローズ４１ａ，４１ｂに局部的に大きな応力が作用し
たり、動力損失を増大させる不具合は生じない。また、
ベローズ４１ａ，４１ｂは金属で形成してあるため、耐
久性も高く、長期間の使用に対してもベローズ４１ａ，
４１ｂの劣化の心配がない。尚、この金属製のベローズ
４１ａ，４１ｂとしては、図１に示すように一体成形し
たものであっても、また、複数個の環状金属板を溶接に
よって結合した所謂溶接ベローズであっても良い。

【００２３】また、本発明の実施の形態は、以上で説明
したものに限るものでなく、例えば、ベローズをゴム材
料や樹脂材料で形成したり、隔成部材としてベローズで
はなく薄肉のゴム材料や樹脂材料を緩やかに湾曲させた
構造のものを採用することも可能である。

【００２４】

【発明の効果】以上のように本発明は、偏心カムの外周
に相対回転可能に補助リングを嵌装し、この補助リング
とハウジングの間に、駆動軸を囲繞してハウジング内を
作動液室と潤滑液室とに隔成する隔成部材を設け、この
部品点数の少ない簡素な構造によって駆動軸支持部の周
域に作動液が流入するのを確実に防止できるようにした
ので、製造コストの増大や装置の大型化を招くことなく
駆動軸支持部回りの潤滑性能を確実に向上させることが
できる。さらに、本発明の場合、可撓性の隔成部材を、
偏心カムに嵌装された補助リングとハウジングとの間に
設けるようにしたため、隔成部材の長さに対するその最
大撓み量が小さくなり、その結果、隔成部材に作用する
応力が小さくなってその耐久性が向上する。

【００２５】また、隔成部材をベローズで形成した場合
には、隔成部材が補助リングの駆動軸を中心とする公転
に対して柔軟に追従するようになる結果、隔成部材の応
力集中を回避することが可能になるうえ、駆動軸の動力
損失もより小さく抑えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一つの実施の形態を示す断面図。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿う断面図。

【図３】図２のＢ−Ｂ線に沿う断面図。

【図４】図１のＣ−Ｃ線に沿う断面図。

【図５】図１のＤ−Ｄ線に沿う断面図。

【図６】図１のＥ−Ｅ線に沿う断面図。

【符号の説明】

１…ラジアルプランジャポンプ、 ５…吸入通路、 ６…ハウジング、 １１…駆動軸、 １５…偏心カム、 １８…プランジャ、 ２７…吐出通路、 ３９…補助リング、 ４１ａ，４１ｂ…ベローズ（隔成部材）、 ４４…作動液室、 ４５…潤滑液室。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジング内に回転自在に支持された駆
   動軸に断面円形状の偏心カムが固設される一方で、前記
   ハウジグ内の前記偏心カムの外周面に対向する位置に複
   数個のプランジャが放射方向に進退自在に設けられ、前
   記複数個のプランジャが前記偏心カムの回転により順次
   押圧されて吸入通路から吸い入れた作動液を吐出通路に
   送り出すラジアルプランジャポンプにおいて、 前記偏心カムの外周に相対回転可能に補助リングを嵌装
   し、この補助リングとハウジングの間に、駆動軸を囲繞
   してハウジング内を作動液室と潤滑液室とに隔成する可
   撓性の隔成部材を設けたことを特徴とするラジアルプラ
   ンジャポンプ。
2. 【請求項２】 前記隔成部材をベローズによって構成し
   たことを特徴とする請求項１に記載のラジアルプランジ
   ャポンプ。
3. 【請求項３】 前記ベローズを金属材料で形成したこと
   を特徴とする請求項２に記載のラジアルプランジャポン
   プ。
4. 【請求項４】 前記ベローズをゴム材料または樹脂材料
   で形成したことを特徴とする請求項２に記載のラジアル
   プランジャポンプ。