JPH09173505A - 糸巻きゴルフボール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 打球感やコントロール性が良好で、かつ飛距
離が大きい糸巻きゴルフボールを提供する。 【解決手段】 ソリッドセンターと、糸ゴム層と、内層
カバーと外層カバーとからなる２層構造のカバーを有す
る糸巻きゴルフボールにおいて、上記ソリッドセンター
の直径を２９〜３５ｍｍにし、上記カバーの基材樹脂を
アイオノマー樹脂を主成分として構成し、内層カバーの
曲げ剛性率を３００〜６００ＭＰａにし、かつ外層カバ
ーの曲げ剛性率を５０〜３００ＭＰａにする。また、上
記ソリッドセンターは、該ソリッドセンターに初期荷重
１０ｋｇをかけた状態から終荷重３０ｋｇをかけたとき
までの歪み量が１〜２．５ｍｍになるようにし、（外層
カバーの厚み）／（糸ゴム層の厚み＋内層カバーの厚み
＋外層カバーの厚み）の値が０．１〜０．５５の範囲内
になるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、糸巻きゴルフボー
ルに関し、さらに詳しくは、打球感やコントロール性が
良好で、かつツーピースソリッドゴルフボール並みに飛
距離が大きい糸巻きゴルフボールに関する。

【０００２】

【従来の技術】糸巻きゴルフボールの基本構成は、セン
ターと、上記センターの周囲に形成された糸ゴム層と、
上記糸ゴム層を被覆するカバーとからなるものであり、
この糸巻きゴルフボールは、ツーピースソリッドゴルフ
ボールに比べて、打球感やコントロール性は良好である
ものの、飛距離の面で劣っている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の糸巻
きゴルフボールが持っていた飛距離が劣るという問題点
を解決し、糸巻きゴルフボール特有の良好な打球感とコ
ントロール性を保持し、かつツーピースソリッドゴルフ
ボール並みに飛距離が大きい糸巻きゴルフボールを提供
することを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究を重ねた結果、直径が２９〜３
５ｍｍという大径のソリッドセンターと、アイオノマー
樹脂を基材樹脂の主成分とし、曲げ剛性率が３００〜６
００ＭＰａの内層カバーと曲げ剛性率が５０〜３００Ｍ
Ｐａの外層カバーとからなる２層構造のカバーを用い、
かつ、糸ゴム層の厚みとカバーの厚みを適性化すること
によって、糸巻きゴルフボール特有の良好な打球感とコ
ントロール性を保持し、しかも飛距離がツーピースソリ
ッドゴルフボール並に大きい糸巻きゴルフボールが得ら
れることを見出し、本発明を完成するにいたった。

【０００５】すなわち、本発明は、直径が２９〜３５ｍ
ｍのソリッドセンターと、アイオノマー樹脂を基材樹脂
の主成分とし、曲げ剛性率が３００〜６００ＭＰａの内
層カバーと曲げ剛性率が５０〜３００ＭＰａの外層カバ
ーとからなる２層構造のカバーを用い、かつ、（外層カ
バーの厚み）／（糸ゴム層の厚み＋内層カバーの厚み＋
外層カバーの厚み）の値が０．１〜０．５５の範囲にあ
ることを特徴とする糸巻きゴルフボールである。

【０００６】本発明において用いるソリッドセンター
は、直径が２９〜３５ｍｍと大径であり、かつ上記ソリ
ッドセンターに初期荷重１０ｋｇをかけた状態から終荷
重３０ｋｇをかけたときまでの歪み量が１〜２．５ｍｍ
のものである。

【０００７】上記ソリッドセンターの直径が２９ｍｍよ
り小さい場合は、打撃時のスピン量が多くなりすぎて、
飛距離が低下し、ソリッドセンターの直径が３５ｍｍよ
り大きい場合は、その上に形成される糸ゴム層が薄くな
り、糸ゴムの反撥性能が充分に生かされず、その結果、
飛距離が出にくくなるとともに、打球感も悪くなる。そ
して、ソリッドセンターの歪み量が上記条件下で２．５
ｍｍより大きい場合は、該ソリッドセンターが軟らかす
ぎるため、適正なボール硬度を得るためには糸ゴムをき
つく巻き付けなければならず、その結果、糸ゴム層のテ
ンションが大きくなりすぎて、打球時の変形が起こりに
くくなって、所望とする飛距離の向上が得られにくくな
り、また、ソリッドセンターの歪み量が上記条件下で１
ｍｍより小さい場合は、該ソリッドセンターが硬くなり
すぎて、打球感が悪くなるおそれがある。

【０００８】内層カバーの曲げ剛性率が３００ＭＰａよ
り小さい場合は、反撥性能が低くなって、飛距離が低下
し、内層カバーの曲げ剛性率が６００ＭＰａより大きい
場合は、硬くなりすぎて、打球感が悪くなる。

【０００９】外層カバーの曲げ剛性率が５０ＭＰａより
小さい場合は、軟らかくなりすぎて、スピン量が増加し
すぎるため、飛距離が低下し、かつ耐カット性も低下
し、外層カバーの曲げ剛性率が３００ＭＰａより大きい
場合は、所望とするスピンがかからなくなって、コント
ロール性が悪くなり、また打球感も悪くなる。

【００１０】また、（外層カバーの厚み）／（糸ゴム層
の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）の値が
０．１より小さい場合は、ボールの反撥性能は高くなる
ものの、スピンがかかりにくくなって、コントロール性
が悪くなり、また打球感も悪くなるおそれがある。そし
て、上記（外層カバーの厚み）／（糸ゴム層の厚み＋内
層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）の値が０．５５よ
り大きい場合は、低剛性で低反撥性能の外層カバーの割
合が多くなるため、ボールの反撥性能が低くなり、その
ため、飛距離が出にくくなるおそれがある。

【００１１】上記ソリッドセンターは、ゴム組成物を加
硫成形することによって得られるが、そのソリッドセン
ター用ゴム組成物の基材となるゴムとしては、特に限定
されることはないが、例えば、反撥性能の高いポリブタ
ジエン、特にハイシスポリブタジエンが好ましく、ソリ
ッドセンター用のゴム組成物の調製にあたっては、その
ゴム成分としてハイシスポリブタジエンを用いるか、ま
たはハイシスポリブタジエンを主成分として用いること
が好ましい。そして、このハイシスポリブタジエンなど
は硫黄加硫する方式のゴム組成物およびα，β−不飽和
カルボン酸金属塩による加硫方式のゴム組成物のいずれ
の調製にあたっても使用することができる。

【００１２】糸ゴム層は、上記組成物の周囲に糸ゴムを
延伸状態で巻き付けることによって形成されるが、その
糸ゴムとしては、従来から使用されているものと同様の
ものを用いることができ、例えば、天然ゴムまたは天然
ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進
剤、老化防止剤などを配合したゴム組成物を加硫するこ
とによって得られたものを用いることができる。

【００１３】本発明において、内層カバーには、α−オ
レフィンと炭素数３〜８個のα，β−不飽和カルボン酸
との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金
属イオンで中和して得られるアイオノマー樹脂またはそ
の混合物を基材樹脂とし、その曲げ剛性率が３００〜６
００ＭＰａである高剛性樹脂が用いられる。上記アイオ
ノマー樹脂の具体例としては、例えば、三井デュポンポ
リケミカル（株）から「ハイミラン１６０５（Ｎ
ａ）」、「ハイミラン１７０７（Ｎａ）」、「ハイミラ
ンＡＭ７３１８（Ｎａ）」、「ハイミランＡＭ７３１５
（Ｚｎ）」、「ハイミランＡＭ７３１７（Ｚｎ）」など
の商品名で市販されている高剛性グレードのアイオノマ
ー樹脂や、米国デュポン社から「サーリン８９４０（Ｎ
ａ）」、「サーリン８９２０（Ｎａ）」、「サーリン７
９４０（Ｌｉ）」などの商品名で市販されている高剛性
グレードのアイオノマー樹脂、エクソン化学社から「ア
イオテック（Ｉｏｔｅｋ）８０００（Ｎａ）」などの商
品名で市販されている高剛性グレードのアイオノマー樹
脂などが挙げられる。なお、上記アイオノマー樹脂の商
品名の後の括弧内に記載したＮａ、Ｚｎ、Ｌｉなどは、
それらの中和金属イオンの種類を示している。また、ア
イオノマー樹脂の混合物を基材樹脂とする場合には、上
記高剛性のアイオノマー樹脂以外にも、それらの高剛性
のアイオノマー樹脂と混合するアイオノマー樹脂とし
て、それらより低剛性のアイオノマー樹脂も用いること
ができる。

【００１４】本発明において、外層カバーには、アイオ
ノマー樹脂を基材樹脂の主成分とし、曲げ剛性率が５０
〜３００ＭＰａの樹脂が用いられる。上記外層カバーの
基材樹脂として、アイオノマー樹脂のみでも良いが、ア
イオノマー樹脂とグリシジル基変性熱可塑性エラストマ
ーとの加熱混合物、アイオノマー樹脂と無水マレイン酸
変性熱可塑性エラストマーとグリシジル基変性熱可塑性
エラストマーとの加熱混合物、または、アイオノマー樹
脂とエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カル
ボン酸三元共重合体との加熱混合物でもよい。

【００１５】上記のような外層カバーの基材樹脂として
適する低剛性のアイオノマー樹脂としては、例えば、三
井デュポンポリケミカル（株）から市販されている「ハ
イミラン１８５６（Ｎａ）」、「ハイミラン１８５５
（Ｚｎ）」、「ハイミランＡＭ７３１６（Ｚｎ）」など
の三元共重合体アイオノマー樹脂や、米国デュポン社か
ら市販されている「サーリンＡＤ８２６５（Ｎａ）」、
「サーリンＡＤ８２６９（Ｎａ）」などの三元共重合体
系アイオノマー樹脂が挙げられる。また、外層カバーの
基材樹脂をこれらのアイオノマー樹脂と他のアイオノマ
ー樹脂との混合物で構成する場合や、アイオノマー樹脂
と他の熱可塑性エラストマーとの混合物で構成する場合
には、アイオノマー樹脂として上記以外のものも使用す
ることができる。

【００１６】上記グリシジル基変性熱可塑性エラストマ
ーとしては、例えば、住友化学工業（株）より「ボンド
ファースト」の商品名で市販されているエチレン−グリ
シジルメタクリレート−メチルアクリレート三元共重合
体やエチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル
三元共重合体、旭化成工業（株）より「タフテックＺ５
１４」、「タフテックＺ５１３」などの商品名で市販さ
れているスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重
合体水素添加物のグリシジルメタクリレート付加物、米
国デュポン社より「Ｅｌｖａｌｏｙ−ＡＳ」の商品名で
市販されているエチレン−アクリル酸エステル−グリシ
ジルメタクリレート三元共重合体などが挙げられる。

【００１７】また、上記無水マレイン酸変性熱可塑性エ
ラストマーとしては、例えば、旭化成工業（株）より
「タフテックＭシリーズ」の商品名で市販されている水
素添加したスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共
重合体の無水マレイン酸付加物、住友化学工業（株）よ
り「ボンダイン」の商品名で市販されているエチレン−
エチルアクリレート−無水マレイン酸三元共重合体、三
井デュポンポリケミカル（株）より「ＡＲシリーズ」の
商品名で市販されているエチレン−エチルアクリレート
共重合体の無水マレイン酸によるグラフト変性物などが
挙げられる。

【００１８】そして、エチレン−不飽和カルボン酸エス
テル−不飽和カルボン酸三元共重合体としては、例え
ば、三井デュポンポリケミカル（株）より「ニュークレ
ルＡＮ４２１２Ｃ」、「ニュークレルＮ０８０５Ｊ」な
どの商品名で市販されているエチレン−イソブチルアク
リレート−メタクリル酸三元共重合体などが挙げられ
る。

【００１９】上記のように、外層カバーの基材樹脂をア
イオノマー樹脂とそれ以外の樹脂との混合物で構成する
場合、それらの混合比は、外層カバーの曲げ剛性率を５
０〜３００ＭＰａにできさえすれば、特に限定されるこ
とはないが、例えば、アイオノマー樹脂とそれ以外の樹
脂（グリシジル基変性熱可塑性エラストマー、無水マレ
イン酸変性熱可塑性エラストマー、エチレン−不飽和カ
ルボン酸エステル−不飽和カルボン酸三元共重合体）と
の比は重量比で９５：５〜５５：４５程度にするのが好
ましい。

【００２０】本発明において、内層カバー、外層カバー
とも、それを構成するカバー用組成物の調製にあたって
は、上記の基材樹脂以外に、必要に応じて、種々の添加
剤、例えば、顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸光
剤、光安定剤などを添加することができる。

【００２１】本発明においては、内層カバー、外層カバ
ーとも、その曲げ剛性率を特定しているが、それらの曲
げ剛性率はカバー用組成物から試験片を作製して測定し
たものである。これは、一旦ボール成形をしてしまう
と、現在の技術では、そのカバーから曲げ剛性率を直接
測定することができず、曲げ剛性率の測定はカバー用組
成物から試験片を作製して行わなければならないためで
ある。そして、カバーの曲げ剛性率も実質的にはカバー
用組成物の曲げ剛性率と同じであると考えられるので、
本発明では、内層カバー、外層カバーとも、それらのカ
バー用組成物から試験片を作製して測定した曲げ剛性率
を内層カバー、外層カバーの曲げ剛性率としている。ま
た、カバーは基材樹脂が主成分を占め、それ以外には、
顔料などの添加剤が必要に応じて少量添加されているだ
けなので、カバーの曲げ剛性率は実質的に基材樹脂の曲
げ剛性率とほとんど同じであると考えられる。

【００２２】そして、それら内層カバーや外層カバーの
曲げ剛性率は、カバー用組成物から約２ｍｍ厚の熱プレ
ス成形シートを作製し、それを２３℃で２週間保存後、
ＡＳＴＭ Ｄ−７４７に準じて測定される。

【００２３】内層カバーおよび外層カバーの被覆方法
は、特に限定されるものではなく、通常の方法で行うこ
とができる。例えば、内層カバー用組成物をあらかじめ
半球殻状のハーフシェルに成形し、それを２枚用いてコ
ア（ソリッドセンターと糸ゴム層とからなる糸巻きコ
ア）を包み、１３０〜１７０℃で１〜５分間加圧成形す
るか、または上記内層カバー用組成物を直接コア上に射
出成形してコアを包み込む方法が採用される。また、外
層カバーに関しても、上記内層カバーの場合と同様の被
覆方法が採用される。すなわち、外層カバー用組成物を
あらかじめ半球殻状のハーフシェルに成形し、それを２
枚用いて上記内層カバーを包み、１３０〜１７０℃で１
〜５分間加圧成形するか、または外層カバー用組成物を
直接上記内層カバー上に射出成形して包み込む方法が採
用される。そして、外層カバーの形成時、必要に応じ
て、その表面にディンプルの形成が行われ、また、外層
カバーの形成後、ペイント仕上げ、スタンプなども必要
に応じて施される。

【００２４】糸ゴム層、内層カバー、外層カバーなどの
厚みは、前記のように、（外層カバーの厚み）／（糸ゴ
ム層の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）の
値が０．１〜０．５５になりさえすれば、特に限定され
ることはないが、通常、糸ゴム層の厚みは０．５〜６ｍ
ｍの範囲から採用され、内層カバーの厚みは０．５〜４
ｍｍの範囲から採用され、外層カバーの厚みは０．５〜
３ｍｍの範囲から採用される。

【００２５】つぎに、本発明の糸巻きゴルフボールの一
例を図面を参照しつつ説明する。図１は本発明の糸巻き
ゴルフボールの一例を模式的に示す断面図であり、図
中、１はソリッドセンター、２は糸ゴム層、３はカバー
である。上記カバー３は内層カバー３ａと外層カバー３
ｂとからなる二層構造をしており、４は上記外層カバー
３ｂの表面に設けられたディンプルである。

【００２６】上記ソリッドセンター１は、ゴム組成物の
加硫成形物からなり、その直径は２９〜３５ｍｍで、該
ソリッドセンター１に初期荷重１０ｋｇをかけた状態か
ら終荷重３０ｋｇをかけたときまでの歪み量が１〜２．
５ｍｍの範囲内のものが適している。

【００２７】糸ゴム層２は、上記ソリッドセンター１の
周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成
され、上記ソリッドセンター１とこの糸ゴム層２とでい
わゆる糸巻きコアと呼ばれるコアが形成されている。

【００２８】内層カバー３ａは、上記糸巻きコアの糸ゴ
ム層２の周囲を被覆しており、この内層カバー３ａの曲
げ剛性率は３００〜６００ＭＰａである。外層カバー３
ｂは、上記内層カバー３ａ上を被覆しており、この外層
カバー３ｂの曲げ剛性率は５０〜３００ＭＰａである。
そして、上記糸ゴム層２、内層カバー３ａおよび外層カ
バー３ｂの厚みに関しては、（外層カバー３ｂの厚み）
／（糸ゴム層の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの
厚み）の値が０．１〜０．５５の範囲内にあることが好
ましい。

【００２９】ディンプル４は、必要に応じ、また所望と
する特性に合わせて、外層カバー３ｂの表面に適数個設
けられる。

【００３０】

【発明の実施の形態】つぎに、実施例を挙げて本発明を
さらに説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみ
に限定されるものではない。

【００３１】実施例１〜５および比較例１〜１１ 上記実施例１〜５および比較例１〜１１のうち、実施例
１〜５および比較例１〜９の糸巻きゴルフボールをつぎ
の〜の工程を経て作製した。なお、比較例１０は高
剛性のアイオノマー樹脂カバーを用いた標準的な既製の
ツーピースソリッドゴルフボールであり、比較例１１は
バラタカバーを用いた標準的な既製の糸巻きゴルフボー
ルである。

【００３２】ソリッドセンターおよび糸巻きコアの作
製 表１に示す組成でソリッドセンター用ゴム組成物を調製
し、得られたゴム組成物をセンター用金型に充填し、１
５５℃で２０分間加圧下で加熱して加硫を行い、ソリッ
ドセンターＡ〜Ｇを作製した。なお、表１中の各成分の
配合量は重量部によるものである。これは以後の表にお
いても同様である。

【００３３】得られたソリッドセンターの直径、重量、
表面硬度（ＪＩＳ−Ｃ型硬度計で測定した硬度）および
歪み量を表１に示す。上記の歪み量は各ソリッドセンタ
ーに初期荷重１０ｋｇをかけた状態から終荷重３０ｋｇ
をかけたときまでの歪み量を測定することによって求め
たものである。

【００３４】

【表１】 ※１：商品名、日本合成ゴム（株）製のハイシスポリブタジエン（１、４−シス −ポリブタジエン含量：９６％） ※２：商品名、大内新興化学工業（株）製の老化防止剤（２、５−ジ−ターシャ リ−ブチルハイドロキノン）

【００３５】つぎに、上記ソリッドセンターに基材ゴム
が天然ゴム／低シスイソプレンゴム〔シェルＩＲ−３０
９（商品名）、シェル化学社製〕＝５０／５０（重量
比）のブレンドゴム製の糸ゴムを延伸状態で巻き付け、
外径約３６．７ｍｍの糸巻きコアを作製した。

【００３６】カバー用組成物の調製 表２に示す組成の配合材料を二軸混練押出機によりミキ
シングして、ペレット状のカバー用組成物ａ〜ｆを調製
した。

【００３７】押出条件はスクリュー径４５ｍｍ、スクリ
ュー回転数２００ｒｐｍ、スクリューＬ／Ｄ＝３５であ
り、配合物は押出機のダイの位置で２００〜２６０℃に
加熱された。そして、得られたカバー用組成物の曲げ剛
性率およびショアーＤ硬度を測定した。その結果を表２
に示す。曲げ剛性率の測定は、各カバー用組成物から約
２ｍｍ厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを２３
℃で２週間保存後、ＡＳＴＭ Ｄ−７４７に基づいて行
い、ショアーＤ硬度の測定は、上記曲げ剛性率の場合と
同様に、各カバー用組成物から約２ｍｍ厚さの熱プレス
成形シートを作製し、それを２３℃で２週間保存後、Ａ
ＳＴＭ Ｄ−２２４０に基づいて行った。

【００３８】

【表２】

【００３９】※３：商品名、三井デュポンポリケミカル
（株）製のナトリウムイオン中和タイプのエチレン−メ
タクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ＭＩ（メルト
インデックス）＝２．８、曲げ剛性率＝約３１０ＭＰａ ※４：商品名、三井デュポンポリケミカル（株）製の亜
鉛イオン中和タイプのエチレン−メタクリル酸共重合体
系アイオノマー樹脂、ＭＩ＝５．０、曲げ剛性率＝約２
３０ＭＰａ ※５：商品名、三井デュポンポリケミカル（株）製の亜
鉛イオン中和タイプのエチレン−ブチルアクリレート−
メタクリル酸三元共重合体系アイオノマー樹脂、ＭＩ＝
１．０、曲げ剛性率＝約９０ＭＰａ ※６：商品名、三井デュポンポリケミカル（株）製の亜
鉛イオン中和タイプのエチレン−メタクリル酸共重合体
系アイオノマー樹脂、ＭＩ＝０．８、曲げ剛性率＝約２
６０ＭＰａ

【００４０】※７：商品名、デュポン社製の亜鉛イオン
中和タイプのエチレン−メタクリル酸共重合体系アイオ
ノマー樹脂、ＭＩ＝３．４、曲げ剛性率＝約２２０ＭＰ
ａ ※８：商品名、デュポン社製のナトリウムイオン中和タ
イプのエチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー
樹脂、ＭＩ＝４．４、曲げ剛性率＝約２８０ＭＰａ ※９：商品名、三井デュポンポリケミカル（株）製のエ
チレン−イソブチルアクリレート−メタクリル酸三元共
重合体〔重合組成比：７６／２０／４（重量比）〕

【００４１】※10：商品名、旭化成工業（株）製のスチ
レン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水素添加
物のメタクリル酸グリシジル付加物、ＪＩＳ−Ａ硬度＝
６５、スチレン含量約２０重量％、ブタジエン水素添加
物含量約８０重量％、メタクリル酸グリシジル含量約１
重量％ ※11：商品名、住友化学工業（株）製のエチレン−エチ
ルアクリレート−無水マレイン酸三元共重合体、ＭＩ＝
７．０、ショアーＤ硬度＝１４、エチルアクリレート＋
無水マレイン酸含量＝３２％（そのうち、無水マレイン
酸１〜４％） ※12：商品名、エクソン化学社製のナトリウムイオン中
和タイプのエチレン−アクリル酸系アイオノマー樹脂、
ＭＩ＝０．８、曲げ剛性率＝３７０ＭＰａ ※13：商品名、エクソン化学社製の亜鉛イオン中和タイ
プのエチレン−アクリル酸系アイオノマー樹脂、ＭＩ＝
０．８、曲げ剛性率＝１６０ＭＰａ

【００４２】糸巻きゴルフボールの作製 上記の内層カバー用組成物から半球殻状のハーフシェ
ルを成形し、それを２枚用いて前記の糸巻きコアを包
み、ボール用の金型内で１５０℃で３分間プレス成形
し、ついで、上記の外層カバー用組成物を上記内層カ
バー上に射出成形し、その表面にペイントを塗装して、
外径４２．７ｍｍの糸巻きゴルフボールを作製した。ソ
リッドセンターと内層カバー、外層カバーの組み合わ
せ、糸ゴム層の厚み、内層カバーおよび外層カバーの曲
げ剛性率、厚みを表３〜表５に示す。また、表３〜表５
には、糸ゴム層の厚みを（ａ）、内層カバーの厚みを
（ｂ）、外層カバーの厚みを（ｃ）とし、（外層カバー
の厚み）／（糸ゴム層の厚み＋内層カバーの厚み＋外層
カバーの厚み）を（ａ）／（ａ＋ｂ＋ｃ）で示す。な
お、表３〜表５には、使用したソリッドセンター、内層
カバー、外層カバーをそれらの記号（ソリッドセンター
の場合はＡ〜Ｇ、内層カバー、外層カバーの場合はａ〜
ｆ）で示す。

【００４３】

【表３】

【００４４】

【表４】

【００４５】

【表５】

【００４６】得られた糸巻きゴルフボールのボール重量
および飛行性能を測定した。飛行性能の測定にはツルー
テンパー社製スイングロボットを用い、飛行性能１は上
記スイングロボットにウッド１番クラブを取り付け、ボ
ールをヘッドスピード４５ｍ／ｓで打撃して測定し、ま
た、飛行性能２は上記スイングロボットにアイアン９番
クラブを取り付け、ボールをヘッドスピード３４ｍ／ｓ
で打撃して測定した。それらの結果を表６〜表９に示す
が、飛行性能１についてはボール初速とキャリー（落下
点までの距離）を示し、飛行性能２についてはボール初
速、スピン量、キャリー、ラン（落下点からころがった
距離）およびトータル（キャリーにランを加えたもの）
を示す。また、表中には、ウッド１番クラブを「ウッド
１番」で表示し、アイアン９番クラブを「アイアン９
番」で表示する。

【００４７】また、得られた糸巻きゴルフボールについ
て、打球感をトッププロ１０人によるウッド１番クラブ
での実打テストで評価した。評価基準は次の通りであ
る。評価結果を表中に表示する際も同様の記号で表示し
ているが、その場合は、評価にあたった１０人のうち８
人以上が同じ評価を下したことを示している。

【００４８】評価基準： ○ ： ソフトなフィーリングで良い × ： 打球感が硬く悪い

【００４９】表６には実施例１〜５のボール物性および
打球感の評価結果をボールの製造に際して使用したソリ
ッドセンター、内層カバー、外層カバー、（ｃ）／（ａ
＋ｂ＋ｃ）〔すなわち、（外層カバーの厚み）／（糸ゴ
ム層の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）〕
と共に示す。また、表７には比較例１〜５のそれらを示
し、表８には比較例６〜９のそれらを示し、表９には比
較例１０〜１１のボール重量、ボール物性および打球感
の評価結果を示す。

【００５０】

【表６】

【００５１】

【表７】

【００５２】

【表８】

【００５３】

【表９】

【００５４】表６に示す実施例１〜５のボール物性と表
７〜表９に示す比較例１〜１１のボール物性との対比か
ら明らかなように、実施例１〜５は、打球感が良好で、
アイアン９番クラブでのスピン量が多く、アプローチシ
ョットでのコントロール性が良好であることを示してお
り、かつウッド１番クラブ（ドライバー）での飛距離が
大きく、標準的なツーピースソリッドゴルフボールであ
る比較例１０並みの飛距離を有していた。

【００５５】このように、実施例１〜５のボール物性が
優れているのは、表３に示すように、実施例１〜５で
は、ソリッドセンターとしてＢ、Ｃ、Ｄ、すなわち、直
径が３０〜３５ｍｍの範囲内でかつ歪み量が１〜２．５
ｍｍの範囲内にあるものを用い（表１参照）、内層カバ
ーとして曲げ剛性率が３００〜６００ＭＰａの範囲内の
ものを用い、外層カバーとして曲げ剛性率が５０〜３０
０ＭＰａの範囲内のものを用い、かつ（ｃ）／（ａ＋ｂ
＋ｃ）〔すなわち、（外層カバーの厚み）／（糸ゴム層
の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）〕の値
が０．１〜０．５５の範囲内のものを用いたことによる
ものである。

【００５６】これに対し、比較例１は、打球感が良好
で、かつコントロール性が良好であるものの（コントロ
ール性はアイアン９番クラブでのスピン量の多さによっ
て判断する）、飛距離が出なかった（飛距離はウッド１
番クラブでのキャリーで判断する）。これは、比較例１
の内層カバーの曲げ剛性率が２２０ＭＰａ（表４参照）
と小さかったことによるものと考えられる。また、比較
例２は、飛距離は出るものの、打球感が悪く、またコン
トロール性が悪かった。これは、比較例２の外層カバー
の曲げ剛性率が３３０ＭＰａ（表４参照）と大きかった
ことによるものと考えられる。

【００５７】比較例３は、打球感やコントロール性が良
好であるものの、飛距離が出ず、比較例４は、飛距離が
出ているものの、打球感が悪く、またコントロール性が
充分でなかった。これは、比較例３では、低剛性で低反
撥性能の外層カバーの厚みが厚いため、（外層カバーの
厚み）／（糸ゴム層の厚み＋内層カバーの厚み＋外層カ
バーの厚み）の値が０．５５より大きくなり、逆に比較
例４は、低剛性の外層カバーの厚みが薄いため、上記値
が０．１より小さくなったことによるものと考えられ
る。

【００５８】また、比較例５は、糸ゴム層を設けていな
いため（表４参照）、打球感が悪く、比較例６と比較例
７は、飛距離が充分でなかった。このように比較例６と
比較例７の飛距離が充分でなかったのは、比較例６では
ソリッドセンターの直径が小さく（表１参照）、スピン
量が多くなることによるものであり、比較例７ではソリ
ッドセンターの直径が大きすぎ（表１参照）、糸ゴム層
が薄くなった（表５参照）ことによるものと考えられ
る。

【００５９】そして、比較例８は飛距離が充分でなく、
比較例９は打球感が悪かった。これは、比較例８ではソ
リッドセンターが軟らかすぎて歪み量が大きく（表１参
照）、比較例９ではソリッドセンターが硬すぎて歪み量
が小さくなった（表１参照）ことによるものと考えられ
る。

【００６０】また、比較例１０は、高剛性のアイオノマ
ー樹脂カバーを用いたツーピースソリッドゴルフボール
であることから、飛距離は大きかったものの、打球感が
悪く、またスピン量が少なく、コントロール性が悪かっ
た。そして、比較例１１は、バラタカバーを用いた糸巻
きゴルフボールであることから、打球感が良好で、かつ
スピン量が多く、コントロール性が良好であったが、飛
距離が劣っていた。

【００６１】

【発明の効果】以上、説明したように、本発明では、打
球感やコントロール性が良好で、かつ飛距離が大きい糸
巻きゴルフボールを提供することができた。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る糸巻きゴルフボールの一例を模式
的に示す断面図である。

【符号の説明】

１ ソリッドセンター ２ 糸ゴム層 ３ カバー ３ａ 内層カバー ３ｂ 外層カバー

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ソリッドセンターと、糸ゴム層と、内層
   カバーと外層カバーとからなる２層構造のカバーを有す
   る糸巻きゴルフボールであって、上記ソリッドセンター
   の直径が２９〜３５ｍｍであり、上記カバーの基材樹脂
   がアイオノマー樹脂を主成分とし、内層カバーの曲げ剛
   性率が３００〜６００ＭＰａで、かつ外層カバーの曲げ
   剛性率が５０〜３００ＭＰａであることを特徴とする糸
   巻きゴルフボール。
2. 【請求項２】 （外層カバーの厚み）／（糸ゴム層の厚
   み＋内層カバーの厚み＋外層カバーの厚み）の値が０．
   １〜０．５５の範囲内にある請求項１記載の糸巻きゴル
   フボール。
3. 【請求項３】 上記ソリッドセンターに初期荷重１０ｋ
   ｇをかけた状態から終荷重３０ｋｇをかけたときまでの
   歪み量が１〜２．５ｍｍである請求項１または２記載の
   糸巻きゴルフボール。