JPH09156314A - 大型ラジアルタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 隣り合った素線間にゴムが進入する間隙を設
けて耐腐蝕性を大きくし、強度が大きい低コストのスチ
ールコードで補強することによりベルトを薄くして耐久
性が向上した大型ラジアルタイヤを提供する。 【解決手段】 ベルトプライの少なくとも１層を、同径
の２本の芯素線を撚ることなく並列した芯と芯素線の
０．８〜１．２倍の直径を持つ同径の５〜８本の外層素
線を、素線間に間隙を設けその平均が０．０２〜０．２
５mmになるようにしながら、芯に密接して外層素線径の
４０〜６０倍のピッチでらせん状に巻き付けた外層とで
なる断面輪郭が大略楕円形の２層構造のスチールコード
で補強し、前記スチールコードで補強されたベルトプラ
イ内では大部分のスチールコードが断面輪郭の長径方向
を横向きにして配列し、外層素線間隙の大部分がゴムで
充填されいる大型ラジアルタイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、スチールコードで
補強されたベルトの耐久性が向上した大型ラジアルタイ
ヤに関し、詳しくは、スチールコードに内在する素線間
の間隙にコード埋設ゴムを充填して水分による腐蝕を低
減することにより、ベルトの耐久性を向上させた大型ラ
ジアルタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】大型ラジアルタイヤは、使用中に踏んだ
角が尖った石、釘、金属片等がトレッドを貫通してベル
トに達し、ベルトを補強するスチールコードに外傷を受
けることがある。この場合、スチールコードの素線間に
空洞があれば、トレッドの貫通傷を通って外傷から浸入
した水分が空洞を伝ってスチールコード内に広がり、ス
チールコードに錆を発生させて強度低下やゴムとの接着
の劣化を生じさせる。そのため、従来、３本の素線を撚
り合せた芯の回りに、芯素線と同径か又は径が若干大き
い６本の外層素線を撚った３＋６の式で表される２層構
造、例えば３×０．２０＋６×０．３５で表すスチール
コードでベルトを補強していた。素線が同径の２層構造
の場合、外層に配設できる素線の最大本数は芯素線数＋
６本であり、外層素線径が芯素線より若干大きい３×
０．２０＋６×０．３５構造のスチールコードにおいて
も同様に図３に示すように、外層９は最蜜充填より素線
が少ないので隣り合った外層素線１０ａ、１０ｂの間に
間隙が形成され、そこからスチールコード埋設ゴムが進
入して芯８と外層９の間にできた空洞を充填し、それに
より水分が溜まる空洞がなくなり、錆の発生が低減され
ていた。しかし、芯８の中心には、依然として空洞が残
されているので、錆の発生が低減されたというものの完
全ではなかった。そこで、芯を２本の素線を撚合せて構
成することにより芯の空洞を無くし、その回りに最蜜充
填より１本少なくした７本の外層素線を配置した図４に
示す１×２＋７構造が試みられたが、芯が撚られている
ために芯の断面は破線で示すように円形であって空間１
２が大きく、素線断面積を合計した正味コード断面積に
対する破線で示すコード輪郭の断面積である見掛け断面
積の比が大きくなって、同じ破断荷重の場合に径が大き
くなり、延いてはベルト厚みが大になって発熱が大きく
ってセパレーションしやすくなり、耐久性が低下する。
また、芯と外層が同方向に撚られた場合には、芯の撚目
の谷に沿って空洞が形成され、ベルト耐久性をさらに向
上させるには必ずしも有効な手立てではなかった。１×
２＋７構造の欠点を改善するために、２本の素線を撚合
せた第１素線束の回りに３本の第２素線束を第２素線束
間に隙間ができるようにしてらせん状に巻き付ける方法
（特開平７−１２６９９２号公報）、型付け機を用いて
予め波形に型付けを施した２〜４本の素線を平行に束ね
たコアの回りに最蜜充填より１本少ない本数の素線でな
るシースを配した複層構造にする方法（特開平６−１０
８３８７号公報）、型付け機を用いて予め波形に型付け
を施した２本の素線を平行に束ねたコアに、２〜３本の
素線を密接して平行配列した素線束を間隔を設けてらせ
ん状に巻き付ける方法（特開平７−４２０８９号公報）
等が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記の芯素線に波形の
型付けをした素線を用いたスチールコードは、製造する
に当たり芯素線に型付けをする設備と工数が必要となっ
て余分のコストが掛り、型付け高さが大であるほどコー
ド内にゴムが進入しやすいが、外力が作用したとき波形
の屈曲部が小さい応力で直状になる方向に変形するので
カーカスを締め付ける箍作用が小さくなり、また、屈曲
部に歪みが集中して切断しやすくなる。型付け素線の配
置の結果、意図しない撚り合わせ構造が生じ、部分的に
ゴムの進入が不完全になる場合がある。上述したよう
に、従来のベルト補強に使用する内部に空洞を持たない
スチールコードは、ベルトを薄くすることによる低発熱
化、コスト、物性について十分満足できる状態に至って
いない。

【０００４】本発明は、隣り合った素線間にゴムが進入
する間隙を設けて耐腐蝕性を大きくした断面が大略楕円
形の低コスト、高強度スチールコードでベルトプライを
補強することによりコード切れ、ベルトプライ端のセパ
レーションの発生を低減してベルト耐久性を向上させた
大型ラジアルタイヤを提供することを発明の課題にして
なされたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、多数のコード
をタイヤ周方向に対して直角に等間隔で配列し、端がビ
ードコアの回りを内側から外に向かって巻き上げられて
係止したカーカスコード層で補強されたカーカスとトレ
ッドの間に、タイヤ周方向に対し傾斜して等間隔で配列
した多数のスチールコードで補強されたベルトプライの
複数層を積層してなるベルトが配置されている大型ラジ
アルタイヤにおいて、ベルトプライの少なくとも１層を
補強するスチールコードが同径の２本の芯素線を撚るこ
となく並列した芯と芯素線の０．８〜１．２倍の直径を
持つ同径の５〜８本の外層素線を、素線間に間隙を設け
その平均が０．０２〜０．２５mmになるようにしなが
ら、芯に密接して外層素線径の４０〜６０倍のピッチで
らせん状に巻き付けた外層とでなる断面輪郭が大略楕円
形の２層構造であって、前記スチールコードで補強され
たベルトプライ内では大部分のスチールコードが断面輪
郭の長径方向を横向きにして配列し、外層素線間隙の大
部分がゴムで充填されている大型ラジアルタイヤであ
る。

【０００６】本発明の大型タイヤのベルトプライを補強
するスチールコードを構成する素線としては、タイヤに
使用されるスチールコード用に調整して伸線されたもの
が用いられるが、その中でもＨＴコードと呼ばれる高強
度スチールコード用に調整された炭素含有量を０．８０
重量％以上にして引っ張り強度が２９０kgf/mm² 以上に
されたものが好適である。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の詳細を、図面を参照しな
がら説明する。図１は本発明の大型ラジアルタイヤの断
面図である。図において、カーカス１は、多数のコード
をタイヤ周方向に対して直角に等間隔で配列したカーカ
スコード層２の１層または複数層で補強されている。カ
ーカスコード層２の端はビードコア３の回りを内側から
外に向かって巻き上げられてビードコア３に係止してい
る。カーカス１のクラウン部の外側にトレッド４が配置
し、カーカス１に密接してトレッド４との間に、カーカ
ス１を締め付けて形状を安定させる箍の作用をするベル
ト５が設置され、ベルト５はタイヤ周方向に対し傾斜し
て多数の配列したスチールコードで補強されたベルトプ
ライ６の３〜５層が積層して形成される。ベルトプライ
の少なくとも１層、特に最外ベルトプライを補強するス
チールコードは、２本の芯素線を平行に並列してなる芯
と芯素線の０．８〜１．２倍の径を有する５〜８本の外
層素線を芯に密接してらせん状に巻き付けた外層とでな
る２層構造を有し、断面の輪郭が大略楕円形である。ベ
ルトプライ内においてスチールコードは断面輪郭の長径
方向を横向きにして配列される。スチールコードを断面
輪郭の長径方向を横向きにして配列することにより、同
一断面積の断面円形のスチールコードを配列した場合と
比較して、ベルトプライが薄くなって厚み方向の曲げ剛
性が小さくなることにより、上記スチールコードを組み
込んだタイヤが走行中石等を踏んだ際、ベルトが石を包
むように変形して衝撃を緩和する作用、所謂エンベロー
プ効果が大きくなってコード折が生じにくく、ベルトが
薄くなるので繰り返し変形のヒステリシスロスによるベ
ルト端部の温度上昇が小さくなってセパレーションが生
じにくくなる。一方ベルト幅方向の剛性が高くなって操
縦安定性が向上する。

【０００８】外層素線が５本の場合の断面を示す図２に
従えば、２本の芯素線８ａ、８ｂは撚られずに平行に配
列して芯を形成し、任意位置の断面を表す（ａ）、その
位置から１／４ピッチ離れた点での断面を表す（ｂ）、
１／２ピッチ離れた点での断面を表す（ｃ）、３／４ピ
ッチ離れた点での断面を表す（ｄ）及び１ピッチ離れた
点での断面を表す（ｅ）のそれぞれに示されるように芯
素線８ａと８ｂの位置関係は不変であり、芯の回りに位
置する外層９は外層素線１０を、隣り合った素線間に間
隙１１を設けながら、芯８に密接してらせん状に巻き付
けて形成され、間隙１１の大きさｄは平均が０．０２〜
０．２５mmになるように設定され、また、外層素線１０
のらせん巻きピッチは外層素線の直径の４０〜６０倍に
設定される。隣り合った外層素線１０ａ、１０ｂの間隙
が０．０２mmより小さい場合は、間隙にゴムが進入しに
くいので２本の芯素線が接する凹んだ部分に沿って空洞
ができ、浸入した水分が上記の空洞を伝ってコード内に
広がり錆を生じさせ、０．２５mmより大きくなると図５
に示すようにスチールコード内での素線配置の安定性が
悪くなって加工中に素線が動いて隣り合った外層素線１
０ａ、１０ｂが接触して却って空洞ができ、平均間隙を
上記範囲外に設定するのは好ましくない。らせん巻きピ
ッチが外層素線の直径の４０倍未満の場合には、コード
重量が大になり、６０倍より大きい場合には、予備型付
けの精度が低下して安定なコード形状に撚り上げにくく
り、１本のコード内で剛性が大きい部分と小さい部分が
でき、タイヤに組み込んで悪路走行においてコード折れ
が発生する確率が高くなる。

【０００９】

【実施例】カーカスを、３＋９×0.22＋１の構造式で表
されるスチールコードを２５mm当たり１５本のエンド数
でタイヤ周方向に対し直角に配列して端をビードコアの
回りを内側から外に向かって巻き上げ、ビードコアに係
止したカーカスコード層で補強し、ベルトを３×0.20＋
６×0.35の構造式で表されるスチールコードを２５mm当
たり７本のエンド数でタイヤ周方向に対し５５度の角度
で配列して補強した最内ベルトプライと、その外側に表
１に示すスチールコードを表１に示すエンド数でタイヤ
周方向に対し２０度の角度で配列して補強したベルトプ
ライの３層とをコードの傾斜方向が相互に反対向きにな
るように積層してベルトを形成し、他の部材は従来条件
のものを用いて通常の方法に従ってタイヤサイズ１１Ｒ
２２．５ １４PRの大型ラジアルタイヤを試作し、解体
試験、高速耐久性試験及び悪路走行後の解体試験を行い
結果を表１に示した。

【００１０】

【表１】

【００１１】

【表２】

【００１２】解体試験、高速耐久性試験及び悪路走行後
の解体試験の評価項目及び試験条件を下記に示す。 解体試験評の評価項目と試験法 (1) 外層素線の間隙 最外ベルトプライからサンプリングした１０本のスチー
ルコードを（以下に示す試験に供するスチールコード試
片はいずれも最外ベルトプライからサンプリングす
る）、コード軸方向に直角に切断して切断面を鏡面研磨
し、長さ測定目盛り付きの光学顕微鏡を用いて倍率５０
倍で試片のそれぞれについて各素線の間の距離を測定
し、平均値を示した。 (2) 外層素線配置の均一性 上記の外層素線の間隙試験に引き続いて、顕微鏡の倍率
を２０倍にして外層素線の配置状態を観察し、ほぼ等間
隔に配置しているものを○、配置に乱れがあるものを×
で示した。 (3) ゴム進入性 サンプリングした１０本のスチールコードの素線を解
し、素線のゴム付着状態を観察し、芯の内部までゴムが
進入しているものを良、芯と外層の間に部分的にゴムが
進入していない箇所があるものを不良、ほとんどゴムが
進入していない箇所があるものを不可で示した。 (4) 耐腐蝕性 ベルトから埋設ゴムが削ぎ落とされないようにして取り
出したスチールコードを１０cm長さに切断して１０％食
塩水に４８時間浸漬した後、コードを解して発生した錆
の長さを測定し、延べ長さを示した。値が小さいほど好
ましい。 (5) 高速耐久性試験 米国の自動車安全基準ＦＭＶＳＳ１１９に規定する高速
耐久試験条件に準じてドラム試験を行い、規定条件を完
走したものを合格、完走できなかったものを不合格とし
て示した。 (6) 悪路走行後の解体試験 上記の試作大型ラジアルタイヤを大型ダンプカーに装着
して砕石場内を３万km走行した後取り外し、解体して次
の項目について評価した。 1) コード切れ タイヤからトレッドゴムを剥いでベルトを露出させてコ
ードが折損している箇所を数え、（各タイヤの折損箇所
数）×１００／（比較例４の折損箇所数）の式で求めて
値を示した。値が小さいほど好ましい。 2) カットセパレーション（表１ではカットセパと表
示する） 上記のコード切れ箇所を数えた後、外傷を受けてスチー
ルコードが錆び、錆が原因になって発生したセパレーシ
ョンの長さを測定し、１０mm未満を小、１０〜３０mmを
中、３０mmより大を大で表示した。 3) ベルトエッジセパレーション（表１ではエッジセ
パと表示する） ベルトプライの縁に発生したセパレーションの長さを測
定して示す。値が小さいほど好ましい。

【００１３】比較例１は、外層に径が芯素線径の１．２
倍より太い素線を使用して外層素線間隙が狭くなった例
であり、その結果ゴム進入が悪く、耐腐蝕性が劣り、コ
ード切れが多くなり、カットセパ、エッジセパが大きく
なっている。比較例２は、外層素線間隙が０，２５mmよ
り大になった例であって、図５に示すように外層素線の
配置が不均一になってゴム進入が悪くなり、耐腐蝕性が
劣り、コード切れが多くなっている。比較例３は、外層
素線のらせんピッチが外層素線径の６０倍より大きくな
った例であって、耐腐蝕性はよいが、コード切れが多く
なっている。比較例４は従来使用されていた３×０．２
０＋６×０．３５構造を使用した例であって、芯の中心
に空洞ができ、耐腐蝕性が劣っている。

【００１４】

【発明の効果】ベルトプライを補強するスチールコード
の構成を、２本の芯素線を平行に配列して形成した芯
と、その回りに径が芯素線の０．８〜１．２倍である外
層素線の５〜８本を０．０２〜０．２５mmの間隙を設け
ながら外層素線径の４０〜６０倍のピッチでらせん状に
巻き付けた外層との２層構造にすることにより、外層素
線間の間隙を通してスチールコード埋設ゴムを発錆の原
因となっていたスチールコード内の空洞に進入させて空
洞をゴムで充填し、その結果耐腐蝕性と耐コード切れ性
が向上してタイヤの耐久性がよくなる。また、芯が撚ら
れていないので、従来の芯素線を撚ったスチールコード
或いは芯素線を波方の型付けをしたスチールコードより
撚工数が少なく、低コストで製造される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の大型ラジアルタイヤの右半分の断面
図である。

【図２】 本発明の大型ラジアルタイヤのベルトプライ
を補強するスチールコードの断面図である。

【図３】 従来の大型ラジアルタイヤのベルトプライを
補強する３＋６構造のスチールコードの断面図である。

【図４】従来の大型ラジアルタイヤのベルトプライを補
強する１×２＋７構造のスチールコードの断面図であ
る。

【図５】大型ラジアルタイヤのベルトプライを補強する
比較例のスチールコードの断面図である。

【符号の説明】

１ カーカス ２ カーカスコード層 ３ ビードコア ４ トレッド ５ ベルト ６ ベルトプライ ７ スチールコード ８ 芯 ８ａ 芯素線 ８ｂ 芯素線 ９ 外層 １０ 外層素線

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多数のコードをタイヤ周方向に対して直
   角に等間隔で配列し、端がビードコアの回りを内側から
   外に向かって巻き上げられて係止したカーカスコード層
   で補強されたカーカスとトレッドの間に、タイヤ周方向
   に対し傾斜して等間隔で配列した多数のスチールコード
   で補強されたベルトプライの複数層を積層してなるベル
   トが配置されている大型ラジアルタイヤにおいて、ベル
   トプライの少なくとも１層を補強するスチールコードが
   同径の２本の芯素線を撚ることなく並列した芯と芯素線
   の０．８〜１．２倍の直径を持つ同径の５〜８本の外層
   素線を、素線間に間隙を設けその平均が０．０２〜０．
   ２５mmになるようにしながら、芯に密接して外層素線径
   の４０〜６０倍のピッチでらせん状に巻き付けた外層と
   でなる断面輪郭が大略楕円形の２層構造であって、前記
   スチールコードで補強されたベルトプライ内では大部分
   のスチールコードが断面輪郭の長径方向を横向きにして
   配列し、外層素線間隙の大部分がゴムで充填されている
   ことを特徴とする大型ラジアルタイヤ。