JPH09119465A - 湿式摩擦材及びその製造方法 - Google Patents

湿式摩擦材及びその製造方法

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JPH09119465A
JPH09119465A JP28965496A JP28965496A JPH09119465A JP H09119465 A JPH09119465 A JP H09119465A JP 28965496 A JP28965496 A JP 28965496A JP 28965496 A JP28965496 A JP 28965496A JP H09119465 A JPH09119465 A JP H09119465A
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JP
Japan
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fiber
wet friction
friction material
carbon powder
carbon
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JP28965496A
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English (en)
Inventor
Hideo Ono
英雄 小野
Hideto Nakagawa
英人 中川
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Aisin Chemical Co Ltd
Original Assignee
Aisin Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 相手材との滑りを円滑化、均一化して、ジャ
ダー現象を抑制する。 【解決手段】 基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混
合材料を抄造してなる抄紙体に、硬質のカーボンの粉体
または繊維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、樹脂を
含浸させると同時にそのカーボンの粉体または繊維を表
層部に着床させ、次いで、加熱して樹脂を硬化させる。
これによって、ペーパー系の湿式摩擦材を本体とし、そ
の摺動表面部に結合樹脂によって結合保持された硬質の
カーボンの粉体または繊維からなるカーボン層を備える
湿式摩擦材が得られ、そのカーボンの自己潤滑作用によ
り、相手材との滑りが円滑化、均一化され、ジャダー現
象が抑制される。また、抄紙体に含浸する結合樹脂液に
カーボンの粉体または繊維を混合分散することによっ
て、カーボン層を形成するための独立した別個の工程を
必要としないため、従来と同じ製造工程により容易に製
造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車の自動変速機
等において用いる湿式摩擦材、即ち、潤滑油中に浸した
状態で使用されるクラッチ、ブレーキ等の摩擦係合装置
に用いる湿式摩擦材及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車の自動変速機においては、リング
プレート状の金属製基板(芯金)の表面に湿式摩擦材を
接着した複数のディスクプレートと、同じくリングプレ
ート状の金属板からなる摩擦相手材としての複数のセパ
レートプレートとを交互に配した多板クラッチが組込ま
れ、潤滑油として使用されるATF(オートマチックト
ランスミッションフルード)の中で、これらの摩擦材と
相手材とを相互に圧接し、また開放することによって、
駆動力を伝達または遮断するようにしている。また、近
年では、このような自動変速機の制御法の発展により、
それらの湿式摩擦材と相手材との間に差回転を発生させ
つつ駆動力を伝達するスリップ制御法が開発されてい
る。そして、このスリップ制御法によれば、摩擦材と相
手材とが滑りながら駆動力を伝達するため、ちょうど半
クラッチと同様の状態が生じ、駆動力の滑らかな伝達を
行うことができる。
【0003】なお、自動変速機には、反力要素を固定
し、また解放するために、同様の多板ブレーキまたはバ
ンドブレーキも一般に組込まれている。このバンドブレ
ーキの場合、湿式摩擦材はブレーキバンドに接着され、
相手材としてのブレーキドラムと摩擦係合してその回転
を制動する。
【0004】そして、従来より、このような油中で使用
される摩擦係合装置に用いる湿式摩擦材としては、焼結
合金系や炭素コンポジット系等の摩擦材も知られている
が、「ペーパー摩擦材」とも呼ばれるペーパー系の湿式
摩擦材が一般的である。この湿式摩擦材は、パルプやア
ラミド繊維等の基材繊維と、カシューダスト等の摩擦調
整剤や珪藻土等の体質充填剤等の充填剤とを抄造して得
た抄紙体に、フェノール樹脂等の結合樹脂液を塗布し含
浸させ、次いで加熱硬化して形成したものであり、軽量
で、安価であるだけでなく、材質が多孔質で比較的弾性
にも富むため油吸収性が高く、しかも、耐熱性、耐摩耗
性等にも比較的優れている等の特長を有している。
【0005】なお、このようなペーパー系の湿式摩擦材
に関しては、例えば、特開平1−288639号公報
(結合樹脂の改良)、特公平2−61661号公報(摩
擦調整剤であるカシューダストの改良)に記載されてい
る。
【0006】また、この種の湿式摩擦材については、そ
の摩擦特性を改良するために、その摺動表面にカーボン
層を形成したものも知られている。
【0007】例えば、特開昭61−85443号公報に
は、不織布或いは紙状シート(抄紙体)に耐熱性(及び
低弾性)の熱硬化性樹脂からなる結合樹脂液を含浸さ
せ、加熱硬化して得られる湿式摩擦材本体の表面に、固
体潤滑剤の微粉末を混合した同種の結合樹脂液を塗布
し、次いで加熱硬化してなる湿式摩擦材が開示されてお
り、その固体潤滑剤として、二硫化モリブデン、二硫化
タングステン等と共に、黒鉛、コークス等のカーボン粉
体が挙げられている。
【0008】また、米国特許第4639392号には、
例えば、セルロース繊維と珪藻土等の充填剤とを抄造し
た抄紙体にフェノール樹脂を含浸し、硬化して得た摩擦
シート等の通常の担体シート(ペーパー系湿式摩擦材)
の表面に、固体のフィルム状接着剤を介して石油コーク
スからなるカーボン粒子とフェノール樹脂粉末またはフ
ェノール樹脂液との混合物を均一に施し、次いで圧縮成
形または加熱硬化してなる湿式摩擦材(摩擦フェーシン
グ層)が開示されている。
【0009】更に、米国特許第5083650号には、
アラミド繊維等を抄造して得た耐熱紙(抄紙体)に、フ
ェノール樹脂等の熱硬化性樹脂からなる結合樹脂液を粘
性状態で塗布して、その表面に被覆すると共に少なくと
も部分的に含浸させ、次いで、その表面にコークス等か
らなる顆粒状のカーボン粒子を被着させて部分的に埋設
させ、これを一旦少なくとも部分的に加熱硬化した後、
更にその表面に同種の熱硬化性樹脂液を塗布し(ただ
し、そのカーボン粒子を覆い隠さないように)、再度加
熱硬化してなる湿式摩擦材が開示されている。(なお、
その熱硬化性樹脂液には、好ましくは、カーボンのフィ
ラー粒子が添加される。)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、自動車
の自動変速機等において湿式摩擦材としては、基材繊維
と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を抄造して得られ
た抄紙体に、結合樹脂液を塗布し含浸させ、次いで加熱
硬化してなるペーパー系の湿式摩擦材、即ち、摩擦調整
剤等の充填剤が分散して充填された基材繊維の抄紙体
が、その全体に含浸されて硬化された結合樹脂によって
結着された湿式摩擦材が一般に使用されている。
【0011】しかしながら、このペーパー系の湿式摩擦
材はその多孔質な材質によって比較的弾性にも富むた
め、相手材に対する当り性(なじみ性、追従性)は本来
的に優れてはいるものの、その柔軟性により逆に表面の
平滑化のための仕上げ処理が比較的困難であることによ
って、必ずしも当り性は十分とはならず、特に、大型化
した場合ではその傾向が大きく、相手材と片寄りして当
接し易い傾向にあった。そして、この不十分な当り性、
即ち、当りの片寄り現象は、特に、前述の自動変速機の
スリップ制御時には、相手材との間の滑りの不均一(ト
ルク変動)を引起こし、それによってジャダー現象が発
生し、振動、鳴き等の不具合が生じる傾向があった。そ
のため、この種の特にスリップ制御法に用いられる湿式
摩擦材については、相手材との間に円滑で均一な滑りが
得られ、ジャダー現象を抑制できることが要望されてい
た。
【0012】ところで、前述の特開昭61−85443
号公報、或いは米国特許明細書に開示の技術、即ち、摺
動表面にカーボン層を形成したペーパー系の湿式摩擦材
によれば、そのカーボンの自己潤滑効果によって、相手
材との間の滑りをより円滑にし、また均一化することが
可能である。したがって、ジャダー現象も抑制すること
ができる。しかし、これらの技術は、具体的にはいずれ
も、そのカーボン層の形成のために湿式摩擦材本体の形
成とは独立した別個の工程を要するものであり、そのた
め、製造工程が煩雑となり、その製造に手間がかかるも
のであった。
【0013】そこで、本発明は、相手材との滑りを円滑
にし、かつ、均一化して、ジャダー現象を抑制すること
ができ、しかも、容易に製造することができる湿式摩擦
材及びその製造方法の提供を課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、抄紙体に
結合樹脂液を塗布し含浸させ、次いで加熱硬化するペー
パー系の湿式摩擦材の一般的製造過程において、その結
合樹脂液に予めカーボンの粉体または繊維を混入し、分
散しておくことによって、結合樹脂は抄紙体に含浸する
一方、抄紙体が濾過材のように働いてカーボンの粉体ま
たは繊維はその表層部に着床してとどまること、したが
って、次いで加熱して結合樹脂を硬化することによっ
て、カーボン層を摺動表面に備える湿式摩擦材を容易に
得ることができることに着目し、そして、そのように製
造して得られた湿式摩擦材は、そのカーボン層により相
手材との滑りを円滑にし、かつ、均一化して、ジャダー
現象を抑制することができることを確認した。
【0015】即ち、本発明にかかる湿式摩擦材は、基材
繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を抄造して得
た抄紙体に、硬質のカーボンの粉体または繊維を混合分
散した結合樹脂液を塗布し、その結合樹脂を抄紙体に含
浸させると同時にそのカーボンの粉体または繊維を抄紙
体の表層部に着床させ、次いで、加熱して結合樹脂を硬
化させてなるものである。
【0016】また、本発明にかかる湿式摩擦材の製造方
法は、基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を
抄造して得た抄紙体に、硬質のカーボンの粉体または繊
維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、その結合樹脂を
抄紙体に含浸させると同時にそのカーボンの粉体または
繊維を抄紙体の表層部に着床させ、次いで、加熱して結
合樹脂を硬化させることからなるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0018】本発明において、カーボン層を形成するカ
ーボンの粉体または繊維としては、黒鉛やコークス等の
軟質なものではなく、実質的に黒鉛化されていない硬質
のもの、好ましくは、モース硬度において6〜8のもの
が使用される。そして、このような硬質のカーボンの粉
体は、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂或いは
石油・石炭系ピッチを非酸化性雰囲気下で炭化焼成し、
更に、この炭化焼成体を所定の粒径に微粉砕して得るこ
とができる。この場合、その焼成温度は600℃〜20
00℃が好ましく、また、最も硬質化する800〜14
00℃がより好ましい。600℃以下では、有機成分が
残存する傾向が生じ、硬度が小さく、弾性率も小さいた
め、好ましくない。他方、2000℃以上ではカーボン
の黒鉛化、即ち、結晶化が進行するため、硬度、弾性率
とも低下し、好ましくない。そして、この硬質カーボン
の粉体の粒径は、一般に0.1〜50μm、好ましくは
5〜15μmがよく、更に、カーボン純度は90%以上
が好ましい。また、同様な硬質カーボンの繊維は、例え
ば、石油系ピッチから合成したカーボン繊維を粉状の短
繊維に切断することによって得ることができ、その平均
繊維長は0.1mm程度が好ましい。
【0019】なお、本発明において湿式摩擦材を形成す
るその他の材料は、従来と同様である。即ち、基材繊維
としては、パルプ、或いはアラミド繊維、ノボロイド繊
維等の有機繊維、ガラス繊維、ロックウール、シリケー
ト繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、スチール繊維、ス
テンレススチール繊維等の金属繊維等を挙げることがで
きる。そして、これらの基材繊維は、それぞれ単独で、
または2種以上を適宜組合せて使用することができる。
【0020】また、得られる湿式摩擦材の特性を改質
し、向上するために添加され、そして基材繊維のマトリ
ックス中に分散して充填され保持される充填剤として
は、カシューダスト等の摩擦調整剤、珪藻土等の体質充
填剤等を挙げることができ、これらを従来と同様に適宜
配合することができる。
【0021】更に、結合樹脂としては一般に熱硬化性樹
脂が使用され、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メ
ラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂
等を挙げることができる。しかし、結合性、耐熱性等に
優れ、また取扱いも簡易である点において、これらの中
でも特に、変性または無変性のフェノール樹脂を好適に
用いることができる。また、この結合樹脂は、抄紙体に
浸透し、これに含浸されるために、従来と同様に適度な
粘度の液体の形態で使用され、液状樹脂としてそのま
ま、または、適当な溶剤に溶解し稀釈したワニスとして
使用することができる。
【0022】そして、本発明においてこのような材料を
原料とする湿式摩擦材は、工程上、従来と実質的に同じ
工程で製造することができる。具体的には、基材繊維と
摩擦調整剤等の充填剤との混合材料の抄造、即ち、抄紙
体の形成は、その混合材料を水に分散してスラリーを調
成し、そしてこのスラリーを抄網で濾過してその混合材
料の濾滓からなる湿紙抄紙体を形成し、次いでこれを圧
搾し、乾燥することによって行なうことができる。次
に、本発明では、結合樹脂液の塗布工程において、その
結合樹脂液に上記の硬質のカーボンの粉体または繊維を
混合し、均一に分散させ、これをその得られた抄紙体の
表面に塗布する。ただし、この塗布自体は、従来と同様
に浸漬、スプレー、或いは塗布ロール等の手段によって
行なうことができる。次いで、この塗布工程によって結
合樹脂が含浸されると共にカーボンの粉体または繊維が
表層部に着床した抄紙体を、適宜乾燥後、その結合樹脂
の硬化温度に加熱してそれを硬化する。
【0023】こうして製造された湿式摩擦材は、適宜仕
上げ加工等を施すと共に適当な芯金に接着して、湿式摩
擦プレート(ディスクプレート)等として、自動変速機
等における湿式摩擦係合装置に使用される。
【0024】(作用)本発明においては、抄紙体の基材
繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を抄造して得
た抄紙体に、硬質のカーボンの粉体または繊維を混合分
散した結合樹脂液を塗布しているので、それによって、
結合樹脂は抄紙体に浸透し含浸する一方、カーボンの粉
体または繊維は、抄紙体が濾過材(濾紙)のようなもの
であるため、その表層部にとどめられ着床する。そのた
め、次いでこれを加熱して結合樹脂を硬化することによ
って、基材繊維と充填剤からなる抄紙体は含浸された結
合樹脂によって結着され、湿式摩擦材本体が形成される
と同時に、その表層部に着床したカーボンの粉体または
繊維も結合樹脂によって強固に結合保持される。即ち、
ペーパー系の湿式摩擦材を本体とし、その摺動表面部に
硬質のカーボンの粉体または繊維からなるカーボン層が
形成された湿式摩擦材が、実質的に単一の工程によって
容易に製造される。
【0025】そして、この得られた湿式摩擦材によれ
ば、そのカーボンの自己潤滑性により、相手材との間の
滑りがより円滑化され、均一化する。そのため、トルク
変動を少なくし、ジャダー現象を抑制することができ
る。なおこの場合、そのカーボンは硬質のカーボンから
なるので、良好な摩擦特性と耐摩耗性等を維持すること
ができる。また、そのカーボンの粉体または繊維は、実
質的に抄紙体の表層部、即ち、摩擦材の摺動表面部のみ
に含まれてカーボン層を形成しており、摩擦材の本体部
は従来と同一材質で形成されるので、耐熱性、耐剥離性
等が低下することはなく、従来と同等の一般性能が確保
される。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により、更に具体的に
説明する。
【0027】〈第一実施例〉まず、第一実施例として、
カーボン層を形成する硬質のカーボンとしてその粉体を
用いた湿式摩擦材とその製造方法について説明する。
【0028】この第一実施例の湿式摩擦材を以下のよう
に製造した。
【0029】まず、基材繊維としてのパルプ50重量%
及びアラミド繊維10重量%と、充填剤としてのカシュ
ーダスト(摩擦調整剤)10重量%及び珪藻土(体質充
填剤)30重量%とを混合した混合材料を抄造し、その
配合組成からなる抄紙体を形成した。その一方、別途
に、フェノール樹脂硬化体を非酸化性雰囲気下において
800℃で炭化焼成し、そしてこれによって得られた炭
化焼成体を微粉砕して、平均粒径10μmの硬質のカー
ボン粉体を製造した。なお、このカーボンの比重は1.
4〜1.6であり、モース硬度は約6.5であった。
【0030】そして、この硬質のカーボンの粉体を結合
樹脂としてのフェノール樹脂ワニスに5重量%の割合で
混合して、均一に分散させ、次いで、これを上記の抄紙
体に浸漬により塗布し、樹脂分を含浸させた。次いで、
これを取出し(この際、抄紙体の表層部には、硬質のカ
ーボン粉体が均一に被着し、着床していた)、自然乾燥
させた後、200℃の炉内にて10分間処理し、そのフ
ェノール樹脂を加熱硬化させた。そして、この加熱硬化
体を200℃の熱プレスにて型成形し、更に、機械加工
を行なって湿式摩擦材を製造した。これによって、摺動
表面部に硬質のカーボンの粉体が強固に着床し、カーボ
ン層が形成された湿式摩擦材を得た。
【0031】このようにして作製した湿式摩擦材につい
て、スリップ評価(連続滑り摩擦評価試験)を実施し
た。具体的には、このスリップ評価は、図1に示すよう
に行なった。
【0032】図1はその湿式摩擦材のスリップ評価方法
を示す概略図である。
【0033】この評価試験においては、上記方法によっ
て作製した湿式摩擦材1をリングプレート状の芯金2の
両面に接着して供試体とした。そして、テスターケース
3に回転しないように組付けられた相手材である鉄板4
で挾持し、ピストン5を介して面圧20kg/cm2 となる
荷重で加圧した。次いで、供試体をハブ6により差回転
速度と想定した10rpm で回転させ、このときに発生す
る不均一滑り量をトルク振幅(トルク変動量)として検
出し、評価の対象とした。なお、これらの操作はATF
の中に浸漬した状態で行なった。
【0034】その結果、トルク振幅は2kg・m であっ
た。
【0035】次に、比較のため、上記の硬質のカーボン
粉体からなるカーボン層を有しない湿式摩擦材を比較例
として作製し、実施例と同一の方法でスリップ評価を行
なった。なお、この比較例の湿式摩擦材は、そのカーボ
ン粉体をフェノール樹脂ワニスに混合しないで製造した
点以外は、上記実施例と同じ材料を使用し、また同一の
製造工程によって作製した。
【0036】その結果、この比較例の湿式摩擦材のトル
ク振幅は15kg・m であった。
【0037】このスリップ評価試験の結果より、硬質の
カーボンの粉体からなるカーボン層が摺動表面部に形成
されている本実施例の湿式摩擦材は、これを有しない比
較例の湿式摩擦材に比べてトルク振幅が顕著に小さく、
したがって、不均一滑り量が少ないことが分かる。
【0038】このように、本実施例の湿式摩擦材は、基
材繊維であるパルプ及びアラミド繊維と、充填剤である
カシューダスト及び珪藻土との混合材料を抄造して得た
抄紙体に、フェノール樹脂硬化体を炭化焼成し微粉砕し
て得た硬質のカーボンの粉体を混合分散したフェノール
樹脂からなる結合樹脂液を塗布し、その結合樹脂を抄紙
体に含浸させると同時にカーボンの粉体を抄紙体の表層
部に着床させ、次いで、加熱して結合樹脂を硬化させる
ことによって製造されたものである。
【0039】したがって、このように製造されることに
より、基材繊維と充填剤との混合材料からなる抄紙体が
その含浸された結合樹脂によって結着され、湿式摩擦材
本体が形成されると同時に、その表層部に着床した硬質
のカーボンの粉体も結合樹脂によって強固に結合保持さ
れる。即ち、ペーパー系の湿式摩擦材を本体とし、その
摺動表面部に硬質のカーボン粉体からなるカーボン層が
形成された湿式摩擦材が得られる。そのため、この湿式
摩擦材によれば、そのカーボンの自己潤滑作用によって
相手材との間の滑りが滑らかになり、また伝達トルクが
均一化する。その結果、ジャダー現象が抑制され、ま
た、それによって振動、鳴きの発生を防止することがで
きる。また、カーボンとしては、フェノール樹脂硬化体
を800℃で炭化焼成して得られた硬質のもの(モース
硬度6.5)を使用しているので、良好な摩擦特性と耐
摩耗性等を確保することができる。
【0040】そして、摺動表面部にカーボン層を有する
そのような湿式摩擦材の製造は、抄紙体に塗布し含浸す
る結合樹脂液に予めそのカーボンの粉体を混合し、分散
させておくだけであり、従来の一般的な湿式摩擦材の製
造方法に対してカーボン層を形成するための新たな工程
を加えることなく、従来の一般的な湿式摩擦材の製造方
法と同じ工程によって行なうので、簡単に、また、容易
に上記の摩擦材を製造することができる効果がある。
【0041】ところで、これと同様にジャダー現象を抑
制し、スリップ性能を改善するために、そのカーボン粉
体を予め多量に抄紙体中に配合しておくこと、つまり、
基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料に更に多
量のカーボン粉体を混合し、これを合せて抄造して抄紙
体を形成することも考えられる。しかし、そのようにカ
ーボン粉体を多量に配合した湿式摩擦材では紙力が低下
するばかりか、本来のペーパー系湿式摩擦材としての性
能までが大きく変化してしまう恐れがある。これに対
し、本実施例の湿式摩擦材では、カーボンの粉体は抄紙
体の実質的に表層部のみに含まれ、カーボン層が実質的
に摺動表面部のみに形成されると共に、湿式摩擦材の本
体部は従来と同一材質で形成されるため、そのような不
具合はなく、耐熱性(油吸収性)、耐剥離性等が低下せ
ずに従来と同等の良好な一般性能を確保できる。
【0042】なお、カーボン粉体を予め抄紙体中に配合
する場合、その配合割合が少ないと十分なスリップ性能
が得られない。具体的には、パルプ45重量%、アラミ
ド繊維10重量%、カシューダスト10重量%、及び珪
藻土25重量%と、更に、本実施例で用いた硬質のカー
ボン粉体10重量%とを合せて抄造し、そのカーボン粉
体が全体に均一に分散された抄紙体を形成し、この抄紙
体にフェノール樹脂ワニスのみを塗布し含浸させ、次い
で加熱硬化することによって、別の比較例の湿式摩擦材
を作製した。そして、これについて上記のスリップ評価
を行なったところ、トルク振幅は8kg・m であった。こ
のトルク振幅は、カーボン粉体を全く使用しない上記比
較例の15kg・m よりは少ないが、本実施例の2kg・m
と比較しても十分なものではない。
【0043】〈第二実施例〉次に、第二実施例として、
カーボン層を形成する硬質のカーボンとしてその繊維を
使用した湿式摩擦材について説明する。
【0044】この第二実施例の湿式摩擦材は以下のよう
に製造した。
【0045】第一実施例と同一の抄紙体とフェノール樹
脂ワニスとを使用し、更に、石油ピッチから合成された
高硬度(モース硬度約7)、高弾性の炭素繊維を、平均
繊維長0.1mmに切断した粉状のカーボン繊維を用意
し、このカーボン繊維を5重量%となるよう前記フェノ
ール樹脂ワニスに混合分散した後、このフェノール樹脂
ワニスを第一実施例と同様にして前記抄紙体に塗布し、
樹脂を含浸させると共にカーボン繊維を表層部に着床さ
せ、次いで風乾、熱硬化、熱成形、機械加工して、第二
実施例の湿式摩擦材を得た。得られた湿式摩擦材は、抄
紙体がその含浸されたフェノール樹脂により結着され
て、本体部が形成される一方、その表層部に着床したカ
ーボン繊維もフェノール樹脂により結合保持され、それ
によって、摺動表面部にカーボン層が形成されたもので
あった。
【0046】そして、この湿式摩擦材について、第一実
施例の場合と同様にスリップ評価を実施した。その結
果、トルク振幅は3kg・m であった。
【0047】次に、比較例として、カーボン繊維に代え
て、同様の粉状のガラス繊維を使用した湿式摩擦材を作
製し、同様にスリップ評価を行なった。なお、この比較
例の湿式摩擦材は、カーボン繊維に代えてガラス繊維を
用いた以外は、本実施例と同一の条件、製造工程により
作製した。
【0048】このようにして作製され、摺動表面部にガ
ラス繊維層を有する比較例の湿式摩擦材は、そのトルク
振幅が9kg・m であった。
【0049】この結果から、摺動表面部に硬質のカーボ
ンの繊維からなるカーボン層を有する本実施例の湿式摩
擦材は、比較例に比べてトルク振幅が顕著に小さく、し
たがって、不均一滑り量が少ないことが分かる。
【0050】このように、本実施例の湿式摩擦材は、基
材繊維であるパルプ及びアラミド繊維と、充填剤である
カシューダスト(摩擦調整剤)及び珪藻土(体質充填
剤)との混合材料を抄造して得た抄紙体に、粉状の硬質
のカーボン繊維を混合分散したフェノール樹脂からなる
結合樹脂液を塗布し、樹脂を抄紙体に含浸させると同時
にカーボンの粉体をその表層部に着床させ、次いで、加
熱して樹脂を硬化させることによって製造したものであ
る。
【0051】したがって、この湿式摩擦材によれば、摺
動表面部に硬質のカーボン繊維からなるカーボン層を備
えるため、そのカーボン層によって、相手材との間の滑
りが円滑化され、伝達トルクが均一化され、またそれに
よってジャダー現象が抑制される等、第一実施例の場合
と同じ効果を得ることができる。また、そのカーボン層
を有する湿式摩擦材は、抄紙体に塗布し含浸する結合樹
脂液に予めカーボン繊維を混合分散させておくだけで、
従来の一般的な湿式摩擦材の製造と同じ工程によって製
造されるので、簡単に、かつ、容易に製造できる効果が
ある。
【0052】ところで、本発明の湿式摩擦材について
は、主に、自動車の自動変速機における湿式摩擦係合装
置での使用と関連して説明したが、本発明を実施する場
合には、このような用途での利用、特に、スリップ制御
法による利用だけでなく、その他の湿式摩擦係合装置、
即ち、油中で使用されるクラッチまたはブレーキ等の摩
擦係合装置の湿式摩擦材としても、同様に有利に利用す
ることができる。また、繊維基材及び摩擦調整剤等の充
填剤の種類と組成割合、結合樹脂の種類等についても、
上記の実施例に限定されることなく、望まれる特性等に
応じて種々に変更することができる。
【0053】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかる湿式摩擦
材は、基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を
抄造してなる抄紙体に、硬質のカーボンの粉体または繊
維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、その結合樹脂を
抄紙体に含浸させると同時にそのカーボンの粉体または
繊維を抄紙体の表層部に着床させ、次いで、加熱して結
合樹脂を硬化させてなるものである。
【0054】また、本発明にかかる湿式摩擦材の製造方
法は、基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混合材料を
抄造してなる抄紙体に、硬質のカーボンの粉体または繊
維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、その結合樹脂を
抄紙体に含浸させると同時にそのカーボンの粉体または
繊維を抄紙体の表層部に着床させ、次いで、加熱して結
合樹脂を硬化させることからなるものである。
【0055】したがって、このように製造されることに
よって、基材繊維と充填剤との混合材料からなる抄紙体
が含浸され硬化された結合樹脂により結着されて、湿式
摩擦材本体として形成される一方、その表層部に着床し
た硬質のカーボンの粉体または繊維も硬化された結合樹
脂により強固に結合保持されて、カーボン層として形成
される。即ち、ペーパー系の湿式摩擦材を本体とし、そ
の摺動表面部に硬質のカーボンの粉体または繊維からな
るカーボン層を有する湿式摩擦材が形成される。そのた
め、この湿式摩擦材によれば、そのカーボンの自己潤滑
性によって、相手材との間の滑りをより円滑化し、均一
化することができ、またそれによって、ジャダー現象を
抑制することができ、振動、鳴き等の発生を防止するこ
とができる。また、そのカーボンは硬質のカーボンから
なるので、良好な摩擦特性と耐摩耗性等を維持すること
ができる。更に、カーボン層は湿式摩擦材の摺動表面部
のみに形成され、その本体部は従来と同一材質で形成さ
れるので、耐熱性、耐剥離性等には悪影響が生じること
がなく、またペーパー系湿式摩擦材としての優れた特性
をそのまま維持することができる。
【0056】また、このカーボン層を有する湿式摩擦材
の製造は、抄紙体に塗布し含浸する結合樹脂液としてこ
れに予めカーボンの粉体または繊維を混合し分散したも
のを使用するだけでなされ、カーボン層を形成するため
の独立した工程を加えることなく、従来からの一般的な
湿式摩擦材の製造工程と同じ工程によって行なわれるの
で、そのようなカーボン層を有するにもかかわらず、従
来どおりの簡単な工程で容易に製造できる効果がある。
【0057】即ち、本発明の湿式摩擦材とその製造方法
によれば、相手材との間の滑りを円滑化し、かつ、均一
化して、ジャダー現象を抑制することができ、しかも、
容易に製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は湿式摩擦材のスリップ評価方法を示す
概略図である。
【符号の説明】 1 湿式摩擦材 2 芯金 4 鉄板(相手材)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混
    合材料を抄造して得た抄紙体に、硬質のカーボンの粉体
    または繊維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、前記結
    合樹脂を前記抄紙体に含浸させると同時に前記カーボン
    の粉体または繊維を前記抄紙体の表層部に着床させ、次
    いで、加熱して前記結合樹脂を硬化させてなることを特
    徴とする湿式摩擦材。
  2. 【請求項2】 基材繊維と摩擦調整剤等の充填剤との混
    合材料を抄造して得た抄紙体に、硬質のカーボンの粉体
    または繊維を混合分散した結合樹脂液を塗布し、前記結
    合樹脂を前記抄紙体に含浸させると同時に前記カーボン
    の粉体または繊維を前記抄紙体の表層部に着床させ、次
    いで、加熱して前記結合樹脂を硬化させることを特徴と
    する湿式摩擦材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010255721A (ja) * 2009-04-23 2010-11-11 F C C:Kk 動力伝達装置
JP2014077039A (ja) * 2012-10-10 2014-05-01 Aisin Chemical Co Ltd 湿式摩擦材及びその製造方法

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