JPH09117081A - 永久磁石形同期電動機の回転子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ｄ軸に対してダンパ効果を生じ、負荷変動を補
償できる、組立が簡単で強度の高い永久磁石形同期電動
機の回転子を提供することを目的とする。 【構成】ヨークの外周側に所定のピッチ角で隣り合うも
のの極性を交互に入れ換えた界磁永久磁石１を設け、こ
の界磁永久磁石１の近傍にダンパ巻線を設けた永久磁石
形同期電動機の回転子において、界磁永久磁石１の界磁
軸とダンパ巻線２の中心軸とが電気角で９０°の位相差
をもつように、界磁永久磁石１を囲んでダンパ巻線２を
設ける。また、ヨークを中空のリング状のヨーク３とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ダンパ巻線を備えた永
久磁石形同期電動機の回転子に関する。

【００２】

【従来の技術】第１の従来の技術として、界磁の表面に
所定の極対数の界磁永久磁石を設け、この界磁永久磁石
の中央内面に凹部を設け、この凹部に界磁永久磁石の端
部に電気的に閉じた高導電率の輪状体のダンパ巻線を嵌
め込んだものがある（例えば、実公昭４７−７７９５号
公報）。第２の従来の技術として、永久磁石を用いた同
期電動機の始動特性をよくするため、ｄ軸ダンパとし
て、積層コアの表面に磁石装着用空間を打ち抜き、この
磁石装着用空間に磁極となる界磁永久磁石を装着し、界
磁永久磁石と等径上の、隣接磁極間の鉄心中に、かご形
導体を埋め込んだ部分を分散配置したものがある（例え
ば、特公昭６３−２０１０５号公報の従来例）。また、
第３の従来の技術として、モータ用に、円周方向にＮＳ
極を多極着磁したリング状プラスチックマグネットがあ
る（例えば、特開昭６３−１９０５３８号公報）。

【００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、第１の従来
の技術では、ダンパ巻線を界磁軸（ｄ軸）上に設けてあ
り、ダンパ効果はｑ軸磁束に対して生じるため、制御電
流の変化を抑制してしまい、制御性が著しく悪くなる。
また、第２の従来の技術では、始動特性と負荷変動の補
償にはよいが、界磁永久磁石間のコアが突極性をもつた
めリラクタンストルクによるトルクリップルが生じると
いう問題がある。また、積層コアの表面に磁石装着用空
間を打ち抜き、磁石装着用空間に界磁永久磁石を挿入す
るので、組立が面倒であるとともに、界磁永久磁石の固
定を長寿命で強固に維持するのが難しいという問題もあ
る。近年、永久磁石の強度が向上し、第３の従来の技術
に開示されているようなリングマグネットをモータのロ
ータ側に適用できるようになってきた。また、最近、バ
リとり等負荷変動の激しい用途に適用するロボットの関
節や手首等の多軸・同軸心駆動用として、軽量な中空軸
形の永久磁石形同期電動機の要望がある。そこで、本発
明は、ｄ軸に対して有効なダンパ効果を生じる、負荷変
動を補償でき、組立が簡単で強度を向上させる永久磁石
形同期電動機の回転子を提供することを目的とする。

【００４】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、ヨークの外周側に所定のピッチ角で隣り合うものの
極性を交互に入れ換えて設けた界磁永久磁石１と、この
界磁永久磁石１を取り囲んで設けたダンパ巻線２よりな
る永久磁石形同期電動機の回転子において、前記界磁永
久磁石１の界磁軸と前記ダンパ巻線２の中心軸とに電気
角で９０°の位相差を持たせる。また、前記ヨークを中
空のリング状のヨーク３とし、前記界磁永久磁石１をヨ
ーク３に嵌め合わせたリングマグネット１Ｒとし、この
リングマグネット１Ｒに所定のピッチ角で軸方向の溝１
２を設け、溝１２間に隣り合うものの極性を交互に入れ
換えた界磁磁極１３を形成し、これらの界磁磁極１３を
取り囲んで、前記溝１２内に前記ダンパ巻線２を収納す
る。

【００５】

【作用】上記手段により、負荷変動に対し、ダンパ巻線
２とコイルの作る磁束に位相差が生じ、ダンパ巻線２に
電流が流れ、この電流の作る磁束がｄ軸磁束を付勢す
る。

【００６】

【実施例】以下に、本発明の実施例を図に基づいて説明
する。図１は第１の実施例を示す正面図、図２は動作原
理を示す模式図である。リング状のヨーク３の外表面に
は、所定極対数の界磁永久磁石１を所定の極ピッチ角で
隣り合うもの同志の極性を交互に入れ換えて、固定して
ある。おのおのの界磁永久磁石１の周囲を囲んで、１タ
ーンもしくは数ターンのリング状のダンパ巻線２の中心
軸を界磁永久磁石１の界磁軸と機械角を一致させて設け
てある。すなわち、界磁永久磁石１の界磁軸（ｄ軸）と
ダンパ巻線２の中心軸とは、電気角で９０°の位相差を
生じるようにしてある。界磁永久磁石１の外径側は、所
定のピッチでコア６に設けたスロット４内に収納し、界
磁永久磁石１と同じ極対数のコイル５を巻回したティー
ス７に対向させてある。図２により、本発明の作動原理
を説明する。説明を簡単にするため、界磁１極対とダン
パ巻線２の関係について説明する。一般的に、永久磁石
形同期電動機の電気子電流は、ｑ軸磁束φｑを負荷に合
わせるように、コイル５に供給する正弦波状の電流を制
御する。コイル５の作る磁束φｑ＊ｓｉｎ θで運転
中、外乱等により負荷が変動すると、界磁軸（ｄ軸）と
コイルの磁極にｄθの位相変動が生じ、ダンパ巻線２は
φｑ＊ｓｉｎ ｄθの磁束と鎖交し、電流ｉが流れる。
この電流ｉにより界磁側にφａｄの磁束が生じ、ｄ軸磁
束φｄを付勢し、負荷変動が補償される。すなわち、ｄ
軸磁束に対してダンパ効果が生じる。図３は第２の実施
例を示す正面図である。中空のリング状のヨーク３の外
表面には、リングマグネット１Ｒを嵌め合わせてある。
リングマグネット１Ｒの内径側には、ブリッヂ部１１を
切り残して、等極ピッチで半円弧状の複数の溝１２を軸
方向に設けてある。溝１２間には、隣合うものの極性を
交互に入れ換えて着磁した界磁磁極１３を形成してあ
る。この界磁磁極１３を囲んで１ターンもしくは数ター
ンの絶縁皮膜で被覆したダンパ巻線２を溝１２内に収納
する。すなわち、界磁磁極１３の界磁軸（ｄ軸）とダン
パ巻線２とは電気角で９０度の位相差を生じる。

【００７】図４は第３の実施例を示す正面図である。こ
の例は、実施例のリングマグネット１Ｒのブリッヂ部１
１を内径側に、溝１２を外径側に設け、ダンパ巻線２を
外径側から溝１２内に挿入したのち、接着剤やレーザ等
による溶接等により固定したものである。この場合、固
定に接着剤を用いる場合は、接着剤が劣化するとダンパ
巻線２が飛びだす危険性はあるが、ダンパ巻線２の被覆
の破損は防止し易い。

【００８】

【発明の効果】上記の構成により、下記の効果がある。 （１）負荷変動をダンパ巻線により吸収するので、定常
運転時の負荷変動を補償でき、サーボロック時に発生す
るロータの微振動も抑制できる。 （２）ヨークを中空にしてあるので、同軸心に多数の軸
を設けることができ、軽量な多軸・同軸駆動用の同期電
動機を実現できる。 （３）第２および第３の実施例においては、リング状の
ヨークの外周に、界磁磁極を形成した連続体のリングマ
グネットを嵌め合わせるので、組立が簡単で、強度が向
上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す正面図。

【図２】本発明の実施例の作動原理を説明するための模
式図。

【図３】本発明の第２の実施例を示す正面図。

【図４】本発明の第３の実施例を示す正面図。

【符号の説明】

１ 界磁永久磁石 １Ｒ リングマグネット ２ ダンパ巻線 ３ ヨーク ４ スロット ５ コイル ６ コア ７ ティース １１ ブリッヂ部 １２ 溝 １３ 界磁磁極

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ヨークと、このヨーク外周側に所定のピ
   ッチ角で隣り合うものの極性を交互に入れ換えて設けた
   界磁永久磁石と、この界磁永久磁石を取り囲んで設けた
   ダンパ巻線よりなる永久磁石形同期電動機の回転子にお
   いて、 前記界磁永久磁石の界磁軸と前記ダンパ巻線の中心軸と
   が電気角で９０°の位相差を有することを特徴とする永
   久磁石形同期電動機の回転子。
2. 【請求項２】 前記ヨークを中空のリング状とし、前記
   界磁永久磁石を前記ヨークの外周に嵌め合わせたリング
   マグネットとし、このリングマグネットに所定のピッチ
   角で軸方向の溝を設け、この溝内に前記ダンパ巻線を収
   納した請求項１に記載の永久磁石形同期電動機の回転
   子。