JPH09113274A - 地磁気方位センサ - Google Patents

地磁気方位センサ

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JPH09113274A
JPH09113274A JP7271563A JP27156395A JPH09113274A JP H09113274 A JPH09113274 A JP H09113274A JP 7271563 A JP7271563 A JP 7271563A JP 27156395 A JP27156395 A JP 27156395A JP H09113274 A JPH09113274 A JP H09113274A
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JP
Japan
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magnetoresistive effect
film
effect element
magnetoresistive
magnetic field
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JP7271563A
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Tatsuo Hisamura
達雄 久村
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気抵抗効果素子を用いた地磁気方位センサ
について、磁気抵抗効果素子の特性を向上させて、感度
や精度の向上を図る。 【解決手段】 地磁気方位センサに使用される磁気抵抗
効果素子を、複数の磁気抵抗効果膜が非磁性膜を介して
積層された積層構造の磁気抵抗効果素子とする。ここ
で、非磁性膜は面心立方構造を呈する金属薄膜からな
り、磁気抵抗効果膜はパーマロイ薄膜からなることが好
ましい。また、磁気抵抗効果素子は、面心立方構造を呈
する金属薄膜上に形成されてなることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果素子
を用いた地磁気方位センサに関するものであり、特に、
複数の磁気抵抗効果膜が非磁性膜を介して積層された積
層構造の磁気抵抗効果素子を用いることによって高精度
化を図った新規な地磁気方位センサに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、カラー陰極線管において、電子
銃から出射された電子ビームの軌道が地磁気によって曲
げられ、蛍光面上での電子ビーム到達位置、すなわち電
子ビームのランディングに、変化が生じることがある。
特に高精細度陰極線管では、ランディングの変化に対す
る余裕度が小さいために、地磁気によるランディングの
変化が色純度の劣化等の問題を引き起こしてしまうこと
がある。これを補正するために、通常、カラー陰極線管
には、ランディング補正コイルが取り付けられている。
そして、地磁気の方位に応じて自動的に、ランディング
補正コイルにランディング補正に必要な最適電流を流す
ことにより、電子ビームの軌道を制御して、ランディン
グの変化を防止するようにしている。ここで、ランディ
ング補正を行うには、地磁気の方位を正確に検出する必
要があり、この検出のために地磁気方位センサが使用さ
れている。
【0003】このように、地磁気の影響を補正する必要
があるカラー陰極線管のような機器において、地磁気方
位センサは非常に重要なセンサとなっている。また、地
磁気方位センサは、従来から用いられてきた磁石式の方
位計、すなわち磁気コンパスの代替として、携帯型の方
位計としても使用されている。
【0004】このように地磁気方位センサは様々な用途
に使用されており、その代表的な構造としては、フラッ
クスゲート型のものや、磁気抵抗効果型のものが知られ
ている。そして、これらの地磁気方位センサの中でも、
地磁気を集束するための強磁性体コアを備えた磁気抵抗
効果型のものは非常に高感度であり、近年、従来の他の
タイプの地磁気方位センサに置き換わりつつある。
【0005】強磁性体コアを備えた磁気抵抗効果型の地
磁気方位センサは、例えば、ギャップを介して円環状に
組み合わされた4つの円弧状の強磁性体コアと、各強磁
性体コア間のギャップ内にそれぞれ配された4つの磁気
抵抗効果素子と、各磁気抵抗効果素子にそれぞれバイア
ス磁界を印加するための励磁用コイルとから構成され
る。ここで、磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果を有す
る磁気抵抗効果膜を備えており、外部磁界の大きさによ
って抵抗値が変化する素子である。そして、この地磁気
方位センサでは、各磁気抵抗効果素子によって各磁気抵
抗効果素子の長手方向に対して垂直に印加している地磁
気の強さを検出し、このように各磁気抵抗効果素子によ
って検出された地磁気の強さに基づいて、地磁気の方位
を検出する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、磁気抵抗効
果型の地磁気方位センサでは、使用される磁気抵抗効果
素子の特性が、センサの感度や精度を大きく左右する。
そこで、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果膜には、優れ
た磁気特性を有するパーマロイ膜が多く用いられてお
り、その膜厚は、磁気抵抗効果が最大となるように、ま
た、出力自体も大きくなるように、通常、数10nm〜
100nm程度と非常に薄いものとされている。
【0007】しかし、磁気抵抗効果膜の膜厚が薄いと、
下地の表面粗度等のような物理的要因が磁気抵抗効果膜
の特性に大きく影響を及ぼしてしまう。また、磁気抵抗
効果膜の膜厚が薄いと、磁気抵抗効果膜自体の結晶性が
悪くなりやすい。したがって、磁気抵抗効果膜の膜厚が
薄いと、膜面内での静磁エネルギーが高くなり、磁気抵
抗効果膜が複雑な磁区構造をとるようになるとともに、
磁気抵抗効果膜内の磁壁の滑らかな移動が妨げられてし
まう。その結果、磁気抵抗効果特性が印加磁界に対して
ヒステリシスを示すようになってしまったり、また、磁
気抵抗効果膜に帯磁等が生じてしまって磁気抵抗効果特
性がシフトし、磁気抵抗効果素子の動作点が非対称とな
ってしまったりする。
【0008】ここで、磁気抵抗効果素子による外部磁界
の検出の原理、並びに磁気抵抗効果特性のシフトの影響
について、図16乃至図18を用いて説明する。
【0009】図16及び図17は、磁気抵抗効果素子の
基本的な動作原理を説明するための図であり、磁気抵抗
効果素子の磁気抵抗効果曲線と、この磁気抵抗効果素子
に交流バイアス磁界を印加したときの出力を示してい
る。ここで、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果曲線は、
磁界Hがゼロの位置を中心として左右対称となってい
る。そして、図16に示すように、外部磁界が無い場合
には、振幅がHBの交流バイアス磁界を印加したとき、
磁気抵抗効果素子からの出力は一定の波形となる。これ
に対して、図17に示すように、地磁気等によって外部
磁界HEが印加している場合には、振幅がHBの交流バ
イアス磁界に外部磁界HEが直流的に加わるため、磁気
抵抗効果素子からの出力は交互に振幅が変化する波形と
なる。そこで、このように振幅が変化している出力か
ら、その波形の高さの変化量Lを検出することにより、
磁気抵抗効果素子に印加されている外部磁界HEの大き
さが分かることとなる。
【0010】一方、磁気抵抗効果特性がシフトしている
と、磁気抵抗効果素子の動作点が非対称となるため、外
部磁界が無い場合にも、あたかも外部磁界を感知したか
のような出力となってしまう。すなわち、図18に示す
ように、磁気抵抗効果特性がシフトして、磁界Hがゼロ
でない位置が磁気抵抗効果曲線の中心となっていると、
外部磁界が無くても、磁気抵抗効果特性のシフト量−H
uの影響により、磁気抵抗効果素子からの出力は、図1
7に示した出力の波形と同様な波形となり、あたかも地
磁気を感知したかのような出力となってしまう。したが
って、磁気抵抗効果特性がシフトしていると、地磁気方
位センサの精度が低下してしまう。
【0011】このように、磁気抵抗効果型の地磁気方位
センサでは、使用される磁気抵抗効果素子の特性が、セ
ンサの感度や精度を大きく左右するため、磁気抵抗効果
素子の特性を向上することが大きな課題となっている。
【0012】そこで本発明は、このような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、磁気抵抗効果素子の特性
を向上し、地磁気方位センサの感度や精度の向上を図る
ことを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに完成された本発明に係る地磁気方位センサは、磁気
抵抗効果素子を用いた地磁気方位センサであって、上記
磁気抵抗効果素子が、複数の磁気抵抗効果膜が非磁性膜
を介して積層された積層構造の磁気抵抗効果素子である
ことを特徴とするものである。
【0014】上記地磁気方位センサにおいて、非磁性膜
は面心立方構造を呈する金属薄膜からなり、磁気抵抗効
果膜はパーマロイ薄膜からなることが好ましい。ここ
で、磁気抵抗効果素子は、面心立方構造を呈する金属薄
膜上に形成されてなることが好ましい。
【0015】上記地磁気方位センサに使用される磁気抵
抗効果素子、すなわち複数の磁気抵抗効果膜が非磁性膜
を介して積層された積層構造の磁気抵抗効果素子の磁気
抵抗効果特性は、対称性が良く、印加磁界に対して磁気
抵抗効果曲線がシフトするようなことがない。したがっ
て、本発明に係る地磁気方位センサでは、磁気抵抗効果
素子の特性がシフトするようなことなく、地磁気の方位
を高感度で精度良く検出することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した具体的な
実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明す
る。なお、本発明は以下の例に限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、形状や材質等を
任意に変更することが可能であることは言うまでもな
い。
【0017】まず、本発明を適用した地磁気方位センサ
に用いられる磁気抵抗効果素子の一例について説明す
る。
【0018】この磁気抵抗効果素子は、後述するように
強磁性体コア間に設けられるギャップ内に配される。こ
こで、通常、地磁気方位センサを小型化する必要性か
ら、強磁性体コア間のギャップの幅を大きくとることは
できない。そこで、磁気抵抗効果素子の感磁部の長さを
長くして感度を高めるために、例えば図1に示されるよ
うに、磁気抵抗効果素子Mは、強磁性体コアKaと強磁
性体コアKbの間に、何重にも折り曲げた、いわゆるつ
づら折り形状にパターニングされる。そして、この磁気
抵抗効果素子Mは、磁気抵抗効果素子Mの感磁部の長軸
方向が強磁性体コアKaと強磁性体コアKbとの間に生
じる磁界Hに対して直交するように、すなわち、パター
ン幅方向がギャップに対して垂直となるように配され
る。
【0019】図2に、この磁気抵抗効果素子Mの一部分
を拡大して示す。図2に示すように、この磁気抵抗効果
素子Mは、磁気抵抗効果膜1と、磁気抵抗効果膜1上に
形成された非磁性膜2と、非磁性膜2上に形成された磁
気抵抗効果膜3とから構成されている。すなわち、この
磁気抵抗効果素子Mは、磁気抵抗効果膜1及び磁気抵抗
効果膜3が、非磁性膜2を介して積層された積層構造と
なっている。ここで、非磁性膜2の厚さは、薄すぎると
上下の磁気抵抗効果膜1、3を磁気的に分断できず、厚
すぎると上下の磁気抵抗効果膜1、3の静磁結合力が低
下するため、1〜20nm程度、より好ましくは2〜1
0nm程度とする。
【0020】そして、この磁気抵抗効果素子Mは、図3
に示すように、基板4上に形成された非磁性材料からな
る下地膜5の上に形成される。すなわち、基板4上に下
地膜5が形成され、下地膜5上に磁気抵抗効果膜1、非
磁性膜2及び磁気抵抗効果膜3が積層される。ここで、
下地膜5の厚さは、薄すぎると膜の結晶性が悪くなるた
め、3〜20nm程度とすることが好ましい。
【0021】このような磁気抵抗効果素子Mにおいて、
磁気抵抗効果膜1、3には、例えば、Ni−Fe合金、
Co−Ni−Fe合金、又はこれらの合金に微少添加物
を加えた軟磁性材料が用いられる。そして、磁気抵抗効
果膜1、3としては特に、80Ni−20Fe組成近傍
の合金に、数重量%程度のCo、Cr、Ti、Ta、M
o、W、V、Nb、Zr、Hf、Si、Al、Cu、A
g、Au、Pt、Pd、Ru、Mn等の微少添加物を加
えたパーマロイからなるパーマロイ薄膜が好適である。
また、非磁性膜2や下地膜5としては、例えば、Cr、
Ti、Ta、Mo、W、V、Nb、Zr、Hf、Si、
Al、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ru、Mn等の
金属膜や、これら金層の酸化膜、炭化膜、窒化膜等が用
いられる。そして、非磁性膜2や下地膜5としては特
に、面心立方構造を呈するAl、Cu、Au、Pt、P
d、Pb、Sr等からなる金属薄膜が好適である。
【0022】これらの下地膜5、非磁性膜2及び磁気抵
抗効果膜1、3は、通常、電子ビーム蒸着やスパッタ等
のような真空薄膜形成法によって連続して成膜される。
ただし、磁気抵抗効果膜1、3の成膜には、電着法を併
用することもできる。ここで、これらの薄膜の結晶配向
性を向上させるためには、膜形成時に基板4の加熱を行
うことが有効である。そこで、これらの薄膜は、通常、
基板4を200〜300℃に加熱しながら真空薄膜形成
法によって成膜される。
【0023】そして、このようにして成膜された下地膜
5、非磁性膜2及び磁気抵抗効果膜1、3は、フォトリ
ソグラフィ技術によって、上述したようなつづら折り形
状にパターニングされ、下地膜5上に磁気抵抗効果膜
1、3が非磁性膜2を介して積層された磁気抵抗効果素
子Mが形成される。このとき、地磁気方位センサ内に形
成される各磁気抵抗効果素子を結ぶ配線や、外部回路と
電気的接触を図るために磁気抵抗効果素子の両端に配さ
れる電極等も、同時にパターニングされ形成される。
【0024】なお、上記磁気抵抗効果素子では、図3に
示したように、下地膜5上に磁気抵抗効果膜1、非磁性
膜2及び磁気抵抗効果膜3を積層したが、図4に示すよ
うに、基板4上に直接、磁気抵抗効果膜1、非磁性膜2
及び磁気抵抗効果膜3を積層してもよい。このように、
基板4上に直接、磁気抵抗効果膜1、非磁性膜2及び磁
気抵抗効果膜3を積層して磁気抵抗効果素子としたとき
には、後述するように磁気抵抗効果素子の特性の点では
若干不利となるが、下地膜5の成膜工程が無い分だけ工
程を簡略化することができる。
【0025】また、上記磁気抵抗効果素子では、磁気抵
抗効果膜の積層数を2層としたが、磁気抵抗効果膜の積
層数は3層以上であってもよい。ただし、良好な磁気抵
抗効果を得るためには、通常、磁気抵抗効果膜の総厚を
30〜100nmと薄くしなければならないので、磁気
抵抗効果膜の積層数が多すぎると、1層当たりの磁気抵
抗効果膜の膜厚が薄くなり過ぎて、逆に特性が劣化して
しまう。したがって、磁気抵抗効果膜の積層数は4層程
度までにとどめたほうが好ましい。
【0026】つぎに、以上のような磁気抵抗効果素子を
備えた地磁気方位センサの一例について説明する。
【0027】この地磁気方位センサは、図5に示すよう
に、90度間隔でギャップG1、G2、G3、G4が形
成されるように、4つの円弧状の強磁性体コアK1、K
2、K3、K4が円環状に組み合わされると共に、これ
らギャップG1、G2、G3、G4内にそれぞれ上述の
ような地磁気検出用の磁気抵抗効果素子M1、M2、M
3、M4が配されて構成される。ここで、強磁性体コア
K1、K2、K3、K4の材料には、パーマロイ、セン
ダスト、アモルファス、フェライト等のような優れた軟
磁気特性を有するものが適している。
【0028】上記磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、
M4は、X軸方向の磁界を検出するための2つの磁気抵
抗効果素子M1及び磁気抵抗効果素子M3と、X軸方向
と直交するY軸方向の磁界を検出するための2つの磁気
抵抗効果素子M2及び磁気抵抗効果素子M4とに分類さ
れる。そして、これらの磁気抵抗効果素子M1、M2、
M3、M4は、定電位電源Vccに接続されており、こ
の定電位電源Vccから、これらの磁気抵抗効果素子M
1、M2、M3、M4にセンス電流が供給される。
【0029】一方、上記強磁性体コアK1、K2、K
3、K4には、それぞれ励磁用コイルC1、C2、C
3、C4が巻回されており、この励磁用コイルC1、C
2、C3、C4に電流を流すことにより、ギャップG
1、G2、G3、G4内に配された各磁気抵抗効果素子
M1、M2、M3、M4にバイアス磁界が印加される。
すなわち、励磁用コイルC1、C2、C3、C4に供給
される交流バイアス電流IBにより、X軸方向の磁界を
検出するための磁気抵抗効果素子M1及び磁気抵抗効果
素子M2に、それぞれ互いに逆方向のバイアス磁界が印
加され、同様に、Y軸方向の磁界を検出するための磁気
抵抗効果素子M2及び磁気抵抗効果素子M4にも、それ
ぞれ互いに逆方向のバイアス磁界が印加される。ここ
で、各磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、M4は、図
6に示すように、それぞれギャップに対応するように形
成されており、磁気抵抗効果素子M1及び磁気抵抗効果
素子M2には、その膜面に対して略平行にバイアス磁界
HBが印加され、磁気抵抗効果素子M3及び磁気抵抗効
果素子M4には、その膜面に対して略平行にバイアス磁
界−HBが印加される。
【0030】また、各磁気抵抗効果素子M1、M2、M
3、M4には、中点電位等の温度特性を補正するための
温度特性補正用磁気抵抗効果素子M5、M6、M7、M
8が接続されている。すなわち、磁気抵抗効果素子M1
には、温度特性補正用磁気抵抗効果素子M5が接続さ
れ、磁気抵抗効果素子M2には、温度特性補正用磁気抵
抗効果素子M6が接続され、磁気抵抗効果素子M3に
は、温度特性補正用磁気抵抗効果素子M7が接続され、
磁気抵抗効果素子M4には、温度特性補正用磁気抵抗効
果素子M8が接続されている。
【0031】ここで、各温度特性補正用磁気抵抗効果素
子M5、M6、M7、M8は、強磁性体コアK1、K
2、K3、K4を通る磁束に対して平行となるように、
それぞれ磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、M4に対
して直交するように配される。すなわち、温度特性補正
用磁気抵抗効果素子M5は、ギャップG1の外部に、磁
気抵抗効果素子M1に対して直交するように配され、温
度特性補正用磁気抵抗効果素子M6は、ギャップG2の
外部に、磁気抵抗効果素子M2に対して直交するように
配され、温度特性補正用磁気抵抗効果素子M7は、ギャ
ップG3の外部に、磁気抵抗効果素子M3に対して直交
するように配され、温度特性補正用磁気抵抗効果素子M
8は、ギャップG4の外部に、磁気抵抗効果素子M4に
対して直交するように配される。
【0032】ここで、例えば、各温度特性補正用磁気抵
抗効果素子M5、M6、M7、M8を、それぞれ磁気抵
抗効果素子M1、M2、M3、M4に対して平行となる
ように配すると、ギャップG1、G2、G3、G4から
漏れた磁界が温度補正用磁気抵抗効果素子M5、M6、
M7、M8にもバイアス磁界として働いてしまう。そし
て、このバイアス磁界の方向は、地磁気検出用の磁気抵
抗効果素子M1、M2、M3、M4に印加されるバイア
ス磁界の方向と同方向であるので、後述するように磁気
抵抗効果素子M1及び磁気抵抗効果素子M3から得られ
る差動信号や、磁気抵抗効果素子M2及び磁気抵抗効果
素子M4から得られる差動信号が打ち消されて小さくな
ってしまう。その結果、S/Nが悪化し、方位精度が±
5度程度と悪くなってしまう。
【0033】これに対して、上述のように、各温度特性
補正用磁気抵抗効果素子M5、M6、M7、M8を、そ
れぞれ磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、M4に対し
て直交するように配したときには、ギャップG1、G
2、G3、G4から漏れた磁界が温度補正用磁気抵抗効
果素子M5、M6、M7、M8にバイアス磁界として働
くようなことが殆どない。これは、磁気抵抗効果素子の
感度が、磁界に対して直交するように配置した場合に比
べて、平行に配置した場合は1/100以下となるため
である。したがって、上述の地磁気方位センサでは、温
度特性補正用磁気抵抗効果素子M5、M6、M7、M8
が、強磁性体コアK1、K2、K3、K4中の磁気信号
に対して感度を示すようなことは殆どなく、そのため、
上述の地磁気方位センサでは、磁気抵抗効果素子M1及
び磁気抵抗効果素子M3から得られる差動信号や、磁気
抵抗効果素子M2及び磁気抵抗効果素子M4から得られ
る差動信号を大きく取ることが可能となる。その結果、
S/Nが向上し、方位精度が±1度程度と非常に優れた
ものとなる。
【0034】以上のような構成を有する地磁気方位セン
サの等価回路を図7に示す。すなわち、この地磁気方位
センサにおいて、X軸方向の磁界を検出するための2つ
の磁気抵抗効果素子M1、M3は、温度特性補正用磁気
抵抗効果素子M5、M7と共にブリッジを構成してお
り、このブリッジに定電位電源Vccからセンス電流が
供給される。そして、このブリッジからの出力が差動ア
ンプA1に供給され、この差動アンプA1によって差動
が取られ、その結果、外部磁界HEのうちX軸方向の磁
界成分の大きさを示す差動信号(X出力)が出力され
る。このとき、励磁用コイルC1、C2、C3、C4に
より、磁気抵抗効果素子M1には、バイアス磁界HBが
印加され、磁気抵抗効果素子M3には、磁気抵抗効果素
子M1に印加されるバイアス磁界HBに対して180度
方位が異なるバイアス磁界−HBが印加される。
【0035】同様に、Y軸方向の磁界を検出するための
2つの磁気抵抗効果素子M2、M4は、温度特性補正用
磁気抵抗効果素子M6、M8と共にブリッジを構成して
おり、このブリッジに定電位電源Vccからセンス電流
が供給される。そして、このブリッジからの出力が差動
アンプA2に供給され、この差動アンプA2によって差
動が取られ、その結果、外部磁界HEのうちY軸方向の
磁界成分の大きさを示す差動信号(Y出力)が出力され
る。このとき、励磁用コイルC1、C2、C3、C4に
より、磁気抵抗効果素子M2には、バイアス磁界HBが
印加され、磁気抵抗効果素子M4には、磁気抵抗効果素
子M2に印加されるバイアス磁界HBに対して180度
方位が異なるバイアス磁界−HBが印加される。
【0036】以上のような地磁気方位センサにおいて、
磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、M4は、次のよう
な特徴を持っている。
【0037】(1)磁界の強度により抵抗値が変化す
る。
【0038】(2)弱い磁界を感知する能力に優れてい
る。
【0039】(3)抵抗値変化を電気信号として取り出
すことができる。
【0040】そして、上記地磁気方位センサでは、この
ような磁気抵抗効果素子M1、M2、M3、M4の特徴
を利用して地磁気による磁気信号を電気信号に変換し、
地磁気の方位を検出している。以下、このような地磁気
の方位の検出の原理について説明する。
【0041】図8に磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果特
性曲線を示す。この図8において、横軸は磁気抵抗効果
素子に垂直に加わる磁界H、縦軸は磁気抵抗効果素子の
抵抗値Rを示している。ここで、縦軸は磁気抵抗効果素
子の抵抗値を示しているので、縦軸の値は磁気抵抗効果
素子に直流電流を流したときの出力電圧に相当する。
【0042】そして、磁気抵抗効果素子の抵抗値は、磁
界がゼロのときに最大となり、大きな磁界、具体的に
は、磁気抵抗効果素子のパターン形状等にもよるが50
〜200Oe程度の磁界を印加したときに、約3%小さ
くなる。そこで、地磁気方位センサでは、このような特
性を有する磁気抵抗効果素子によって磁界Hの変化を抵
抗値Rの変化として検出する。磁気抵抗効果素子には、
上述したように、強磁性体コアK1、K2、K3、K4
に巻回された励磁用コイルC1、C2、C3、C4に交
流バイアス電流IBを流すことによって、交流のバイア
ス磁界が印加される。このようにバイアス磁界を印加す
ることにより、磁気抵抗効果特性曲線の傾きが大きい部
分を外部磁界の検出に利用することが可能となり、磁気
抵抗効果素子からの出力のS/Nすなわち出力電圧の振
幅の向上、及び歪率の向上が図られる。
【0043】ここで、バイアス磁界は、上述したよう
に、X軸方向の磁界を検出するための磁気抵抗効果素子
M1及び磁気抵抗効果素子M3のうち、磁気抵抗効果素
子M1にはバイアス磁界HBが印加され、磁気抵抗効果
素子M3には、磁気抵抗効果素子M1に印加されるバイ
アス磁界HBに対して180度方位が異なるバイアス磁
界−HBが印加される。同様に、Y軸方向の磁界を検出
するための磁気抵抗効果素子M2及び磁気抵抗効果素子
M4のうち、磁気抵抗効果素子M2にはバイアス磁界H
Bが印加され、磁気抵抗効果素子M4には、磁気抵抗効
果素子M2に印加されるバイアス磁界HBに対して18
0度方位が異なるバイアス磁界−HBが印加される。
【0044】このとき、地磁気による磁界HEが入って
くると、例えば、X軸方向の磁界を検出するための磁気
抵抗効果素子M1及び磁気抵抗効果素子M3に加わる磁
界は、磁気抵抗効果素子M1に加わる磁界が(HB+H
E)となり、磁気抵抗効果素子M3に加わる磁界が(−
HB+HE)となる。
【0045】このとき、磁気抵抗効果素子M1には、交
流のバイアス磁界HBが印加されているので、磁気抵抗
効果素子M1に印加される磁界は図8中実線Aで示すよ
うに変化し、この磁界の変化が図8中実線Bで示すよう
な電圧変化として出力される。一方、磁気抵抗効果素子
M3には、交流のバイアス磁界−HBが印加されている
ので、磁気抵抗効果素子M3に印加される磁界は図8中
実線Cで示すように変化し、この磁界の変化が図8中実
線Dで示すような電圧変化として出力される。
【0046】そして、図8中実線Bで示したような磁気
抵抗効果素子M1からの出力と、図8中実線Dで示した
ような磁気抵抗効果素子M3からの出力との差が、差動
アンプA1によってX軸方向の磁界についての差動信
号、すなわちX出力として取り出される。同様に、Y軸
方向の磁界を検出するための磁気抵抗効果素子M2及び
磁気抵抗効果素子M3からも、磁界の変化が電圧変化と
して出力され、Y軸方向の磁界についての差動信号、す
なわちY出力が取り出される。
【0047】そして、これらの差動信号は地磁気HEの
方位によって変化し、それぞれHEsinθ、HEco
sθに比例している。したがって、横軸に地磁気の方位
θをとって、X出力及びY出力の電圧をプロットする
と、図9に示すようになる。したがって、X軸方向の磁
界についての差動信号であるX出力と、Y軸方向の磁界
についての差動信号であるY出力とから、地磁気の方位
θを算出することができる。
【0048】すなわち、X出力とY出力の比Vx/Vy
は、これらの出力がそれぞれHEsinθ、HEcos
θに比例することから、下記式(1)に示しように、t
anθで表すことができる。
【0049】 Vx/Vy=sinθ/cosθ=tanθ ・・・(1) したがって、地磁気の方位θは、下記式(2)で表され
る。
【0050】 θ=tan-1(Vx/Vy) ・・・(2) ただし、上記式(2)において、Vx≧0のときは、0
°≦θ≦180°であり、Vx<0のときは、180°
<θ<360°である。
【0051】以上のようにして、本実施の形態に係る地
磁気方位センサでは、地磁気HEの方位θを知ることが
できる。
【0052】つぎに、以上のような地磁気方位センサに
使用される磁気抵抗効果素子の特性を評価した結果につ
いて説明する。
【0053】まず、単層構造の磁気抵抗効果素子の特性
と、2層構造の磁気抵抗効果素子の特性とを比較した結
果について説明する。
【0054】ここで、単層構造の磁気抵抗効果素子は、
ガラス基板上に電子ビーム蒸着によって膜厚が70nm
の磁気抵抗効果膜を成膜し、この磁気抵抗効果膜に対し
て、フォトリソグラフィ技術を用いてストリップ幅が8
0μm、ストリップ長が20mmとなるようにパターニ
ング処理を施し、このストリップ膜の両端に測定用電極
を形成して作製した。
【0055】一方、2層構造の磁気抵抗効果素子は、ガ
ラス基板上に電子ビーム蒸着によって磁気抵抗効果膜を
成膜し、この磁気抵抗効果膜上にスパッタ法によってS
iO2 からなる非磁性膜を成膜し、この非磁性膜上に電
子ビーム蒸着によって磁気抵抗効果膜を成膜し、この積
層膜に対して、フォトリソグラフィ技術を用いてストリ
ップ幅が80μm、ストリップ長が20mmとなるよう
にパターニング処理を施し、このストリップ膜の両端に
測定用電極を形成して作製した。ここで、非磁性膜の膜
厚は5nmとし、磁気抵抗効果膜の膜厚は、下層の磁気
抵抗効果膜の膜厚と、上層の磁気抵抗効果膜の膜厚との
合計が72nmとなるようにした。
【0056】そして、これらの2種類の磁気抵抗効果素
子について、磁気抵抗効果素子の幅方向に交流消磁処理
を施した後、永久磁石を磁気抵抗効果素子の幅方向から
近づけて帯磁させ、その後、磁気抵抗効果特性を測定し
た。ここで、磁気抵抗効果の測定は、560A/mの交
流磁界をストリップの幅方向に精度良く印加して行っ
た。
【0057】単層構造の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効
果特性の測定結果を図10に示すと共に、2層構造の磁
気抵抗効果素子の磁気抵抗効果特性の測定結果を図11
に示す。図10に示すように、単層構造の磁気抵抗効果
素子では、印加磁界に対して磁気抵抗効果がヒステリシ
スを持っており、また、磁気抵抗効果の動作点が非対称
となっている。すなわち、単層構造の磁気抵抗効果素子
では、帯磁等の影響を強く受けてしまっていることが分
かる。これに対して、2層構造の磁気抵抗効果素子で
は、図11に示すように、磁気抵抗効果は印加磁界に対
してヒステリシスを殆ど持っておらず、また、磁気抵抗
効果の動作点の対称性も良くなっている。すなわち、2
層構造の磁気抵抗効果素子では、帯磁等の影響を殆ど受
けないことが分かる。
【0058】つぎに、これらの磁気抵抗効果素子を、上
述のような地磁気方位センサに組み込んで、その方位精
度を調べた結果について説明する。
【0059】ここで、強磁性体コアには、厚さが2mm
の4つのNi−Mnフェライトコアを用い、これらを内
径が15mm、外径が25mm、ギャップ幅が0.5m
mとなるように円環状に組み合わせて使用した。また、
励磁用コイルの巻線回数は120ターンとし、磁気抵抗
効果素子に印加するバイアス磁界は600A/mとし
た。そして、磁気抵抗効果素子は、上述の磁気抵抗効果
素子と同じ厚み、同じ幅として、ギャップ間につづら折
り状に形成した。
【0060】このような磁気方位センサについて、その
方位精度を測定した結果、2層構造の磁気抵抗効果素子
を用いた本発明に係る地磁気方位センサでは、単層構造
の磁気抵抗効果素子を用いた従来の地磁気方位センサに
比べて、方位誤差が1/8に改善された。すなわち、2
層構造の磁気抵抗効果素子を用いた本発明に係る地磁気
方位センサでは、地磁気の方位を高精度に検出すること
ができた。
【0061】つぎに、SiO2 からなる非磁性膜を介し
て磁気抵抗効果膜が積層された第1の磁気抵抗効果素子
と、Ptからなる非磁性膜を介して磁気抵抗効果膜が積
層された第2の磁気抵抗効果素子と、Ptからなる下地
膜上にPtからなる非磁性膜を介して磁気抵抗効果膜が
積層された第3の磁気抵抗効果素子とを作製するととも
に、膜構造を調べるために単層構造の磁気抵抗効果素子
を作製し、これらの磁気抵抗効果素子について、膜の結
晶性と磁気抵抗効果特性について調べた結果について説
明する。なお、以下の磁気抵抗効果の測定では、560
A/mの交流磁界を磁気抵抗効果素子のストリップの幅
方向に精度良く印加して行った。
【0062】ここで、第1の磁気抵抗効果素子は、ガラ
ス基板上に電子ビーム蒸着によってパーマロイからなる
磁気抵抗効果膜を成膜し、この磁気抵抗効果膜上にスパ
ッタ法によってSiO2 からなる非磁性膜を成膜し、こ
の非磁性膜上に電子ビーム蒸着によってパーマロイから
なる磁気抵抗効果膜を成膜し、この積層膜に対して、フ
ォトリソグラフィ技術を用いてストリップ幅が80μ
m、ストリップ長が20mmとなるようにパターニング
処理を施し、このストリップ膜の両端に測定用電極を形
成して作製した。ここで、非磁性膜の膜厚は5nmと
し、磁気抵抗効果膜の膜厚は、下層の磁気抵抗効果膜の
膜厚と、上層の磁気抵抗効果膜の膜厚との合計が72n
mとなるようにした。
【0063】また、第2の磁気抵抗効果素子は、ガラス
基板上に電子ビーム蒸着によってパーマロイからなる磁
気抵抗効果膜を成膜し、この磁気抵抗効果膜上にスパッ
タ法によってPtからなる非磁性膜を成膜し、この非磁
性膜上に電子ビーム蒸着によってパーマロイからなる磁
気抵抗効果膜を成膜し、この積層膜に対して、フォトリ
ソグラフィ技術を用いてストリップ幅が80μm、スト
リップ長が20mmとなるようにパターニング処理を施
し、このストリップ膜の両端に測定用電極を形成して作
製した。ここで、非磁性膜の膜厚は5nmとし、磁気抵
抗効果膜の膜厚は、下層の磁気抵抗効果膜の膜厚と、上
層の磁気抵抗効果膜の膜厚との合計が70nmとなるよ
うにした。
【0064】また、第3の磁気抵抗効果素子は、ガラス
基板上にスパッタ法によってPtからなる下地膜を成膜
し、この下地膜上に電子ビーム蒸着によってパーマロイ
からなる磁気抵抗効果膜を成膜し、この磁気抵抗効果膜
上にスパッタ法によってPtからなる非磁性膜を成膜
し、この非磁性膜上に電子ビーム蒸着によってパーマロ
イからなる磁気抵抗効果膜を成膜し、この積層膜に対し
て、フォトリソグラフィ技術を用いてストリップ幅が8
0μm、ストリップ長が20mmとなるようにパターニ
ング処理を施し、このストリップ膜の両端に測定用電極
を形成して作製した。ここで、下地膜の膜厚は6nmと
し、非磁性膜の膜厚は5nmとし、磁気抵抗効果膜の膜
厚は、下層の磁気抵抗効果膜の膜厚と、上層の磁気抵抗
効果膜の膜厚との合計が70nmとなるようにした。
【0065】また、単層構造の磁気抵抗効果素子は、ガ
ラス基板上に電子ビーム蒸着によってパーマロイからな
る磁気抵抗効果膜を成膜し、この単層膜に対して、フォ
トリソグラフィ技術を用いてストリップ幅が80μm、
ストリップ長が20mmとなるようにパターニング処理
を施し、このストリップ膜の両端に測定用電極を形成し
て作製した。ここで、磁気抵抗効果膜の膜厚は70nm
とした。
【0066】なお、これらの磁気抵抗効果素子を作製す
る際に、各薄膜は、ガラス基板の温度を230℃に加熱
しながら成膜した。
【0067】以上のような磁気抵抗効果素子の磁気抵抗
効果膜に使用されるパーマロイは、面心立方構造を呈す
るため、最密充填面である(111)面が配向しやす
い。したがって、結晶性が改善されると、X線回折によ
って検出される(111)面の信号強度が強くなる。そ
こで、まず、磁気抵抗効果膜だけからなる単層構造の磁
気抵抗効果素子について、X線回折によって検出される
(111)面の信号強度が、磁気抵抗効果素子に対する
熱処理温度によって、どのように変化するかを調べた。
結果を図12に示す。ここで、熱処理は、真空中にて、
保持時間を3時間、昇温速度を3.5℃/分、降温速度
を3.5℃/分として行った。図12から、約300℃
以上の温度で熱処理を行うことにより、磁気抵抗効果膜
の結晶性が改善されることが分かる。
【0068】同様に、磁気抵抗効果膜だけからなる単層
構造の磁気抵抗効果素子について、磁気抵抗効果素子に
対する熱処理温度によって、比抵抗ρがどのように変化
するかを調べた。結果を図13に示す。図13に示すよ
うに、結晶性が改善される300℃付近から、比抵抗ρ
は急激に低下している。これは結晶成長によって格子の
規則配置が促進されたこと等によるものである。そし
て、このような比抵抗ρの変化に対応して、比抵抗の変
化量△ρと比抵抗ρの比で表されるMR比(△ρ/ρ)
も、図13に示すように、300℃付近から向上してい
る。
【0069】これらのことから磁気抵抗効果素子の特性
を向上させ、MR比を高めるためには、膜の結晶性を高
めることが必要であることが分かる。換言すれば、磁気
抵抗効果素子の特性を向上させるには、磁気抵抗効果膜
の(111)面の配向を強くすることが必要ということ
となる。
【0070】つぎに、パターニング処理を施す前の第1
の磁気抵抗効果素子、すなわち磁気抵抗効果膜、非磁性
膜及び磁気抵抗効果膜からなる積層膜について、真空中
で熱処理を施し、熱処理温度と保磁力の関係を調べた。
結果を図14に示す。図14に示すように、約300℃
以上の温度での熱処理によって保磁力が増加している。
そして、このような保磁力の増加は、磁気抵抗効果にお
けるヒステリシスを増長するため好ましくなく、したが
って、磁気抵抗効果素子においては、300℃以下の温
度で熱処理することが好ましい。しかし、300℃以下
の温度での熱処理では、上述したように、磁気抵抗効果
膜の結晶性が改善されないため、MR比を高めることが
できない。
【0071】そこで、磁気抵抗効果素子において低保磁
力と高MR比を両立させるために、低温で磁気抵抗効果
膜の結晶性を高める工夫が必要となる。
【0072】ところで、通常、真空薄膜形成法により成
膜される薄膜は被着面の影響を受けて成長し、例えば、
被着面が(111)配向していると、その上に形成され
る薄膜も(111)配向しやすくなる。この傾向は、被
着面の配向面と、成膜する薄膜の優先配向面とが同一の
場合に、特に顕著となる。したがって、磁気抵抗効果膜
に使用されるパーマロイの優先配向面である(111)
面を呈する膜、すなわち面心立方構造を呈する金属薄膜
を、磁気抵抗効果膜の下地とすることにより、高温で熱
処理を施すことなく、磁気抵抗効果膜の結晶性を良好な
ものとすることができる。
【0073】上述の単層構造の磁気抵抗効果素子では、
磁気抵抗効果膜の被着面、すなわちガラス基板の表面は
配向性を有してない、いわゆるアモルファス状態であ
り、そのために、磁気抵抗効果膜の配向性は弱くなって
いた。これに対して、第2の磁気抵抗効果素子では、非
磁性膜として面心立方構造を呈するPtからなる金属薄
膜を用いているので、この非磁性膜上に成膜される上層
の磁気抵抗効果膜の結晶性が良好なものになる。また、
第3の磁気抵抗効果素子では、非磁性膜として面心立方
構造を呈するPtからなる金属薄膜を用いているので、
この非磁性膜上に成膜される上層の磁気抵抗効果膜の結
晶性が良好なものになるとともに、下地膜として面心立
方構造を呈するPtからなる金属薄膜を用いているの
で、この下地膜上に成膜される下層の磁気抵抗効果膜の
結晶性も良好なものになる。
【0074】そこで、実際に、第1の磁気抵抗効果素
子、第2の磁気抵抗効果素子、第3の磁気抵抗効果素子
について、真空中で熱処理を施し、熱処理温度とMR比
の関係を調べた。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】表1に示すように、磁気抵抗効果素子のM
R比は、熱処理を施さないときや、磁気抵抗効果膜の保
磁力が高くならない程度の温度である250℃での熱処
理を施したときには、第3の磁気抵抗効果素子が最も高
くなっており、次に第2の磁気抵抗効果素子が高くなっ
ている。
【0077】すなわち、高温での熱処理を施さなくて
も、面心立方構造を呈する金属薄膜からなる非磁性膜を
介して、パーマロイ薄膜からなる磁気抵抗効果膜が積層
された積層構造の磁気抵抗効果素子では、高いMR比が
得られ、更に、このような磁気抵抗効果素子を面心立方
構造を呈する金属薄膜からなる下地膜上に形成すること
により、より高いMR比が得られる。したがって、この
ような磁気抵抗効果素子を地磁気方位センサに用いるこ
とにより、高感度で精度良く地磁気の方位を検出するこ
とが可能となる。
【0078】また、これらの磁気抵抗効果素子につい
て、磁気抵抗効果素子の幅方向に交流消磁処理を施した
後、永久磁石を磁気抵抗効果素子の幅方向から近づけて
帯磁させ、その後、磁気抵抗特性を測定したところ、積
層構造の磁気抵抗効果素子である第1の磁気抵抗効果素
子、第2の磁気抵抗効果素子及び第3の磁気抵抗効果素
子は、図15に示すように、印加磁界に対してヒステリ
シスがほとんどない対称性の良い磁気抵抗特性を示し
た。したがって、このような積層構造の磁気抵抗効果素
子を用いた地磁気方位センサでは、帯磁等の影響を受け
ることなく、高精度に地磁気の方位を検出することが可
能である。
【0079】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係る地磁気方位センサでは、磁気抵抗効果特性に優れ
た、複数の磁気抵抗効果膜が非磁性膜を介して積層され
た積層構造の磁気抵抗効果素子を用いているので、帯磁
等の影響を受けることなく、地磁気の方位を高感度で精
度良く検出することができる。
【0080】また、このような積層構造の磁気抵抗効果
素子を、面心立方構造を呈する金属薄膜上に、パーマロ
イからなる磁気抵抗効果膜が成膜された構造とすること
により、磁気抵抗効果膜の結晶性が良好なものとなり、
磁気抵抗効果素子のMR比が向上する。したがって、こ
のような磁気抵抗効果素子を用いた本発明に係る地磁気
方位センサでは、地磁気の方位を更に高感度で精度良く
検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した地磁気方位センサの一例につ
いて、一部を拡大して示す平面図である。
【図2】本発明を適用した地磁気方位センサに使用され
る磁気抵抗効果素子の一例について、一部を拡大して示
す斜視図である。
【図3】本発明を適用した地磁気方位センサに使用され
る磁気抵抗効果素子の一例について、一部を拡大して示
す断面図である。
【図4】本発明を適用した地磁気方位センサに使用され
る磁気抵抗効果素子の他の例について、一部を拡大して
示す断面図である。
【図5】本発明を適用した地磁気方位センサの一構成例
を模式的に示す平面図である。
【図6】本発明を適用した地磁気方位センサの一構成例
を模式的に示す正面図である。
【図7】図5に示した地磁気方位センサの等価回路を示
す回路図である。
【図8】磁気抵抗効果素子による磁界検出の原理を説明
するための図である。
【図9】磁気抵抗効果素子からの出力の電圧Vと、地磁
気の方位θとの関係を示す図である。
【図10】単層構造の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果
を示す特性図である。
【図11】2層構造の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果
を示す特性図である。
【図12】磁気抵抗効果膜に施される熱処理の温度と、
磁気抵抗効果膜の配向性との関係を示す特性図である。
【図13】磁気抵抗効果膜に施される熱処理の温度と、
比抵抗ρ及びMR比との関係を示す特性図である。
【図14】磁気抵抗効果膜に施される熱処理の温度と、
保磁力Hcとの関係を示す特性図である。
【図15】積層構造の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果
を示す特性図である。
【図16】外部磁界が無いときの磁気抵抗効果素子から
の出力を説明するための図である。
【図17】外部磁界が加わったときの磁気抵抗効果素子
からの出力を説明するための図である。
【図18】帯磁等によって磁気抵抗効果特性がシフトし
たときの磁気抵抗効果素子からの出力を説明するための
図である。
【符号の説明】
1、3 磁気抵抗効果膜 2 非磁性膜 4 基板 5 下地膜 M、M1、M2、M3、M4 磁気抵抗効果素子 M5、M6、M7、M8 温度特性補正用磁気抵抗効果
素子 Ka、Kb、K1、K2、K3、K4 強磁性体コア C1、C2、C3、C4 励磁用コイル G1、G2、G3、G4 ギャップ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気抵抗効果素子を用いた地磁気方位セ
    ンサにおいて、 上記磁気抵抗効果素子が、複数の磁気抵抗効果膜が非磁
    性膜を介して積層された積層構造の磁気抵抗効果素子で
    あることを特徴とする地磁気方位センサ。
  2. 【請求項2】 前記非磁性膜が面心立方構造を呈する金
    属薄膜からなり、前記磁気抵抗効果膜がパーマロイ薄膜
    からなることを特徴とする請求項1記載の地磁気方位セ
    ンサ。
  3. 【請求項3】 前記磁気抵抗効果素子が、面心立方構造
    を呈する金属薄膜上に形成されてなることを特徴とする
    請求項2記載の地磁気方位センサ。
JP7271563A 1995-10-19 1995-10-19 地磁気方位センサ Withdrawn JPH09113274A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011053199A (ja) * 2009-08-07 2011-03-17 Alps Electric Co Ltd 近接センサ及び磁気検出装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011053199A (ja) * 2009-08-07 2011-03-17 Alps Electric Co Ltd 近接センサ及び磁気検出装置

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