JPH089707B2 - 水性塗料を用いた内面塗装缶 - Google Patents

水性塗料を用いた内面塗装缶

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JPH089707B2
JPH089707B2 JP3355381A JP35538191A JPH089707B2 JP H089707 B2 JPH089707 B2 JP H089707B2 JP 3355381 A JP3355381 A JP 3355381A JP 35538191 A JP35538191 A JP 35538191A JP H089707 B2 JPH089707 B2 JP H089707B2
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瞬治 小島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、O/W型エマルジョン
の水性塗料を用いた内面塗装缶に関するもので、より詳
細には、耐熱水性(耐レトルト性)と耐抽出性との組み
合わせに優れた水性塗料を用いた内面塗装缶に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、罐詰用罐の製造に際し、金属の内
容物への溶出を防止し、また金属の腐食を防止するた
め、各種の塗料で金属素材や、罐自体に塗装することが
行われている。未塗装の金属素材を用いた絞りしごき罐
の場合は勿論のこと、塗装金属素材を用いた絞り罐や、
スリーピース罐でも、製罐工程で入る塗膜のキズを補正
塗りし、またトップコートを形成させるために、罐胴や
罐蓋に各種塗料をスプレー塗装し焼付けることが行われ
ている。
【0003】金属基体への密着性、耐腐食性、フレーバ
ー特性及び塗膜加工性の点では、エポキシ樹脂と硬化剤
樹脂との組合わせから成る塗料や、ビニル系塗料が優れ
たものである。これらの塗料は有機溶媒溶液の形で塗布
すると、良い性能が発現されるが、スプレー塗装に際し
て、作業環境中に溶剤が揮散し、大気汚染や環境衛生上
の問題を生じる。
【0004】これらの欠点を解消するために水性塗料、
即ち水性分散体塗料の開発も既に行われている。このよ
うな水性塗料の第一タイプのものは、塗料樹脂を何等か
の手段で微粒化し、界面活性剤や水溶性乃至親水性樹脂
を分散剤として水中に分散したものである(例えば特公
昭44−18076号公報)。第二のタイプのものは、
エポキシ樹脂のように官能基を有する塗料を、アクリル
樹脂のようにカルボキシル基を有する樹脂と反応させる
ことにより変性し、この変性樹脂をアンモニア又はアミ
ン類で中和することによって、水性媒体中に自己乳化さ
せたものである(例えば特開昭59−213718号公
報)。
【0005】本発明者らの提案にかかる特開昭63−1
83968号公報には、塗膜形成樹脂成分として、エポ
キシ樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分とカルボ
キシル基含有アクリル樹脂成分とを含有し且つアクリル
樹脂中のカルボキシル基がアンモニウム塩またはアミン
塩の形で存在するO/W型エマルジョンの水性塗料を転
相法で製造することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、前者
のタイプの水性塗料は、塗料樹脂分の分散粒径が概して
粗大であったり、不揃いである傾向があると共に、水性
塗料が分散安定性に乏しく、得られる塗膜の性能も溶剤
タイプの塗料に比して劣っている。
【0007】また、後者のタイプの塗料は、分散性等に
ついては前者のタイプの塗料に比して優れているとして
も、塗料樹脂組成に大きい制約を受け、例えばエポキシ
樹脂系塗料の場合、樹脂硬化剤の含有量を十分に大きく
とることが困難なため、塗膜の硬化を十分に行うことが
できず、そのため塗膜の密着性や塗膜の硬さ、緻密さ、
腐食成分に対するバリヤー性等を満足すべきレベルに迄
向上させ得ないという問題を生じる。
【0008】本発明者らの提案にかかる先行技術では、
エポキシ樹脂成分と、レゾール型フェノール樹脂等の硬
化剤樹脂成分とを任意の割合で、中和アクリル系樹脂の
界面活性作用を利用して相転換乳化させて、水性塗料を
製造する点で優れたものであるが、カルボキシル基含有
アクリル樹脂成分を分散剤として使用した塗料から形成
される硬化塗膜は、レトルト殺菌等の高温熱水処理に際
して、塗膜が幾分白化する傾向があると共に塗膜中の樹
脂成分の一部が熱水中に抽出される傾向がある。
【0009】これは、カルボキシル基含有アクリル樹脂
成分がアンモニュウム塩或いはアミン塩の状態では界面
活性作用があり、遊離の状態では不溶化するとはいえ、
高温高圧下でしかも水が作用する条件では、該樹脂成分
の一部が水相中に移行するためと考えられる。
【0010】従って、本発明の目的は、エポキシ樹脂成
分、レゾール型フェノール樹脂成分及びカルボキシル基
含有アクリル樹脂成分からなる従来の水性塗料の上記欠
点を解消し、レトルト殺菌等の高温熱水処理に際しても
塗膜の白化や塗膜からの抽出が防止された水性塗料を用
いた内面塗装缶を提供するにある。
【0011】本発明の他の目的は、塗装作業性、塗膜の
密着性、レトルト殺菌更にはその後の経時での耐腐食性
及び塗膜の耐抽出性の組み合わせに優れた水性塗料を用
いた内面塗装缶を提供するにある。
【0012】
【問題点を解決するための手段】本発明によれば、金属
製缶胴と、缶胴の少なくとも内面側に設けられたエポキ
シ樹脂成分、レゾール型フェノール樹脂成分及びカルボ
キシル基含有アクリル樹脂成分含有水性塗料の硬化塗膜
からなる内面塗装缶において、該硬化塗膜がエポキシ樹
脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分との硬化反応物
からなる連続マトリックス相と、カルボキシル基含有ア
クリル樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分との硬
化反応物からなる分散粒子相とからなることを特徴とす
る内面塗装缶が提供される。
【0013】本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料
は、上記の3種の樹脂成分からなるが、エポキシ樹脂成
分が90乃至40重量%、レゾール型フェノール樹脂成
分が3乃至40重量%、及びカルボキシル基含有アクリ
ル樹脂成分が5乃至40重量%の量比で存在するのがよ
い。
【0014】この内面塗装缶の塗膜は、硬化塗膜断面に
おいて、連続マトリックス相が98乃至80%の面積分
率で且つ分散粒子相が2乃至20%の面積分率で夫々存
在し、且つ分散粒子相の長軸方向寸法が平均で0.5乃
至5.0μmの範囲にあるのが望ましく、また硬化塗膜
が、その動的貯蔵弾性率−温度曲線で、温度90乃至1
10℃及び温度140乃至170℃に2個のショルダー
を有するものであるのがよい。
【0015】
【作用】本発明の内面塗装缶用水性塗料は、塗膜形成樹
脂成分として、エポキシ樹脂成分とレゾール型フェノー
ル樹脂成分とカルボキシル基含有アクリル樹脂成分とを
含有し且つアクリル樹脂中のカルボキシル基がアンモニ
ウム塩またはアミン塩の形となってO/W型エマルジョ
ンを形成しているという点では、従来の水性塗料と軌を
一にしているが、エポキシ樹脂成分及びレゾール型フェ
ノール樹脂成分の一部は分散粒子相の形で存在し、レゾ
ール型フェノール樹脂成分の他の一部及びアクリル樹脂
成分の少なくとも大部分は水相(分散粒子界面の部分を
も含む)中に存在していることが、構造上組成上の顕著
な特徴である。
【0016】即ち水相中に、アンモニウム塩またはアミ
ン塩の形のカルボキシル基含有アクリル樹脂成分に加え
てレゾール型フェノール樹脂成分の一部が存在すること
によって、両者が架橋反応して熱硬化樹脂と成ると共
に、この硬化反応物は最終硬化塗膜中に分散粒子の形で
取り込まれるという全く新規且つ予想外の作用が奏され
るのである。
【0017】本発明の内面塗装缶の硬化塗膜は、エポキ
シ樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分との硬化反
応物からなる連続マトリックス相と、カルボキシル基含
有アクリル樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分と
の硬化反応物からなる分散粒子相とから成っており、水
性塗料中のエポキシ樹脂成分及びレゾール型フェノール
樹脂成分の一部から成る分散粒子相が塗膜中の連続マト
リックス相に、また水性塗料中のレゾール型フェノール
樹脂成分の他の一部及びアクリル樹脂成分から成る連続
水相が塗膜中の分散粒子相に相転換するという極めて興
味のある挙動を示すのである。
【0018】図1は水性塗料の分散粒子構造を示す電子
顕微鏡写真であり、黒い球状粒子がエポキシ樹脂成分と
レゾール型フェノール樹脂成分とから成る分散粒子であ
る。水性塗料の分散粒子相及び連続水相の組成はこれら
を分離し、分離した各成分を分析することにより確認す
ることができる。
【0019】図2は、この様にして水性塗料から分離さ
れた連続水相中に含有される樹脂成分のゲルパーミエー
ションクロマトグラム(GPC)であり、最下方の数値
はポリスチレン基準の重量平均分子量である。図2にお
いて、左側の大きいピークAはアクリル樹脂によるもの
であり、一方右側の小さいピークPはレゾール型フェノ
ール樹脂成分によるものである。図2において、この様
な双山のピークが現れる理由は、カルボキシル基含有ア
クリル樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂成分とは元
々分子量に大きな差異があると共に、水相中に存在する
条件として、アクリル樹脂ではかなり高い分子量まで許
容されるのに対して、レゾール型フェノール樹脂成分で
は相当低い分子量に制限されることによる。
【0020】図3は、図1の水性塗料から形成された硬
化塗膜中の分散粒子構造を示す塗膜断面の電子顕微鏡写
真であり、黒いバックグラウンドがエポキシ樹脂成分と
レゾール型フェノール樹脂成分との硬化物からなる連続
マトリックス相を示し、白い部分がアクリル樹脂を含有
する分散粒子相を示す。図1と図3とを対比すると、塗
料の状態で連続相中に存在していたアクリル樹脂が、塗
膜の状態では分散粒子として、連続マトリックス中に取
り込まれ、相転換が生じているという特徴が明かとな
る。
【0021】図4は、エポキシ樹脂成分とレゾール型フ
ェノール樹脂成分を含有する従来の有機溶剤型の塗料
I、従来の水性塗料II及び本発明の水性塗料III(その
詳細は後述する例参照)から得られた硬化塗膜について
求めた動的貯蔵弾性率−温度曲線である。図4から、従
来の塗料から形成される硬化塗膜は、温度90乃至11
0℃に単一のショルダーしか有していないのに対して、
本発明の内面塗装缶の塗膜は、上記温度範囲のショルダ
ーの他に、温度140乃至170℃にもショルダーを有
するという驚くべき特徴が明かとなる。
【0022】図4のグラフは、本発明の内面塗装缶の硬
化塗膜は相分離構造となっていることを示すが、更に興
味のある事実をも示している。即ち、ここで使用したア
クリル樹脂の未硬化のもののガラス転移点(Tg)は1
10℃程度であり、図4の曲線では、別のショルダーと
しては現れないが、温度140乃至170℃にショルダ
ーを有することはこのアクリル樹脂が架橋されていると
いう事実を示している。
【0023】本発明の内面塗装缶に使用する塗料の水相
中に存在する低分子量のレゾール型フェノール樹脂成分
は、アクリル樹脂に対して反応性が大きく、高度の架橋
硬化作用を示すという点で、極めて特異的なものであ
る。この見地から、水相中のレゾール型フェノール樹脂
成分は200乃至500の重量平均分子量(GPC法)
を有するのがよく、また塗料の安定性及び塗膜物性か
ら、水相中においてアクリル樹脂成分とレゾール型フェ
ノール樹脂成分とは99:1乃至80:20の重量比で
存在するのがよい。
【0024】本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料
は、カルボキシル基含有アクリル樹脂成分とを含有し且
つアクリル樹脂中のカルボキシル基がアンモニウム塩ま
たはアミン塩の形となってO/W型エマルジョンを形成
している為、貯蔵並びに保存安定性や塗装作業性に優れ
ていると共に、エポキシ樹脂成分とレゾール型フェノー
ル樹脂成分とを所定の割合で含有しているため、硬化性
能にも優れているという利点が達成されるばかりでな
く、形成される硬化塗膜は、アクリル樹脂成分が完全に
架橋硬化していると共に、この硬化物が塗膜の連続マト
リックス中に分散粒子の形で取り込まれているため、レ
トルト殺菌等の高温熱水処理に際しても塗膜の白化や塗
膜からの抽出が防止されるという作用がある。かくし
て、この塗料は、塗装作業性、塗膜の密着性、レトルト
殺菌更にはその後の経時での耐腐食性及び塗膜の耐抽出
性の組み合わせに優れたものである。
【0025】
【発明の好適態様】本発明に使用する水性塗料は、塗膜
形成成分として、エポキシ樹脂成分と、レゾール型フェ
ノール樹脂成分と、カルボキシル基含有アクリル樹脂と
を含有し、カルボキシル基含有アクリル樹脂成分はアン
モニュウム塩、アミン塩の形に中和される。
【0026】(エポキシ樹脂成分) エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA等のビスフェ
ノール類とエピハロヒドリンとの重縮合により得られた
ビスフェノール型エポキシ樹脂が好適であり、そのエポ
キシ当量は一般に400 乃至20,000、特に 1,000乃至 5,0
00の範囲及び数平均分子量は 1,000乃至20,000、特に
2,000乃至13,000の範囲にあるものが好ましい。
【0027】(レゾール型フェノール樹脂成分) 本発明に用いるレゾール型フェノール樹脂成分は、前述
した通り、水性塗料中の分散粒子相として存在する部分
と水相中に存在する部分とがある。これらの分配は、分
子量によるのは当然のことであるが、用いるレゾール型
フェノール樹脂成分はこれらに相当する分子量分布を有
しているものでなければならない。一般に重量分子量が
200乃至500の低分子量成分と重量分子量が500
を越える高分子量部分とが80:20乃至20:80、
特に60:40乃至30:70の重量比で含有されてい
ることが好ましい。しかしながら、水相中に存在するの
は低分子量成分であるが、低分子量成分の全てが水相中
に含有されている訳ではないことに注意すべきである。
【0028】このレゾール型フェノール樹脂成分は、分
子量分布を上記の範囲とする点を除けば、それ自体公知
の方法で製造される。このレゾール樹脂はp−置換フェ
ノールとホルムアルデヒド乃至その機能誘導体とを、該
フェノール1モル当りホルムアルデヒドが2モル以上と
なる割合で、アンモニア触媒、アルカリ金属触媒または
アルカリ土類金属触媒の存在下に80乃至130℃の温
度で1乃至10時間程度の加熱を行うことにより得られ
る。また、50℃よりも低い温度で反応させて単量体の
ジメチロール化物を形成させ、次いで生成する単量体の
ジメチロール化物をより所期の分子量分布となるように
高温で縮合させることによっても得ることができる。上
記低分子量の樹脂成分の目安として、ビスフェノール類
の単量体、p−クレゾールの二核体(二量体)がこの分
子量範囲に入る。
【0029】p−置換フェノールの適当な例は、これに
限定されないが、p−クレゾール、p−エチルフェノー
ル、p−tertブチルフェノール、p−tertアミルフェノ
ール、p−n−オクチルフェノール、p−n−ノニルフ
ェノール、p−メトキシフェノール、p−フェニルフェ
ノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−ベンジル
フェノール等である。特に、p−クレゾール、p−エチ
ルフェノール、p−tertブチルフェノール、p−フェニ
ルフェノールが好適である。
【0030】単独或いは組み合わせで使用し得るp−置
換多核フェノールの適当な例は、2,2'−ビス(4−ヒド
ロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2'
−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノ
ールB)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタ
ン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェ
ノールF)、4−ヒドロキシフェニルエーテル、p−
(4−ヒドロキシ)フェノール、等の多環フェノール類
である。
【0031】本発明においてフェノール成分は全てがp
−置換フェノールから成ることが好ましいが、フェノー
ル全体当り30モル%を超えないという条件下で他のフ
ェノール類を組合せることができる。このような他のフ
ェノール類としては、例えばo−クレゾール、2,3 −キ
シレノール、2,5 −キシレノール等の2官能性フェノー
ルや、フェノール(石炭酸)、m−クレゾール、m−エ
チルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフ
ェノール等の3官能性フェノール類が挙げられる。
【0032】合成に際して、他方の原料としては、ホル
ムアルデヒドの他にその機能誘導体、即ち、反応条件下
でホルムアルデヒドとして作用する誘導体、例えばパラ
ホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン等を用いること
もできる。
【0033】縮合反応は、適当な反応媒体中、特に水性
媒体中、アンモニア触媒、アルカリ金属触媒又はアルカ
リ土類金属触媒の存在下に行う。触媒としては例えばア
ンモニア、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸ナトリウム
等のアルカリ金属の水酸化物やアルカリ性塩や、水酸化
マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸
化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性塩化マ
グネシウム、塩基性酢酸マグネシウム等のアルカリ土類
金属の水酸化物、酸化物或いは塩基性塩等が好適に使用
される。これらの塩基性触媒は、反応媒体中に触媒量、
特に0.01乃至0.5 モル%の量で存在させればよい。
【0034】生成する樹脂はそれ自体公知の手段で精製
することができ、例えば反応生成物たる樹脂分を例えば
ケトン、アルコール、炭化水素溶媒或いはこれらの混合
物で反応媒体から抽出分離し、必要により水で洗滌して
未反応物を除去し、更に共沸法或いは沈降法により水分
を除去して、エポキシ樹脂等に混合し得る形のレゾール
型フェノールアルデヒド樹脂とすることができる。
【0035】レゾール樹脂中のメチロール基の少なくと
も一部をブチルアルコール等のアルコール類と反応させ
て、エーテル化メチロール基の形に予じめ変性しておく
ことも勿論可能である。
【0036】本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料
は、エポキシ樹脂と硬化剤樹脂との組成比が任意の範囲
内にある場合にも、この塗料樹脂を微細な分散粒径に乳
化分散させ得ることが顕著な特徴である。
【0037】(カルボキシル基含有アクリル樹脂成分) 高分子分散剤としてのアクリル系樹脂は、塗料樹脂成分
基準で2乃至30の酸価、特に5乃至20の酸価となる
量で存在させるのがよい。酸価が上記範囲を下廻る様な
量では、樹脂成分をO/W型エマルジョンの形で分散さ
せることが困難となり、また強いて分散させたとして
も、分散安定性がとぼしい。また、酸価が上記範囲を上
廻る様な量では、硬化させたとしても、塗膜の耐熱水性
が低下し、レトルト殺菌後の耐腐食性等が低下する。
【0038】用いるアクリル系樹脂そのものは、35乃
至350、特に70乃至330の酸価を有することが望
ましく、このアクリル系樹脂を塗膜形成成分としての樹
脂当り3乃至30重量%、特に5乃至25重量%の量で
用いるのがよい。
【0039】アクリル系樹脂としては、酸価が上述した
範囲内にある限り任意のアクリル系樹脂を用いることが
できる。このアクリル系樹脂は、上述した酸価のカルボ
キシル基を樹脂中に与えるエチレン系不飽和カルボン酸
又はその無水物と、アクリル酸エステル又はメタクリル
酸エステルと、所望によりこれらと共重合可能な他のエ
チレン系不飽和単量体との共重合体から成る。エチレン
系不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル
酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル
酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸等であ
る。
【0040】アクリル酸やメタクリル酸のエステルとし
ては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メ
タ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブ
チル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリ
ル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、
(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アク
リル酸n−オクチルなどがある。ただし、上記の(メ
タ)アクリル酸とはアクリル酸もしくはメタアクリル酸
を示す。
【0041】これらの単量体と共に共重合される他の単
量体としては、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニ
ロリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0042】用いるアクリル系樹脂はフイルムを形成す
るに足る分子量を有するべきであり、一般に10,000乃至
200,000、特に20,000乃至 150,000の範囲内の分子量を
有していることが望ましい。アクリル共重合体の適当な
組合せの例は、 (1)メタクリル酸メチル/アクリル酸2
−エチルヘキシル/アクリル酸、 (2)スチレン/メタク
リル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸、 (3)
スチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸、 (4)メタ
クリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸等であ
る。
【0043】これらのアクリル系樹脂は、これらの単量
体を有機溶媒中、アゾビスイソブチロニトリル類や過酸
化物の存在下で重合させることにより容易に得られる。
【0044】(中和剤) アクリル樹脂を塩に転化するための中和剤としては、ア
ンモニアやアミンが使用される。アミンとしては、イソ
プロピルアミン、 sec−ブチルアミン、tert−ブチルア
ミン、イソアミルアミン等のアルキルアミン、特に分岐
鎖アルキルアミン類が好適に使用される他、モノ−、ジ
−或いはトリ−エタノールアミン等のアルコールアミ
ン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリ
ン等の複素環アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族ア
ミン類等が使用される。アミン類は、アクリル系樹脂の
カルボキシル基に対して、少なくとも0.3 化学当量、特
に0.7 乃至1.3 化学当量の量で用いるのがよい。
【0045】(塗料及びその製法) 熱硬化性樹脂のO/W型エマルジョンは、エポキシ樹脂
成分とレゾール型フェノール樹脂成分とアクリル系樹脂
とを含有する有機溶媒溶液に、アミン含有水を混合する
か、あるいは、エポキシ樹脂成分とレゾール型フェノー
ル樹脂成分とアクリル系樹脂とを含有する溶融物に、ア
ミン含有水を混合するいわゆる相転換法により形成する
ことができる。
【0046】この塗料では、エポキシ樹脂成分が90乃
至40重量%、レゾール型フェノール樹脂成分が3乃至
40重量%、及びカルボキシル基含有アクリル樹脂成分
が5乃至40重量%の量比で存在するのがよい。
【0047】上記の樹脂成分を含有する有機溶媒溶液又
は溶融物にアミン水を添加すると、添加の初期において
は系の粘度が上昇するが、添加を続けていくと系の粘度
が徐々に低下しはじめる。この段階で添加を中断して系
全体を攪拌により均質化し、再びアミン水の添加を続け
ると所定量のアミン水の添加で系の粘度は急激に低下す
る。樹脂溶液にアミン水を添加した初期においては、水
相は分散相の形で存在するが、前述した系の粘度が急激
に低下した段階では、特定の樹脂成分を含む水相が連続
(分散媒)相及び特定の他の樹脂成分が分散相となった
O/W型乳化液が安定に生成するのである。
【0048】溶液相転換法の場合は、エポキシ樹脂成分
及びレゾール型フェノール樹脂成分の有機溶媒溶液
(A)及びアクリル系樹脂の有機溶媒溶液(B)を調製
し、これら溶液(A)及び(B)を均密に混合して原料
溶液とする。この溶液用の有機溶媒としては、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メ
チルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘ
キサノン等のケトン系溶媒;エタノール、プロパノー
ル、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソル
ブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチ
ル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の1種又は2種以
上を用いることができる。原料溶液中の樹脂分濃度は、
一般に5乃至80重量%、特に20乃至70重量%の範
囲内にあるのがよい。この原料溶液には、それ自体公知
の塗料用配合剤、例えば可塑剤、滑剤、顔料、充填剤、
安定剤等を所望により配合してよい。
【0049】相転換に使用する水の量は、樹脂の種類や
原料溶液の濃度によっても相違するが、一般に、原料溶
液当り0.5 乃至2.0 重量倍、 特に0.7 乃至 1.5重量倍の
水の使用が推奨される。樹脂溶液とアミン水との混合
は、室温で十分であるが、所望によっては100℃程度
の温度に迄加温してもよい。添加混合は、通常の攪拌機
を備えた反応槽内で行うことができるが、所望によって
は、ホモミキサーのような高剪断攪拌装置を使用した
り、超音波振動の照射を用いることもできる。
【0050】相転換により水性分散液には、水と有機溶
媒との双方が含有されている。この水性分散液を共沸減
圧蒸溜に付することにより有機溶媒を水との共沸により
除去し、また水性分散液の濃縮を行うことができる。有
機溶媒の共沸蒸溜に際しては、外部から水を補給しなが
ら行うことも可能なことが了解されるべきである。
【0051】最終水性塗料における塗料樹脂固形分の濃
度は10乃至70重量%、特に20乃至60重量%の範
囲にあることが望ましく、且つ水性塗料中の有機溶媒の
含有量は15重量%以下、特に5重量%以下であること
が望ましい。また、塗料中の樹脂分の分散安定性を向上
させる目的で、任意の段階で若干量の界面活性剤や高分
子分散剤を系中に添加することは許容される。この水性
塗料の分散粒径は0.1乃至10μm、特に0.3 乃至5μ
mの範囲にあることが望ましい。
【0052】溶融物相転換法の場合、塗料用樹脂とアク
リル系樹脂とを含有する溶融物を調製する。この溶融物
の溶融粘度は一般に10乃至 100,000センチポイズ、特に
100乃至30,000センチポイズの範囲内にあるのが適当で
あり、上記範囲よりも高粘度では両者の均密且つ一様な
混練が困難となる場合がある。また溶融物の温度は10
乃至150℃、特に20乃至120℃にあるのが適当で
あり、上記温度範囲よりも高い場合には、塗料樹脂成分
の部分ゲル化や早期ゲル化(プレメーチュア)を生じ易
くなるので好ましくない。混練温度を下げ且つ溶融粘度
を下げる目的で前述した有機溶媒を用いることができ
る。
【0053】有機溶媒の使用量は、樹脂分当り30重量
%以下、特に15重量%以下とするのが適当である。一
方或いは両方の樹脂成分が有機溶媒溶液の形で混練に供
給してもよいことは勿論である。
【0054】溶融混練は、ニーダー、バンバリミキサ
ー、単軸又は二軸の押出式混練装置を用いて行うことが
できる。水の添加量や、有機溶媒の除去等は、溶液相転
換法の場合に準ずる。
【0055】(用途) 本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料は、塗装に適し
た粘度で、各種金属素材や、罐胴、罐蓋或いはその他の
部材の塗布に用いることができる。この水性塗料は、通
常のスプレー塗料や静電塗装に用いられるばかりではな
く、ローラ塗布、ブラシ塗布、ドクターコーター、エア
ナイフコーター、リバースコーター等の各種コーターに
よる塗布作業に用いることができる。
【0056】本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料
は、金属容器用塗料として特に有用であり、金属素材の
段階から金属容器の段階への任意の段階で塗膜として施
こすことができる。特にコイル状の金属板や金属箔に連
続塗装を行い或いは再絞り缶や絞りしごき缶の内面へス
プレー塗装し、また、金属板にロール塗装することがで
きる。
【0057】例えば、側面継目を有するスリーピース缶
の場合には、ブラックプレート、各種被覆鋼板、例えば
スズ、クロム、アルミニウム、亜鉛等を表面にメッキし
たメッキ鋼板やその表面をクロム酸及び/又はリン酸等
で化学処理乃至は陰極電解処理した鋼板乃至箔;アルミ
ニウムの如き軽金属板乃至箔;ポリオレフィン等の樹脂
フィルムや紙ボード等の有機質基質の表面にアルミニウ
ム箔等を接着積層した複合金属素材等の罐用素材に予じ
め、前記塗料を施こし、次いで焼付した後、ハンダ付
け、溶接、接着剤による接合等の手段で接合して、罐胴
とする。
【0058】或いは塗装罐用素材を打抜き、プレス成
形、或いは更にスコア加工、ボタン成形、タブの取付け
等を行って、罐蓋或いはイージイ・オープン罐蓋に成形
する。勿論順序を逆にして、製罐後の罐胴や罐蓋或いは
罐に前記塗料を塗布し、焼付けてもよく、この塗料はシ
ングルコートとして設けても、或いはダブルコートとし
て設けてもよい。
【0059】また、無継目罐胴(ツーピース缶)の場合
には、前記罐用素材を、しぼり加工或いはしぼり−しご
き加工に賦し、成形後の罐胴に前記塗料を塗布し、焼付
ける。或いは順序を逆にして、加工前の罐用素材に前記
塗料を塗布し、焼付してもよい。
【0060】本発明の内面塗装缶に用いる溶液型塗料
は、例えば浸漬塗、ローラコート、スプレー塗布、ハケ
塗、静電塗装、電着塗装、ワイヤーコート、フローコー
ト、ドクターコート等の任意の手段で、罐用素材、罐
胴、罐蓋又は罐に塗布することができる。塗料の厚み
は、一般に乾燥物基準で1乃至50ミクロン、特に2乃
至40ミクロンの範囲とすることができる。
【0061】塗料の焼付硬化のための加熱は、例えば電
熱オーブン、ガス燃焼オーブン、各種熱源から発生させ
た熱風オーブン等による雰囲気加熱方式の他、被塗物基
体側から加熱する抵抗加熱、誘導加熱方式または熱板に
被塗物を圧着する伝導熱による加熱、さらにガスを燃焼
させ発生する火炎により直接塗膜を加熱する方式、赤外
または遠赤外線による加熱などいずれの方法を用いても
よい。
【0062】
【実施例】本発明を次の例で更に詳細に説明する。な
お、特記しない限り、部は重量部を表す。 [実施例1]ビスフェノールAとp−クレゾール、及び
ホルムアルデヒドよりアンモニア触媒を用いて誘導され
たレゾール型フェノール樹脂(ビスフェノールA/p−
クレゾール=80/20、重量平均分子量650)20
部をキシレンとメチルイゾブチルケトン、シクロヘキサ
ノン及びn−ブタノールの混合溶剤(キシレン/メチル
イソブチルケトン/シクロヘキサノン/n−ブタノール
=1/1/1/1)40部に溶解した溶液を作製した。
ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(以下
GPCと略す)で分析した結果、このレゾール型フェノ
ール樹脂中は重量平均分子量が200乃至500の低分
子量成分と重量平均分子量が500を越える高分子量成
分の比率が45:55であった。
【0063】別に数平均分子量3750、エポキシ当量
約3000のビスフェノールA型エポキシ樹脂80部を
酢酸ブチルとブチルセロソルブの混合溶液(酢酸ブチル
/ブチルセロソルブ=3/1)160部に溶解した溶液
を準備し、前記のフェノール樹脂溶液と混合した。
【0064】一方、エチルアクリレート20部、メチル
メタクリレート20部、メタクリル酸40部、スチレン
20部とベンゾイルパーオキサイド1部の混合物を準備
し、攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管と不活性ガ
ス導入口を備えたフラスコにエチルセロソルブ50部と
前記の混合物25部を仕込み、窒素気流下で攪拌しなが
ら90℃に昇温した後、同温度に保持されたフラスコ中
へ前記の混合物の残量を3時間にわたって滴下して共重
合せしめ、更に、ベンゾイルパーオキサイド0.1部を
添加して同温度で3時間攪拌を継続した後、エチルセロ
ソルブ50部を添加して冷却し、反応を完結させた。得
られたアクリル樹脂の重量平均分子量は約12万、酸価
は123、樹脂溶液の固形分は50%であった。
【0065】次に、前記のエポキシ樹脂溶液とフェノー
ル樹脂溶液の混合溶液300部を115℃で4時間予備
縮合させた後、前記のアクリル樹脂溶液を20部添加し
て均一になるまで攪拌した。更に、脱イオン水450部
に濃度28%のアンモニア水30部を溶解したアンモニ
ア水を準備し、前記のエポキシ樹脂溶液とフェノール樹
脂溶液、アクリル樹脂溶液の混合物を激しく攪拌してい
る中へ徐々に滴下した。アンモニア水の添加の初期には
系は白色のクリーム状となるが、アンモニア水の添加が
進むと系の粘度は徐々に低下する。この段階でアンモニ
ア水の添加を中断して攪拌を続け、全体が均一に分散し
た状態になった後でアンモニア水の添加を再開したとこ
ろ、系の粘度は急激に低下した。攪拌下でアンモニア水
の添加を続行し、更に500部の脱イオン水を添加した
ところ、全量の添加が終了した後には安定なO/W型エ
マルジョンが形成された。
【0066】このエマルジョンをロータリーエバボレー
ターで濃縮して固形分40%ととし、#1のガラスフィ
ルターで濾過して乳化型水性塗料とした。この乳化型水
性塗料は、樹脂粒子の平均粒径は0.58μmであり、
塗料当り3.5%の有機溶剤を含有している。透過型電
子顕微鏡(以下TEMと略す)を用いて観察した樹脂粒
子の形態を図1に示す。
【0067】この乳化型水性塗料を超遠心分離装置にか
け、樹脂粒子を沈降させて上澄み液を得た。この上澄み
液2mlに濃塩酸数滴を加えた後に乾固し、テトラヒド
ロフラン5mlを加えて樹脂分を溶解し、濾過した。濾
液をGPCにより分析した結果を図2に示す。ここで、
分子量は単分散ポリスチレンの分子量を表す。また、ピ
ークAの成分はアクリル樹脂が主体であり、ピークPの
成分はフェノール樹脂が主体であることを赤外分光法に
より確認した。ピークAとピークPの面積比は90:1
0であった。
【0068】この乳化型水性塗料100mlを内容量1
00mlのガラス製広口ビンに入れて密栓し、50℃の
恒温槽中に1ケ月保存した後開封して調査したところ、
液面に皮張りは生じていなかった。また、乳化型水性塗
料の粘度、樹脂粒子の平均粒径ともに保存前と比較して
変化していなかった。
【0069】この乳化型水性塗料を#30バーコーター
を用いてぶりき板に塗布し、200℃で10分間焼付し
た後、ぶりき板から塗膜を剥離した。この塗膜をポリス
チレン樹脂に包埋、ウルトラミクロトームで塗膜面に垂
直の方向に薄片を切り出し、四酸化ルテニウムで染色し
た後、TEMで観察した。結果を図3に示す。ここで、
黒色部はエポキシ樹脂とフェノール樹脂が反応した硬化
物であり、白色部はアクリル樹脂とフェノール樹脂が反
応した硬化物である。白色部の長軸方向の平均長さは約
1μmである。
【0070】この塗膜の動的粘弾性をレオバイブロンD
DV−II−EA(オリエンテック(株)製)を用いて、
測定周波数110Hzで観測した。動的貯蔵弾性率の温
度依存性を図4(塗料III)に示す。図には比較例1の
結果も併せて示した。本実施例で示したアクリル樹脂単
体のガラス転移温度(以下Tgと略す)は示差熱分析に
より約110℃であることが判っており、比較例1の結
果(塗料I 及び塗料II)を併せて考えると、低温側(約
95℃)のショルダーはエポキシ樹脂とフェノール樹脂
の反応した硬化物に由来しており、高温側(約160
℃)のショルダーはアクリル樹脂とフェノール樹脂の反
応した硬化物に由来するものと考えられる。
【0071】アクリル樹脂とフェノール樹脂の硬化反応
が起こっていることを確認する目的で、更に追加の試験
を行った。前記のアクリル樹脂溶液9部とフェノール樹
脂溶液1部を混合し、TFSに塗装・焼付した。一方
で、アクリル樹脂溶液を単独でTFSに塗装・焼付した
ものを準備した。これらの塗装板をトルエン中で沸点で
1時間還流下で抽出した。フェノール樹脂を含む樹脂溶
液を塗装した塗装板には塗膜が残ったが、フェノール樹
脂を含まない樹脂溶液を塗装した塗装板上には塗膜が残
留せず、完全に溶解した。このことから、アクリル樹脂
とフェノール樹脂が反応し、溶剤に不溶の硬化物を形成
していることを確認した。
【0072】一方、前記の乳化型水性塗料をロールコー
ターを用いて電解クロム酸処理鋼板(以下TFSと略
す)に塗装し、210℃で10分間焼付して硬化させ
た。この塗装板をナイロン系の接着剤を用いてホットプ
レスで2分間押圧することにより接着した。T−ピール
により剥離強度を測定したところ、接着直後の初期剥離
強度は6.8kg/5mm幅であり、90℃の温水中に
1週間浸漬した後の経時剥離強度は4.6kg/5mm
幅であった。また、この接着試験片を125℃30分の
レトルト処理に賦した後評価したところ、塗膜の白化は
認められず、4.5kg/5mm幅以上の剥離強度を保
持していた。
【0073】また、ロールコーターでTFSの片面に前
記の乳化型水性塗料を塗装して210℃で10分間焼付
した後、他の片面にも同様に塗装・焼付を施し、両面塗
装板を準備した。この塗装板とナイロン系の接着剤を用
いて、202ダイヤの接着缶胴(両端部はネックイン加
工されて200ダイヤになっている)を作製し、底蓋を
二重巻締めした後、コーヒー飲料を充填し、天蓋を二重
巻締めしてコーヒー飲料の缶詰とした。このコーヒー飲
料の缶詰を125℃で30分間レトルト殺菌処理し、冷
却・風乾後、倉庫に保存した。6ケ月保存後開缶して評
価したところ、塗膜の白化や缶内面の腐食などの異常は
認められなかった。また、前記缶の蒸溜水を充填・密封
した後、125℃で30分間レトルト殺菌処理し、この
内容液の過マンガン酸カリ(KMnO4 )消費量を測定
した。過マンガン酸カリ消費量は約10ppmであり、
有機物の溶出量は低いレベルに抑制されていた。
【0074】 [比較例1]実施例1のエポキシ樹脂溶液70部と実施
例1のアクリル樹脂溶液30部をジメチルアミノエタノ
ールの存在下で90℃で30分間反応させて、エポキシ
樹脂とアクリル樹脂がエステル結合により結合した複合
樹脂を作製した。更に、実施例1のフェノール樹脂溶液
20部を添加した後、ジメチルアミノエタノール3部を
添加してアクリル樹脂中のカルボキシル基を中和し、攪
拌しながら脱イオン水100部を滴下して、乳化型水性
塗料(塗料II)を作製した。一方、実施例1のエポキシ
樹脂溶液とフェノール樹脂溶液の混合物を予備縮合した
ものをそのまま溶剤型塗料(塗料I )とした。
【0075】これらの塗料を用いて、実施例1に示した
方法に準じて塗膜を作製し、動的粘弾性を測定した。結
果は図4に示した。いずれの塗膜でもTgに相当するシ
ョルダーは一つのみであり、全体が均一系を形成してい
ることがうかがわれる。更に、実施例1の方法に準じ
て、塗膜の断面構造をTEMにより観察した。これらの
塗膜では全体が均一構造を有しており、相分離構造は認
められなかった。また、実施例1に準じて測定した過マ
ンガン酸カリ消費量はいずれも約15ppmであった。
【0076】 [実施例2]実施例1に示した方法に準じて、ビスフェ
ノールAとp−クレゾール、及びホルムアルデヒドより
アンモニア触媒を用いて誘導されたレゾール型フェノー
ル樹脂5種を作製した。更に、ビスフェノールAとp−
クレゾール、及びホルムアルデヒドより水酸化マグネシ
ウムを触媒として誘導されたレゾール型フェノール樹脂
3種を作製した。これらのレゾール型フェノール樹脂の
合成に当たっては、ホルムアルデヒドの添加量を変量す
ることにより、平均分子量及び重量平均分子量が200
乃至500の低分子量成分と重量平均分子量が500を
越える高分子量成分の比率の異なるレゾール型フェノー
ル樹脂を得た。
【0077】一方、p−クレゾールとホルムアルデヒド
を水酸化マグネシウム触媒を用いて45℃で反応させて
p−クレゾール単量体のジメチロール化物を形成させ、
次いで生成するp−クレゾール単量体のジメチロール化
物を120℃で縮合させることによって更に1種のレゾ
ール型フェノール樹脂を得た。レゾール型フェノール樹
脂のモノマー組成と、得られたレゾール型フェノール樹
脂の平均分子量及び重量平均分子量が200乃至500
の低分子量成分と重量平均分子量が500を越える高分
子量の比率を表1に示す。
【0078】これら9種のレゾール型フェノール樹脂と
実施例1で使用したエポキシ樹脂溶液、アクリル樹脂溶
液及びモルホリンを用いて、実施例1に示した方法に準
じて9種の乳化型水性塗料を作製した。これらの乳化型
水性塗料中の樹脂粒子を遠心分離法により沈降せしめ、
上澄み液を実施例1に示した方法で分析した。結果を表
1に併せて示した。
【0079】これらの乳化型水性塗料をぶりき板に塗装
して硬化塗膜を得、それらの塗膜の断面構造をTEMで
観察するとともに、動的粘弾性を測定した。いずれの乳
化型水性塗料の塗膜に於いても、連続マトリックス相中
に分散粒子相が存在する構造を有していることを確認し
た。連続マトリックス相と分散粒子相の面積分率、分散
粒子相の長軸方向の平均寸法を表1に示す。更に、動的
粘弾性測定により、いずれの塗膜もその動的貯蔵弾性率
−温度曲線に2つのショルダーを有することを確認し
た。各塗膜の低温側と高温側のショルダーの始まりの温
度を表1に併せて示した。
【0080】更に、これらの乳化型水性塗料をTFSに
塗装し、接着性能を評価するとともに、接着缶胴を作製
し、実施例1の方法に従ってミルクコーヒーの缶詰を作
製し、評価した。過マンガン酸カリ消費量を評価した結
果を表1に示す。また、いずれの乳化型水性塗料を用い
たものでも缶性能に異常は認められなかった。
【0081】 [比較例2]p−クレゾールとホルムアルデヒドを水酸
化マグネシウム触媒を用いて45℃で反応させてp−ク
レゾール単量体のジメチロール化物を形成させた。この
フェノール樹脂の重量平均分子量は約180であった。
このフェノール樹脂を用いて、実施例1の方法に準じて
乳化水性塗料を作製した。この乳化型水性塗料を分析し
た結果、水相中に溶解しているフェノール樹脂の重量平
均分子量は約170であり、アクリル樹脂とフェノール
樹脂の比率は55:45であった。実施例1に準じて測
定した過マンガン酸カリ消費量は約25ppmであっ
た。
【0082】 [比較例3]p−クレゾールとホルムアルデヒドを水酸
化マグネシウム触媒を用いて45℃で反応させてp−ク
レゾール単量体のジメチロール化物を形成させ、次いで
生成するp−クレゾール単量体のジメチロール化物を1
20℃で縮合させることによってレゾール型フェノール
樹脂を得た。
【0083】このフェノール樹脂45部と実施例1のエ
ポキシ樹脂溶液とアクリル樹脂溶液を固形分換算で各々
45部、10部を用いて乳化型水性塗料を製造した。こ
の乳化型水性塗料を分析した結果、水相中に溶解してい
るフェノール樹脂の重量平均分子量は約290であり、
アクリル樹脂とフェノール樹脂の比率は70:30であ
った。この乳化型水性塗料の塗膜を作製し、TEMで断
面構造を観察した結果、分散粒子相の長軸方向の平均寸
法は6.3μmであった。また、動的粘弾性測定により
得られた高温側のショルダーの温度は175℃であっ
た。実施例1に準じて測定した過マンガン酸カリ消費量
は約20ppmであった。
【0084】 [実施例3]実施例1のエポキシ樹脂溶液と、アクリル
樹脂溶液、フェノール樹脂溶液を用いて7種の乳化型、
水性塗料を作製した。エポキシ樹脂と、アクリル樹脂、
フェノール樹脂の比率(固形分換算)を表2に示した。
得られた乳化型水性塗料の分析結果、TEM観察結果、
及び動的粘弾性測定結果を表2に併せて示した。更に、
これらの乳化型水性塗料をTFSに塗装し、接着性能を
評価するとともに、接着缶胴を作製し、実施例1の方法
に従ってミルクコーヒーの缶詰を作製し、評価した。そ
の結果、いずれの乳化型水性塗料を用いたものでも接着
性能、缶性能ともに異常は認められなかった。また、実
施例1に準じて測定した過マンガン酸カリ消費量は10
乃至14ppmであった。
【0085】 [比較例4]実施例1のエポキシ樹脂溶液と、アクリル
樹脂溶液、フェノール樹脂溶液を用いて4種の乳化型水
性塗料を作製した。エポキシ樹脂と、アクリル樹脂、フ
ェノール樹脂の比率(固形分換算)を表3に示した。得
られた乳化型水性塗料の分析結果、TEM観察結果、及
び動的粘弾性測定結果を表3に併せて示した。更に、こ
れらの乳化型水性塗料をTFSに塗装し、接着性能を評
価するとともに、接着缶胴を作製し、実施例1の方法に
従ってミルクコーヒーの缶詰を作製し、評価した。過マ
ンガン酸カリ消費量の評価結果を表3に示す。またいず
れの乳化型水性塗料を用いたものでも缶性能に異常は認
められなかった。
【0086】 [実施例4]表4に示したモノマー組成で、実施例1に
示した方法に準じて5種のカルボキシル基含有アクリル
系樹脂を合成した。得られたアクリル系樹脂の酸価を表
4に示した。これらのアクリル系樹脂と、実施例1で使
用したエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を固形分当り1
5:85:15の比率で使用し、実施例1の方法に準じ
て5種の乳化型水性塗料を作製した。これらの塗料を塗
装し、評価した結果を表4に示す。
【0087】 [実施例5]表5に示した分子量とエポキシ当量を有す
る5種のエポキシ樹脂と、実施例1のアクリル樹脂及び
フェノール樹脂固形分当り85:15:15の比率で使
用し、実施例1の方法に準じて5種の乳化型水性塗料を
作製した。これらの塗料を塗装し、評価した結果を表5
に併せて示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【発明の効果】本発明の内面塗装缶に使用する水性塗料
は、水相中に、アンモニウム塩またはアミン塩の形のカ
ルボキシル基含有アクリル樹脂成分に加えてレゾール型
フェノール樹脂成分の一部が存在することによって、両
者が架橋反応して熱硬化樹脂と成ると共に、この硬化反
応物は最終硬化塗膜中に分散粒子の形で取り込まれるこ
と、即ち水性塗料中のエポキシ樹脂成分及びレゾール型
フェノール樹脂成分の一部から成る分散粒子相が塗膜中
の連続マトリックス相に、また水性塗料中のレゾール型
フェノール樹脂成分の他の一部及びアクリル樹脂成分か
ら成る連続水相が塗膜中の分散粒子相に相転換すること
が可能となり、これにより、レトルト殺菌等の高温熱水
処理に際しても塗膜の白化や塗膜からの抽出が防止され
るという効果が奏される。かくして、この塗料は、塗装
作業性、塗膜の密着性、レトルト殺菌更にはその後の経
時での耐腐食性及び塗膜の耐抽出性の組み合わせに優れ
ており、この塗料を塗布することにより優れた内面塗装
缶を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】水性塗料の分散粒子構造を示す電子顕微鏡写真
である。
【図2】水性塗料から分離された連続水相中に含有され
る樹脂成分のゲルパーミエーションクロマトグラム(G
PC)である。
【図3】図1の水性塗料から形成された硬化塗膜中の分
散粒子構造を示す塗膜断面の電子顕微鏡写真である。
【図4】エポキシ樹脂成分、レゾール型フェノール樹脂
成分及びカルボキシル基含有アクリル樹脂成分を含有す
る従来の有機溶剤型の塗料I、従来の水性塗料II及び本
発明の内面塗装缶に使用する水性塗料III(その詳細は実
施例参照)から得られた硬化塗膜について求めた動的貯
蔵弾性率−温度曲線である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製缶胴と、缶胴の少なくとも内面側
    に設けられたエポキシ樹脂成分、レゾール型フェノール
    樹脂成分及びカルボキシル基含有アクリル樹脂成分含有
    水性塗料の硬化塗膜からなる内面塗装缶において、該硬
    化塗膜がエポキシ樹脂成分とレゾール型フェノール樹脂
    成分との硬化反応物からなる連続マトリックス相と、カ
    ルボキシル基含有アクリル樹脂成分とレゾール型フェノ
    ール樹脂成分との硬化反応物からなる分散粒子相とから
    なることを特徴とする内面塗装缶。
  2. 【請求項2】 硬化塗膜断面において、連続マトリック
    ス相が98乃至80%の面積分率で且つ分散粒子相が2
    乃至20%の面積分率で夫々存在し、且つ分散粒子相の
    長軸方向寸法が平均で0.5乃至5.0μmの範囲にあ
    る請求項1記載の内面塗装缶。
  3. 【請求項3】 硬化塗膜がその動的貯蔵弾性率−温度曲
    線で、温度90乃至110℃及び温度140乃至170
    ℃に2個のショルダーを有するものである請求項1記載
    の内面塗装缶。
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