JPH0895415A - 射出成形体、複写機用分離爪及びその射出成形方法 - Google Patents

射出成形体、複写機用分離爪及びその射出成形方法

Info

Publication number
JPH0895415A
JPH0895415A JP19522995A JP19522995A JPH0895415A JP H0895415 A JPH0895415 A JP H0895415A JP 19522995 A JP19522995 A JP 19522995A JP 19522995 A JP19522995 A JP 19522995A JP H0895415 A JPH0895415 A JP H0895415A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
claw
shaft hole
tip
injection
liquid crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP19522995A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3604200B2 (ja
Inventor
Tomomi Nakamichi
友美 中道
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP19522995A priority Critical patent/JP3604200B2/ja
Publication of JPH0895415A publication Critical patent/JPH0895415A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3604200B2 publication Critical patent/JP3604200B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Fixing For Electrophotography (AREA)
  • Separation, Sorting, Adjustment, Or Bending Of Sheets To Be Conveyed (AREA)
  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ウエルドによる機械的強度の低下の影響がな
く、本来のLCPの自己補強効果を充分に発揮するLC
P製の射成形体または複写機用分離爪とし、そのような
分離爪を生産効率を低下させずに製造する。 【解決手段】 液晶ポリエステル樹脂製の三角形板状本
体1に鋭角状の爪先端部2を形成し、板状本体1には板
厚方向に貫通する軸穴3を形成した複写機用分離爪を射
出成形するときに、ゲートをa、b、cの位置に配置し
て、軸穴3から板状本体1の外縁に延びるウエルドW
を、軸穴3より爪先端部2に対して反対側の外縁に至る
ように形成し、または軸穴3から最も近い本体外縁に至
るように形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、サーモトロピッ
ク液晶ポリマー製の射出成形体、複写機用分離爪及びそ
の射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、サーモトロピック液晶ポリマー
としては、全芳香族ポリエステル等の芳香族系ポリエス
テル、ポリエステルアミド系、ポリアミドイミド系、ポ
リエステルカーボネート系、ポリアゾメチン系などがあ
り、これらの射出成形体は、耐熱性、衝撃などの機械的
強度などに優れた摺動部材として、軸受、スリーブ、ブ
ッシュ、カラー、ワッシャ、カム、ピストンシール、ソ
ケットなどに利用されている。
【0003】また、乾式複写機等の電子写真装置には、
文字または図形等に対応して感光ドラムの外縁に形成さ
れた静電荷潜像をトナー像に変換した後、このトナー像
を給紙カセットから供給されて来る紙面に転写し、さら
に転写されたトナー像を紙面に定着させるために加熱さ
れた定着ローラーによって外縁を加熱加圧し、トナー像
と紙繊維とを融着させて両者が容易に離れないようにす
る機構が組み込まれている。
【0004】そして、このような定着ローラーを通過し
た複写紙がローラーに巻き付くことなく確実に排出され
るように、分離爪をその先端がローラーの外周面に密着
させながら複写紙の端をすくい上げるように装着されて
いる。
【0005】このような複写機用分離爪は、通常、板状
本体の一隅に、板状本体の隣合う辺が鋭角状に配置形成
された爪先端部を有するものであり、板状本体の側面に
は厚さ方向に貫通する穴を1〜3個形成している。この
ような穴は、複写機へ取付けた際に軸を挿通したり、ま
たは製造段階で分離爪を所謂くし刺しの状態に保持して
爪の先端部を保護しながら製造工程間の運搬に利用した
りするものであって、射出成形時に金型にコア(中子)
を装入して形成されたものである。
【0006】そして、このような複写機用分離爪には、
ローラーの外周面に対して摩擦抵抗が小さく外縁を損傷
しないこと、充分な機械的強度、特に高温剛性を有し、
刃先または特にその先端部形状に充分な精度が得られる
こと、さらにはトナーが粘着されないことなどの諸特性
が要求される。
【0007】特に近年では、複写速度の高速化に伴い、
定着ローラーによる加熱温度をより高温に設定する場合
が多くなり、分離爪に対しても約250℃以上、ときに
は約300℃以上の耐熱性が要求されている。
【0008】複写機用分離爪の成形材料のうち、射出成
形可能なものとしては、ポリフェニレンサルファイド
(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド
(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、
液晶ポリエステル(LCP)等が挙げられる。
【0009】このうちLCPは、溶融した際に異方性の
ある液晶状態となって、分子が流動方向に著しく配向
し、硬化時には分子が一定の方向に配列するため、自己
補強効果があって高い機械的性質を示し、また衝撃強
さ、耐熱性、低吸水性に優れた材料である。
【0010】通常、このようなLCPの配向効果を最大
限に活かして射出成形体、特に分離爪を射出成形するに
は、射出成形用ゲートを分離爪先端部から最も離れた位
置に配置し、金型内の樹脂流動方向を爪先端部に向ける
ようにしていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、LCPからな
る射出成形体、特に板状の複写機用分離爪は、射出成形
した時に溶融樹脂先端が合流してウエルド(ライン)を
形成するので、このウエルド部分の自己補強効果が望め
ないという欠点がある。
【0012】特に、複写機用分離爪は、前記した板状本
体の側面に板厚方向に貫通する穴を1〜3個有するもの
であるから、このような穴を形成するための金型内のコ
アの周りにウエルドが形成されることになる。
【0013】このようなウエルドの強度を向上させる公
知技術としては、LCPにガラス繊維や炭素繊維、また
はウィスカなどの繊維状補強剤を充填して分子配向を適
当に乱す方法があるが、これでは充分な強度を得ること
はできない。
【0014】また、金型にコアを装入せず、穴を後加工
によって形成することも考えられるが、これでは射出成
形後に煩雑な作業が必要となり、生産効率の低下および
製造コストの上昇を招くことになる。
【0015】そこで、この発明の第1の課題は、上記し
た問題点を解決して、支持軸が貫通する軸穴を有するサ
ーモトロピック液晶ポリマー製の射出成形体のおいて、
ウエルドによる機械的強度の低下の影響がなく、本来の
LCPの自己補強効果を充分に発揮するLCP製射出成
形体とすることである。
【0016】また、この発明の第2の課題は、ウエルド
による機械的強度の低下の影響がなく、本来のLCPの
自己補強効果を充分に発揮する複写機用分離爪とすると
共に、このような複写機用分離爪を生産効率の低下およ
び製造コストの上昇を招くことなく提供することであ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の第1の課題を解決
するため、この発明においては、角状部分を有し、かつ
支持軸が貫通する軸穴を有するサーモトロピック液晶ポ
リマー製の射出成形体において、前記軸穴から成形体の
外面に延びるウエルドを、前記角状部分の先端以外の外
面に至るように配置したのである。
【0018】また、前記の第2の課題を解決するため
に、この発明においては、サーモトロピック液晶ポリマ
ー製の射出成形体からなる板状本体に鋭角状の爪先端部
を形成すると共に、支持軸が貫通する軸穴を板厚方向に
形成した複写機用分離爪において、前記軸穴から板状本
体の外縁に延びるウエルドを、軸穴から最も近い本体外
縁に至るように配置するか、または軸穴より爪先端部に
対して反対側の外縁に至るように配置したのである。
【0019】また、上記複写機用分離爪において、ウエ
ルドが、爪先端部から軸穴の中心までの距離を100と
した場合に、爪先端部を中心とする半径80の距離より
外側の外縁に至るように配置されるようにしたのであ
る。
【0020】また、サーモトロピック液晶ポリマーを射
出成形して成形体に鋭角状の端部を形成すると共に、成
形体に貫通する軸穴を形成する射出成形方法において、
前記端部と軸穴形成用のコアの間にゲートを配置して射
出成形したのである。
【0021】または、サーモトロピック液晶ポリマーを
射出成形して分離爪の板状本体に鋭角状の爪先端部を形
成すると共に、板状本体の板厚方向に貫通する軸穴を形
成する複写機用分離爪の射出成形方法において、前記爪
先端部と軸穴形成用のコアの間にゲートを配置して射出
成形したのである。
【0022】
【発明の実施の形態】この発明に係る射出成形体は、軸
穴から成型体の外面に延びるウエルドを、角状の先端部
以外の外縁に至るように配置したので、その使用状態で
衝撃などの機械的または熱的な影響がウエルドに伝わり
難くなり、先端部の欠けや割れも発生せず、LCP本来
の特性を発揮する射出成形体となる。
【0023】この発明に係る複写機用分離爪は、板状本
体に形成されるウエルドの外縁に延びる位置を爪先端部
から離れた所定の配置にしたので、分離爪の使用状態で
衝撃などの機械的または熱的な影響がウエルドに伝わり
難くなり、また爪先端部にウエルドがないので、この部
分の欠けや割れも発生せず、LCP本来の特性を発揮す
る分離爪となる。
【0024】特に、ウエルドが、爪先端部から軸穴の中
心までの距離を100とした場合に、爪先端部を中心と
する半径80の距離範囲より外側の外縁に至るように配
置されるようにした分離爪であれば、上記作用は特に顕
著である。
【0025】また、ウエルドの外縁に延びる位置を爪先
端部から離れた所定の配置にするには、軸穴形成用のコ
アを金型内に配置し、前記爪先端部とコアの間にゲート
を配置して射出成形するといった比較的簡易な手法を採
用すればよいので、そのために生産効率の低下および製
造コストの上昇を招かない。
【0026】この発明に用いるサーモトロピック液晶ポ
リマーは、液晶状態で射出成形可能のものであって、溶
融状態でポリマー分子鎖が規則的な平行配列をとる性質
を有している。光学的異方性溶融相の性質は、直交偏光
子を利用した通常の偏光検査法によって確認できる。液
晶ポリマーの具体例としてはパラオキシ安息香酸、4,
4’−ジヒドロキシジフェニルおよびテレフタル酸を共
重合させて得られる液晶性芳香族ポリエステルを挙げる
ことができる。市販の液晶性芳香族ポリエステルとして
は、日本石油化学社製のザイダー、住友化学工業社製の
スミカスーパー及びポリプラスチックス社製のベクトラ
等が挙げられる。
【0027】また、この発明に用いる上記のサーモトロ
ピック液晶ポリマーとしては、例えば、液晶ポリエステ
ル、液晶性ポリカーボネート、液晶性ポリエステル等が
挙げられる。具体的には、芳香族ポリエステル、全芳香
族ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアミドイミ
ド、ポリエステルカーボネート、ポリアゾメチン等であ
る。
【0028】サーモトロピック液晶ポリマーは、一般に
細長く、偏平で、分子の長鎖に沿って、剛性が高く同軸
または平行のいずれかの関係にある複数の連鎖伸長結合
を有しているようなモノマーから製造される。
【0029】この発明で用いるサーモトロピック液晶ポ
リマーは、上記化合物を溶融アシドリシス法やスラリー
重合法等の多様なエステル形成法により製造できる。
【0030】この発明に用いるサーモトロピック液晶ポ
リマーは、一つの高分子鎖の一部が異方性溶融相を形成
するポリマーのセグメントで構成され、残りの部分が異
方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂のセグメントから
構成されるポリマーも含むものである。また、複数のサ
ーモトロピック液晶ポリマーを複合したものも含む。
【0031】上記のように光学的異方性溶融相を形成す
るポリマーとしては、たとえば全芳香族ポリエステル、
全芳香族ポリエステルアミドなどが例示され、その構成
成分としては、(A)芳香族ジカルボン酸の少なくとも
一種、(B)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物の少
なくとも1種、(C)芳香族ジオール系化合物の少なく
とも一種、(D)(D1)芳香族ジチオール、(D2)
芳香族チオフェノール、(D3)芳香族チオールカルボ
ン酸化合物の少なくとも1種、(E)芳香族ヒドロキシ
アミン、芳香族ジアミン系化合物の少なくとも1種等が
挙げられる。
【0032】これらは単独で構成される場合もあるが、
多くの場合は(A)と(C)、(A)と(D)、(A)
(B)と(C)、(A)(B)と(E)、または(A)
(B)(C)と(E)などのように組み合わせて構成さ
れる。
【0033】上記(A)の芳香族ジカルボン酸系化合物
としては、テレフタル酸、4,4´−ジフェニルジカル
ボン酸、4,4´−トリフェニルジカルボン酸、2,6
−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカル
ボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル
エーテル−4,4´−ジカルボン酸、ジフェノキシエタ
ン−4,4´−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−
4,4−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4´−
ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−
3,3´−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3
´−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3´−ジカ
ルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族
ジカルボン酸またはクロロテレフタル酸、ジクロロテレ
フタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、
ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシ
テレフタル酸、エトキシテレフタル酸など、上記芳香族
ジカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置
換体が挙げられる。
【0034】(B)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合
物としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ
安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒド
ロキシ−1−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボ
ン酸または3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,
5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメ
チル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒ
ドロキシ安息香酸、3,5−ジメチトキシ−4−ヒドロ
キシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフ
トエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ
酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ
−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒ
ドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ
安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香
酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロ
キシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−
7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7
−ジクロロ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカ
ルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体
が挙げられる。
【0035】(C)芳香族ジオールとしては、4,4´
−ジヒドロキシジフェニル、3,3´−ジヒドロキシジ
フェニル、4,4´−ジヒドロキシトリフェニル、ハイ
ドロキノン、レゾルシン、2,6−ナフタレンジオー
ル、4,4´−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス
(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3´−ジヒ
ドロキシフェニルエーテル、1,6−ナフタレンジオー
ル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどの芳香
族ジオールまたはクロロハイドロキノン、メチルハイド
ロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイド
ロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイド
ロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシ
ンなどの芳香族ジオールのアルキル、アルコキシまたは
ハロゲン置換体が挙げられる。
【0036】(D1)芳香族ジチオールとしては、ベン
ゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオ
ール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフ
タレンジオール等が挙げられる。
【0037】(D2)芳香族チオフェノールとしては、
4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノー
ル、6−メルカプトフェノール等が挙げられる。
【0038】(D3)芳香族チオールカルボン酸として
は、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香
酸、6−メルカプト−2−ナフトエ酸、7−メルカプト
−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0039】(E)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジ
アミン系化合物としては、4−アミノフェノール−メチ
ル−4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミ
ン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N
´−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミ
ノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2
−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナ
フトール、4−アミノ−4´−ヒドロキシジフェニルエ
ーテル、4−アミノ−4´−ヒドロキシジフェニルメタ
ン、4−アミノ−4´−ヒドロキシジフェニルスルフィ
ド、4,4´−ジアミノフェニルスルフィド(チオジア
ニリン)、4,4´−ジアミノフェニルスルホン、2,
5−ジアミノトルエン、4,4´−エチレンジアニリ
ン、4,4´−ジアミノジフェノキシエタン、4,4´
−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、
4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニ
リン)等が挙げられる。
【0040】以上述べたサーモトロピック液晶ポリマー
のうち、好ましい液晶ポリエステルとしては、下式の化
1の式、すなわち(A)、(B)および(C)で表わさ
れる繰り返し構造単位からなる液晶ポリエステルであ
る。そして、このような液晶ポリエステルは、所定の方
法で求めた流動温度が340℃以上であるものを採用し
て好ましい結果を得ている。そのような流動温度は、4
℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重100kgf
/cm2 のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズル
から押し出す時に、溶融粘度が48000ポイズを示す
温度である。
【0041】
【化1】
【0042】(式中、nは0または1であり、(A):
(B)のモル比は、1:1〜10:1の範囲にあり、
(B):(C)のモル比は9:10〜10:9の範囲に
ある。また、式(B)、(C)中の芳香族の置換基は互
いにパラまたはメタの位置にある。) 因みに、この発明では、射出成形体または複写機用分離
爪の成形用組成物において、補強材や固形潤滑剤を添加
してもよく、以下にこれらの詳細を説明する。
【0043】この発明に用いることができる補強材は、
特にその種類を限定するものではなく、チタン酸カリウ
ムウィスカ、酸化チタンウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、
ホウ酸アルミニウムウィスカ、グラファイトウィスカ、
硫酸カルシウムウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、塩
基性硫酸マグネシウムウィスカ、炭酸ケイ素ウィスカ、
ウォラストナイト、ゾノライト、酸化マグネシウムウィ
スカなどのウィスカ類が細かく、爪の先端を効率よく補
強することができるので、好ましいものとして挙げられ
る。
【0044】これらのウィスカ類は、一般的な炭素繊
維、ガラス繊維等と比べると、微細であり、一般に粉末
状、繊維状のものである。また、相手ロールを攻撃しな
い程度を考慮すれば、炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポ
リアミド繊維などを使用することもできる。
【0045】前記したウィスカ類のなかで、チタン酸カ
リウムウィスカ、酸化チタンウィスカ、酸化亜鉛ウィス
カは、耐摩耗性を良く向上させ、また、液晶特性を適度
に抑制し、例えば射出金型から成形体を取り出す時に発
生するねじれ等の強度も向上するので好ましい。
【0046】チタン酸カリウムウィスカは、K2 O・6
TiO2 、K2 O・6TiO2 ・1/2H2 Oを基本と
する針状結晶を有し、代表的融点は1800〜1850
℃で、一般的な繊維径は0.1〜1.0mm、繊維長は
10〜120μmである。市販品としては、大塚化学社
製:ティスモD,ティスモD101、チタン工業社製:
HT200,HT300などが挙げられる。
【0047】次に、酸化チタンウィスカは、化学式Ti
2 で表わされるルチル型白色針状結晶で、平均繊維径
0.05〜3μm、平均繊維長1〜100μmのものが
好ましい。さらに好ましくは、平均繊維径0.05〜
0.5μm、平均繊維長1〜30μmであってよい。
【0048】このような酸化チタンウィスカは、その製
造方法が特に限定されたものでなく、たとえば周知の硫
酸法または塩素法により製造されたものであってよく、
市販品としては石原産業社製:FTLシリーズがある。
【0049】これらの酸化チタンウィスカの補強効果を
さらに向上させるためには、カップリング剤による表面
処理によって酸化チタンウィスカとマトリックスである
液晶ポリエステルとの濡れ性、結合性を改良することが
有効である。この時使用するカップリング剤は、シリコ
ン系、チタン系、アルミニウム系、ジルコニウム系、ジ
ルコアルミニウム系、クロム系、ボロン系、リン系、ア
ミノ酸系等である。
【0050】液晶ポリエステルに対する酸化チタンウィ
スカの配合割合については、液晶ポリエステルと酸化チ
タンウィスカの合計量に対し5〜50wt%が適当であ
り、特に好ましい配合割合は10〜40wt%である。
【0051】また、熱伝導性の向上により、トナーに対
する非粘着性の向上効果のあるグラファイトを液晶ポリ
エステル組成物に5〜30重量%添加することも好まし
い。なぜなら、グラファイトが5%未満の少量では非粘
着性の向上がなく、30重量%を越える多量では溶融成
形性に好ましくない影響を与えるからである。
【0052】また、ホウ酸アルミニウムウィスカを同時
に添加すれば、弾性率を向上させることができる。ホウ
酸アルミニウムウィスカは、化学式9Al2 3 ・2B
2 3 または2Al2 3 ・B2 3 で表わされる白色
針状結晶で、平均繊維径0.05〜5μm、平均繊維長
2〜100μmのものである。
【0053】9Al2 3 ・2B2 3 で表わされるも
のは、真比重2.93〜2.95、融点1420〜14
60℃であり、アルミニウム水酸化物およびアルミニウ
ム無機塩の少なくとも一種と、ホウ素の酸化物、酸素酸
およびアルカリ金属塩の少なくとも一種をアルカリ金属
の硫酸塩、塩化物および炭酸塩の少なくとも一種からな
る溶融剤の存在下900〜1200℃に加熱して、反
応、育成させることによって製造する。一方、2Al2
3 ・B2 3 で表わされるものは真比重2.92〜
2.94、融点1030〜1070℃で、9Al2 3
・2B2 3 を製造するのと同じ成分で同じ溶融剤とを
用いて、600〜1000℃の温度に加熱して反応、育
成させることによって製造できる。
【0054】これらのホウ酸アルミニウムウィスカの補
強効果をさらに向上させるには、カップリング剤による
表面処理によってホウ酸アルミニウムウィスカとマトリ
ックスである液晶ポリエステルとの濡れ性、結合性を改
良することが有効である。この時、使用するカップリン
グ剤は、シリコン系、チタン系、アルミニウム系、ジル
コニウム系、ジルコアルミニウム系、クロム系、ボロン
系、リン系、アミノ酸系などである。好ましいホウ酸ア
ルミニウムウィスカは、化学式9Al2 3 ・2B2
3 で表わされるもので、市販品としては四国化成工業社
製:アルボレックスGがあり、このものの平均繊維径は
0.5〜1μm、平均繊維長は10〜30μmである。
【0055】液晶ポリエステルに対するホウ酸アルミニ
ウムウィスカの配合割合は、液晶ポリエステルとホウ酸
アルミニウムウィスカの合計量に対して5〜50wt%
が適当であり、特に好ましい配合割合は10〜40wt
%である。
【0056】また、グラファイトを液晶ポリエステル組
成物に5〜30重量%添加すれば、熱伝導性が向上し、
トナーに対する非粘着性の向上効果があるので好まし
い。この場合、グラファイトが5%未満の少量では非粘
着性の向上がなく、30重量%を越える多量では溶融成
形性に好ましくない影響を与える。
【0057】なお、前記のホウ酸アルミニウムウィスカ
およびグラファイトの配合に加え、耐熱性繊維として、
液晶ポリエステルの成形温度(通常300〜400℃)
に耐える繊維を一種または二種以上同時に添加してもよ
い。耐熱性繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、グ
ラファイト繊維、セラミック繊維、ロックウール、スラ
グウール、チタン酸カリウムウィスカ、シリコンカーバ
イドウィスカ、サファイアウィスカ、ウォラストナイ
ト、鋼線、銅線、ステンレス鋼線、炭化ケイ素繊維、芳
香族ポリアミド繊維などを例示することができる。
【0058】また、耐熱性繊維以外の充填剤として、通
常の樹脂組成物に添加される酸化防止剤、熱安定剤、紫
外線吸収剤、滑剤、離型剤、着色剤、難燃剤、難燃助
剤、帯電防止剤、結晶化促進剤などのほかに、耐摩耗性
向上剤(たとえば、カーボランダム、珪石粉、二硫化モ
リブデン、フッ素樹脂など)、耐トラッキング性向上剤
(たとえば、シリカなど)、その他充填剤(たとえば、
ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、アル
ミナ、タルク、珪藻土、クレー、カオリン、石膏、亜硫
酸カルシウム、マイカ、金属酸化物、無機質顔料など、
300℃以上で安定な物質)等を、また、チクソトロピ
ー性付与剤として、微粉末シリカ、微粉末タルク、珪藻
土等を、そして液晶ポリエステル固有の配向性を助長し
て自己強化性を大きくかつ安定して発揮させるためのポ
リエーテルオイル、オルガノポリシロキサン等、これら
の一種または二種以上を、また、耐熱性非晶性ポリエー
テル樹脂等を、前記の配合に加え、前述の耐熱性繊維と
同時に添加してもよい。
【0059】ZnO等の酸化亜鉛ウィスカは、金属亜鉛
を蒸気化し、気相酸化して合成する過程で例えば約10
00℃以上の高温酸化および約4%以上の高Zn濃度で
粒径の増大に伴ってウィスカを生成する等して製造する
ことができる。
【0060】このような酸化亜鉛ウィスカは、4軸放射
形で各軸が先端に向かうほど細径となるテーパ状であ
り、マトリックスである樹脂の混練および成形時に、殆
どのものが折れてテーパ状の軸の状態で存在すると考え
られる。テーパ状の軸は、摺動面に露出した際に樹脂中
から抜け難く、また配向して爪先端に入りやすく、即ち
爪先端を効率良く補強すると考えられる。このような理
由から酸化亜鉛ウィスカは、各軸の長さが2〜50μm
で、軸の直径0.2〜3μmのものが好ましい。
【0061】このような酸化亜鉛ウィスカの市販されて
いるものとしては、松下アムテック社製;パナテトラ等
が挙げられる。
【0062】このような繊維状補強剤のLCPへの配合
量は、全組成物量の10〜50重量%である。なぜなら
繊維状補強剤が10重量%未満の少量では、充分な補強
効果が得られず、50重量%を越える多量では、LCP
との均一な混合ができず、樹脂の流動性が失われて成形
が困難になるからである。
【0063】この発明に用いることのできる固形充填剤
は、爪基材となる成形体の表面の摩擦係数の低減効果の
ある公知の固体潤滑剤等を採用することができる。固体
潤滑剤としては、黒鉛、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブ
デン、フッ化黒鉛、一酸化鉛などが挙げられる。このよ
うな固体潤滑剤のうち、特に、黒鉛、フッ素樹脂は、摩
擦抵抗の低減効果と共に、ローラに対する非攻撃性を向
上させるのでより好ましいものである。
【0064】次に、上記した補強材と共にまたは単独で
この発明に用いることのできる固形潤滑剤について述べ
る。固形潤滑材は、芳香族ポリエステル樹脂の融点以上
の熱分解温度を有するものが好ましく、具体例として
は、所定の熱分解温度を有する熱硬化製樹脂または熱可
塑性樹脂が挙げられる。
【0065】ここでいう熱分解温度は、重量分析等で測
定できる。詳しくは熱分析(DSC、DTA、TGAな
ど)により、熱天秤減量曲線(TG)と、示差熱分析曲
線(DTA)等で求められ、初期の試料片(例えば約1
5mg)を例えば昇温速度約10℃/分で空気中または
窒素ガス中にて加熱し、試料片に例えば約5%の重量減
が生じる温度、または例えば約5mgの重量減が生じた
温度であるか、または各温度別の重量減少%を調べ、こ
れが約50重量%に対応する温度を熱分解による50重
量%減量温度などを目安として求めることができ、微分
熱分解開始温度として評価することができる。
【0066】そのような熱分解温度を満足しえる熱硬化
製樹脂は、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン
系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレー
ト系樹脂、エポキシ系樹脂、ケイ素系樹脂、ポリウレタ
ン系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げ
られ、また、ポリイミド系樹脂としては、縮合型ポリイ
ミド樹脂やビスマレイミド系、末端ナジック酸系、アセ
チレン系等の付加型ポリイミド樹脂などが挙げられる。
これらの中には溶融性を示すものもある。
【0067】前述の熱硬化製樹脂のなかでも、特にフェ
ノール系樹脂は、機械的性質、耐熱・耐寒性、寸法安定
性、耐溶剤性、耐酸性、耐水性および価格などからみた
総合的な諸物性において、これらが比較的バランス良く
優れており、特に高温時の機械的強度の保持性に優秀で
あって、微分熱分解開始温度は約405℃である。
【0068】フェノール系樹脂のうち、成形材料として
は、比較的成形性に優れるノボラック系が用いられ、レ
ゾール系のものは、ノボラック系のものよりも熱衝撃性
に優れている。また、レゾール系の一段法成形材料は、
二段法よりも製造に比較的時間を要し、硬化速度も遅い
という特性をもっている。
【0069】このようなフェノール樹脂以外にエポキシ
系樹脂、ケイ素系樹脂、ポリイミド系樹脂の微分熱分解
開始温度は、それぞれ約390℃、約505℃、約40
0〜550℃前後であり、これらも高温時の機械的強度
に優れ、微分熱分解開始温度が約390℃以上、好まし
くは約400℃以上の樹脂であればよい。なぜなら、成
形材料は、二軸溶融押出機でのペレット造粒時における
約210〜380℃前後以上の高温時や、射出成形時の
約210〜約380℃前後以上のシリンダー温度、およ
びその後の約250〜340℃での熱処理時、そしてま
た例えばPFA系樹脂ではコーティングに伴う約340
〜350℃での焼成などの諸種の製造工程においても、
熱分解の進行が比較的緩やかだからである。
【0070】これらの熱硬化性樹脂を3〜10重量%、
好ましくは5〜8重量%添加することで分離爪の刃先の
耐衝撃性や、耐摩耗性を更に改善することができると考
えられる。
【0071】この場合、熱硬化性樹脂の配合量が3重量
%未満の少量では、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性などの
向上にあまり効果がなく、10重量%を越える多量で
は、シリンダー温度約210℃以上、高いものでは約2
80〜340℃以上のような比較的高温で芳香族ポリエ
ステル樹脂を溶融して射出成形などをする場合に、シリ
ンダー内での熱硬化の進行などの不都合により、安定し
た造粒性、射出成形性および寸法精度などが期待できな
いからである。
【0072】一方、前記した熱可塑性樹脂の代表例とし
て、下記に列挙したようなフッ素系樹脂が挙げられる。
なお、〔 〕内には熱分解温度を示した。
【0073】 ポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)、〔約508〜538℃〕 テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビ
ニルエーテル共重合体(PFA)、〔約464℃以上〕 テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体(FEP)、〔約419℃以上〕 ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)
〔約347〜418℃〕 テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ET
FE)、〔約347℃以上〕 クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体
(ECTFE)、〔約330℃以上〕 ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、〔約4
00〜475℃〕 ポリビニルフルオライド(PVF)、〔約372〜
480℃〕 テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレ
ン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(E
PE)〔約440℃以上〕。
【0074】また、フッ素系樹脂は、上記したフッ素樹
脂の単量体が例えば約1:10から10:1の重合量で
2種類以上の共重合体や、3元共重合体などのフッ素化
ポリオレフィンなどであってもよく、これらは、固体潤
滑剤としての特性も示す。このなかでもPTFE、PF
A、FEP等のパーフロロ系フッ素樹脂は、骨格である
炭素原子の周囲を全てフッ素原子または微量の酸素原子
で取り囲んだ形態であり、C−F間の強固な結合によ
り、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、低摩擦係数などの諸
特性に優れており好ましいものであるといえる。
【0075】これらのフッ素系樹脂群も微分熱分解開始
温度が比較的高いので好ましい。例えば、PTFE、P
VDFの分解点は、それぞれ約490℃、約350℃で
あって、これらの微分熱分解開始温度は、それぞれ約5
55℃、約460℃を示し、フッ素系樹脂のなかでもP
TFE、PFA、FEP等のパーフロロ系フッ素樹脂
は、高温特性に優れており、好ましい。そのため、芳香
族ポリエステル樹脂からなる分離爪を溶融などして製造
する過程での前記した様な数々の熱履歴にも比較的耐え
得る。特に、PTFEの分解点は、芳香族ポリエステル
樹脂の融点よりも高いので好ましい。これらの熱可塑性
樹脂を3〜10重量%、好ましくは5〜8重量%添加す
ることで、分離爪の刃先の定着ローラ表面への攻撃性を
少なくできると共に、耐衝撃性、耐疲労性、耐摩耗性を
向上することができると考えられる。
【0076】添加量が3重量%未満の少量では、これら
の効果が期待できず、10重量%を越える多量では、こ
れらの溶融粘度などにより、前記したように造粒時や射
出成形時に溶融成形機などのシリンダーにかかる負荷が
大きく、安定した造粒性、射出成形性および寸法精度が
期待できないからである。
【0077】因みに、PFA、FEPの溶融粘度は、約
380℃にてそれぞれ約104 〜105 ポイズ、約4×
104 〜105 ポイズであり、特にPTFEでは約34
0〜380℃にて約1011〜1012ポイズにもなり、こ
のような高温下でも約104〜1012ポイズ程度の粘度
特性を有する熱可塑性樹脂であるものは、高粘度特性を
有するので、耐熱性が優れており好ましい。
【0078】その他に固体潤滑剤として黒鉛等が挙げら
れるが、黒鉛の熱分解温度は非常に高く、昇華温度は約
3300〜3600℃以上である。
【0079】なお、上記した以外の固体潤滑剤として、
芳香族ポリアミド樹脂(以下、アラミド樹脂という)粉
末が挙げられる。このものは3〜5重量%の添加量で組
成物の耐摩耗性をさらに向上させることができる。粉末
状のアラミドの市販品としては、旭化成社製:アラミカ
ARP−P(平均粒径20μm)が挙げられる。
【0080】その他のアラミド樹脂粉末は、下記の化5
の式で示される一般式を繰り返し単位とする樹脂からな
り、このような樹脂のうちメタ系の分子構造を有するア
ラミド樹脂の代表例として、米国デュポン社製:ノーメ
ックス(紙状)、帝人社製:コーネックスが挙げられ、
パラ系の分子構造を有する樹脂の代表例として米国デュ
ポン社製:ケブラー(繊維状)、帝人社製:テクノーラ
がある。
【0081】
【化2】
【0082】このような組成物に添加されるパラ系アラ
ミド樹脂は、軸方向に分子鎖が配列しているので、軸方
向に高弾性・高強度であるが、直角方向には分子間力が
弱いものである。このようにパラ系アラミド樹脂は軸方
向の強度によって、配合された樹脂組成物の耐摩耗性を
よく向上させることができ、一方、分子鎖の直角方向に
圧縮力を受けると分子鎖が座屈しまたは破壊され易いの
で、軟質の摺動相手材を損傷しないと考えられる。
【0083】また、パラ系以外のアラミド樹脂を採用す
る場合は、前記したフッ素樹脂として四フッ化エチレン
樹脂などの所定量を含むものを添加することによって、
前記組成物と同様に軟質の摺動相手材を損傷せず、耐摩
耗性に優れた組成物となる。
【0084】この場合さらに、他のフッ素系樹脂を併用
することもできる。このようなアラミド樹脂のうち、繊
維の形態は、繊維長約0.15〜3mm、アスペクト比
約1〜230程度のものとなっている。
【0085】この発明においては、上記したアラミド樹
脂のうち、粉末状のもの、または粉末化したものを採用
する。繊維状のアラミド樹脂を含有する樹脂組成物で
は、摺動面に配向した繊維がブラシのように現れ、摺動
相手材が損傷され易くなって好ましくない。
【0086】そして、このようなアラミド樹脂粉末は、
その平均粒径が約5〜50μmであるものを採用するこ
とが好ましい。なぜなら、平均粒径が約5μm未満の小
粒子では、樹脂組成物が充分な耐摩耗性を獲得できず、
約50μmを越える大粒子では摺動相手材を損傷する恐
れがあるからである。このような条件を全て満足する粉
末状のアラミドの市販品としては、旭化成社製:アラミ
カ ARP−P(平均粒径20μm)が挙げられる。
【0087】上記した固体潤滑剤の配合量は、全組成物
中の3〜15重量%である。なぜなら、3重量%未満の
少量では、摩擦抵抗の低減効果や相手ローラーの外周面
に対する非攻撃性の効果が充分でなく、15重量%を越
える多量では組成物の流動性は著しく低下し、得られた
成形品の耐熱変形性も同様に著しく低下するので好まし
くないからである。このような傾向からみて、より好ま
しい配合量は、5〜8重量%である。
【0088】また、この固体潤滑剤と前記した繊維状補
強材との合計量は、全組成の50重量%以下、好ましく
は10〜50重量%である。なぜなら、前記合計量が全
組成の50重量%を越えると、混合が充分にできずに均
質な組成物が得られず、また樹脂の溶融流動性が失われ
て成形が困難になる。また、前記合計量が全組成の10
重量%未満では、組成物に充分な補強効果が得られな
い。
【0089】これらの固体潤滑剤は、射出成形時に分離
爪等の成形体を射出金型より取り出す時に、その優れた
低摩擦特性、離型性等により射出金型より分離爪に無理
な力をかけたり、また分離爪先端が金型等にひっかかっ
たりする等して分離爪先端の不具体発生を極力防ぐこと
ができるとも推定できる。
【0090】また、この発明における射出成形体および
複写機用分離爪には、上記以外の添加材として、ガラス
状炭素を添加することも好ましい。このようなガラス状
炭素を添加すると、耐摩耗性が向上し、また比較的軟質
な摺動相手材を損傷し難くなるので好ましい。
【0091】ガラス状炭素は、結晶寸法のきわめて小さ
い乱層構造を基本構造としており、微細組織で無配向で
ある。このようなガラス状炭素は、フェノール樹脂、フ
ラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユ
リア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、キシレン樹
脂などの熱硬化性樹脂を高温条件で炭素化させて得られ
る。
【0092】このようなガラス状炭素は、その破断面が
ガラス状の光沢を有することによって特徴付けられる
が、他の物性としては、通常のX線回折法におけるスペ
クトルの回折角(2θ)23〜25度付近に幅広いピー
クを有することによっても確認される。なお、X線回折
法は常法に従い、Cu−Kα線(二重線)により測定さ
れる。
【0093】この発明に用いるガラス状炭素は、黒鉛に
特徴的なピーク(回折角2θ=26.4℃における鋭い
002 ピーク)を実質的に有しないものが好ましい。な
お、単なる有機物の炭素化物は、その破断面にガラス状
光沢がなく、通常のX線回折法におけるスペクトルにお
いて、ガラス状炭素または黒鉛に特徴的な特定回折角の
ピークも有しない。
【0094】ところで、ガラス状炭素は、上記したX線
回折スペクトルにおける特定回折角での特徴によって確
認されたものであっても、熱硬化性樹脂の炭素化による
製造方法に起因して不完全炭化物または未炭化物を含む
場合があるが、熱可塑性樹脂の成形加工工程、または成
形加工品それ自体には問題にならないことが多い。
【0095】一方、前記したサーモトロピック液晶ポリ
マーは、その特徴の一つがポリマーのなかでは異常とも
いえる高融点であるために、その成形加工温度はきわめ
て高い。このような場合には、ガラス状炭素に含まれる
上記の不完全炭素化物または未炭素化物は分解し、ガス
発生の原因となりやすい。
【0096】高温において、特に圧縮、または射出成形
などの高圧下の成形ではガスの発生は、たとえ微量であ
っても、加工工程または成形品に致命的な欠陥となる。
たとえば、極端な場合では、ガス発生により、成形それ
自体が困難であったり、成形品の表面にブリスター、フ
ローマークの発生が認められ、商品価値が損なわれるこ
とになる。
【0097】ここで、破断面がガラス状光沢を有するこ
とによって特徴付けられるガラス状炭素であっても、原
料樹脂の種類、その調整法、原料粒子形状、炭素化温
度、炭素化時間、雰囲気ガス種類、炭素化時の圧力その
他の炭素化条件により、異なる性状のものが製造でき
る。すなわち、製造されたガラス状炭素中の不完全炭素
化物または未炭素化物の含有量およびその性質が相違す
るのである。
【0098】この発明の複写機用分離爪においては、前
記のように高融点のサーモトロピック液晶ポリマーに配
合することに鑑み、液晶ポリマー特有の条件における減
量が5重量%以下の球状のガラス状炭素を使用すること
が好ましい。
【0099】ここで、減量の測定は、測定機器としてた
とえば熱天秤を用い、室温から10℃/分の加熱速度で
350℃まで加熱し、その温度で30分間保持した時の
減量として定義される。通常は、800℃を越える炭素
化温度において製造されたガラス状炭素は、その減量が
5重量%以下である。
【0100】上記条件での減量が5重量%より大きいガ
ラス状炭素は、高融点であるサーモトロピック液晶ポリ
マーとの組合わせでは、成形する際の加熱によりガスが
発生し、成形が困難になったり、成形品の外観の悪化、
ブリスター(膨れ)などを生じ、生産性、商品価値が低
下する。
【0101】一方、ガラス状炭素の形状としては、球状
が好ましく、真球に近いものがより好ましい。不定形な
どの非球状のものを配合した成形体のうち、複写機用分
離爪としたものは、摺動相手材の金属や樹脂を損傷する
ので好ましくない。
【0102】樹脂組成物中の球状のガラス状炭素の添加
量は、10〜70重量%であり、好ましくは25〜40
重量%である。この範囲であれば、複写機用分離爪の耐
摩耗性が充分になる。すなわち、10重量%未満では、
耐摩耗性が不充分であり、70重量%を越える量を配合
してもそれ以上の耐磨耗性の向上は望めず、成形品の強
度も低下する。
【0103】また、この発明においては、サーモトロピ
ック液晶ポリマーにポリエーテルオイルを添加混合して
成形してもよい。ポリエーテルオイルは、エーテル結合
(−O−)もしくはチオエーテル結合(−S−)または
両結合によって、ベンゼン核を結んだ基本構造をもつ物
質であり、たとえばベンゼン核とエーテル結合とで構成
される構造異性体を含むポリフェニルエーテルオイルか
らなる米国モンサント社製:ポリフェニルエーテルオイ
ルOS−124などを具体例として挙げることができ
る。
【0104】サーモトロピック液晶ポリマーにポリエー
テルオイルを配合するにあたっては、ポリエーテルオイ
ルを0.05〜3.0重量%配合することが好ましい。
なぜなら、ポリエーテルオイルが3.0重量%を越える
と、分離爪として使用条件で成形体の表面にポリエーテ
ルオイルがブリードアウトして分離した紙面に付着した
り、塵埃が表面に付着しやすくなって分離不良の原因と
なり、また高温でポリエーテルオイルが内部潤滑剤的な
働きをして、成形体の耐熱性を低下させるからである。
また、逆に0.05重量%未満の少量の配合では、溶融
時の液晶ポリマーの異方性の発現に対する寄与が少ない
結果、爪先端の自己補強性が不充分になるからである。
【0105】このように、サーモトロピック液晶ポリマ
ーにポリエーテルオイルを配合した成形品および複写機
用分離爪は、液晶ポリマー固有の配向性が助長されて自
己強化性が大きくなって、分離爪先端の耐熱変形性は著
しく向上し、爪先端の形状についても、配向性のバラツ
キによる寸法精度の変化を小さく抑えることができるよ
うになる。
【0106】以上述べた成形材料を混合するには、これ
らを個別に溶融混合機に供給してもよく、また、予めヘ
ンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレン
ダーなどの汎用の混合機で乾式混合した後、溶融混合機
に供給すればよい。
【0107】そして、混合した成形材料は、約210℃
以上、高いものでは約280〜340℃以上の温度に加
熱し可塑化した後、金型中に充填し固化および離型する
ことにより目的の成形体からなる複写機用分離爪を得る
ことができる。
【0108】このように高温にする理由は、芳香族ポリ
エステル樹脂の流動温度が、分子構造より、約230℃
〜250℃以上、高いものは約280〜300℃以上、
更に高いものでは約340〜360℃以上と高温である
からである。さらに、分離爪に所定の熱処理を施すこと
により、耐熱変形性、寸法安定性、耐摩耗性に優れた長
寿命の複写機用分離爪とすることもできる。
【0109】例えば、分離爪の使用にあたっては、成形
時の歪みを取り除き高温使用時の寸法安定性をよくする
ため、約60〜340℃で15時間程度のアニール熱処
理をするのが好ましい。また、例えばPFA樹脂の分離
爪への塗布後の焼成時に、同時にアニール熱処理を行な
ってもよい。
【0110】具体的には上記所定の熱処理は、約60〜
340℃、好ましくは約150〜330℃で約0.5〜
24時間以上、好ましくは約0.5〜8時間以上の範囲
で行ってもよい。なぜなら、約340℃を越える温度で
は、分離爪に著しい熱変形が生じるので実用的なものが
得られず、約180℃未満の温度、特に約160℃未満
の温度では、荷重たわみ温度よりも低いために、成形
性、耐熱変形性等が向上し難いと推定されるからであ
る。
【0111】なお、この発明における複写機用分離爪
は、外部から与えられた電気信号によって記録パターン
を感光体等の媒体上に形成し、この媒体上に形成された
電気量のパターンを可視的なパターンに変換する種々の
方式を採用したプリンタにも適用できることは勿論であ
る。そのようなプリンタの方式としては、電子写真方
式、インクジェット方式、感熱方式、光プリンタ方式、
電子記録方式などが挙げられる。前記した電子写真方式
の種類としては、カールソン法、光・電荷注入法、光分
極法、光起電力法、電荷移動法、電解電子写真法、静電
潜像写真法、光電気泳動法、サーモプラスチック法が挙
げられる。また、光プリンタとしては、レーザプリン
タ、LED(発光ダイオード)プリンタ、液晶シャッタ
プリンタ、CRTプリンタが挙げられる。また、電子記
録方式としては、静電記録方式、通電記録方式、電解記
録方式、放電記録方式が挙げられ、更に直接法、間接法
等がある。またこれら静電記録方法等で、油等を塗布す
る湿式、これに対する乾式等の方式がある。
【0112】具体的には、トナー像転写式の乾式静電複
写機や湿式静電複写機、レーザービームプリンター(L
BP)、液晶シャッタ(LCD)プリンター、ファクシ
ミリ用プリンター等、PPC、発光ダイオード(LE
D)、銀塩写真方式によるプリンタ(CRT)等のプリ
ンター等の印刷機などといった画像形成装置の全般を指
す概念である。
【0113】また、この発明でいう複写機用の分離爪
は、給紙部、感光部、定着部、排紙部など、その用途部
位は特に限定されないが、サーモトロピック液晶ポリマ
ーの優れた耐熱性を適用すれば、定着部なかでも加圧ロ
ーラよりも高温で使用される定着ローラに適用できるも
のである。
【0114】
【実施例】この発明の実施例を、さらに添付図面に基づ
いて説明する。 〔実施例1〜3〕図1(a)、(b)、(c)に示すよ
うに、実施例1〜3は、前記化1の式で表わされる液晶
ポリエステル樹脂(住友化学工業社製:スミカスーパー
E4000)を射出成形して四角形の板状本体10に直
角状の角状部分11を形成し、板状本体10には板厚方
向に貫通する軸穴3を形成したものである。そして、ゲ
ートGを図中の矢印に示すように配置して、軸穴3から
板状本体10の外縁に延びるウエルドWを、軸穴3より
1つの角状部分11に対して反対側の外縁に至るように
形成し(実施例1:図1(a)、実施例2:図1
(b)、実施例3:図1(c))ものである。
【0115】〔実施例4〜6〕図2(a)、(b)、
(c)に示すように、実施例4〜6は、前記化1の式で
表わされる液晶ポリエステル樹脂(住友化学工業社製:
スミカスーパーE4000)を射出成形して紡錘形の板
状本体20に鋭角状の角状部分21を形成し、板状本体
20には板厚方向に貫通する軸穴3を形成したものであ
る。そして、軸穴3から板状本体20の外縁に延びるウ
エルドWを、軸穴3より角状部分21に対して反対側の
外縁に至るように形成し(実施例4:図2(a)、実施
例5:図2(b)、実施例6:図2(c))ものであ
る。
【0116】なお、上記したようにウエルドを配置した
成形体を製造するために、射出成形は以下の実施例1〜
3と同様の条件で行なった。 〔実施例7〜9〕図3(a)、(b)、(c)に示すよ
うに、実施例7〜9は、前記化1の式で表わされる液晶
ポリエステル樹脂(住友化学工業社製:スミカスーパー
E4000)を射出成形して三角形板状本体1に鋭角状
の爪先端部2を形成し、板状本体1には板厚方向に貫通
する軸穴3を形成したものである。そして、軸穴3から
板状本体1の外縁に延びるウエルドWを、軸穴3より爪
先端部2に対して反対側の外縁に至るように形成し(実
施例7:図3(a)、実施例8:図3(b))、または
軸穴3から最も近い本体外縁に至るように配置した(実
施例9:図3(c))ものである。
【0117】また、分離爪先端部等の成形体の角状部分
の角度は、特に限定しないが、角状部分の角度が、約9
0°以下のもの、または約60°以下または、約45°
以下のもの、さらに約30°以下で、例えば下限が約5
〜10°以上のような鋭利な角状部分を有するようなサ
ーモトロピック液晶ポリマー成形体に有用である。ま
た、角端部の先端R等は、約R0.005〜0.1m
m、好ましくは約R0.01〜0.06mm、さらに好
ましくは0.01〜0.04mmであれば分離爪等の先
端形状を満足する。
【0118】上記したようにウエルドを配置した分離爪
を製造するために、射出成形は以下のようにして行なっ
た。すなわち、図5に示すように、三角形板状のキャビ
ティを形成した金型4内に軸穴形成用のコアピン5をキ
ャビティを貫通するように配置し、爪先端部2とコアピ
ン5の間にゲートa(実施例7)、ゲートb(実施例
8)、ゲートc(実施例9)をそれぞれ図示した位置に
設け、それぞれのゲートから分離爪の先端に向けない方
向に液晶ポリエステル樹脂を射出成形した。
【0119】射出成形の条件は、液晶ポリエステル樹脂
(住友化学工業社製:スミカスーパーE4000)と、
添加剤として酸化チタンウィスカとを予め乾式混合した
後、混練押出ししてペレット化し、これを射出成形機に
供給してシリンダー温度約380℃、射出圧力約600
kg/cm2 、金型温度約180℃の条件のもとに射出
成形した。
【0120】得られた分離爪について、耐摩耗性、
耐衝撃性、耐疲労性を以下の試験方法で調べ、評価し
てこの結果を表1にまとめて示した。
【0121】耐摩耗性 図6(a)、(b)に示すように、分離爪Aを相手材S
45CP製のローラ6に対して、温度196±3℃、回
転数148rpm、荷重20gf、350時間の条件で
摺接させ、試験前後の穴径の中心から爪先端部2までの
距離L’の差(mm)を測定した。これは、主に定着装
置の定着ローラに使用され、比較的仕様条件の厳しい乾
式静電式複写機を対象とした試験内容であるが、この発
明はこの方式に限定されるものではない。
【0122】耐衝撃性 分離爪の刃先先端部の高衝撃試験機(図7に概略図を示
す)を用いて測定した。すなわち、レバー(長さL=8
5mm)の一端に分離爪Aおよび重り7を装着すると共
に、このレバーの他端を回転自在に支持し、これを直立
状態から水平状態に自然回転させた際に、分離爪Aの爪
先端部2がローラー6に、荷重(J)20gf、接触角
度(θ)100°の条件で衝突するようにして、爪先端
部2に欠損が生じるまでの衝突回数を測定した。なお、
衝突回数は20回を上限とした。
【0123】耐疲労性 分離爪Aの刃先先端部の衝撃疲労試験機(図8(a)、
(b)に概略図を示す)を用いて測定した。すなわち、
レバーの一端に分離爪Aを装着すると共に、このレバー
の他端を回転自在に支持し、レバーの下面にはカム軸8
aを中心に回転駆動されるカム8を接触させた。このと
き図(a)の状態では、分離爪Aはローラー6から高さ
h=1mmの高さにあり、カム8の矢印方向の回転で分
離爪Aは図8(b)に示す状態となって繰り返し自然落
下することになる。測定条件は、ローラー6をヒーター
9で表面温度200℃に加熱し、分離爪Aの爪先端部2
にかかる荷重(J)20gf、接触角度(θ)100°
とし、衝突回数10万回(試料数n=10)の変形量t
(μm:図9に変形した爪の外形と変形量tを示す)の
平均値を求めた。
【0124】
【表1】
【0125】〔比較例1〜3〕図4(d)、(e)、
(f)に示すように、比較例1〜3は、ウエルドWを、
軸孔3より爪先端部2に近い本体外縁に至るように形成
(比較例1:図4(d)、比較例2:図4(e)、比較
例3:図4(f))したこと以外は、実施例7〜9と全
く同じように射出成形した複写機用分離爪である。
【0126】上記した位置にウエルドWを配置した分離
爪を製造するために、図5に示すゲートの位置をd(比
較例1)、e(比較例2)、f(比較例3)に配置し、
分離爪の先端に向かう方向に樹脂を射出成形したこと以
外の製造条件は、実施例1〜3と全く同様にして液晶ポ
リエステル樹脂を射出成形した。
【0127】〔比較例4〕図5に示した金型4におい
て、コアピン5を装着しないこと以外は実施例7と全く
同様にして(同じ材料で)分離爪を射出成形し、後加工
によって軸穴3を穿設した。
【0128】比較例1〜4の分離爪についても、実施例
7〜9と全く同様にして試験〜を行ない、結果を表
1中に併記した。
【0129】表1の結果から明らかなように、ウエルド
Wが軸穴3の中心より本体前方の外縁に至り、爪先端部
から10mm未満の位置に配置され、すなわちウエルド
が、爪先端部から軸穴中心までの距離を100とした場
合に爪先端部を中心とする50〜80の距離範囲内に形
成されている比較例1〜3は、耐摩耗性、耐衝撃性、耐
疲労性の全てに劣っていた。
【0130】これに対して、全ての条件を満足する実施
例7〜9は、成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性と
いった全ての試験項目において、ウエルドの無い比較例
4と同様に優れた結果が得られた。
【0131】また、実施例1〜6についても、実施例7
〜9と同様に成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性に
優れた成形体であることから、これらを軸受、スリー
ブ、ブッシュ、カラー、ワッシャ、カム、ピストンシー
ル、ソケットなどに用いた場合に極めて好ましい結果が
得られることがわかる。また、耐熱性サーモトロピック
液晶ポリマーであれば、約200℃以上で使用される部
位や摺動部材として使用してもよい。
【0132】
【効果】以上説明したように、この発明のサーモトロピ
ック液晶ポリマーからなる射出成形体は、軸穴から射出
成形体の外面に延びるウエルドを角状部分の先端以外の
外面に至るように配置したので、衝撃などの機械的また
は熱的な影響がウエルドに伝わり難くなり、先端部の欠
けや割れも発生し難くなり、サーモトロピック液晶ポリ
マー本来の特性を発揮する利点がある。
【0133】また、分離爪の板状本体の外縁に延びるウ
エルドを、爪先端部から離れた所定の位置に配置形成し
たので、爪先端部にウエルドによる機械的強度の低下の
影響がなく、耐摩耗性、耐衝撃性および耐疲労性といっ
た本来のLCPの自己補強効果を充分に発揮する複写機
用分離爪となる利点がある。
【0134】また、このような複写機用分離爪を製造す
るには、射出成形するときに爪先端部とコアの間にゲー
トを配置するといった比較的簡易な手法を採用すればよ
いので、生産効率の低下および製造コストの上昇を招く
ことがない利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)実施例1の側面図 (b)実施例2の側面図 (c)実施例3の側面図
【図2】(a)実施例4の側面図 (b)実施例5の側面図 (c)実施例6の側面図
【図3】(a)実施例7の側面図 (b)実施例8の側面図 (c)実施例9の側面図
【図4】(d)比較例1の側面図 (e)比較例2の側面図 (f)比較例3の側面図
【図5】分離爪の射出成形を説明する金型の断面図
【図6】(a)耐摩耗試験に用いる複写機用分離爪の側
面図 (b)耐摩耗性試験の測定状態を説明する概略側面図
【図7】耐衝撃性試験機の概略側面図
【図8】(a)耐疲労性試験機の分離爪とローラの衝突
前の状態を示す概略側面図 (b)耐疲労性試験機の分離爪とローラの衝突時の状態
を示す概略側面図
【図9】分離爪の爪先端部の変形量tを示す側面図
【符号の説明】
1 本体 2 爪先端部 3 軸穴 4 金型 5 コアピン 6 ローラ 7 重り 8 カム 8a カム軸 9 ヒーター A 分離爪 R 爪先端部角度 L’ 距離 L レバー長さ θ 接触角 J 荷重 h 衝撃高さ t 変形量

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 角状部分を有し、かつ支持軸が貫通する
    軸穴を有するサーモトロピック液晶ポリマー製の射出成
    形体において、 前記軸穴から成形体の外面に延びるウエルドを、前記角
    状部分の先端以外の外縁に至るように配置したことを特
    徴とする射出成形体。
  2. 【請求項2】 サーモトロピック液晶ポリマー製の射出
    成形体からなる板状本体に鋭角状の爪先端部を形成する
    と共に、支持軸が貫通する軸穴を板厚方向に形成した複
    写機用分離爪において、 前記軸穴から板状本体の外縁に延びるウエルドを、軸穴
    から最も近い本体外縁に至るように配置するか、または
    軸穴より爪先端部に対して反対側の外縁に至るように配
    置したことを特徴とする複写機用分離爪。
  3. 【請求項3】 前記ウエルドが、爪先端部から軸穴の中
    心までの距離を100とした場合に、爪先端部を中心と
    する半径80の距離より外側の外縁に至るように配置さ
    れている請求項2に記載の複写機用分離爪。
  4. 【請求項4】 サーモトロピック液晶ポリマーを射出成
    形して成形体に鋭角状の端部を形成すると共に、成形体
    に貫通する軸穴を形成する射出成形方法において、前記
    端部と軸穴形成用のコアの間にゲートを配置して射出成
    形することを特徴とする射出成形方法。
  5. 【請求項5】 サーモトロピック液晶ポリマーを射出成
    形して分離爪の板状本体に鋭角状の爪先端部を形成する
    と共に、板状本体の板厚方向に貫通する軸穴を形成する
    複写機用分離爪の射出成形方法において、 前記爪先端部と軸穴形成用のコアの間にゲートを配置し
    て射出成形することを特徴とする複写機用分離爪の射出
    成形方法。
JP19522995A 1994-07-29 1995-07-31 複写機用分離爪の射出成形方法 Expired - Fee Related JP3604200B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19522995A JP3604200B2 (ja) 1994-07-29 1995-07-31 複写機用分離爪の射出成形方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6-178766 1994-07-29
JP17876694 1994-07-29
JP19522995A JP3604200B2 (ja) 1994-07-29 1995-07-31 複写機用分離爪の射出成形方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0895415A true JPH0895415A (ja) 1996-04-12
JP3604200B2 JP3604200B2 (ja) 2004-12-22

Family

ID=26498854

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19522995A Expired - Fee Related JP3604200B2 (ja) 1994-07-29 1995-07-31 複写機用分離爪の射出成形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3604200B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09289849A (ja) * 1996-04-26 1997-11-11 Toray Ind Inc 釣糸ガイド
JP2006224461A (ja) * 2005-02-17 2006-08-31 Nishikawa Kasei Co Ltd 樹脂製リング形状品及びその射出成形方法
JP2011203594A (ja) * 2010-03-26 2011-10-13 Fuji Xerox Co Ltd 画像形成装置及び画像形成方法、並びに、清掃装置及び清掃方法
JP2012206436A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Sumitomo Chemical Co Ltd 液晶高分子成形体及びその製造方法
JP2012206435A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Sumitomo Chemical Co Ltd 液晶高分子成形体
CN109760272A (zh) * 2018-12-11 2019-05-17 深圳市德仓科技有限公司 导光板注塑方法、设备及导光板、背光模组、显示设备
JPWO2018110646A1 (ja) * 2016-12-15 2019-10-24 住友化学株式会社 板状成形体の製造方法、金型およびランナー

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09289849A (ja) * 1996-04-26 1997-11-11 Toray Ind Inc 釣糸ガイド
JP2006224461A (ja) * 2005-02-17 2006-08-31 Nishikawa Kasei Co Ltd 樹脂製リング形状品及びその射出成形方法
JP2011203594A (ja) * 2010-03-26 2011-10-13 Fuji Xerox Co Ltd 画像形成装置及び画像形成方法、並びに、清掃装置及び清掃方法
JP2012206436A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Sumitomo Chemical Co Ltd 液晶高分子成形体及びその製造方法
JP2012206435A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Sumitomo Chemical Co Ltd 液晶高分子成形体
JPWO2018110646A1 (ja) * 2016-12-15 2019-10-24 住友化学株式会社 板状成形体の製造方法、金型およびランナー
CN109760272A (zh) * 2018-12-11 2019-05-17 深圳市德仓科技有限公司 导光板注塑方法、设备及导光板、背光模组、显示设备
CN109760272B (zh) * 2018-12-11 2021-10-22 深圳市德仓科技有限公司 导光板注塑方法、设备及导光板、背光模组、显示设备

Also Published As

Publication number Publication date
JP3604200B2 (ja) 2004-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6439027B1 (ja) 液晶ポリエステル樹脂組成物および成形体
JP4817785B2 (ja) 高熱伝導絶縁性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP4817784B2 (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP6473796B1 (ja) 液晶ポリエステル樹脂組成物および成形体
JP5419916B2 (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP7410411B2 (ja) ガラス繊維強化樹脂成形品
JP2007091985A (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP2005320515A (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP4768302B2 (ja) 高熱伝導絶縁性ポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形体
JPWO2018230195A1 (ja) 液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品
CN111253716B (zh) 颗粒混合物和射出成型体
JP3604200B2 (ja) 複写機用分離爪の射出成形方法
JP2005298552A (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
US5837767A (en) Stripping fingers
JP4427830B2 (ja) 繊維強化樹脂組成物および成形品
JP5312437B2 (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JPH09315615A (ja) 画像形成装置のシート搬送用転動体
JPH10254199A (ja) 画像形成装置のシート搬送用摺接ガイド
JP2007182990A (ja) トルクリミッタ部品用樹脂組成物、それからなるトルクリミッタ部品
JP4529206B2 (ja) 繊維強化樹脂組成物および成形品
JP3293653B2 (ja) 分離爪
JP3527559B2 (ja) 複写機用分離爪
JPH05107977A (ja) 複写機用分離爪
EP4279243A1 (en) Liquid crystal polyester composition, method for producing liquid crystal polyester composition, and method for producing injection molded article
JPH07287467A (ja) 複写機用分離爪

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Effective date: 20031216

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040120

A521 Written amendment

Effective date: 20040317

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040914

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040928

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071008

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081008

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 5

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091008

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 6

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101008

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111008

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 8

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131008

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees