JPH088281Y2 - 内燃機関の一体型シリンダブロック - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、シリンダボアを有するシリンダ部と、燃
焼室を画成するヘッド部とが一体に鋳造されてなる内燃
機関の一体型シリンダブロックに関する。

従来の技術 自動車用内燃機関等の本体部分は、一般的には、シリ
ンダ上端に沿ってシリンダブロックとシリンダヘッドと
に分割して鋳造されており、両者をシリンダヘッドガス
ケットを介してボルト結合した構成となっている。

この分割型の構成では、シリンダヘッドは、細長い箱
状をなしており、その底壁面に燃焼室が凹設されている
とともに、該燃焼室に連通するように吸気ポートおよび
排気ポートが貫通形成され、かつこれらの周囲にウォー
タジャケットが形成されている。

従って、燃焼室の上部壁に燃焼圧力が加わった際に、
この力はシリンダヘッドの底壁によって周囲に広く分散
される形となり、燃焼室上部壁に接続した吸気ポート，
排気ポートには、それほど大きな曲げ力は作用しない。

これに対し、例えば実開昭62-69045号公報等におい
て、シリンダ部とヘッド部とを一体に鋳造した一体型シ
リンダブロックが開示されている。すなわち、第３図に
示すように、従前のシリンダブロックに相当するシリン
ダ部31とシリンダヘッドに相当するヘッド部32とが一体
に鋳造され、その内部に、シリンダボア33周囲から燃焼
室34周囲に亙って一体に連通したウォータジャケット37
や、吸気ポート35,排気ポート36等が中子にて形成され
るのである。この一体型シリンダブロックによれば、シ
リンダヘッドガスケット部分での冷却水や燃焼ガスの漏
洩の虞れが完全に無くなるとともに、燃焼室34周囲の冷
却水の通流が良好なものとなって冷却性が向上する、等
の利点がある。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、上記のようにシリンダ部31とヘッド部
32とを一体に鋳造した構成では、従前のシリンダヘッド
の底壁に相当する部分が無くなるため、燃焼室34の上部
壁が主に吸気ポート35や排気ポート36によって支持され
る形となる。

そのため、燃焼圧力を受けた際に、吸気ポート35や排
気ポート36が、第３図に矢印A,A′で示す方向に強い曲
げ力を受け、破線で示すように変形し易い。そして、こ
のような曲げ変形が繰り返される結果、極端な場合に
は、この部分で破損を生じる虞れがある。

また従前のシリンダヘッドの底壁に相当する部分やシ
リンダブロックのアッパデッキに相当する部分が無いこ
とから、シリンダブロック全体としての捩り剛性や曲げ
剛性が低く、内燃機関の振動，騒音の点で不利になる、
という不具合もある。

課題を解決するための手段 そこで、この考案は、シリンダボアを有するシリンダ
部と、燃焼室を画成するヘッド部とが一体に鋳造される
とともに、上記シリンダボアおよび燃焼室の周囲を囲む
ようにウォータジャケットが形成され、かつ上記ヘッド
部に吸気ポート，排気ポートが形成されてなる内燃機関
の一体型シリンダブロックにおいて、燃焼室上方のウォ
ータジャケット内に、吸気ポート，排気ポートの上部壁
とヘッド部側壁とヘッド部上部壁とを互いに連結する隔
壁を、クランク軸と略直交する方向に沿って、かつポー
ト上に該ポートに沿って形成したことを特徴としてい
る。

作用 上記構成では、燃焼室の上部壁に加わった力が、上記
隔壁を介してヘッド部の上部壁や側壁に伝えられる形に
なる。また、上記隔壁が吸気ポート，排気ポートのリブ
として機能し、これらの曲げ剛性が向上する。従って、
吸気ポートや排気ポートの曲げ変形は非常に小さなもの
となる。

実施例 以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説
明する。

第１図は、この考案に係る一体型シリンダブロック１
全体の構成を示す断面図である。

このシリンダブロック１は、多数のシリンダボア２が
列設されたシリンダ部３と、このシリンダ部３の上方に
位置し、かつ燃焼室４を画成するヘッド部５とが、例え
ばアルミニウム合金にて一体に鋳造されたものであっ
て、上記シリンダボア２の下端に沿ったロアデッキ６側
縁に、凸状に湾曲したスカート部７の上端縁が接続され
ているとともに、ヘッド部５側に、吸気ポート８および
排気ポート９がクロスフロー形式に形成されている。

また上記シリンダ部３においては、円筒状をなすシリ
ンダウォール10の外側を囲むようにウォータジャケット
ウォール11が形成されており、両者間に、シリンダウォ
ール10を冷却するためのウォータジャケット12が形成さ
れている。そして、上記ヘッド部５側には、燃焼室４や
排気ポート９等を囲むようにウォータジャケット13が中
子にて形成されている。このヘッド部５側のウォータジ
ャケット13は、シリンダヘッドガスケットに制約される
ことなく、シリンダ部３側のウォータジャケット12と広
い範囲で連通している。

尚、図示例ではシリンダ部３側のウォータジャケット
12の排気ポート９側に、略水平方向に沿った仕切り壁14
が設けられていて、この排気側のウォータジャケット12
が上部12aと下部12bとに区画されている。そして、図示
せぬウォータポンプの吐出ポートは、その上部12aに連
通している。従って、冷却水は、この上部12aから一旦
ヘッド部５側のウォータジャケット13に流入し、ここか
らシリンダ部３側ウォータジャケット12の吸気ポート８
側部分を通して排気ポート９側の下部12bへ流れる形と
なる。

一方、上記スカート部７の内部には、各気筒間位置
に、半円形の軸受面15aを有するバルクヘッド15が取り
付けられているとともに、このバルクヘッド15に対向し
て、同様に半円形の軸受面16aを有するベアリングキャ
ップ16が取り付けられており、これを介してクランクシ
ャフト17が支持されている。上記バルクヘッド15とベア
リングキャップ16は、両者を貫通した一対のキャップボ
ルト18によっていわゆる共締め形式でロアデッキ６に結
合されている。尚、バルクヘッド15をスカート部７と一
体に鋳造するようにしても良い。

また上記ヘッド部５側のウォータジャケット13、詳し
くは燃焼室４より上方のウォータジャケット13の内部
に、第２図に詳示するような隔壁21が各気筒毎に設けら
れている。この隔壁21は、クランク軸17と略直交する方
向に沿って形成されているもので、各ポート8,9上に該
ポート8,9に沿って形成されている。そして、ポート８
の上部壁8aと排気ポート９の上部壁9aとを互いに連結し
ているとともに、左右両端がヘッド部５の側壁22,23に
接続されており、かつ上縁はヘッド部５の上部壁24に接
続されている。また下縁中央部は、燃焼室４の上部壁4a
に接続されている。尚、25および26は円筒状をなすバル
ブガイド挿入部、27は点火栓挿入部であって、これらと
一体に接続した形に隔壁21が形成されている。

さて上記の構成においては、燃焼圧力によって燃焼室
４の上部壁4aに上向きの力が掛かった際に、その力が上
部壁4aから上記隔壁21を介してヘッド部５の側壁22,23
や上部壁24に伝達される。つまり、吸気ポート8,排気ポ
ート９が曲げ力として負担しなければならない力がそれ
だけ軽減される。また吸気ポート８や排気ポート９の上
部壁8a,9aに隔壁21が接続されていることから、これら
の上下曲げ剛性が大幅に向上する。

従って、燃焼圧力に起因して生じる吸気ポート８や排
気ポート９の曲げ変形が著しく減少する。

またヘッド部５を横切るように複数の隔壁21が設けら
れるので、シリンダブロック１全体としての捩り剛性や
曲げ剛性も向上し、内燃機関の振動，騒音を抑制でき
る。

尚、上記のようにウォータジャケット13内に隔壁21を
設けたことにより、冷却水は燃焼室４上方を機関長手方
向に流れることができなくなるが、第２図に矢印で示す
ように、排気側から吸気側へ隔壁21に沿った形で冷却水
が流れ、燃焼室４周囲の冷却が行われる。特に、上記実
施例では、仕切り壁14で仕切られた上部12aから比較的
低温な冷却水がウォータジャケット13側へ導かれ、しか
も一体型シリンダブロックとしてシリンダ部３とヘッド
部５との間にシリンダヘッドガスケットが介在しないの
で、燃焼室４や排気ポート９を十分に冷却することが可
能である。

考案の効果 以上の説明で明らかなように、この考案に係る内燃機
関の一体型シリンダブロックによれば、ヘッド部のウォ
ータジャケット内に設けた隔壁によって、燃焼室上部壁
に加わった力をヘッド部の上部壁や側壁に分散できると
ともに、吸気ポートや排気ポートの曲げ剛性を高めるこ
とができ、燃焼圧力による吸気ポートや排気ポートの過
大な曲げ変形を防止できる。またシリンダブロック全体
としても捩り剛性や曲げ剛性が向上し、内燃機関の振
動，騒音の低減が図れる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る一体型シリンダブロックの断面
図、第２図はそのII-II線に沿った断面図、第３図は従
来における一体型シリンダブロックの要部の断面図であ
る。 １……シリンダブロック、３……シリンダ部、５……ヘ
ッド部、８……吸気ポート、９……排気ポート、12,13
……ウォータジャケット、21……隔壁。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダボアを有するシリンダ部と、燃焼
   室を画成するヘッド部とが一体に鋳造されるとともに、
   上記シリンダボアおよび燃焼室の周囲を囲むようにウォ
   ータジャケットが形成され、かつ上記ヘッド部に吸気ポ
   ート，排気ポートが形成されてなる内燃機関の一体型シ
   リンダブロックにおいて、燃焼室上方のウォータジャケ
   ット内に、吸気ポート，排気ポートの上部壁とヘッド部
   側壁とヘッド部上部壁とを互いに連結する隔壁を、クラ
   ンク軸と略直交する方向に沿って、かつポート上に該ポ
   ートに沿って形成したことを特徴とする内燃機関の一体
   型シリンダブロック。