JPH0881713A - 直接通電加熱による鋼中炭化物の球状化法 - Google Patents

直接通電加熱による鋼中炭化物の球状化法

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JPH0881713A
JPH0881713A JP21902494A JP21902494A JPH0881713A JP H0881713 A JPH0881713 A JP H0881713A JP 21902494 A JP21902494 A JP 21902494A JP 21902494 A JP21902494 A JP 21902494A JP H0881713 A JPH0881713 A JP H0881713A
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steel
heating
carbides
temperature
spheroidizing
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JP21902494A
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Kenji Aihara
賢治 相原
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 非球状形態の炭化物だけを選択的かつ優先的
に球状化させることを可能にする球状化焼鈍方法を提供
することである。 【構成】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化す
る方法において、鋼に直接電流を通じて加熱し、かつAe
1 変態点−100 K以上の温度域を50K/s以上の昇温速度
で1223K(950℃) 以下の温度にまで昇温させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼中炭化物の球状化方
法、特に、線材、棒鋼、帯鋼、鋼板、鋼管など鋼材( 以
下、単に鋼材という) の鋼中の炭化物形状を球状に変化
させるために施こす球状化焼鈍処理の急速かつ効率的な
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】軸受鋼や各種冷間加工用鋼材に対する従
来の球状化焼鈍処理は、鋼材を大重量のコイルの状態で
ポット焼鈍炉に挿入して所要の熱履歴を与えるか、また
はこうしたコイルの状態のまま焼鈍炉の炉中を連続移動
させ、その間に所要の熱履歴を与えるかして鋼中の炭化
物を球状粗大化させる球状化焼鈍が施こされている。
【0003】なお、冷延鋼板の焼鈍では鋼板のコイルを
巻きほぐしつつ連続的に焼鈍炉中を走行させて処理す
る、いわゆる鋼板の連続急速焼鈍処理技術があるが、こ
の急速連続焼鈍はAe1 変態点以下の加熱でフェライトを
軟化焼鈍するもので、本発明の対象としている炭化物を
球状化するための球状化焼鈍とは冶金学的意義がまった
く異なるものである。
【0004】かかる球状化焼鈍法に見られる従来技術と
しては、例えば、特開昭56−5931号公報および特公昭58
−46534 号公報に開示されているように、通電加熱によ
って700 〜800 ℃に加熱してから350 ℃以上で巻取って
徐冷することである。
【0005】このように、従来技術は、いずれも、加熱
炉における加熱手段に代えて通電加熱を利用するもので
あって、それによる限り、鋼を加熱昇温して鋼中の炭化
物を球状化するための球状化焼鈍の時間を短縮するため
に種々の試みがなされてきているが、25〜30時間以上の
長時間の処理を1時間以下の極めて短い時間で処理する
ような革新的な技術は不可能であった。
【0006】ここに、従来技術についてまとめて言えば
次の通りである。 (1) これまでの方法はすべてが「鋼をAe1 〜Ae3 の間に
加熱して炭化物をほとんどすべてオ−ステナイト中に分
解固溶させ、ごくわずかに微細な炭化物を残存させるだ
けである。固溶焼失した炭化物は以後の冷却過程におい
て球状に再析出するように徐冷却する。この炭化物分解
固溶のための加熱と球状に再析出させるための徐冷却と
が球状化焼鈍を長時間処理ならしめている原因である。
【0007】(2) しかしながら、球状化焼鈍において必
要なのは非球状で長く棒状もしくは板状をした炭化物あ
るいは非常に微細でマトリックスの硬度を高くするよう
な炭化物を固溶消失させてもっと大きな球状の炭化物に
再析出させる事にある。にもかかわらず、このような従
来技術では炭化物はそれらのサイズの大小、形状の球状
度を問わずことごとく分解固溶させられてしまう。この
ため、球状化焼鈍時間を革新的に短縮することは基本的
に不可能であった。
【0008】(3) もしも球状化焼鈍の加熱過程で非球状
の炭化物だけが選択的に優先して分解固溶させることが
できれば、球状化焼鈍は非常に迅速かつ確実にすること
ができるはずである。しかしながら従来技術にはこのよ
うな観点から球状化焼鈍を改善し迅速化しようとするも
のは全く存在していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】かくして、本発明の目
的は、従来、20時間程度の処理時間を必要としていた鋼
の球状化焼鈍処理 (とくに軸受鋼のような合金鋼では25
〜30時間以上の長時間の処理を必要としていた) を1時
間以下の極めて短い時間で行うことのできる球状化焼鈍
方法を提供することである。
【0010】また、本発明のより具体的目的は、上述の
球状化焼鈍方法において、とくに非球状形態の炭化物だ
けを選択的かつ優先的に球状化させることを可能にする
球状化焼鈍方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らはか
かる目的達成のために、種々検討を重ね次のような知見
を得た。
【0012】すなわち、球状化状態が不完全な組織を有
する鋼材を直接通電で急速に加熱昇温させたあと直ちに
急速冷却して組織を凍結観察した結果、以下の諸知見が
新たに得られた。
【0013】鋼材に直接電流を流してそのジュール熱
で鋼材の温度をあげる場合、鋼中に鋼と電気抵抗の異な
る物質が存在するとその物質の周辺が集中的に加熱昇温
される。鋼中のセメンタイトにおいてもこの集中通電加
熱が起こることが明らかになった。
【0014】この集中通電加熱がセメンタイトの形状
が真円でなく楕円状、棒状、板状であると、すなわち先
端の曲率半径が小さくて鋭い先端形状であるほど顕著に
起こることも判明した。
【0015】この集中通電加熱は通常の加熱昇温速度
ではほとんど金属組織的に変化をもたらすことになら
ず、これまで見過ごされてきたものであるが、加熱昇温
速度が50K/s以上になると変化が認められるようにな
る。すなわち、非球状セメンタイトの長軸先端部の周辺
のマトリックスがその他の部分のマトリックスよりも早
く温度が上がりその部分が局所的に先行してオ−ステナ
イト化変態を起こすことが観察された。
【0016】非球状セメンタイトの長軸先端部の周辺
のマトリックスが局所的にオ−ステナイト化した部分で
はセメンタイトが分解固溶し始め非球状形状のセメンタ
イトの先端部分から固溶してゆくため、残存炭化物は球
状に変化する。
【0017】このような非球状セメンタイトの長軸先
端部の周辺のマトリックスの局所的なオ−ステナイト化
変態は当該鋼の最高到達加熱温度における保持時間が60
s超、またはAe1 変態点以上の温度域にある時間が300s
超になると急速に周辺のマトリックスに広がってゆき、
もはやセメンタイト周辺のそれも非球状形状の長軸先端
周辺部だけの局所的オ−ステナイト化は見られなくなっ
てしまう。
【0018】上記の諸知見から、球状化状態が不完全な
組織を有する鋼材を直接通電で急速に加熱昇温すると、
球状化が不完全な炭化物から選択的かつ優先的に球状化
されることが実証され、そのような有効な現象が具現す
る条件も明らかにされた。
【0019】本発明はかかる新知見にもとづき、鋼中の
炭化物を球状化する技術として、従来技術からは全く予
想外の手段でもって、従来の技術の技術思想からは到底
不可能な急速球状化を工業技術として実現させる事に成
功したものである。
【0020】よって、最も広義には、本発明は直接通電
加熱による鋼中炭化物の急速球状化法である。ここに、
本発明の具体的態様において特徴とする点は次の通りで
ある。
【0021】(1) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化する方法において、鋼に直接電流を通じることによっ
て加熱し、かつAe1 変態点−100 K以上の温度域を50K
/s以上の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、急
速な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の
球状化方法。
【0022】(2) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化する方法において、鋼に直接電流を通じることによっ
て加熱し、かつ Ae1点−100 K以上の温度域を50K/s以
上の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、当該鋼
がAe1 変態点以上の温度域に滞在する時間を300s以下に
し、急速な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭
化物の球状化方法。
【0023】(3) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化する方法において、鋼に直接電流を通じることによっ
て加熱し、かつ Ae1点−100 K以上の温度域を50K/s以
上の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、当該鋼
の最高到達加熱温度における保持時間を60s 以下としか
つAe1 変態点以上の温度域に滞在する時間を300s以下に
し、急速な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭
化物の球状化方法。
【0024】(4) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化するに方法おいて、上記(1) 〜(3)のいずれかに記載
の方法によって当該鋼に熱履歴を付与した後、Ae1 点以
下Ae1−150 K以上の温度域内を5K/s以下、0.1 K/s
以上の冷却速度で冷却するかもしくは当該温度域内の温
度に30s以上1500s以下保持することにより、急速な球
状化を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状化
方法。
【0025】(5) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化する方法において、上記(1) 〜(4)のいずれかに記載
の処理を2回以上組み合わせて施すことにより、急速な
球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状
化方法。
【0026】(6) 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状
化する球状化焼鈍工程のなかに上記(1) 〜(5) のいずれ
かに記載の処理を組み合わせてなる、急速な球状化を促
進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状化方法。
【0027】
【作用】ここに、本発明の作用についてさらに詳述すれ
ば次の通りである。焼鈍のための鋼材加熱手段として種
々の方法が実用化されているが、本発明では鋼材に直接
電流を流すことによって生じる鋼材の電気抵抗によるジ
ュール熱で加熱する方法を用いている。
【0028】すなわち、鋼材の加熱手段としての直接通
電加熱方法そのものは別段新しいものではないが、本発
明では前述のような新たな知見に基づいて直接通電加熱
方法が炭化物の球状化に極めて有効な手段であることを
見出し、かつその目的に対して最も有効な通電加熱条件
を明らかにした。
【0029】添付図面は、本発明にかかる通電加熱処理
のヒートパターンの概念図であり、本発明によれば、
(昇温) → (最高加熱温度での保持) → (Ae1 点以上の
加熱滞在) → (徐冷) を経て通電加熱処理が行われ、そ
のときの温度制御は電流供給量を制御することによって
行う。
【0030】本発明の好適態様によれば、これらの加熱
処理条件は次のように規定される。 昇温速度: 50K/s以上 (Ae1 −100 K以上) 最高加熱温度での保持時間: 60s 以下 Ae1 点以上の加熱滞在時間: 300s以下 徐冷: 0.1 〜5K/s, 30〜1500s (Ae1〜 Ae1−150K) ここで、本発明の好適態様において処理条件を上述のよ
うに限定した理由についてその作用とともに説明する。
【0031】鋼に直接電流を通じて加熱昇温するこ
と。鋼材に直接電流を流してそのジュール熱で鋼材の温
度をあげることが不可欠であり、この場合に限り鋼中の
非球状形状のセメンタイトの長軸先端部周辺部が集中的
に加熱昇温される。
【0032】本発明における通電加熱の具体的操作は線
材、管材、さらには板材など鋼材の種類によって異なる
が、要するに可及的均一に電流を流すことができれば特
に制限はなく、この点に関しては従来法に準じて行えば
よい。
【0033】この非球状セメンタイトの長軸先端部周辺
部の局部集中加熱現象は鋼材への直接通電による加熱の
場合にのみ起こることであって、その他の加熱方法、た
とえば高周波による誘導加熱、赤外線による輻射加熱、
高温ガス雰囲気による熱伝達加熱、など工業的に実用化
されている加熱方法、では決して起こり得ない。換言す
れば、本発明における通電加熱は従来の加熱手段の単な
る代替手段ではない。
【0034】Ae1 変態点−100 K以上の温度域を50K
/s以上の昇温速度で1223K(950℃) 以下の温度まで昇温
させること。昇温速度が小さい場合は非球状セメンタイ
トの長軸先端部周辺部の局部集中加熱現象がおこっても
マトリックスの熱伝導で局部集中加熱が熱拡散で均一化
してしまうためセメンタイトの長軸先端部周辺部だけが
優先先行してオ−ステナイト化しなくなるため、50K/s
以上の昇温速度とする。好ましくは100 K/s以上の昇温
速度とする。
【0035】従来は、線材加熱の場合、電極と線材の接
触部での電流密度が1〜2A/mm2(=1〜2×106 A/m2)
を超えるとスパーク発生のため通電不可能であると考え
られていた。
【0036】例えば、直径2mmの線材を100 K/s で昇温
するためには、18.8Aの電流を流す必要があるが、電極
ロールとの接触面積を大きく1mm2 と仮定しても18.8A/
mm2となって限界を超えてしまう。従って、これまでの
通電加熱は直径1〜2mm以下の非常に細い線で10K/s の
オーダの昇温速度をとるのが普通であった。
【0037】本発明の場合は100 K/s の昇温速度で、球
状化焼鈍を必要とする太径の線材 (通常、直径10〜20mm
以上) を加熱するのであるから、仮に、直径20mmの線材
を100 K/s で昇温する場合、通電電流は1890A必要であ
り、給電ロールの接触部の電流密度は1890A/mm2 にも達
する。このような条件での給電は不可能であって、従来
は全くこのようなサイズの鋼材を、このような急速昇温
で通電加熱して球状化焼鈍することは試みられなかった
のである。
【0038】特開昭56−5931号公報に開示された方法に
おける通電は、上述の直径2mm程度の細径線材をスパー
ク発生を生じないように、ゆっくりと通電加熱昇温して
連続的に加熱処理しているものである。
【0039】昇温速度は速い程局部集中加熱現象が顕著
になるが、速すぎるとセメンタイトの分解固溶が進む時
間的余裕がなくなり、また温度の制御も難しくなるの
で、セメンタイトの非球状度とサイズおよび分解固溶速
度を勘案して適正昇温速度を決める必要がある。
【0040】また、Ae1 変態点−100 K以上の温度域を
急速昇温させるのは、非球状セメンタイトの長軸先端部
周辺の局部集中加熱現象が起こるには、まだマトリック
スの大部分がAe1 点を越えておらず未変態のままである
ことが必要であるためである。このためには鋼材を急速
昇温させる温度域はAe1 点よりも低い温度から始めなけ
ればならない。実用的な昇温速度範囲ではマトリックス
の温度と非球状セメンタイトの長軸先端部周辺の温度と
の隔たりが100 Kを越えることはないので、急速昇温域
を Ae1−100 K以上とした。むろん、これ以下の温度か
ら急速昇温してもなんら支障はない。
【0041】また、1223K(950℃) 以下の温度まで昇温
するのは、昇温温度が1223K (950℃) を越える とマ
トリックスの大部分がオ−ステナイトに変態してしまう
ため非球状セメンタイトの長軸先端部周辺の局部集中加
熱現象がなくなってしまうので、加熱温度の上限は1223
K(950℃) 以下とする。ただし、非常に加熱昇温速度が
大きくかつその後の冷却が迅速である場合にはこの温度
をこえても組織的に問題のない場合もあるので、昇温条
件と組織変化の速度とのかねあいで最高到達加熱温度を
設定する必要がある。このときの下限は Ae1点である
が、好ましくは1023Kである。
【0042】Ae1 変態点以上の温度域に滞在する加熱
滞在時間を300s以下にすること。Ae1点以上の温度域に
滞在する時間を 300s以下にするのは、Ae1 点以上の温
度域に加熱滞在する時間が300 sをこえるとマトリック
スの大部分がオ−ステナイトに変態してしまうため非球
状セメンタイトの長軸先端部周辺の局部集中加熱現象が
なくなってしまうので、Ae1 点以上の温度域に滞在する
時間の上限を300sとした。好ましくは10〜100sであ
る。
【0043】最高到達加熱温度における保持時間を60
s以下とすること。最高到達加熱温度における保持時間
を60s以下とする理由は、最高到達加熱温度における保
持時間が60s超になると、マトリックスの大部分がオ−
ステナイトに変態してしまうため非球状セメンタイトの
長軸先端部周辺の局部集中加熱現象がなくなってしまう
ので、最高到達加熱温度における保持時間を60s以下と
した。好ましくは、0〜30sである。
【0044】Ae1 点以下Ae1 −150 K以上の温度域内
を5K/s以下0.1 K/s以上の冷却速度で冷却するかもし
くは当該温度域内の温度に30s以上1500s以下保持する
こと。
【0045】徐冷の段階で、Ae1 点以下Ae1 −150 K以
上の温度域内を5K/s以下0.1 K/s以上の冷却速度で冷
却するかもしくは当該温度域内の温度に30s以上1500s
以下保持する理由は、次の通りである。
【0046】非球状セメンタイトの長軸先端部周辺の局
部集中加熱によりこの部分でセメンタイトが分解固溶し
始めるとCが局部変態したオ−ステナイト中に固溶する
ためそれらのCをセメンタイトに再析出させなければな
らない。このときにセメンタイトが棒状や板状に析出し
たり微細な析出強化粒子として再析出したのでは不都合
なので、それらのCは残存しているセメンタイトにくっ
ついて再析出しセメンタイト粒を肥大成長させるように
しなければならない。このためにはAe1 点以下Ae1 −15
0 K以上の温度域内を5K/s以下0.1 K/s以上の冷却速
度で冷却するかもしくは当該温度域内の温度に30s以上
1500s以下保持することが有効である。
【0047】Ae1 点以下Ae1 −150 K以上の温度域でな
いとオ−ステナイト中に固溶したCはセメンタイトとに
なって析出しない。冷却速度が5K/s超、あるいは保持
時間が30s未満、であればセメンタイトは微細な析出強
化粒子として再析出してしまい焼鈍の目的がはたせな
い。一方、冷却速度が0.1 K/s未満では、あるいは保持
時間が1500sを超えると、処理時間がかかりすぎて本発
明の経済性が損なわれる。好ましくは、0.1 〜1.0 K/s
の冷却速度、150 〜1000sの保持時間である。
【0048】本発明の好適態様によれば、上述の本発明
にかかる通電加熱を2回以上組み合わせて実施するので
ある。これらの熱処理を複数回繰り返すとセメンタイト
の形状とサイズは改善されてゆく。しかしながら、繰り
返し回数を増してゆくと次第に改善効果は飽和してくる
ので、熱処理の経済性とのかねあいで適当な繰り返し回
数を選定するのがよい。
【0049】さらに別の好適態様によれば、既知の球状
化焼鈍工程のなかに本発明にかかる通電加熱を組み合わ
せるようにしてもよい。本発明にかかる方法はそれだけ
で工程を構成しても技術課題の達成、目的の実現ができ
るが、既知の従来技術と組み合わせて工程を構成しても
両者の効果がなんら損なわれることなく、むしろ新旧技
術の特徴と設備の活用ができる。次に、実施例によって
本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0050】
【実施例】
(実施例1)表1に示す組成を有する合金の量産鋼で直径
18mmの線材を熱間圧延により製造した商用鋼の線材コイ
ルのうち実施例1ではSUJ2を用いた。
【0051】SUJ2の線材コイルを500 mm長さに切断して
供試体とし、表2に示す各条件での焼鈍を施した。加熱
は次に記すA、B、C、Dの4種の態様を用いた。
【0052】加熱Aは、本発明の直接通電加熱である。
ここでは供試体の両端を電極でクランプして20〜1800A
の電流で通電加熱し、供試体の中央部に溶接した熱電対
から検出した温度によって予め設定した温度制御プログ
ラムにしたがって各種の熱履歴を与えた。
【0053】加熱Bは、電気炉中での雰囲気加熱法、加
熱Cは、赤外線イメージ炉を用いた輻射式急速加熱法、
によるものであり、加熱Dは、高周波を用いた誘導加熱
法である。加熱B、C、D、では加熱Aと同様に供試体
に熱電対を溶接し、これから検出した温度によって熱履
歴を制御付与した。
【0054】実験番号5以降はすべて実験番号1と同じ
方法で直接通電加熱方法を用い、本発明の範囲外の条件
での処理を比較法として実施検討した。表2に各番号に
おける加熱昇温条件を掲げた。
【0055】実験番号5から20を比較検討すると、本発
明の条件での加熱処理では、セメンタイトの (長軸/ 短
軸) 比は3.5 以下であるが、比較法の条件の処理ではこ
の比の値は3.5 超になっており、セメンタイトの形状改
善効果に差のあることがわかる。
【0056】実験番号5から実験番号10は室温から1093
K(820℃) までの昇温速度を5K/s〜200 K/sまで変え
たものである。実験番号5〜7は50K/s以上、実験番号
8〜10はそれ以下の場合である。
【0057】実験番号11〜12は加熱昇温時に急速昇温す
る温度域を変えたものである。実験番号11では873 K(6
00℃) から上の温度域を、実験番号12では993 K(720
℃) 以上の温度域を、それぞれ100 K/sで昇温し、それ
以下の温度域では10K/sの昇温速度にとどめた。
【0058】実験番号13〜14は加熱昇温での最高加熱到
達温度を900 ℃、980 ℃にとったものである。実験番号
15〜16は加熱履歴の中で993 K(720℃) 以上に鋼材が加
熱されている間の時間を最長311Sまで増加させたもので
ある。
【0059】実験番号17〜18は最高加熱到達温度におけ
る保持時間を90S まで増加させたものである。実験番号
19〜20は昇温後の冷却過程において993 K(720℃) から
下の温度域での徐冷時の冷却速度を6K/sまで増大させ
たものである。
【0060】表3に実験番号1から番号20までの各処理
後のセメンタイトの形状とサイズを測定した結果をまと
めた。セメンタイトの形状は走査型電子顕微鏡で個々セ
メンタイトの長軸と短軸の長さを測定してその比 (長軸
/ 短軸) を求め、比の値の平均値をもとめて評価した。
比の値が1.0 に近いほど形状は球状に近い。この比が3.
5 以下の場合を「球状」と判断した。
【0061】セメンタイトのサイズは走査型電子顕微鏡
による個々のセメンタイトの像の面積を画像解析でもと
めてその面積に等しい面積をもつ円の直径をもって表し
た。実験番号1〜4を比較検討すると、本発明のような
条件での直接通電加熱の急速熱処理によってセメンタイ
トの (長軸/ 短軸) 比2.7 で形状がかなり球状に近くな
っているのに対し、従来法による加熱ではこの比の値が
かなり大きくなっている。
【0062】特に注目すべきは、本発明と同じ熱履歴条
件で急速加熱しても加熱方法が赤外線輻射加熱や高周波
加熱ではセメンタイトの形状改善にはほとんど効果が認
められていないことである。このことは、本発明の条件
下での直接通電加熱によってセメンタイトの形状が非球
状のセメンタイトから選択的かつ優先的に改善されてい
ることを示しており、こうした作用効果は従来の方法で
は実現不可能である。
【0063】(実施例2)表1に示す組成を有する合金の
量産鋼で直径18mmの線材を熱間圧延により製造した商用
鋼の線材コイルのうち実施例2ではSCM435を用いた。SC
M435の線材コイルを500 mm長さに切断して供試体とし、
本発明の方法としては表2の実験番号1の条件で、従来
法としては表2での実験番号2〜4の条件による加熱処
理を実施した。セメンタイトの形状とサイズの評価方法
は実施例1と同じである。
【0064】結果は同じく表3に実験番号21〜24として
示す。実施例1でのSUJ2鋼の場合と同様にSCM435鋼にお
いても、実験番号22〜24の従来法に比べて実験番号21の
本発明法ではセメンタイトの形状、サイズともに大幅な
改善が認められている。
【0065】実施例2での鋼は素材の組織がベイナイト
であって実施例1のようなパーライト組織ではないが、
このような微細組織であっても本発明の方法によるセメ
ンタイトの球状化形状改善効果は著しいことが明らかで
ある。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【発明の効果】本発明にかかる直接通電加熱による急速
加熱焼鈍によると、セメンタイトの形状は (長軸/ 短
軸) 比が1.0 に近くかなり球状に近い改善が実現するの
に対し従来法による加熱ではこの比の値がかなり大きい
ままである。
【0070】特に注目すべきは、本発明とおなじ熱履歴
条件で急速加熱しても加熱方法が赤外線輻射加熱や高周
波加熱ではセメンタイトの形状改善にはほとんど効果が
認められていないことである。このことは、本発明の条
件下での直接通電加熱によってセメンタイトの形状が非
球状のセメンタイトから選択的かつ優先的に改善されて
いることを示しており、このような作用効果は従来方法
では実現不可能なものである。
【0071】SUJ2鋼の場合と同様にSCM435鋼において
も、本発明にかかる方法ではセメンタイトの形状、サイ
ズともに大幅な改善が認められており、適用鋼種によら
ず本発明の効果が実現している。
【0072】素材の組織がパーライト組織だけでなくベ
イナイト組織であっても、本発明の方法によるセメンタ
イトの球状化形状改善効果は著しく、本発明の方法はす
べての前組織の素材にたいしても有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる通電加熱のヒートパターンを示
す概念図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    する方法において、鋼に直接電流を通じることによって
    加熱し、かつAe1 変態点−100 K以上の温度域を50K/s
    以上の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、急速
    な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の球
    状化方法。
  2. 【請求項2】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    する方法において、鋼に直接電流を通じることによって
    加熱し、かつ Ae1点−100 K以上の温度域を50K/s以上
    の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、当該鋼が
    Ae1 変態点以上の温度域に滞在する時間を300s以下に
    し、急速な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭
    化物の球状化方法。
  3. 【請求項3】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    する方法において、鋼に直接電流を通じることによって
    加熱し、かつ Ae1点−100 K以上の温度域を50K/s以上
    の昇温速度で1223K以下の温度にまで昇温し、当該鋼の
    最高到達加熱温度における保持時間を60s 以下としかつ
    Ae1 変態点以上の温度域に滞在する時間を300s以下に
    し、急速な球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭
    化物の球状化方法。
  4. 【請求項4】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    するに方法おいて、請求項1〜3のいずれかに記載の方
    法によって当該鋼に熱履歴を付与した後、Ae1 点以下Ae
    1 −150 K以上の温度域内を5K/s以下、0.1 K/s以上
    の冷却速度で冷却するかもしくは当該温度域内の温度に
    30s以上1500s以下保持することにより、急速な球状化
    を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状化方
    法。
  5. 【請求項5】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    する方法において、請求項1ないし4のいずれかに記載
    の処理を2回以上組み合わせて施すことにより、急速な
    球状化を促進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状
    化方法。
  6. 【請求項6】 鋼を加熱昇温して鋼中の炭化物を球状化
    する球状化焼鈍工程のなかに請求項1ないし5のいずれ
    かに記載の処理を組み合わせてなる、急速な球状化を促
    進させることを特徴とする鋼中炭化物の球状化方法。
JP21902494A 1994-09-13 1994-09-13 直接通電加熱による鋼中炭化物の球状化法 Withdrawn JPH0881713A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009242919A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 軸受鋼の熱処理方法
JP2009242917A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 軸受鋼の熱処理方法
JP2016037631A (ja) * 2014-08-07 2016-03-22 高周波熱錬株式会社 炭素鋼の急速軟質化焼鈍処理方法

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