JPH08246040A - 鋼材の急速連続球状化焼鈍処理法 - Google Patents

鋼材の急速連続球状化焼鈍処理法

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JPH08246040A
JPH08246040A JP7045799A JP4579995A JPH08246040A JP H08246040 A JPH08246040 A JP H08246040A JP 7045799 A JP7045799 A JP 7045799A JP 4579995 A JP4579995 A JP 4579995A JP H08246040 A JPH08246040 A JP H08246040A
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JP
Japan
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cementite
heating
point
temperature
temp
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JP7045799A
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English (en)
Inventor
Kenji Aihara
賢治 相原
Michitaka Fujita
通孝 藤田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 球状化焼鈍処理を従来の25〜30時間以上から
1時間以下に短縮できる革新的な急速球状化焼鈍方法を
開発する。 【構成】 鋼材の昇温途上で下記の各素過程を1回もし
くは2回以上組み合わせて行う。 素過程: Ae1 点以上、Ae1 点+150K 以下の温度域に、
1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該温度域内で0
秒以上600 秒未満の時間保持した後、Ae1 点+50K〜Ae1
点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速度で冷却する
かまたは当該温度域内の温度に保持すること; および 素過程: Ae1 点 +80K 以上、Ae1 点+270K 以下の温度
域内に1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該温度域
内で0秒以上120 秒未満の時間保持した後、Ae1 点〜Ae
1 点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速度で冷却す
るかまたは当該温度域内の温度に保持すること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、線材、棒鋼、帯鋼、鋼
板などの鋼材( 以下単に鋼材という) の急速連続球状化
焼鈍処理法に関する。
【0002】
【従来の技術】軸受鋼や各種冷間鍛造用鋼材に対する従
来の球状化焼鈍処理は、鋼材を大重量のコイルの状態で
ポット焼鈍炉に装入して所要の熱履歴を与えるか、また
は、こうしたコイルの状態のまま焼鈍炉の炉中を連続移
動させ、その間に所要の熱履歴を与えるかして行われて
きた。
【0003】図1はかかる従来法におけるコイルのバッ
チ炉による球状化焼鈍のヒートパターンを示す説明図で
あって、図中、昇温→均熱→徐冷の各過程を経て球状化
が図られる。
【0004】なお、冷延鋼板の焼鈍では鋼板のコイルを
巻きほぐしつつ連続的に焼鈍炉中を走行させて処理す
る、いわゆる鋼板の連続急速焼鈍処理技術があるが、こ
の急速連続焼鈍はAe1 変態点以下の加熱でフェライトを
軟化焼鈍するもので、本発明の対象としている炭化物を
球状化するための球状化焼鈍とは冶金学的意義がまった
く異なるものである。
【0005】このような従来技術としては、例えば特開
昭59−110736号公報が挙げられるが、このような従来の
球状化焼鈍方法には次のような欠点が見られる。 (1) 球状化焼鈍時間のさらなる短縮が困難であること: 従来の球状化焼鈍方法では焼鈍時の加熱でセメンタイ
トをオーステナイト中へ充分に分解固溶させてしまい、
わずかに残存した炭化物などを核にして焼鈍の冷却時に
セメンタイトを球状に再析出成長させる方法を採ってい
る。
【0006】したがって、球状化焼鈍における冷却過程
はセメンタイトが球状に析出成長するように充分に時間
をかけて徐冷する必要があり、数時間から数十時間かけ
て徐冷却しないとセメンタイトが棒状あるいは層状に析
出してしまう。このため、セメンタイトの球状化には本
質的に長い時間が必要であるとする認識が斯界での常識
になっている。
【0007】大重量のコイル状態で加熱・冷却の熱履
歴を与えるために熱慣性が極めて大きく、昇温・冷却に
非常な長時間を要する。このため、極めて生産性が低
く、熱処理コストが高くなる。例えば、SUJ2軸受鋼の場
合、昇温に8時間、均熱に8時間、徐冷却に例えばに14
時間、合計30時間も要し、冷間鍛造用中炭素低合金鋼の
場合には昇温に8時間、均熱に8時間、徐冷却に8時
間、合計24時間も要している。
【0008】一方、特公昭61−15930 号公報および特公
昭61−57891 号公報において、線材を連続的に急速球状
化焼鈍する法が提案されている。前者の発明は、線材を
コイル状態のまま処理することをやめてコイルを巻戻し
て1本通しにして連続的に加熱と冷却を施すことで球状
化焼鈍の時間短縮をはかったものである。
【0009】後者の発明は、連続的に脱スケール処理、
および冷間伸線加工を加えつつその後、連続的に加熱と
冷却を施すことで球状化焼鈍の時間短縮を中心にして焼
鈍線材の製造工程の大幅な合理化を図ったものである。
【0010】図2はこのような従来法における1本通し
繰り返し法による球状化焼鈍のヒートパターンの説明図
であって、図中、一例として加熱温度、時間を示すよう
な各過程を経て球状化が図られる。
【0011】しかしながら、これらの従来技術において
球状化のための熱履歴を効率的に付与する方法が技術の
主体であって、セメンタイトの球状化はに記載した従
来の球状化機構に基づいており、セメンタイトの球状化
機構を本質から改革した革新的技術ではない。
【0012】これら先行技術に対し球状化時間をさらに
短時間化するには、こうした処理方法の改善・効率化だ
けでは限界に到達しつつあり、セメンタイトの球状化機
構の本質からの技術革新なくしては、球状化焼鈍のさら
なる急速化・短縮化は困難な状況にある。
【0013】(2) 球状化されたセメンタイト粒子のサイ
ズが微細であること: 従来技術での長時間の球状化焼鈍では極めてゆっくり
した冷却速度で徐冷されるため生成したセメンタイト粒
子は充分に大きなサイズに成長できる。これに対して、
先行技術として示した急速球状化焼鈍ではセメンタイト
の成長する時間的余裕が少ないためセメンタイトは球状
化できてもそのサイズは非常に小さなものが多くなり、
焼鈍後の組織と硬度や延性に局部的に不均一を生じ易
い。
【0014】この微細セメンタイトが不均一に分散す
る原因は、次の事情によると考えられる: a) 焼鈍時の加熱でセメンタイトをオーステナイト中に
分解固溶させてしまい、わずかに残存した炭化物などを
核にして焼鈍の冷却時にセメンタイトを球状に再析出成
長させるという従来の球状化手法を採っているため、大
きなサイズのセメンタイトに析出成長させるためにはセ
メンタイトを構成しているC原子とFeおよびCr等の合金
原子が拡散して充分に凝集する必要がある。
【0015】b) しかしながら、先行技術の方法では上
記のセメンタイト粒子の成長機構になんら改良が加えら
れていないため、セメンタイト粒子は徐冷時の冷却速度
が大きくなるにつれて微細なものになる、すなわち急速
に球状化焼鈍しようとするほどセメンタイト粒子は微細
になる、という傾向はどうしても回避不可能である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】かくして、本発明の一
般的な目的は、従来、20時間程度の処理時間を必要とし
ていた鋼の球状化焼鈍処理 (特に軸受鋼のような合金鋼
では25〜30時間以上の長時間の処理を必要としていた)
を1時間以下 (好ましくは30分以下) の極めて短い時間
で処理することのできる革新的な急速球状化焼鈍方法を
実現する技術を開発することである。
【0017】本発明のより具体的な目的は、セメンタイ
ト球状化を迅速化する新たな焼鈍熱処理ヒートパターン
を確立すると同時に、球状化焼鈍を急速化したときに不
可避的に現れる球状炭化物の微細化傾向を防止する新し
い加工熱処理方法を確立することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】すでに述べたように、従
来の焼鈍技術では本質的にいま以上の球状化の急速化と
セメンタイト粒子の肥大化とを同時に実現することは困
難である。そこで、本発明者らはセメンタイトの形態変
化の過程を詳細に再検討し、セメンタイトが球状化する
機構を基本から見直すことから研究を開始し、新たな技
術思想と技術手法とにもとづく新たな急速球状化焼鈍技
術の開発を目指した。
【0019】ここに、炭化物の球状化現象はFeおよびCr
などの合金元素とCのオーステナイト中での拡散・再析
出で進行する現象であり、本質的に温度と時間とに支配
された拡散と粒成長とに律速されている過程である。従
って、セメンタイトの球状析出を加速して球状化焼鈍を
短時間化すると同時にセメンタイト粒子を肥大化させる
ことの両方を同時に実現することは原理的に極めて困難
である。
【0020】ここに、本発明者らは、従来の球状化焼鈍
方法でとられている「焼鈍時の加熱でセメンタイトをオ
ーステナイト中に分解固溶させてしまい、わずかに残存
した炭化物などを核にして焼鈍の冷却時にセメンタイト
を球状に再析出成長させる方法」から脱却し、「固溶消
失させたい非球状化セメンタイト粒子および微細なセメ
ンタイト粒子の周囲だけをオーステナイトに変態させ
て、固溶消失させたいセメンタイト粒子をすみやかに周
囲のオーステナイト中へ分解固溶させることにより、好
ましくないセメンタイトを速やかに固溶消失させてセメ
ンタイトを構成するC原子が広範囲な領域に拡散させ、
その後の冷却時にセメンタイトが球状析出するのを容易
にする」とともに、「焼鈍時の加熱段階で微細なセメン
タイト粒子だけを優先的にオーステナイト中に分解固溶
させ、大きなセメンタイト粒子は未分解・未固溶のまま
に残存させ、微細セメンタイト粒子が分解消失して固溶
したC原子を残存している未分解・未固溶のセメンタイ
ト粒子のまわりに再析出・成長肥大させる」という、非
平衡状態の反応を活用することに着想し、球状化焼鈍に
おける加熱過程でのセメンタイトの分解固溶挙動を詳細
に調査した結果、新たに次の諸知見を得た。
【0021】(I) セメンタイトの分解固溶する順序は、
(1) 層状の共析パーライト、(2) 棒状セメンタイト、
(3) 塊状もしくは球状セメンタイト、の順であり、球状
化処理を必要とする非球状状態のセメンタイトほど速く
優先的に分解固溶する。
【0022】(II)微細なセメンタイト粒子ほど速く分解
固溶して消失する。 (III) セメンタイトのこれらの固溶消失には加熱温度と
加熱時間の両方が影響するが、加熱温度が高くて加熱時
間の短いほど、すなわち高温急速加熱処理であるほど、
上記(I) 、(II)の傾向が強まる。
【0023】(IV)上記(I) 、(II)の現象は非平衡の過渡
的な現象であって、数秒〜数分の時間で速やかに従来の
焼鈍熱処理においてみられる平衡的な固溶消失状態に到
達してしまう。
【0024】さらに本発明者らの知見によれば、次のよ
うに加熱途上で塑性変形を加えることで球状化の短縮化
効果は一層促進されることが判明した。 (V) オーステナイト中に固溶したC原子が冷却途上再び
セメンタイトに析出する際、C原子が広範囲に希薄に分
布していると大きな球状セメンタイト粒子に凝集析出す
ることが非常に困難になる。固溶したC原子はあまり広
範囲に希薄分布せずに未固溶のセメンタイト粒子の周囲
に濃化していることが急速な冷却でもセメンタイトが大
きく球状に析出するために極めて有効である。
【0025】そこで、フェライトからオーステナイトへ
変態する直前の塑性歪を付与すると、セメンタイト粒子
の周囲に加工による転位が密に集積してセメンタイト粒
子の周辺のフェライトは非常に急速にオーステナイト化
する。したがって、急速加熱の昇温途上で変態まえに加
工を加えると、セメンタイトの周辺だけがいたるところ
で微細にオーステナイト化しそれに接しているセメンタ
イト粒子を速やかに分解固溶する。
【0026】このとき、オーステナイトは通常の加熱で
現れるものとは著しく異なり炭化物を極く薄くとりまく
ようにして生成しているので、C原子はそうしたオース
テナイトの中に濃化して固溶している。
【0027】ここに、すでに述べたように、従来の焼鈍
処理技術は先行例の急速化された技術も含めてすべて平
衡的な固溶消失状態での現象にもとづく技術である。そ
れに対して本発明の技術は先行例の急速化された技術も
含めたすべての焼鈍処理技術でありえなかった加熱 (均
熱) 時間0秒〜数分の超短時間で、まだ過渡的段階にあ
る非平衡現象を使っており、しかもオーステナイト変態
直前に加工を加えることによって、こうした過渡的非平
衡状態が極めて短時間で極めて局所的にセメンタイト周
辺だけに限定して起こっていることを活用しており、こ
れらの点が従来技術と決定的に相違する点である。
【0028】上記の急速昇温途上で加工歪の助けをかり
て極めて局所的に極めて数多く非平衡・過渡的現象生起
せしめ、それによって不都合なセメンタイトだけを消失
させてセメンタイト粒子を球状肥大化させることが可能
になる。さらに、これらの非平衡・過渡的現象を活用す
るために従来技術ではありえなかった急速処理が必要に
なるが、これはまさに本発明の目的に合うものである。
【0029】本発明の急速熱処理における加熱過程での
セメンタイトの分解固溶過程をさらに次の2つの素過程
に分けた。焼鈍前の鋼材のセメンタイトの形態に応じて
これらの素過程を使い分け、各々の長所を活用しつつ短
所を補完し合うようにすることができる。
【0030】大きなパーライトや棒状セメンタイトが
多く存在した非球状化組織の場合は、加熱温度をやや低
めにかつ加熱時間をやや長めに設定して、これら不都合
なセメンタイトの完全消失をはかるような素過程を活用
する。
【0031】必要に応じて、このときにAc1 変態点直前
で加工歪を加え、その塑性歪によってセメンタイト粒子
の周辺に集積した転位密度が回復などで低下しないうち
にセメンタイト粒子周辺だけにAc1 変態をおこさせるよ
うにするのが好ましい。
【0032】微細なセメンタイト粒子が多く存在して
おり、球状化は比較的良好だが硬度が高い微細組織の場
合は加熱温度を高めにかつ加熱時間を非常に短時間に設
定してこれら不都合な微細セメンタイト粒子だけの完全
消失をはかるようにする。この素過程においてもAc1
態直前で加工歪を加え、その塑性歪によってセメンタイ
ト粒子の周辺に集積した転位密度が回復などで低下しな
いうちにセメンタイト粒子周辺だけにAc1 変態をおこさ
せることは極めて有効である。
【0033】これらの素過程を組み合わせあるいは反復
することによりセメンタイトの形状とサイズの分布を所
望のものに近づける。特に、素過程の場合は微細な球
状セメンタイトが再析出しやすいが、素過程によって
それらを消失させることができ、2つの素過程は互いに
有効な補完関係にある。
【0034】このように、従来の焼鈍処理技術は先行例
の急速化された技術も含めてすべて平衡的な固溶消失状
態での現象にもとづく技術の適正反復である。それに対
して本発明は、先行例の急速化された技術も含めて、従
来のすべての焼鈍処理技術でありえなかった加熱 (均
熱) 時間0秒〜数分の超短時間でまだ過渡的段階にある
2種類の非平衡現象を使って、被熱処理材の前組織と所
望する球状化処理組織とに応じてこれら2種の素過程
、を複合させ互いに有効な補完関係をはかりつつセ
メンタイトの形状とサイズの分布を所望のものに近づけ
るものである。
【0035】ここに、本発明の要旨とするところは次の
通りである。 (1) 鋼材に下記の各素過程を単独でまたは組み合わせて
1回もしくは2回以上行うことを特徴とする鋼材の急速
連続球状化焼鈍処理法。
【0036】素過程: Ae1 点以上、Ae1 点+150K 以下
の温度域に、1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該
温度域内で0秒以上600 秒未満の時間保持した後、Ae1
点+50K〜Ae1 点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速
度で冷却するかまたは当該温度域内の温度に保持するこ
と; および 素過程: Ae1 点 +80K 以上、Ae1 点+300K 以下の温度
域内に1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該温度域
内で0秒以上120 秒未満の時間保持した後、Ae1 点〜Ae
1 点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速度で冷却す
るかまたは当該温度域内の温度に保持すること。
【0037】(2) 前記素過程およびのそれぞれにお
いてその昇温途上で鋼材にAc1 点未満、623K以上の温度
域内で7%以上の歪の塑性加工を加える上記(1) 記載の
方法。 (3) 鋼材をAe1 点未満の温間または冷間にて15%以上の
塑性加工を加えた後に行う上記(1) または(2) 記載の方
法。
【0038】(4) 繰り返し加熱冷却サイクルから成る鋼
材の連続球状化焼鈍処理法において、繰り返し加熱冷却
サイクルのうちの1つもしくは2つ以上のサイクルを上
記(1)または(2) における素過程および素過程の組
み合わせに置き換えることからなる、鋼材の急速連続球
状化焼鈍処理方法。
【0039】
【作用】次に、本発明において上述のように処理条件を
限定した理由とその作用効果について詳述する。なお、
本発明において対象となる「鋼材」は、熱間圧延鋼材だ
けでなく、あらかじめ各種の熱処理を施した鋼材 (例え
ば焼準、焼入焼戻、焼鈍等) あるいはあらかじめ各種の
塑性加工 (例えば冷間加工、温間加工等) を施された鋼
材、であってもよい。
【0040】対象については鋼とのみ表現しており、球
状化焼鈍を施すようなすべての鋼種をさしている。した
がって、対象鋼についてその成分などの数値限定はしな
い。図3は本発明にかかる連続球状化焼鈍処理のヒート
パターンを素過程およびを連続して行う場合につい
て示す説明図であり、基本的には各過程とも (加熱) →
(昇温) → (均熱) → (冷却) → (徐冷) の各段階から
成る。本発明にかかる加熱処理における加熱手段として
は所期の加熱条件が実現できれば特に制限ないが、実用
上は誘導加熱、通電加熱などがあり、特に後述する実施
例でも用いるように通電加熱が好ましい。
【0041】(1) 素過程について: (i) 加熱温度:Ae1 以上、Ae1+150K以下 本発明の素過程においては、球状化不十分な粗大セメ
ンタイト粒子を一旦オーステナイト中へ分解固溶させる
ことを目的としているため加熱温度がAe1 点以上にする
必要のあることは当然である。
【0042】加熱温度がAe1+150Kを越えると分解固溶さ
せたい共析パーライト組織のセメンタイトだけでなく残
存させておきたい球状のセメンタイト粒子まで分解固溶
させてしまうため、上限温度をAe1 + 150Kとした。さら
に、加熱温度がこの上限値を越えると、塑性加工で誘起
させたセメンタイト粒子周辺に限定されたオーステナイ
ト領域が一気に成長粗大化してしまうため塑性加工を昇
温過程で付与する効果が完全に消失してしまう。加熱温
度の下限は、好ましくはAe1 +25K とした。Ae1 〜Ae1
+25K の間では分解固溶させたい共析パーライトのセメ
ンタイトが充分に分解固溶しないことがあるからであ
る。
【0043】(ii)昇温速度:1K/s以上 素過程における加熱時の昇温速度もまた大事な要素で
ある。昇温速度が通常の熱処理におけるようなゆっくり
とした昇温であると昇温過程中でセメンタイトが平衡状
態まで分解固溶してしまうため本発明の狙いである微小
なセメンタイトだけを優先的に固溶消失させるという意
図が実現しなくなり、加熱温度が高すぎたのと同じこと
になってしまう。また折角加工して導入した転位が回
復、再結晶などで減少消失してしまってセメンタイト粒
子周辺だけにAc1 変態を起こさせるようにすることがで
きなくなる。このため、昇温速度は1K/s以上が必要であ
る。昇温速度はいくら大きくても不都合はなさそうであ
るが、現実には昇温速度が大きすぎると温度制御が困難
になり、到達加熱温度が高くなりすぎたり低くなりすぎ
たりして上述のトラブルが起こりやすくなるので注意を
要する。
【0044】(iii) 均熱時間:0s 以上、600s以下 (好
ましくは10s 以上、300s以下) 均熱時間は加熱温度とともにもっとも重要な因子であ
る。素過程では前組織中に残っている非球状化セメン
タイトを完全に固溶消失させておくことがひとつの使命
であるが、均熱時間はこの使命を果たすために非常に重
要なのである。したがって、均熱時間の長さは前組織の
ありかたによって適正に選ばなければならない。一般に
は短くてすむほど良いのであるが、素過程における不
完全球状化セメンタイトを分解固溶させる目的のために
は10秒以上均熱することが好ましいことが多い。一方、
均熱時間が600 秒までになるとセメンタイト周辺に加工
誘起生成したオーステナイトが成長粗大化してしまった
セメンタイトの分解固溶量が増加し、C原子拡散が進行
してC原子の濃度が希薄になるため、かえってその後の
冷却で微細なセメンタイトが再析出してくるため具合が
悪くなるので、上限を600 秒とした。
【0045】(iv)冷却: Ae1+50K〜 Ae1-150K(Ae1+50℃
〜 Ae1-150℃) の温度域内を5K/秒(300℃/分) 以下
[好ましくは5K/秒(300℃/分) 以下、0.1K/秒(6℃/
分) 以上] の冷却速度で冷却するかまたは当該温度域内
の温度に保持する。徐冷温度域を Ae1+50K〜Ae1-150Kに
したのは、この範囲が主としてオーステナイトからセメ
ンタイトの析出が起こる温度域だからである。
【0046】徐冷速度を5K/秒(300℃/分) 以下、好ま
しくは5K/秒(300℃/分) 以下で0.1K/秒(6℃/分) 以
上、としたのは、析出するセメンタイトが球状になるた
めには徐冷速度を5K/秒以下にする必要があるためであ
り、好ましくは0.1K/以上としたのは本発明の目的であ
る短時間急速焼鈍を実現するためである。昇温過程での
塑性加工付与によりオーステナイト化が各セメンタイト
粒子の周辺で局部的に集中して生起させることができる
ので、本発明での冷却速度は従来技術におけるよりもさ
らに急速化が可能になる。
【0047】(v) 素過程においては、必要により、昇
温途上でのAc1 点未満623K(350℃) 以上の温度域内で7
%以上の歪の塑性加工を加えてもよい:本発明における
素過程での塑性加工は極めて効果的である。その理由は
上記で述べた通りである。塑性歪は凝集球状化しようと
する炭化物のまわりのまさにオーステナイトに変態しよ
うとするフェライト地に転位を集中的に集積させるため
に付与するものであり、Ac1 点未満でなければならない
ことは当然である。さらに、塑性加工温度は転位を炭化
物のまわりのフェライトに集中的に集積させることがで
きればよいから、せっかく加工して導入した転位が回
復、再結晶などで減少消失してしまっては効果がなくな
るので、再結晶温度以下の低い温度域で加工することが
有効と考えられるが、加工温度が623K(350℃) 以下であ
るとその後のAe1 点以上に急速昇温する途中で転位が回
復、再結晶などで減少消失してしまうので、623K(350
℃) を下限温度とした。付加する塑性歪量は大きいほど
良いが、その上限値は鋼材の加工における変形能によっ
ておのずと定まるので、特に限定しなかった。付加する
塑性歪量は小さいほうが設備的にも操業上も容易である
が、球状セメンタイトの析出促進とサイズ肥大化を有効
に行わしめるためには少なくとも7%以上の塑性歪が必
要であるので、7%を塑性歪量の下限値とした。
【0048】(2) 素過程について: (i) 加熱温度:Ae1+80K 以上、Ae1+300K以下 (好ましく
はAe1+80K 以上、Ae1+270K以下) 素過程における加熱時の加熱温度は Ac1点+80℃未満
では低すぎて非常に微細セメンタイトといえども分解せ
ずに多く存在したままになって球状セメンタイトの平均
サイズを大きくするという本発明の目的を果たさないの
で下限値をAe1+80K とした。
【0049】素過程における加熱時の加熱温度は1273
K(1000℃) を越えると、もはや高すぎてセメンタイトが
ほとんど分解固溶して消失してしまうため、本発明法に
おいては致命的状況になる。こうなるともはや本発明の
技術では再析出するセメンタイトの球状化は実現し得
ず、従来法のように非常な長時間をかけて徐冷しながら
セメンタイトが球状に析出するのを待つしか回復手段は
なくなるので、上限値をAe1+300K、好ましくはAe1+270K
にした。
【0050】(ii)昇温速度:1K/s以上 素過程における加熱時の昇温速度は極めて大事な要素
である。昇温速度が通常の熱処理におけるようなゆっく
りとした昇温であると昇温過程中でセメンタイトが平衡
状態まで分解固溶してしまうため本発明の狙いである微
小なセメンタイトだけを優先的に固溶消失させるという
意図が実現しなくなり、加熱温度が高すぎたのと同じこ
とになってしまう。素過程では加熱温度を高くし加熱
時間を短くして昇温途上での非平衡過程における微細セ
メンタイトだけの固溶消失を狙っているために、昇温速
度が小さすぎると上述のような致命的状況に陥ってしま
う。このため、昇温速度は1K/s 以上である必要があ
る。昇温速度はいくら大きくても不都合はなさそうであ
るが、現実には昇温速度が大きすぎると温度制御が困難
になり、到達加熱温度が高くなりすぎたり低すぎたりし
て上述のトラブルが起こりやすくなるので注意を要す
る。
【0051】(iii) 均熱時間:0s 以上、120s以下 (好
ましくは0s 以上、10s 以下) 均熱時間は加熱温度とともにもっとも重要な因子であ
る。素過程では前組織中に残っている非常に微細な球
状化セメンタイトだけを固溶消失させて平均セメンタイ
ト粒子径を大きくさせることが使命であるが、均熱時間
はこの使命に影響を与えるものとして重要である。均熱
時間の長さは前組織のありかたによって適正に選ばなけ
ればならない。一般には短くてすむほど好ましく、150
秒までになると大きな球状セメンタイトまでが分解固溶
してしまい、その後の冷却で微細なセメンタイトが再析
出してくるため非常に具合が悪いので、上限を120 秒と
した。微細なセメンタイト粒子が少なくなるほどこの時
間の適正値は長くとれるが、一般の組織では10秒以下で
処理することが望ましい。
【0052】(iv)冷却: Ae1〜Ae1-150K(Ae1〜Ae1-150
℃) の温度域内を5K/秒(300℃/分)以下 [好ましくは5
K/秒(300℃/分) 以下、0.5K/秒(30 ℃/分) 以上]
の冷却速度で冷却するか、または当該温度域内の温度に
保持する。
【0053】徐冷温度域を Ae1〜Ae1-150Kにしたのは、
この範囲が主としてオーステナイトからセメンタイトの
析出が起こる温度だからである。徐冷速度を5K/秒(300
℃/分) 以下、好ましくは5K/秒(300℃/分) 以下で0.
1K/秒(6℃/分) 以上、としたのは、析出するセメンタ
イトが球状になるためには徐冷速度を5K/秒以下にする
必要があるためであり、好ましくは0.1 K/s 以上とした
のは本発明の目的である短時間急速焼鈍を実現するため
である。昇温過程での塑性加工付与によりオーステナイ
ト化が各セメンタイト粒子の周辺で局部的に集中して生
起させることができるので、本発明での冷却速度は従来
技術におけるよりもさらに急速化が可能になる。
【0054】(v) 素過程においても、所望により、昇
温途上でのAc1 点未満623K(350℃) 以上の温度域内で7
%以上の歪の塑性加工を加えるのが好ましい。本発明に
おける素過程での塑性加工は極めて効果的である。その
理由は上記で述べた通りである。塑性歪は凝集球状化し
ようとする炭化物のまわりのまさにオーステナイトに変
態しようとするフェライト地に転位を集中的に集積させ
るために付与するものであり、Ac1 点未満でなければな
らないことは当然である。
【0055】さらに、塑性加工温度は転位を炭化物のま
わりのフェライトに集中的に集積させることができれば
よいから、せっかく加工して導入した転位が回収、再結
晶などで減少消失してしまっては効果がなくなるので、
再結晶温度以下の低い温度域で加工することが有効と考
えられるが、加工温度が623K(350℃) 以下であるとその
後のAe1 点以上に急速昇温する途中で転位が回復、再結
晶などで減少消失してしまうので、623K(350℃) を下限
温度とした。付加する塑性歪量は大きいほど良いが、そ
の上限値は鋼材の加工における変態能によっておのずと
定まるので、特に限定しなかった。付加する塑性歪量は
小さいほうが設備的にも操業上も容易であるが、球状セ
メンタイトの析出促進とサイズ肥大化を有効に行わしめ
るためには少なくとも7%以上の塑性歪が必要であるの
で、7%以上の塑性歪が必要であるので、7%を塑性歪
量の下限値とした。
【0056】(3) 各素過程を1回もしくは2回以上組み
合わせて施す:素過程とはそれぞれ目的、作用効果
が異なっており、どちらか一方だけでもよいが、両方の
効果を併用するとうまく大きなセメンタイト粒子の分布
した急速球状化焼鈍ができる。したがって、本発明では
これら二つの素過程を組み合わせることが望ましい。さ
らに、各素過程を必要に応じて繰り返し施すと一層効果
が大きくなる。
【0057】(4) Ae1 点未満の温間温度域にて、または
冷間にて15%以上の断面積減少の塑性加工を加える:本
発明の急速焼鈍法を施す前に、鋼材に冷間加工を加えて
おくと一段と焼鈍後のセメンタイト粒子の平均サイズが
大きくなり、焼鈍処理も急速化できる。冷間加工の効果
は焼鈍前のセメンタイト粒子の周辺のマトリックスに高
い密度で転位が集積して急速昇温時に個々のセメンタイ
ト粒子の周辺からオーステナイト化が起こるからであ
る。
【0058】すなわち、加工を加えた鋼材では個々のセ
メンタイト粒子の周辺だけがオーステナイトになってセ
メンタイトの分解固溶が進み始め、その外側の大部分の
マトリックスはまだオーステナイト化していないという
非平衡な過渡的現象が生じる。この状態から冷却すると
非常に速い冷却速度でも再析出セメンタイトは球状セメ
ンタイトに析出成長するのである。
【0059】こうした加工の効果は加工度が15%を越え
たときに顕著に現われるようになるので、加工度の下限
値を15%とした。加工度は大きなほうが効果が大きい傾
向があるが、加工できる限界があるので取り立てて上限
値を加工度で表すことはしなかった。
【0060】本発明の焼鈍処理の前に施す加工は冷間と
ともに温間でも良い。効果のあるのはやはり15%以上で
ある。加工を加える温度がAe1 点以上になるとセメンタ
イトの分解とパーライトの再生がはじまるのでAe1 点以
上で加工をくわえても効果がない。次に、本発明の作用
効果を実施例に関連させてさらに具体的に説明する。
【0061】
【実施例】
(実施例1)表1に示す鋼組成を有する鋼を熱間圧延によ
り製造した直径18mmの線材から成る市販の線材コイルを
用いた。これらの線材コイルあるいはこれを冷間伸線加
工したもの、および温間圧延したものを供試材とし、表
2から表10に示す各条件での従来法による焼鈍および本
発明にかかる急速焼鈍を施した。
【0062】なお、表2では図1に示すバッチ炉による
球状化焼鈍条件を、表3は図2に示す1本通し、繰り返
し法による球状化焼鈍条件をそれぞれ示す。また各表に
おいて比較法と記載してあるのは各請求項記載の本発明
法に対する比較を示す意味で比較法という。
【0063】急速焼鈍のロールスタンドの間を互いに電
気的に完全絶縁した一対の線材圧延機を通電電極とし、
これらに供試材を通して必要によりロールで圧延しつつ
ロールスタンド間に接続した電源から被圧延線材に通電
加熱し、出側ローラ出口で供試材の温度を赤外線放射温
度計によって計測しつつ予め設定した温度制御プログラ
ムにしたがって各種の熱履歴を与えるように通電エネル
ギーを自動調整した。
【0064】結果は表11にまとめて示すが、表11から従
来法での特性、本発明法とその条件比較実施例での特性
をみると、以下のことが明らかである。 (i)従来のコイルままバッチ炉焼鈍した実験番号1、2
ではセメンタイトの粒径も大きくて硬度も低くなってい
るが、従来法の1本通し繰り返し法の実験番号(3) と
(4) での球状化焼鈍ではセメンタイトの粒径が小さく硬
度が充分に下がりきらない。
【0065】(ii) これに対して本発明法である実験番
号(36)〜(41)ではセメンタイトの平均粒径が非常に大き
くなって従来法である実験番号(1) 、(2) での大きさに
近づいている。硬度も充分に低くなり、従来法での球状
化焼鈍材での値と大差なくなっている。
【0066】(iii)従来のバッチ炉による焼鈍が25時間
前後の処理時間を要しているのに対して1本通しの繰り
返し法では1時間弱にまで驚異的に短縮されている。し
かしながら、従来技術ではここまで焼鈍時間を短縮する
ことは限界に達しており、セメンタイトの球状化はでき
てもセメンタイト粒の肥大化と硬度のさらに一段の低下
はもはや望むべくもない。
【0067】本発明では、セメンタイトの粒子の微細な
ものだけを消失させ大きな粒子に凝集肥大化させるため
に新しく導入した非平衡過程を活用したセメンタイト粒
子径分布制御方法を用いて、さらに60分〜30分程度まで
球状化焼鈍時間を短縮することに成功しており、さらに
その焼鈍後の組織と硬度は従来の1本通し繰り返し法よ
りもはるかに優れ25時間もの時間をかけたバッチ炉焼鈍
材に限りなく近づいている。
【0068】(iv) これらの実験例における諸結果はま
ことに従来の球状化焼鈍の処理時間に対する概念を根底
から覆す革新的なものであり、本発明の技術的および工
業的意義と効果は計り知れない大きなものである。次
に、各素過程における加熱条件の影響について検討して
みる。まず、素過程について実験例5〜24で検討する
と次の点が判明する。
【0069】(i)素過程における加熱時の加熱温度は
実験番号(5) でのようにAe1 点未満(710℃) では低すぎ
てセメンタイトが分解せず長いパーライト状のものが多
く残存して球状化の目的を果たさない。
【0070】(ii) 素過程における加熱時の加熱温度
は実験番号(6) でみられるように900℃になると高すぎ
てセメンタイトがほとんど分解固溶して消失してしまう
ため、本発明法においては致命的である。こうなるとも
はや本発明の技術では球状化焼鈍は実現し得ず、従来法
のように非常な長い時間をかけて徐冷しながらセメンタ
イトが球状に析出するのを待つしか救済手段はない。
【0071】(iii)素過程における加熱時の昇温速度
もまた大事な要素である。実験番号(7) のように昇温速
度が通常の熱処理におけるようなゆっくりとした昇温で
あると昇温過程中でセメンタイトが平衡状態まで分解固
溶してしまうため本発明の狙いである微小なセメンタイ
トだけを優先的に固溶消失させるという意図が実現しな
くなり、加熱温度が高すぎたのと同じことになってしま
う。昇温速度はいくら大きくても不都合はなさそうであ
るが、現実には昇温速度が大きすぎると温度制御が困難
になり、到達加熱温度が高くなりすぎたり低すぎたりし
て上述のトラブルが起こりやすくなるので注意を要す
る。
【0072】(iv) 均熱時間は加熱温度とともにもっと
も重要な因子である。素過程では前組織中に残ってい
る非球状化セメンタイトを完全に固溶消失させておくこ
とが一つの使命であるが、均熱時間はこの使命を果たす
ものとして重要なのである。したがって、均熱時間の長
さは前組織のありかたによって適正に選ばなければなら
ない。一般には短くてすむほど好ましく、実験番号(8)
のように600 秒までになるとかえってセメンタイトの分
解固溶量が増加してその後の冷却で微細なセメンタイト
が再析出してくるため具合が悪くなる。
【0073】(v)徐冷終了温度は500 ℃まで下げても
(実験例9) 580 ℃の場合 (実験例21)と全く差がないこ
とから、いたずらに焼鈍時間を浪費するだけになってい
る。次いで、素過程について実験例25〜43で検討する
と次の点が判明する。
【0074】(i)素過程における加熱時の加熱温度は
実験例25でのようにAe1 点+80℃未満(800℃) では低す
ぎて非常に微細なセメンタイトでも分解せずに多く残存
して球状セメンタイトの平均サイズを大きくするという
本発明の目的を果たさない。
【0075】(ii) 素過程における加熱時の加熱温度
は実験例26でみられるように1000℃を越えると高すぎて
セメンタイトがほとんど分解固溶して消失してしまうた
め、本発明法においては致命的である。こうなるともは
や本発明の技術では再析出するセメンタイトの球状化は
実現し得ず、従来法のように非常な長時間をかけて徐冷
しながらセメンタイトが球状に析出するのを待つしか救
済手段はない。
【0076】(iii)素過程における加熱時の昇温速度
は極めて大事な要素である。実験例27のように昇温速度
が通常の熱処理におけるようなゆっくりとした昇温であ
ると昇温過程中でセメンタイトが平衡状態まで分解固溶
してしまうため本発明の狙いである微小なセメンタイト
だけを優先的に固溶消失させるという意図が実現しなく
なり、加熱温度が高すぎたのと同じことになってしま
う。素過程では加熱温度を高くし加熱時間を短くして
昇温途上での非平衡過程のおける微細セメンタイトだけ
の固溶消失を狙っているために、昇温速度が小さすぎる
と上述のような致命的状況に陥ってしまう。昇温速度は
いくら大きくても不都合はなさそうであるが、現実には
昇温速度が大きすぎると温度制御が困難になり、到達加
熱温度が高くなりすぎたり低すぎたりして上述のトラブ
ルが起こりやすくなるので注意を要する。
【0077】(iv) 均熱時間は加熱温度とともにもっと
も重要な因子である。素過程では前組織中に残ってい
る非常に微細な球状化セメンタイトだけを固溶消失させ
ておくことが使命であるが、均熱時間はこの使命に影響
を与えるものとして重要である。均熱時間の長さは前組
織のありかたによって適正に選ばなければならない。一
般には短くてすむほど好ましく、実験例28のように150
秒までになると大きな球状セメンタイトまでが分解固溶
してしまい、その後の冷却で微細なセメンタイトが再析
出してくるため非常に具合が悪い。
【0078】(v)徐冷終了温度は500 ℃まで下げても
(実験例29) 585 ℃の場合 (実験例40)と全く差がないこ
とから、いたずらに焼鈍時間を浪費するだけになってい
る。本発明における素過程、の繰り返しは有効であ
るが、繰り返し数を多くするとそれだけ焼鈍時間が長く
なるため繰り返しによる効果の増大とのバランスが実用
上問題である。これに関しては次の点が分かる。
【0079】実験例10での1回だけの場合と比較して、
実験例44の2回、実験例45の3回になるほど組織・特性
は良くなるが、実験例44から45へ回数を増やしても改善
幅は少なくなる傾向がある。したがって、繰り返し数は
2〜3回ぐらいが実用的であるとも言える。もちろん、
実用的か否かは時間・コストに対する評価の仕方で変わ
るので、絶対的なものではなく、目的に応じ適宜繰り返
されることになろう。
【0080】また、本発明においては、予め冷間加工ま
たは温間加工を施してから素過程および素過程の焼
鈍処理を施すと非常に効果が大きい。例えば、実験例48
および49をみると、冷間あるいは温間での予備加工度が
10%では予め加工を施さない実施例10と大きな違いはな
いが、実験例50および51のように加工度が30%になると
きわだって特性の改善が著しい。
【0081】(実施例2)本例では素過程、におい
て、昇温途上での加工を行った以外は実施例1を繰り返
した。
【0082】昇温途中の加工は実施例1の対になるロー
ルスタンド群のうち各素過程の昇温段階にあたる通電部
分のロールスタンドを3基または4基とし、3基の場合
は真ん中のスタンドとその前後のスタンドとの間で鋼材
を通電加熱昇温しつつ後半の2基で圧下を加え、4基の
場合は真ん中の2基対で圧下を加え、通電加熱は1基目
スタンドと2基目スタンドおよび3基目スタンドと4基
目スタンドの間で実施した。
【0083】実施条件および結果は表12、13および表14
にまとめて示す。実施例1の場合と比較して炭化物の粒
径が大きくなり、焼鈍後の硬度が下がっており、一段と
球状化焼鈍効果が改善されている。実施条件の作用・効
果については実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
【表12】
【0096】
【表13】
【0097】
【表14】
【0098】
【表15】
【0099】
【表16】
【0100】
【表17】
【0101】
【表18】
【0102】
【表19】
【0103】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば従
来20時間以上も要していた鋼の球状化焼鈍処理が1時間
程度の短時間で達成でき、その効果は驚異的であって、
その背景にある冶金現象の特異性からも、本発明は斯界
の発展に大きな貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来法のヒートパターンの説明図である。
【図2】別の従来法のヒートパターンの説明図である。
【図3】本発明にかかる球状化焼鈍処理のヒートパター
ンの概略説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 9/52 103 C21D 9/52 103B

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材に下記の各素過程およびを単独
    でまたは組み合わせて1回もしくは2回以上行うことを
    特徴とする鋼材の急速連続球状化焼鈍処理法。 素過程: Ae1 点以上、Ae1 点+150K 以下の温度域に、
    1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該温度域内で0
    秒以上600 秒未満の時間保持した後、Ae1 点+50K〜Ae1
    点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速度で冷却する
    かまたは当該温度域内の温度に保持すること; および 素過程: Ae1 点 +80K 以上、Ae1 点+300K 以下の温度
    域内に1K/秒以上の昇温速度で昇温加熱し、当該温度域
    内で0秒以上120 秒未満の時間保持した後、Ae1 点〜Ae
    1 点-150K の温度域内を5K/秒以下の冷却速度で冷却す
    るかまたは当該温度域内の温度に保持すること。
  2. 【請求項2】 前記素過程およびのそれぞれにおい
    てその昇温途上で鋼材にAc1 点未満、623K以上の温度域
    内で7%以上の歪の塑性加工を加える請求項1記載の方
    法。
  3. 【請求項3】鋼材をAe1 点未満の温間または冷間にて15
    %以上の塑性加工を加えた後に行う請求項1または2記
    載の方法。
  4. 【請求項4】 繰り返し加熱冷却サイクルから成る鋼材
    の連続球状化焼鈍処理法において、繰り返し加熱冷却サ
    イクルのうちの1つもしくは2つ以上のサイクルを請求
    項1または2における素過程および素過程の組み合
    わせに置き換えることからなる、鋼材の急速連続球状化
    焼鈍処理方法。
JP7045799A 1995-03-06 1995-03-06 鋼材の急速連続球状化焼鈍処理法 Withdrawn JPH08246040A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102399954A (zh) * 2011-11-28 2012-04-04 燕山大学 高碳珠光体钢变温处理快速球化方法
JP2016037631A (ja) * 2014-08-07 2016-03-22 高周波熱錬株式会社 炭素鋼の急速軟質化焼鈍処理方法
CN109913622A (zh) * 2019-04-12 2019-06-21 河北工业大学 一种t8碳素工具钢快速球化退火方法

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JP2016037631A (ja) * 2014-08-07 2016-03-22 高周波熱錬株式会社 炭素鋼の急速軟質化焼鈍処理方法
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