JPH0857650A

JPH0857650A - 溶接機用コンジットチューブ

Info

Publication number: JPH0857650A
Application number: JP19265194A
Authority: JP
Inventors: Takuhiko Nishida; 卓彦西田; Hajime Nakasugi; 甫中杉; Kozo Noguchi; 幸三野口; Ko Kato; 興加藤
Original assignee: Nippon Steel Corp; Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp; Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Priority date: 1994-08-17
Filing date: 1994-08-17
Publication date: 1996-03-05

Abstract

(57)【要約】【目的】長尺のコンジットケーブルを使用し、これに
屈曲負荷がかかる状態で溶接される場合においても、長
時間にわたってワイヤ送給性を良好にして能率よく溶接
することを可能にするコンジットチューブを提供するこ
と。【構成】溶接機用コンジットケーブル内部のコンジッ
トチューブにおいて、該コンジットチューブ内表面に潤
滑性複合合金をコーティングしたこと。また、潤滑性複
合合金は二硫化タングステンとステンレス鋼粉末の複合
焼結合金であること。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶接機用コンジットチ
ューブに係り、特に溶接用ワイヤを屈曲した長いコンジ
ットケーブルを通過させて溶接する場合にワイヤの送給
を円滑に良好にするためのコンジットチューブに関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】ガスシールドアーク溶接用ワイヤは、一
般に線径が２．０ｍｍ以下の細線でその断面全体が金属
のソリッドワイヤと、鋼製外皮にフラックスを充填した
複合ワイヤがある。これらのワイヤは、溶接時にワイヤ
供給装置の送給ローラにより、コンジットケーブルの、
内部に螺旋状に成形した可撓性チューブ（以下コンジッ
トチューブ）を内包した管状体の中を挿通させながら、
長尺（６ｍあるいはそれ以上）のコンジットチューブと
それにつながる溶接トーチのコンタクトチップ（通電
部）から連続的にワイヤを送り出させながらシールドガ
スの雰囲気でアーク溶解する方法で使用されている。

【０００３】また、溶接に当たっては、長尺のコンジッ
トケーブルはワイヤ供給装置から溶接箇所までの距離の
調整のために上下あるいは左右に曲げられたり、ループ
状に巻き付けて長さを調整して使われることがしばしば
である。この場合、コンジットケーブルが屈曲されるこ
とにより内部を通過するワイヤが螺旋状のコンジットチ
ューブ内表面との接触摩擦部が増えて送給抵抗が増加
し、ワイヤを円滑に送給させることが困難となる。

【０００４】そのために、従来からガスシールドアーク
溶接用ワイヤの製造に際してワイヤの送給性改善のため
の色々な工夫がなされている。すなわち、ワイヤ表面に
特定した微小凹凸を付けた後潤滑剤を付着させる方法、
例えばワイヤ表面に平均粒径５０〜７５０μｍのショッ
トを用いて２秒以下のショットブラスト加工を行い、潤
滑剤を塗布する方法（特開昭６１−２７１９８号公報）
が提案されている。また、ワイヤ送給性を良くするため
の潤滑剤は、一般に動植物油あるいは鉱物油の単独また
はそれらの混合油をワイヤ表面に一定量塗布している。
更には、潤滑性を高めるために、ＭｏＳ₂、グラファイ
ト粉末等の固体潤滑剤を前述の潤滑油の中に懸濁させて
ワイヤ表面に塗布しているのが実状である。

【０００５】溶接用ワイヤが供給装置により、トーチ部
からスムーズに送り出されるために供給ローラの部分で
適当に送給力が働いて供給ローラによりワイヤをトーチ
の方向に送り出すことが必要である。一方その場合に、
送給ローラを通過してコンジットケーブルの中のコンジ
ットチューブを通過する段階においては、ワイヤとコン
ジットチューブの内壁との摩擦力は小さい方がワイヤの
送給が円滑に行われる。特にコンジットケーブルが途中
でループ状に屈曲負荷がある場合には、ワイヤとコンジ
ットチューブの内壁との接触面が増加するために接触摩
擦による抗力が増加してワイヤの送給性を劣化させるこ
とになる。

【０００６】また、溶接中にワイヤとコンジットチュー
ブ内表面との接触摩擦により、コンジットチューブ内表
面の摩耗が避けられないが、現場の使用方法によって
は、コンジットチューブの内表面とワイヤとは当初、点
接触であったものが、コンジットチューブの内表面の摩
耗が進むにつれて面接触となることにより、ワイヤ送給
時の摩擦抵抗が増加し、経時的にワイヤの送給性を劣化
させることになり溶接時間１５０〜３００時間でコンジ
ットチューブを交換しなければならない状態となるとい
う問題がある。

【０００７】これらの問題を解消するために、従来は丸
線で構成される可撓性のワイヤ案内管（コンジットチュ
ーブに相当）の外面に潤滑剤を塗布し、その潤滑剤の上
に被覆チューブを装着してなるトーチケーブル（実開昭
６１−１６９３０号公報）、更にはメッキを施してない
溶接用ワイヤの送給性改善のために、溶接トーチに案内
供給するフレキシブルコンジットに挿着される導管内面
に１〜５００μｍ膜厚のメッキを施してなるフレキシブ
ルコンジット（特開平１−２６２０７８号公報）などが
提案されている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし、これらはそれ
ぞれ送給性に限界がある。すなわち実開昭６１−１６９
３０号公報は外壁に塗布した潤滑剤をスパイラル状に巻
いた丸鋼線の微小な間隙より、ワイヤ案内管の内壁側に
自然に供給して、ワイヤとの間の摩擦抵抗を減じてワイ
ヤの送給を安定にしようとするものであるが、潤滑剤の
供給量を所定量にすることが困難であり、スパイラル状
のコンジットの間隙が大きくなって過剰に潤滑剤が供給
されると、逆にワイヤの送給に支障となったり、潤滑剤
とワイヤの摩耗粉の混合物がトーチ先端のコンタクトチ
ップに詰まってアーク切れなどの支障の原因となる。ま
た特開平１−２６２０７８号公報のメッキされた材料を
使用したコンジットチューブについても、長時間使用す
るとメッキ剥離した残材が潤滑油などと混合して塊にな
りチューブ内に堆積してワイヤ送給を困難にするのであ
る。

【０００９】そこで本発明は、長尺のコンジットケーブ
ルを使用し、これに屈曲負荷がかかる状態で溶接される
場合においても、長時間にわたってワイヤ送給性を良好
にして能率よく溶接することを可能にするコンジットチ
ューブを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
とするところは、溶接機用コンジットケーブル内部のコ
ンジットチューブにおいて、該コンジットチューブ内表
面に潤滑性複合合金をコーティングしたことを特徴とす
る。また、コンジットチューブの内表面の潤滑性複合合
金は二硫化タングステンとステンレス鋼粉末の複合焼結
合金であることも特徴とする。

【００１１】

【作用】ガスシールドアーク溶接用ワイヤ（以下ワイ
ヤ）には、一般に微量の潤滑油が塗布されており、これ
が送給性を良好にすることおよび防錆効果を発揮してい
る。しかし、潤滑油を均一に塗布することは非常に困難
であり、静電気あるいは超音波を活用して均一塗布する
技術が開発されているが、細径ワイヤの表面に均一に微
量塗布するには完全とはいえない。このために、潤滑油
の塗布量が多過ぎる場合には、送給ローラ部でワイヤが
スリップしたり、あるいはワイヤの摩耗粉と合体してコ
ンジットチューブの内表面に堆積し、逆にコンジットチ
ューブ内の摩擦による抗力を増加させて、ワイヤの送給
性を劣化させる原因になっている。

【００１２】このようなことから、送給ローラ部をワイ
ヤが通過するまではワイヤの表面の潤滑油は必要がな
く、ワイヤの表面の摩擦係数μは０．４程度がローラ部
での送給力維持に好ましく、コンジットチューブの内表
面の摩擦係数μを小さくさせることによって、ワイヤ送
給ローラ部での適当な送給力でワイヤをコンジットチュ
ーブに送り込み、コンジットチューブ内表面の潤滑性の
付与により、円滑なワイヤ送給を実現させることができ
るとの考えから、コンジットチューブの内表面を摩擦係
数μが０．２程度の固体潤滑剤をコーティングすること
により、ワイヤの送給性改善に顕著な効果があることを
見い出した。

【００１３】固体潤滑剤としては、グラファイト粉、Ｍ
ｏＳ₂，ＷＳ₂の微粉などがある。これらの微粉潤滑剤
をコンジットチューブの内表面にコーティングして剥離
しないようにするためにはコンジットチューブの内表面
に付着しやすい固体潤滑剤とコーティング後に剥離しず
らい金属粉とを焼結し複合合金とした後にコンジットチ
ューブの内表面にコーティングすることが必要である。
その方法として、例えば二硫化タングステンとステンレ
ス鋼粉末の複合合金を面圧３ｋｇ／ｃｍ² 程度の圧力で
擦り付けるとコンジットチューブの内表面に厚さ１μｍ
程度の安定した固体潤滑剤の層をコーティングして、ワ
イヤの送給性を飛躍的に向上させることができる。な
お、潤滑性複合焼結合金としては、二硫化タングステン
と鉄パウダー、二硫化モリブデンと鉄パウダーあるいは
二硫化モリブデンとステンレス粉末等においても同様の
効果が得られる。

【００１４】図１にコンジットチューブ内表面へブロッ
クあるいは粉粒状潤滑性複合合金をコーティングする１
例を示す。使用した潤滑性複合合金は、ＷＳ₂粉末３０
％＋ＳＵＳ３１０粉末７０％を混合して高温で焼結した
１．５ｍｍ径、長さ１０ｍｍのブロック４を３本ステン
レス製のコンジットチューブ入り側２に挿入し、エアー
コンプレッサー配管ホルダー５に入り側２を接続し、コ
ンジットチューブ１をほぼ直線状に配置して、その出側
３にエアー抜き機能を有するレシーバ６を取り付けて、
この部分で通過後のブロック４を受け止めた。エアーコ
ンプレッサーの圧力は６ｋｇ／ｃｍ² に設定してコンジ
ットチューブ内表面に潤滑性複合合金を擦り付け処理し
た。コーティング厚さを超音波厚さ測定装置で測定した
一例では、０．８〜１．５μｍであった。

【００１５】図２はワイヤ送給抵抗とスリップ率の測定
装置を示す説明図である。この図に示す装置で前記コン
ジットチューブを用いてワイヤ送給抵抗Ｒとスリップ率
の測定を行った。ワイヤ送給を測定する装置は、ワイヤ
送給装置から送り出されたワイヤ７に負荷が加わると、
ワイヤ送給部９に反力によってワイヤ７が後退するが、
その時に生じる力をロードセル１２により送給抵抗Ｒと
して測定するものである。ループ１０は、コンジットケ
ーブル１１に直接ループ径Ｄを変化させて屈曲負荷を付
与させる部分である。スリップ率は、送給ローラ９の周
速（ＴＧ）と溶接トーチ１３の部分にメジャリングロー
ラ１４によりワイヤ通過速度（ＰＧ）を測定し、下記式
で算出して調べた。スリップ率＝｛（ＴＧ−ＰＧ）／ＴＧ｝×１００それらの測定結果を図３および図４に示す。なお、アー
ク溶接用ワイヤはパーム油を主成分とする潤滑油を塗布
したものと、これをアセトンを浸透させた布でパーム油
を拭き取った１．２ｍｍ径のソリッドワイヤを用い、溶
接条件は表１に示す。

【００１６】

【表１】

【００１７】図３にループ数（Σ）およびループ径
（Ｄ）に対する屈曲負荷｛Σ（１／Ｄ）×１０００｝と
送給抵抗Ｒの関係を示す。図３から明かなようにループ
径（Ｄ）による屈曲負荷が大きいと送給抵抗Ｒは大きく
なる。図４は送給抵抗Ｒとスリップ率の関係を示す。送
給抵抗Ｒが大きいとスリップ率も大きくなる。従来のコ
ンジットチューブを用いた場合には、アセトンを浸透さ
せた布で拭き取った潤滑油塗布なしのワイヤではコンジ
ットケーブルの屈曲負荷がＯの状態でも送給抵抗Ｒが７
ｋｇを超え、スリップ率も７％以上となる。安定した溶
接をするためにはワイヤのスリップ率が５％以下である
ことおよびスリップ率のバラツキσが１以下であること
が好ましい。

【００１８】

【実施例】ＪＩＳＺ３３１２のＹＧＷ１１のソリッド
ワイヤの１．２ｍｍ径およびこれの表面をアセトンを浸
透させた布で拭き取ったワイヤを使い、次のような要領
で図２の装置により、ワイヤ送給抵抗Ｒとワイヤ送給時
のスリップ率を測定した。その結果を表２にまとめて示
す。なお、コンジットケーブルの長さは６ｍ、コンジッ
トチューブの内径は１．７５ｍｍで内表面に潤滑性複合
合金をコーティングしたものと比較のために従来の市販
品を用いた。コンジットケーブルへの屈曲負荷は図２の
ループ１０のように平面状にループ径Ｄおよびその数
（Σ）を変えて付与した。溶接条件は表１と同じであ
る。なお、コンジットケーブルへの屈曲負荷の付与は表
２の該当欄に示す表現で、例えばストレートとは、長さ
６ｍのコンジットケーブルを直線状に配置し、トーチ部
を３００ｍｍＲの屈曲を付けたものであり、１５０φ＊
１Ｔとは同じコンジットケーブルの直線部の中央に平面
状に１５０ｍｍφのループを１ターン付けたもの、１０
０φ＊２Ｔは同じ要領で１００ｍｍφのループを２ター
ン付けたものである。

【００１９】

【表２】

【００２０】表２に示すように、本発明例のコンジット
チューブを用いた場合には、０．３８ｇ／１０ｋｇワイ
ヤ潤滑油塗布ワイヤで、コンジットケーブルへの屈曲負
荷を１００φ＊２Ｔと極限にまで付与した状態でも良好
な溶接が可能な送給性を示した。これに対して市販のコ
ンジットチューブでは１５０φ＊１Ｔまでは良好な送給
性を示したが、厳しい使用条件の溶接現場に近い１５０
φ＊２Ｔではスリップ率σが１以上となってアークが不
安定となり、更に厳しい１２５φ＊２Ｔでは送給抵抗Ｒ
が大きくなりスリップ率、スリップ率のバラツキも大き
くなった。更に、ワイヤの表面に塗布されている油をア
セトンで拭き取った（０．０２ｇ／１０ｋｇワイヤ）
後、送給試験を行ったところ、従来のコンジットチュー
ブではコンジットケーブルがストレート状態で正常な溶
接が出来ないほど送給性が不安定となったが、本発明例
のコンジットチューブを用いて試験した結果では、１２
５φ＊２Ｔまでのコンジットケーブルへの屈曲負荷で良
好な送給性を示し、本発明による送給性改善の効果を確
認することができた。

【００２１】コンジットチューブの寿命については、実
施例のように、本発明例のコンジットチューブを使った
場合、ワイヤの送給抵抗が小さくなるので、それだけコ
ンジットチューブの内表面とワイヤとの接触摩擦抵抗が
小さくなり、その結果としてコンジットチューブ内壁の
摩耗量が少なくなり長時間の使用が可能になる。

【００２２】

【発明の効果】以上述べたように、本発明のコンジット
チューブによれば、ガスシールドアーク溶接用ワイヤの
表面に特別な処理を施さないでも、また一般市販のワイ
ヤでも、狭い場所でコンジットケーブルを屈曲させて使
用しなければならないような厳しい溶接条件においても
安定した溶接が可能な良好なワイヤ送給性とコンジット
チューブを長持ちさせることを実現できる優れた効果を
奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】コンジットチューブ内表面に潤滑性複合合金を
コーティングする方法例を示す説明図、

【図２】ワイヤ送給抵抗とスリップ率の測定装置を示す
説明図、

【図３】屈曲負荷と送給抵抗の関係を示す図表、

【図４】送給抵抗とスリップ率の関係を示す図表であ
る。

【符号の説明】

１コンジットチューブ２コンジットチューブ入り側３コンジットチューブ出側４潤滑性複合合金ブロック５エアーコンプレッサー配管ホルダー６エアー抜きを備えたレシーバー７ワイヤ８スプール９送給ローラ１０ループ１１コンジットケーブル１２ロードセル（送給抵抗測定装置）１３溶接トーチ１４メジャリングローラ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者野口幸三東京都中央区築地三丁目５番４号日鐵溶接工業株式会社内 (72)発明者加藤興東京都中央区築地三丁目５番４号日鐵溶接工業株式会社内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】溶接機用コンジットケーブル内部のコン
ジットチューブにおいて、該コンジットチューブ内表面
に潤滑性複合合金をコーティングしたことを特徴とする
溶接機用コンジットチューブ。
【請求項２】コンジットチューブの内表面の潤滑性複
合合金は二硫化タングステンとステンレス鋼粉末の複合
焼結合金であることを特徴とする請求項１記載の溶接機
用コンジットチューブ。