JPH083346B2 - 差動装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、回転可能なハウジング内において、該ハウ
ジングとともに回転するように、自由回転可能な差動遊
星歯車の軸および該遊星歯車と係合するサイド歯車が設
けられており、前記サイド歯車が、前記ハウジングに対
して回転可能に軸受けされて、前記ハウジングに対して
回転可能な各々の軸とともに回転するようになっている
差動装置に関する。

このような差動装置は、通常、自動車に使用されて駆
動エンジンから２つの駆動輪に駆動力を伝える。この差
動装置のハウジングは、モーターによって駆動される差
動ピニオンと係合するクラウン歯車を有する。サイド歯
車は、駆動輪を支持している各々の出力軸に直接連結さ
れている。公知の差動装置は、駆動輪が地面と十分に摩
擦係合していないかぎり所望通り機能しないという問題
点を有する。一方の駆動輪が地面と十分な摩擦係合しな
い場合、他方の駆動輪の駆動能力は、それに応じて減少
し、前記一方の駆動輪が地面との摩擦係合を完全に失っ
たとき全面的に無くなる。この従来の差動装置は、いわ
ゆる第２次滑りと称される滑りを生じる。

該第２次滑りは、前述の両駆動輪が駆動能力を失ったと
き第１次滑りの後に生じる。前記第１次滑りの際、滑り
方向に先行する方の駆動輪は、索引方向にいくらかの摩
擦係合を有するが、他方の駆動輪は多かれ少なかれ地面
から上昇する。その時、差動装置は、最も駆動し易い駆
動輪、すなわち、上昇した方の駆動輪に駆動力の略全部
を伝え、該駆動輪に大きなエネルギーが蓄積される。

第１滑りが停止すると、駆動輪は再び地面と接触する
と同時に蓄積エネルギーが瞬時に地面に伝わり、その結
果、反対方向に急激に動く。比較的低速の第１次滑りと
異なり、第２次滑りは、より高速に生じ、しばしば重大
な結果をもたらす。

差動装置の出力軸に対する出力配分を制御する必要が
あるということがわかる。この点について、出力軸が強
く相互連結されているように、差動装置の出力配分機能
を遮断する差動ロックを使用するのが公知である。ま
た、この公知技術の長所および短所も公知である。さら
に、車輪のスピンが停止するまで駆動力を下げるいわゆ
る「アンチスピンシステム」が公知である。しかしなが
ら、駆動力を選択された駆動輪に伝えることができな
い。

本発明の目的は、２本の出力軸間に入力を完全自在に
配分することができ、すなわち、純粋な差動ロック機能
を軸が逆回転する機能にすることである。

この目的は、添付請求の範囲に記載した特徴を有する
本発明によって達成された。

本発明による差動装置は、基本的に、少なくとも１つ
の遊星歯車装置によって完成される通常の差動装置であ
る。より正確には、本発明による差動装置は、少なくと
も１つの出力歯車（サイド歯車）が遊星歯車装置の遊星
歯車ホルダーを支持していて、遊星歯車装置の太陽歯車
が前記サイド歯車の軸に対して自由回転可能に軸受けさ
れ、リング歯車が差動装置ハウジングに強固に連結され
ているものである。

本発明の第１実施例において、太陽歯車は、サイド歯
車の軸上に軸受けされた中空軸状の制御軸に連結され、
前記サイド歯車の軸が差動装置の一方の出力軸となって
いる。差動装置の制御は、制御軸および太陽歯車に前記
出力軸またはハウジングのものと異なる回転速度が与え
られることにより行なわれる。これは、前記制御軸が前
記ハウジングまたは出力軸に対して分離して駆動（能動
的制御）可能、または、制動（受動的制御）可能となっ
ていることにより達成される。

第２実施例において、太陽歯車は出力軸に連結され、
一方、サイド歯車の軸は、前記出力軸のまわりに軸受け
された中空軸状の制御軸である。このようにして、制御
は、制御軸、遊星歯車およびサイド歯車が出力軸と異な
る回転速度とされることによって行なわれる（前述のよ
うな能動的または受動的制御）。

両実施例において、制御軸を作動することによる差動
装置の制御は、出力軸間の回転速度差となる。制御軸の
差動なき場合は、完全に通常の差動装置として作用す
る。

ここで、添付図面を参照して本発明を説明する。第１
図は本発明の好ましい実施例による差動装置の軸方向断
面図、第２図は前記装置の略図、第３図は受動制御可能
な前記装置の略図、第４図は交互に受動制御可能な装置
の略図、第５図は能動制御可能な装置の略図、第６図は
第２実施例による装置の略図、第７図は２つの遊星歯車
装置を有する差動装置の略図、第８図は第７図による受
動制御可能差動装置の略図、第９図は第７図による能動
制御可能差動装置を示す図である。

第１図で示す実施例によると、組立部材（2,3,4）か
らなる差動装置ハウジング（１）には、複数の放射方向
軸［そのうち、２つの軸（5,6）を示す］が設けられて
いる。これらの軸は差動装置の各々の遊星歯車（7,8）
を自由回転可能に支持しており、該遊星歯車（7,8）は
差動装置の各々サイド歯車（9,10）と係合している。サ
イド歯車（9,10）は、ハウジング（１）に対して自由回
転可能となっており、スプラインを介して、ハウジング
（１）から延出し、該ハウジング（１）に対して回転可
能な軸（11,12）のそれぞれに回転不能に連結されてい
る。ハウジング（１）の部材（４）にはクラウン歯車
（図示せず）を取付けるためのフランジ（13）が設けら
れており、該クラウン歯車により、ハウジング（１）は
回転可能となっている。この差動装置は、基本的には、
歯車が永久的に噛合する点で従来のものと同じである。

放射方向軸を備えた差動遊星歯車を有する前述の差動
装置の代わりに、本発明は、軸方向軸を備えた差動遊星
歯車を有するその他の種類の差動装置にも適用すること
ができる。

本発明によると、差動装置の少なくとも１つのサイド
歯車は、遊星歯者用のホルダーとして機能するようにな
っている。第１図で示した実施例において、サイド歯車
（10）は、複数の遊星歯車「そのうち、軸（14,15）を
中心として自由回転可能となっている２つの遊星歯車
（16,17）を示す］用のホルダーである。さらに、本発
明によると、差動装置ハウジングは遊星歯車装置のリン
グ歯車に連結されている。第１図の実施例において、リ
ング歯車（18）は、ハウジング（１）の部材（４）中に
押圧されていて、ハウジング（１）とともに回転可能と
なっている。最後に、本発明によると、遊星歯車装置の
太陽歯車は、該当サイド歯車に連結された軸に対して回
転可能となっている。第１図の実施例において、遊星歯
車装置の太陽歯車（19）は、サイド歯車（10）の出力軸
（12）を中心として回転可能な中心軸（20）の端部に配
設されている。サイド歯車（10）に対して自由回転可能
な遊星歯車（16,17）は、リング歯車（18）および太陽
歯車（19）と係合している。

ハウジング（１）を回転し、軸（11,12）が等速度で
回転（例えば、自動車に使用される場合において前方に
真直ぐ駆動）する際、ハウジング（１）とともに回転す
る差動遊星歯車（7,8）は、同等回転速度で２つのサイ
ド歯車（9,10）を駆動する。リング歯車（18）は遊星歯
車（16,17）の軸（14,15）がサイド歯車（10）とともに
回転するのと同時にハウジング（１）の速度で回転する
ため、差動装置に対応する遊星歯車装置はなんらの効果
を有しない。従って、遊星歯車（16,17）自体は回転せ
ず、中空軸（20）は出力軸（12）の速度で回転し、この
差動装置は通常のもののように機能する。（カーブ走行
中の）軸（11,12）間の回転素度の差によって生じる相
対的回転は、軸（5,6）を中心とした遊星歯車（7,8）の
回転を生じさせるとともに遊星歯車（16,17）の回転生
じさせ、出力軸（12）に対する中空軸（20）の回転が生
じる。中空軸（20）は自由回転可能なため、差動装置は
依然として通常の差動装置と同様に機能する。

第１図の差動装置の主要構造は第２図において示され
ており、第２図において第１図と同一の参照符号を付
す。

本発明によると、制御軸として作用する中空軸（20）
の回転を制御することにより、差動装置を制御すること
ができる。この制御は、制御軸が駆動されている点で能
動的に、また、制御軸にブレーキがかけられている点で
受動的に行なうことができる。

これらの可能性は、以下、第３図から第５図までを参
照して説明する。これらの図面において、第１図および
第２図と同一の参照符号を用いる。

以上用いられた参照符号に加えて、（21）はハウジン
グ（１）に連結されたクラウン歯車を示し、（22）はク
ラウン歯車（21）を駆動するピニオンを示す。

差動装置の受動的制御は第３図に示される。この目的
のため、ブレーキディスク（23）が制御軸（20）上に配
設され、ブレーキディスク（23）と共働するブレーキ
（24）がハウジング（１）に連結されている。ブレーキ
（24）は、ブレーキディスク（23）のスリップを完全に
阻止し、差動ブレーキおよび差動ロックとして作用でき
るように設けられている。

差動装置のその他の受動的制御は第４図に示されてい
る。出力軸（12）上にはブレーキディスク（25）が配設
され、制御軸（20）上には前記ブレーキディスク（25）
と共働するブレーキ（26）が設けられており、軸（12,2
0）同士は多かれ少なかれ強固に連結可能となってい
る。

差動装置の能動的制御は第５図に示されている。ハウ
ジング（１）と制御軸（20）との間には、ハウジング
（１）と異なる回転速度を中空軸（20）に与えることの
できるモーター、この実施例においては油圧モーター
（27）が設けられている。駆動輪が軸（11,12）に取り
付けられた自動車にこの差動装置が設けられ、自動車が
真直ぐ運転される場合、制御軸（20）は、ハウジング
（１）および出力軸（12）と同じ回転速度で回転する。
カーブ運転する場合、制御軸（20）には、モーター（2
7）を介して、ハウジング（１）より速い、または遅い
回転速度が与えられる。このようなより速い回転速度に
より、出力軸（12）は軸（11）より高速で回転する。こ
の条件は、カーブの曲率に応じて駆動輪に異なった回転
速度を与えるために使用することができる。このような
プロセスの制御は、例えば運転ハンドル位置等に応じて
行なうことができる。差動ブレーキおよび差動ロック
は、油圧モーターの入力と出口との間に設けた制御バル
ブを介して機能するようになっている。

制御軸（20）の駆動は、歯車またはチェーンによる動
力伝送以外の多くの方法で行なわれる。

第６図には本発明による差動装置の第２実施例が示さ
れており、該実施例において、太陽歯車（19）は出力軸
（12）に連結され、中空軸（20）に同じ形をしたサイド
歯車（10）の軸は軸（12）のまわりに軸受けされてい
る。この実施例にあっても、第３図、第４図および第５
図を参照して説明した方法による受動的または能動的制
御を用いることができ、ブレーキまたは駆動モーター
は、制御軸として作用する中空軸（20）とハウジング
（１）との間に配設されている。

当業者によって明らかなように、両実施例において、
受動的制御および能動的制御、すなわち、ブレーキ掛け
および駆動は組み合わせ可能である。

本発明による差動装置には、２個の遊星歯車を設ける
ことができる。原理的には第１図および第２図の装置を
２つ用いることによって構成されるこのような差動装置
が、第７図に示されている。

第７図で示した装置において、出力軸（12）から遊星
歯車（7,8）に達する装置の右側部分は第２図の装置に
対応する。しかしながら、第７図の装置において、サイ
ド歯車（９）は、第２遊星歯車装置の遊星歯車用のホル
ダーとして機能する。第２遊星歯車装置に含まれるその
他の部品と同様に、これらの部品には、第１遊星歯車装
置における対応部品と同じ参照符号を有する。

前述のものと同様に、第７図に示す装置の制限も、受
動的または能動的なものとなり得る。差動ブレーキまた
は差動ロック機能を有するための受動的制御において、
１本または２本の制御軸、すなわち、中空軸（20,2
0′）は、第３図で示した方法でハウジング（１）に対
してブレーキ掛けされる。

第８図によると、ブレーキ掛けは、地面、例えば車台
（28）に連結されたブレーキ（29,29′）に対して行な
われる。中空軸（20,20′）の等しいブレーキ掛けは駆
動ブレーキ機能を伴ない、一方、等しくないブレーキ掛
けは曲がりを行なう。

実際上、第７図装置の能動的制御は、制御軸（20,2
0）のうちの一方のみを駆動することによって行なわれ
る。特に、軌道車輌等において小さい曲がり半径で曲が
るとき受動的制御に対する補足として考えられるこの制
御状態は、第９図で示され、原則的に第５図と第８図と
で示す装置の組み合わせである。ハウジング（１）と中
空軸（20）との間において、ブレーキ（23,29）の内側
には油圧モーター（27）が設けられている。

本発明による差動装置を能動的に制御する際、すなわ
ち、制御軸を駆動する際、車輌の回転は、駆動伝送が行
なわれておらず、すなわち、ハウジングが停止している
ときに、駆動輪の中心または駆動軌道のまわりで行なわ
れる。

本発明の差動装置の特徴は、制御軸の能動的または受
動的制御が２つの出力軸の合計回転速度に影響を与えな
いということである。

能動的制御、すなわち、制御軸の駆動を行なうための
実用的な方法は、差動装置の外側にもう１つの遊星歯車
装置を設け、遊星歯車装置のハウジングを差動装置ハウ
ジングによって駆動させ、遊星歯車ホルダーを制御軸に
よって駆動させ、差動装置の出力軸が同一の回転速度を
有するときに前記もう１つの遊星歯車装置の太陽歯車が
停止するような歯車比が選ばれる。これは、差動装置の
制御を直接手で行なうため、制御レバーまたは制御歯車
が前記もう１つの遊星歯車装置の通常停止太陽歯車軸に
取り付け可能であることを意味する。

当業者にとって明らかなように、本発明による差動装
置は多くの方法で実現可能である。さらに、特別の機能
が得られるように、本発明による差動装置の数個を組み
合わせることもできる。

例えば、４輪駆動車の場合、第５図で示した差動装置
を各一対の駆動輪に設けることができ、また、各対間に
第３の差動装置を設けることができる。その際車輌の駆
動モーターは中間差動装置のハウジングを駆動し、中間
差動装置の出力軸は駆動輪歯車の各ハウジングを駆動
し、一方、駆動輪歯車の出力軸は駆動輪を支持する。こ
のような構成により、各々の駆動輪に関する分離した制
御が可能となり、さらに、前、後車輌間の力配分に関す
る分離した制御が可能となる。第５図で示した差動装置
の、実際は入力軸である出力軸の各々に連結されている
２つの駆動モーターにより、前記ハウジングは前記モー
ターに共通な出力軸を駆動する。第５図で示した差動装
置のハウジングを駆動する１つのモーターにより、角度
駆動歯車を介して出力軸に連結されたプロペラは分離制
御可能となる。

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転可能なハウジング（１）を有し、該ハ
   ウジング（１）内において該ハウジングとともに回転す
   るように、自由回転可能な差動遊星歯車（7,8）の軸
   （5,6）と該差動遊星歯車と係合するサイド歯車（9,1
   0）とが設けられており、前記サイド歯車が、前記ハウ
   ジング（１）に対して回転可能に軸受けされ、前記ハウ
   ジング（１）に対して回転可能な各々の軸（11,12:11,2
   0）と回転不能に連結されている差動装置において、 前記ハウジング（１）が遊星歯車装置のリング歯車（1
   8）に強固に連結されており、 前記サイド歯車のうちの少なくとも一方（10）が、遊星
   歯車装置の遊星歯車（16,17）を支持している軸（14,1
   5）を固定するためのホルダーとなっており、 前記遊星歯車装置の太陽歯車（19）が、前記一方のサイ
   ド歯車（10）に連結された軸（11,20）に対して回転可
   能となっていることを特徴とする差動装置。
2. 【請求項２】前記太陽歯車（19）は前記一方のサイド歯
   車（10）に連結された軸（12）のまわりで回転可能であ
   り、前記軸が出力軸であり、前記太陽歯車は、前記軸
   （12）の回転運動が伝わるように差動可能となっている
   ことを特徴とする請求の範囲第１項記載の差動装置。
3. 【請求項３】前記太陽歯車（19）が出力軸（12）に回転
   不能に連結されており、サイド歯車（10）は前記軸（1
   2）の回転運動が伝わるように作動可能となっているこ
   とを特徴とする請求の範囲第１項記載の差動装置。
4. 【請求項４】前記太陽歯車（10）は、前記ハウジング
   （１）、または、前記サイド歯車（10）に連結された軸
   （12）に対して制動可能となっていることを特徴とする
   請求の範囲第１項または第２項記載の差動装置。
5. 【請求項５】前記太陽歯車（19）は、前記ハウジング
   （１）のものと異なる回転速度を受けるように駆動可能
   となっていることを特徴とする請求の範囲第１項、第２
   項または第４項記載の差動装置。
6. 【請求項６】前記太陽歯車（19）は前記出力軸（12）の
   まわりに配設され中空軸（20）に連結されていて、前記
   中空軸（20）は差動装置の制御軸を構成していることを
   特徴とする請求の範囲第２項、第４項または第５項記載
   の差動装置。
7. 【請求項７】前記サイド歯車（10）は、前記ハウジング
   （１）、または、前記サイド歯車（10）に連結された軸
   （12）に対して制動可能となっていることを特徴とする
   請求の範囲第１項または第３項記載の差動装置。
8. 【請求項８】前記サイド歯車（10）は、前記ハウジング
   （１）のものと異なる回転速度を受けるように駆動可能
   となっていることを特徴とする請求の範囲第１項、第３
   項または第７項記載の差動装置。
9. 【請求項９】前記サイド歯車（10）は中空軸（20）に連
   結され、該中空軸（20）は、差動装置の制御軸であり、
   前記出力軸（12）を貫通させていることを特徴とする請
   求の範囲第３項、第７項または第８項記載の差動装置。