JPH08332562A - 摺動用部材の製造方法 - Google Patents

摺動用部材の製造方法

Info

Publication number
JPH08332562A
JPH08332562A JP14174095A JP14174095A JPH08332562A JP H08332562 A JPH08332562 A JP H08332562A JP 14174095 A JP14174095 A JP 14174095A JP 14174095 A JP14174095 A JP 14174095A JP H08332562 A JPH08332562 A JP H08332562A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum
powder
solid lubricant
sliding member
based metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP14174095A
Other languages
English (en)
Inventor
Koji Saito
浩二 斉藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP14174095A priority Critical patent/JPH08332562A/ja
Publication of JPH08332562A publication Critical patent/JPH08332562A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】鉄基金属をマトリックスとし固体潤滑剤を含む
摺動用部材を、固体潤滑剤の分解を防止しつつ製造す
る。 【構成】摺動用部材の製造方法であって、鉄基金属粉末
と金属又はセラミックスで被覆された被覆層をもつ固体
潤滑剤との混合粉末を成形して焼結し、焼結体の空孔に
Al基金属を含浸して摺動用部材を形成する。被覆層に
より固体潤滑剤の分解及び脱落が防止される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関のピストンリ
ング溝などに用いられる摺動用部材の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年のエンジン燃焼温度の上昇やピスト
ンリングの硬度の上昇に伴い、ピストンリング溝の摩耗
対策が種々講じられている。例えばアルミニウム基金属
にアルミナ−シリカ繊維を複合化したAl基MMC材料
が知られ、それをピストントップリング溝に用いた例が
知られている(特開昭58−93835号公報など)。
【0003】また特開平6−264079号公報には、
炭素質粉末と、表面をAu,Pt,Agなどの金属で被
覆した固体潤滑剤と、アルミニウム基金属とからなる摺
動材料が開示されている。この摺動材料によれば、特定
の金属を被覆した固体潤滑剤を用いているので、固体潤
滑剤とアルミニウム基金属との反応が防止され長寿命と
することができる。
【0004】しかし上記のAl基MMC材料を用いたデ
ィーゼルエンジン用ピストントップリング溝では、近年
のディーゼルエンジンの出力向上とそれに伴うピストン
リング溝部の温度上昇により、ピストンリングとの間に
凝着(以下、アルミ凝着という)の発生が懸念される。
また特開平6−264079号公報に開示の摺動材料に
おいても、アルミニウムマトリックスであるためピスト
ンリング溝用としては耐熱性が十分でなく、強度も十分
とはいえない。
【0005】そこでアルミニウム基金属を鉄基金属に置
換することが想起され、従来よりニレジスト鋳鉄にてピ
ストンリング溝部を形成することが行われている。この
ようにすればアルミ凝着を効果的に防止することができ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが鉄基金属が多
くなるにつれて硬度が著しく上昇し、機械加工性が著し
く低下する。そこで固体潤滑剤を添加し、機械加工時の
刃具と材料の間の切削抵抗を下げることが考えられる。
しかし鉄基金属粉末を多く含む混合粉末を焼結するには
1000〜1200℃の温度が必要であるため、焼結時
に固体潤滑剤が分解するという問題がある。特開平6−
264079号公報に開示のような金属で被覆された固
体潤滑剤粉末であっても、800℃までは保護され得る
が1000℃以上の焼結温度では保護されず分解が生じ
てしまう。
【0007】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、鉄基金属をマトリックスとし固体潤滑剤を
含む摺動用部材を、固体潤滑剤の分解を防止しつつ製造
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する第1
発明の摺動用部材の製造方法は、鉄基金属粉末と金属又
はセラミックスで被覆された被覆層をもつ固体潤滑剤と
の混合粉末を成形して成形体とする成形工程と、成形体
を焼結して内部に空孔をもつ焼結体とする焼結工程と、
焼結体の空孔にアルミニウム基金属を含浸する含浸工程
と、よりなることを特徴とする。
【0009】また第3発明の摺動用部材の製造方法は、
鉄基金属粉末と金属又はセラミックスで被覆された被覆
層をもつ固体潤滑剤とアルミニウム又はアルミニウム合
金の粉末とが混合された混合粉末を素材に溶射して形成
することを特徴とする。そして得られた摺動用部材の組
成は、体積比で鉄基金属が40〜70%、固体潤滑剤が
1〜20%及びアルミニウム基金属が10〜50%の構
成とすることが望ましい。
【0010】
【作用】第1発明の製造方法では、成形体中に含まれる
固体潤滑剤には金属又はセラミックスからなる被覆層が
形成されている。したがってマトリックスとの密着強度
が向上し、かつ焼結工程において1000〜1200℃
に加熱されても、またアルミニウム基金属の含浸時に8
00〜850℃程度に加熱されても、被覆層の存在によ
り固体潤滑剤の分解が防止されている。
【0011】そして例えばアルミニウム基金属製母材の
製造時には、焼結体をインサートとして母材が形成され
る。この時、焼結体に形成された空孔に母材を構成する
アルミニウム基金属が含浸され、その投錨効果により母
材と焼結体とは一体的に結合して母材表面に摺動部が形
成される。したがって得られた摺動用部材では、鉄基金
属がマトリックスを構成しアルミニウム基金属の体積率
が従来より減少しているので、アルミ凝着の発生が防止
される。また固体潤滑剤の存在により切削抵抗が小さい
ので、機械加工性が良好である。
【0012】また第3発明の製造方法では、鉄基金属粉
末と固体潤滑剤とアルミニウム又はアルミニウム合金の
粉末との混合粉末を溶射することにより摺動部が製造さ
れる。溶射の場合には短時間ではあるが固体潤滑剤は1
000〜1500℃の高温に曝される。しかし被覆層の
存在により固体潤滑剤の分解が防止されている。そして
第1発明又は第3発明により形成された摺動用部材の組
成が、体積比で鉄基金属が40〜70%、固体潤滑剤が
1〜20%及びアルミニウム基金属が10〜50%であ
れば、アルミニウム基金属の体積率は従来より小さくア
ルミ凝着が防止され、かつ固体潤滑剤の存在により機械
加工性に優れている。
【0013】
【実施例】
〔発明の具体例〕鉄基金属材料としては炭素鋼、工具
鋼、軸受鋼、耐熱鋼などの鉄又は鉄系合金から選ばれ、
摺動部中には40〜70体積%の範囲で含まれることが
望ましい。40体積%より少ないと硬度が低くなって相
手部材との摺動時に表層部で塑性流動が発生しやすくな
り、表面の酸化膜が破壊されて新生面が露出するため相
手部材との間にアルミ凝着が発生しやすくなる。また7
0体積%より多くなると、固体潤滑剤を配合しても従来
のAl基MMC材料に比べて切削性が低下する。
【0014】アルミニウム基金属材料としては、アルミ
ニウム又はアルミニウム系合金から選ばれ、摺動部中に
は10〜50体積%の範囲で含まれることが望ましい。
アルミニウム基金属が50体積%より多くなると、表層
部で塑性流動が発生しやすくなり、表面の酸化膜が破壊
されて新生面が露出するため相手部材との間にアルミ凝
着が発生するようになる。
【0015】また10体積%より少ないと、第1発明に
おいて空孔に含浸するアルミニウム基金属の含浸量が少
ないために焼結体との界面強度が低くなる。これはアル
ミニウム基の基材と組合せて用いる場合、基材と焼結体
との熱膨張係数の差によるものであるが、この差を小さ
くして界面強度を高く維持するには10体積%以上の含
浸が必要となる。また第3発明では、アルミニウム基金
属が10体積%未満になると、アルミニウム基の基材を
用いた場合に、熱膨張係数の差により基材と溶射層との
間に界面剥離が生じる。さらに溶射時の付着効率が極端
に低下し、量産性も低下する。
【0016】固体潤滑剤としては、MoS2 ,WS2
BNなどが用いられる。この固体潤滑剤は、摺動部に1
〜20体積%の範囲で用いられる。1体積%未満である
と切削抵抗の低減が困難となり、20体積%より多く用
いると強度の低下やマトリックスからの固体潤滑剤の脱
落が生じる。なお10体積%以上とすれば、相手材への
固体潤滑膜の移着が生じて高い摺動性能が得られるの
で、10〜20体積%とするのが望ましい。
【0017】被覆層としては、Fe,Mo,Cuなどの
金属のコーティング膜、TiN,CrNなどのセラミッ
クスのコーティング膜、Ni−P,Ni−Bなどのメッ
キ膜とすることができる。その膜厚は5〜20μmが望
ましい。5μm未満では膜厚が不均一となる傾向があ
り、薄い部分で固体潤滑剤が熱により分解する恐れがあ
る。また20μmより厚くすると、被覆層にクラックが
発生する場合があるとともにコーティング時間が長くな
るため好ましくない。なお、コーティング方法としては
スパッタリングや蒸着などのPVD処理法、無電解メッ
キ法など公知の方法を利用できる。 〔実施例〕以下、実施例により具体的に説明する。 (実施例1)先ずMoS2 粉末表面に、スパッタリング
法にてFeからなる被覆層を形成した。被覆層の膜厚は
5μmである。
【0018】次にFe−1%Cの高炭素鋼粉末と、上記
被覆層が形成されたMoS2 粉末を体積比で49:1と
なるように混合し、型に詰め加圧して成形体を得た。そ
して成形体を加圧下で800〜1200℃に加熱し、多
孔質の焼結体を製造した。この焼結体を鋳型の所定部位
に配置し、600〜800℃のアルミニウム合金(AC
8A)の溶湯を高圧鋳造した。鋳造時に溶湯は焼結体の
空孔内に含浸され、焼結体が母材と一体的に結合された
所定形状の試験片が得られた。
【0019】試験片の摺動部の材料組成は、鉄基金属と
固体潤滑剤及びアルミニウム基金属が体積比で49:
1:50の比率となっている。次に、この試験片を用い
て加工性及び耐アルミ凝着性の評価を行った。加工性の
評価は、外径90mmの円柱の外周部に筒状の焼結体が
一体化された形状の試験片を用い、切削により評価し
た。切削チップは「BN−100」(住友電工(株)
製)を用い、切削速度100〜200m/min、切込
み0.04mm/revの加工条件で加工した。そして
切削動力計により主分力、送分力及び背分力を測定し、
二乗和の平方根を算出して合成力を求めることで切削抵
抗を算出した。そして各切削速度における切削抵抗を算
出し、その平均値を求めて結果を表3に示す。
【0020】耐アルミ凝着性の評価には、リングオンプ
レートタイプの試験機(叩き−すべり)を使用し、プレ
ート形状の試験片と相手材のリング(SUS430相当
材に窒化処理を施し表面硬度Hv1000以上のもの)
と表1の条件で摺動させてアルミ凝着の有無を調べた。
結果を表3に示す。
【0021】
【表1】 (実施例2〜4)高炭素鋼粉末とMoS2 粉末の配合量
及びAC8Aの含浸量を表3に示すように異ならせたこ
と以外は実施例1と同様にして試験片を製造し、同様に
して切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し結果を表3に
示す。 (実施例5〜6)被覆層をMoのスパッタリングにて形
成し、高炭素鋼粉末とMoS2 粉末の配合量及びAC8
Aの含浸量を表3に示すように異ならせたこと以外は実
施例1と同様にして試験片を製造し、同様にして切削抵
抗とアルミ凝着の有無を測定し結果を表3に示す。 (実施例7)MoS2 の代わりにBN粉末を用い、高炭
素鋼粉末の代わりに軸受鋼(SUJ2)粉末を用いて、
鉄基金属と固体潤滑剤及びアルミニウム基金属を体積比
で40:10:50の比率としたこと以外は実施例1と
同様にして試験片を製造し、同様にして切削抵抗とアル
ミ凝着の有無を測定し結果を表3に示す。 (実施例8)工具鋼(SKD11)粉末と、PVD処理
法によりTiNが5μmの厚さで形成された被覆層をも
つWS2 粉末及びAl−Si合金粉末とを、体積比で7
0:20:10となるように混合して混合粉末を調製し
た。
【0022】次にAC8Aよりなる試験片の溶射する部
位をショットブラストにより清浄化した後、METOC
O社製のプラズマ溶射装置を用いて表2に示す条件で上
記混合粉末を溶射して溶射層をもつ試験片を形成した。
【0023】
【表2】 得られた試験片について実施例1と同様にして切削抵抗
とアルミ凝着の有無を測定し、結果を表3に示す。 (実施例9〜11)溶射層の工具鋼粉末とWS2 及びA
l−Si合金粉末の組成比を表3に示すように異ならせ
たこと以外は実施例8と同様にして試験片を製造し、実
施例1と同様にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定
し結果を表3に示す。 (実施例12)先ずWS2 粉末表面に、PVD処理法に
てCrNからなる被覆層を形成した。被覆層の膜厚は5
μmである。
【0024】次に工具鋼(SKD11)粉末と、上記被
覆層が形成されたWS2 粉末を体積比で45:5となる
ように混合し、型に詰め加圧して成形体を得た。この成
形体を用いて実施例1と同様にして試験片を製造し、同
様にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し結果を表
3に示す。 (実施例13〜14)工具鋼(SKD61)粉末と、無
電解メッキによりNi−Pが10μm及び20μmの厚
さでそれぞれ形成された被覆層をもつMoS2 粉末及び
Al−Si合金粉末を、表3に示す比率で混合して混合
粉末を調製した。そして実施例8と同様にして溶射層を
もつ試験片を形成し、実施例1と同様にして切削抵抗と
アルミ凝着の有無を測定し、結果を表3に示す。 (実施例15〜16)工具鋼(SKD61)粉末と、無
電解メッキによりNi−Bが5μm及び10μmの厚さ
でそれぞれ形成された被覆層をもつMoS2 粉末及びA
l−Si合金粉末を、表3に示す比率で混合して混合粉
末を調製した。そして実施例8と同様にして溶射層をも
つ試験片を形成し、実施例1と同様にして切削抵抗とア
ルミ凝着の有無を測定し、結果を表3に示す。 (比較例1)先ずMoS2 粉末表面に、スパッタリング
にてCuからなる被覆層を形成した。被覆層の膜厚は5
μmである。
【0025】次に工具鋼(SKD61)粉末と、上記被
覆層が形成されたMoS2 粉末を体積比で49.5:
0.5となるように混合し、型に詰め加圧して成形体を
得た。この成形体を用いて実施例1と同様にして試験片
を製造し、同様にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測
定し結果を表3に示す。試験片の摺動部は、工具鋼とM
oS2 とACA8とが体積比で49.5:0.5:50
の比率で構成されている。 (比較例2〜3)工具鋼(SKD61)粉末とMoS2
粉末の配合量及びAC8Aの含浸量を表3に示すように
異ならせたこと以外は実施例1と同様にして試験片を製
造し、同様にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し
結果を表3に示す。 (比較例4〜6)被覆層をFeのスパッタリングにて形
成し、工具鋼(SKD61)粉末とMoS2 粉末の配合
量及びAC8Aの含浸量を表3に示すように異ならせた
こと以外は実施例1と同様にして試験片を製造し、同様
にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し結果を表3
に示す。 (比較例7〜8)工具鋼(SKD61)粉末と、スパッ
タリングによりMoが3μm及び25μmの厚さでそれ
ぞれ形成された被覆層をもつMoS2 粉末及びAl−S
i合金粉末を、表3に示す体積比で混合して混合粉末を
調製した。
【0026】この混合粉末を用い、実施例8と同様に溶
射して溶射層をもつ試験片を形成した。得られた試験片
について実施例1と同様にして切削抵抗とアルミ凝着の
有無を測定し、結果を表3に示す。 (比較例9)工具鋼(SKD61)粉末と、被覆層をも
たないMoS2 粉末及びAl−Si合金粉末を体積比で
50:10:40の比率で混合した混合粉末を用い、実
施例8と同様にして溶射層をもつ試験片を形成した。得
られた試験片について実施例1と同様にして切削抵抗と
アルミ凝着の有無を測定し、結果を表3に示す。 (参考例1〜2)被覆層をもたないBN粉末と軸受鋼
(SUJ2)粉末を用いて実施例1と同様に試験片を形
成し、同様にして切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し
結果を表3に示す。 (参考例3〜4)ニレジスト鋳鉄と、アルミニウム基金
属にアルミナ−シリカ繊維を複合化したAl基MMC材
料についてそれぞれ試験片を形成し、実施例1と同様に
して切削抵抗とアルミ凝着の有無を測定し、結果を表3
に示す。
【0027】
【表3】 (*印は面荒れが大きいことを示す)
【0028】(評価)表3より、本発明の製造方法によ
り得られた摺動用部材は、切削抵抗が低くアルミ凝着発
生も認められないことから、加工性及び耐アルミ凝着性
の両性能に優れていることが明らかである。
【0029】なお、参考例1〜2のように高温まで安定
した性能をもつBNなどの固体潤滑剤を用いると、被覆
層がなくても良好な性能を示し被覆層の作用効果は明ら
かではない。しかし比較例9と実施例13〜16を比較
すれば、MoS2 などの固体潤滑剤を用いた摺動用部材
は被覆層の存在により加工性及び耐アルミ凝着性が向上
していることが明らかである。
【0030】比較例1のように固体潤滑剤が1体積%未
満では、切削抵抗が高く、相手材への固体潤滑剤の移着
が生じにくいことから耐アルミ凝着性にも劣っている。
一方、比較例2のように固体潤滑剤が20体積%を越え
ると、摺動部材体積中の固体潤滑剤の割合が多くなるた
め保持力が低下し、固体潤滑剤自体の脱落が生じて面荒
れが発生するとともに切削抵抗も高くなっている。
【0031】比較例3のように鉄基金属が40体積%未
満では、塑性流動が防止できずアルミ凝着が発生してい
る。また比較例4のように70体積%を越えると、固体
潤滑剤による切削性の改良が認められなくなる。比較例
5のようにAl基金属が10体積%未満では、焼結層又
は溶射層と母材との界面でクラックが発生しやすく、ま
た鉄基金属が多くなる分切削抵抗も高くなっている。一
方、比較例6のようにAl基金属が50体積%を越える
と、鉄基金属がAl基金属を保持できず塑性流動が発生
しアルミ凝着が発生している。
【0032】また、実施例2と比較例7〜8との比較よ
り、被覆層の厚さが3μmと薄くなっても25μmと厚
くなり過ぎても切削抵抗が高くなっていることがわか
る。さらに参考例3〜4に示すように、従来の材料であ
るニレジスト鋳鉄は良好な耐アルミ凝着性を示すが切削
抵抗が高く、Al基MMC材料は切削抵抗は低いものの
使用環境が厳しい場合にはアルミ凝着が発生している。 (実施例17)エンジン用ピストンのピストンリング溝
に本発明の摺動用部材を適用した例を以下に示す。
【0033】先ずMoS2 粉末表面に、スパッタリング
法にてFeからなる被覆層を形成した。被覆層の膜厚は
5μmである。次にFe−1%Cの高炭素鋼粉末と、上
記被覆層が形成されたMoS2 粉末を体積比で50:2
0となるように混合し、型に詰め加圧してピストンリン
グ溝形状の成形体を得た。
【0034】そして成形体を加圧下で800〜1200
℃に加熱し、多孔質の焼結体を製造した。この焼結体を
鋳型の所定部位に配置し、600〜800℃のアルミニ
ウム合金(AC8A)の溶湯を高圧鋳造してピストンリ
ングを製造した。鋳造時に溶湯は焼結体の空孔内に含浸
され、焼結体がピストンリング溝部に一体的に結合され
た所定形状のピストンリングが得られた。
【0035】ピストンリング溝部の材料組成は、鉄基金
属と固体潤滑剤及びアルミニウム基金属が体積比で5
0:20:30の比率であり、前記実施例3と同様の構
成となっている。 (実施例18)Fe−1%Cの高炭素鋼粉末と、スパッ
タリングによりFeが5μmの厚さで形成された被覆層
をもつMoS2 粉末及びAl−Si合金粉末とを、体積
比で50:20:30となるように混合して混合粉末を
調製した。
【0036】次にAC8Aよりなるピストンリングのピ
ストンリング溝部をショットブラストにより清浄化した
後、METOCO社製のプラズマ溶射装置を用いて表2
に示す条件で上記混合粉末を溶射して、ピストンリング
溝部に溶射層を形成した。溶射層は、鉄基金属と固体潤
滑剤及びアルミニウム基金属が体積比で50:20:3
0の比率であり、前記実施例3と同様の構成となってい
る。 (比較例10)従来のニレジスト鋳鉄により形成された
ピストンリング溝部をもつAC8A製ピストンを形成し
た。 (試験)上記の各ピストンをそれぞれ実施例1と同様に
して切削加工し、切削抵抗を測定した。結果を表5に示
す。またそれぞれ実機に取付け、表4に示す試験条件で
アルミ凝着の発生の有無とピストンリング溝部の摩耗深
さを測定した。結果を表5に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】 表5より、本発明の摺動用部材はニレジスト鋳鉄と同様
にアルミ凝着の発生がなく、かつニレジスト鋳鉄に比べ
て切削抵抗が低く、摩耗量も少ないことが明らかであ
る。
【0039】
【発明の効果】すなわち本発明の摺動用部材の製造方法
によれば、固体潤滑剤の分解及び脱落が防止されている
ので、鉄基金属を用いて機械加工性に優れ、かつ耐アル
ミ凝着性に優れた摺動用部材を容易にしかも確実に製造
することができる。すなわち本発明により得られた摺動
用部材は、耐摩耗性に優れると同時に切削性、潤滑性に
極めて優れている。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄基金属粉末と金属又はセラミックスで
    被覆された被覆層をもつ固体潤滑剤との混合粉末を成形
    して成形体とする成形工程と、 該成形体を焼結して内部に空孔をもつ焼結体とする焼結
    工程と、 該焼結体の該空孔にアルミニウム基金属を含浸する含浸
    工程と、よりなることを特徴とする摺動用部材の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記摺動用部材は、体積比で前記鉄基金
    属が40〜70%、前記固体潤滑剤が1〜20%及び前
    記アルミニウム基金属が10〜50%の構成であること
    を特徴とする請求項1記載の摺動用部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 鉄基金属粉末と、金属又はセラミックス
    で被覆された被覆層をもつ固体潤滑剤と、アルミニウム
    又はアルミニウム合金の粉末とが混合された混合粉末を
    素材に溶射して形成することを特徴とする摺動用部材の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記摺動用部材は、体積比で前記鉄基金
    属が40〜70%、前記固体潤滑剤が1〜20%及び前
    記アルミニウム基金属が10〜50%の構成であること
    を特徴とする請求項3記載の摺動用部材の製造方法。
JP14174095A 1995-06-08 1995-06-08 摺動用部材の製造方法 Pending JPH08332562A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14174095A JPH08332562A (ja) 1995-06-08 1995-06-08 摺動用部材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14174095A JPH08332562A (ja) 1995-06-08 1995-06-08 摺動用部材の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08332562A true JPH08332562A (ja) 1996-12-17

Family

ID=15299107

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP14174095A Pending JPH08332562A (ja) 1995-06-08 1995-06-08 摺動用部材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08332562A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7877203B2 (en) * 2005-02-08 2011-01-25 Mitsubishi Electric Corporation Map information processing apparatus and storage medium of map information
WO2016043284A1 (ja) * 2014-09-19 2016-03-24 Ntn株式会社 摺動部材およびその製造方法
JP2016065638A (ja) * 2014-09-24 2016-04-28 Ntn株式会社 摺動部材およびその製造方法
CN106687236A (zh) * 2014-09-19 2017-05-17 Ntn株式会社 滑动部件及其制造方法
CN109790869A (zh) * 2016-09-28 2019-05-21 Ntn株式会社 滑动构件
JP2019218606A (ja) * 2018-06-20 2019-12-26 大阪富士工業株式会社 自己潤滑複合材

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7877203B2 (en) * 2005-02-08 2011-01-25 Mitsubishi Electric Corporation Map information processing apparatus and storage medium of map information
WO2016043284A1 (ja) * 2014-09-19 2016-03-24 Ntn株式会社 摺動部材およびその製造方法
CN106687236A (zh) * 2014-09-19 2017-05-17 Ntn株式会社 滑动部件及其制造方法
CN106687236B (zh) * 2014-09-19 2019-05-14 Ntn株式会社 滑动部件及其制造方法
US10323689B2 (en) 2014-09-19 2019-06-18 Ntn Corporation Slide member and method for producing same
JP2016065638A (ja) * 2014-09-24 2016-04-28 Ntn株式会社 摺動部材およびその製造方法
CN109790869A (zh) * 2016-09-28 2019-05-21 Ntn株式会社 滑动构件
JP2019218606A (ja) * 2018-06-20 2019-12-26 大阪富士工業株式会社 自己潤滑複合材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2417167C (en) Porous metal article, metal composite material using the article and method for production thereof
US4029000A (en) Injection pump for injecting molten metal
KR20040066937A (ko) 소결 부품을 제조하기 위한 소결성 금속 분말 혼합물
JP6386676B2 (ja) 焼結バルブシート
EP2511388B1 (en) Sintered sliding member
JPH08332562A (ja) 摺動用部材の製造方法
JP2007314839A (ja) ピストンリング用溶射皮膜及びそのピストンリング
JP2003013163A (ja) 粉末アルミニウム合金製摺動部材及びシリンダとピストンリングの組み合わせ
EP3825442A1 (en) Sliding member
JP2012509993A (ja) 軸受材料
JPH09111365A (ja) 摺動用材料、ピストン及びその製造方法
JP3368178B2 (ja) 非鉄金属溶湯用複合焼結合金の製造方法
JP3942136B2 (ja) 鉄基焼結合金
JPH11107848A (ja) 粉末アルミ合金製シリンダーライナ
JPH06192784A (ja) 耐摩耗性焼結摺動部材
JPH10299568A (ja) シリンダーライナー
JP3749618B2 (ja) 潤滑油存在下での耐摩耗性に優れる摺動部材
JPH10140265A (ja) 耐摩耗性複合材料
JPH0543963A (ja) 自己潤滑性アルミニウム複合材料
JP2003105518A (ja) 内燃機関用摺動部材およびその形成方法
JPH04339A (ja) 高温で耐摩耗性に優れた銅基焼結合金
JPH0456101B2 (ja)
JPH04335A (ja) 高温で耐摩耗性に優れた銅基焼結合金
JP3230140B2 (ja) チップ材が高い接合強度を有する内燃機関タペット部材
JPH0649929B2 (ja) 耐摩耗性に優れた摺接部材の製造方法