JP2016065638A - 摺動部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストであり、苛酷環境下で使用する場合でも安定した潤滑性能を維持できる焼結軸受を提供する。【解決手段】金属粉を主成分とする原料粉を成形して金属粉成形体3'を形成し、これを焼結して金属母材3を形成する。また、黒鉛粒子13の集合体で潤滑部材4を形成し、軸受面11の少なくとも一部を潤滑部材4で構成する。潤滑部材4を金属粉成形体3'に嵌合してから金属粉成形体3'を焼結させ、その際に金属粉成形体3'に生じる収縮力Fで潤滑部材4を金属母材3に固定する。【選択図】図1
Description
本発明は、摺動部材およびその製造方法に関する。
摺動部材の一種である焼結軸受は、粉末冶金法により製造された多孔質の金属体内に潤滑油を含浸させたものである。軸受内部の空孔に保持された潤滑油は、軸の回転に伴うポンプ作用や発熱により、軸受内部から摺動面である軸受面に滲み出し、軸受面に潤滑油膜を形成する構成になっている(例えば特許文献1)。
近年では、高面圧や高温といった苛酷条件下でも使用可能な焼結軸受の提供が望まれている。しかしながら、既存の焼結軸受は、高面圧下では潤滑油膜の破断による金属接触が起こり易く、また高温下では潤滑油が早期に劣化し易い。そのため、安定した潤滑性を得ることが難しいという問題がある。そのため特許文献1では、焼結軸受に含浸させる潤滑油の組成や特性を改良することで、潤滑油膜強度を高めて高面圧下でも使用可能にする提案がなされているが、潤滑機能を潤滑油が主体となって担う限り、苛酷条件下での使用には限界がある。また、特許文献1のように潤滑油を含浸させた焼結軸受は、潤滑油の混入を嫌う環境下では使用できない点も問題となる。
その一方で、特許文献1に記載されたような焼結軸受では、軸受面の潤滑性を補完するため、黒鉛等の固体潤滑剤を金属粉に配合するのが通例である。しかしながら、潤滑性を増すために固体潤滑剤粉の配合量を増やしすぎると、金属粒子間の結合を阻害して材料強度の低下を招く等の問題があるため、固体潤滑剤粉の増量には限界がある。
そこで、本発明は、低コストであり、苛酷環境等の特殊環境下で使用する場合も安定した潤滑性能を維持できる摺動部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、相手側の部材と摺動する摺動面を有する摺動部材であって、金属粉を主成分とする原料粉を焼結させてなる金属母材と、固体潤滑剤粒子の集合体からなる潤滑部材とを備え、前記摺動面の少なくとも一部を潤滑部材で構成し、かつ前記原料粉を焼結させる焼結操作で潤滑部材を金属母材に固定したことを特徴とするものである。
かかる構成では、摺動面の少なくとも一部に形成された潤滑部材が固体潤滑剤の供給源となる。潤滑部材から供給された固体潤滑剤は相手側の部材との相対的な摺動によって摺動面全体に行き渡るため、摺動面全体で潤滑効果を得ることができる。また、摺動部材においては、必ずしも摺動面の全体に対して相手側の部材が摺動するとは限らず、摺動面の限定された一部領域が相手側の部材と摺動する場合もある。その場合、相手側の部材との摺動領域に潤滑部材が位置するように潤滑部材の位置や形状を設計し、あるいはその摺動領域に潤滑部材が位置するように摺動部材の設置姿勢を調整することで、相手側の部材を常時潤滑部材に対して摺動させることが可能となる。また、摺動面に現れる潤滑部材の面積を増やせば潤滑効果を高めることができる。その場合でも、従来品のように、金属粒子間の結合力が低下することはないので、摺動部材の強度低下を回避することができる。
その一方で、このように摺動面の一部領域に限って潤滑部材を配置する場合、潤滑部材を如何にしてベースとなる金属母材に固定するのかが問題となる。これに対し、本発明では金属母材を焼結させる際の焼結操作で潤滑部材を金属母材に固定する、との新たな技術手段を採用している。摺動部材の製造過程で不可欠の焼結操作で潤滑部材を金属母材に固定すれば、圧入や接着といった焼結金属の本来の製造工程とは無関係の工程で固定作業を行う必要がなくなる。そのため、摺動部材のニヤネットシェイプ成形が可能となり、摺動部材の低コスト化を図ることができる。
潤滑部材と金属母材を固定する構造の一例として、前記焼結操作に伴って金属母材に生じる収縮力で潤滑部材と金属母材を締まり嵌め状態にすることが考えられる。
この場合、潤滑部材は、固体潤滑剤粉とバインダとを含む粉末の焼成により形成することができる。
固体潤滑剤粉を金属で被覆してなる被覆粉を、前記焼結操作で焼結させて潤滑部材を形成することもできる。この場合、潤滑部材と金属母材を固定する構造の他例として、被覆粉の前記金属を、金属母材を構成する前記金属粉に拡散させて潤滑部材と金属母材を結合することが考えられる。
摺動面にサイジングを施すことで高精度の摺動面を低コストに得ることができる。このサイジングは、金属母材と潤滑部材の双方に対して行う他、どちらか一方に対してのみ行うこともできる。摺動面だけでなく、必要に応じてそれ以外の面にサイジングを行っても構わない。サイジング自体は、既存の焼結金属製摺動部材でも行わるのが通例であるので、かかる処理を行ったとしてもコストアップの要因にはならない。
以上に述べた摺動部材は、固体潤滑剤粉とバインダとを含む粉末を焼成して潤滑部材を形成し、金属粉を主成分とする原料粉を成形して成形体を形成すると共に、前記潤滑部材を、その一部が摺動面となるべき面に現れるように、前記成形体に接触させ、その状態で潤滑部材および成形体を焼結温度で加熱して、成形体の焼結により金属母材を形成し、かつこの焼結時に成形体に生じる収縮力で潤滑部材を金属母材に固定することで製造することができる。
また、固体潤滑剤粉を金属で被覆した被覆粉を主成分とする第一粉末と、金属粉を主成分とする第二粉末とを、両粉末の充填領域を区分けした状態で、摺動面となるべき面に第一粉末が現れるように成形して成形体を形成し、前記成形体を焼結温度で加熱して、第一粉末の焼結により潤滑部材を形成すると共に、第二粉末の焼結により金属母材を形成し、この焼結操作時に、第一粉末に含まれる被覆粉の前記金属を第二粉末の金属粉に拡散させることで潤滑部材を金属母材に固定することでも摺動部材を製造することができる。
潤滑部材を金属母材に固定した後で摺動面にサイジングを施すことにより、精度の高い摺動面を低コストに得ることができる。
本発明によれば、低コストでありながら、高い潤滑性能を有する摺動部材を提供することができる。この摺動部材であれば、特殊環境下、例えば高温、高面圧、高速回転等の苛酷環境や潤滑油の使用が困難な環境でも高い潤滑性能を得ることが可能である。
以下、本発明にかかる摺動部材の一例として焼結軸受を例に挙げ、その詳細を図面に基づいて説明する。
図1(a)(b)に示すように、焼結軸受1は円筒状の形態をなしており、その内周には、摺動面として円筒面状の軸受面11が形成されている。焼結軸受1の内周に、相手側の部材としての軸2(二点鎖線で示す)を挿入することで、軸2が軸受面11で回転自在に支持される。軸2を回転軸とする場合、焼結軸受1の外周面12が図示しないハウジングの内周面に圧入や接着等の手段で固定される。このように軸2を回転側とする他、軸2を静止側とし、焼結軸受1を回転側にすることもできる。
図1(a)(b)に例示した焼結軸受1は、焼結金属からなる金属母材3と、多数の黒鉛粒子の集合体からなる潤滑部材4とを備えている。金属母材3は、その円周方向で等配した複数個所に潤滑部材4を保持するための保持部3aを有する。各保持部3aは、金属母材3の内周面3bに開口した凹所であり、その断面(軸方向と直交する方向の断面)が潤滑部材4の断面形状と適合する形状に形成される。本実施形態における保持部3aは、円筒面の円周方向一部領域を切除した部分円筒面状の形態をなし、かつ金属母材3の軸方向両端面に開口するように、金属母材3の軸方向全長にわたって同一形状で形成されている。
潤滑部材4は、金属母材3の保持部3aの形状に適合する形状(部分円筒状)に形成される。潤滑部材4の周面は、金属母材3の保持部3aに対向する外側面4aと、軸2の外周面と対向する内側面4bとを備えている。外側面4aは金属母材3の保持部3aに面接触する凸円筒面状に形成され、内側面4bは金属母材3の内周面3bと段差なく連続する凹円筒面状に形成されている。金属母材3の内周面3bと潤滑部材4の内側面4bとで、摺動面として断面真円状の軸受面11が構成される。
この焼結軸受1では、軸受面11の一部に形成された潤滑部材4が黒鉛粒子の供給源となる。潤滑部材4から供給された黒鉛粒子は軸受面11と軸2の相対移動によって軸受面11全体に行き渡るため、軸受面11全体で潤滑効果を得ることができる。
また、焼結軸受1においては、必ずしも軸受面11の全体に対して軸2が摺動する訳ではなく、軸受面11の限定された一部領域が軸2と摺動する場合が多い。例えば、軸2を水平姿勢とした場合、軸2は重力によって落ち込んで軸受面11の下側領域で軸受面11と摺接することが多い。その場合、軸2との摺動領域に潤滑部材4が位置するように潤滑部材4の位置や形状を設計し、あるいはその摺動領域に潤滑部材4が位置するように焼結軸受1の円周方向の位相を調整することで、軸2を常時潤滑部材4に対して摺動させることが可能となる。そのため、高い潤滑効果を得ることができ、軸受面11に潤滑油を介在させないオイルレスの状態でも軸2を支持することが可能となる。従って、高温、高面圧、あるいは高速回転等の苛酷条件下での使用に耐える焼結軸受1を提供することができる。
既存の焼結軸受のように、軸受面に黒鉛粒子を分散させた場合、潤滑性向上のため、原料粉に対する黒鉛粉の配合割合を増して、軸受面における黒鉛粒子の濃度を高めようとしても、過剰配合された黒鉛粒子が金属粒子間の結合を阻害するため、焼結軸受の強度低下を招くことなる。従って、潤滑性の向上には限界がある。これに対し、上記のように、摺動面の少なくとも一部を固体潤滑剤粒子(黒鉛粒子等)の集合体からなる潤滑部材4で形成すれば、潤滑部材4の個数を増やし、あるいは潤滑部材4を大型化するだけで、軸受面11に対する黒鉛粒子の供給量を増大させて潤滑効果を高めることができる。この場合でも、金属母材3における金属粒子間の結合強度が低下することはないため、焼結軸受1の強度低下を回避することができる。
その一方で、このように軸受面11の一部を黒鉛粒子の集合体である潤滑部材4で構成する場合、潤滑部材4を如何にして金属母材3に固定するのかが問題となる。固定手段として圧入を採用したのでは、適正な圧入代を得るために双方の嵌め合い面を機械加工等で高精度に加工する必要があり、加工コストが高騰する。また、固定手段として接着を採用したのでは、新たに接着工程が必要となり、生産性の低下を招く。何れにせよ、ニヤネットシェイプ成形による低コスト化という焼結軸受1の最大のメリットが減殺される。
かかる課題に鑑み、本願発明では、原料粉を焼結させて金属母材3を形成する際の焼結操作で潤滑部材4を金属母材3に固定する、という新たな構成を採用することにした。これは、焼結操作による金属組織の物理的変化あるいは化学的変化で固定力を確保する、との新たな着想に依拠したものである。
[第一の実施形態]
このように焼結操作によって潤滑部材4を金属母材3に固定するための第一の手法として、焼結操作に伴って生じた金属母材3の収縮力Fを活用することが考えられる。以下、この手法による焼結軸受1の製造工程を第一の実施形態として説明する。
このように焼結操作によって潤滑部材4を金属母材3に固定するための第一の手法として、焼結操作に伴って生じた金属母材3の収縮力Fを活用することが考えられる。以下、この手法による焼結軸受1の製造工程を第一の実施形態として説明する。
潤滑部材4は、固体潤滑剤粉としての黒鉛粉と、バインダとを含む原料粉末を成形し、焼成することで形成される。この場合、バインダの単体粉末と黒鉛粉との混合粉末を原料粉末として使用すると、黒鉛粉の流動性が低いため、黒鉛粉末に多量の黒鉛粉を含ませた際に混合粉末を所定形状に成形することが難しくなる。そのため、原料粉末としては、図3に示すように、複数の黒鉛粉6をバインダ5の介在下で造粒した造粒黒鉛粉7を使用するのが好ましい。
造粒黒鉛粉7で使用する黒鉛粉としては、天然黒鉛粉および人造黒鉛粉の何れもが使用可能である。天然黒鉛粉は一般に鱗片状をなし、潤滑性に優れるという特徴を有する。一方、人造黒鉛粉は塊状をなし、成形性に優れるという特徴を有する。従って、潤滑性を重視する場合は天然黒鉛粉を用いた造粒黒鉛粉を使用し、成形性を重視する場合は人造黒鉛粉を用いるのが好ましい。バインダとしては、例えばフェノール樹脂等の樹脂材料を使用することができる。
以上に述べた造粒黒鉛粉7を、必要に応じて成形助剤や潤滑剤、あるいは改質剤等を添加して均一に混合する。この混合物を成形型に供給した上で加圧成形し、図2(a)(b)に示すように、潤滑部材4の形状に対応した成形体4'(黒鉛粉成形体)を成形する。その後、この黒鉛粉成形体4'を、例えば炉内温度900℃〜1000℃で焼成することで、多孔質の焼成体(潤滑部材4)を得る。焼成は、酸素の存在しない雰囲気下、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下や真空雰囲気下で行う。雰囲気に酸素が存在すると、焼成時に黒鉛粉がCOやCO2となって揮散し、消失するためである。
図4は、焼成された潤滑部材4のミクロ組織を概略的に表すものである。焼成により造粒黒鉛粉に含まれていた樹脂バインダは炭化物(非晶質の無定形炭素)となって、網目構造のバインダ成分14を構成する。バインダ成分14の網目中に、黒鉛粉に由来する、固体潤滑剤粒子としての黒鉛粒子13が保持される。黒鉛粒子13の保持は、バインダ成分14の表面が黒鉛粒子13の表面と絡み合うことによって行われる。図中の符号15は、ミクロ組織中に多数形成された空孔である。潤滑部材4の表面においては、黒鉛粒子13が面積比で60%以上、好ましくは80%以上を占めており、そのために軸2との摺動時に高い潤滑性が得られる。
一方、金属母材3は、焼結軸受で採用される通常の製造工程、すなわち金属粉を主成分とする原料粉を成形型で圧縮成形し、成形体(金属粉成形体)を加熱して焼結させることで製造される。金属母材3としては、銅を主成分とする銅系、鉄を主成分とする鉄系、銅および鉄を主成分とする銅鉄系をはじめとする任意の種類の焼結金属を使用することができる。この他、アルミニウム−青銅系等の特殊な焼結金属を使用することもできる。
例えば銅鉄系の焼結軸受では、鉄粉、銅粉、および低融点金属粉を混合したものが原料粉として使用される。低融点金属は、焼結時にそれ自体が溶融して液相焼結を進行させるための成分であり、銅よりも低融点の金属が使用される。具体的には700℃以下の融点を有する金属、例えば錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等が使用可能であり、この中でも銅との相性の良いSnを使用するのが好ましい。低融点金属は、混合粉中にその単体粉を添加する他、他の金属粉と合金化することで添加することもできる。
原料粉には、上記の金属粉の他に、必要に応じてフッ化カルシウム等の焼結助剤やステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を添加し、さらに固体潤滑剤粉としての黒鉛粉を添加することもできる。黒鉛粉を添加することで、焼結後の金属母材3の焼結組織中に黒鉛粒子を分散させることができるので、軸受面11のうち金属母材3で形成される部分での潤滑性をさらに高めることができる。
成形工程では、成形型に原料粉を充填して圧縮することで、図5に示すように、金属母材3に対応した形状の成形体3’(金属粉成形体)が成形される。この金属粉成形体3’には、その成形時に、金属母材3の保持部3aに相当する凹部3a’が形成されている。
次いで、金属粉成形体3’の各凹部3a’に上記の手順で製作した焼成体(潤滑部材4)を隙間嵌めで嵌合させ、その後、金属粉成形体3’と潤滑部材4のアセンブリを、金属粉成形体3’を焼結させるのに必要な焼結温度(例えば金属粉成形体3’が銅鉄系であれば、750〜900℃程度)で加熱して金属粉成形体3’を焼結させる。焼結中は、焼成された潤滑部材4も加熱されることになるが、加熱中に潤滑部材4の組織が変化することはなく、焼成の前後で潤滑部材4の組織および形態が維持される。
ところで、焼結前の金属粉成形体の段階では、図15(a)に示すように、金属粉P1,P2同士が互いに接触した状態にある(この時の粒子間距離をEとする)。その一方で、金属粉成形体を焼結すると、図15(b)に示すように、隣り合う金属粉P1’,P2’の一部組織が相手側に拡散するため、焼結後の粒子間距離eが焼結前の粒子間距離Eよりも小さくなる(E>e)。このように焼結に伴って粒子間距離が縮小するため、焼結後の金属母材3には内径面および外径面の双方を縮径させる方向の収縮力F(図1(a)ご参照)が生じ、この収縮力Fによって金属母材3と潤滑部材4の嵌め合いが隙間嵌め状態から締まり嵌め状態に移行する。従って、潤滑部材4を金属母材3に確実に固定し、使用中の潤滑部材4の脱落を防止することが可能となる。特に図1(a)に示すように、金属母材3における収容部3aの開口幅Doを、潤滑部材4の最大幅D(直径寸法)よりも小さくしておけば、潤滑部材4の内径側への脱落をより確実に規制することができる。
焼結時における金属粉成形体3’の収縮は、例えば金属粉を構成する粒子として、不規則形状のものを使用することで強化することができる。この場合、焼結に伴って不規則形状の粒子が球形化し、粒子間の距離が小さくなるため、成形体3’の収縮がより一層顕著なものとなる。鉄粉および銅粉としては、還元粉、アトマイズ粉、電解粉等が代表的であるが、鉄粉として多孔質の海綿状をなす還元鉄粉を使用し、銅粉として樹枝状をなす電解銅粉を使用すれば、何れも不規則度合いが大きいために高い収縮力Fを得ることができる。従って、収縮力Fを大きくしたいのであれば、原料粉中の鉄粉あるいは銅粉として、還元鉄粉や電解銅粉を使用するのが好ましい。還元鉄粉にこれ以外の種類の鉄粉を添加し、あるいは電解銅粉にそれ以外の種類の銅粉を添加することにより、焼結時に生じる収縮力Fの大きさを調整することができる。
焼結工程を経た焼結品はサイジング工程に移送され、金型内での再圧縮により表面各部(内周面、外周面、および両端面)の寸法が矯正される。この際、少なくとも軸受面11となる内周面にサイジングを施すことで、高真円度の軸受面11を得ることができ、安定した軸受性能を得ることが可能となる。このように軸受面11は最終的にはサイジングで仕上げられるので、焼結終了時点では金属母材3の内周面3bと潤滑部材4の内側面4bとの間に段差が存在していても構わない。サイジングで矯正できないほどの段差が存在する場合は、焼結品の内周面全体、すなわち金属母材3の内周面3b、および潤滑部材4の内側面4bの全体にわたって切削等の機械加工を施してからサイジングを行う。
サイジング工程を経ることで、図1(a)(b)に示す焼結軸受1が完成する。この焼結軸受1は、基本的には潤滑油や液状グリース等を含浸させないドライ軸受として使用される。但し、必要があればこれらを含浸させる含油処理をサイジング後に行い、金属母材3および潤滑部材4の何れか一方または双方の細孔中に潤滑油成分を保持させてもよい。
[第二の実施形態]
焼結操作で潤滑部材4を金属母材3に固定するための第二の手法として、潤滑部材4を焼結可能な材料で形成することが考えられる。以下、この手法による焼結軸受1の構成およびその製造工程を、第二の実施形態として説明する。
焼結操作で潤滑部材4を金属母材3に固定するための第二の手法として、潤滑部材4を焼結可能な材料で形成することが考えられる。以下、この手法による焼結軸受1の構成およびその製造工程を、第二の実施形態として説明する。
第二の実施形態において、潤滑部材4は、原料粉末を成形して得た成形体を焼結することで形成される。この場合、原料粉末は、固体潤滑剤粉を金属で被覆した被覆粉を主成分とする。被覆粉として、図6に示すように、例えば固体潤滑剤粉6を金属8でめっき(無電解めっき)しためっき粉9を用いることができる(以下の説明では、金属8を「被覆金属」と称する)。固体潤滑剤粉6としては黒鉛粉が好ましく、被覆金属8としては銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)を用いるのが好ましい。めっき粉9としては、黒鉛粉6の全表面を被覆金属8で被覆したものが最も好ましいが、必ずしも全表面を被覆する必要はなく、黒鉛粉6の表面の一部が単体めっき粉9の外部に露出していても構わない。めっき粉9における被覆金属8の割合は、10wt%以上、80wt%以下、好ましくは15wt%以上、60wt%以下、さらに好ましくは20wt%以上、50wt%以下の程度とする。被覆金属8の量が少なすぎると、めっき粉9の表面に黒鉛粉6が露出する割合が多くなって、焼結後の粒子間の結合強度が不足する。一方、被覆金属8の量が多すぎると、軸受面11となる潤滑部材4の内側面4bに露出する黒鉛量が少なくなって潤滑部材4の潤滑性が低下する。なお、銅とニッケルでは比重がほぼ同じであるので、被覆金属8として銅とニッケルのどちらを使用した場合でも、好ましい重量割合に実質的な差は生じない。
めっき粉9で使用する黒鉛粉6としては、人造黒鉛粉を使用するのが好ましい。鱗片状の天然黒鉛粉を使用すると、黒鉛粉6を被覆金属8で十分に被覆することが難しいためである。被覆金属8による黒鉛粉6の被覆が不十分であると、後の焼結工程においてめっき粉の被覆金属8同士を結合することができず、強度を確保できない。
めっき粉9の被覆金属8同士を強固に結合するため、原料粉には低融点金属を含有させる。含有させる手法としては、低融点金属の単体粉をめっき粉9に添加し、あるいはめっき時に、低融点金属と合金化させた被覆金属8を黒鉛粉6の周囲に析出させることが考えられる。低融点金属は、第一の実施形態と同様に、700℃以下の融点を有する金属、例えば錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等が使用可能であり、この中でもSnを使用するのが好ましい。
この場合、被覆金属8に対する低融点金属の割合は0.3〜5wt%、好ましくは0.5〜3wt%の範囲に設定する。低融点金属の割合が少なすぎると液相焼結が進まないために必要強度を得ることができず、逆に低融点金属の割合が多すぎると、軸受面11となる潤滑部材4の内側面4bに露出する黒鉛量が少なくなり、かつ内側面4bが不必要に硬質化されて潤滑部材4の潤滑性が低下するため、上記の割合とする。
この他、潤滑部材4を形成する原料粉には、上記の粉末(めっき粉、および必要であれば低融点金属粉)の他に、必要に応じて焼結助剤や潤滑剤を添加する。
この第二の実施形態において、金属母材3を形成するための原料粉は、第一の実施形態の金属母材3を形成する原料粉と共通するので重複説明を省略する。以下、潤滑部材4の原料粉(めっき粉9を含む)を第一粉末Maとし、金属母材3の原料粉を第二粉末Mbとして、焼結軸受1の製造工程を説明する。
この実施形態の成形工程では、第一粉末Maと第二粉末Mbを同一の金型に供給して同時に成形する、いわゆる二色成形(多色成形)の手法を採用する。この二色成形は、金型内に二つのキャビティを区画形成して、各キャビティにそれぞれ粉末を充填し、成形するものである。
二色成形用の金型の一例を図7に示す。この金型は、ダイ21と、ダイ21の内周に配されたコアピン22と、ダイ21の内周面とコアピン22の外周面との間に配された下パンチ23と、仕切り部材25(図8参照)と、円錐面状のガイド28(図8参照)と、上パンチ29(図12参照)とを有する。ガイド28は、第一粉末Maのキャビティへの充填を円滑化するために設けられており、かかる充填がスムーズに行われるのであればガイド28を省略することもできる。
図8に示すように、仕切り部材25は、同心配置した内側仕切り26と外側仕切り27とを備えている。両仕切り26,27は互いに独立して昇降可能に構成されている。内側仕切り26は、図1に示す各潤滑部材4に対応した形状に形成されている。
この圧縮成形工程では、先ず図7に示すように、仕切り部材25およびガイド28を金型から退避させた状態で、コアピン22および下パンチ23を上昇させ、それらの上端面をダイ21の上端面21aと同レベルに配置する。金型に対する仕切り部材25およびガイド28の退避方向は、上方および側方のどちらでもよい。
次いで、図8に示すように、仕切り部材25およびガイド28を金型上に配置して、内側仕切り26の下端面を下パンチ23の上端面に接触させ、外側仕切り27の下端面をダイ21の上端面21aに接触させる。また、ガイド28の下端面をコアピン22の上端面に接触させる。この状態で、内側仕切り26とガイド28の間の空間を第一粉末Maで満たし、内側仕切り26と外側仕切り27の間の空間を第二粉末Mbで満たす。
次いで、図9に示すように、下パンチ23および内側仕切り26の位置を保持しながら、ダイ21、コアピン22、および外側仕切り27を連動して上昇させる。これにより、内側仕切り26とコアピン22の間の内側キャビティ24aが第一粉末Maで満たされ、内側仕切り26とダイ21の間の外側キャビティ24bが第二粉末Mbで満たされる。
次に図10に示すように、内側仕切り26を上昇させて、内側キャビティ24aと外側キャビティ24bを区画していた内側仕切り26を撤去し、両キャビティ24a,24bを一体化する。このように内側仕切り26を撤去しても、第一粉末Maと第二粉末Mbが完全に混じり合うことはなく、両粉末Ma,Mbは分離した状態に維持される(図中の破線は、両粉末のMa,Mbの境界を表すために便宜的に付した線である)。
次に図11に示すように、仕切り部材25およびガイド28を撤去し、さらにキャビティ24a,24bから溢れ出た余剰粉末を除去してから、図12に示すように、上パンチ29を降下させてキャビティ内の第一粉末Maおよび第二粉末Mbを圧縮し、成形体1’を製作する。
その後、成形体1’を成形型から取り出し、低融点金属の融点よりも高く、めっき粉9の被覆金属8(銅あるいはニッケル)の融点よりも低い温度(例えば750〜900℃程度)で焼結することで図13に示す焼結軸受1が完成する。この際、第一粉末Maの焼結によって潤滑部材4が形成され、第二粉末Mbの焼結によって金属母材3が形成される。
この焼結中は、内側の第一粉末Maに含まれる低融点金属が溶融し、これがめっき粉9の被覆金属8(例えば銅)をぬらして被覆金属8との合金になる。この合金化により、被覆金属8の表面がその融点よりも低い温度で溶融し、この溶融液によってめっき粉9の被覆金属8同士が結合されて第一粉末Maが焼結体となる。
被覆金属8と低融点金属の合金溶融液は、第二粉末Mbからなる成形体にも浸透し、第二粉末Mbに含まれる金属粉に拡散して、金属粉同士(例えば鉄粉同士、銅粉同士、あるいは鉄粉と銅粉)を結合させる。第二粉末Mbに低融点金属や銅等が含まれている場合には、同様の作用で第二粉末Mbに含まれる金属粉同士が結合する。また、第二粉末Mbが鉄系粉末からなり、低融点金属と銅が含まれていない場合でも、第一粉末Maで生じた前記合金溶融液が第二粉末Mbの鉄粉に拡散し、鉄粉同士を結合させる。以上の作用により、成形体1’の全体が焼結体となるため、高強度の焼結軸受1が得られる。また、金属母材3と潤滑部材4の境界部も界面のない焼結組織となるため、潤滑部材4を金属母材3により確実に固定することができる。
その一方で、第一粉末Maのめっき粉9に含まれる黒鉛粉6は、基本的に第二粉末Mb側に移動せずにそのまま残るため、潤滑部材4は黒鉛粒子をリッチに含んだ組織となる。
その後、第一の実施形態と同様に、少なくとも軸受面11にサイジングを施し、さらに必要に応じて含油を行うことで、図1(b)および図13に示す焼結軸受1が完成する。
ところで、めっき粉9はその表面の略全体が被覆金属8で覆われているため、焼結工程の直後は、摺動部材4の内側面4bのほとんどが被覆金属8に由来する金属粒子で覆われた状態にある。その後の軸受面11のサイジング工程で、サイジング型(例えばコアロッド)との摺動で潤滑部材4の内側面4bの金属粒子を剥離もしくは脱落させれば、内側面4bに多量の黒鉛粒子を露出させることができ、内側面4bにおける黒鉛粒子の分布量(面積比)を第一の実施形態と同程度まで高めることができる。金属粒子の剥離もしくは脱落を効果的に行うため、軸受面11をサイジングする際には、焼結品の内周面をサイジング型でしごくような操作、例えば焼結品をダイに圧入して焼結品の内周面をサイジング型に押し付け、その状態でサイジング型を軸方向に摺動させるような操作、を行うのが好ましい。
なお、たとえ初期の状態で潤滑部材4の内側面4bに露出した黒鉛粒子の量が不十分であっても、その後、軸2(図1(b)参照)を回転させれば、軸2との摺動により内側面4bを覆う金属粒子が剥離・脱落し、必要十分な量の黒鉛粒子が内側面4bに現れるようになる。
この第二実施形態の焼結軸受1では、内側仕切り26を撤去する際に、第一粉末Maと第二粉末Mbの境界付近で両粉末が混じり合うことが避けられない。そのため、金属母材3と潤滑部材4の間に明瞭な界面は存在せず、両者間には、図13の拡大図に示すように、金属母材3側から潤滑部材4側にかけて、各元素の濃度勾配を有する遷移層Xが形成されることになる。
[第三の実施形態]
第三の実施形態として、第一の実施形態と第二の実施形態の組み合わせで焼結軸受1を製造することもできる。この第三の実施形態における焼結軸受1の製造手順は以下のとおりである。すなわち、第二の実施形態と同様の手法で、めっき粉9を主成分とする原料粉を成形し、焼結することで潤滑部材4を形成する。次に、この潤滑部材4を第一の実施形態で述べた金属粉成形体3’(図5参照)の凹部3a’に嵌合し、この状態で金属粉成形体3’および潤滑部材4からなるアセンブリを焼結温度で加熱して金属粉成形体3’を焼結させる。この焼結時に金属粉成形体3’に生じる収縮力Fで潤滑部材4を金属母材3に固定する。その後、少なくとも軸受面11にサイジングを行うことで、図1(a)(b)に示す焼結軸受を得ることができる。
第三の実施形態として、第一の実施形態と第二の実施形態の組み合わせで焼結軸受1を製造することもできる。この第三の実施形態における焼結軸受1の製造手順は以下のとおりである。すなわち、第二の実施形態と同様の手法で、めっき粉9を主成分とする原料粉を成形し、焼結することで潤滑部材4を形成する。次に、この潤滑部材4を第一の実施形態で述べた金属粉成形体3’(図5参照)の凹部3a’に嵌合し、この状態で金属粉成形体3’および潤滑部材4からなるアセンブリを焼結温度で加熱して金属粉成形体3’を焼結させる。この焼結時に金属粉成形体3’に生じる収縮力Fで潤滑部材4を金属母材3に固定する。その後、少なくとも軸受面11にサイジングを行うことで、図1(a)(b)に示す焼結軸受を得ることができる。
[他の実施形態]
以上の説明では、摺動部材の一例として軸受を例示したが、本発明の摺動部材は、相対運動を行う相手側の部材を支持する部材として広く用いることができる。ここでいう相対運動には、回転運動に限らず、直線運動も含まれる。また、相手側の部材の形態としては、軸状の他、平面状等の任意の形態を採用することができる。また、摺動部材の形態も任意であり、焼結軸受1のような円筒形状に限らず、摺動パッドと呼ばれる平板状等の形態を採用することもできる。
以上の説明では、摺動部材の一例として軸受を例示したが、本発明の摺動部材は、相対運動を行う相手側の部材を支持する部材として広く用いることができる。ここでいう相対運動には、回転運動に限らず、直線運動も含まれる。また、相手側の部材の形態としては、軸状の他、平面状等の任意の形態を採用することができる。また、摺動部材の形態も任意であり、焼結軸受1のような円筒形状に限らず、摺動パッドと呼ばれる平板状等の形態を採用することもできる。
また、以上の説明では、潤滑部材4を金属母材3の円周方向複数個所に配置する場合を例示したが、潤滑部材4の形態はこれに限定されるものではない。例えば図14(a)に示すように、円周方向で連続させた潤滑部材4を軸受面11の略半周を覆うように配置し、あるいは図14(b)に示すように、軸受面11の略全周を覆うように配置することもできる。
さらに、潤滑部材4は、図1(a)(b)に示すように軸方向に沿って配置する他、軸芯を中心としたらせん状に配置してもよい。これにより、軸2の軸方向各部を、その1回転の間に少なくとも1回は潤滑部材4を通過させることが可能となるので、良好な潤滑性が得られる。また、図1(a)(b)に示すように、潤滑部材4を金属母材3の軸方向全長にわたって配置する他、軸方向の一部領域に限って配置してもよい。何れにせよ、少なくとも軸受面11の一部が潤滑部材4で形成されていれば本願発明の効果を得ることができる。
この他、潤滑部材4を半径方向に延ばして、摺動部材の他部材に対する取り付け面(例えば金属母材3の外周面12)の一部を潤滑部材4で構成することもできる。
また、以上の説明では、潤滑部材4を構成する固体潤滑剤として黒鉛を使用する場合を例示したが、二硫化モリブデン等の黒鉛以外の固体潤滑剤も広く使用することが可能である。
以上に述べた摺動部材の用途は問わないが、特に高温、高面圧、高速回転といった苛酷条件下で使用する用途に適合する。例えば自動車エンジンにおける燃料ポンプ用の軸受、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の低減を目的として設置される排気ガス循環装置(EGR装置)のEGRバルブ用の軸受等に使用することが可能である。これらの用途では、ガソリンや廃棄ガスに対する軸受の耐腐食性も求められるため、金属母材3としては耐腐食性に優れるアルミニウム−青銅系を使用するのが好ましい。この他、建設機械(ブルドーザ、油圧ショベル等)におけるアームの関節部分に使用する軸受等としても使用することができる。
また、以上に説明した摺動部材は、トルク伝達機構において固定軸に回転可能に支持される従動要素(ギヤ、プーリ−等)としても使用することができる。この従動要素の用途によっては、固定軸との間の摺動部に潤滑油を介在させることが好ましくない場合があり、そのような用途に本発明の摺動部材が適合する。例えばガソリンスタンド等に設置される計量機には給油用ギヤポンプが配置されるが、この給油用ギヤポンプの給油経路中に従動ギヤが配置される場合がある。この場合、燃料や灯油等への潤滑油の混入を避けるため、従動ギヤに潤滑油を含浸させるのは好ましくない。従って、このような用途に用いる従動ギヤとして、潤滑油を用いずとも高い潤滑性が得られる本発明の摺動部材1を使用するのが好ましい。
図16に、上記給油用ギヤポンプとして用いられる内接型ギヤポンプの分解斜視図を示す。同図に示すように、このギヤポンプは、静止側となる本体51と、外歯型のインナロータ52(従動ギヤ)と、内歯型のアウタロータ53とを有する。アウタロータ53には、モータ等の回転駆動源に駆動される駆動軸53aが設けられている。本体51には、駆動軸53aに対して偏心した固定軸51aが設けられており、この固定軸51aの外周にインナロータ52の軸孔52aが回転可能に嵌合されている。図17に示すように、インナロータ52は、その外歯をアウタロータ53の内歯と噛み合わせてアウタロータ53の内径側に偏心して配置される。アウトロータ53の歯数は、インナロータ52の歯数よりも一つもしくは二つ以上多くする。
かかる構成において、アウタロータ53を回転駆動させると、歯部同士の噛み合いでインナロータ52も回転力を受け、アウタロータ53に追従して同方向に回転する。これにより、歯部間の空間の容積が拡大および縮小するため、ガソリン等を吸入・吐出することが可能となる。
この給油用ギヤポンプにおいて、従動ギヤであるインナロータ52は、既に述べた焼結軸受1と同様に、金属母材3と、金属母材3の内周面に固定された潤滑部材4とを有する。金属母材3は、金属粉を主成分とする原料粉を焼結させたものであり、外周に複数の歯部を有すると共に、内周に孔を有するギヤ形状をなす。潤滑部材4は、黒鉛粒子の集合体からなり、金属母材3の前記原料粉を焼結させる焼結操作で金属母材3の内周面に固定されている。潤滑部材4の内周面が、固定軸51aの外周面と摺動する摺動面(軸孔52a)を構成する。金属母材3と潤滑部材4の各構成や両者の固定手法は、焼結軸受1の第一の実施形態〜第三の実施形態と共通する。なお、金属母材3には、ガソリンに対する耐腐食性も求められるため、金属母材3としては耐腐食性に優れるアルミニウム−青銅系を使用するのが好ましい。
金属母材3に潤滑部材4を固定した後で、必要に応じて、潤滑部材4の内周面にサイジングや切削等の仕上げ加工を施すことで、図16に示すインナロータ52が完成する。金属母材3および潤滑部材4に対する潤滑油の含浸は行われない。
かかる構成のインナロータ52は、潤滑油を含まないため、計量機で供給される燃料や灯油への潤滑油の混入を回避することができる。その一方で、摺動面が高い潤滑性を有するため、インナロータ52でのトルクロスを最低限に抑えることができる。
1 焼結軸受(摺動部材)
2 軸(相手側の部材)
3 金属母材
4 潤滑部材
5 樹脂バインダ
6 黒鉛粉(固体潤滑剤粉)
8 被覆金属(金属)
9 めっき粉(被覆粉)
11 軸受面(摺動面)
13 黒鉛粒子(固体潤滑剤粒子)
52 インナロータ(摺動部材)
F 収縮力
2 軸(相手側の部材)
3 金属母材
4 潤滑部材
5 樹脂バインダ
6 黒鉛粉(固体潤滑剤粉)
8 被覆金属(金属)
9 めっき粉(被覆粉)
11 軸受面(摺動面)
13 黒鉛粒子(固体潤滑剤粒子)
52 インナロータ(摺動部材)
F 収縮力
Claims (10)
- 相手側の部材と摺動する摺動面を有する摺動部材であって、
金属粉を主成分とする原料粉を焼結させてなる金属母材と、固体潤滑剤粒子の集合体からなる潤滑部材とを備え、前記摺動面の少なくとも一部を潤滑部材で構成し、かつ前記原料粉を焼結させる焼結操作で潤滑部材を金属母材に固定したことを特徴とする摺動部材。 - 前記焼結操作に伴って金属母材に生じる収縮力で潤滑部材と金属母材を締まり嵌め状態にした請求項1記載の摺動部材。
- 固体潤滑剤粉と樹脂バインダとを含む粉末の焼成により潤滑部材を形成した請求項2記載の摺動部材。
- 固体潤滑剤粉を金属で被覆してなる被覆粉を、前記焼結操作で焼結させて潤滑部材を形成した請求項1記載の摺動部材。
- 被覆粉の前記金属を、金属母材を構成する前記金属粉に拡散させて潤滑部材と金属母材を結合した請求項4記載の摺動部材。
- 前記摺動面にサイジングを施した請求項1〜5の何れか1項に記載の摺動部材。
- 相手側の部材と摺動する摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、
固体潤滑剤粉とバインダとを含む粉末を焼成して潤滑部材を形成し、
金属粉を主成分とする原料粉を成形して金属粉成形体を形成すると共に、前記潤滑部材を、その一部が摺動面となるべき面に現れるように、前記金属粉成形体に接触させ、
その状態で潤滑部材および金属粉成形体を焼結温度で加熱して、金属粉成形体の焼結により金属母材を形成し、かつこの焼結時に金属粉成形体に生じる収縮力で潤滑部材を金属母材に固定することを特徴とする摺動部材の製造方法。 - 相手側の部材と摺動する摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、
固体潤滑剤粉を金属で被覆した被覆粉を主成分とする第一粉末と、金属粉を主成分とする第二粉末とを、両粉末の充填領域を区分けした状態で、摺動面となるべき面に第一粉末が現れるように成形して成形体を形成し、
前記成形体を焼結温度で加熱して、第一粉末の焼結により潤滑部材を形成すると共に、第二粉末の焼結により金属母材を形成し、
この焼結時に、第一粉末に含まれる被覆粉の前記金属を第二粉末の金属粉に拡散させることで潤滑部材を金属母材に固定することを特徴とする摺動部材の製造方法。 - 被覆粉として、固体潤滑剤粉に金属めっきを施しためっき粉を使用する請求項8記載の摺動部材の製造方法。
- 潤滑部材を金属母材に固定した後で、摺動面にサイジングを施す請求項7〜9の何れか1項に記載の摺動部材の製造方法。
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