JPH08325557A - 摩擦材用充填剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カシューポリマーを主体とする摩擦材用充填
剤と、フェノール樹脂に代表される摩擦材の結合剤との
親和性を増加させるため、摩擦材用充填剤の表面に多孔
質構造を付与する。 【構成】 カシューポリマーを粉砕した粉末の表面を、
発泡性熱硬化性樹脂で被覆することにより、表面に多孔
質構造を導入する。これによって、摩擦材用充填剤と結
合剤との親和性を著しく向上できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ブレーキライニング、
ディスクパッドなどの摩擦材に用いられる充填剤に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】ブレーキライニング、ディスクパッドな
どの摩擦材は、概ね次の工程によって製造されている。
即ち、繊維状物質に摩擦性能向上のための充填剤などを
混合し、さらに結合剤としてフェノール樹脂などを混合
し、その混合物を予備成形した後、加熱硬化して摩擦材
の成形体に加工される。充填剤には、一般にカシューダ
ストが用いられる。

【０００３】カシューダストは、カシューナットオイル
の反応硬化によって得られるカシューポリマーを粒子に
粉砕したものであり、これを摩擦材に添加することによ
り、摩擦性能の改善に顕著な効果が得られることが知ら
れている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、カシューダス
トの粒径は、５０〜１０００μｍと極めて粗く、表面積
の小さいものであり、更に摩擦材に一般的に用いられる
結合剤であるフェノール樹脂との親和性が低いため、カ
シューダストを用いることによる摩擦材の強度低下は、
避けられないことであった。

【０００５】一方で、ここ十数年来の交通機関の高速
化、交通事情の悪化に伴い、摩擦材に要求される信頼性
は、より高度になってきている。そこで、本発明の目的
とするところは、フェノール樹脂との親和性を向上させ
ることにより、摩擦材の強度を劣化させないカシューダ
ストを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決する方法として、カシューダストとフェノール
樹脂などの結合剤との接触面積を増加することを検討し
た。それには、カシューダストの比表面積を増加するの
が最も有効であることは論を俟たない。しかし、カシュ
ーダストの一般的な製造方法では、平均粒径を減少させ
ることなく比表面積を増加させること、即ち、粒子形状
の制御は極めて困難である。

【０００７】かかる観点から、本発明者らは、粉砕工程
を終えたカシューダストの表面に、別物質を導入するこ
とにより、多孔質構造を付与することに着眼した。そし
て本発明者らは、前記着眼点を実現する方法として、発
泡性物質でカシューダスト表面を被覆するのが、非常に
有効であることを見出し、本発明をなすに至ったもので
ある。

【０００８】即ち、本発明は、カシューポリマーを主体
とする不定形固形物の表面に、発泡性熱硬化性樹脂を付
着結合するように構成したもので、摩擦材を構成する結
合剤との親和性が著しく改善された、摩擦材用充填剤を
提供し得ることを特徴とする。

【０００９】本発明の目的を達成するための、発泡性熱
硬化性樹脂の添加量は、カシューポリマーに対し重量で
５０％以下（０を含まない）である。

【００１０】また、本発明目的を達成するための、発泡
性熱硬化性樹脂の気孔率は、体積で５０〜１００％（１
００を含まない）である。

【００１１】添加量に上限を設定した理由は、添加量が
過多であると、製造工程で発泡性熱硬化性樹脂のみの粉
末の発生量が増加し、カシューダストとしての機能を損
なうばかりか、摩擦材の特性低下を惹き起こすからであ
る。

【００１２】また、熱硬化性樹脂の気孔率に下限を設定
した理由は、気孔率が過小であると、カシューダスト表
面の形状が粉砕直後と大差ないものとなるからである。
そして、発泡性熱硬化性樹脂の気孔率に、上限を特に設
定しなかったのは、気孔率が相当大きい領域であって
も、発泡性熱硬化性樹脂として、ウレタン樹脂のような
可撓性に富むものを採用すれば、多孔質構造が、十分維
持できるからである。

【００１３】

【作用】本発明による摩擦材用充填剤は、大きな比表面
積により結合剤との接触面積が大きくなるのは勿論であ
るが、その特徴的な表面構造のため、いわゆる投錨効果
に起因する結合剤との親和性の向上が期待できる。

【００１４】ここで、本発明の摩擦材用充填剤の製法に
ついて説明する。

【００１５】この製法は、 （１）カシューダストと発泡性熱硬化性樹脂を、所要の
比率でそれぞれ秤量する。

【００１６】（２）秤量した材料を適当な混練装置を用
いて混練する。

【００１７】（３）該混和物を加熱して、熱硬化性樹脂
を発泡させるとともに硬化させる。

【００１８】（４）該硬化物を粉砕して、所要の粒度に
調整する。 というもので、何ら特別な装置を必要としないことが、
本発明の特長である。

【００１９】次に、本発明で使用し得る発泡性熱硬化性
樹脂について説明する。本発明に於いては、いわゆる発
泡剤を均一に混合したフェノール樹脂、ウレタン樹脂な
どが使用し得るが、これらに限定されるものではない。
また発泡の方法は、いわゆる化学発泡、ガス発泡などが
適用し得る。しかし、これらに限定されるものでないこ
とも勿論である。

【００２０】

【実施例による説明】次に実施例を挙げ、更に詳しく説
明する。

【００２１】（実施例） カシューダスト：１００重量
部、発泡性フェノール樹脂：８重量部をそれぞれ秤量
し、加圧ニーダーを用いて１０分間混練した。この混和
物を温度を９０±１０℃に維持した乾燥機内に、６０分
間保持して、フェノール樹脂を発泡させるとともに熱硬
化させた。

【００２２】該硬化物をアトマイザーを用いて、目開
き：１．１８ｍｍの篩を通過するまで粉砕し、摩擦材用
充填剤を得た。その主な性状を表１に示した。また比較
例として、発泡性熱硬化性樹脂を付着させていないカシ
ューダストの性状も表１に併せて示した。

【００２３】表１から実施例は、粒径が粗いにもかかわ
らず、比表面積が大きいことがわかる。

【００２４】次に、前記２種類の摩擦材用充填剤を用
い、表２に示す組成に従って、摩擦材を作製した。

【００２５】これらの摩擦材についてＪＩＳ Ｄ４３１
１により、曲げ強度及び曲げ歪を測定し、それらの結果
を表３に示した。

【００２６】更に該摩擦材によりすり合わせ試験を行
い、摩擦係数（μ）の変動を測定し、ブレーキの効き安
定性を調べた。その結果を表４に示した。

【００２７】またすり合わせ試験時の摩耗量を測定し、
その結果を表５に示した。

【００２８】

【発明の効果】以上に詳しく説明したように、本発明に
よって得られる摩擦材用充填剤を用いた摩擦材は、従来
のものより気孔率が高いにもかかわらず、機械的強度が
改善される。この効果は、カシューダスト表面に発泡性
熱硬化性樹脂を付着結合させたことに起因することが、
明らかである。

【００２９】また、一般にカシューダストは粒径の粗さ
のために、摩擦材中に於ける分散性の低さが問題となる
場合があるが、本発明はこれに対しても有効であるとい
う、副次的効果も期待できる。

【００３０】よって、本発明が摩擦材の信頼性向上に寄
与するところは非常に大きく、工業上極めて有益であ
る。

【００３１】

【表１】

【００３２】

【表２】

【００３３】

【表３】

【００３４】

【表４】

【００３５】

【表５】

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片平 忠夫 東京都品川区西五反田７丁目９番４号 東 北化工株式会社内 (72)発明者 西村 幹夫 東京都品川区西五反田７丁目９番４号 東 北化工株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カシューポリマーを主体とする不定形固
   形物の表面に、発泡性熱硬化性樹脂を付着結合させたこ
   とを特徴とする摩擦材用充填剤。
2. 【請求項２】 発泡性熱硬化性樹脂のカシューポリマー
   に対する比率が重量で、５０％以下（０を含まない）で
   あることを特徴とする請求項１に記載の摩擦材用充填
   剤。
3. 【請求項３】 発泡性熱硬化性樹脂の気孔率が体積で５
   ０％〜１００％（１００を含まない）であることを特徴
   とする請求項１に記載の摩擦材用充填剤。