JPH08323161A - 浸漬型膜分離装置及びこれを用いた膜分離方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 バブリング時にも透過液を得ることができ、
複雑な制御装置を必要とせず、効率よく安価に膜分離を
行いうる膜分離装置及び膜分離方法の開発。 【構成】 平膜１１の両端に透過液出口１４，１５が設
けられ、それぞれの透過液出口がバルブを介して吸引ポ
ンプ２０に接続されており、平膜の下方には各々の透過
液出口側に分けて交互にエアバブリングしうる散気装置
２６，２７が設置されていることを特徴とする浸漬型膜
分離装置である。この装置の分離槽１０内に原液を満た
し、透過液の吸引ろ過を平膜の一方の透過液出口から行
い、同時に他方の透過液出口側では散気装置を駆動させ
て下部からのエアバブリングを行って膜面に付着したケ
ーキを除去するという操作を交互に繰り返して行う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、浸漬型膜分離装置、特
に、精密ろ過膜、限外ろ過膜などにより廃水中の懸濁物
を効率よく分離する浸漬型膜分離装置及びこれを用いた
膜分離方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】最近、膜分離は、技術発展に伴って薬品
や食品の製造ラインの固液分離だけでなく、用水の製
造、排水からの有機物の回収、上水、中水及びし尿の固
液分離に広く適用され、さらには下水や産業廃水処理に
までも適用されようとしている。従来の膜分離装置に
は、管状、板状などの膜が膜モジュールに用いられてお
り、この膜モジュールの内部に原液をポンプで加圧しな
がら供給すると共に、膜を透過しないで排出された原液
を再び膜モジュールの内部に供給するという液循環方式
が採用されている。この液循環方式では、ろ過抵抗の原
因になる膜面上のケーキ層をできるだけ少なくし、ろ過
量を一定に保持するために、ポンプで原液の循環量を増
加させて膜面流束を速くしている。

【０００３】しかし、原液の循環量を多くすると膜モジ
ュールが加圧されるため、膜の目詰まりが発生しやすく
なり、圧力損失が高くなったり、ろ過量が低下するよう
になる。また、原液の循環量は、ろ過量の１００倍前後
に達し、運転コストが高くなる。このことは、低いラン
ニングコストで処理しようとする廃水処理への適用を難
しくしている。

【０００４】ところが、最近、原液槽に膜を浸漬しなが
ら全量ろ過する浸漬方式が開発されている。これは膜面
上に原液の流れを与えない代わりに、液循環方式より低
い膜間差圧でろ過することによって膜面へのケーキの蓄
積を抑制してろ過する方式で、低動力の運転が可能であ
る。また、構造がシンプルなためメンテナンスが容易と
いう利点がある。ろ過するため膜間に差圧を生じさせる
には、加圧方式より目詰まりの少ないこと、膜を原液槽
に浸漬するのみでよいことから吸引方式が多く用いられ
ている。膜面上に付着するケーキは、膜の下部に設けた
散気管又は散気板から間欠的又は連続的に空気をバブリ
ングすることにより剥離される。このバブリングを行う
ときには、吸引によって膜面上にケーキが保持されてい
ると考えられることから、通常、一時吸引ろ過を停止し
た方が望ましい。しかしながら、バブリングのための吸
引ろ過の停止は、この時間に透過液が得られないことか
ら、効果的なろ過ができないこと、これを補うために多
くの膜面積を必要とし、コストの上昇につながること、
さらにはバブリングするための複雑な制御が必要となる
などの問題があった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、バブリング
時にも透過液を得ることができ、複雑な制御装置を必要
とせず、効率よく安価に膜分離を行うことができる浸漬
型膜分離装置及びこれを用いた膜分離方法を提供するこ
とを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】浸漬型膜分離装置の膜の
目詰まり状態を観察するために、支持体ネットの両面を
精密ろ過膜で被覆し、図２に示すように下部からバブリ
ングできるようにして上部に透過液出口を設け、無機系
の原液を吸引ろ過した。ろ過後、平膜の下部からエアバ
ブリングして膜面上に付着しているケーキを剥離した。
そして膜を長手方向に切り抜き、その膜のろ過抵抗を測
定したところ、図３に示すようにろ過抵抗は、透過液出
口に近いほど高く、離れるに従って減少する傾向が見ら
れた。このことから、ろ過量は、透過液出口に近いほど
多く、透過液出口から距離が離れているところほど有効
に利用されていないことが分かった。また、このことか
ら透過液出口から離れているところほど吸引されていな
いのであるから、透過液出口の近くより膜面上のケーキ
を剥離しやすいとの知見を得た。

【０００７】そこで、透過液出口を横の両端に設けて各
々交互に吸引ろ過し、片方の透過液出口から吸引してい
るときは、他方の透過液出口に近い部分の膜面のみをエ
アバブリングすれば、吸引ろ過を停止しないで膜面上の
ケーキを剥離することができ、膜面を有効利用すること
ができることを見出した。本発明をかかる知見に基づい
て完成したものである。

【０００８】すなわち、本発明の浸漬型膜分離装置は、
平膜の両端に透過液出口が設けられ、それぞれの透過液
出口がバルブを介して吸引ポンプに接続されており、平
膜の下方には各々の透過液出口側に分けて交互にエアバ
ブリングしうる散気装置が設置されていることを特徴と
する。

【０００９】本発明はさらに、上記の浸漬型膜分離装置
の分離槽内に原液を満たし、透過液の吸引ろ過を平膜の
一方の透過液出口から行い、同時に他方の透過液出口側
では散気装置を駆動させて下部からのエアバブリングを
行って膜面に付着したケーキを除去するという操作を交
互に繰り返して行うことを特徴とする膜分離方法を提供
するものである。

【００１０】

【実施例】次に、図面を参照して本発明を実施例に基づ
いて詳細に説明する。図１は、本発明の一実施例を示す
浸漬型膜分離装置の系統図である。ここに使用する平膜
１１は、膜支持ネットの両面をろ過膜で被覆し、これを
等間隔に複数枚並べ、その両端縁を合成樹脂等でポッテ
ィングした後カットし、塩化ビニルなどで透過液出口１
４及び１５を設けて透過液のみを取り出しうるようにし
たものである。１２及び１３は膜シール部である。

【００１１】図１に示した膜分離装置において、平膜１
１は平行に複数枚並べて分離槽１０中に浸漬されてい
る。平膜１１の下部には膜全体に空気の気泡が届くよう
に散気管２６及び２７が平膜１１と平行に複数設けてあ
るが、透過液出口１４側と透過液出口１５側に分けてあ
り、送風機２３からの空気は、電磁弁２４及び２５によ
って任意にどちら側にでも供給できるようにしてある。
また、透過液出口１４側と透過液出口１５側にそれぞれ
電磁弁２１及び２２を設け、どちら側からでも透過液を
取り出せるようにしてある。

【００１２】図１に示した膜分離装置を用いて膜分離を
行う場合、まず、原液入口１６から懸濁物を含んだ原液
を供給して分離槽１０内を満たした後、原液循環出口１
７を通して原液を循環する。次に、吸引ポンプ２０を稼
動させ、電磁弁２１を開、電磁弁２２を閉にして透過液
出口１４側から吸引ろ過する。このときの吸引度は、圧
力計３０によって測定される。原液中の懸濁物は、吸引
ろ過によって透過液出口１４側の平膜１１面上に付着
し、堆積しながらケーキ層となる。この間、送風機２３
を稼動させ、エア配管中の電磁弁２４を開、電磁弁２５
を閉にして透過液出口１５側の散気管２７からエアバブ
リングし、透過液出口１５側の平膜１１面上のケーキを
除去する。

【００１３】任意の時間の経過、あるいは膜間差圧の低
下又は透過液量の低下が認められたら、電磁弁２１を
閉、電磁弁２２を開にして透過液出口１５側を吸引ろ過
する。このとき前記と同様に原液中の懸濁物は、透過液
出口１５側の平膜１１面上にケーキ層となって堆積す
る。電磁弁２１を閉、電磁弁２２を開にすると同時にエ
ア配管中の電磁弁２４を閉、電磁弁２５を開にして透過
液出口１４側の散気管２６からエアバブリングし、透過
液出口１４側の平膜１１面上のケーキを除去することが
できる。

【００１４】このように、本発明の膜分離装置を用いれ
ば、透過液の吸引を透過液出口１４側と透過液出口１５
側とで交互に繰り返して行い、透過液を吸引しない側の
平膜１１面をエアバブリングすることによって、吸引ろ
過を停止することなく平膜１１に付着したケーキを常に
除去することができる。上記実施例では、エアバブリン
グのための散気管２６及び２７は、平膜１１に平行に設
けたが、平膜１１と直交するように配置してもよい。ま
た、散気管に限らず散気ボール、散気板などを用いても
平膜に満遍なくエアが行き渡るようにすればよい。

【００１５】また、平膜へのエアの供給は、様々な方法
で行うことができる。具体例を挙げると、透過量は、図
３の結果から透過液出口に近いほど多いことから、図１
に示したように平膜に平行して散気管が設けてある場
合、図４に示すように透過液出口に近いほど散気管の散
気孔４０の間隔を密にしてエア量の分布を調整してもよ
い。また、散気管が平膜と直交している場合は、図５に
示すように散気管の各々にエア量調整弁４１を設けて透
過液出口に近いほどバルブの開度を大きくするか、ある
いは図６に示すように透過液出口に近いほど散気管の散
気孔４０の間隔を密にする等の方法でエア量の分布を調
整してもよい。

【００１６】

【発明の効果】本発明によれば、簡単に装置で、吸引ろ
過を停止することなく、膜面上のケーキを常に除去する
ことができ、懸濁物を含んだ廃液中の懸濁物を効率よく
低コストで膜分離を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す浸漬型膜分離装置の系
統図である。

【図２】膜のろ過抵抗を確認するための浸漬型平膜分離
実験装置の説明図である。

【図３】膜の透過液出口からの距離とろ過抵抗との関係
を示すグラフである。

【図４】本発明の膜分離装置に使用しうる散気装置の一
例を示す説明図である。

【図５】本発明の膜分離装置に使用しうる散気装置の別
の例を示す説明図である。

【図６】本発明の膜分離装置に使用しうる散気装置の別
の例を示す説明図である。

【符号の説明】

１０ 分離槽 １１ 平膜 １２ 膜シール部 １３ 膜シール部 １４ 透過液出口 １５ 透過液出口 １６ 原液入口 １７ 原液循環出口 ２０ 吸引ポンプ ２１ 電磁弁 ２２ 電磁弁 ２３ 送風機 ２４ 電磁弁 ２５ 電磁弁 ２６ 散気管 ２７ 散気管 ３０ 圧力計 ４０ 散気孔 ４１ エア量調整弁

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平膜の両端に透過液出口が設けられ、そ
   れぞれの透過液出口がバルブを介して吸引ポンプに接続
   されており、平膜の下方には各々の透過液出口側に分け
   て交互にエアバブリングしうる散気装置が設置されてい
   ることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
2. 【請求項２】 散気装置の散気孔の間隔が透過液出口に
   近くなるほど密に設けられている請求項１記載の浸漬型
   膜分離装置。
3. 【請求項３】 請求項１記載の浸漬型膜分離装置の分離
   槽内に原液を満たし、透過液の吸引ろ過を平膜の一方の
   透過液出口から行い、同時に他方の透過液出口側では散
   気装置を駆動させて下部からのエアバブリングを行って
   膜面に付着したケーキを除去するという操作を交互に繰
   り返して行うことを特徴とする膜分離方法。
4. 【請求項４】 透過液出口に近くなるにしたがってエア
   バブリングのエア量を多くする請求項３記載の膜分離方
   法。