JPH08168889A - 金属部材の接合方法、Au−Snろう付け用インサート材、インクジェットプリンタ - Google Patents

金属部材の接合方法、Au−Snろう付け用インサート材、インクジェットプリンタ

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JPH08168889A
JPH08168889A JP31312794A JP31312794A JPH08168889A JP H08168889 A JPH08168889 A JP H08168889A JP 31312794 A JP31312794 A JP 31312794A JP 31312794 A JP31312794 A JP 31312794A JP H08168889 A JPH08168889 A JP H08168889A
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啓司 渡辺
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邦裕 玉橋
Atsushi Sunahara
淳 砂原
Masaya Horino
正也 堀野
Akiomi Kono
顕臣 河野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】熱による部材の変形を抑えつつ、耐食性に優れ
る高強度の接合部を形成すること及びろう材層の形成コ
ストを低く抑えることを目的とする。 【構成】接合に用いるろう材をAu−Sn合金とした。
また、Au−Sn合金をAuめっき及びSnめっきの積
層構造として、これらを加熱、加圧により溶融させて接
合材とする。例えば、めっきは、母材101側から順に
厚さ0.5μm以下のNiめっき102、5μm以下の
Auめっき103、5μm以下のSnめっき104、5
μm以下のAuめっき105を層状にする。Auめっき
とSnめっきとの系での組成を、積層されるめっき組合
せ全体でSnが20mass%を超え40mass%未
満とし、めっき皮膜内に0℃、1気圧換算でめっき体積
の1/2倍以上の水素及び水の少なくとも一つを含む湿
式めっきを用いた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Au−Sn合金(N
i、Cuなどの下地めっき成分を含有するものでその含
有比率の小さいAu−Sn−Ni合金、Au−Sn−C
u成分を含む)を用いて金属部材同士をろう付けにより
接合する方法及びAu−Snろう付け用インサート材、
これらの接合技術を利用したインクジェットプリンタに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、Au−Sn合金を用いて金属部材
同士をろう付けする場合には、Au−Sn合金箔及び接
合表面の酸化膜を除去する作用を持つフラックスを接合
部に挿入し、加熱加圧してろう付けを行っていた。その
他の接合方法としては、インクジェットプリンタのプリ
ントヘッドの部品同士を、有機接着剤による接着や、特
開平2−107451号公報に示されるごとく、Ni−
PろうやAu−Niろうなどの高融点ろう材を用いて接
合していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】Au−Snろう付けの
際にAu−Sn合金箔及びフラックスを接合部に挿入す
る場合には、フラックスは腐食性を有するので、残留フ
ラックスを洗浄除去する工程が必要であった。さらに、
はんだ中に巻き込まれて接合部に残留したフラックスが
接合部を腐食させるという問題があった。またAu−S
n合金はほとんど延性を有しないので圧延することがで
きず、箔とするには板状のインゴットを研削によって薄
く加工することが必要であった。
【0004】一方、プリントヘッドの接合に有機接着剤
を用いる場合には、接着剤の経時劣化により接着強度が
低下し、接合部の信頼性を高めることが困難であった。
また高融点ろう材を用いる場合は、接合される部材が高
温による降伏強度低下や熱ひずみが原因となって塑性変
形するので、接合精度を向上させることが困難であっ
た。
【0005】本発明は以上の点に鑑みてなされ、その目
的は、前述した如きAu−Sn合金箔、フラックス、有
機接着剤、高融点ろう材の問題を解消するために、これ
に代わるAu−Sn合金接着手法を用いて、しかも、そ
の接合条件に工夫をなして、接合強度が高く、耐食性、
接合精度に優れた高信頼性の接合技術を提供することに
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、まず、次のよ
うな接合方法を提案する。
【0007】すなわち、母材側から順に厚さ0.5μm
以下の下地めっき(例えばNiめっき)、厚さ5μm以
下のAuめっき、厚さ5μm以下のSnめっき、厚さ5
μm以下のAuめっきを層状に施した金属部材同士を、
或いは前記層状めっきを施した金属部材と、母材側から
順に厚さ0.5μm以下の下地めっき、厚さ0.5μm
以下のAuめっきを層状に施した金属部材とを、真空中
或いは不活性ガス中にて加熱・加圧して接合し、且つ接
合条件として、前記下地めっきを除いたAuめっきとS
nめっきとの系での組成を、積層されるめっき組合せ全
体でSnが20mass%を超え40mass%未満と
し、前記Auめっき及びSnめっきは、めっき皮膜内に
0℃、1気圧換算でめっき体積の1/2倍以上の水素及
び水の少なくとも一つを含む湿式めっきを用いたことを
特徴とする(これを第1の発明とする)。
【0008】また、被接合部材同士をろう付け用インサ
ート材を介して接合する方式において、インサート材の
母材の表面に下地めっきを施し、且つその上にAuめっ
き及びSnめっきを層状に施してあり、これらのめっき
層のうち少なくとも1種類のめっき皮膜内に0℃、1気
圧換算でめっき体積の1/2倍以上の水素あるいは水を
含ませたAu−Snろう付け用インサート材を提案する
(これを第2の発明とする)。
【0009】
【作用】第1の発明によれば、接合工程において、被接
合部材同士を加圧しつつ加熱すると、Au及びSnが共
晶反応を生じて溶解(溶融)する。この場合、少なくと
もAuめっき及びSnめっきは、H2ガス及び水分を多
量に含んでおり、加熱によりこれらのガスが泡となって
Au−Sn融液から加熱雰囲気内に放出される。このガ
ス放出の際、泡がAu−Sn融液を撹拌し、Au−Sn
融液に残留している汚染物層を分断破壊するので、Au
−Sn融液は完全に一体化する。
【0010】接合過程において、Au−Sn融液と下地
めっき(ここではNiめっきとする)との界面には両者
の反応生成物であるNi−Au−Sn化合物が形成され
る。この金属間化合物は強度が低く、接合強度の低下要
素となるが、上記各めっきの厚さ設定(量的設定)にお
いて、さらに加熱を続けると、下地めっきとしてのNi
めっきの厚さを0.5μm以下とすることにより、Ni
めっき及びNi−Au−Sn金属間化合物がAu−Sn
融液中に完全に溶解して上記の接合強度低下要素が解消
し、被接合部材はそれぞれAu−Sn融液に直接接触す
る。次に冷却すれば、接合部はNiをわずかに含むAu
−Sn合金となり、これにより被接合部材同士(金属部
材同士)が強固に接合される。
【0011】また、Au−Sn2元系の共晶点は、Au
−20mass%Snであるが、Au−Sn融液中にN
iが溶解する過程では、NiとSnが反応して金属間化
合物を形成し、その分Au−Sn融液中のSn含有量が
減少する。共晶点よりもSnが減少すると、Au−Sn
合金の融点は急激に増大する。
【0012】たとえば接合初期のAu−Sn融液が共晶
組成である場合、633Kに加熱すると完全に液相状態
にあるが、ここでSnがNiとの反応により消費される
と、Au−Sn融液中のSn濃度が低下して融点が上昇
する。Sn濃度が低下すると、Au−Sn融液の融点が
加熱温度と等しくなり等温凝固する。いったん凝固して
しまうとNiのAu−Sn合金中への溶解速度が極端に
減少し、Niを完全にAu−Sn合金中へ溶解させるに
は極めて長時間を要することになる。したがってNiが
完全に溶解するまでAu−Sn合金を溶融させ続けるに
は、初期のAu−Sn融液のSn濃度をNiとの反応を
考慮して20mass%を越えて30mass%以下と
するのがよく、望ましくは22mass%から29ma
ss%、さらに望ましくは24mass%から28ma
ss%とするのがよい。
【0013】第2の発明のAu−Snろう付けインサー
ト材を用いて被接合部材同士を接合する場合には、次の
ように行われる。
【0014】被接合部材間にAu−Snろう付けインサ
ート材を挿入し、接合面を密着させて加熱する。インサ
ート材側のAuめっき、Snめっきは共晶反応を生じて
溶融する(この場合、被接合部材側の母材表面にもAu
めっきを施して、このAuめっきとインサート材側のA
uめっき、Snめっきとを溶融させ合ってもよい)。
【0015】本発明においても、H2ガス及び水分に起
因するガス(泡)がAu−Sn融液を撹拌し、また、接
合部が最終的には、Niをわずかに含むAu−Sn合金
或いはNi含有比率が小さいAu−Sn−Ni合金とな
る。したがって、このろう付けインサート材を用いるこ
とで、被接合部材同士が強固に接合される。
【0016】
【実施例】
〔実施例1〕本発明の第1実施例を図1を用いて説明す
る。
【0017】図1は母材側から順に厚さ0.3μmのN
iめっき、厚さ3μmのAuめっき、厚さ3μmのSn
めっき及び厚さ0.5μmのAuめっきを形成した金属
部材同士を重ね合わせて、N2ガス中にて加熱加圧して
接合する積層接合方法を示す図である。
【0018】101は厚さ50μmのSUS304板
(母材)、102は厚さ0.3μmのNiめっき(母材
の耐食性を図るための下地めっき)、103は厚さ3μ
mのAuめっき、104は厚さ3μmのSnめっき、1
05は厚さ0.5μmのAuめっき、106aはAuと
Snとが共晶反応して生成したAu−Sn合金融液、1
06bは、上記融液が凝固したAu−Sn合金、107
はAu−Sn合金融液106aとNiとが反応して生成
したNi−Au−Sn金属間化合物である。本例では、
母材101の両面に上記4層のめっきが形成してある。
【0019】次に接合プロセスについて説明する。
【0020】まず、接合条件としては、 Niめっき102を除いたAuめっき103、105
とSnめっき104との系での組成を、Auめっきに対
して、積層されるめっき組合せ全体でSnが20mas
s%を超え40mass%未満とし、 また、各めっき102〜105は、めっき皮膜内に0
℃、1気圧換算でめっき体積の1/2倍以上の水素及び
水の少なくとも一つを含む湿式めっきを用いている。
【0021】上記条件の下で、 (1)上述の4層のめっき102〜105を施したSU
S304板(被接合金属部材)101を対向させて置
き、雰囲気をN2ガスにて置換する〔図1(a)〕。
【0022】(2)被接合金属部材を加圧しつつ360
℃に加熱すると、上記めっき層のうちAu及びSnが共
晶反応を生じて溶解し、Au−Sn融液106aを形成
する〔図1(b)〕。各めっき皮膜はH2ガス及び水分
を多量に含んでおり、加熱によりこれらのガスが放出さ
れる。放出されたガスは泡108となってAu−Sn融
液106a中から雰囲気内へ放出される。この際ガスの
泡108がAu−Sn融液106aを攪拌し、Au−S
n融液106a中に残留している汚染物層109を分断
破壊するので、Au−Sn融液層106aは完全に一体
化する。Au−Sn融液106aとNiめっき102と
の界面には両者の反応生成物であるNi−Au−Sn金
属間化合物107が形成される。この金属間化合物10
7はもろく、またNiめっき102との密着強度が低い
ので接合強度の低下をもたらすが、さらに加熱を続ける
とNiめっき102及びNi−Au−Sn金属間化合物
107はAu−Sn融液106a中に完全に溶解し、A
u−Sn融液と母材(SUS304板)101とが直接
接触する。次に接合部を冷却すれば、上記Au−Sn融
液は、Niをわずかに含むAu−Sn合金106bとな
り、これによってSUS304板101同士が強固に接
合される〔図1(c)〕。
【0023】図2によりSUS304板同士の接合にお
けるピール強度とNi−Au−Sn金属間化合物の厚さ
との関係を説明する。図2は横軸が金属間化合物とNi
めっきを合わせた厚さdを示し、縦軸がピール強度を示
す。ピール強度はdが小さいほど高くなる傾向を示して
いる。最も強度が高いのは、dが0すなわちAu−Sn
融液中にNiが完全に溶解してしまった場合であること
が分かる。
【0024】図3にAu−Sn2元系の状態図を示す。
Au−Sn2元系の共晶点はAu−20mass%Sn
であり、図中では点Aとして示されている。Au−Sn
融液中にNiが溶解する過程では、NiとSnが反応し
て金属間化合物を形成し、その分Au−Sn融液中のS
n含有量が減少する。共晶点よりもSnが減少すると、
Au−Sn合金の融点は急激に増大することが状態図に
示されている。
【0025】たとえば接合初期のAu−Sn融液が共晶
組成である場合、633Kに加熱すると状態図中の位置
は点Aとなり、完全に液相であることがわかる。ここで
SnがNiとの反応により消費されると、Au−Sn融
液中のSn濃度が低下して融点が上昇する。Sn濃度が
低下して点A’に到達すると、Au−Sn融液の融点が
加熱温度と等しくなり等温凝固する。いったん凝固して
しまうとNiのAu−Sn合金中への溶解速度が極端に
減少し、Niを完全にAu−Sn合金中へ溶解させるに
は極めて長時間を要することになる。したがってNiが
完全に溶解するまでAu−Sn合金を溶融させ続けるに
は、初期のAu−Sn融液のSn濃度をNiとの反応を
考慮して20mass%を越えて30mass%以下と
するのがよく、望ましくは22mass%から29ma
ss%、さらに望ましくは24mass%から28ma
ss%とするのがよい。
【0026】本実施例によれば、次のような効果を奏す
る。 (イ)上記のごとく、接合プロセスにおいて、Au−S
n合金を撹拌することができ、しかも、Au−Snの重
量配分を、下地のNiめっき及びプロセス中に生じるN
i−Au−Sn化合物との反応を考慮して定めてあるの
で、そのプロセスで接合強度が高い接合方法を提供する
ことができる。 (ロ)Au−Sn合金を箔としてではなく、めっき皮膜
の形態で供給するので、従来のような機械加工によるA
u−Sn箔を製作する工程をなくし、製作コストの低減
を図り得る。 (ハ)接合前の接合表面はAuであり、Auが酸化しな
いことからフラックスを用いなくとも接合部を一体化さ
せることが可能になり、従来のようなフラックス除去作
業をなくし作業効率を高めると共に、残留フラックスに
よる接合部の腐食といった問題をなくし、接合部の耐食
性を高めることができる。
【0027】〔実施例2〕本発明の第2実施例を図4を
用いて説明する。
【0028】本実施例では、母材側から順に厚さ0.3
μmのNiめっき、厚さ3μmのAuめっき、厚さ2.
5μmのSnめっき及び厚さ0.5μmのAuめっきを
形成した金属部材と、厚さ0.3μmのNiめっき及び
厚さ0.5μmのAuめっきを形成した金属部材とを積
層して、N2ガス中にて加熱加圧して接合する積層接合
方法を示す図である。
【0029】401a及び401bは、母材(被接合部
材)となるべき厚さ50μmのSUS304板、402
a及び402bは厚さ0.3μmのNiめっき(下地め
っき)、403aは厚さ2.5μmのAuめっき、40
4aは厚さ3μmのSnめっき、405a及び405b
は厚さ0.5μmのAuめっき、406aはAuとSn
とが共晶反応して生成したAu−Sn合金融液、406
bは凝固したAu−Sn合金、407aはAu−Sn合
金融液406とNiめっき402aとが反応して生成し
たNi−Au−Sn金属間化合物、407bはAu−S
n合金融液406とNiめっき402bとが反応して生
成したNi−Au−Sn金属間化合物である。
【0030】次に接合プロセスについて説明する。
【0031】本例も第1実施例同様の接合条件、す
なわち、Niめっきを除いたAuめっき403a、40
5a、405bとSnめっき404aとの系での組成
を、積層されるめっき組合せ全体でSnが20mass
%を超え40mass%未満とし、また、各めっき40
2a〜405a、402b、405bは、めっき皮膜内
に0℃、1気圧換算でめっき体積の1/2倍以上の水素
及び水の少なくとも一つを含む湿式めっきを用いてい
る。
【0032】上記接合条件の下で、 (1)上述のめっきを施した被接合部材同士(SUS3
04板401a及び401b)を対向させて置き、雰囲
気をN2ガスにて置換する〔図4(a)〕。 (2)これらの被接合金属部材同士を、わずかに加圧し
つつ360℃に加熱する。Au及びSnが共晶反応を生
じて溶解する。この場合、図1にて説明した実施例の場
合とは異なり、母材401b側のAuめっき405b
は、母材401a上のSnと反応して初めて溶融する。
したがって、わずかの時間差ではあるが、母材401a
上のめっき403a、404a及び405aがまず溶融
してAu−Sn融液を形成し、その中にAuめっき40
5bが溶解することになる〔図4(b)〕。
【0033】各めっき皮膜はH2ガス及び水分を多量に
含んでおり、加熱によりこれらのガスが放出される。放
出されたガスは泡となってAu−Sn融液406a中か
ら雰囲気内へ放出される。この際ガスの泡408がAu
−Sn融液406aを攪拌し、Au−Sn融液406a
中に残留している汚染物層409を分断破壊するので、
Au−Sn融液406aは完全に一体化する。
【0034】Au−Sn融液406aとNiめっき40
2a及び402bとの界面には両者の反応生成物である
Ni−Au−Sn金属間化合物407a及び407bが
形成される。この金属間化合物は強度が低く、接合強度
の低下をもたらすが、さらに加熱を続けるとNiめっき
402a、402b、Ni−Au−Sn金属間化合物4
07a及び407bはAu−Sn融液406a中に完全
に溶解し、Au−Sn融液406aとSUS304板4
01a及び401bとが直接接触する。次に冷却すれば
Niをわずかに含むAu−Sn合金406bとなり、こ
れによってSUS304板401a及び401bが強固
に接合される〔図4(c)〕。
【0035】接合初期のAu−Sn融液406aが共晶
組成である場合には、前述の通りSnとNiとの反応に
よりAu−Sn融液406a中のSn濃度が低下して融
点が上昇することにより、Au−Sn融液406aは等
温凝固する。いったん凝固してしまうとNiのAu−S
n合金中への溶解速度が極端に減少し、Niめっき40
2a及び402bを完全にAu−Sn合金中へ溶解させ
るには極めて長時間を要することになる。したがってN
iめっき402a及び402bが完全に溶解するまでA
u−Sn合金を溶融させ続けるには、初期のAu−Sn
融液406aのSn濃度をNiとの反応を考慮して20
mass%を越えて30mass%以下とするのがよ
く、望ましくは22mass%から29mass%、さ
らに望ましくは24mass%から28mass%とす
るのがよい。本実施例の場合は初期のAu−Sn融液4
06aのSn濃度は、めっき皮膜403a、404a及
び405aにAuめっき405bの量を加味して算出す
る必要がある。
【0036】本実施例によれば、第1実施例同様の効果
を奏することができる。
【0037】〔実施例3〕本発明の第3実施例を図5及
び図6を用いて説明する。
【0038】本実施例は、上記各実施例と異なり、被接
合部材同士をAu−Snろう付け用インサート材を介し
て接合する一例であり、図5にそのインサート材の縦断
面図を、図6にその接合プロセスを示す。
【0039】501は穴のない厚さの一様なSUS30
4板(インサート材)、502はインサート材501の
両面に形成されたろう付けのめっき層で、例えば、ろう
付け層502は、インサート材側から順にSUS304
板上に形成された厚さ0.3μmのNiめっき、厚さ3
μmのAuめっき、厚さ3μmのSnめっき、厚さ0.
5μmのAuめっきの4層からなるろう材層である。
【0040】本実施例はAu−Snろう付け用インサー
ト材の最も基本的な実施例である。本実施例は微小部分
のろう付けに適している。穴のない厚さの一様なSUS
304板501を用いることにより、SUS304板上
に形成された各めっき層の厚さを均一にすることが容易
であり、仕上がり寸法精度の高い接合を行うことが可能
である。
【0041】図6により本実施例の接合プロセスを説明
する。
【0042】503及び504はSUS304製の微小
な被接合部材で、この被接合部材(母材)503、50
4の接合面となるべき面には、厚さ0.3μmのNiめ
っき(下地めっき)505及び厚さ0.5μmのAuめ
っき506が形成してある。
【0043】接合条件としては、本実施例においても、
上記めっき層のうち、少なくとも1種類のめっき皮膜内
に0℃、1気圧換算でめっき体積の1/2以上の水素あ
るいは水を含ませている。
【0044】接合プロセスは次のとおりである。 (1)まず被接合部材503及び504の間に、図5に
て詳細を示したろう材層502付きSUS304板50
1からなるAu−Snろう付け用インサート材を挿入す
る〔図6(a)〕。 (2)次に被接合部材503、504とインサート材と
の接合面を密着させ、N2雰囲気中で360℃に加熱す
る。ろう材層502とNiめっき505及びAuめっき
506が共晶反応を生じて溶融し、Ni含有比率が小さ
いAu−Sn−Ni合金融液507aを形成する。この
過程で、ろう材層502からのアウトガスにより、Au
−Sn−Ni合金融液507a中に気泡508が形成さ
れるが、接合部が微小であるので大部分の気泡を加熱中
に接合部外に放出させることが可能である〔図6
(b)〕。接合部を冷却することによりAu−Sn−N
i合金融液は符号507bに示すように凝固し、被接合
部材503及び504は、Au−Sn−Ni合金507
bにより強固に接合される〔図6(c)〕。SUS30
4板501の寸法としては、幅5mm以下、望ましくは
3mm以下、さらに望ましくは2mm以下とすることが
必要である。接合部の幅が大きい場合は、気泡508を
接合部外に放出させることが困難となり、結果として大
きな気泡が接合部に残留し、接合強度を極端に低下させ
るので、接合部の大きさに応じて本実施例を適用する必
要がある。厚さは用途に合わせて任意に選択できる。典
型的な例としては厚さ50μmである。
【0045】本実施例によれば、第1、第2実施例と同
様の効果を奏するほかに、接合用のめっき層の大部分を
インサート材側に形成することで、被接合部材の適用対
象を広げることができる。
【0046】〔実施例4〕本発明の第4実施例を図7及
び図8を用いて説明する。
【0047】図7は本実施例に係るAu−Snろう付け
用インサート材の断面図であり、図中、701は、ガス
溜め穴(貫通穴)702を多数あけた厚さの一様なSU
S304板(インサート材)で、このインサート材70
1の表面にろう材層502が形成してある。ろう材層5
02は、インサート材の母材(SUS304板)701
側から順に積層された厚さ0.3μmのNiめっき(下
地めっき)、厚さ3μmのAuめっき、厚さ3μmのS
nめっき、厚さ0.5μmのAuめっきの4層からな
る。
【0048】本実施例においても、上記めっき層のう
ち、少なくとも1種類のめっき皮膜内に0℃、1気圧換
算でめっき体積の1/2以上の水素あるいは水を含ませ
ている。
【0049】図8により本実施例の接合プロセスを説明
する。
【0050】図8は、本実施例におけるAu−Snろう
付け用インサート材を用いて2つの部材を接合する方法
を示し、図中、803及び804は、SUS304製の
被接合部材、805は厚さ0.3μmのNiめっき、8
06は厚さ0.5μmのAuめっき、807aは接合プ
ロセス途中のAu−Sn−Ni合金融液、807bは凝
固したAu−Sn−Ni合金、808は気泡である。
【0051】接合プロセスは次のとおりである。 (1)まず被接合部材803及び804の間に図7にて
詳細を示したAu−Snろう付け用インサート材701
を挿入する〔図8(a)〕。 (2)次に接合面を密着させ、N2雰囲気中で360℃
に加熱する。ろう材層502とNiめっき805及びA
uめっき806が共晶反応を生じて溶融し、Au−Sn
−Ni合金融液807aを形成する〔図8(b)〕。こ
の際、ろう材層502からのアウトガスによりAu−S
n−Ni合金融液807a中に気泡808が形成され
る。これらの気泡808のうち、接合部外周に近いもの
は、そのまま接合部外に放出されるが、接合部外周から
離れているものはインサート材(SUS304板)70
1に設けられたガス溜め穴702に捕捉されることによ
り、Au−Sn−Ni合金融液外に放出される。この作
用により、被接合部材が微小でなくとも、接合部から気
泡808を除去することが可能である。接合部を冷却す
ることにより、符号の807bに示すようにAu−Sn
−Ni合金融液は凝固し〔図8(c)〕、被接合部材8
03及び804はAu−Sn−Ni合金807bにより
強固に接合される。
【0052】図9を用いて上記第4実施例に適用するS
US304板にあけられた穴の寸法及び配置の例を説明
する。901はAu−Snろう付け用インサート材、9
02、903、904はガス溜め用の穴である。
【0053】図9(a)に示す例では穴902は円形、
(b)に示す実施例では穴903は矩形、(c)に示す
実施例では穴904は不定形である。これらに示すごと
く、穴は任意の形状とすることができる。これらの穴の
直径はAu−Snろう付け用インサート材901の厚さ
の1/2倍以上、望ましくは1倍以上、さらに望ましく
は2倍以上、さらに望ましくは3倍以上とする。また穴
のピッチは、直径5mm以下、望ましくは3mm以下、
さらに望ましくは2mm以下の円内に1個以上の穴が位
置する値とする。このように穴を配置することにより、
ろう材層502から生じたガスによる気泡を有効に捕捉
することができ、強固な接合部を得ることができる。
【0054】〔実施例5〕本発明の第5実施例を図10
及び図11を用いて説明する。
【0055】図10は本実施例に係るAu−Snろう付
け用インサート材の断面図で、図中、1001は穴のな
い厚さの一様なSUS304板(インサート材)、11
02は、インサート材1001上に部分的に形成された
ろう材層で、ろう材層1102は、母材1001側から
順に厚さ0.3μmのNiめっき、厚さ3μmのAuめ
っき、厚さ3μmのSnめっき、厚さ0.5μmのAu
めっきの4層からなり、部分的に形成されたろう材層1
102が多数、間隔1109を置いて縞状或いは格子状
に形成されている。
【0056】本実施例においても、少なくとも1種類の
めっき皮膜内に0℃、1気圧換算でめっき体積の1/2
倍以上の水素あるいは水を含ませている。
【0057】図11により、本実施例におけるAu−S
nろう付け用インサート材を用いて2つの部材を接合す
るプロセスを説明する。
【0058】図11において、1103及び1104
は、SUS304製の被接合部材、1105は部分的に
施された厚さ0.3μmのNiめっき、1106はNi
めっき1105上に形成された厚さ0.5μmのAuめ
っき、1107aはAu−Sn−Ni合金融液、110
7bは凝固したAu−Sn−Ni合金、1108は気泡
である。
【0059】接合プロセスは次のとおりである。 (1)まず被接合部材1103及び1104の間に、図
10にて詳細を示したAu−Snろう付け用インサート
材を挿入する〔図11(a)〕。 (2)次に接合面を密着させ、N2雰囲気中で360℃
に加熱する。ろう材層1102とNiめっき1105及
びAuめっき1106が反応を生じて溶融し、Au−S
n−Ni合金融液1107aを形成する〔図11
(b)〕。この際、ろう材層1102からのアウトガス
によりAu−Sn−Ni合金融液1107a中に気泡1
108が形成される。これらの気泡1108は、周囲の
ろう材層502が形成されていない部分(間隙)110
9を通じて接合部外に放出される。この効果により被接
合部材が微小でなくとも、接合部から気泡1108を除
去することが可能である。
【0060】次に接合部を冷却することにより、Au−
Sn−Ni合金融液は符号1107bに示すように凝固
し、被接合部材1103及び1104はAu−Sn−N
i合金1107bにより強固に接合される。
【0061】SUS304製の被接合材1103および
1104は、Au−Sn−Ni合金融液1107aにぬ
れないので、Au−Sn−Ni合金融液1107aは部
分的に施されたNiめっき1105の外部に広がること
はない。したがってAu−Sn−Ni合金融液1107
aがぬれなかった部分には空間1109が確保される。
この空間部分は流体を導く流路として利用することがで
きる。
【0062】さらにSUS304製の被接合材1103
および1104を、電気回路が形成された基板あるいは
電子デバイスとすることにより、凝固したAu−Sn−
Ni合金1107bを電極兼電子デバイス固定用構造材
料として用いることが可能である。
【0063】〔実施例6〕本発明の第6実施例を図1
2、図13及び図14を用いて説明する。本実施例は、
上記各実施例の接合方式の一例として、インクジェット
プリンタへの適用例を示すものである。
【0064】図12は本実施例のインクジェットプリン
タの断面である。1201は筐体、1202はメモリー
カード、1203は制御基板、1204は紙送りベル
ト、1205は用紙、1206は用紙受け、1207は
プリントヘッド、1208はインクローダ、1209は
インクカセット、1210は用紙カセット、1211は
ヘッド送りモータ、1212は用紙ピックアップロー
ラ、1213はヘッドキャリッジ、1214は紙送りモ
ータ、1215は電源、1216は液体インク、121
7は固体インク、1218はインク溶融用のヒータ、1
219は印字ノズルである。
【0065】ここで、本例のインクジェットプリンタの
動作を説明する。
【0066】まず用紙カセット1210に用紙1205
をセットする。用紙は200枚までセット可能である。
図示しないコンピュータより印字信号が送られると、印
字信号はメモリーカード1202内に一時的に記憶さ
れ、制御基板に実装されたマイクロコンピュータにより
印刷イメージに展開される。印刷イメージができあがる
と、用紙1205は用紙ピックアップローラ1212に
よりピックアップされ、印刷所定位置まで紙送りモータ
1214及び紙送りベルト1204により送られる。つ
いで用紙1205の位置を紙送りベルト1204で制御
し、ヘッドキャリッジ1213を介してヘッド送りモー
タ1211にてプリントヘッドの位置を制御しつつ、プ
リントヘッド1207の先端に取り付けられた印字ノズ
ルよりインクを噴射して印字を行う。プリントヘッド内
のインクの量がある一定量以下となると、インクローダ
により自動的にインクカセット1209内に蓄えられて
いる固体インク1217が供給される。固体インク12
17はプリントヘッド内のヒータ1218により供給さ
れる熱により溶融し、液体インク1216となる。上述
の全ての動作は制御基板1203により制御される。ま
た印字動作に必要な全ての電力は電源1215により供
給される。
【0067】図13により印字ノズル1219の詳細を
示す。
【0068】このうち、1310は厚さ0.3μmのN
iめっき及び厚さ0.5μmのAuめっきが施されたア
ルミニウム製ハウジングホルダであり、このアルミニウ
ム製ハウジングホルダ1310には、インク流路131
1及び1312、PZTアクチュエータ1313が配設
されている。
【0069】1320はインサート材となるSUS30
4製ボンディングプレートで、このボンディングプレー
ト1320は、母材側から順に厚さ0.3μmのNiめ
っき、厚さ2.5μmのAuめっき、厚さ3μmのSn
めっき、厚さ0.5μmのAuめっきの4層よりなるろ
う材層が形成されている。
【0070】このボンディングプレート1320には、
PZTアクチュエータ用穴1322が設けてある。
【0071】1330はNi合金製ダイアフレームフィ
ルタープレートで、このダイアフレームフィルタープレ
ート1330の表面には、厚さ0.3μmのNiめっき
及び厚さ0.5μmのAuめっきが施されている。
【0072】また、ダイアフレームフィルタープレート
1330には、フィルターメッシュ1331が形成され
ている。
【0073】1340はSUS304製リストリクター
プレートで、その表面には、厚さ0.3μmのNiめっ
き、厚さ2.5μmのAuめっき、厚さ3μmのSnめ
っき、厚さ0.5μmのAuめっきよりなるろう材層が
施されている。
【0074】リストリクタープレート1340には、リ
ストリクター1341が設けてある。
【0075】1350はNi合金製オリフィスプレート
で、その表面には、厚さ0.3μmのNiめっき及び厚
さ0.5μmAuめっきが施されている。オリフィスプ
レート1350には、オリフィス1351が配設されて
いる。
【0076】1360はインク通過経路、1370はイ
ンク、1314、1323、1332、1342及び1
352は組み立て時の位置決め穴、1315、132
4、1333、1343及び1353はプリントヘッド
への取り付け用ボルトの通し穴、1325及び1344
は直径0.15mmの穴である。
【0077】これらを位置決め穴と位置決めピンを用い
て、図14に示すように、アルミニウム製ハウジングホ
ルダ1310、ボンディングプレート1320、ダイア
フレームフィルタプレート1330、リストリクタープ
レート1340、オリフィスプレート1350を位置決
めして重ね合わせ、N2雰囲気中で60秒間、360℃
の加熱及び120kgfの加圧を行い接合する。
【0078】ボンディングプレート1320及びリスト
リクタープレート1340には、接合時にAu−Sn合
金から放出されるガスを逃がす穴1325及び1344
が一面に開けられており、各部品を強固に接合すること
ができる。
【0079】接合されたノズル内には微細なインク流路
が形成される。プリントヘッドから供給されたインクは
インク流路1311に流入し、インク通過経路1360
に沿ってボンディングプレート3120を通過し、ダイ
アフレームフィルタープレート1330に形成されたフ
ィルターメッシュ1331にて異物をろ過し、リストリ
クタープレート1340に形成されたリストリクター1
341に流入する。次にPZTアクチュエータ1313
がボンディングプレート1320に形成されたPZTア
クチュエータ用穴を通してダイアフレームフィルタープ
レート1330を変位させることによりリストリクター
部に蓄えられたインク1370に圧力を加える。インク
1370はその反動でオリフィスプレートに形成された
オリフィス1351から勢いよく噴出し、印字にあずか
る。
【0080】図14を用いて印字ノズル1219の接合
部構造を説明する。1410は、厚さ0.3μmのNi
めっき及び0.5μmAuめっきからなるめっき層、1
420は、厚さ0.3μmのNiめっき、厚さ2.5μ
mのAuめっき、厚さ3μmSnめっき及び厚さ0.5
μmのAuめっきからなるろう材層、1421はガス溜
め、1430はAu−Sn−Ni合金からなるろう材、
1450はエポキシ接着剤である。
【0081】接合プロセスは次のとおりである。まず被
接合部材1310、1320、1330、1340及び
1350を重ね合せる。次に接合面を密着させ、N2
囲気中で360℃に加熱する。ろう材層1420とめっ
き層1410が反応を生じて溶融し、Au−Sn−Ni
合金融液を形成する。この際、ろう材層1420からの
アウトガスによりAu−Sn−Ni合金融液中に気泡が
形成されるが、これらの気泡は周囲のガス溜め1421
に吸収され、接合部から除去される。接合部を冷却する
ことによりAu−Sn−Ni合金融液は凝固して固相の
ろう材1430となり、各部材は強固に接合される。次
にPZT1440をエポキシ接着剤1450を用いてダ
イアフレームプレート1330に接着する。
【0082】プリントヘッドから供給されたインクは、
インク流路1311に流入し、インク通過経路1360
に沿ってボンディングプレート1320を通過し、ダイ
アフレームフィルタープレート1330に形成されたフ
ィルターメッシュ1331にて異物をろ過され、リスト
リクタープレートに形成されたリストリクター1341
に流入する。次にPZTアクチュエーター1313がボ
ンディングプレート1320に形成されたPZTアクチ
ュエーター用穴を通してダイアフレームフィルタープレ
ート1330を変位させることによりリストリクター部
に蓄えられたインク1370に圧力を加える。インク1
370はその反動でオリフィスプレートに形成されたオ
リフィス1351から勢いよく噴出し、印字にあずか
る。
【0083】なお、被接合部材同士を接合する場合にお
いて、それらのめっきの厚さは、上記実施例に限定され
るものではなく、例えば、母材側から順に厚さ0.5μ
m以下のNiめっき、厚さ5μm以下のAuめっき、厚
さ5μm以下のSnめっき、厚さ5μm以下のAuめっ
きを層状に施したもの、或いは、上記のような層状めっ
きを施した金属部材との接続対象として、母材側から順
に厚さ0.5μm以下のNiめっき、厚さ0.5μm以
下のAuめっきを層状に施したものであれば、本発明の
所期の効果を奏することができる。
【0084】本実施例によれば、インク噴射ノズルを構
成している各部品をAu−Sn合金にて接続しているの
で、有機接着剤を用いて接合した場合よりも経時劣化が
少なく、信頼性の高い接合を行うことができる。
【0085】また、Au−Sn合金は酸及びアルカリに
対する耐食性に優れており、高温下で腐食性を有するイ
ンクでも用いることができ、インク設計の自由度が増加
する。その結果、良好な印字特性を有するインクの開発
が容易となる効果がある。
【0086】なお、上記実施例では各部品の材料をSU
S304、Ni合金及びアルミニウムとしているが、一
般の鉄鋼や銅合金など、Au−Sn共晶温度の280℃
の加熱に耐える材料であればよい。またAuめっきの下
地めっきとしてNiめっきを用いているが、Cuめっき
でも同様の効果を得ることができる。また接合雰囲気は
2のみでなく、Ar等の非酸化性雰囲気中にても同様
に接合を行なうことができる。
【0087】
【発明の効果】本発明によれば、 (イ)接合プロセスにおいて、めっき皮膜内に水素ある
いは水を含ませておくことにより、接合時の加熱により
水素あるいは水がガス化して、このガス(気泡)が接合
外部流出に際して、溶融したAu−Sn合金を攪拌しA
u−Sn合金を撹拌することができ、しかも、Au−S
nの重量配分を、下地のNiめっき及びプロセス中に生
じるNi−Au−Sn化合物との反応を考慮して定めて
あるので、そのプロセスで接合強度が高い接合方法を提
供することができる。さらに、耐食性を配慮して被接合
部材の下地めっきとしてNiめっきを施すが、このNi
めっきの厚さを0.5μm以下とすることにより、接合
中にNiめっきはAu−Sn合金融液中に完全に溶解
し、接合界面に残留しないので強固な接合をより助長す
る。
【0088】(ロ)Au−Sn合金を箔としてではな
く、めっき皮膜の形態で供給するので、従来のような機
械加工によるAu−Sn箔を製作する工程をなくし、製
作コストの低減を図り得る。
【0089】(ハ)接合前の接合表面はAuであり、A
uが酸化しないことからフラックスを用いなくとも接合
部を一体化させることが可能になり、従来のようなフラ
ックス除去作業をなくし作業効率を高めると共に、残留
フラックスによる接合部の腐食といった問題をなくし、
接合部の耐食性を高めることができる。
【0090】(ニ)また、本発明の接合法は、接合材の
加熱温度も高融点ろう材に比較して低くできるので、熱
による部材の変形も少ない。Au−Sn合金は耐食性に
優れるので、腐食性の強いインクによっても腐食される
ことがない。特に、インクジェットの噴射ノズルを構成
している各部品をAu−Sn合金にて接続した場合に
は、有機接着剤を用いて接合した場合よりも経時劣化が
少なく、信頼性の高い接合を行うことができる。
【0091】またAu−Sn合金は酸及びアルカリに対
する耐食性に優れており、高温下で腐食性を有するイン
クでも用いることができ、インク設計の自由度が増加す
る。その結果良好な印字特性を有するインクの開発が容
易となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係る接合プロセスを示
す断面図。
【図2】 ピール強度とNi−Au−Sn金属間化合物
の厚さとの関係を示す線図。
【図3】 Au−Sn2元系の状態説明図。
【図4】 本発明の第2実施例に係る接合プロセスを示
す断面図。
【図5】 本発明の第3実施例に係るAu−Snろう付
け用インサート材の断面図。
【図6】 上記Au−Snろう付け用インサート材を用
いて2つの部材を接合するプロセスを示す断面図。
【図7】 本発明の第4実施例に係るAu−Snろう付
け用インサート材の断面図。
【図8】 上記第4実施例のAu−Snろう付け用イン
サート材を用いて2つの部材を接合するプロセスを示す
断面図。
【図9】 第4実施例に用いるインサート材にあけられ
た穴の寸法及び配置の例を示す平面図。
【図10】 本発明の第5実施例に係るAu−Snろう
付け用インサート材の断面図。
【図11】 上記第5実施例のAu−Snろう付け用イ
ンサート材を用いて2つの部材を接合するプロセスを示
す断面図。
【図12】 本発明の適用対象となるインクジェットプ
リンタ(第6実施例)の断面図。
【図13】 上記インクジェットプリンタに用いる印字
ノズルの詳細構造を示す分解斜視図。
【図14】 上記印字ノズルの接合プロセスを示す説明
図。
【符号の説明】
101…SUS304板(母材)、102…Niめっ
き、103…Auめっき、104…Snめっき、105
…Auめっき、106a…Au−Sn合金融液、106
b…Au−Sn合金、107…Ni−Au−Sn金属間
化合物、401a、401b…SUS304板、402
a、402b…Niめっき、403a…Auめっき、4
04a…Snめっき、405a、405b…Auめっ
き、406a…Au−Sn合金融液、406b…Au−
Sn合金、407a…Ni−Au−Sn金属間化合物、
407b…Ni−Au−Sn金属間化合物、501…S
US304板、502…ろう材層(Niめっき、Auめ
っき、Snめっき、Auめっき)、503及び504…
被接合部材、505…Niめっき、506…Auめっ
き、507a…Au−Sn−Ni合金融液、507b…
Au−Sn−Ni合金、508…気泡、701…穴付き
SUS304板、702…ガス溜めの穴、502…ろう
材層(Niめっき、Auめっき、Snめっき、Auめっ
き)、803、804…被接合部材、805…Niめっ
き、806…Auめっき、807a…Au−Sn−Ni
合金融液、807b…凝固したAu−Sn−Ni合金、
808…気泡、901…Au−Snろう付け用インサー
ト材、902、903及び904…穴、1001…SU
S304板、502…ろう材層(Niめっき、Auめっ
き、Snめっき、Auめっき)、1103、1104…
SUS304(被接合部材)、1105…Niめっき、
1106…Auめっき、1107a…Au−Sn−Ni
合金融液、1107b…Au−Sn−Ni合金、808
…気泡、1207…プリントヘッド、1410…Niめ
っき・Auめっきの層)、1420…ろう材層(Niめ
っき・Auめっき・Snめっき・Auめっきの層)、1
421…ガス溜め、1430…Au−Sn−Ni合金か
らなるろう材、1450…エポキシ接着剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀野 正也 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 河野 顕臣 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材側から順に厚さ0.5μm以下の下
    地めっき、厚さ5μm以下のAuめっき、厚さ5μm以
    下のSnめっき、厚さ5μm以下のAuめっきを層状に
    施した金属部材同士を、 或いは前記層状めっきを施した金属部材と、母材側から
    順に厚さ0.5μm以下の下地めっき、厚さ0.5μm
    以下のAuめっきを層状に施した金属部材とを、真空中
    或いは不活性ガス中にて加熱・加圧して接合し、 且つ接合条件として、 前記下地めっきを除いたAuめっきとSnめっきとの系
    での組成を、積層されるめっき組合せ全体でSnが20
    mass%を超え40mass%未満とし、 前記Auめっき及びSnめっきは、めっき皮膜内に0
    ℃、1気圧換算でめっき体積の1/2倍以上の水素及び
    水の少なくとも一つを含む湿式めっきを用いたことを特
    徴とする金属部材の接合方法。
  2. 【請求項2】 被接合部材間にインサートするろう付け
    用インサート材において、インサート材の母材の表面に
    下地めっきを施し、且つその上にAuめっき及びSnめ
    っきを層状に施してあり、これらのめっき層のうち少な
    くとも1種類のめっき皮膜内に0℃、1気圧換算でめっ
    き体積の1/2倍以上の水素あるいは水を含ませたこと
    を特徴とするAu−Snろう付け用インサート材。
  3. 【請求項3】 前記母材には、複数の貫通孔が設けてあ
    ることを特徴とする請求項2記載のAu−Snろう付け
    用インサート材。
  4. 【請求項4】 インクジェットプリンタにおいて、イン
    ク流路を形成した金属部材をAu−Sn合金を用いて積
    層接合して成るプリントヘッドを備えたことを特徴とす
    るインクジェットプリンタ。
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