JPH0815116B2 - 高周波加熱装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は被加熱物を高周波誘電加熱する高周波加熱装
置に関するものである。

従来の技術 一般に被加熱物を高周波誘電加熱する高周波加熱装置
である電子レンジは高周波発振器であるマグネトロンよ
りの放射電波を被加熱物に均一に与え、被加熱物である
食品等の調理加熱の出来映えを良くする手段を備えてい
る。この手段で従来より一般的に用いられているのが加
熱室内に導電体で構成された電波攪拌翼（スタラーハ
ネ）を回転もしくは可動させて加熱室の高周波電界を時
間的に変化させるスタラー方式と第３図、第４図、第５
図に示す様なターンテーブル方式である。第３図におい
て高周波発振器であるマグネトロン１は加熱室２の天面
３の上に設けられた導波管４に結合されている。導波管
４内の電界は励振されるモードによって異なる矩形導波
管でごく一般的なTE₁₀モードの例では図中矢印の方向で
あり導波管４を進行する。天面３の導波管４に対向する
部分には、加熱室内への電波の放射口となる開口５が設
けられており、加熱室内に置かれた水負荷６に高周波エ
ネルギーを供給する。加熱室内の高周波電界分布の例は
図中破線で示す様に、加熱室２の寸法、加熱室２と開口
５の位置関係等によって、高周波電波の共振器である加
熱室の共振モードによって決定される。したがって加熱
室内に存在する定まったモード内に於いて被加熱物であ
る水負荷６を均一に加熱する方法として、加熱室内に置
かれた水負荷６を回転させ異なった高周波電界中に逐一
移動させるために、加熱室外に設けられたモーター７よ
り回転力を与え被加熱物を回転させる受皿８が設けられ
ている。

第４図は導波管４を加熱室の側面に設けたものであり
他は第３図と同様である。

第５図は加熱室２を構成する側壁面９を外に向けて一
部突出させ、この突出した部分において、マグネトロン
１を加熱室２に直接結合させたものであり導波管を持た
ないものである。

発明が解決しようとする問題点 ところがこの様な従来の高周波加熱装置によると、次
の様な問題がある。

第３図において、加熱室内の共振モードは加熱室の形
状寸法及び被加熱物によって変化し、回転する受皿が８
によってこの共振モード内を移動するが、導波管４を伝
搬して来た高周波電波は、開口５に近い部分は電波の指
向性により、当然ながら直接放射による加熱は強く開口
５より離れるにつれ直接放射による加熱は弱くなる。し
たがって水負荷６の加熱状態は上下の差を生じ不均一と
なる。第４図においては、マグネトロン１よりの高周波
電波は導波管４を伝搬し開口５より加熱室に放射される
が、導波管４と加熱室２のインピーダンスを整合させ易
い様に導波管４の特性インピーダンスの不連続を無くす
るため設けられた傾斜により、天面３に向かう指向性を
持つため、加熱室の寸法以外に、開口５と加熱室内の主
反射面である天面３との距離や天面３の形状により水負
荷６の加熱状態が大きく左右される。

第５図においては、マグネトロン１よりの高周波電波
は導波管での結合に比べて、その励振モードは固定され
ず不安定でかつ不規則になる。これは水負荷６を含めた
加熱室２の持つ共振器としての負荷インピーダンスにマ
グネトロン１が直接結合され励振されるからである。し
たがって負荷の形状、量等の負荷（被加熱物）の条件及
び突出部形状の違いが、等価的に共振器の負荷インピー
ダンスが変化した事になり高周波電波の放射状態が大き
く変わるため、結果的に様々な被加熱物を均一に加熱す
る事は困難である。以上の様にターンテーブル方式と呼
ばれる均一加熱手段を持つ高周波加熱装置ではマグネト
ロン１よりの高周波電波を供給する構造により、（１）
高周波電波の指向性、（２）加熱室内の共振モード、
（３）発振器に対しての負荷インピーダンスが複雑に変
化し、発振器と被加熱物を含む加熱室とのインピーダン
ス整合による効率の向上と被加熱物に均一な高周波エネ
ルギーを供給する加熱特性の向上を共に実現するのは極
めて困難であった。

本発明はこの様な従来の問題点を解消するものであ
り、簡単な構成で均一加熱性能が良く、しかも加熱効率
の良い高周波加熱装置に提供するものである。

問題点を解決するための手段 本発明の高周波加熱装置は、略函体の加熱室と被加熱
物を加熱室内で回転させる被加熱物載置台と、高周波発
振器と、導波管を備え被加熱物載置台の位置する加熱室
壁面及び対向する壁面以外の面に導波管を配置すると共
に、導波管の加熱室側に面する導波管壁を略円錐台状に
突出させ、この突出部の中心軸上の導波管壁に円形の穴
を設けると共にこの穴を貫通し、導波管壁もしくは加熱
室壁に誘電体によって保持した導電体より成る略円筒状
の放射アンテナを設け、導波管と加熱室とを放射アンテ
ナにより電界結合するものである。

作用 本発明の高周波加熱装置は加熱室内部に設けられた被
加熱物載置台の回転軸上平面以外の加熱室壁に高周波発
振器の放射口を設けることにより、放射口より被加熱物
を見た負荷インピーダンスがその到達距離にほぼ比例し
て変化するため、回転軸上の各仮想平面上で回転軸を中
心とした同心円状に放射波エネルギー分布を被加熱物載
置台を回転する事で得られる。更に導波管の加熱室壁に
円錐台形状の突出部を設け、この突出部の中心に穴とこ
の穴を貫通する放射アンテナを設け、突出部を外導体、
放射アンテナを内導体とする同軸状の電界結合部を設け
る事により、導波管より加熱室に放射される高周波電波
の電界を放射アンテナがダイポールアンテナの特性を持
つため放射アンテナ軸に平行で、かつ軸を中心とした放
射状平面に対してほぼ均一な放射パターンを持たせるこ
とが出来る。又、発振器と導波管の整合は従来よりの技
術で導波管の短絡面や幅、高さを変えて特性インピーダ
ンスを調整する等で容易なことは周知であり、この構成
では導波管と加熱室のインピーダンス整合は、円錐台の
形状及び中心穴の径、放射アンテナの加熱室側の長さと
導波管内部の長さの比率を変えることにより前述の発振
器と導波管のインピーダンス整合と同じで極めて容易で
あり、かつインピーダンス整合、すなわち効率の追求に
より可変した各構成要素が均一加熱に対して何らの悪影
響を与えないものである。

実 施 例 以下本発明の一実施例の高周波加熱装置を図面を参照
して説明する。

第１図は本発明による高周波加熱装置の構造を示す正
面断面図である。第１図において、加熱室10は天板11と
左右側面と底面を１体に形成したＵ字板12と後板（図示
せず）と被加熱物13の搬入搬出の為に前面に設けられた
扉（図示せず）とにより略函形に形成されている。被加
熱物13は加熱室外に設けられたモータ14によって、底面
上を回転する被加熱物載置台15上に置かれている。高周
波発振器であるマグネトロン16は、矩形導波管17に出力
部アンテナ18を挿入した状態で設けられており、マグネ
トロン16より発振された高周波電波は管内を伝搬する。
一方、導波管17の加熱室10に対面する壁面（同時に加熱
室右側面も兼ねている）は略円錐台形状に突出した部分
である結合突起19があり、この結合突起19の頂点部分の
中心には結合穴20が設けられている。放射アンテナ21は
結合穴20を貫通する状態に設けられており一方は導波管
17の伝送路内に挿入され、他方は結合突起19により加熱
室10に新たに形成された空間に耐熱性の誘電体より成す
放射口カバー22により保持されている。

導波管17内を進行した高周波電波は放射アンテナ21を
内導体、結合穴20を外導体とした簡易的な同軸変換構造
により、放射アンテナ21を２次放射体として加熱室10に
供給される。したがって、高周波電波の加熱室放射口は
被加熱物載置台15の回転軸に直交する壁面に設けられて
いるため、放射口と被加熱物13の距離は被加熱物載置台
の回転により時間経過により総合的に各部分共平均化さ
れ直接放射による負荷インピーダンスによる高周波エネ
ルギーは均一化される。又、放射アンテナ21により導波
管17を進行して来た電波が持つ指向性が解消され、結合
突起19の形状と合まってパラボラアンテナの放射パター
ンに似た放射アンテナ21に平行な極めて均一な放射特性
が得られる。第２図は本発明の導波管及び結合部を示す
要部斜視図であり同一の部品には同一の番号附与してい
る。導波管17の結合突起19の周囲には放射口カバー22の
固定用の結合穴23が設けられているが、高周波電波の不
要な漏洩を止めるために寸法は極めて小さくしてある。

発明の効果 以上のように本発明によれば次の効果を得ることが出
来る。

（１） 被加熱物載置台の回転中心軸と高周波電波の加
熱室放射口が直交しているので、被加熱物載置台を回転
した場合、最も高周波電波の直接放射波エネルギーを均
一化出来る。

（２） 導波管の加熱室への放射口を略円錐台形を持つ
同軸構造としているので、２次放射アンテナに水平でか
つ極めて均一な放射特性が得られる。

（３） 発振器は導波管を介して加熱室に高周波電波を
供給しているため、発振管位置と電波放射口の位置を任
意に選択出来、しかも発振器を最適動作させる負荷イン
ピーダンスに整合させる場合放射アンテナによる結合度
により自由に調整出来るため加熱効率に優れたものであ
る。

（４） 均一加熱手段である被加熱物載置台の回転及び
電波放射口の放射パターンを決定する要素と、加熱効率
の向上のためのインピーダンス整合手段の要素を分離し
て構成出来るため、両性能を兼ね備えた高周波加熱装置
が実現出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例による高周波加熱装置の正面
断面図、第２図は同高周波加熱装置の導波管及び結合部
の要部斜視図、第３図、第４図、第５図は従来の高周波
加熱装置の正面断面図である。 10……加熱室、15……被加熱物載置台、16……マグネト
ロン、17……導波管、19……結合突起、20……結合穴、
21……放射アンテナ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】被加熱物を収納する略函体の加熱室と、被
   加熱物を前記加熱室内で回転させる被加熱物載置台と、
   高周波発振器と、前記高周波発振器よりの高周波電波を
   前記加熱室に伝搬させる導波管とを備え、前記被加熱物
   載置台の位置する加熱室壁面及びこれに対向する壁面以
   外の面に前記導波管を配置すると共に前記導波管の加熱
   室側に面する導波管壁を略円錐台形状に突出させ、この
   突出部の中心軸上の導波管壁に円形の穴を設けると共
   に、この穴を貫通し導波管壁もしくは加熱室壁に誘電体
   によって保持した導電体より成る略円筒状の放射アンテ
   ナを設け、前記導波管と前記加熱室とを放射アンテナに
   より電界結合する構成とした高周波加熱装置。