JPH08100825A - トルクリミッタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内輪に巻付けたコイルバネを介してトルクを
伝達するトルクリミタにおいて、コイルバネと内輪間の
潤滑状態を維持しつつ、リミッタ外部への潤滑剤の漏れ
出しを防止する。 【構成】 内輪１を、合成樹脂製のスリーブ９と、オイ
ルを含浸する多孔質リング１０とから形成し、多孔質リ
ング１０の長さをコイルバネ５の巻付け部分５ａに限定
する。潤滑油を含有する多孔質部分の体積を縮小するこ
とにより、トルクリミッタ内部に保有する潤滑油量を少
なくし、スリーブ９によって軸４表面への潤滑油の移動
を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、各種の事務機器等に
おける紙の重送防止装置やブレーキ装置などに用いられ
るトルクリミッタに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図２は、従来のこの種のトルクリミッタ
を示している。

【０００３】このトルクリミッタは、軸４が挿通する内
輪１の外側をケース２と蓋板３で覆い、その閉鎖した空
間の内部で、コイルバネ５の一部分を内輪１に巻付け、
そのコイルバネ５の一端をケース２に、他端を蓋板３に
それぞれ係止している。

【０００４】上記の構造では、コイルバネ５の巻付け部
分５ａと内輪１の外径面との間で生じる緊縛力や摩擦力
がコイルバネ５と内輪１を結合又は離反させ、ケース２
と軸４間におけるトルクの伝達と遮断を切換えている。

【０００５】この場合、強い摩擦力が作用するコイルバ
ネ５と内輪１の接触部は、常に潤滑する必要があり、通
常、内輪１とケース２、蓋板３で覆われる閉鎖空間６に
グリースが封入されている。

【０００６】また、内輪１は、全体が焼結金属等の多孔
質材料で形成され、その内部にオイルを含浸させて、潤
滑の補完と接触部における防錆を図っている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上記のような従来のト
ルクリミッタでは、潤滑油として閉鎖空間６にグリース
を封入し、内輪１全体にオイルを含浸しているため、ト
ルクリミッタ内部に保有される油分の量が著しく多くな
り、その油分による内圧上昇により保有された潤滑油が
外部に漏出しやすい傾向がある。

【０００８】また、多孔質材料で形成された内輪１の内
径面が直接軸４に接触しているために、トルクリミッタ
内部の潤滑油が、時間の経過とともに内輪１の内部を通
して軸４の表面へにじみ出す問題がある。

【０００９】さらに、内輪１の端面７とケース２の内側
端面８とが密着した状態にあるため、その端面７、８間
に生じる浸透圧によって内部の潤滑油がケース２の外部
に漏れ出しやすい欠点もある。

【００１０】このようなトルクリミッタから漏れ出した
潤滑油は、事務機器内の他の部品や紙等に付着し、安定
した作動を阻害しやすい不具合がある。

【００１１】そこで、この発明は、上記の問題を解決
し、内輪とコイルバネ間の潤滑を良好に維持できると共
に、潤滑油の外部への漏れ出しを確実に防止できるトル
クリミッタを提供することを目的としている。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明は、内輪を、非多孔質材料から成るスリー
ブと、そのスリーブの外径面に嵌合する多孔質リングと
から形成し、この多孔質リングの長さを、内輪に対する
コイルバネの巻付き長さとほぼ等しく設定したのであ
る。

【００１３】また、この発明の第２の手段は、上記多孔
質リングとケースの内側端面との間に、油溜り用のすき
間を設けた構造としたのである。

【００１４】

【作用】上記の構造においては、オイルを含浸させる多
孔質リングの大きさを、コイルバネの巻付け長さだけに
ほぼ限定したので、トルクリミッタ内部に保有する潤滑
油の量を少なくでき、油圧力による潤滑油の漏れ出しを
抑えることができる。

【００１５】また、多孔質リングと軸が直接接触せず、
非多孔質のスリーブが間に介在するため、内輪の内部を
通して潤滑油が浸透することがなく、軸表面へのにじみ
出しが防止される。

【００１６】一方、第２の手段のように、多孔質リング
とケースの端面間にすき間を設けると、潤滑油がケース
内部に停滞し、内輪とケースの端面間の浸透圧が低下す
るため、端面を通したケース外部への潤滑油の漏れ出し
が防止される。

【００１７】

【実施例】図１は実施例のトルクリミッタを示してい
る。内輪１は、合成樹脂から形成されるスリーブ９と、
そのスリーブ９の外径面に圧入嵌合される焼結金属製の
多孔質リング１０とから構成され、その多孔質リング１
０の内部にオイルが含浸されている。

【００１８】この多孔質リング１０の外径面には、コイ
ルバネ５の内径面の一部分が巻付けられ、そのコイルバ
ネ５の一端がケース２の端面に、他端が蓋板３の端面に
それぞれ係止されている。

【００１９】上記ケース２や蓋板３は、潤滑油を含浸し
ない合成樹脂で形成され、そのケース２と蓋板３及び内
輪１とで囲まれる閉鎖空間６に、グリースが封入されて
いる。

【００２０】上記多孔質リング１０は、コイルバネ５の
巻付け部分５ａの長さＬより少し大きな長さで形成され
ており、その多孔質リング１０の端面とケース２の内側
端面８との間には、油溜り用のすき間１１が形成されて
いる。

【００２１】なお、スリーブ９の内側には、軸４が挿通
する貫通孔１２が形成され、スリーブ９の端部に、軸４
とスリーブ９間でトルク伝達を行なうキー１３の嵌合溝
１４が設けられている。

【００２２】上記の構造で成る実施例のトルクリミッタ
においては、オイルを含浸する多孔質リング１０を、コ
イルバネ５の巻付け部分５ａの長さだけに縮小したの
で、図２に示す従来構造に比べて内輪１に含浸されるオ
イルの絶対量を少なくすることができる。このため、ト
ルクリミッタ内部に保有される潤滑油が少なくなり、グ
リースとオイル圧力の相乗効果による潤滑油の漏れ出し
を抑えることができる。

【００２３】また、含浸作用のある多孔質リング１０と
軸４が直接接触せず、その間に介在する樹脂製のスリー
ブ９が潤滑油の浸透を遮断するため、潤滑油が内輪１の
内部を通して移動することが防止され、軸４表面へのに
じみ出しが防止される。

【００２４】加えて、多孔質リング１０とケース２の端
面間にすき間１１が設けられ、トルク発生側となるスリ
ーブ９とケース２の端面との間に油溜りとなる空間がで
きるため、閉鎖空間６からケース２外部へ漏れようとす
るグリース又はオイルがすき間１１で停滞した状態にな
る。このため、すき間に生じるラビリンス効果により、
内輪１とケース２の端面７、８間に生じる浸透圧が低下
し、ケース２外部へ漏れ出そうとする潤滑油の動きが止
められる。

【００２５】なお、実施例では、スリーブ９やケース
２、蓋板３を合成樹脂製としたが、これらは潤滑油が浸
透しない材料であればよいため、金属等の他の非多孔質
材料で形成することもできる。

【００２６】

【効果】以上のように、この発明は、内輪において潤滑
油を含浸する多孔質部分の長さをコイルバネの巻付き部
分だけに限定し、その多孔質部分と軸との直接接触を無
くしたので、コイルバネと内輪の接触部分の潤滑状態を
良好に維持しつつ、トルクリミッタ内部に保有する潤滑
油量を少なくすることができ、内輪を通した潤滑油の漏
れ出しを確実に防止することができる。

【００２７】また、第２の手段のように、内輪とケース
の端面間に油溜りとなるすき間を設けると、端面間に生
じる浸透圧を小さくでき、ケースの端面を通した潤滑油
の漏れ出しを防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例のトルクリミッタを示す縦断面図

【図２】従来例を示す縦断面図

【符号の説明】

１ 内輪 ２ ケース ３ 蓋板 ４ 軸 ５ コイルバネ ６ 閉鎖空間 ７、８ 端面 ９ スリーブ １０ 多孔質リング １１ すき間

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸が貫通する内輪の外側を、ケースと蓋
   板で覆って密閉された潤滑空間を形成し、内輪に一部分
   を巻付けたコイルバネの一端をケースに、他端を蓋板に
   それぞれ係止したトルクリミッタにおいて、上記内輪
   を、非多孔質材料から成るスリーブと、そのスリーブの
   外径面に嵌合する多孔質リングとから形成し、この多孔
   質リングの長さを、上記コイルバネの巻付き長さとほぼ
   等しく設定したことを特徴とするトルクリミッタ。
2. 【請求項２】 上記多孔質リングとケースの内側端面と
   の間に、油溜り用のすき間を設けたことを特徴とする請
   求項１に記載のトルクリミッタ。