JPH0790433A - 高延性Ti−Al系合金 - Google Patents

高延性Ti−Al系合金

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JPH0790433A
JPH0790433A JP5264365A JP26436593A JPH0790433A JP H0790433 A JPH0790433 A JP H0790433A JP 5264365 A JP5264365 A JP 5264365A JP 26436593 A JP26436593 A JP 26436593A JP H0790433 A JPH0790433 A JP H0790433A
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ductility
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JP5264365A
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Hiroyuki Kawaura
宏之 川浦
Kazuaki Nishino
和彰 西野
Yoji Awano
洋司 粟野
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Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 常温延性および靱性に優れ、かつ安定した強
度を有するTi−Al系合金を提供する。 【構成】 重量%でAl:30〜38%、B:0.4〜
2%を含み、残部がチタンと不可避物質とからなること
を特徴とする高延性Ti−Al系合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、常温延性および靱性に
優れたTi−Al系合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ターボチャージャーロータ等の回転系部
品やエンジンバルブのような動弁系部品は、近年、エン
ジン等の高性能化、高効率化に伴って、ますます軽量
化、耐熱性に優れていることが要求されており、これに
応じてこれら部品用材料の研究・開発が盛んに行われて
いる。
【0003】従来、これら部品用材料としては、Ni基
の超合金が主流で、その他にTi合金やセラミックス材
料等が用いられているが、このNi基の合金は重量が重
いという欠点があり、また、Ti合金は耐熱性の点で、
セラミックス材料は靱性の点でそれぞれ劣り、上記部品
の材料としては信頼性に欠けるという難点がある。
【0004】そこで、近年、TiAl金属間化合物をベ
ースにしたTi−Al系合金が、新しい軽量耐熱材料と
して注目されており、エンジン部品等への適用が検討さ
れている。しかし、このTi−Al系合金は、常温延性
に乏しく、これが実用化の最大のネックの一つとなって
いる。このため、溶解鋳造法、粉末冶金法などの種々の
製造プロセスを通して、合金成分や組織制御による延性
の改善が検討されている。
【0005】その一つとして、重量%でAl:32〜3
8%に加えてB:0.05〜0.20%を含有し、残部が実
質的にTiからなる「Ti−Al系合金」(特開昭63
−125634号公報)が提案されている。この合金
は、高い耐熱性と比強度を有するTi−Al系合金の延
性が高められ、塑性加工が容易になるとしている。
【0006】また、チタン、アルミニウム、クロムおよ
びボロンを、原子分率成分式でTix Al1-(X+y+z)
y z (0.47≦x≦0.51、0.01≦y≦0.04、0.50≦x
+y≦0.54、0.0001≦z≦0.01)で含有してなる「金属
間化合物TiAl−Cr基合金」(特開平3−1976
31号公報)が提案されている。この合金は、組織の大
幅な微細化がなされ圧縮変形特性を向上させると同時
に、クロム及びボロンの添加によるTiAlの固溶体強
化も可能なことから、機械的性質を総じて向上させるこ
とができ、圧縮応力が支配的な圧延、鍛造といった加工
プロセスへの適用に有利になったとしている。
【0007】また、重量百分率で、Al:31〜34
%、Fe:1.5〜3.0%、V:0.5〜2.0%、B:0.1
8〜0.35%を含有し、残部がTiおよび不可避不純物
からなる「精密鋳造用チタンアルミナイド」(特開平4
−88140号公報)が提案されている。これより、T
i−Al系特有のラメラー粗大粒組織が消滅し、微細な
ウィスカー状のTiBが均一に分散したミクロ組織とな
るため、薄肉鋳物での割れが発生しずらくなり、且つ鋳
放し状態での常温強度を500MPa以上に高めること
ができるとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開昭63−125634号公報に記載のTi−Al系合
金は、化合物の粒界を強化し、延性を高めるとともに結
晶粒を微細化して強度向上にも寄与するとしているが、
0.005〜0.20重量%を含有する程度のB量で
は、結晶粒の微細化の効果は極めて少なく、粗大等軸晶
と柱状晶が混在した組織であり、強度特性のばらつきが
大きく、著しく低い特性を示す場合があるという問題を
有している。なお、このTi−Al系合金では、Bの含
有量が0.2重量%を越えると脆い硼化物の生成を招いて
延性が低下するとしている。
【0009】また、特開平3−197631号公報に記
載の金属間化合物TiAl−Cr基合金は、0.01〜
1.0原子%Bの添加で固溶強化、析出強化などにより
強度の増加が得られるとしているが、該範囲内のBの添
加では依然として結晶粒は粗大粒であり、中には強度特
性に優れた部品も存在するが、著しく強度に劣る場合が
あるという問題を有している。なお、この金属間化合物
TiAl−Cr基合金では、Bの含有量が0.3原子%を
超えると析出物の粗大化起こり微細化による変形能が損
なわれ、1.0原子%を超えるとさらに強度が低下すると
している。
【0010】また、特開平4−88140号公報に記載
の精密鋳造用チタンアルミナイドは、0.18〜0.3
5重量%のBの添加でウィスカー状のTiB(チタンボ
ライド)が微細に均一に分散・晶出されたチタンアルミ
ナイド合金が鋳造されるとしているが、ウィスカー状の
TiBの分散・晶出では、微細等軸晶組織とはならず、
強度特性のばらつきも大きく、著しく低い特性を示す場
合もあるという問題を有している。なお、この精密鋳造
用チタンアルミナイドでは、Bの含有量が0.35重量%
を超えると、得られるチタンアルミナイド合金の硬度が
硬くなりすぎて靱性が発現されにくくなり不適であると
している。
【0011】以上のように、上記従来技術では、何の添
加元素の選択にもよらず、ばらつきが大きく、安定した
延性を有しておらず、さらなる微細化によって組織制御
する必要がある。また、ターボチャージャーロータなど
の薄肉複雑形状部品は、鍛造や切削では成形が困難また
は不可能であるという問題を有している。
【0012】そこで、本発明者らは、上述の如き従来技
術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験
を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。
【0013】(発明の目的)本発明の目的は、常温延性
および靱性に優れ、かつ安定した強度を有するTi−A
l系合金を提供するにある。
【0014】本発明者らは、上記の従来技術の問題に対
して、以下のことに着眼した。すなわち、Ti−Al系
合金の結晶粒を微細にすることにより、鋳放しのまま
で、ばらつきの極めて小さい安定した強度を有する高靱
性、高延性のTi−Al系合金を容易に得ることができ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の高延性Ti−A
l系合金は、重量%でAl:30〜38%、B:0.4
〜2%を含み、残部がチタンと不可避物質とからなるこ
とを特徴とする。
【0016】
【作用】本発明のTi−Al系金属間化合物が優れた効
果を発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明ら
かではないが、次のように考えられる。
【0017】本発明のTi−Al系合金は、B(硼素)
を特定量含有させることによって組織の結晶粒を微細化
することにより、強度や延性などの物性が向上する。
【0018】アルミニウム(Al)の含有量は、30重
量%以上38重量%以下である。金属間化合物TiAl
(γ相)を与える化学量論組成はTi−36%Alであ
り、Ti−Al二元合金においてTiAlが単相で存在
するのは、Al:34〜42重量%の範囲である。しか
し、Alの含有量が38重量%を超えると延性が低下す
る。一方、Alの含有量が34重量%よりも少ないTi
リッチの組成になると、Ti3 Al(α2 相)が生成す
る。このTi3 Alは、それ自身は脆い物質であるが、
微量であれば延性の向上に役立つ。しかし、Alの含有
量が30重量%未満の場合は、α2 相が多量に析出し、
脆くなるため不適である。
【0019】硼素の含有量は、0.4重量%以上2.0
重量%以下である。上記のアルミニウム組成では、Ti
AlとTi3 Alの層状組織を形成する。硼素は、結晶
粒を微細にする効果があるため、強度および延性が向上
する。すなわち、該硼素の含有量が上記範囲内の場合に
は、棒状および/または塊状のTiB2 が晶出し、それ
が核となって多くの結晶粒が形成され、微細化が生じる
と考えられる。この元素の含有量が0.4重量%未満の
場合は、これら強度向上効果や延性向上効果が少ない。
また、該含有量が2.0重量%を超える場合は、晶出物
がネットワーク状に形成し、延性が低下する。また、硼
素を添加すると鋳造性が向上するので、欠陥などが減少
し、さらに強度が向上する。
【0020】以上により、本発明のTi−Al系合金
は、常温延性および靱性に優れたものとすることがで
き、かつ安定した強度有するものと考えられる。
【0021】
【発明の効果】本発明のTi−Al系合金は、常温延性
および靱性に優れ、かつ安定した強度を有する。
【0022】
【実施例】以下に、前記本発明の高延性Ti−Al系合
金をさらに具体的にした具体例(発明)について、説明
する。
【0023】本発明のTi−Al系合金において、Al
は原子比でTi:Al=1:1の組成よりも数%Ti−
rich側の組成において最も引張強度特性が高い。従
って、より高い引張強度特性を得るためには、Alの含
有量を32〜36重量%とすることが好ましい。
【0024】また、第三元素としての硼素(B)は、0.
4〜2.0重量%を含有してなるが、この含有量は0.5
〜1.2重量%とすることが好ましい。該含有量を上記
好適範囲とすることにより、作製物間のばらつきが小さ
い、安定して優れた強度特性を有する鋳物を得ることが
できる。
【0025】本発明の高延性Ti−Al系合金は、重量
%でAl:30〜38%、B:0.4〜2%を含み、残
部がチタンと不可避物質とからなるが、本発明の作用お
よび効果を阻害しない範囲で、さらに第四元素として希
土類元素の一種以上を0.01〜3.0重量%含有させるこ
とが好ましい。これにより、上記層状組織の層間隔が微
細になり、強度および延性をより向上させることができ
る。すなわち、上記のアルミニウム組成では、TiAl
とTi3 Alの層状組織を形成する。希土類元素は、こ
の層状組織の層間隔を小さくするとともに、結晶粒を微
細にする効果があるため、強度および延性を向上させる
効果を奏する。この元素の含有量が0.01重量%未満
の場合は、これら強度向上効果や延性向上効果が少な
い。また、該含有量が3.0重量%を超える場合は、粒
界に多量の第三相の晶出物の生成を招き延性が低下す
る。なお、該希土類元素の含有量は、0.01〜3.0
重量%とすることがより好ましい。該含有量を上記好適
範囲とすることにより、TiAlとTi3 Alの層状組
織の層間隔をより小さくすることができるとともに、結
晶粒をより微細にすることができるため、より高強度で
常温延性により優れた高延性Ti−Al系合金とするこ
とができる。
【0026】なお、この第四元素としての希土類元素
は、ランタン系列元素の一種以上であることが好まし
い。これは、ランタン系列元素は、前記本発明の効果を
より奏しやすく、また製造上ミッシュメタル等の混合物
の形で供給しやすく安価で取扱いも簡単だからである。
また、このランタン系列元素は、その一種以上を0.01
〜3.0重量%以上を含有させることが好ましいが、さら
にこの含有量が0.03〜0.5重量%である場合には、層
状組織の層間隔を小さくする効果、および結晶粒の微細
化効果をより効果的に奏することができ、また粒界への
晶出物を生成させることがないので好適である。
【0027】また、第四元素としての希土類元素は、セ
リウムとランタン系列元素の一種以上とからなるもので
あることがより好ましい。この場合、セリウムとランタ
ン系列元素の一種以上と共存させることにより、単独で
含有させた場合に比べTi−Al/Ti3 Al層状組織
の層間隔がさらに小さくなるので、より高強度で常温延
性に優れた高靱性Ti−Al系合金とすることができ
る。さらにこの場合、セリウムは、ランタンと同等また
はそれ以上の効果があるので、ほぼ同量またはそれ以上
含有させるのが好ましい。このとき、ミッシュメタル等
の混合物の形態で添加してもよい。セリウムとランタン
系列元素の一種以上を単独で,または両者を含む混合物
の形態で添加する場合には、その含有量は0.03〜0.5
重量%であることが好ましい。
【0028】本発明の高延性Ti−Al系合金は、重量
%でAl:30〜38%、B:0.4〜2%を含み、残
部がチタンと不可避物質とからなるが、本発明の作用お
よび効果を阻害しない範囲で、さらに第四元素としてモ
リブデン(Mo)またはバナジウム(V)の一種以上を
0.01〜3.0重量%含有させることが好ましい。これに
より、TiAl相自身の靱性が向上するとともに結晶粒
の微細化効果が顕著になる。この元素の含有量が0.0
1重量%未満の場合は、これら強度向上効果や延性向上
効果が少ない。また、該含有量が3.0重量%を超える
場合は、粒界に多量の第三相の晶出物が晶出してしまい
脆くなる。なお、該元素の含有量は、0.01〜3.0
重量%とすることがより好ましい。該含有量を上記好適
範囲とすることにより、晶出物がさらに微細に分散・晶
出することにより、より多くの結晶粒を形成し、微細結
晶粒組織となる。さらに、。TiAl相またはTi3
l相に固溶することにより、固溶強化するとともに、晶
出物にも固溶し、析出強化を生み、より高い強度を発現
することができる。
【0029】本発明の好適な高延性Ti−Al系合金
は、第四元素として、希土類元素の一種以上を0.01〜
3.0重量%、またはモリブデン(Mo),バナジウム
(V)の一種以上を0.01〜3.0重量%含有させること
により、さらにTiAlの固溶体強化を可能にするとと
もに、高温における耐酸化性を向上させることができ
る。
【0030】本発明の高延性Ti−Al系合金は、所定
量のAlと硼素を含み、残部がチタンと不可避物質とか
らなるが、本発明の作用及び/又は効果を阻害しない範
囲で、上記以外の他の元素を含有させることができる。
例えば、常温延性を向上させる目的で、バナジウム
(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニオブ
(Nb)などの遷移金属の一種以上を所定量含有させる
ことができる。また、耐酸化性を向上させる目的で、珪
素(Si)を含有させることができる。
【0031】本発明の高延性Ti−Al系合金は、組織
を微細化するので、引張強度特性を向上させるととも
に、圧延、鍛造などの塑性加工性を向上させることがで
きる。また、第三元素としての硼素の含有量、さらには
第四元素の含有量は、何れも微量であるので、TiAl
のもつ従来の軽量性という特徴を損なうことがないの
で、自動車部品のみならず航空機部材への適用も可能と
なり、工業的に有用な合金である。
【0032】本発明の高延性Ti−Al系合金の製造方
法について、簡単に説明すると以下のようである。すな
わち、本発明の高延性Ti−Al系合金の製造方法の一
例としては、先ず、TiとAlおよび硼素を、或いはさ
らに必要に応じて希土類元素の一種以上、モリブデン
(Mo),バナジウム(V)の一種以上、さらにはその
他の所望の添加元素物質を、目標組成となるように準備
する。この場合、それぞれ単独の元素物質であっても、
これら元素を含む物質であっても、あるいは上記元素を
二種以上含む混合物質や化合物質などであっても、さら
にはこれらの混合物や化合物などであってもよい。例え
ば、硼素の添加方法としては、。TiB2粉末、Al−
B母合金など硼化物を形成するものであればよい。
【0033】次に、これら原料物質を溶解する。この場
合、TiAl合金の溶解には、真空アーク溶解法、プラ
ズマビーム溶解法、電子ビーム溶解法などの何れの方法
を用いてもよい。なお、溶解法として高周波るつぼ溶解
法を採用した場合、成分調整が容易で均質な合金を作製
し易く、溶解温度の制御がし易く、好適である。るつぼ
としては、カルシアるつぼが好適である。
【0034】次に、溶解した原料物質を溶製し、本発明
にかかるTi−Al系合金を得る。溶製プロセスとして
は、溶解鋳造法、粉末冶金法、加工熱処理法などの方法
を採用することができる。なお、溶製プロセスとして、
溶解鋳造法を採用した場合は、複雑形状部品を容易に得
ることができ、好適である。
【0035】本発明の好適な高延性Ti−Al系合金の
製造方法は、TiとAlおよびBを、或いはさらに必要
に応じて所望の添加元素物質を,目標組成となるように
準備する原料物質準備工程と、該原料物質を高周波溶解
した後金型またはセラミック鋳型等の所定形状の鋳型に
注湯し鋳造する鋳造工程と、からなることを特徴とす
る。この方法により、重量%でAl:30〜38%、
B:0.4〜2.0%(より好適には0.5〜1.2%)を
含み、残部がチタンと不可避物質とからなるTi−Al
系合金鋳物を得ることができる。
【0036】Ti−Al系合金鋳物は、中心から鋳型壁
に向かって指向凝固し易く、数mmサイズの粗大な柱状
晶組織となって凝固する。また、この柱状晶の成長方向
は、TiAl/Ti3 Al層状組織の層界面に対してほ
ぼ垂直である。Ti−Al系合金鋳物の強度は、この層
状組織の結晶方位に影響を受けて大きくばらつく。ま
た、柱状晶組織でなくても、粗大な等軸状組織に対して
もその程度により強度がばらつく。このため、ばらつき
をなくすために、結晶粒を微細にする必要がある。C、
N、Bを添加すると結晶粒は微細になるが、C、Nを添
加すると、TiAlとTi3 AlにC、Nが固溶してし
まうため、脆くなる。しかし、Bは、TiAlとTi3
Alには固溶しないので、脆化を引き起こすことなく、
延性を向上させることができる。このとき、Bを0.4
重量%以上添加すると塊状のTiB2 が晶出し、結晶の
核となって多くの結晶粒を形成し微細化する。該含有量
が0.4重量%未満であると、ウィスカー状のTiB2
が晶出するが、微細化効果の程度は極めて少ない。
【0037】なお、安定した強度を有するTi−Al系
合金を溶製するためには、この層状組織の結晶粒径をよ
り小さくするとよく、さらには柱状晶組織から等軸晶組
織に組織制御することにより、強度特性をより安定した
ものとすることができる。
【0038】(実施例)
【0039】第1実施例 先ず、純度99.9%のスポンジチタンと純度99.99 %
のアルミニウムに、硼化物形成元素を目標組成に秤量
し、10-4 torr 以下の真空に排気した後、Ar雰囲気
下で高周波溶解法により金型に鋳込んだ。次いで、鋳放
しのままで本実施例にかかるTi−Al系合金を得た
(試料番号:1〜11)。本実施例にかかるTi−Al
系合金鋳物の凝固組織を観察した結果、試料番号1〜試
料番号11は何れも微細等軸晶組織であった。このTi
−Al系合金のインゴットから平行部径4mm、長さ1
6mmの引張試験片を取り出し、それぞれ3点について
常温引張試験を行った。破断伸びは、試験片平行部に2
枚の歪ゲージをはりつけ、その出力から求めた。得られ
た結果を、表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】また、上記実施例の試料番号5のTi−A
l系合金の表面のマクロ金属組織を示す写真図を、図1
に示す。同図より明らかのように、全面が微細な等軸晶
組織であることが分かる。次いで、この鋳造組織を、光
学顕微鏡(倍率:100倍)で観察した。その結果を、
すなわちTi−Al系合金の金属組織を示す光学顕微鏡
写真図を、図2に示す。同図より明らかのように、Ti
−Al系合金は、鋳放しのままで100μm程度の結晶
粒を有する層状組織であることが分かる。また、試料番
号5のインゴット中に観察された晶出物の金属組織を、
走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)により観察し
た。その結果を、図3に示す。同図より、棒状および塊
状の晶出物が観察された。また、X線回折の結果、この
晶出物がTiB2 であることが分かった。また、この晶
出物が組織中に上記層状組織とはランダムに存在するこ
とから、液相から晶出したものと考えられる。すなわ
ち、このTiB2 が液相から晶出する際に、核となって
多くの結晶を形成し、結晶粒が微細になるものと考えら
れる。
【0042】また、試料番号1〜4について、Bの含有
量が0.47〜0.51重量%のとき、破断強さおよび
破断伸びはAl含有量が33.5重量%で最大値を示す
ことが分かる。また、試料番号5〜11について、Al
含有量が33.4〜33.8重量%のときのB含有量と
結晶粒径との関係を、図4に示す。同図より、何れの組
成においても結晶粒径は100μm程度に安定している
ことが分かる。また、試料番号5〜11について、Al
含有量が33.4〜33.8重量%のときのB含有量と
引張破断強さとの関係を図5に、およびB含有量と破断
伸びとの関係を図6に、それぞれ示す。同図より、本実
施例の範囲の場合、引張破断強さおよび破断伸びにおい
て優れた効果が得られていることが分かる。さらに、こ
の強さおよび伸びは試験片間のばらつきも少なく、この
点でも優れた効果を奏していることが分かる。
【0043】また、試料番号1〜11について、800
〜900℃の曲げクリープ試験を行った。その結果、一
般に結晶粒が微細になると高温強度特性は低下すると言
われているが、本実施例の試料番号1〜11のTi−A
l系合金は、上記曲げクリープ試験においても特性が低
下しないことが確認された。
【0044】(比較例1)比較のために、硼素を添加し
ない他は、上記第1実施例と同様にして、表1に示す組
成の比較用TiAl系合金鋳物を作製し(試料番号:C
1〜C4)、同様の評価試験を行った。その結果を、表
1に併せて示す。また、本比較例にかかる比較用TiA
l系合金鋳物の凝固組織を観察した結果、試料番号C1
〜試料番号C4は何れも柱状晶組織であった。表1から
明らかのように、破断強さおよび破断伸びAl含有量が
33.8重量%で最大値を示すが、柱状晶組織のため試
験片間でのばらつきが大きいことが分かる。
【0045】また、試料番号C2の比較用合金につい
て、上記第1実施例と同様に表面のマクロ金属組織を示
す写真図を、図7に示す。同図より明らかのように、鋳
型壁から中心にむかった柱状晶組織であることが分か
る。また、この柱状晶組織は、平均で径0.5mm、長
さ2〜3mmの粗大な結晶粒から形成されていることが
分かる。さらに、該比較用合金の鋳造組織を観察した。
該比較用合金の金属組織を示す光学顕微鏡写真図(倍
率:100倍)を、図8に示す。同図より明らかのよう
に、比較用TiAl系合金は、鋳放しのままで500μ
m以上の粗大な結晶粒を有する層状組織であることが分
かる。
【0046】(比較例2)比較のために、TiAl系合
金の硼素含有量が本発明の範囲以外となるように硼素を
添加した他は、上記第1実施例と同様にして、表1に示
す組成の比較用TiAl系合金鋳物を作製し(試料番
号:C5〜C9)、同様の評価試験を行った。その結果
を、表1に併せて示す。本比較例にかかる比較用TiA
l系合金鋳物の凝固組織を観察した結果、硼素含有量が
本発明より少ない試料番号C5〜試料番号C7では、何
れも完全な等軸晶組織ではなく、柱状晶組織と等軸晶組
織が混在している。このため、上記第1実施例のTi−
Al系合金に相当するような強さや伸びを示す試験片も
あるが、ばらつきが大きく、かなり低い値を示す試験片
もある。また、この場合、鋳造組織中には、ウィスカー
状のTiB2 が観察された。このウィスカー状のTiB
2は、結晶の核とはなりえず、微細化が起こらないもの
と考えられる。また、硼素含有量が本発明より多い試料
番号C8および試料番号C9の比較用TiAl系合金鋳
物の凝固組織は、微細等軸晶組織ではあるが、強さおよ
び伸びは、上記第1実施例に比べて低い値を示している
ことが分かる。これは、上記第1実施例のTi−Al系
合金に観察される棒状および塊状のTiB2 が、本比較
例ではネットワーク状に晶出しているため、この晶出物
に沿って亀裂が進展し、強さや伸びが低下しているもの
と考えられる。
【0047】第2実施例 上記第1実施例の原料に希土類元素のLa元素およびC
e元素を目標組成に秤量し加えた他は、上記第1実施例
と同様にして、表2に示す組成の比較用TiAl系合金
鋳物を作製し(試料番号:12〜23)、同様の評価試
験を行った。その結果を、表3に示す。本実施例にかか
るTi−Al系合金鋳物の凝固組織を観察した結果、試
料番号12〜試料番号23は何れも微細等軸晶組織であ
った。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】表3より明らかのごとく、本実施例の場合
さらに破断強さおよび破断伸びが向上することが分か
る。これは、LaおよびCe元素を添加することによ
り、層状組織がさらに微細化されたためと考えられる。
また、試料番号21〜試料番号23に示すように、La
およびCe元素は複合添加しても破断強さおよび破断伸
びの向上効果が発現することが分かる。また、ミッシュ
メタルなどの安価な化合物または混合物を用いても同様
の効果向上が見られる。なお、本実施例のLa、Ce元
素に代えて、他のNdなどの希土類元素を用いても同様
の効果が確認できる。
【0051】第3実施例 上記第1実施例の原料にさらにMo元素またはV元素を
目標組成に秤量し加えた他は、上記第1実施例と同様に
して、表2に示す組成の比較用TiAl系合金鋳物を作
製し(試料番号:24〜27)、同様の評価試験を行っ
た。その結果を、表3に示す。本実施例にかかるTi−
Al系合金鋳物の凝固組織を観察した結果、試料番号2
4〜試料番号27は何れも微細等軸晶組織であった。本
実施例においてMo元素またはV元素を添加することに
より、結晶粒径がさらに微細になるとともに、TiAl
相自身の靱性が向上し、さらに強度特性が向上する。な
お、Mo元素またはV元素は、該元素を含む化合物また
は混合物の形で添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金(試料番号5)の金属組織を示す写真図(倍
率:1倍)である。
【図2】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金(試料番号5)の金属組織を示す光学顕微鏡写
真図(倍率:100倍)である。
【図3】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金(試料番号5)の金属組織を示す走査型電子顕
微鏡写真図(倍率:2000倍)である。
【図4】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金の性能評価試験結果を示す図で、硼素含有量と
結晶粒径との関係を示す線図である。
【図5】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金の性能評価試験結果を示す図で、硼素含有量と
引張破断強さとの関係を示す線図である。
【図6】本発明の第1実施例において得られたTi−A
l系合金の性能評価試験結果を示す図で、硼素含有量と
破断伸びとの関係を示す線図である。
【図7】第1実施例の比較例において得られた比較用合
金(試料番号C2)の金属組織を示す光学顕微鏡写真図
(倍率:400倍)である。
【図8】第1実施例の比較例において得られた比較用合
金(試料番号C2)の金属組織を示す光学顕微鏡写真図
(倍率:100倍)である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でAl:30〜38%、B:0.
    4〜2%を含み、残部がチタンと不可避物質とからなる
    ことを特徴とする高延性Ti−Al系合金。
  2. 【請求項2】 重量%でAl:30〜38%、B:0.
    4〜2%、希土類元素の一種以上:0.01〜3.0%を含
    み、残部がチタンと不可避物質とからなることを特徴と
    する高延性Ti−Al系合金。
  3. 【請求項3】 重量%でAl:30〜38%、B:0.
    4〜2%、MoまたはVの一種以上:0.01〜3.0%を
    含み、残部がチタンと不可避物質とからなることを特徴
    とする高延性Ti−Al系合金。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02200743A (ja) * 1989-01-30 1990-08-09 Sumitomo Light Metal Ind Ltd Ti―Al系金属間化合物部材の成形法
JPH03285051A (ja) * 1990-03-30 1991-12-16 Sumitomo Light Metal Ind Ltd チタニウムアルミナイドの鍛造方法
JPH05247566A (ja) * 1992-03-06 1993-09-24 Daido Steel Co Ltd Ti−Al系耐熱部品

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