JPH078485B2 - 鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化防止方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、セラミックのスリップキャスティング等の鋳
込み成形に使用される石膏型の吸水力劣化防止方法に関
する。

〔従来の技術〕

特に薄肉（10mm以下の厚さ）の複雑形状を有するセラミ
ック部品の成形において、スリップキャスティング法が
しばしば適用されている（例えば、特開昭51−109005
号）。そして、低コストの成形方法である利点から、直
径20mm以上の厚肉品、中実品への適用も行われるように
なっている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところが、厚肉品、中実品では、スリップ中の解膠剤と
石膏型が反応したり、成形粉末が目詰まりすることによ
って、石膏型の吸水性が低下して、石膏型の連続使用が
できなくなるという問題があった。すると、再製作のコ
ストが増大し、生産効率が低下する。

これに対して、水による石膏型の洗浄を検討したが、石
膏型中のCaイオンが溶出して、型表面の荒れや、寸法変
化が生じるという問題が残った。

したがって、本発明の目的は、石膏型の連続使用による
吸水力の劣化を防止することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

そこで、本発明の鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化防止
方法は、硫酸カルシウム水溶液で石膏型を洗浄すること
を特徴とする。

なお、石膏型は、洗浄後に乾燥され、スリップキャステ
ィングが行われる。

〔作用〕

上述の本発明の鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化防止方
法によれば、硫酸カルシウム水溶液を用いた洗浄により
石膏型中に残存した解膠剤および成形粉末を石膏自身の
溶出を防いて除去できるものである。

〔実施例〕

次に、本発明にかかる鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化
防止方法の実施例を説明する。

第１図に示す形状の中空部を有する円筒状成形体を、本
発明の方法によって洗浄した石膏型を用いて成形した。

図の成形体は、直径Ｄが90mm、直径ｄは30mm、Ｈが100m
m、ｈが40mmの寸法を有する。

この成形体を成形するためのキャビティを有する石膏型
（図示しない）を、硫酸カルシウム飽和水溶液中で１時
間の超音波洗浄した後、45℃で24時間の加熱乾燥を行
い、室温まで冷却して、吸水力劣化防止処理を行った。

このように処理した石膏型にSi₃N₄のスリップを流し込
み、成形体を成形した。

スリップは、溶媒の水とポリアクリル酸アンモニウム塩
からなる解膠剤に0.2〜１μｍのSi₃N₄粉末を溶かしたも
のを用いた。

そして、この処理と成形とを10回繰り返し、成形体の状
態を調べて試験を行った。なお、石膏型を洗浄せずに、
成形後に石膏型を加熱乾燥するだけで、成形を続けたも
のを比較例Ａとした。また、石膏型を水洗して洗浄を行
ったものを、比較例Ｂとした。

試験結果を次表に示す。

上表において、○は良好な成形体が得られたもの、△は
表面精度不良のもの、×は割れ不良が生じたもの、−は
試験を行っていないものを表す。

上表から明らかなように、本実施例のものは、10回とも
すべてに良好な結果が得られたのに対して、比較例Ａの
何の洗浄も行わなかったものは、２回目以降は成形体に
亀裂が発生し、成形が不可能となった。また、比較例Ｂ
の水洗浄のものは、２回目から表面荒れが発生し、４回
目からは、寸法が著しく悪化し、５回面からは、脱型不
良による割れが発生して成形不良となった。

以上、本発明の特定の実施例について説明したが、本発
明は、この実施例に限定されるものではなく、特許請求
の範囲に記載の範囲内で種々の実施態様が包含されるも
のである。

〔考案の効果〕

以上より、本発明の鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化防
止方法によれば、洗浄により安定した吸水力が得られる
ので、石膏型の連続使用が可能となる。成形工程が安定
し、良品率が上がる。また、洗浄によっても石膏型の表
面が荒れることがなく、成形体の表面粗さおよび寸法が
安定するので、成形体の加工代を小さく設計することが
でき、製造コストが低減される。また、吸水力の低下が
少ないため、連続成形のために石膏型の厚さを増加させ
ずに小さくすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本実施例において試験される成形体の断面図
である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】硫酸カルシウム水溶液で石膏型を洗浄する
   ことを特徴とする鋳込み成形用石膏型の吸水力劣化防止
   方法。